JP5434199B2 - 抗酸菌遺伝子の増幅方法 - Google Patents

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Description

本発明は喀痰のNALC−NaOH処理済液をそのまま核酸増幅反応に持ち込み、不純物の混じったサンプルから抗酸菌遺伝子を増幅するための遺伝子増幅方法に関する。
臨床上重要とされる抗酸菌の同定には、培養検査、塗沫検査および遺伝子検査が行われている。しかしながら主な検体となる喀痰は粘性が非常に高くこのままでは検査に用いることはできない。
そこでこれらの検査の前処理には古くよりN−アセチルL−システイン水酸化ナトリウム(NALC−NaOH)法(非特許文献1)が利用されている。
NALC−NaOH法は抗酸菌が酸やアルカリに強い性質を利用し、喀痰に含まれる抗酸菌以外の細菌を死滅させ、かつ後工程を阻害する喀痰成分を除去する役割を担う。喀痰は個人差が大きく、抗酸菌を生きたまま前処理を行う必要があることから現在でも喀痰の前処理に利用されている(非特許文献2)。
また、抗酸菌は、ミコール酸を含む脂質層を有した強固な細胞壁を持つことを特徴とするが、この細胞壁を破壊しないと検査に用いることはできない。
従来から用いられているNALC−NaOH法は、生菌のまま処理する方法であることから抗酸菌の破砕をする方法ではなかった。抗酸菌はこの脂質層の細胞壁を持つため、溶菌を妨げる一つの原因となっている。
遺伝子検査の標的となる物質は抗酸菌細胞内に存在する核酸である。細菌の遺伝子検査前処理方法で重要なことは、細菌の細胞を破壊して核酸を抽出することと不純物を取り除くことである。抗酸菌の遺伝子を検出する場合、強固な細胞壁を持つため大腸菌などの一般細菌の遺伝子検査と比較して、特に核酸の抽出は難しい。
また、NALC−NaOH法は抗酸菌の塗沫検査および培養検査のための方法で遺伝子検査に用いた場合、処理後に残存している不純物によって後工程の反応が阻害されていた。そこで従来の方法ではNALC−NaOH法で処理した溶液を抗酸菌遺伝子検査のために溶菌する方法が開示されている。
特許文献1には加熱による抗酸菌の溶菌方法が開示されている。溶菌剤など溶菌のための条件を用いることなしに、60℃以上100℃以下の加熱のみによって十分な核酸を遊離することが可能であるとしている。
特許文献2には非イオン界面活性剤を含み、かつ金属キレート剤を含まない溶液と抗酸菌を含む懸濁液を混合して加熱する第1の方法が開示されている。遺伝子を増幅検出するための前処理方法で、この溶菌方法を用いると溶菌処理を行った溶液をそのまま増幅検出工程に用いることができる。
特許文献2にはもうひとつの方法(第2)が開示されている。抗酸菌の溶菌にリパーゼ含む溶液を使用し脂質分解処理を行う工程、非イオン界面活性剤および金属キレート剤を含む溶液中で加熱して抗酸菌を溶菌する工程からなる方法である。第2の方法では、抗酸菌の細胞壁が脂質を含んでいることに着目し、脂質分解工程を第1の方法に加えることによって、抗酸菌の細胞壁を脆弱化し、加熱工程によってさらなる溶菌効率を得ている。
特許文献3には抗酸菌遺伝子検査におけるNALC−NaOH法の問題点が指摘されている。特に、沈殿した抗酸菌菌体を懸濁するリン酸緩衝液(PBS)がPCRを阻害する原因であることが述べられている。特許文献3ではこの問題点をPBS懸濁なしに抗酸菌を溶菌処理に供することで解決している。
特開平6−319527 特許第3910198号 特開2004−344108
AmericanSociety for Microbiology:Section 3. Mycobacteriology.Clinical MicorobiologyProcedures Handbook. ASM,Washington, D.C.,1994. 結核菌検査指針2007 (編者 日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会、発行元 財団法人結核予防会、第4章分離培養法、p33〜p37)
臨床検査において抗酸菌の遺伝子検査は手離れが悪く、喀痰をNALC−NaOH法で処理した後も溶菌処理や核酸精製処理を実施していた。溶菌や核酸精製処理を正確に行うためには高度な技術が必要であった。このような高度で専門的な技術は、一般の検査室レベルでは容易に習得できるものではなかった。
非イオン界面活性剤を含む溶液を用いた加熱方法では、溶菌効率は加熱のみに比べて向上した。しかしながら、界面活性剤やリパーゼなどの酵素を用いているため、増幅反応液中への持ち込み量が増加すると反応阻害が起こる。よって増幅反応液中への持ちこみ液量が限定されて、増幅対象物である核酸の量が少ない状態で使用せざるを得なかった。
また、リパーゼなどの酵素を細胞壁の脂質溶解に用いる場合酵素処理時間が必要となり、遺伝子検査の前処理方法としての時間が20分以上かかった。
NALC−NaOH法処理後、PBS溶液で懸濁することなしに沈殿を滅菌水へ懸濁する方法では、抗酸菌の溶菌が不十分である。また、溶菌液を追加で加えて溶菌処理した場合は、菌体が希釈されるため検出感度の低下を招くという問題点があった。
研究用途で使用されている核酸精製方法では、操作が煩雑であり、専門的な知識を必要とするため臨床の場にそぐわない方法であった。
抗酸菌遺伝子検査における前処理方法として上記のいずれの方法においても、操作が煩雑であったり、時間がかかったりして、簡便性と迅速性を満たすものではなかった。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、NALC−NaOH法で処理した検体を用いて抗酸菌を溶菌することなしに核酸増幅試薬と混合することで核酸増幅反応が可能な方法を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする抗酸菌遺伝子の増幅方法。
(1)抗酸菌を含む検体をNALC−NaOH法で処理する工程。
(2)(1)の工程で処理された試料を水または緩衝液で懸濁し、試料溶液とする工程。
(3)(2)の工程で得られた試料溶液を核酸増幅試薬と混合し増幅を開始する工程。
[項2]
抗酸菌を含む検体が喀痰である項1に記載の抗酸菌遺伝子の増幅方法。
[項3]
核酸増幅反応がPCRである項1または2に記載の抗酸菌遺伝子の増幅方法。
[項4]
PCRに用いるDNAポリメラーゼが、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1つ以上からなる、項1〜3のいずれかに記載の抗酸菌遺伝子の増幅方法。
(1)Tbr,Tfl,Tru,Tth,T1i,Tac,Tne,Tma,Tih、Tfi,Pfu,Pfutubo,Pyrobest(登録商標),Pwo,KOD,Bst,Sac,Sso,Poc,Pab,Mth,Pho,ES4,VENTおよびDEEPVENTからなる群。
(2)(1)で示される群のDNAポリメラーゼの変異体であり、かつ、DNAポリメラーゼ活性を有する変異体。
本発明によれば、迅速かつ簡便な操作で抗酸菌の核酸を増幅することが可能となる。具体的には、複雑で工数の多い操作を行っていた抗酸菌の溶菌方法を行うことなしに、NALC−NaOH法処理後の試料から直接核酸増幅が達成可能となった。従来行っていた抗酸菌の溶菌工程と核酸の精製工程が不要となり、より簡便な遺伝子検査の前処理が実現できた。
BCG菌懸濁液を用いて結核菌遺伝子を検出した結果。 結核菌陽性検体のNALC−NaOH処理済試料を用いて結核菌遺伝子を検出した結果。 結核菌陰性検体のNALC−NaOH処理済試料を用いて結核菌遺伝子を検出した結果。 結核菌陰性検体のNALC−NaOH処理済試料にBCG菌懸濁液を混合した試料を用いて結核菌遺伝子を検出した結果。
本発明の抗酸菌遺伝子の増幅方法
本発明の実施形態の一つは、以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする抗酸菌遺伝子の増幅方法である。
(1)抗酸菌を含む検体をNALC−NaOH法で処理する工程。
(2)(1)の工程で処理された試料を水または緩衝液で懸濁し、試料溶液とする工程。
(3)(2)の工程で得られた試料溶液を核酸増幅試薬と混合し増幅を開始する工程。
本発明の特徴は、上記(1)〜(3)の工程の間に、他の処理をいっさい行わないことである。他の処理とは、NALC−NaOH法で処理したときの残存物や核酸増幅方法阻害物質を除去する工程や抗酸菌の強固な細胞壁を破壊して抗酸菌遺伝子を取り出す溶菌工程であり、増幅効率を上げるための前処理工程を示す。(1)より前の工程では、喀痰の粘性を下げる工程を含んでもよく、(3)より後の工程では目的としている増幅産物を検出する工程を含んでも良い。
本発明で対象となる抗酸菌
本発明で対象となる抗酸菌とは、マイコバクテリウム属細菌の総称であり、大きくは結核菌群と非結核性抗酸菌とに分けられる。
抗酸菌は、結核菌群に分類されているヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の他にも、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、アフリカ型結核菌(Mycobacterium africanum)、ネズミ型結核菌(Mycobacterium microti)、マイコバクテリウム・カネッティ(Mycobacterium canettii)、マイコバクテリウム・カプレ(Mycobacterium caprae)、アシカ型結核菌(Mycobacterium pinnipedii)などが挙げられるが、特に限定されない。
また、非結核性抗酸菌は様々な種が挙げられ、特にヒトに病原性を示すトリ型結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)が対象である。ただしこれらに限定されるものではない。
抗酸菌を含む検体としては、喀痰、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液、胃液、血液、尿、便、体腔液、組織など様々な検体が例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の増幅方法の特徴となる工程
本発明では、抗酸菌を含む検体を、まずNALC−NaOH法で処理する。
NALC−NaOH法とは、一般的に行われている喀痰の処理方法である。具体的には粘性溶解剤としてNALCを加えて喀痰の粘性物質の消化を促進し、低濃度の水酸化ナトリウムにより抗酸菌以外の汚染菌を死滅除去し、緩衝液で希釈した後、遠心分離を行い、沈さを緩衝液で懸濁して培地へ接種する方法である。抗酸菌の培養検査や塗沫検査に用いるための喀痰の前処理法である。
本発明のNALC−NaOH法は上述の原理を利用した方法を示し、さらには集菌剤を追加した改良されたNALC−NaOH法などの一般的方法と同様の効果を持つ変法も含まれる。
抗酸菌を含む未処理の検体をNALC−NaOH法で処理する前に、スプタザイム(登録商標)、プレソルブ(登録商標)などのタンパク分解酵素セミアルカリプロテアーゼ(SAP)処理を行っても良い。SAP処理は、喀痰を溶解・均等化し、NALC−NaOH溶液を効率よく作用させ、培地の雑菌汚染の低減を図るために用いられる。
本発明では、従来行われていたNALC−NaOH法以後の前処理操作を行わず、NALC−NaOH法で処理された試料を、水または緩衝液で懸濁し、試料溶液として増幅工程に供する。
NALC−NaOH法で処理された試料を、例えばリン酸緩衝液(PBS)やEDTAなどの金属キレート剤を含む緩衝液などで懸濁すると増幅工程を阻害するため、試料は水または増幅阻害を起こさない緩衝液で懸濁することが好ましい。緩衝液としては特に限定されるものではないが、トリスやヘペスなどのグッドバッファーおよび、リン酸緩衝液などが用いられるが、具体的には、10〜200mMの各種バッファー(pH7.5〜9(25℃))が例示できる。好ましくはトリス緩衝液である。好ましい緩衝pH範囲は7〜9である。
本発明で用いる増幅方法
増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。
例えば、PCR、NASBA(Nucleic acid sequence−basedamplification method;Nature 第350巻、第91頁、1991年参照)、LCR(国際公開89/12696号、特開平2−2934号参照)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic Acids Res. 第20巻、第1691頁、1992年参照)、RCA(国際公開90/1069号参照)、TMA(Transcription mediated amplification method;J. Clin. Microbiol. 第31巻、第3270頁、1993年参照)、LAMP(Loop−mediated isothermal amplification method:J. Clin Microbiol. 第42巻:第1956頁、2004年参照)、ICAN(isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids:Kekkaku. 第78巻、第533頁、2003年参照)などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくはPCRなどの温度変化を利用して増幅する方法が良い。
増幅方法としてPCR法を用いる場合、用いるDNAポリメラーゼは特に限定されるものではないが、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1つ以上からなるものが例示される。
(1)Tbr,Tfl,Tru,Tth,T1i,Tac,Tne,Tma,Tih、Tfi,Pfu,Pfutubo,Pyrobest(登録商標),Pwo,KOD,Bst,Sac,Sso,Poc,Pab,Mth,Pho,ES4,VENTおよびDEEPVENTからなる群。
(2)(1)で示される群のDNAポリメラーゼの変異体であり、かつ、DNAポリメラーゼ活性を有する変異体。
なかでも、DNAポリメラーゼとして「伸長速度」が速いDNAポリメラーゼを用いるPCR法が好ましい。DNAポリメラーゼの「増幅効率」がよく、「伸長速度」が速い特徴は、少量の核酸から増幅反応を行うことを可能にする。特に限定するわけではないが伸長速度の遅いTaqポリメラーゼでは、短時間で少量の核酸を増幅させることは難しい。DNAポリメラーゼの「伸長速度」は、100塩基/秒以上であることが好ましい。
また至適緩衝液が核酸を含む臨床検体残存物からの検出を可能にする。例えば、マグネシウムイオン濃度の許容幅が広いことは臨床検体からの検出に有利に働く。臨床検体に含まれる金属キレート作用を持つ物質のため、マグネシウムイオンキレート化されて不足するとDNAポリメラーゼの増幅反応は起こらない。マグネシウムイオンの濃度は特に限定されないが、1mM〜8mMが好ましく、より好ましくは2mM〜8mMである。さらに好ましくは3mM〜6mMである。
その他、至適緩衝液中に反応に影響を及ぼさない範囲でアミノ酸またはタンパク質、糖類、還元剤多価アルコール、ジメチルスルホキシドなどを配してもよい。アミノ酸又はタンパク質としては、グルタミン酸ソーダ、アルブミン、スキムミルク等、糖としてはシュクロース、マルトース等、還元剤としてはグルタチオン、メルカプトエタノール等、多価アルコールとしてはグリセロール、ソルビトールなどが含まれていても良い。
至適緩衝液中に界面活性剤などが含まれていても良い。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤がよく、好ましくTritonX−100、Tween20、Nonidet P40などが例示される。界面活性剤は、反応段階、すなわち、ポリメラーゼ反応時に、0.0001〜1%になるように含まれていてもよく、好ましくは0.001〜0.1%がよい。
抗酸菌遺伝子を増幅させた後の検出する工程は特に限定されないが、電気泳動により適切な位置に目的の増幅産物を示すバンドを確認する方法、蛍光標識プローブと目的の増幅産物とのハイブリダイゼーションした時に蛍光値が変化することを検出する方法、SYBRGreen Iなどの二本鎖核酸にインターカレートする蛍光色素を用いて目的の増幅産物を検出する方法、目的の増幅産物が得られた場合に発色または発光させて検出する方法、TaqMan(登録商標)プローブ法を用いて目的の増幅産物を検出する方法などが挙げられる。特に増幅と検出が容器を開封することなしに可能な検出方法が好ましい。
〔BCG菌体からの直接増幅〕
(1)試料の調製
細菌は、Mycobacterium bovis BCG株(BCGと略す)を使用した。3%小川培地(日水製薬製)にて2週間35℃で培養後、抗酸菌培養の液体培地であるMycoBroth(極東製薬工業製)に接種し6日間37℃で培養した。培養後の液体培地は、分散性の高い菌液を得るため、5μmの親水性フィルターでろ過した後、濁度計でOD600を測定し、マクファーランド比濁法に従ってマクファーランド1の濃度に菌液を調整した。さらにマクファーランド1の菌液1.0mLを1.5mLのチューブに加え、遠心分離操作で菌体だけを沈殿させた。その後上清を取り除いて1.0mLの滅菌水で再懸濁させた。この操作は液体培地中に既に遊離している核酸を除去するために行った。さらに、BCGのゲノムDNAを得るために、フェノールクロロホルム法にてゲノムDNAを抽出した。
(2)材料の準備
調製したマクファーランド1濃度のBCG菌体懸濁液を滅菌水で1000倍希釈した溶液を準備した(試料1)。コントロールとして同じくBCG菌体懸濁液より抽出したゲノム溶液100コピーおよび滅菌水を用いた。
(3)PCRによる増幅および融解曲線解析による検出
試料1、100コピーのBCGゲノム溶液および滅菌水をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりPCR増幅および検出を行った。下記試薬・条件はBCG株を特異的に検出できるプライマーおよびプローブの組み合わせである。増幅産物とプローブがハイブリダイゼーションすることでプローブに標識された蛍光色素の蛍光が消光すること(QProbe法:)を検出原理としている。核酸増幅および検出にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、増幅反応後、融解曲線解析を実施した。融解曲線解析は蛍光標識プローブが標的核酸から解離する時の蛍光量の増加を検出している。図1〜4の縦軸は蛍光強度の一次導関数の逆符号の値(−dF/dt)、横軸は温度(℃)である。
(4)試薬組成
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1 250nM、
オリゴ2 1500nM、
オリゴ3(3’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
ジメチルスルホキシド 7.5%
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.3U、
試料またはコントロール溶液 3μL
(5)核酸増幅および検出条件
(PCR)
94℃・2分
98℃・0秒、60℃・5秒、50サイクル
(融解曲線解析)
94℃・1分、40℃・1分
0.5℃/秒で75℃まで温度上昇
(6)結果
図1は、菌体懸濁液を直接増幅検出用反応液に混合して検出した結果である。菌懸濁液を用いた場合でも、ゲノムDNA同様に抗酸菌ゲノムの増幅および検出が可能であった。抗酸菌については強固な細胞壁を持っているが、溶菌操作を行わなくともPCR反応中にBCGのゲノムDNAを取り出して増幅できることがわかった。
〔NALC−NaOH法処理済試料からの直接増幅〕
(1)試料の調製
喀痰は、あらかじめ培養検査で陽性陰性がわかっているヒト型結核菌陽性およびヒト型結核菌陰性の検体を用いて一般的なNALC−NaOH法に従って前処理を実施した。最終的に得られた沈殿物は滅菌水に懸濁した。
(2)材料の準備
ヒト型結核菌陽性検体のNALC−NaOH法処理済み溶液を試料2とした。ヒト型結核菌陰性検体のNALC−NaOH法処理済み試料を試料3とした。また、調製したマクファーランド1濃度のBCG菌体懸濁液を滅菌水で100倍希釈した溶液を準備した。BCG菌体100倍希釈液をヒト型結核菌陰性検体のNALC−NaOH法処理済み試料に10倍希釈して混合した液を試料4とした。コントロールとして同じくBCG菌体懸濁液より抽出したゲノム溶液100コピーおよび滅菌水を用いた。
(3)PCRによる増幅および融解曲線解析による検出
試料2〜4、100コピーのBCGゲノム溶液および滅菌水をそれぞれ実施例1に記載の試薬に添加し、実施例1と同様の条件にてPCR増幅および検出を行った。
(4)結果
図2〜図4は試料1〜3をコントロールとともに検出した結果である。図2および図4からNALC−NaOH法処理済み溶液を用いた場合でも、ゲノムDNA同様に抗酸菌ゲノムの増幅および検出が可能であった。NALC−NaOH法処理済み溶液には喀痰の残存物も残渣として残っているが、喀痰成分の影響を受けることなく標的遺伝子の増幅が可能であることがわかった。
本発明によれば、迅速かつ簡便な操作で抗酸菌の核酸を増幅することが可能となる。具体的には、複雑で工数の多い操作を行っていた抗酸菌の溶菌方法を行うことなしに、NALC−NaOH法処理後の試料から直接核酸増幅が達成可能となる。従来行っていた抗酸菌の溶菌工程と核酸の精製工程が不要となり、より簡便な遺伝子検査の前処理が実現できる。

Claims (3)

  1. 以下の(1)〜(3)の工程を含む抗酸菌遺伝子の増幅方法であって、抗酸菌の溶菌工程と核酸の精製工程を含まないことを特徴とする抗酸菌遺伝子の増幅方法。
    (1)喀痰をNALC−NaOH法で処理する工程。
    (2)(1)の工程で処理された試料を水または緩衝液で懸濁し、試料溶液とする工程。
    (3)(2)の工程で得られた試料溶液を核酸増幅試薬と混合し増幅を開始する工程。
  2. 核酸増幅反応がPCRである請求項1に記載の抗酸菌遺伝子の増幅方法。
  3. PCRに用いるDNAポリメラーゼが、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1つ以上からなる、請求項1または2に記載の抗酸菌遺伝子の増幅方法。
    (1)Tbr,Tfl,Tru,Tth,T1i,Tac,Tne,Tma,Tih、Tfi,Pfu,Pfutubo,Pyrobest(登録商標),Pwo,KOD,Bst,Sac,Sso,Poc,Pab,Mth,Pho,ES4,VENTおよびDEEPVENTからなる群。
    (2)(1)で示される群のDNAポリメラーゼの変異体であり、かつ、DNAポリメラーゼ活性を有する変異体。
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