JP5432653B2 - 免震建物形成方法 - Google Patents
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Description
従来、この種の免震建物形成方法としては、積層ゴム支承を建物に組み込む過程において、前記積層ゴム支承に作用する上部建物重量等の鉛直荷重と、捻れ力等の水平荷重とを負担する拘束用プレートを、ボルトによって前記積層ゴム支承の上パネルと下パネルとにわたって止着しておく方法があった。(例えば、特許文献1参照)
即ち、ボルトを強く締め付けた場合には、積層ゴム支承に作用する前記鉛直荷重と前記水平荷重の何れもがすべて拘束用プレートに流れるため、プレートの強度が不足することが懸念され、有効断面積の大きな高強度のプレートを使用しなければならなくなる。従って、拘束用プレートの重量が増加するから取付作業性が低下し、且つ、コストアップに繋がるといった問題がある。
一方、ボルトを弱く締めた場合には、積層ゴム支承の拘束が不充分となり、前記鉛直荷重や水平荷重によって積層ゴム支承が変形してしまう問題がある。
以上のように、従来の方法によれば、積層ゴム支承の防護の確実性に乏しく、且つ、拘束用プレートの設置作業効率が低く、コスト高となり易い問題点があった。
尚、積層ゴム支承は、もともと鉛直荷重の作用に対しては、充分な耐力を備えているから、仮に、建物建設過程において鉛直荷重が積層ゴム支承に作用しても悪影響を与えるものではない。
また、積層ゴム支承と拘束用プレートとの接合部分の摩擦力が、鉛直荷重の作用に対しては接合部分が滑動する値となるようにボルト締め付けを行うから、作用した鉛直荷重のすべてを拘束用プレートで負担することがなくなる。即ち、拘束用プレートと積層ゴム支承との両方に分散した状態で鉛直荷重を受けるから、それに伴ってプレートの厚みや強度を適切な値に低下させることができ、材料コストの低減に加えて、軽量化による取付作業性の向上を図ることが可能となる。
また、ボルト挿通孔を大径の円形ルーズホールとするのに比べて、拘束用プレートの断面欠損をより少なくして強度低下を抑制できる。
本発明の第4の特徴構成によれば、前述の各作用を有効に利用することで、逆打ち工法で免震建物を建設する場合に、積層ゴム支承に悪影響が及ばない状態で、経済的に建設を進めることができる。
前記免震建物Bは、地下部分の建設と地上部分の建設とが並行して実施される所謂「逆打ち工法」によって形成されている。
地下部分の建設に当たっては、予め外周部に山留め壁2を形成しておき、その内側を掘削しながら地下1階部分を形成し、順次、下層の掘削と躯体の建設とを繰り返して実施される。
尚、積層ゴム支承1は、当該実施形態の免震建物Bにおいては、地下1階の各柱の上下中間部に設置されており、特に、平面視において前記山留め壁2に近接する列に設置されている積層ゴム支承1に関しては、建物の完成間際まで、水平変位を拘束する拘束用プレート3が取り付けられている。
即ち、地下掘削に先行させて地中に設置される構真柱4の上に、前記積層ゴム支承1を介して地上部分の建設が実施されるが、山留め壁2に近接する構真柱4には、地下掘削に伴う土圧変化の影響で水平変位が発生し易く(図5参照)、この水平変位が積層ゴム支承1に及ぶのを前記拘束用プレート3によって防止するものである。
前記拘束用プレート3は、図2に示すように、金属製の矩形板で構成してある。また、上辺部分と下辺部分とにそれぞれ複数のボルト挿通孔5が辺に沿って間隔をあけて設けてあり、このボルト挿通孔5に挿通させた高力ボルト6によって、前記上パネル1Aと前記下パネル1Cとにわたる状態にアングル部材7を介してボルト接合してある。
尚、拘束用プレート3は、上パネル1Aと下パネル1Cとの各4辺にわたって取り付けることに限らず、当該実施形態においては、土留め壁2への土圧の作用方向に沿ったセン断力がプレート面内応力として作用する該当辺にわたって取り付けてある。具体的には、図7に示すように、平面視において土留めコーナ部に設置される積層ゴム支承1の場合は、コーナー部で直交する二つの土留め壁2にそれぞれ面する2辺に取り付けてあり、その他の土留め壁際の積層ゴム支承1の場合は、土留め壁2の面に直交する2辺に取り付けてある。
また、図2に示すように、前記ボルト挿通孔5の内、下辺部分の各ボルト挿通孔5bは、高力ボルト6が挿通できる程度の僅かなクリアランスを備えた丸穴として設けられている。
一方、上辺部分の各ボルト挿通孔5aは、挿通させた高力ボルト6が径方向に沿って縦横に移動させることができる程度のクリアランスを備えた縦長形状のルーズホールとして設けられている。
上述の摩擦力は、該当する積層ゴム支承1に作用する水平荷重と鉛直荷重との関係から設定される。
ここに前記水平荷重とは、地下掘削に伴う土圧変化の影響で構真柱4が水平に変位する際の変位力を意味し、前記鉛直荷重とは、上方に形成された免震建物Bから積層ゴム支承1に作用する建物重量を意味する。通常の場合、建物重量(鉛直荷重)は、構真柱4の水平変位力(水平荷重)に比べて圧倒的に大きな値となる。
前記摩擦力の設定は、前記水平荷重の作用では滑動せず、且つ、鉛直荷重の作用で滑動する範囲で設定される。即ち、水平荷重〜鉛直荷重の範囲で設定される。
従って、積層ゴム支承1は、前記拘束用プレート3を装着してある状態では、前記水平荷重による水平変位は防止でき、且つ、前記鉛直荷重については、前記拘束用プレート3と共に負担することが出来る。
尚、前記アングル部材7と拘束用プレート3との接合面での摩擦力は、前記高力ボルト6の回転トルク値と一定の関係があるから、トルクレンチを用いて高力ボルトを所定回転トルクとなるように締め付けることで、所望の摩擦力を容易に確保することができる。
[1]山留め壁2を形成すると共に、その内側を地下1階部分まで掘削し、柱芯位置に、構真台柱8、構真柱4を設置する(図3参照)。
[2]構真柱4の上端部に鉄骨鉄筋コンクリート造の免震下部基礎9を形成した後、その上に積層ゴム支承1を設置する(図4参照)。
[3]前記積層ゴム支承1の上に、1階躯体を形成すると共に、土留め壁2に近接する箇所に設置してある積層ゴム支承1には、前記拘束用プレート3を取り付ける(図5参照)。
[4]地上部では上部躯体を形成する一方、地下部では二次掘削を行った後、地下1階躯体を形成する(図6参照)。以後、地上部での上部躯体の形成と、地下部での掘削と下部躯体の形成とを繰り返して実施する。
[5]免震建物Bの完成間際に、前記拘束用プレート3を取り外す。
以下に他の実施の形態を説明する。
また、拘束用プレート3の取付構造に関しても、適宜変更することが可能である。
また、積層ゴム支承1に対する拘束用プレート3の取り付け箇所は、先の実施形態で説明したものに限るものではなく、例えば、積層ゴム支承1の全周にわたって取り付けるように構成してあってもよい。
〈2〉 また、積層ゴム支承1を組み込む箇所は、先の実施形態で説明した地下1階部分に限るものではなく、他の地下階であったり、地上階の中間免震として組み込まれるものであってもよい。
〈3〉 前記積層ゴム支承1を組み込む建物は、新規建物に限らず、例えば、免震を施してない既存建物に、積層ゴム支承1を組み込む免震改修も対象となる。
1A 上パネル
1B 積層ゴム
1C 下パネル
3 拘束用プレート
4 構真柱
5 ボルト挿通孔
B 免震建物
Claims (4)
- 上下のパネル間に積層ゴムを設けて構成された積層ゴム支承を、外周部に山留め壁を設ける建物に組み込んで免震建物を形成する過程において、
複数の前記積層ゴム支承の内、平面視において前記山留め壁に近接する列に設置されている前記積層ゴム支承のみに、前記積層ゴム支承に作用する鉛直荷重と水平荷重とを負担する矩形の拘束用プレートを、その長手方向が前記土留め壁への土圧の作用方向に沿う姿勢にして、ボルト接合によって前記積層ゴム支承の上パネルと下パネルとにわたって取り付け、
前記ボルト接合によるボルトの締め付けは、前記水平荷重より前記鉛直荷重が大きい場合に、前記水平荷重の作用では滑動せず、且つ、鉛直荷重の作用で滑動する摩擦力が得られる状態に行う免震建物形成方法。 - 前記ボルトの締め付け管理は、トルクレンチによって行う請求項1に記載の免震建物形成方法。
- 前記ボルト接合に係るボルト挿通孔は、縦長形状のルーズホールとして形成する請求項1又は2に記載の免震建物形成方法。
- 前記積層ゴム支承は、逆打ち工法における構真柱の柱頭に取り付ける請求項1〜3の何れか一項に記載の免震建物形成方法。
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