以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る整経機の構成を示す平面図である。図2は本実施の形態に係る整経機の構成を示す側面図である。なお、図2では後述する台車34の図示を省略している。
本実施の形態に係る整経機1は、いわゆる部分整経機であり、図1、図2の左端部に配置されているクリール2に支持された複数の給糸パッケージPから、後述する複数の連結糸Yを引き出し、引き出した複数の連結糸Yを、図1、2の右端部に配置された略円筒形状の部分整経ビーム3に巻き取ることによって、1つのバンドBを形成するとともに、このようなバンドBの形成を繰り返し行うことによって、部分整経ビーム3の軸方向に並ぶように複数のバンドBを形成する。なお、連結糸Yの巻取時には、部分整経ビーム3は、図示しないモータなどの駆動によって回転する。
図3は、給糸パッケージPに巻き取られている連結糸Yを示す図である。給糸パッケージPに巻き取られている連結糸Yは、図3に示すように、複数の糸が結びあわされることで一本になったものであり、複数の巻取糸Y1及び高強度糸Y2を含んでいる。また、連結糸Yを構成する糸の結び目kにはこぶaができている。
複数の巻取糸Y1は、それぞれ、1回の巻取で部分整経ビーム3に巻き取られる糸であって、1つのバンドBを形成する経糸に相当する長さを有している。ここで、各巻取糸Y1は、織物の柄にあわせて、1つのバンドBに相当する長さの1本の糸のみによって構成されている、あるいは、色や糸種の異なる複数種類の糸が結びあわされてつながれることで、1つのバンドBに相当する長さの一本の糸となっている。
高強度糸Y2は、巻取糸Y1よりも強度の高いマルチフィラメント糸であって、各連結糸Yのうち、巻取糸Y1の間の部分、及び、パッケージPから引き出される側の端に配置されている。また、高強度糸Y2は、2つの糸Y21、Y22が結びあわされて一本となったものであり、糸Y21と糸Y22とは互いに色が異なっている(例えば、糸Y21が赤色であるのに対して、糸Y22が青色となっている)。
また、整経機1は、図1、図2に示すように、クリール2と部分整経ビーム3との間の糸経路の途中に、幅出し筬4、スリット形成装置5、幅出し筬6、搬送機構7、カッタ8、スプライサユニット9、サクションノズル10、搬送ローラ11などが配置されている。また、整経機1の動作は、制御装置50によって制御されている。
幅出し筬4は櫛歯状の部材であり、複数のパッケージPから引き出されてきた連結糸Yを等間隔に配列する。
スリット形成装置5は、幅出し筬4の図中右側に配置されている。図4は、スリット形成装置5を図1の矢印IVの方向から見た図である。図4に示すように、スリット形成装置5は、フレーム21、固定ローラ22(固定部材)、昇降ローラ23(可動部材)、流体シリンダ24(移動装置)等を備えている。固定ローラ22はフレーム21に(糸経路に対して)固定された、回転しないローラである。昇降ローラ23は、固定ローラ22の上方に固定ローラ22と対向するように配置された回転しないローラである。昇降ローラ23は、その両端部に昇降ローラ23本体よりも径の大きいカラー25が取り付けられていることで、その両端部においてその間の部分よりも径が大きくなっている。
また、昇降ローラ23は、その両端部が流体シリンダ24の下端部に支持されている。流体シリンダ24は、エアシリンダや油圧シリンダなどであって、その上端部がフレーム21の上端部に固定されている。そして、流体シリンダ24は、その下端部において支持する昇降ローラ23を昇降させる。
これにより、昇降ローラ23は、図4(a)に示すように、固定ローラ22から離隔した位置(離隔位置)と、図4(b)に示すように、カラー25が固定ローラ22と接触する位置(スリット形成位置)との間で昇降する。
そして、図4(a)に示すように、昇降ローラ23が固定ローラ22から離隔した状態では、固定ローラ22と昇降ローラ23との間の隙間W1は、連結糸Yの結び目kのこぶaの大きさWaよりも広くなっている。
一方、図4(b)に示すように、カラー25が固定ローラ22と接触した状態では、固定ローラ22と昇降ローラ23との間に、昇降ローラ23本体とカラー25の径の差に相当する幅W2のスリット26が形成される。このスリットの幅W2は、図4(b)、(c)に示すように、連結糸Yの太さWyよりも広く、結び目kのこぶaの大きさWaよりも狭くなっている。図4(c)は図4(b)の部分拡大図である。
また、スリット形成装置5の図1における左右両側には、光センサ31、32が配置されている。光センサ31、32は、高強度糸Y2のうち糸Y21を検出するためのものである。より詳細に説明すると、光センサ31、32は、図示しない発光素子と受光素子とを有しており、発光素子から糸Y21とほぼ同じ色(例えば、赤色)の光を出射する。そして、光センサ31、32が当該光とほぼ同じ色の糸Y21と対向しているときには、出射された光が糸Y21に当たって反射し、受光素子が当該光を受光する。一方、光センサ31、32が、当該光と異なる色の糸Y22と対向しているときには、出射された光は糸Y22に当たっても反射せず、受光素子は光を受光しない。そして、光センサ31、32は、受光素子が光を受光するか否かによって糸Y21を検出する。
また、光センサ31、32は、複数の連結糸Yが配置されている範囲の全域にわたって、連結糸Yの配列方向(図1の上下方向)に移動可能となっており、発光素子から光を出射させつつ、光センサ31、32をその移動範囲の端から端まで移動させたときに、受光素子が光を受光する回数が、光センサ31、32と対向している糸Y21の数となる。
幅出し筬6は、スリット形成装置5の図中右側に配置されている。幅出し筬6は、幅出し筬4よりも細かい櫛歯状の部材であって、複数の連結糸Yを、幅出し筬4により配列された間隔よりも小さい、部分整経ビーム3に巻き取るときの糸間隔に配列する。
搬送機構7は、後述するように、糸Y21と糸Y22との結び目k2を整列させる際に、連結糸Yを搬送するための機構であって、2つの弾性ローラ16a、16bを有している。
弾性ローラ16aは、幅出し筬6の図中右側、つまり、糸経路におけるスリット形成装置5の下流側に配置されている。また、弾性ローラ16aは、表面を含む部分がポリウレタンなどの弾性材料によって形成されている(弾性部を有している)。ここで、弾性ローラ16aは、図示しないモータなどの駆動によって回転する駆動ローラである。
弾性ローラ16bは、表面を含む部分が弾性ローラ16aと同様の弾性材料によって形成された(弾性部を有している)ローラであり、弾性ローラ16aの上方に配置されている。また、弾性ローラ16bは、弾性ローラ16aに接触しており、弾性ローラ16aが回転したときに、弾性ローラ16aとの摩擦力によって従動回転する。
カッタ8は、弾性ローラ16a、16bの図中右側(糸経路の下流側)に配置されており、後述するように、連結糸Yの切断を行う。
スプライサユニット9は、カッタ8の図中右側に配置されている。スプライサユニット9には、連結糸Yを吸引するための吸引口9aと、2つ接続口9b、9cとを備えている。接続口9bには、バルブ41を介して吸引ポンプ42が接続されている。これにより、バルブ41を開くと、後述するように、カッタ8により切断された連結糸Yの糸端が、吸引口9aからスプライサユニット9内に吸引され、これにより、連結糸Yの糸端がスプライサユニット9に捕捉される。
接続口9cには、バルブ43を介して流体供給源44が接続されており、バルブ43を開くと、流体供給源44から例えば空気などの流体がスプサイサユニット9に流れ込み、この流体の流れにより、スプライサユニット9内の複数の連結糸Yに交絡が付与されて、後述するように、カッタ8により切断された連結糸Yの糸端がつなぎあわされる。
すなわち、スプライサユニット9は、後述するように、カッタ8により切断された連結糸Yの糸端を捕捉する本発明に係る糸端捕捉装置と、カッタ8により切断された連結糸Yをつなぎ合わせるの本発明に係る糸継装置とが一体となったものである。なお、本発明は、スプライサユニット9のように、糸端捕捉装置と糸継装置とが一体となっていることには限られず、これらが別々に設けられていてもよい。
サクションノズル10(糸端捕捉装置)は、連結糸Yを吸引するための吸引口10aと、接続口10bとを備えている。吸引口10aは、サクションノズル10の先端部に設けられている。接続口10bには、バルブ45を介して吸引ポンプ46が接続されており、バルブ45を開くと、後述するように、カッタ8により切断された連結糸Yの糸端が、吸引口10aからサクションノズル10内に吸引され、これにより、連結糸Yの糸端がサクションノズル10に捕捉される。なお、本実施の形態では、便宜上、吸引ポンプ46を吸引ポンプ42とは別のものとしているが、吸引ポンプ42と吸引ポンプ46とは、共通の1つの吸引ポンプであってもよい。
また、サクションノズル10は、軸33aを中心として揺動自在に支持されているとともに、図示しないモータなどによって揺動されるアーム33の先端に取り付けられている。そして、アーム33が揺動することで、図2において実線で示すように、吸引口10aがスプライサユニット9の吸引口9aと対向する位置と、図2において一点鎖線で示すように、吸引口10aが弾性ローラ16a、16bのすぐ右側にくる位置との間で移動可能となっている。なお、上述のカッタ8は、図1の上下方向に移動可能となっており、サクションノズル10が移動する際には、サクションノズル10と接触しない位置に退避させることができるようになっている。
また、上述の弾性ローラ16a、16b、カッタ8、スプライサユニット9、サクションノズル10は、台車34上に配置されており、これらは、台車34とともに移動可能となっている。これにより、弾性ローラ16a、16b、カッタ8、スプライサユニット9、サクションノズル10は、複数の整経機1において共用可能となっている。
搬送ローラ11は、スプライサユニット9の図中右側に配置されている。搬送ローラ11は、図示しないモータなどの駆動によって回転する駆動ローラであり、連結糸Yを図中右側に向けて搬送する。
次に、整経機1を制御する制御装置50について説明する。図5は、制御装置50の機能ブロック図である。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなり、これらが、図5に示すように、結び目k2の整列を行う際に動作する、シリンダ制御部51、弾性ローラ制御部52、カッタ制御部53、スプライサユニット制御部54、サクションノズル制御部55、アーム制御部56及び整列完了検出部57、並びに、部分整経ビーム3への連結糸Yの巻取時に動作する、搬送ローラ制御部58及びビーム制御部59などとして機能する。
シリンダ制御部51は、昇降ローラ23を昇降させる際の流体シリンダ24の制御を行う。弾性ローラ制御部52は、弾性ローラ16a(具体的には、弾性ローラ16aを駆動するモータなど)の制御を行う。カッタ制御部53は、カッタ8の連結糸Yの切断動作や移動の制御を行う。
スプライサユニット制御部54は、バルブ41、43の開閉の制御を行う。サクションノズル制御部55は、バルブ45の開閉の制御を行う。アーム制御部56は、アーム(具体的には、アームを駆動するモータなど)の制御を行う。整列完了検出部57は、後述するように、光センサ31、32の検出結果から、結び目k2の整列が完了したことを検出する。なお、本実施の形態では、光センサ31、32と整列完了検出部57とをあわせたものが、本発明に係る整列完了検出装置に相当する。
搬送ローラ制御部58は、搬送ローラ11(具体的には、搬送ローラ11を駆動するためのモータなど)の制御を行う。ビーム制御部59は、部分整経ビーム3(具体的には、部分整経ビーム3を駆動するモータなど)の制御を行う。
次に、整経機1において、部分整経ビーム3に連結糸Yを巻き取る手順について説明する。図6は、整経機1において最初のバンドBを形成する前における、結び目k2の整列の手順を示す工程図である。図7は結び目k2の整列時の連結糸Yの様子を示す図である。なお、図面を見やすくするため、図7では連結糸Yにハッチングを付している。
整経機1において、結び目k2を整列した上で部分整経ビーム3に連結糸Yを巻き取るためには、まず、図6(a)に示すように、流体シリンダ24によって昇降ローラ23を図4(a)に示す上記離隔位置まで上昇させた状態で、クリール2に支持された複数のパッケージPから引き出された連結糸Yを、幅出し筬4に掛け、固定ローラ22と昇降ローラ23との間を挿通させ、さらに、幅出し筬6に掛けた上で、弾性ローラ16a、16bの間に挟む。
次に、図6(b)に示すように、流体シリンダ24によって昇降ローラ23を図4(b)に示す上記スリット形成位置まで降下させることによって、複数の連結糸Yをスリット26に挿通された状態とし、この状態で弾性ローラ16aを回転させる。このとき、スリット26の幅W2は、連結糸Yの太さWyよりも大きく、連結糸Yの結び目kのこぶaの大きさWaよりも小さいため、図7(a)に示すように、複数の連結糸Yは、結び目k2のこぶa2がスリット26にくるまでは、図中右方(糸経路の下流側)に搬送される。
そして、図7(b)に示すように、結び目k2のこぶa2がスリットにくると、こぶa2がスリット26に引っかかりそれ以上は搬送されない。このとき、上述したように、連結糸Yを搬送する弾性ローラ16a、16bの表面を含む部分がポリウレタンなどの弾性材料により構成されているため、連結糸Yを挟む弾性ローラ16a、16bは連結糸Yに押されて弾性変形する。このため、弾性ローラ16a、16bによる連結糸Yのニップ力は、剛体である金属製の一対のローラによって連結糸Yをニップした場合ほど大きなものとはならない。したがって、こぶaがスリット26に引っかかった後、さらに弾性ローラ16a、16bを回転させても、弾性ローラ16a、16bが連結糸Yを引っ張る力は弱く、連結糸Yが弾性ローラ16a、16bの表面上をすべることとなり、連結糸Yが切れてしまうことがない。
さらに、このとき、弾性ローラ16a、16bが、こぶaがスリット26に引っかかった連結糸Yを引っ張る力は弱いが、巻取糸Y1が弾性ローラ16a、16bにより引っ張られるとすると、巻取糸Y1が強度の低い糸である場合には、連結糸Yが切れてしまう虞がある。しかしながら、本実施の形態では、パッケージPの連結糸Yが引き出される側の端には強度の高いフィラメント糸である高強度糸Y2が配置されており、高強度糸Y2が弾性ローラ16a、16bに引っ張られることとなるため、連結糸Yが切れてしまうのを防止することができる。
また、このような連結糸Yの搬送を続けていくと、スリット26に引っかかるこぶaの数が徐々に増加していくことになるが、スリット26に引っかかるこぶa2の数が多くなると、こぶa2が昇降ローラ23を押し上げようとする力の大きさが大きくなる。しかしながら、本実施の形態では、昇降ローラ23を昇降させる流体シリンダ24により昇降ローラ23が下方に押し付けられている(スリット形成位置に保持されている)ため、こぶa2が昇降ローラ23を押し上げようとする力によって実際に昇降ローラ23が上方に移動してしまうことがない。したがって、スリット26に引っかかったこぶaが、こぶa2に押し上げられることによって幅が広くなったスリット26を抜けて下流側まで搬送されてしまうことがない。
そして、全ての連結糸Yが、結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかる位置まで搬送されることによって、連結糸Yの整列が完了したときに弾性ローラ16aの回転を停止させる。
具体的には、結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかるまでは、スリット26の両側には高強度糸Y2のうち糸Y21がくるため、光センサ31、32の両方により、糸Y21が検出される。これに対して、結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかった状態では、スリット26の右側に糸Y21がくるとともに左側に糸Y22がくるため、光センサ31によって糸Y21が検出されるが、光センサ32によっては糸Y21が検出されない。
そこで、整列完了整列部57は、光センサ31によって引き出された連結糸Yと同じ本数の糸Y21が検出され、且つ、光センサ32によって糸Y22が一本も検出されなくなった状態となったときに、全ての連結糸Yについて、結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかったこと、すなわち、結び目k2の整列が完了したことを検出する。そして、このとき、弾性ローラ16aの回転が停止される。
そして、上述のようにして結び目k2を整列させた後、流体シリンダ24により昇降ローラ23を再度図4(a)に示す上記離隔位置まで上昇させた上で、複数の連結糸Yを搬送ローラ11及び部分整経ビーム3に巻き掛け、この状態で、搬送ローラ11及び部分整経ビーム3を回転させることにより、部分整経ビーム3に複数の連結糸Yを巻き取ってバンドBを形成する。このとき、上述したように結び目k2を整列した上で、連結糸Yを部分整経ビーム3に巻き取っているため、バンドBを構成する連結糸Yは、その巻き始めの位置が整列された状態で部分整経ビーム3に巻き取られる。
なお、この状態では、固定ローラ22と昇降ローラ23との間の隙間W1が、結び目kのこぶaの大きさWaよりも大きくなっているため、糸Y21と糸Y22との結び目k3のこぶa3、巻取糸Y1と次の糸Y21との結び目k1のこぶa1、及び、巻取糸Y1が複数の糸が結び合わされている場合の糸の結び目のこぶ(図示省略)は、引っかかることなく、固定ローラ22と昇降ローラ23との間を通過する。
また、このとき、部分整経ビーム3の一端部には、部分整経ビーム3の端に近い部分ほどその径が大きくなったテーパ部3aが設けられており、部分整経ビーム3に巻き取られた複数の連結糸Yは、このテーパ部3aの表面に沿った方向に重なっていく。
次に、バンドBの形成が完了した後、次のバンドBを形成するまでの動作について説明する。図8はこの手順を示す工程図である。
ここで、高強度糸Y2は、バンドBの形成が完了した状態では、部分整経ビーム3に巻き取られた巻取糸Y1と糸Y21との結び目k1が、スリット形成装置5よりも図8の右側にくるとともに、糸Y21と糸Y22との結び目k2が、スリット形成装置5よりも図8の左側にきている。
整経機1においては、バンドBの形成が完了した後、まず、図8(a)に示すように、カッタ8により連結糸Yを切断する。続いて、図8(b)に示すように、カッタ8を退避させた上で、アーム33を揺動させることにより、サクションノズル10を吸引口10aが弾性ローラ16a、16bの右側にくるまで移動させ、この状態で、バルブ41、45を開く。これによって、上流側の連結糸Yの糸端が吸引口10aから吸引されてサクションノズル10に捕捉されるとともに、下流側の連結糸Yの糸端が吸引口9aから吸引されてスプライサユニット9に捕捉される。また、これとほぼ同時に、流体シリンダ24により昇降ローラ23を図4(b)に示す上記スリット形成位置まで降下させる。
次に、弾性ローラ16aを回転させる。これにより、上述したのと同様、複数の連結糸Yが、結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかるまで搬送されて、結び目k2が整列される。
また、この結び目k2の整列時においても、こぶa2がスリット26に引っかかった状態で、高強度糸Y2が弾性ローラ16a、16bに引っ張られるため、上述したのと同様、結び目の整列時に連結糸Yが切れてしまうのを防止することができる。
その後、流体シリンダ24により昇降ローラ23を図4(a)に示す上記離隔位置まで上昇させてから、アーム33を揺動させて、上流側の連結糸Yの糸端を捕捉しているサクションノズル10を、吸引口10aがスプライサユニット9の吸引口9aと対向する位置に戻した上で、バルブ45を閉じ、サクションノズル10による連結糸Yの糸端の捕捉を解除する。
すると、サクションノズル10に捕捉されていた上流側の連結糸Yの糸端は、吸引口9aから吸引され、下流側の連結糸Yとともに、スプライサユニット9に捕捉される。続いて、バルブ43を開いて、スプライサユニット9に流体を流れ込ませ、この流体の流れにより、スプライサユニット9の内部の連結糸Yに交絡を付与して、結び目k2が整列された上流側の連結糸Yの糸端と、下流側の連結糸Yの糸端とをまとめてつなぎ合わせる。
そして、上流側と下流側の糸端をつなぎ合わせたの後、バルブ41を閉じることによって、スプライサユニット9による連結糸Yの捕捉を解除し、搬送ローラ11、及び、位置をずらした部分整経ビーム3を回転させることにより、部分整経ビーム3の前回形成したバンドBに隣接する位置に複数の糸を巻き取って次のバンドBを形成する。
以下、同様の動作を繰り返して、部分整経ビーム3に複数のバンドBを順次形成していく。ここで、部分整経ビーム3に連結糸Yを巻き取ってバンドを形成していく場合、部分整経ビーム3に巻き取られる連結糸Yの長さはかなり長いものとなる。そのため、上述したように、最初のバンドBを形成する前に、複数の連結糸Yの巻き始めの位置を揃えたとしても、巻き始めの位置から離れた部分ほど、複数の連結糸Yの間での位置ずれ量が大きくなる。したがって、バンドBの形成が終わる毎に上述したような結び目k2の整列を行うことなく複数のバンドBを形成してしまうと、後から形成されたバンドBほど、複数の連結糸Yの間に大きな位置ずれが生じてしまう。
しかしながら、本実施の形態では、バンドBの形成後、次のバンドBの形成前に、結び目k2の整列を行っているため、各バンドBにおいて巻き始めの位置が揃えられ、複数の連結糸Yの間に大きな位置ずれが生じてしまうのを防止することができる。
さらに、本実施の形態では、上述したように、結び目k2を整列させる際に、複数の連結糸Yを、スリット26に挿通させるとともに弾性ローラ16a、16bに挟み、この状態で弾性ローラ16aを回転させるだけで、結び目k2を自動的に整列させることができる。したがって、結び目k2の整列を行う際に、複数の連結糸Yをスリット26に挿通した状態で、これら複数の連結糸Yを1本ずつ、こぶa2がスリット26に引っかかるまで引っぱるといった煩雑な作業を行う必要がない。
また、装置の小型化の観点からは、クリール2に設けるパッケージPの数を少なくすることが望ましいが、パッケージPの数を少なくした場合には、1つのバンドBを形成する連結糸Yの本数が少なくなるため、部分整経ビーム3に形成するバンドBの数が多くなり、その結果、結び目k2の整列を行う回数が増加する。しかしながら、本実施の形態では、上述したように、結び目k2の整列を自動的に行うことができるので、クリール2に設けるパッケージPの数を少なくすることでバンドBの数が多くなり、結び目k2の整列を行う回数が多くなった場合でも、作業者の負担が大きくなることはない。
また、上述のように、弾性ローラ16a、16b、カッタ8、スプライサユニット9及びサクションノズル10は、結び目k2の整列を行うときにのみ使用されるが、上述したように、これらは台車34上に配置されており、他の整経機1と共用可能となっているため、整経機1において部分整経ビーム3に連結糸Yを巻き取っている間に、これらを用いて、別の整経機1において結び目k2の整列を行うことができる。
図9は、複数のバンドBが形成された部分整経ビーム3を示す図である。ただし、図面をわかりやすくするため、図9では、連結糸Y及びバンドBの数を実際よりも少なくしているとともに、連結糸Yの間隔も広くしている。また、前述したように、各バンドBを形成する際、部分整経ビーム3に巻き取られた連結糸Yは、テーパ部3aの表面に沿った方向に重なっていくが、図9では、各バンドBにおいて連結糸Yが部分整経ビーム3の径方向に重なっていくとして図示している。
複数のバンドBのが形成が完了した部分整経ビーム3においては、図9(a)に示すように、連結糸Yのうち、各バンドBの間に位置する部分(図9(a)において太線で示した部分B1)を切断するとともに、図9(b)に示すように、切断した部分の糸端を引き出すことによって、各バンドBを構成する複数の連結糸Yを引き出す。そして、図9(c)に示すように、引き出した連結糸Yを製織ビーム60に巻きつける。このとき、連結糸Yのうち、各バンドBの間にあるのは、高強度糸Y2であるため、連結糸Yを引き出した後、製織ビーム60に巻き掛ける前に、製織ビーム60に巻き取る必要のない高強度糸Y2を切断して除去する。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
本実施の形態では、スリット形成装置の左右両側に光センサ31、32を設けるとともに、高強度糸Y2を糸Y21と糸Y22とが結び合わされてつながれたものとし、光センサ31、32によって検出された糸Y21の数によって、結び目k2の整列が完了したことを検出していたが、これには限られず、例えば、こぶa2が通過したことを検出するセンサなど、他の装置を用いて結び目k2の整列が完了したことを検出してもよい。
また、この場合は、高強度糸Y2は一本の連続した糸であってもよく、高強度糸Y2が一本の連続した糸である場合には、高強度糸Y2とこの高強度糸Y2とにつながれた巻取糸Y1との結び目k2のこぶa2がスリット26に引っかかることとなる。
さらには、結び目k2の整列が完了したことを検出するための整列完了検出装置は設けられていなくてもよい。この場合には、例えば、作業者がスリット26近傍の連結糸Yを目視で確認し、全ての連結糸Yの搬送が止まった時点で、弾性ローラ16aを停止させ、流体シリンダ24を動作させて昇降ローラ23を上昇させるなどすればよい。
また、本実施の形態では、連結糸Yにおいて、1回の巻取で部分整経ビーム3に巻き取られる巻取糸Y1同士が、高強度糸Y2を介してつながれていたが、例えば、巻取糸Y1が強度の高いものである場合などには、高強度糸Y2が配置されておらず、巻取糸Y1同士が直接つながれていてもよい。ただし、この場合には、バンドBの形成が完了した時点で、当該バンドBを形成する連結糸Yと、次のバンドBを形成する連結糸Yとの結び目kがスリット形成装置5よりも糸経路の上流側にくるように、各巻取糸YをバンドBの経糸の長さよりも長くしておく必要がある。
また、本実施の形態では、弾性ローラ16a、16b、カッタ8、スプライサユニット9及びサクションノズル10が台車34上に配置されており、台車34を移動させることによって、これらを複数の整経機1で共用することができるようになっていたが、これらは、整経機1に固定されたものであってもよい。
さらには、カッタ8、スプライサユニット9及びサクションノズル10は、設けられていなくてもよい。この場合には、例えば、バンドBの形成が完了した後、次のバンドBを形成する前に結び目k2の整列を行う際の、連結糸Yの切断、連結糸Yの捕捉、切断した連結糸Yの糸継を、作業者が手作業で行うなどすればよい。
また、本実施の形態では、昇降ローラ23の両端部にカラー25が設けられることで、昇降ローラ23がその両端部において径が大きくなっていたが、固定ローラ22の両端部にカラー25が設けられていてもよいし、固定ローラ22及び昇降ローラ23の両方にカラー25が設けられていてもよい。
さらには、固定ローラ22及び昇降ローラ23のいずれにもカラー25が設けられておらず、流体シリンダ24により、昇降ローラ23を、固定ローラ22との離隔距離がスリット26の幅W2となる位置まで移動させてもよい。ただし、この場合には、本実施の形態よりも高い精度で流体シリンダ24を制御する必要がある。
また、本実施の形態では、流体シリンダ24によって昇降ローラ23が昇降されるようになっていたが、昇降ローラ23を昇降させるための機構は、モータやギアなどによって構成されたものなど、他の機構であってもよい。さらには、昇降ローラ23を昇降させるための機構(移動装置)が設けられておらず、作業者が手動で昇降ローラ23の昇降を行ってもよい。
また、本実施の形態では、フレーム21に固定された固定ローラ22と、昇降可能な昇降ローラ23とによりスリット26が形成されていたが、ローラ以外の固定部材と可動部材とによってスリット26が形成されていてもよい。
また、スリット26を形成するための互いに対向する2つの部材は、一方のみが移動可能に構成されているものには限られず、両方が移動可能に構成されたものであってもよい。
さらには、上述したような互いに対向する2つの部材とは異なる構成によって、連結糸Yの太さよりも広く、連結糸Yの結び目kのこぶaの大きさよりも狭いスリットが形成されるようになっていてもよい。そして、この場合には、本実施の形態のような全ての連結糸Yがまとめて挿通される1つのスリットが形成されていることには限れらず、複数の連結糸Yが個別に挿通される複数のスリットが形成されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、2つの弾性ローラ16a、16bによって連結糸Yを挟んで、連結糸Yを搬送したが、これには限られず、連結糸Yを弾性部により挟んで搬送する他の構成であってもよい。
例えば、一変形例(変形例1)では、図10(a)に示すように、上側に配置された弾性ローラ16bの代わりに、2つのローラ71a、72aと、これら2つのローラ71a、72aに巻き掛けられたポリウレタンなどからなる弾性ベルト73aとによって構成されるベルト機構70aが配置されており、弾性ローラ16aと弾性ベルト73aとの間に連結糸Yを挟んで搬送している。なお、この場合には、弾性ローラ16aとベルト機構70aとをあわせたものが、本発明に係る搬送機構に相当し、弾性ローラ16aの表面部分と弾性ベルト73aとが本発明に係る一対の弾性部に相当する。
また、別の一変形例(変形例2)では、図10(b)に示すように、変形例1において、さらに、弾性ローラ16aの代わりにベルト機構70aと同様のベルト機構70bが配置されている。なお、この場合には、2つのベルト機構70a、70bをあわせたものが、本発明に係る搬送機構に相当し、弾性ベルト73a、73bが本発明に係る一対の弾性部に相当する。
また、別の一変形例(変形例3)では、図11に示すように、弾性ローラ16a、16bの代わりに、搬送機構80が設けられている。搬送機構80は、糸経路を挟んで上下に配置された2つの対向部材81a、81bを有している。対向部材81a、81bは、それぞれ、側方から見て略矩形のレール82a、82bに沿って移動可能となっている。また、対向部材81aの下面、及び、対向部材81bの上面には、それぞれ、ポリウレタンなどの弾性材料により構成された弾性部83a、83bが設けられている。
そして、この場合には、図11(a)に示すように、対向部材81a、81bの弾性部83a、83bにより連結糸Yを挟んだ状態にしてから、図11(b)に示すように、対向部材81a、81bを図中右方に移動させる。これにより、2つの弾性部83a、83bに挟まれた連結糸Yが図中右方に搬送される。その後、対向部材81aを上方に、対向部材81bを下方にそれぞれ移動させることにより、2つの弾性部83a、83bを連結糸Yから離し、次に、図11(d)に示すように、対向部材81a、81bを図11の左方に移動させ、続いて、対向部材81aを下方、対向部材81bを上方にそれぞれ移動させることにより、再度、図11(a)に示すように、2つの弾性部によって連結糸Yを挟んだ状態とする。以下、上述した図11(a)〜(d)に示す対向部材81a、81bの動作を繰り返すことによって、連結糸Yを搬送する。
また、以上では、部分整経ビーム3に複数のバンドBを形成する部分整経機に本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、例えば、製織ビームを形成する本数と同じ本数の連結糸Yを、一度に荒巻ビームに巻き取る、いわゆる通常整経を行う整経機に本発明を適用することも可能である。