JP2024050211A - 液状試料の簡易的な前処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】核酸精製することなく、液状試料中に含まれる微生物由来の核酸を検出する方法を提供すること。【解決手段】微生物の検出方法に供される液状試料の前処理方法であって、以下の工程A~C:(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、を包含する、方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、液状試料中に含まれる微生物を検出するための、液状試料の前処理方法、試薬、キット等に関する。
試料中に含まれる微生物を検出することは臨床診断、食品衛生などにおいて重要である。しかしながら、試料を直接検出に供すると核酸検出中に反応阻害などが起こり、正しい測定結果が得られないことがある。この点はとりわけ、夾雑物を多く含む生体試料(例えば、唾液、尿検体、液状輸送培地に懸濁されたスワブ検体等の液状試料)を対象として微生物を検出する方法において大きな問題である。そこで、試料中に含まれる微生物を検出する際に、試料を直接検出に供するのではなく、何らかの前処理を行うことが一般的である。これは、試料中に含まれる夾雑物の除去や測定に供するための標識作業などを目的としており、試料中の微生物検出のために必要な操作と考えられている。
特に、微生物を検出する方法が微生物由来の核酸を検出する方法である場合、前処理として、試料中の核酸を精製することが一般的に行われる(例えば、特許文献1、非特許文献1)。精製は、核酸を検出するために、例えば、PCRなどの核酸増幅反応に供する場合、試料中の夾雑物により反応が阻害されることを抑制するために行われている。精製法の一つとして核酸抽出法(例えばBOOM法を原理とした方法等)がある。
しかしながら、核酸精製は、操作が非常に複雑、操作時間が長い、有機溶媒を使用する、試薬コストが高い等の課題があった。特に、核酸抽出は操作が煩雑であるとともに、タンパク質変性作用がある毒性の高い試薬を必要とすることがある。
特開2016-67291号公報
R. Boom et al, Rapid and Simple Method for Purification of Nucleic Acids, Journal of Clinical Microbiology, 1990, vol.28, no.3, p.495-503.
本発明は、微生物の検出において必要とされる試料の前処理方法であって、フェノール等の有機溶媒を必須とする一般的な核酸抽出方法を必要とすることなく、簡便に実施できる前処理方法の提供を一つの目的とする。また、その前処理方法によって調製された前処理液を検出対象試料液として微生物を検出する方法の提供を一つの目的とする。さらに、その前処理方法によって、微生物を検出する方法に供される検出対象試料液の調製方法の提供を一つの目的とする。さらにまた、微生物検出のための前処理用キットの提供を一つの目的とする。また、微生物検出用キットの提供を一つの目的とする。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の1つの目的は、簡便でありながら、高感度に、検体試料中に含まれる微生物を検出する手法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を行った結果、液状試料中の微生物の存否を確認する場合においては、液状試料(生体試料、食品試料等)を遠心して沈降物を回収した後、沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加し、得られた液中の微生物を短時間撹拌する前処理方法によって、簡便で、有機溶媒を必須とすることなく、微生物の検出に適した検出対象試料液が得られることを見出し本発明を完成させた。代表的な本発明を以下のとおりである。
本発明は、以下の態様を包含する。
[項1]
微生物の検出方法に供される液状試料の前処理方法であって、以下の工程A~C:
(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、
を包含する、方法。
[項2]
液状試料が、尿、唾液、鼻咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、喀痰懸濁液、及び液状輸送培地に懸濁されたスワブ検体からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の方法。
[項3]
前記工程Bにおいて、アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、項1又は2に記載の方法。
[項4]
前記工程Bにおいて、アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
前記工程Cにおいて撹拌する工程が、ボルテックスミキサーによる撹拌処理を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
微生物の検出方法が、微生物由来の核酸を検出する方法である、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
検出対象微生物が、クロストリジウム・ディフィシル、赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、結核菌群、非結核性抗酸菌、SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、パラ百日咳菌、肺炎クラミジア、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノレア、トリコモナス原虫、マイコプラズマ・ジェニタリウム、オウム病クラミジア、ウレアプラズマ、HIV及びHPVからなる群より選択される少なくとも一つである、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
更に以下の工程Dを包含する、項1~7のいずれか一項に記載の方法:
(D)前記工程Cで得られた撹拌処理液を精製する工程。
[項9]
項1~8のいずれか一項に記載の工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とする微生物の検出方法。
[項10]
微生物の検出方法に供される検出対象試料液の調製方法であって、
以下の工程A~C:
(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、
を包含する、方法。
[項11]
上記前記工程Bに使用するためのアルカリ性溶液を含む、項1~10のいずれか一項に記載の方法に用いるための試薬。
[項12]
アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、項11に記載の試薬。
[項13]
前記アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、項11又は12に記載の試薬。
[項14]
上記前記工程Bに使用するためのアルカリ性溶液を含む、項1~10のいずれか一項に記載の方法に用いるためのキット。
[項15]
液状試料の遠心沈降物に添加するためのアルカリ性溶液と、プライマーセットからなるプライマーミックスを含むPCR用反応試薬とを含む、液状試料に含まれ得る微生物を検出するためのキット。
[項16]
アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、項15に記載のキット。
[項17]
前記アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、項15又は16に記載のキット。
本発明によれば、液状試料に含まれ得る微生物の検出、特に核酸検出に基づく微生物の検出、に適した検出対象試料液を、有機溶媒を必須とせず、簡便に調製できる。また、検出対象試料液を調製する過程において実効的なタンパク質変性剤が必須ではないため、薬傷の危険性もない。
試験例1の結果の代表例を示す図(クラミジア・トラコマチスを含む尿検体を用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)である。 試験例2の結果の代表例を示す図(ナイセリア・ゴノレアを含む尿検体を用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)である。 試験例4の結果の代表例を示す図(百日咳菌を含む鼻咽頭ぬぐい液又は鼻腔ぬぐい液を用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)である。 試験例5の結果の代表例を示す図(SARS-CoV-2を含む唾液を用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)である。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[前処理方法]
生体試料、食品、環境試料等の一部を採取し、採取試料に微生物の検出が可能になる程度にまで各種の前処理を施し、得られた前処理物に含まれる微生物を検出することが一般的に行われている。本発明の一実施形態は、微生物の検出方法に供される液状試料の前処理方法であって、以下の工程A~C:
(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、
を包含する、方法、である。
[液状試料]
本発明において使用できる液状試料は、検出目的の微生物を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。液状試料としては、例えば、液状の生体試料や食品、環境試料等が挙げられる。なお、本発明でいう微生物とは、広義の意味で小さな生物を示し、バクテリア、真菌、ウイルス、寄生虫、線虫等を含むがこれらに限定されない。また、微生物の検出とは、微生物そのものの有無だけでなく、微生物構成成分(タンパク質、核酸、脂質等)及びそれらをコードする遺伝子等)を検出することも含む。検出の対象となる微生物は生きた微生物、死んだ微生物のいずれであってもよいが、生きた微生物が好ましい。
生体試料の例として、液状の生体試料(液状検体)であれば特に制限されないが、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルス等が挙げられる。さらに挙げると、血液、血漿、血清、血液培養液、尿、唾液、羊水、膿、髄液、胸水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻咽頭拭い液、直腸拭い液、喀痰、吐瀉物、鼓膜切開液、肺胞洗浄液、胃洗浄液、腸洗浄液、子宮頸管拭い液、尿道擦過物、臓器抽出液、組織抽出液分離培養コロニー、カテーテル洗浄液等が挙げられる。また生体試料は、液状輸送培地に懸濁されたスワブ検体、喀痰懸濁液などであってもよい。本発明は、夾雑物を多く含む生体試料を対象とする場合であっても、感度のよい微生物検出が可能である。このような観点から、本発明が対象とする生体試料としては、例えば、尿、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻咽頭拭い液、唾液、喀痰懸濁液、液状輸送培地に懸濁されたスワブ検体が好適であり、尿、鼻咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、唾液がより好適であり、これらの中でも哺乳動物由来、殊にヒト由来のものがより一層好適である。
食品の例として、液状の食品であれば特に制限されないが、例えば、水、アルコール飲料、清涼飲料水、加工食品、乳製品、惣菜等が挙げられる。また、液状食品を試料とする場合、その食品の一部あるいは全部を使用できるだけでなく、食品表面を拭き取ったものを液状培地に懸濁した試料も使用できる。さらに、調理器具等の食品接触部又は人接触部やドアノブ等の人接触部を拭き取ったものを液状培地に懸濁した試料あるいはそれらを洗浄した洗浄液も試料として用いることができる。
環境試料の例として、水、氷等が挙げられる。ここでいう水とは、例として、水道水、海水あるいは川、滝、湖、池等から採取した水等が挙げられる。また、施設の壁面、床面、設備や備品、便器等を拭き取ったものを液状培地に懸濁した試料あるいはそれらを洗浄した洗浄液も試料として用いることができる。
液状試料の採取方法は、特に制限されず、液状試料の種類、大きさ、目的に応じて公知の方法を用いることができる。例えば、綿棒、スワブ、白金耳、スポイト、へら、さじなどの採取具を用いた採取方法である。
[工程A]
工程Aでは、液状試料に含まれる微生物を遠心操作により沈降させて集菌する。集菌とは、液状試料中に含まれる微生物を集めることであり、液状試料中に含まれる夾雑物の一部を上清として分離及び除去することができる。なお、本発明では、工程Aより前に、液状試料を、水、アルカリ性溶液等に希釈する工程を設けなくてよい。水、アルカリ性溶液で事前に希釈する工程を設けない場合、液状試料中に含まれる夾雑物は希釈されることなく試料中に濃い状態で存在することになる。しかし、本発明によれば、このように事前に希釈されず夾雑物を多量に含む状態からであっても、予想外のことに、微生物の検出(特に、PCRなどの核酸増幅反応による微生物の検出)に適した検出対象試料液を調製することが可能である。このように、工程Aより前に、液状試料を、水、アルカリ性溶液等に希釈する工程を設ける必要がないため、本発明は簡便である。
遠心分離は、懸濁液に遠心力をかけることで、比重の異なる物質を分離あるいは分画する方法である。本発明では、目的の微生物が沈降物となるように遠心分離操作を行い、遠心後に得られる沈降物(沈渣などともいう)を回収して、次工程(B)に用いる。遠心分離での遠心力は、目的の微生物や懸濁液中の物質に応じて適宜選択できる。遠心力は、例えば2,000g以上、5,000g以上、7,000g以上、8,000g以上、9,000g以上、10,000g以上等とでき、目的の微生物をより確実に沈降物とするためには、5,000g以上が好ましく、8,000g以上がより好ましく、10,000g以上がより一層好ましいが、これらに限定されない。遠心力の上限値は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、一例として、200,000g以下とすることができ、好ましくは50,000g以下とすることができる。これらの下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。遠心力の範囲は、例えば2,000g~200,000g、5,000g~200,000g、7,000g~200,000g、8,000g~200,000g、9,000g~200,000g、10,000g~200,000gとでき、5,000g~50,000gが好ましく、8,000g~50,000gがより好ましく、9,000g~50,000gがより一層好ましく、10,000g~50,000gが特に好ましい。また、遠心分離を行う時間も目的の微生物や懸濁液中の物質に応じて適宜選択できる。一般的に遠心分離を行う時間を長くすれば、沈降物はできやすくなるが、時間を要する。したがって、遠心分離を行う時間は短いほうが好ましく、例えば10分以内、5分以内、3分以内等とすることができるが、これらに限定されない。遠心分離を行う時間は、例えば、5秒~10分、5秒~5分、5秒~3分とでき、好ましくは10秒~10分、10秒~5分、15秒~5分である。
[工程B]
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物をそのまま、又は沈降物の一部を採取して、水又はアルカリ性溶液を添加する。水、アルカリ性溶液のどちらを使用するかは、試料によって適宜選択することができる。例えば、pH調整や夾雑物除去を目的として、アルカリ性溶液を選択できる。アルカリ性溶液を使用することで、微生物以外の夾雑物を分解又は溶解しやすくなる。
水としては、例えば精製水、滅菌水、水道水等が挙げられるが、不純物が少ない点で精製水又は滅菌水が好ましい。より高い効果が得られ易いという観点から、本発明ではアルカリ性溶液を使用することが好ましい。
アルカリ性溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つが挙げられ、水酸化カリウム水溶液及び/又は水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。これらのアルカリ性溶液は、微生物の検出に不適切な大きな影響を与えない。
また、アルカリ性溶液として緩衝作用を持つ緩衝液を使用してもよい。緩衝液として、例えば、当該分野で周知のTris、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルカリ性溶液のpHは、8.0以上、9.0以上、10.0以上、11.0以上等とすることができ、また、14.0以下、13.0以下、12.5以下、12.0以下、11.0以下等とすることができ、8.0~14.0が好ましく、9.0~13.0がより好ましく、pH10.0~12.5がさらに好ましい。なお、ここでいうアルカリ性溶液のpHとは、試料に添加する前のアルカリ性溶液のpHをいうが、工程Bで得られるアルカリ性溶液添加後の液のpHも上記範囲にあることが好ましい。
水又はアルカリ性溶液に対する試料の量は、以降の工程を行うことができる量であれば制限されず、例えば、水又はアルカリ性溶液100mlに対して、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、下限としては0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上とすればよい。これらの下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。水又はアルカリ性溶液に対する試料の量は、例えば0.1~50質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~10質量%である。
工程Bにおいて、必要に応じてさらに添加剤等を加えてもよい。添加剤として、EDTA、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤の添加量は、特に制限されないが、たとえば、水又はアルカリ性溶液100mlに対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。添加剤の添加量は、水又はアルカリ性溶液100mlに対して、例えば0.1~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。
工程Bにおける添加処理は、公知の方法で実施できる。例えば、試料、及び水又はアルカリ性溶液を含んだチューブを手動で振り混ぜて混合する方法(タッピング)、ピペットマン等によるピペッティング等による混合などである。
工程Bにおいて試料を添加後、大きな夾雑物や異物があれば取り除いてもよい。除去方法として、限外ろ過、遠心分離等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、吐瀉物、加工食品、乳製品等を試料とする場合、大きな夾雑物又は異物を含む可能性があるため、除去することが好ましい。
[工程C]
工程Cでは、工程Bで得られた液を短時間撹拌する。この工程では、微生物内に含まれる核酸、タンパク質、脂質等が液中に放出されうる。放出された核酸、タンパク質、脂質等を検出対象にすることで、後の、微生物の検出が感度よく効率的に実施できる。
撹拌処理は工程Bで得られた液を撹拌して微生物を破砕する方法である。撹拌処理は、転倒混和、ボルテックスミキサー、撹拌機(KUBOTA社製マイクロ冷却遠心機3700等)などにより行うことができる。撹拌処理の対象となる工程Bで得られた液は、工程Bで得られた液そのものであってもよいし、工程Bで得られた液に添加剤やビーズ(ジルコニアビーズ、ガラスビーズ等)等が添加された液であってもよい。特に高い効果が得られ易いという観点から、本発明では、ボルテックスミキサーによる撹拌が好ましい。
工程Cにおける撹拌時間は1~20秒間とする。本発明によれば、このような短時間の撹拌で簡便に微生物を溶菌または破砕することができる。工程Cにおける撹拌時間は、1~20秒間である限り特に限定されないが、好ましくは5~20秒間であり、より好ましくは10~20秒間である。
工程Cでは、1~20秒間の撹拌処理を行う際に、撹拌処理に加えて1又は2以上の他の処理を同時に行ってもよいし、撹拌処理単独であってもよく、工程Cを簡便な工程とする観点からは撹拌処理単独が好ましい。1又は2以上の他の処理を撹拌処理と組み合わせて同時に行うことで、より溶菌又は破砕されやすくなる。このような他の処理としては、例えば、ビーズ破砕処理、超音波処理、加熱処理、アルカリ処理、酵素処理などが挙げられる。
[工程D]
本発明では工程Dとして、工程Cで得られた撹拌後の撹拌処理液を精製する工程を設けてもよい。工程Dにより該液が精製され、微生物の検出をより高感度に行うことができる。ここでいう精製とは、工程Cにて液中に放出された核酸、タンパク質、脂質等の純度を上げることをいう。すなわち、撹拌処理液中に放出された核酸、タンパク質、脂質等以外の夾雑物の量を低減させることをいう。精製する方法は特に制限されないが、抽出処理、限外ろ過処理、分離処理等が挙げられ、これらの処理は単独でも複数組み合わせてもよい。工程数を小さく、前処理を簡便にする観点からは工程Dを設けないことが好ましい。
抽出とは、溶液中に放出された微生物由来の核酸、タンパク質、脂質等を選択的に収集する方法である。例えば、核酸抽出法、タンパク質抽出法、脂質抽出法等は現在までそれぞれ複数の方法が発明されており、のちの検出を行う検出対象に合わせて選べばよい。一例を挙げれば、検出方法として核酸検出法を行うのであれば、精製方法として核酸抽出法を選択することが好ましい。
限外ろ過とは、目的に応じた孔径を有するフィルター等を用いて目的物とそれ以外の夾雑物を分離する方法である。例えば、溶液中に放出された微生物由来の核酸、タンパク質、脂質等を選択的に分離するため、それらが通過する大きさの孔を有するフィルターを用いることが好ましい。該フィルターを用いることで、核酸、タンパク質、脂質等の小分子はろ液として通過し、孔よりも大きい夾雑物を除去することができる。
分離とは、物理的あるいは化学的な方法で核酸、タンパク質、脂質等を選択的に収集することをいう。例えば、遠心分離、HPLC等をはじめとするクロマトグラフィー、磁気分離、電気分離等が挙げられるが、これらに限定されない。一例として遠心分離にて選択的に分離する場合、核酸、タンパク質、脂質等が沈降物にならない程度の遠心力を加えることが好ましい。該遠心力を加えて処理することで、核酸、タンパク質、脂質等の目的物は上清に残るため、上清をのちの検出に使用することができる。遠心力は、5,000g以上が好ましく、8,000g以上がより好ましく、10,000g以上がさらに好ましく、13,000g以上がより一層好ましいが、これらに限定されない。遠心力の上限値は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、一例として、200,000g以下とすることができ、好ましくは50,000g以下とすることができる。遠心力の範囲は、例えば5,000g~200,000g、8,000g~200,000g、10,000g~200,000g、13,000g~200,000g、5,000g~50,000g、8,000g~50,000g、13,000g~50,000gとでき、とでき、5,000g~50,000gが好ましく、8,000g~50,000gがより好ましく、9,000g~50,000gがより一層好ましく、10,000g~50,000gが特に好ましい。また、遠心分離を行う時間は10分以内が好ましく、5分以内がより好ましく、3分以内がさらに好ましいが、これらに限定されない。
[微生物を検出する方法]
本発明において検出対象試料液とは、液状試料が前処理されることで、液状試料中の夾雑物が微生物検出操作に使用できる程度にまで低減された液である。したがって、該液をそのまま、あるいは該液に必要に応じて、微生物の検出に必要な各種標識、核酸増幅、核酸検出等のための成分等が添加され、場合によっては反応させられることによって、微生物検出処理に使用することができる。このため、検出対象試料液には、微生物の検出を阻害しない限りにおいて、適宜の、他の成分を加えたり、他の処理を加えたりできる。
微生物を検出する方法は、核酸検出法、抗原検査法、抗体検査法、培養同定法、質量分析法、生化学的性状試験等が挙げられるが、微生物由来の核酸を検出する方法である核酸検出法が好ましい。
核酸を検出する方法は、さらに、核酸増幅を含む方法であることが好ましい。核酸増幅を行うことで、より高感度に目的の微生物由来の核酸を検出することができる。核酸増幅の方法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて適宜選択できる。好ましい核酸増幅法はPCRである。
PCRは、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応であり、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって標的核酸を増幅する。DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENTやその変異体が挙げられる。
[検出対象の微生物(検出対象微生物)]
本発明において、検出の対象となる微生物は、特に制限されないが、例えば、クロストリジウム・ディフィシル、赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、結核菌群、非結核性抗酸菌、コロナウイルス(SARS-CoV-2等)、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、パラ百日咳菌、肺炎クラミジア、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノレア、トリコモナス原虫、マイコプラズマ・ジェニタリウム、オウム病クラミジア、ウレアプラズマ、HIV、HPV等であり検出対象微生物は1種単独でも複数種組合わせてもよい。それぞれの微生物には個性(特性)があるため、目的の微生物に合わせて前処理方法を本発明の範囲内で適宜変更してもよい。
本発明において検出の対象となる微生物は、好ましくは、性感染症原因微生物又は呼吸器感染症原因微生物であり、より好ましくは、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノレア、マイコプラズマ・ジェニタリウム、トリコモナス原虫、HIV、HPV等の性感染症原因微生物、又は、SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、パラ百日咳菌、肺炎クラミジア、結核菌群、非結核性抗酸菌等の呼吸器感染症原因微生物であり、更に好ましくは、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノレア、マイコプラズマ・ジェニタリウム、トリコモナス原虫、百日咳菌、SARS-CoV-2である。
本発明の一実施形態は、本発明の前処理方法で調製された液、つまり、工程Cで得られた撹拌後の液(撹拌処理液)或いは工程Dで得られた精製液を、検出対象試料液とした、微生物の検出方法である。この方法の詳細は本発明の前処理方法と同様である。
例えば、本発明の一実施形態は、以下の微生物の検出方法である。
以下の工程A~C及び任意にD:
(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、及び任意に
(D)前記工程Cで得られた撹拌処理液を精製する工程、
を包含する、微生物を検出する方法に供される試料の前処理方法によって前記工程Cで得られた撹拌処理液或いは前記工程Dで得られた精製液を検出対象試料液とする、微生物を検出する方法。
[検出対象試料液の調製方法]
本発明の前処理方法では検出対象試料液を簡便に調製でき、したがって、検出対象試料液の調製方法として非常に有用である。本発明の一実施形態は、本発明の前処理方法を包含する、微生物の検出方法に供される検出対象試料液の調製方法である。したがって、この方法の詳細は本発明の前処理方法と同様である。
例えば、本発明の一実施形態は、微生物を検出する方法に供される検出対象試料液の調
製方法であって、以下の工程A~C及び任意にD:
(A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
(B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
(C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、及び任意に
(D)前記工程Cで得られた撹拌処理液を精製する工程、
を包含する、方法である。
[試薬]
さらに、本発明の一実施形態は、本発明の前処理方法、検出対象試料液の調製方法、微生物の検出方法などのための試薬である。試薬の種類、個数について、本発明の方法が実施できれば特に制限されず、いずれかの工程で使用される液(例えば、工程Bで使用されるアルカリ性溶液、プライマーセットからなるプライマーミックスを含むPCR用反応試薬など)等が試薬のひとつとして挙げられる。これら試薬の詳細は、本発明の前処理方法と同様である。
[キット]
さらに、本発明の一実施形態は、前記試薬を含む、本発明の前処理方法、検出対象試料液の調製方法、微生物の検出方法などのためのキットである。キットの構成について、前記試薬を含み、本発明の方法が実施できれば特に制限されない。例えば、工程Bで使用されるアルカリ性溶液を少なくとも含むキットが挙げられる。また、例えば、液状試料の沈降物に添加するためのアルカリ性溶液と、プライマーセットからなるプライマーミックスを含むPCR用反応試薬とを含む、液状試料中に含まれ得る微生物を検出するためのキットなども挙げられる。これらキットの詳細は、本発明の前処理方法と同様である。
以下に試験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は試験例に限定されるものではない。
試験例1:クラミジア・トラコマチス検出における工程Aの検討
(1-1)液状試料の前処理方法
工程A、つまり液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程における微生物の回収方法を検討した。検出対象微生物はクラミジア・トラコマチスとした。液状試料として陰性の尿検体を用い、陰性尿検体に市販のクラミジア・トラコマチスの不活化液をスパイクすることで疑似陽性検体(100コピー/mL)を調製し、この検体を工程Aに供した。
工程Aでは、疑似陽性検体を以下のいずれかの処理に供して微生物の回収を行った。
・遠心分離(5,000g×3分)
・遠心分離(8,000g×3分)
・遠心分離(10,000g×3分)
・遠心分離(13,000g×3分)
遠心分離後、上清及び沈降物を回収し、各々を工程Bへ供した。
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物に、約5%(w/v)でpHが約11.0の水酸化カリウム水溶液(400μL)を添加した。また、工程Aで得られた上清に、pHが約11.0の水酸化カリウム水溶液(400μL)を添加した。
工程Cでは、工程Bで得られた液を15秒間、ボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌処理液を得た。
(1-2)微生物の検出
工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とし、核酸検出用の下記反応液に直接供して検出対象試料液中の検出対象微生物の核酸を増幅し、クラミジア・トラコマチス遺伝子の検出を行った。
(反応液)
ジーンキューブ(登録商標)クラミジア・トラコマチス(東洋紡社製)
(核酸増幅及び検出)
核酸増幅及び検出機であるGENECUBE(登録商標)を用いて、検出対象試料液を含む前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
97℃ 1秒-58℃ 5秒-68℃ 5秒(サイクル数60回)
(1-3)結果
図1は、代表例として、工程Aにおいて遠心分離(13,000g×3分)による沈降物が使用されて得られた撹拌処理液を用い、核酸増幅及び融解曲線解析によって100コピー/mLのクラミジア・トラコマチスの検出を行った際に得られた検出グラフである。同様に、他の遠心分離による沈降物が使用されて得られた撹拌処理液でもクラミジア・トラコマチスを正しく検出できた。一方、遠心分離による上清が使用されて得られた撹拌処理液では、いずれも、クラミジア・トラコマチスを検出できなかった。
試験例2:ナイセリア・ゴノレア検出における工程Bの検討
(2-1)液状試料の前処理方法
工程B、つまり工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程における処理方法を検討した。検出対象微生物はナイセリア・ゴノレアとした。液状試料として陰性の尿検体を用い、陰性尿検体に培養されたナイセリア・ゴノレアを懸濁した菌懸濁液をスパイクすることで疑似陽性検体(100CFU/mL)を調製し、この検体を工程Aに供した。
工程Aでは、疑似陽性検体を遠心分離処理(13,000g×3分)に供し、遠心後の沈降物を回収した。
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物に、400μLの精製水、アルカリ性溶液、又は塩化水素水溶液を、約5%(w/v)で、添加した。アルカリ性溶液としてpH8.0~pH13.0までpH1.0刻みで調製した水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を使用した。塩化水素水溶液としてpH2.0又はpH5.0の塩化水素水溶液を使用した。
工程Cでは、工程Bで得られた液を15秒間、ボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌処理液を得た。
(2-2)微生物の検出
工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とし、核酸検出用の下記反応液に直接供して検出対象試料液中の検出対象微生物の核酸を増幅し、ナイセリア・ゴノレア遺伝子の検出を行った。
(反応液)
ジーンキューブ(登録商標)ナイセリア・ゴノレア(東洋紡社製)
(核酸増幅及び検出)
核酸増幅及び検出機であるGENECUBE(登録商標)を用いて、検出対象試料液を含む前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
97℃ 1秒-58℃ 5秒-68℃ 5秒(サイクル数60回)
(2-3)結果
図2は、代表例として、工程BにおいてpH11.0の水酸化カリウム水溶液が使用されて得られた撹拌処理液を用い、核酸増幅及び融解曲線解析によって100CFU/mLのナイセリア・ゴノレアの検出を行った際に得られた検出グラフである。同様に、他のpHの水酸化カリウム水溶液(pH8.0、9.0、10.0、12.0、及び13.0)又は水酸化ナトリウム水溶液(pH8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、及び13.0)の使用を経て得られた撹拌処理液でもナイセリア・ゴノレアを正しく検出できた。また、工程Bおいて精製水が使用されて得られた撹拌処理液でも検出できたが、アルカリ性溶液を使用した場合と比べて検出ピークがやや低かった。一方で、工程BにおいてpH2.0又はpH5.0の塩化水素水溶液が使用されて得られた撹拌処理液では、ナイセリア・ゴノレアを検出できなかった。
試験例3:マイコプラズマ・ジェニタリウム検出およびトリコモナス原虫検出における工程Cの検討
(3-1)液状試料の前処理方法
工程C、つまり工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程における撹拌方法を検討した。検出対象微生物はマイコプラズマ・ジェニタリウムおよびトリコモナス原虫とした。液状試料として陰性の尿検体を用い、陰性尿検体に市販のマイコプラズマ・ジェニタリウムの不活化液およびトリコモナス原虫の不活化液をスパイクすることで疑似陽性検体(100cp/mL)を調製し、この検体を工程Aに供した。
工程Aでは、疑似陽性検体を遠心分離処理(13,000g×3分)に供し、上清を廃棄して沈降物を回収した。
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物に、400μLのpH11.0の水酸化カリウム水溶液を、約5%(w/v)で添加した。
工程Cでは、工程Bで得られた液を15秒間、ボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌処理液を得た。また、比較のために、30秒間のビーズ破砕法により得られる破砕液も調製した。具体的には、ジルコニア・ビーズが充填されているジーンキューブ(登録商標)専用イージー・ビーズに工程Bで得られた液を分注し、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌して、ビーズ破砕液を得た。
(3-2)微生物の検出
工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とし、核酸検出用の下記反応液に直接供して検出対象試料液中の検出対象微生物の核酸を増幅し、マイコプラズマ・ジェニタリウム遺伝子及びトリコモナス原虫遺伝子の検出を行った。
(反応液)
核酸増幅反応用の基礎となる液としてジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)を使用し、以下に示されるプライマー及びプローブを添加して核酸増幅反応用の反応液を調製した。核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も反応液に添加した。
0.5μM 配列番号1で示されるプライマー
3.0μM 配列番号2で示されるプライマー
0.3μM 配列番号3で示されるプローブ(3’末端をBODIPY-FLで標識)
0.5μM 配列番号4で示されるプライマー
3.0μM 配列番号5で示されるプライマー
0.3μM 配列番号6で示されるプローブ(3’末端をCR6Gで標識)
(核酸増幅及び検出)
核酸増幅及び検出機であるGENECUBE(登録商標)を用いて、検出対象試料液を含む前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
97℃ 1秒-58℃ 5秒-68℃ 5秒(サイクル数60回)
(3-3)結果
この結果、従来法のビーズ破砕液も本発明による撹拌処理液も、マイコプラズマ・ジェニタリウム及びトリコモナス原虫のそれぞれについてで明確な検出ピークが認められた。このことから、本発明による撹拌処理は、非常に短時間で簡便な方法でありながら、従来法のビーズ破砕処理と同等のレベルで正しく検出できることがわかった。本発明ではビーズ無しの条件で15秒間という短時間の撹拌処理でも十分な感度で検出できる。また、本結果より、本発明の前処理法においては単一の微生物のみならず複数種の微生物が試料中に存在しても有用であることがわかった。
試験例4:百日咳菌検出における検体種の検討
(4-1)方法
鼻咽頭ぬぐい液もしくは鼻腔ぬぐい液について、本発明の前処理法が適用可能であるか検討した。検出対象微生物は百日咳菌とした。液状試料として陰性の鼻咽頭ぬぐい液もしくは鼻腔ぬぐい液を用い、陰性の鼻咽頭ぬぐい液もしくは鼻腔ぬぐい液に培養された百日咳菌の菌懸濁液をスパイクすることで疑似陽性検体(100CFU/mL)を調製し、この検体を工程Aに供した。
工程Aでは、疑似陽性検体を遠心分離処理(13,000g×3分)に供し、上清を廃棄して沈降物を回収した。
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物に、400μLの水酸化カリウム水溶液(pH11.0)を、約5%(w/v)で、添加した。
工程Cでは、工程Bで得られた液を15秒間、ボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌処理液を得た。
(4-2)微生物の検出
工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とし、核酸検出用の下記反応液に直接供して検出対象試料液中の検出対象微生物の核酸を増幅し、百日咳菌遺伝子の検出を行った。
(反応液)
ジーンキューブ(登録商標)百日咳(東洋紡社製)
(核酸増幅及び検出)反応
核酸増幅及び検出機であるGENECUBE(登録商標)を用いて、検出対象試料液を含む前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
97℃ 1秒-58℃ 5秒-68℃ 5秒(サイクル数60回)
(4-3)結果
図3は、代表例として、鼻咽頭ぬぐい液が使用されて得られた撹拌処理液を用い、核酸増幅及び融解曲線解析によって百日咳菌の検出を行った際に得られた検出グラフである。同様に、鼻腔ぬぐい液が使用されて得られた撹拌処理液でも百日咳菌を正しく検出できた。本結果より、本発明の前処理法が尿検体に限らず、他の形態の液状試料を用いる場合でも有用であることがわかった。
試験例5:SARS-CoV-2検出における前処理法の検討
(5-1)方法
唾液を用いて、本発明の前処理法がSARS-CoV-2でも適用可能であるか検討した。液状試料として陰性の唾液を用い、陰性の唾液に市販のSARS-CoV-2の不活化液をスパイクすることで疑似陽性検体(2500CFU/mL)を調製し、この検体を工程Aに供した。
工程Aでは、疑似陽性検体を遠心分離処理(13,000g×3分)に供し、上清を廃棄して沈降物の回収した。
工程Bでは、工程Aで得られた沈降物に、400μL水酸化カリウム水溶液(pH11.0)を、約5%(w/v)で、添加した。
工程Cでは、工程Bで得られた液を15秒間、ボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌処理液を得た。
(5-2)微生物の検出
工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とし、核酸検出用の下記反応液に直接供して検出対象試料液中の検出対象微生物の核酸を増幅し、SARS-CoV-2遺伝子の検出を行った。
(反応液)
ジーンキューブ(登録商標)HQ SARS-CoV-2(東洋紡社製)
(核酸増幅及び検出)反応
核酸増幅及び検出機であるGENECUBE(登録商標)を用いて、検出対象試料液を含む前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
(逆転写、核酸増幅及び融解曲線解析)
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(5-3)結果
図4は、唾液を用い核酸増幅及び融解曲線解析によってSARS-CoV-2の検出を行った際に得られた検出グラフである。本結果より、本発明の前処理法においてはSARS-CoV-2等のウイルスを含む液状試料を用いる場合でも有用であることがわかった。
本発明の前処理方法を用いることで、核酸精製処理をすることなく、液状試料中に含まれる微生物由来の核酸を短時間で簡便に検出することができるため、臨床診断の分野に大きく貢献できる。

Claims (17)

  1. 微生物の検出方法に供される液状試料の前処理方法であって、以下の工程A~C:
    (A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
    (B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
    (C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、
    を包含する、方法。
  2. 液状試料が、尿、唾液、鼻咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、喀痰懸濁液、及び液状輸送培地に懸濁されたスワブ検体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程Bにおいて、アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記工程Bにおいて、アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記工程Cにおいて撹拌する工程が、ボルテックスミキサーによる撹拌処理を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 微生物の検出方法が、微生物由来の核酸を検出する方法である、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 検出対象微生物が、クロストリジウム・ディフィシル、赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、結核菌群、非結核性抗酸菌、SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、パラ百日咳菌、肺炎クラミジア、クラミジア・トラコマチス、ナイセリア・ゴノレア、トリコモナス原虫、マイコプラズマ・ジェニタリウム、オウム病クラミジア、ウレアプラズマ、HIV及びHPVからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 更に以下の工程Dを包含する、請求項1又は2に記載の方法:
    (D)前記工程Cで得られた撹拌処理液を精製する工程。
  9. 請求項1又は2に記載の工程Cで得られた撹拌処理液を検出対象試料液とする微生物の検出方法。
  10. 微生物の検出方法に供される検出対象試料液の調製方法であって、
    以下の工程A~C:
    (A)液状試料に遠心操作を行い、遠心後の沈降物を回収する工程、
    (B)前記工程Aで得られた沈降物に水又はアルカリ性溶液を添加する工程、及び
    (C)前記工程Bで得られた液を1~20秒間撹拌する工程、
    を包含する、方法。
  11. 上記前記工程Bに使用するためのアルカリ性溶液を含む、請求項1又は2に記載の方法に用いるための試薬。
  12. アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項11に記載の試薬。
  13. 前記アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、請求項11に記載の試薬。
  14. 上記前記工程Bに使用するためのアルカリ性溶液を含む、請求項1又は2に記載の方法に用いるためのキット。
  15. 液状試料の遠心沈降物に添加するためのアルカリ性溶液と、プライマーセットからなるプライマーミックスを含むPCR用反応試薬とを含む、液状試料に含まれ得る微生物を検出するためのキット。
  16. アルカリ性溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及び炭酸カルシウム水溶液からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項15に記載のキット。
  17. 前記アルカリ性溶液のpHが8.0以上である、請求項15又は16に記載のキット。
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