JP5432033B2 - 高分子電解質膜 - Google Patents
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Description
そこで、電解質膜の強度向上手段として、各種基材を補強材として用いることが提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質膜(特許文献1)、フルオロカーボンのフィブリル(特許文献2)、ポリイミド多孔質膜(特許文献3)、又はガラス不織布(特許文献4)を用いることが提案されている。また、本出願人もナノファイバー不織布(特許文献5)を補強材としたイオン伝導膜を提案した。
従って、本発明の課題は、繰り返し発電を行っても電解質膜に亀裂が生じることがなく、耐久性に優れた燃料電池を製造することのできる高分子電解質膜を提供することにある。
本発明の好ましい態様では、前記ナノファイバー不織布が静電紡糸法により調製されたものである。
また、本発明の別の好ましい態様では、前記ナノファイバー不織布が親水化処理されたものである。
本発明の更に別の好ましい態様では、前記エラストマー繊維がポリウレタン繊維である。
また、本発明は、高分子電解質膜を含む、固体高分子形燃料電池に関する。
本発明の高分子電解質膜によれば、エラストマー繊維は復元性があるため、基材がイオン伝導性樹脂の変形に追従し、亀裂やピンホールを生じにくくする。
また、延伸処理によって作製された多孔質膜[PTFE膜、ポリプロピレン(PP)膜、ポリエチレン(PE)膜など]を基材とした場合には、基材に異方性があるために電解質膜の強度にも異方性が生じるが、静電紡糸法による基材は異方性がほとんどないため、複合して電解質膜とした場合にも異方性が見られない。
また、基材とイオン伝導性樹脂との密着性を高められるため、複合した電解質膜が膨潤、収縮しても、膜の変形に伴うピンホールや亀裂を生じにくくなる。
また、ポリウレタンは強度が強いため、薄くても強度に優れた基材である。
前記エラストマー繊維としては、高分子電解質膜に伸縮性、復元性を付与することができる任意の繊維1種類又はそれ以上を用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー繊維、ポリオレフィン系エラストマー繊維、エステル系エラストマー繊維、塩化ビニル系エラストマー繊維、ウレタン系エラストマー繊維、アミド系エラストマー繊維等を使用できる。エラストマー繊維としては、ウレタン系エラストマー繊維が好ましく、ポリウレタン繊維がより好ましい。ウレタン系エラストマー繊維は強度が強いため、薄くても強度に優れた基材とすることができる。
また、エラストマー繊維の弾性率は、高分子電解質膜材料として用いるイオン伝導性樹脂の弾性率より低い方が好ましい。
また、「平均繊維径」は50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は不織布の面方向から撮影した5000倍の電子顕微鏡写真を基に測定した繊維の太さをいう。
本発明の高分子電解質膜に用いるナノファイバー不織布は、エラストマー繊維からなり、且つ、平均繊維径が1μm未満のファイバーからなる不織布を製造することができる限り、その製造方法は特に限定されるものではないが、静電紡糸法により製造したものであるのが好ましい。静電紡糸法により作製すると基材を薄膜化しやすく、また、基材が高空隙率となることから、基材を用いることによる電解質膜のイオン伝導性の低下を抑制することができる。
前記親水化処理としては、ナノファイバー不織布の変形追従性を損なわない方法であれば、不織布の親水化処理に一般的に用いられている各種方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理が好ましい。
高分子電解質膜としては、イオン伝導性を有する高分子が用いられる。電極触媒層は、白金などの触媒貴金属を担持させたカーボンブラックと電解質樹脂から、高分子電解質膜の表面に接合して形成され、高分子電解質膜と電極触媒層を、一般に、膜/電極接合体と呼ぶ。
ガス拡散層には、カーボンペーパーなどが用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスを透過させ、電流をセパレータに伝える役割をする。セパレータは、導電性の炭素材料や金属材料などが用いられ、膜電極接合体のアノード側には水素ガス、カソード側には酸素ガスを供給すると同時に、電流を外部に取り出す役割をする。
また、本発明の高分子電解質膜におけるイオン伝導性樹脂量は特に限定するものではないが、ナノファイバーの体積に対して、1〜20倍量のイオン伝導性樹脂を複合するのが好ましく、3〜10倍量のイオン伝導性樹脂を複合するのが更に好ましい。
(1)ポリウレタンナノファイバー不織布の作製
ポリウレタン溶液(DIC株式会社製、クリスボンS−125)にジメチルホルムアミド(DMF)を加え、ポリマー濃度が15wt%の紡糸液を調製した。
次いで、吐出量1g/hr、ノズルとターゲットの距離10cm、印加電圧+10kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/45%RHの条件で静電紡糸を行い、続いて140℃のオーブン中で30分間の熱処理を行い、目付2.7g/m2のポリウレタンナノファイバー不織布を作製した。この不織布の平均繊維径は750nmであり、シートの厚さは11μmであった。
5%ナフィオン溶液をシャーレに注ぎ、その上に80mm×80mmにカットしたポリウレタンナノファイバー不織布をのせ、溶媒を蒸発させた。その後、130℃の高温槽中で10分間熱処理を行い、複合した高分子電解質膜(複合膜)を作製した。高分子電解質膜(複合膜)の厚さは23μmであった。
複合膜の弾性率は132MPa、破断応力は11.2MPaであった。また、引裂き強度は6.7N/mmであった。
なお、高分子電解質膜(複合膜)の弾性率は引張試験機を用い、サンプル幅10mm、標点間距離50mm、速度100mm/minの条件で測定した値であり、破断応力は引張試験機を用い、サンプル幅10mm、チャック間50mm、速度100mm/minの条件で測定した値であり、引裂き強度は、JIS K7128を参照し、幅25mm、速度200mm/minで測定した値である。
(1)ポリウレタンナノファイバー不織布の作製
実施例1(1)に記載の操作を繰り返し、ポリウレタンナノファイバー不織布を作製した。
15cm角の絶縁性の枠にポリウレタンナノファイバー不織布を貼り付け、距離を10cm離した電極間に配置した。その後、0.4Torrの減圧下、15kHzで1分間、プラズマ処理を行った。
(未処理の)ポリウレタンナノファイバー不織布の代わりに、プラズマ処理を行ったポリウレタンナノファイバー不織布を使用すること以外は、実施例1(2)に記載の操作を繰り返すことにより、高分子電解質膜(複合膜)を作製した。高分子電解質膜(複合膜)の厚さは15μmであった。
高分子電解質膜(複合膜)の弾性率は370MPa、破断応力は23.1MPaであった。また、引裂き強度は7.2N/mmであった。
(1)電解質膜の作製
5%ナフィオン溶液をシャーレに注ぎ、溶媒を蒸発させた後、130℃の高温槽中で10分間熱処理を行い、電解質膜を作製した。膜の厚さは15μmであった。
電解質膜の弾性率は162MPa、破断応力は10.3MPaであった。また、引裂き強度は0.8N/mmであった。
(1)ポリアクリロニトリルナノファイバー不織布の作製
重量平均分子量50万のポリアクリロニトリルをDMFに溶解させ、濃度10.5%の紡糸液を調製した。
次いで、吐出量1g/hr、ノズルとターゲットの距離10cm、印加電圧+8kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/23%RHの条件で静電紡糸を行い、続いて160℃のオーブン中で30分間の熱処理を行い、目付2.4g/m2のポリアクリロニトリルナノファイバー不織布を作製した。この不織布の平均繊維径は330nmであり、厚さは12μmであった。
ポリウレタンナノファイバー不織布の代わりに、ポリアクリロニトリルナノファイバー不織布を使用すること以外は、実施例1(2)に記載の操作を繰り返すことにより、高分子電解質膜(複合膜)を作製した。高分子電解質膜(複合膜)の厚さは13μmであった。
高分子電解質膜(複合膜)の弾性率は450MPa、破断応力は18.0MPaであった。また、引裂き強度は1.1N/mmであった。
実施例2で作製した高分子電解質膜(複合膜)又は比較例1で作製した電解質膜(未補強)に、白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製TEC10E50E、白金含量50質量%)を塗布したテフロン(登録商標)シートをホットプレス法にて転写し、電極触媒層を形成した。白金触媒使用量は、アノード、カソードともに、0.4mg/cm2とした。
電極触媒層の保護および集電性向上のため、カーボン粒子層(マイクロポーラス層;MPL)を電極触媒層上に圧着し、高分子電解質膜(複合膜)、電極触媒層、およびMPLの膜/電極接合体を作製した。なお、MPLは、PTFE多孔体ポアフロン(住友電工製)に、アセチレンブラック(電気化学工業製)と、PTFE微粒子ポリフロン(Polyflon、ダイキン工業製)と、適量の増粘剤とからなる水分散液を含浸し、350℃で30分間、焼成処理を行ったものである。
その結果、実施例2の高分子電解質膜(複合膜)の耐久回数は3200回であったのに対して、比較例1の電解質膜(未補強)の耐久回数は52回であった。
これにより、燃料電池内で電解質膜に亀裂が生じにくくなり、燃料電池の耐久性が向上したと考えられる。
Claims (5)
- エラストマー繊維からなるナノファイバー不織布の空隙にイオン伝導性樹脂が充填されていることを特徴とする、高分子電解質膜。
- 前記ナノファイバー不織布が静電紡糸法により調製されたものである、請求項1に記載の高分子電解質膜。
- 前記ナノファイバー不織布が親水化処理されたものである、請求項1又は2に記載の高分子電解質膜。
- 前記エラストマー繊維がポリウレタン繊維である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質膜。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質膜を含む、固体高分子形燃料電池。
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