JP5429251B2 - 磁気センサ装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気センサ装置およびその製造方法に関する。
既知の技術として、フリー磁性層とピン磁性層とを有するGMR素子(Giant Magneto Resistance;GMR)やTMR素子(Tunneling Magneto Resistance;TMR)を用いて物体の回転角を検出する磁気センサが知られている。これらの素子では1方向に固定されたピン磁性層の磁化方向と外部磁場に影響されるフリー磁性層の磁化方向との違いにより、素子の出力が変動することで角度を検出することができる。
通常、ピン磁性層の磁化方向は、磁場を印加しながら300℃程度でアニールすることで決定される。この場合、複数の素子を形成したウェハ全体に磁場を印加しつつ各ピン磁性層の着磁を行うので、ピン磁性層の磁化方向は1ウェハ内で全て同じ方向となる。このため、出力信号はcos曲線またはsin曲線のいずれか一方となり、1素子での360°検出はできない。
そこで、360°の検出を可能とするために2つのチップをピン磁性層の磁化の向きが90°異なるように配置することで、cos曲線とsin曲線とが得られる構造が必要となる。この構造を実現するため、従来では、上述のように1ウェハに同じ磁化方向のピン磁性層を持つ素子を複数形成し、ウェハを素子毎にチップ状に分割した後、ピン磁性層の磁化方向が互いに90°となるように2つのチップをパッケージ化していた。
しかしながら、この方法ではチップの数が多くなるために、コストアップに繋がるという問題があった。また、ピン磁性層の磁化方向が互いに90°となるようにチップの向きを制御しなければならず、組み付け誤差によって回転の検出精度が低下する可能性があった。このため、1ウェハに多くの磁化方向を設ける、ピン磁性層多極化の技術が求められている。
そこで、特許文献1では、一部の素子を加熱することで、加熱領域と非加熱領域の磁化角度の差を設ける方法が提案されている。具体的に、特許文献1では、再生用磁気ヘッドにおいて、同一チップ内での素子の磁化方向を変更するための手段として、素子の一部を加熱することによる、磁性体の保持力の差が生じることによる磁化角度の調整方法が提案されている。
なお、磁気ヘッドの構造は、特許文献2、3において、基板に凹部が設けられ、この凹部に絶縁体が形成されており、絶縁体の上にコイルが形成された構造が提案されている。
特開2006−269866号公報 特開平9−22510号公報 特開平9−22512号公報
しかしながら、特許文献1に示された加熱方法では、十分な着磁を行うために一部の素子に対して長時間の加熱を行うと、基板を熱が伝導する熱拡散が起こり、他素子まで過熱してしまうという問題がある。このため、各素子で角度誤差が生じ、検出精度に影響してしまう。したがって、回転角を検出するような角度精度が求められる磁気センサでは、熱拡散による角度誤差を低減しつつ、1チップ上で磁化方向を変更できる構造が求められる。
本発明は上記点に鑑み、1つの基板に形成した複数の磁気抵抗素子部のピン磁性層を任意の方向に着磁させたとしても、着磁による熱拡散の影響を低減することができる磁気センサ装置の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、この方法を実現するための構造を備えた磁気センサ装置を提供することを第2の目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(11)を有する基板(10)と、外部の磁場の影響を受けて磁化の向きが変化するフリー磁性層(53)と、磁化の向きが固定されたピン磁性層(51)と、を有し、基板(10)の一面(11)の上方に形成された複数の磁気抵抗素子部(50)と、を備えている。そして、複数の磁気抵抗素子部(50)には基板(10)の一面(11)に平行な面方向においてピン磁性層(51)の磁化の向きが異なるものが含まれており、各磁気抵抗素子部(50)が外部の磁場の影響を受けたときの各磁気抵抗素子部(50)の抵抗値の変化に基づいて物理量を検出する磁気センサ装置の製造方法であって、以下の点を特徴としている。
まず、基板(10)を用意する工程と、基板(10)の一面(11)の上方に各磁気抵抗素子部(50)を形成する素子部形成工程と、を行う。
続いて、基板(10)のうち各磁気抵抗素子部(50)に対応する部分に、当該部分の基板(10)の厚みを当該部分と異なる部分の基板(10)の厚みよりも薄くする空間部(14)を形成する空間部形成工程を行う。この空間部形成工程では、基板(10)において一面(11)の反対側の他面(12)に溝(13)を形成することにより、空間部(14)を形成する。
次に、磁場の向きが面方向のうちの第1の方向に設定された磁場中に、各磁気抵抗素子部(50)が形成された基板(10)を配置し、複数の磁気抵抗素子部(50)のうちの一部を局所的に加熱して磁場中アニールを行うことにより、当該磁気抵抗素子部(50)を構成するピン磁性層(51)の磁化の向きを第1の方向に着磁する第1着磁工程を行う。
この後、磁場の向きが面方向のうち第1の方向とは異なる第2の方向に設定された磁場中に、各磁気抵抗素子部(50)が形成された基板(10)を配置し、複数の磁気抵抗素子部(50)の一部とは異なる一部を局所的に加熱して磁場中アニールを行うことにより、当該磁気抵抗素子部(50)を構成するピン磁性層(51)の磁化の向きを第2の方向に着磁する第2着磁工程を行うことを特徴とする。
このように、基板(10)のうち磁気抵抗素子部(50)に対応する部分に空間部(14)を設けているので、基板(10)のうち空間部(14)によって薄くなった部分の熱伝導を抑制することができる。したがって、着磁工程において他の磁気抵抗素子部(50)に対する熱拡散の影響を低減することができる。
請求項に記載の発明では、第2着磁工程の後、溝(13)に埋込部材(70)を埋め込むことを特徴とする。これにより、基板(10)の強度を確保することができる。ここで、埋込部材(70)をパッケージ(71)に接着させても良い。
請求項に記載の発明のように、空間部形成工程では、各磁気抵抗素子部(50)に対応する空間部(14)をそれぞれ繋げて形成することもできる。
請求項に記載の発明では、一面(11)を有する基板(10)と、外部の磁場の影響を受けて磁化の向きが変化するフリー磁性層(53)と、磁化の向きが固定されたピン磁性層(51)と、を有し、基板(10)の一面(11)の上方に形成された複数の磁気抵抗素子部(50)と、を備えている。また、複数の磁気抵抗素子部(50)には基板(10)の一面(11)に平行な面方向においてピン磁性層(51)の磁化の向きが異なるものが含まれており、各磁気抵抗素子部(50)が外部の磁場の影響を受けたときの各磁気抵抗素子部(50)の抵抗値の変化に基づいて物理量を検出する磁気センサ装置である。
そして、基板(10)は、各磁気抵抗素子部(50)に対応して設けられると共に、当該基板(10)のうち各磁気抵抗素子部(50)に対応する部分に当該部分の基板(10)の厚みを当該部分と異なる部分の基板(10)の厚みよりも薄くする空間部(14)を有しており、空間部(14)は、基板(10)において一面(11)の反対側の他面(12)に形成された溝(13)により構成されていることを特徴とする。
このように、基板(10)は各磁気抵抗素子部(50)に対応した空間部(14)を有しているので、基板(10)のうち空間部(14)によって薄くなった部分の熱伝導を抑制可能な構造とすることができる。したがって、磁気抵抗素子部(50)のピン磁性層(51)の着磁の際に、他の磁気抵抗素子部(50)に対する熱拡散の影響を低減可能な構造とすることができる。
請求項に記載の発明では、溝(13)には埋込部材(70)が埋め込まれており、空間部(14)が埋込部材(70)で満たされていることを特徴とする。これにより、基板(10)の強度を確保することができる。ここで、埋込部材(70)をパッケージ(71)に接着させても良い。
請求項に記載の発明のように、各磁気抵抗素子部(50)に対応する空間部(14)を、それぞれ繋げることもできる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(a)は本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置の平面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。 図1に示される磁気抵抗素子部の断面図である。 図1および図2に示される磁気センサ装置の製造工程を示した図である。 図3に続く製造工程を示した図である。 図4に続く製造工程を示した図であり、特に着磁工程を示した図である。 本発明の第2実施形態に係る磁気センサ装置を含んだ断面図である。 本発明の第3実施形態に係る磁気センサ装置を含んだ断面図である。 (a)は本発明の第4実施形態に係る磁気センサ装置の平面図であり、(b)は(a)のB−B’断面図である。 本発明の第5実施形態に係る磁気センサ装置を含んだ断面図である。 他の実施形態を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る磁気センサ装置は、例えば自動車用のエンジン回転数検出やハンドル回転角検出等に使用されるものである。本実施形態では、磁気センサ装置として回転角を検出する回転角センサを例に説明する。
図1(a)は本実施形態に係る磁気センサ装置の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図である。図1(a)および図1(b)に示されるように、磁気センサ装置は基板10の上に2つのセンサ部20を備えている。センサ部20は、外部の磁場の影響を受けたときに抵抗値が変化する素子である。本実施形態に係るセンサ部20は、トンネル磁気抵抗素子(TMR素子)として構成されている。
基板10は、図1(b)に示されるように、Si等で形成された数百μmの厚さの半導体基板である。また、基板10は一面11および他面12を有している。
基板10の上には絶縁膜30が形成されている。そして、センサ部20は絶縁膜30の上に形成されている。センサ部20は、絶縁膜30の上に設けられた下部電極40と、磁気抵抗素子部50と、磁気抵抗素子部50の上に設けられた上部電極41と、を備えている。
図2は磁気抵抗素子部50の断面図である。この図に示されるように、磁気抵抗素子部50は、ピン磁性層51、トンネル層52、フリー磁性層53が順に形成されてTMR素子が構成されたものである。
ピン磁性層51はフリー磁性層53よりも絶縁膜30側に位置すると共に磁化の向きが固定される強磁性金属層である。トンネル層52はトンネル効果によりフリー磁性層53からピン磁性層51に電流を流すための絶縁層である。フリー磁性層53は、外部の磁場の影響を受けて磁化の向きが変化する強磁性金属層である。
このような構成の磁気抵抗素子部50は基板10の一面11の上方に位置している。そして、基板10の一面11に平行な面方向において、一方の磁気抵抗素子部50と他方の磁気抵抗素子部50とでピン磁性層51の磁化の向きが異なっている。本実施形態では、磁化の向きは互いに90°異なっている。このため、一方の磁気抵抗素子部50では回転角度に応じて抵抗値が例えばcos曲線の出力となり、他方の磁気抵抗素子部50では回転角度に応じて抵抗値が例えばsin曲線の出力となる。
センサ部20は、図1(a)に示されるように円形にレイアウトされている。このようにセンサ部20の平面レイアウトを円形としているのは、磁化の特性が良くなるためである。完全な円形ではなく、楕円でも良い。もちろん、センサ部20の平面レイアウトは円形や楕円に限らず、多角形でも良い。
また、センサ部20の積層構造の周囲には積層構造の側面に接するように絶縁膜31が形成されている。この絶縁膜31や上述の絶縁膜30として、誘電率の高い熱酸化膜、CVD酸化膜、CVD窒化膜、TEOS酸化膜等の絶縁材料が用いられている。具体例として、絶縁膜30、31はSiOやSiN等である。
そして、本実施形態に係る基板10は溝13を有している。この溝13は、基板10の他面12が一面11側に凹んだ部分であり、各磁気抵抗素子部50に対応して設けられている。この溝13により、基板10のうち各磁気抵抗素子部50に対応する部分の基板10の厚みが当該部分と異なる部分の基板10の厚みよりも薄くなっている。このため、この溝13が形成された部分に空間部14が形成されている。すなわち、基板10は各磁気抵抗素子部50に対応する部分にそれぞれ空間部14を有していると言える。
ここで、本実施形態では、絶縁膜30が露出するように基板10に溝13が形成されている。このため、基板10のうち溝13が形成された部分の基板10の厚みは無い。言い換えると、本実施形態に係る溝13は貫通孔である。しかし、基板10のうち溝13が形成された部分の厚みが薄くされた結果、空間部14が形成されている。したがって、溝13が基板10を貫通する構造についても、上記の「基板10のうち各磁気抵抗素子部50に対応する部分の基板10の厚みが当該部分と異なる部分の基板10の厚みよりも薄くなっている」構造に含まれる。
この空間部14は基板10の一部が除去されている部分であるので、基板10と比較して熱伝導が低い部分である。このため、磁気抵抗素子部50のピン磁性層51を着磁する際に基板10を局所的に加熱したときの熱拡散を抑制するという役割を果たす。
また、溝13の底部の面積は、磁気抵抗素子部50の面積よりも大きい。このため、ピン磁性層51の着磁の際に、空間部14によって他の磁気抵抗素子部50への熱拡散が抑制される構造になっている。
下部電極40は、当該下部電極40に接続された図示しない下部電極用配線を介して絶縁膜30の上に形成された図示しない下部電極用パッドに接続されている。下部電極用配線は、絶縁膜31を貫通するように形成されている。下部電極用パッドは図示しない信号処理用のチップに接続されている。
また、上部電極41は、当該上部電極41に接続された図示しない上部電極用配線を介して絶縁膜30の上に形成された図示しない上部電極用パッドに接続されている。上部電極用配線は、絶縁膜31の上に形成されている。上部電極用パッドは図示しない信号処理用のチップに接続されている。
以上が、本実施形態に係る磁気センサ装置の全体構成である。次に、上記構成の磁気センサ装置の製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。なお、図3〜図5の各図では、2つの磁気抵抗素子部50を1つのセンサ部20とした構造の断面図を示している。
まず、図3(a)に示す工程では、基板10の一面11に例えば数μmの厚さの絶縁膜30をCVD法等で形成する。
続いて、図3(b)に示す工程では、下部電極40となる金属層をスパッタ等で成膜する。そして、ミリング等でエッチングすることにより、下部電極40を形成する。なお、下部電極40となる金属層には、下部電極用配線の一部が残されるように、金属層のパターニングを行う。
図3(c)に示す工程では、下部電極40の上に磁気抵抗素子部50となる各層をスパッタ等で順に成膜する。そして、ミリング等でエッチングすることにより、各下部電極40の上に一対の磁気抵抗素子部50を形成する(素子部形成工程)。
図4(a)に示す工程では、リフトオフの方法により絶縁膜30の上に絶縁膜31を形成する。これにより、絶縁膜31が下部電極40や磁気抵抗素子部50の側面を覆う。なお、下部電極用配線の一部に繋がる図示しない孔部を絶縁膜31に形成する。
そして、図4(b)に示す工程では、絶縁膜31に形成した図示しない孔部に金属材料を埋めると共に、各磁気抵抗素子部50の上に上部電極41となる金属層をスパッタ等で成膜する。また、当該金属層をミリング等でエッチングする。これにより、上部電極41と、下部電極40に接続された下部電極用配線と、上部電極41に接続された上部電極用配線と、これらの配線にそれぞれ接続された下部電極用パッドおよび上部電極用パッドを形成する。こうして、基板10上に2つのセンサ部20を形成する。
図4(c)に示す工程では、基板10に空間部14を形成する(空間部形成工程)。このため、基板10の他面12側に対してKOHやTMAH等のSiエッチング液でウェットエッチングを行う。これにより、基板10において一面11の反対側の他面12に溝13を形成することにより空間部14を形成する。
ここで、基板10のうち各磁気抵抗素子部50に対応する部分の厚みが当該部分と異なる部分の厚みよりも薄くなるように溝13を形成するが、本実施形態では絶縁膜30が露出するまでエッチングを行う。つまり、基板10のうち磁気抵抗素子部50に対応する部分を除去する。また、溝13の底部の面積が磁気抵抗素子部50の面積よりも大きくなるように、すなわち溝13の底部の範囲内に磁気抵抗素子部50が含まれるように溝13を形成する。
この後、図5に示す着磁工程を行う。まず、図5(a)に示す工程では、一方の磁気抵抗素子部50のピン磁性層51の着磁を行う(第1着磁工程)。具体的には、磁場の向きが基板10の一面11の面方向のうちの第1の方向に設定された磁場中(H)に、各磁気抵抗素子部50が形成された基板10を配置し、一方の磁気抵抗素子部50を局所的に加熱して磁場中アニールを行う。すなわち、全てのセンサ部20に外部磁場を印加し、着磁させたいセンサ部20の磁気抵抗素子部50を300℃前後に局所的および選択的に加熱する。
本実施形態では、レーザ光をレンズ60で集光して一方の磁気抵抗素子部50に局所的に照射する。なお、図5(a)では加熱部分を斜線ハッチングで示してある。レーザ光の照射には半導体レーザやYAGレーザを用いる。レーザによる加熱は、レーザ光の照射時間が短いことや温度ばらつきが小さいという利点がある。
レンズ60で集光されたレーザ光のスポット径は、一方の磁気抵抗素子部50を完全に覆うサイズであることが好ましい。これにより、一方の磁気抵抗素子部50の全体を均一に加熱することができる。
以上のように、一方の磁気抵抗素子部50を構成するピン磁性層51の磁化の向きが第1の方向となるようにピン磁性層51を着磁する。このとき、磁気センサ装置の出力を確認しながら着磁を行うことができる。
なお、加熱の際には、まずは磁気センサ装置全体を150℃程度に加熱し、この後にレーザ光の照射を実施するという2段階加熱を行っても良い。
続いて、図5(b)に示す工程では、他方の磁気抵抗素子部50のピン磁性層51の着磁を行う(第2着磁工程)。具体的には、磁場の向きが基板10の一面11の面方向のうち第1の方向とは異なる第2の方向に設定された磁場中に、各磁気抵抗素子部50が形成された基板10を配置する。第2の方向は第1の方向に対して90°傾いた方向である。
そして、第1着磁工程と同様に、他方の磁気抵抗素子部50に局所的にレーザ光を照射することによって他方の磁気抵抗素子部50を加熱して磁場中アニールを行う。これにより、当該磁気抵抗素子部50を構成するピン磁性層51の磁化の向きを第2の方向に着磁する。このとき、磁気センサ装置の出力を確認しながら磁場中の基板10の向きを調節することにより、磁化の向きを高精度に調整できる。なお、図5(b)では図5(a)と同様に加熱部分を斜線ハッチングで示してある。
こうして、1つの基板10に形成した2つのセンサ部20の各ピン磁性層51を異なる方向に磁化させた磁気センサ装置が完成する。すなわち、一方の磁気抵抗素子部50の出力はcos曲線の抵抗値となり、他方の磁気抵抗素子部50の出力はsin曲線の抵抗値となる。
次に、磁気センサ装置が外部の磁場の影響を受けたときに物理量として回転角度を検出する方法について説明する。回転角度を検出するため、下部電極用パッドおよび上部電極用パッドを介して磁気抵抗素子部50に電流を流す。
そして、例えば、図示しない磁石が磁気センサ装置の上方に配置され、この磁石がハンドル操作によって回転すると、フリー磁性層53が磁石から受ける磁界が変化する。すなわち、各磁気抵抗素子部50が外部の磁場の影響を受けたことにより、各磁気抵抗素子部50の抵抗値の変化に基づいて各磁気抵抗素子部50に流れる電流の大きさつまり抵抗値が変化する。
ここで、一方の磁気抵抗素子部50が出力するcos曲線の抵抗値と、他方の磁気抵抗素子部50が出力するsin曲線の抵抗値と、をそれぞれ外部の演算用チップに取り出し、このチップでarcTan演算する。これにより、−180°から+180°まで、つまり360°の回転角度に応じて一定の傾きで変化する出力が得られる。したがって、出力の大きさに対応する磁石の回転角度を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態では、基板10のうち各磁気抵抗素子部50に対応する部分に溝13を形成することにより、各磁気抵抗素子部50に対応する部分の基板10の厚みを薄くする空間部14が形成されていることが特徴となっている。
このように、基板10のうち磁気抵抗素子部50に対応する部分に空間部14を設けているので、磁気抵抗素子部50のピン磁性層51を局所的に加熱したとしても、その熱が基板10を介して他の磁気抵抗素子部50に伝わりにくくすることができる。すなわち、基板10のうち空間部14によって除去された部分の熱伝導を抑制することができる。したがって、着磁工程において他の磁気抵抗素子部50に対する熱拡散の影響を低減することができる。
また、基板10に空間部14が設けられているので、基板10における各磁気抵抗素子部50間の熱絶縁に優れている。このため、各磁気抵抗素子部50を小さくすることができる。
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、一方の磁気抵抗素子部50が特許請求の範囲の「複数の磁気抵抗素子部のうちの一部」に対応し、他方の磁気抵抗素子部50が特許請求の範囲の「複数の磁気抵抗素子部の一部とは異なる一部」に対応する。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。上記第1実施形態では、溝13を形成するために、図4(c)に示す工程で基板10をウェットエッチングしていたが、Siドライエッチングを行っても良い。この場合、溝13の側面は図6に示されるように基板10の他面12に垂直に形成される。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。図7は、本実施形態に係る磁気センサ装置を含んだ断面図である。なお、図7では磁気センサ装置の断面を模式的に示しており、詳細な断面図は上述の図1(b)と同じである。
図7に示されるように、溝13には埋込部材70が埋め込まれている。これにより、溝13によって形成された空間部14が埋込部材70で満たされている。埋込部材70の材料として樹脂等が用いられる。
また、埋込部材70は、ケースやリードフレーム等のパッケージ71に接着されている。これにより、磁気センサ装置は埋込部材70を介してパッケージ71に実装されている。
埋込部材70を溝13に埋め込む工程は、第2着磁工程の後に行う。この埋込工程では単に溝13に埋込部材70を充填するだけでなく、埋込部材70を介して磁気センサ装置をパッケージ71に実装しても良い。
以上のように、熱拡散抑制のための空間部14を埋込部材70で埋めることで、基板10の強度を確保することができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分について説明する。図8(a)は本実施形態に係る磁気センサ装置の平面図であり、図8(b)は図8(a)のB−B’断面図である。
図8(b)に示されるように、基板10には、当該基板10のうち各磁気抵抗素子部50に対応する部分に中空構造15が形成されている。この中空構造15によって空間部14が形成されている。
この中空構造15を形成するため、図8(a)に示されるように、磁気センサ装置には孔部32が設けられている。本実施形態では、孔部32はセンサ部20の周囲に4箇所設けられているが、孔部32の数は適宜設定できる。そして、この孔部32は、上部電極41、絶縁膜31、および絶縁膜30を貫通して基板10にまで達し、中空構造15に繋がっている。すなわち、孔部32は、基板10に中空構造15を形成するためのいわゆるエッチングホールである。
このように、基板10に中空構造15を形成する際には、図4(c)に示す工程(空間部形成工程)において、まず、上部電極41、絶縁膜31、および絶縁膜30を貫通するように孔部32を形成する。エッチングホールである孔部32は、SiOドライエッチング等で形成する。
続いて、孔部32を介してエッチング媒体を基板10に導入する。中空構造15を形成する場合、犠牲層エッチングにより、空間部14を設ける方法がある。犠牲層エッチングの例として、犠牲層SiをXeFでエッチングする方法、犠牲層SiOをフッ酸水溶液、フッ酸ガス等でエッチングする方法、犠牲層SiGeをClFでエッチングする方法等がある。
以上のように、磁気抵抗素子部50の下部に中空構造15を形成する。これにより、空間部14を形成することができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について説明する。第3実施形態では、磁気抵抗素子部50毎に中空構造15を形成していたが、本実施形態では各中空構造15をそれぞれ繋げることで、各空間部14をそれぞれ繋げていることが特徴となっている。
図9は、本実施形態に係る磁気センサ装置を含んだ断面図である。この図に示されるように、各磁気抵抗素子部50に対応して設けられた中空構造15がそれぞれ繋げられて一つの中空構造15になっている。中空構造15は少なくとも各磁気抵抗素子部50に対応して設けられていれば良いので、複数設けられていなくても良く、図9に示されるように中空構造15が1つのまとまった空間部14を形成していても良い。
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された磁気センサ装置の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記各実施形態では、磁気センサ装置は車両に適用されるものとして説明したが、もちろん車両に限らず回転角度を検出するものとして広く利用できる。
上記各実施形態では磁気抵抗素子部50をTMR素子として構成していたが、GMR素子として構成しても良い。
上記各実施形態では、レーザ光をレンズ60で集光することにより、磁気抵抗素子部50のピン磁性層51を局所的に加熱していたが、加熱方法はレーザを用いるだけでなく、他の方法を用いても良い。これについて、図10を参照して説明する。
まず、図10(a)に示されるように、ランプ61から発せられたランプ光をレンズ60で集光して磁気抵抗素子部50のピン磁性層51を局所的に加熱することができる。ランプとしてはキセノンランプ等を用いることができる。
また、図10(b)に示されるように、磁気抵抗素子部50を局所的に加熱するための手段としては、レンズ60ではなくマスク62を用いることができる。マスク62には磁気抵抗素子部50に対応した部分が開口しており、この開口部分によって加熱したい磁気抵抗素子部50を選択することができる。このように、ランプ61とマスク62を用いて磁気抵抗素子部50を局所的に加熱することができる。
そして、図10(c)に示されるように、ヒータ63を基板10の一面11側に配置し、このヒータ63を熱源として磁気抵抗素子部50を局所的に加熱することができる。なお、基板10の他面12側からヒータ63で磁気抵抗素子部50を局所的に加熱しても良い。
上記各実施形態では基板10に2つのセンサ部20を形成することについて説明したが、ウェハ状の基板10に多数のセンサ部20を形成し、選択的にピン磁性層51の着磁を行っても良い。着磁後にウェハを分割すれば、1枚のウェハから多数の磁気センサ装置を製造することができる。このように、1ウェハに多数のセンサ部20を形成したときには1ウェハ全体を加熱しなければならないが、上記各実施形態のように、磁気抵抗素子部50を局所的に加熱し、かつ、熱拡散の抑制が可能であれば、1ウェハにまとめて多数のセンサ部20を形成することができる。また、1ウェハには多数のセンサ部20が形成されているので、各センサ部20のピン磁性層51の磁化の向きのばらつきを小さくしなければならないが、上述のように、局所的に加熱を行っているので、センサ部20の出力を確認しながら着磁を行うことができ、各ピン磁性層51の磁化の向きのばらつきを小さくすることができる。
第4実施形態では、基板10に中空構造15を形成するために、上部電極41、絶縁膜31、および絶縁膜30を貫通する孔部32を形成していた。しかし、基板10の他面12側から一面11側に延びるように基板10に孔部32を形成し、基板10に形成した孔部32を介して基板10の一面11側の一部を除去することにより中空構造15を形成しても良い。
第5実施形態では、中空構造15が繋がる形態について説明したが、第1〜第3実施形態で示された溝13についても、磁気抵抗素子部50毎に溝13を形成するのではなく、全ての磁気抵抗素子部50に対応する1つの溝13を設けても良い。また、この溝13に第3実施形態で示された埋込部材70を充填しても良い。
10 基板
11 基板の一面
12 基板の他面
13 溝
14 空間部
15 中空構造
50 磁気抵抗素子部
51 ピン磁性層
53 フリー磁性層
70 埋込部材

Claims (6)

  1. 一面(11)を有する基板(10)と、
    外部の磁場の影響を受けて磁化の向きが変化するフリー磁性層(53)と、磁化の向きが固定されたピン磁性層(51)と、を有し、前記基板(10)の一面(11)の上方に形成された複数の磁気抵抗素子部(50)と、を備え、
    前記複数の磁気抵抗素子部(50)には前記基板(10)の一面(11)に平行な面方向において前記ピン磁性層(51)の磁化の向きが異なるものが含まれており、
    前記各磁気抵抗素子部(50)が外部の磁場の影響を受けたときの前記各磁気抵抗素子部(50)の抵抗値の変化に基づいて物理量を検出する磁気センサ装置の製造方法であって、
    前記基板(10)を用意する工程と、
    前記基板(10)の一面(11)の上方に前記各磁気抵抗素子部(50)を形成する素子部形成工程と、
    前記基板(10)のうち前記各磁気抵抗素子部(50)に対応する部分に、当該部分の前記基板(10)の厚みを当該部分と異なる部分の基板(10)の厚みよりも薄くする空間部(14)を形成する空間部形成工程と、
    磁場の向きが前記面方向のうちの第1の方向に設定された磁場中に、前記各磁気抵抗素子部(50)が形成された前記基板(10)を配置し、前記複数の磁気抵抗素子部(50)のうちの一部を局所的に加熱して磁場中アニールを行うことにより、当該磁気抵抗素子部(50)を構成するピン磁性層(51)の磁化の向きを前記第1の方向に着磁する第1着磁工程と、
    磁場の向きが前記面方向のうち第1の方向とは異なる第2の方向に設定された磁場中に、前記各磁気抵抗素子部(50)が形成された前記基板(10)を配置し、前記複数の磁気抵抗素子部(50)の一部とは異なる一部を局所的に加熱して磁場中アニールを行うことにより、当該磁気抵抗素子部(50)を構成するピン磁性層(51)の磁化の向きを前記第2の方向に着磁する第2着磁工程と、を含み、
    前記空間部形成工程では、前記基板(10)において前記一面(11)の反対側の他面(12)に溝(13)を形成することにより、前記空間部(14)を形成することを特徴とする磁気センサ装置の製造方法。
  2. 前記第2着磁工程の後、前記溝(13)に埋込部材(70)を埋め込むことを特徴とする請求項に記載の磁気センサ装置の製造方法。
  3. 前記空間部形成工程では、前記各磁気抵抗素子部(50)に対応する前記空間部(14)をそれぞれ繋げて形成することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気センサ装置の製造方法。
  4. 一面(11)を有する基板(10)と、
    外部の磁場の影響を受けて磁化の向きが変化するフリー磁性層(53)と、磁化の向きが固定されたピン磁性層(51)と、を有し、前記基板(10)の一面(11)の上方に形成された複数の磁気抵抗素子部(50)と、を備え、
    前記複数の磁気抵抗素子部(50)には前記基板(10)の一面(11)に平行な面方向において前記ピン磁性層(51)の磁化の向きが異なるものが含まれており、
    前記各磁気抵抗素子部(50)が外部の磁場の影響を受けたときの前記各磁気抵抗素子部(50)の抵抗値の変化に基づいて物理量を検出する磁気センサ装置であって、
    前記基板(10)は、前記各磁気抵抗素子部(50)に対応して設けられると共に、当該基板(10)のうち前記各磁気抵抗素子部(50)に対応する部分に当該部分の前記基板(10)の厚みを当該部分と異なる部分の基板(10)の厚みよりも薄くする空間部(14)を有しており、
    前記空間部(14)は、前記基板(10)において前記一面(11)の反対側の他面(12)に形成された溝(13)により構成されていることを特徴とする磁気センサ装置。
  5. 前記溝(13)には埋込部材(70)が埋め込まれており、前記空間部(14)が前記埋込部材(70)で満たされていることを特徴とする請求項に記載の磁気センサ装置。
  6. 前記各磁気抵抗素子部(50)に対応する前記空間部(14)は、それぞれ繋がっていることを特徴とする請求項4または5に記載の磁気センサ装置。
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