JP5432929B2 - チゼルエッジを有する切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、特有に配向されたチゼルエッジを有するツイストドリルのような切削工具に関する。
ねずみ鋳鉄のような脆性材料を穿孔する際に、所望の位置にかつ「穴の真直度(hole straightness)」の直線方向に円形穴を穿孔することが重要である。穿孔工程中、単に、目標位置から離れた加工物の表面にわたって、ドリルが「滑る(walk)」場合があるのみならず、さらに、ドリルが適切な目標位置に位置決めされたときでも、ドリルに対する非対称の切削力がドリルの揺れを引き起こし、これによって、非円形の穴、真直でない穴、又はその両方を生じる可能性がある。1976年8月31日に出願された米国特許第3,977,807号明細書は、1次マージンの隅部とチゼルエッジ角を形成するチゼルエッジを有するダブルマージンツイストドリル(double margin twist drill)に関する。この特許の図2はこの特徴を示しているが、図2は斜視図であるので、チゼルエッジ角を識別することは難しい。それにもかかわらず、マージンがチゼルエッジに接近するにつれ、1次マージンの外径は低減し、この結果、ある程度のドリル安定性が犠牲にされる。
2007年9月11日に出願された米国特許第7,267,514号明細書は、パイロット先端(pilot tip)を有する自己センタリングビットドリルに関し、この場合、ドリルは単一のマージンのみを有する。この特許は、図4で、チゼルエッジが本質的にドリルマージンと平行である構成を開示している。このことにより、ドリルの「滑り(walking)」が低減されるが、ドリルが穿孔中に揺れる傾向を有するので、同一の問題が穴形状及び穴の真直度に関し存在する。
より真直な、かつより優れた配置の穴を作製し、かつ穴作製工程中の穴内のドリルを安定させるドリル設計が必要とされる。
略円筒状の切削工具の先端は、加工物内に穴を作製するために使用され、この場合、先端は中心軸線と切削端部とを有する。工具は、切断方向に回転するように設計される。先端は、直径方向に対向する2つの溝を有する本体を備え、その2つの溝はその間にランドを有し、この場合、ランドの各々は、前縁として画定される1対の縁部と、工具の回転によって画定される後縁とを有する。1次マージン及び2次マージンは、ランドの各々で互いに離間している。1次マージンは前縁に隣接しており、マージンは、一定である本体の全長に沿ってマージン直径を有する。切削リップは、各々のランドの前縁から最内側端部に内側方向に延在する。チゼルエッジは、各々の切削リップの最内側端部を結ぶ線によって画定され、この場合、中心軸線に沿って見たとき、チゼルエッジは、ランドの前縁からチゼルエッジの中間点まで半径方向内側に延在する線によりチゼルエッジ角を形成する。チゼルエッジ角は80度〜100度である。本発明はまた、上述のような先端を有する回転可能な切削工具に関する。
ドリルのシャンクに固定された切削工具を有するモジュール式ツイストドリルの側面図である。 図1のAとして表された円で囲まれた領域の拡大切り取り詳細図である。 図1のツイストドリルの頂面図である。 図2の矢印「3−3」に沿った側面図である。 図2の矢印「4−4」に沿ったモジュール式ツイストドリルの頂部の側面図である。
図1は、一例としてツイストドリルである回転可能な切削工具10を示している。切削工具10は、切削端部20に先端15を有する。先端15は、それを通して延在する中心軸線17を有する。図2に示したように、先端15は、直径方向に対向する2つの溝30A、30Bを有する先端本体25を有する。切削工具10の周辺の周りの各々の溝30A、30Bの間に、ランド35A、35Bがある。各々のランド35A、35Bは、先端本体のランド37A、37Bと、プロングランド39A、39Bとから構成される。
図1〜図4に示した実施形態は、切削工具10及びシャンク12を示し、この場合、先端本体25はシャンク12から取り外し可能である。図3に示したように、先端本体25は、延在する2つのプロング14A、14Bの間に固定される。
本明細書に説明する切削工具は、切削端部20から見ると対称であり、この結果、切削工具10の半分のみについて、接尾辞「B」を使用して参照した対称面が対称であるという理解のもとで説明する。したがって、「A」面に関する同一の説明は「B」面に適用される。
先端本体のランド37Aは、前縁40A及び後縁42Aとして画定される1対の縁部を有する。回転可能な切削工具10及び関連の先端本体25は、矢印「45」で示した単一の回転方向に動作するように設計される。この結果、加工物に接触するための先端本体のランド37Aの第1の部分は、前縁40Aとして画定され、一方、残りの縁部は後縁42Aである。先端本体のランド37Aは、先端本体のランド37Aの互いに離間した1次マージン47Aと2次マージン49Aとから構成される。1次マージン47Aは前縁40Aに隣接しており、マージン47A、49Aの各々は、対向する1次マージン47Bと2次マージン49Bと共に、外径4と同一のマージン直径MDを形成する。図2に示した2次マージン49Aは、後縁42Aに接触するが、1次マージン47Aにより近い方向に2次マージン49Aを後縁42Aから離間させることが完全に可能であり、かつ容易に想像される。
マージン直径50は、先端本体25の全長に沿って延在し、実質的に一定である。特に、ツイストドリル設計では、ドリルの切削端部に切削端部の背後の領域よりもわずかに大きな外径を設けることが標準的である。一例として、ツイストドリルは、切削端部からドリル外径よりも約0.05ミリメートル大きな切削端部外径を有してもよく、これによって、切削端部の背後のクリアランスを提供する。この点に関し、マージン直径50は、先端本体25の全長に沿って延在し、実質的に一定である。
図2に関し、マージン直径MDは、先端本体25のみでなく、同様にシャンク12の最大直径であり、先端本体25及びプロング14の周辺の残りのセグメントは、マージン直径MDよりも小さい直径を有することを認識すべきである。
切削リップ55Aは、先端本体のランド37Aの前縁40Aから最内側端部57Aに内側方向に延在する。
チゼルエッジ60は、各々の切削リップ55A、55Bの最内側端部57A、57Bを結ぶ線63によって画定される。
チゼルエッジ60は、切削リップ55A及び切削リップ55Bの両方によって画定され、この理由で、先端本体25の対称と関連する2つの部分とは表されないことを認識すべきである。
中心軸線17に沿って見たとき、チゼルエッジ60は、ランド35Bの前縁40Bからチゼルエッジ63の中間点67まで半径方向内側に延在する線65Bによりチゼルエッジ角Aを形成する。チゼルエッジ角Aは、80度〜100度、好ましくは約90度である。
図2に示したように、チゼルエッジ60は、湾曲端部70A、70Bの略真直な中央部69を有する「S」形状を有する。例えば、チゼルエッジ60の真直な中央部69は、12ミリメートル〜13ミリメートルの外径を有するドリルについて0.25ミリメートルの長さを有する。
図2に示したように、チゼルエッジ60は、湾曲端部70A、70Bを有する切削リップ55A、55B内に移行する。これらの湾曲端部70A、70Bは、12ミリメートル〜34ミリメートルの外径について、0.4ミリメートル〜1.5ミリメートルの半径を有する。
ガッシュ(gash)75A(図3)は、溝30Aからチゼルエッジ60に上方に延在し、一実施形態において、チゼルエッジ60における2度〜10度の正のすくい角Rを画定する。
1次マージン47Aと2次マージン49Aとの間に、マージン直径MDよりも小さい対向凹部78A、78Bの間のクリアランス直径CDによって、凹部78Aが画定される。
ランド35Aとチゼルエッジ60との間の領域は、一般に、フランク80Aと称される。典型的に、フランク80Aは、縁部を形成するためにランド35Aに出会う。しかし、強度、耐久性の向上のため、鋳鉄のような脆性材料用の出口におけるブローアウト/ブレークアウト(blow out/breakout)を最小にするために、面取り部82Aをランド35Aとフランク80Aとの間に導入してもよい。面取り部82Aは、中心軸線17に対して70度〜90度の面取り角度CA(図4)を形成してもよい。
図1に示したように、切削工具は、先端15を収容するシャンク12を有するモジュール式ツイストドリルである。しかし、先端本体25がシャンク12の一体部分であることが可能であり、かつ容易に想像可能であり、これによって、中実のドリルが提供される。
ここまで、螺旋状の溝を有するツイストドリルについて説明してきたことも指摘したい。本発明はまた、真直な溝を有するツイストドリルにも適用してもよい。
図3に示したように、プロング15は、異なる技術を使用して、シャンク12の先端14A、14B内に固定してもよい。本明細書に示した実施形態では、図1Aに示したような切削端部20の反対側の先端本体は、シャンク12内の内側肩部109に当接する頭部107を有する噛合ボルト105と係合するための中心軸線17に沿ったねじ付きボア85である。先端15をシャンク12に固定するための他の装置が工作機械の当業者に公知であり、これらの装置は、弾性により先端15をシャンク12にクランプするプロング14を含むがそれらに限定されないことを認識すべきである。
先端15の領域のシャンク12の構造は、先端15がシャンク12内に取り付けられるとき、シャンク12のプロフィルが先端15のプロフィルに対応するようなものであり、この結果、図1に示したように、組み合わせは連続的な表面を有する一体成形の部片であるように見える。
切削工具10は、シャンク12の長さにわたる、かつシャンクの基部13で冷却剤が供給される冷却剤通路110を有してもよいことに留意されたい。さらに、図示したように、シャンク12は、回転を切削工具10に付与するために使用されるスピンドル(図示せず)に固定された舌部(tang)11を有する。シャンク12は、ドリル製造の当業者に公知の任意の数の異なる方法でスピンドルに固定してもよい。
先端本体15は、タングステン、炭化チタン又はTiC−TiNのような硬質の焼結炭化物から製造してもよい。一般に、先端本体15は、関連技術で周知であるいくつかの耐火性コーティングの超硬合金材料のうちの1つのような硬質の耐摩耗性材料から製造してもよい。カーバイド工具に関連する費用のため、両方の先端本体25及びシャンク12の両方をカーバイド材料から構成することが可能であるが、その可能性は低く、また先端本体25がカーバイド材料から構成され、一方、シャンク12は工作機械鋼から構成される可能性が高い。
本発明による切削工具の設計により、他の切削工具と較べ非常に優れた結果が提供される。穴の真直度に関し、125ミリメートルの深さを有する盲孔を穿孔するために、12.5ミリメートルの直径、140度のポイント角、及び30度のねじれ角を有するモジュール式ツイストドリルを使用して試験を実行した。加工物はねずみ鋳鉄クラス40であり、ドリルを毎分198ミリメートル及び1回転当たり0.35ミリメートルの速度で前進させた。さらに、冷却剤をドリルシャンクの内側通路を通して加工物に導入した。
これらの状況下で、次の結果が達成された。
例1 60度のチゼル角を有する単一マージンドリルは、0.15ミリメートルの穴の真直度を達成した。
例2 90度のチゼルエッジ角を有する単一マージンドリルは、0.13ミリメートルの穴の真直度を達成した。
例3 60度のチゼルエッジ角を有するダブルマージンドリルは、0.11ミリメートルの穴の真直度を達成した。
例4 本発明に一致する90度のチゼルエッジ角を有するダブルマージンドリルは、0.04ミリメートルの穴の真直度を達成した。これらの予想外の結果は、本発明による設計の優位性を示している。
チゼル角はまた、加工物に沿ったドリルの「滑り」の最小化に役立つ。特に、60度のチゼル角を有するドリルでは、目標位置に対する位置誤差は0.0042ミリメートルであり、一方、90度のチゼルエッジ角を有するドリルを利用した位置誤差は、0.003ミリメートルの位置誤差を有した。
理解できるように、本発明によるドリルは、他の設計にとって予想外であるのみならず、非常に優れた結果を提供した。
本明細書に開示したドリル設計の結果、穿孔工程中、チゼルエッジによって生成された力は、同一の方向/線に沿った穴の壁部からのマージンに対する作用力に対抗する。このことにより、ドリルに対する力又はモーメントのアンバランスが最小となり、これによって、ドリルの滑りの傾向が低減され、かつ穴の真直度及び正確な穴の位置決めが保証される。ドリルのこの特徴は、穴の真直度を維持することが困難であると言われているねずみ鋳鉄のような異種の材料で非常に有益である。本明細書に開示したようなチゼルエッジ角は、ダブルマージンと関連してはるかに優れた穴の真直度を提供し、この場合、2次マージンは線から外れた任意の力(any out-of-line forces)を釣り合わせるように作用する。上述の例に示したように、チゼル角が60度から90度に変更されるとき、ダブルマージンドリルを利用する穴の真直度では、50%の改善がある。さらに、90度のチゼルエッジ角を有するドリルを利用した場合、位置誤差は、60度のチゼルエッジ角を有するドリルを利用するのに対し、約25%低減される。
本発明の特定の実施形態について詳細に説明してきたが、それらの詳細に対する様々な修正及び代替形態を本開示の全体的な教示に鑑み発展させることができることが当業者によって認識されるであろう。本明細書に記載した本発明の好ましい実施形態は、例示目的に過ぎず、添付の特許請求の範囲及びそのすべてのあらゆる等価物の全てが記載される本発明の範囲に関し限定するものでないと意図される。

Claims (17)

  1. 加工物内に穴を作製するために使用される略円筒状の切削工具の先端であって、前記先端が中心軸線と切削端部とを有し、かつ切削方向に回転するように設計され、前記先端が、
    a1)直径方向に対向する2つの溝を有する本体と、
    a2)前記本体の外周部における前記2つの溝の間の部分であるランドであって、前縁と、前記工具の回転方向に対して前記前縁の後方に位置する縁部である後縁とを各々有するランドと、
    b)前記ランドの各々の互いに離間した1次マージン及び2次マージンであって、前記1次マージンが前記前縁に隣接し、前記本体に沿って一定のマージン直径を有する1次マージン及び2次マージンと、
    c)各々のランドの前記前縁から最内側端部に内側方向に延在する切削リップと、
    d)各々の切削リップの前記最内側端部を結ぶ線によって画定されるとともに、真直な中央部と湾曲端部とを有する「S」形状であるチゼルエッジと、
    を備え、
    e)前記中心軸線に沿って見たとき、前記チゼルエッジは、前記ランドの前縁から前記チゼルエッジの中間点まで半径方向に延在する直線と、前記中間点における前記チゼルエッジの真直な中央部と、によりチゼルエッジ角を形成し、
    f)前記チゼルエッジ角が80度〜100度である
    先端。
  2. 前記チゼルエッジ角が90度である、請求項1に記載の先端。
  3. 前記チゼルエッジの真直な中央部が、12ミリメートル〜13ミリメートルの外径を有するドリルについて0.25ミリメートルの長さを有する、請求項に記載の先端。
  4. 前記チゼルエッジが前記切削リップ内に移行し、前記移行領域が、12ミリメートル〜13ミリメートルの外径について0.4ミリメートル〜1.5ミリメートルの半径を有する、請求項1に記載の先端。
  5. ガッシュが、前記溝から前記チゼルエッジに上方に延在し、前記ガッシュが前記チゼルエッジにおける正のすくい角を画定する、請求項1に記載の先端。
  6. 前記マージンの間の凹部が、前記マージン直径MDよりも小さいクリアランス直径によって画定される、請求項1に記載の先端。
  7. 前記1次マージンが前記ランドの前記前縁に隣接し、前記2次マージンが前記ランドの前記後縁に隣接している、請求項1に記載の先端。
  8. 前記1次マージンが前記ランドの前記前縁に隣接し、前記2次マージンが前記1次マージンにより近い方向に前記後縁から離間している、請求項1に記載の先端。
  9. フランクが前記ランドと前記チゼルエッジとの間に延在し、前記ランドと前記フランクとの間に面取り部がある、請求項1に記載の先端。
  10. 面取り部が前記中心軸線に対して70度〜90度の角度を形成する、請求項に記載の先端。
  11. 溝が螺旋状である、請求項1に記載の先端。
  12. 前記先端を収容する端部を有するシャンクを有するツイストドリルをさらに含む、請求項1に記載の先端。
  13. 前記本体が、工具シャンクからの螺合ボルトと係合するための前記中心軸線に沿ったねじ付きボアを有する、請求項1に記載の先端。
  14. 切削端部に先端を有する回転可能な切削工具であって、前記先端が、
    a1)直径方向に対向する2つの溝を有する本体と、
    a2)前記本体の外周部における前記2つの溝の間の部分であるランドであって、前縁と、前記工具の回転方向に対して前記前縁の後方に位置する縁部である後縁とを各々有するランドと、
    b)前記ランドの各々の互いに離間した1次マージン及び2次マージンであって、前記1次マージンが前記前縁に隣接し、前記本体に沿って一定のマージン直径を有する1次マージン及び2次マージンと、
    c)各々のランドの前記前縁から最内側端部に内側方向に延在する切削リップと、
    d)各々の切削リップの前記最内側端部を結ぶ線によって画定されるとともに、真直な中央部と湾曲端部とを有する「S」形状であるチゼルエッジと、
    を備え、
    e)前記中心軸線に沿って見たとき、前記チゼルエッジは、前記ランドの前記前縁から前記チゼルエッジの中間点まで半径方向に延在する直線と、前記中間点における前記チゼルエッジの真直な中央部と、によりチゼルエッジ角を形成し、
    f)前記チゼルエッジ角が80度〜100度である
    回転可能な切削工具。
  15. 前記工具がシャンクを有し、前記先端本体が前記シャンクから取り外し可能である、請求項14に記載の切削工具。
  16. 前記先端本体が、前記工具シャンクからの噛合ボルトと係合するための前記抽伸軸線に沿ったねじ付きボアを有する、請求項14に記載の切削工具。
  17. 前記先端本体が前記工具シャンクの一体部分である、請求項14に記載の切削工具。
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