JP5428363B2 - 柱梁接合構造、柱梁接合方法 - Google Patents

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本発明は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート造の柱とを接合する構造に関する。
従来より、鉄筋コンクリート造建物で大スパン架構を実現するために、梁を鉄骨造とすることが行われているが、梁を鉄骨造とする場合には、鉄骨梁の端部を柱に確実に定着させる必要がある。
このように鉄骨梁を鉄筋コンクリート造の柱に定着する構造として、例えば、特許文献1には、鉄筋コンクリート柱に接合された梁端部を構成する鉄筋コンクリート梁に、H型鋼からなる鉄骨梁の両端部を埋設し、鉄骨梁の鉄筋コンクリート梁への埋設始端位置における、ウエブと上下フランジの内面とに囲まれた全面に始端支圧プレートを取りつけ、鉄骨梁の端部位置に、ウエブ上部及びウエブ上部に連なる上側フランジに固着された上側終端支圧プレートと、ウエブ下部及びウエブ下部に連なる下側フランジに固着された下側終端支圧プレートとを取り付ける構造が記載されている。
特許第3631237号公報
特許文献1記載の構造では、鉄骨梁に曲げモーメントが作用した場合には、梁端部を構成する鉄筋コンクリート梁に、梁中央側の上部と梁端部側の下部とを結ぶような圧縮ストラットが形成され、始端支圧プレート及び終端支圧プレートが設けられていることで、鉄骨梁からこれら支圧プレートを介してより効果的に応力が伝達される。しかしながら、上記のように終端支圧プレートを上下に分割してしまうと、支圧プレートによる応力伝達効果が十分でなくなるため、曲げ耐力が低下してしまうという問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、鉄筋コンクリート造の柱間に鉄骨梁を架け渡す際に、せん断力及び曲げモーメントに対して十分な耐力を有する柱梁接合構造を提供することである。
本発明の柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱の表面から、梁端部を構成する鉄筋コンクリート部材が突出し、当該鉄筋コンクリート部材内にH型鋼からなる梁の端部が埋設されてなる柱梁接合構造であって、前記H型鋼は、前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の中間部において、ウエブの両側に、夫々、前記H型鋼の上下のフランジで挟まれる部分の全体を塞ぐように設けられた中間部スチフナを備えることを特徴とする。
上記の柱梁接合構造において、前記H型鋼は、前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の梁中央側端部において、前記ウエブの両側に、夫々、端部スチフナを備えてもよい。
また、前記端部スチフナは、前記鉄筋コンクリート部材の梁中央側端面を覆うような形状に形成されていてもよい。
また、本発明の柱梁接合方法は、鉄筋コンクリート造の柱の表面に梁端部を構成する鉄筋コンクリート部材を突出するように設け、当該鉄筋コンクリート部材内にH型鋼からなる梁の端部を埋設することにより、前記梁を前記柱に接合する柱梁接合方法であって、前記H型鋼の前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の中間部において、ウエブの両側に、夫々、前記H型鋼の上下のフランジで挟まれる部分の全体を塞ぐように中間部スチフナを設けておくことを特徴とする。
本発明によれば、梁に荷重が作用することで生じる曲げモーメントに対しては、H型鋼及び梁端部を構成する鉄筋コンクリートが夫々抵抗するとともに、さらに、中間部スチフナが上下のフランジの間の全体を塞ぐように取り付けられており、コンクリート部材に十分定着されるため、柱梁接合構造に十分な曲げ耐力を持たせることができる。また、梁にせん断力が作用した場合には、梁端部を構成するコンクリートのH型鋼の両側部に圧縮ストラットが形成される。このため、中間部スチフナを上下フランジで挟まれる部分の全体を塞ぐように設けても、十分なせん断耐力を持たせることができる。
本実施形態の柱梁接合構造を示す図であり、(A)は梁の軸方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I断面図、(C)は(A)におけるII−II断面図である。 (A)は、梁に荷重が作用した際のH型鋼に作用する応力を示す図、(B)は、鉄筋コンクリート部材に作用する応力を示す図、(C)は(B)におけるI−I断面図である。 (A)は梁に荷重が作用した際の柱梁接合構造におけるモーメント分布を示すグラフ、(B)はせん断力分布を示すグラフである。 柱梁接合構造の構築方法を説明するための図である。
以下、本発明の柱梁接合構造の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の柱梁接合構造10を示す図であり、(A)は梁20の軸方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I断面図、(C)は(A)におけるII−II断面図である。本実施形態の柱梁接合構造10は、鉄筋コンクリート造の柱30間にH型鋼21からなる梁20を架け渡すための柱30と梁20とを接合する構造である。
各柱30には、鉄筋コンクリート部材41からなる梁端部40が一体に設けられている。H型鋼21は、両端部が夫々梁端部40内に埋設されるとともに、先端がガセットプレート31により柱30に接続されている。このように、H型鋼21の端部が柱30の表面近傍まで到達しており、H型鋼21と鉄筋コンクリート部材41の鉄筋42との間で重ね継手のようにして引張荷重の伝達が行われるため、鉄筋42とH型鋼21との溶接を省略できる。なお、以下、このH型鋼21が梁端部40に埋設された区間を埋設区間という。
H型鋼21の埋設区間の中間部には、上下のフランジ22及びウエブ23により囲まれる左右の領域に鋼板からなる中間部スチフナ25が夫々取り付けられている。また、H型鋼21の埋設区間の梁中央側端部に相当する位置には、梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41の断面と同形状の端部スチフナ24が取り付けられている。
以下、かかる構成の梁20に荷重が作用した際の柱梁接合構造10における荷重の支持機構を説明する。なお、以下の説明では、梁が中央を軸に対称であるため、梁の中央から一方の側に作用する応力を考える。
図2(A)は、梁20に荷重が作用した際のH型鋼21に作用する応力を示す図、(B)は、鉄筋コンクリート部材41に作用する応力を示す図、(C)は(B)におけるI−I断面図である。また、図3(A)は梁20に荷重が作用した際の柱梁接合構造10におけるモーメント分布を示すグラフ、(B)はせん断力分布を示すグラフであり、夫々のグラフにおいて、H型鋼21が負担する分は縦線を、鉄筋コンクリート部材41が負担する分は横線を付して示している。
図3に示すように、梁20の中央部に荷重が作用すると梁20には曲げモーメントとせん断力が作用する。曲げモーメントは、梁20中央部から柱30に向かって増加する分布となり、また、せん断力の和は場所によらず一定の値となる。柱梁接合構造10はH型鋼21と梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41とが夫々曲げモーメント及びせん断力を負担し、これに抵抗する。
図2(A)に示すように、梁20に鉛直荷重が作用すると、H型鋼21には、埋設区間の梁中央側端部に上方に向かって支点反力が作用し、柱側端部に下方に向かって支点反力が作用する。このため、図3(A)に示すように、H型鋼21には、柱30に向かって埋設区間の梁中央側端部まで増加し、梁中央側端部から減少するような分布で曲げモーメントが作用し、鉄筋コンクリート部材41には支点反力に対応する応力が作用するため、梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41には、柱30に向かって増加するような分布の曲げモーメントが作用する。
かかる曲げモーメント対して、H型鋼21は、上下のフランジ22が夫々引張力及び圧縮力を負担することにより抵抗する。また、鉄筋コンクリート部材41は、曲げモーメントに対して鉄筋42の引張耐力とコンクリートの圧縮耐力により抵抗する。さらに、上記のようにH型鋼21の埋設区間の梁中央側端部に端部スチフナ24が取り付けられており、埋設区間の中間部には中間部スチフナ25が取り付けられている。このため、中間部スチフナ25が上下のフランジ22の間を塞ぐように設けられていることで、鉄筋コンクリート部材41に十分に定着されるため、柱梁接合構造10に十分な曲げ耐力を持たせることができる。
また、図2(B)に示すように、梁20に鉛直荷重が作用すると、H型鋼21には、埋設区間よりも中央側では正の値となり、埋設区間内では負の値となるような分布のせん断力が作用する。また、鉄筋コンクリート部材41には、全長に亘って一定の正のせん断力が作用する。
かかるせん断力に対してH型鋼21は、せん断力に対してウエブ23が負担することにより抵抗する。また、鉄筋コンクリート部材41はせん断力に対して、図2(B)に示すように、梁端部40に梁中央側の上部と、柱側下部とを結ぶように斜めに形成された圧縮ストラット(図中灰色で示す)が抵抗する。
そして、本実施形態では、同図(C)に示すように、圧縮ストラットは、梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41の中間部スチフナ25の両側の領域に形成され、圧縮ストラットと中間部スチフナ25とが交差することがない。また、本実施形態では、端部スチフナ24が梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41の断面と同形状(つまり、鉄筋コンクリート部材41の端面全体を覆うような形状)に形成されているため、圧縮ストラットがH型鋼21の外側の領域に形成されても、H型鋼21に作用するせん断力が梁中央側端部において、端部スチフナ24を介して圧縮ストラットに伝達される。
なお、上記のような柱梁接合構造10は、以下のようにして構築することができる。
まず、図4(A)に示すように、側面から接続筋43が突出するように梁20の両側の柱30を構築する。柱30は、PC柱部材を建て込むことにより構築してもよいし、現場において鉄筋を配筋し、型枠を設置し、コンクリートを打設して構築してもよい。そして、構築した柱30にガセットプレート31を取り付ける。
次に、図4(B)に示すように、中間部スチフナ25及び端部スチフナ24が取り付けられたH型鋼21を柱30間に建て込む。そして、ガセットプレート31により、H型鋼21の両端を柱30に接続する。また、接続筋43に鉄筋42を継手する。このとき、H型鋼21の端部が柱30の表面近傍まで到達していることで、ガセットプレート31とピン接合することができる。また、このようにピン接合することで、図2(A)を参照して説明したようなH型鋼21の負担するモーメントが柱30側端部において0となるモーメント分布が確実に実現される。
次に、図4(C)に示すように、梁端部40を構成するコンクリートを打設する。この際、端部スチフナ24は構築すべき梁端部40と同一の断面を有するため、型枠の一部として利用することができる。
以上の工程により柱30の間に梁を架け渡すことができる。
本実施形態によれば、曲げモーメントに対しては、H型鋼21は上下のフランジ22が圧縮力及び引張力を負担することにより抵抗し、また、鉄筋コンクリート部材41は鉄筋42が引張力をコンクリートが圧縮力を負担することにより抵抗する。さらに、中間部スチフナ25が上下のフランジ22の間を塞ぐように設けられていることで、鉄筋コンクリート部材41に十分に定着される。このため、柱梁接合構造10に十分な曲げ耐力を持たせることができる。
また、せん断力に対しては、H型鋼21はウエブ23がこのせん断力を負担し、また、鉄筋コンクリート部材41は圧縮ストラットが負担することにより抵抗する。この際、圧縮ストラットは、鉄筋コンクリート部材41のH型鋼21の両側部にあたる領域に形成されるため、端部スチフナ24が圧縮ストラットを交差することがなく、確実に応力が伝達されることとなり、柱梁接合構造10に十分なせん断耐力を持たせることができる。
また、端部スチフナ24が梁端部40の全領域を覆うような断面を有するため、上記のように圧縮ストラットが梁端部40を構成する鉄筋コンクリート部材41のH型鋼21の両側部にあたる領域に形成されても、圧縮ストラットと端部スチフナ24との間で確実に応力が伝達されることとなる。
なお、本実施形態では、端部スチフナ24を梁端部40の全領域を覆うような断面形状としたが、これに限らず、埋設区間の間で十分に鉄筋コンクリート部材41とH型鋼21の間の応力伝達が行われる場合には、端部スチフナ24を梁端部40の一部のみを覆うような形状としてもよいし、省略してもよい。
10 柱梁接合構造
20 梁
21 H型鋼
22 フランジ
23 ウエブ
24 端部スチフナ
25 中間部スチフナ
30 柱
31 ガセットプレート
40 梁端部
41 鉄筋コンクリート部材
42 鉄筋

Claims (4)

  1. 鉄筋コンクリート造の柱の表面から、梁端部を構成する鉄筋コンクリート部材が突出し、当該鉄筋コンクリート部材内にH型鋼からなる梁の端部が埋設されてなる柱梁接合構造であって、
    前記H型鋼は、前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の中間部において、ウエブの両側に、夫々、前記H型鋼の上下のフランジで挟まれる部分の全体を塞ぐように設けられた中間部スチフナを備えることを特徴とする柱梁接合構造。
  2. 請求項1記載の柱梁接合構造であって、
    前記H型鋼は、前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の梁中央側端部において、前記ウエブの両側に、夫々、端部スチフナを備えることを特徴とする柱梁接合構造。
  3. 請求項1又は2記載の柱梁接合構造であって、
    前記端部スチフナは、前記鉄筋コンクリート部材の梁中央側端面を覆うような形状に形成されていることを特徴とする柱梁接合構造。
  4. 鉄筋コンクリート造の柱の表面に梁端部を構成する鉄筋コンクリート部材を突出するように設け、当該鉄筋コンクリート部材内にH型鋼からなる梁の端部を埋設することにより、前記梁を前記柱に接合する柱梁接合方法であって、
    前記H型鋼の前記鉄筋コンクリート部材内に埋設された部分の中間部において、ウエブの両側に、夫々、前記H型鋼の上下のフランジで挟まれる部分の全体を塞ぐように中間部スチフナを設けておくことを特徴とする柱梁接合方法。
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