関連出願との相互参照
本出願は、2007年4月30日に出願の米国仮出願第60/914,965号の利益を主張し、この出願を引用により全体を本願に組み入れる。
本発明は貯蔵条件下メタロプロテアーゼを含む洗剤調合剤を安定化するためのタンパク質加水分解物の使用に関する。
酵素は多くの洗剤調合剤において重要な活性成分である。これは触媒的に作用するため、酵素は汚れの分解において非常に有効な成分となりうる。しかし、これは生物学的な製品であるから、酵素はまた最も高価な成分の一つである。従って、洗剤調合剤の使用期間を通じて高い酵素活性を維持することは、そのような洗剤調合剤に基づく製品の成功にとり決定的に重要である。
そのような調合剤で使用される酵素は、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、マンノシダーゼ、他の酵素およびそれらの混合物を含む。
液体中での貯蔵(つまり使用前)では酵素の安定性の維持に伴う問題は良く知られている。通常、プロテアーゼは安定性について比較的大きな問題を引き起こす。なぜなら、その触媒的活性は、自己消化(つまり、自己分解)の過程によりプロテアーゼ自身を分解するほか、調合物の他のタンパク質を分解するように作用するからである。しかし、セリンプロテアーゼ(例.スブチリシン)の安定化や安定性を向上させるため操作された突然変異種の作成が容易であるため、この種のプロテアーゼが広く洗剤調合剤で使用されてきた。実際、スブチリシンは洗剤で用途があるので最も営業的に重要なプロテアーゼ酵素の一つである。
対照的に、メタロプロテアーゼは洗剤調合剤のような産業的用途では殆どまたは全く使用されない。メタロプロテアーゼは安定性と機能をそれぞれ保持するためにカルシウムと金属イオンを絶対的に必要とするより複雑なタンパク質系を含んでいる。洗剤調合剤と他の洗浄剤組成物は通常、メタロプロテアーゼの安定性と活性を維持する問題を非常に複雑化する活性成分の複雑な組合せを含む。特に、洗剤組成物は、カルシウムと/又は必須の金属イオンにキレートする化合物を含むことが多く結果として安定性と触媒活性の低下を招く。
2006年10月12日出願の米国特許出願第11/581,102号(引用により本明細書に組み入れる)は洗剤調合剤でメタロプロテアーゼを使用する際の問題を解決する中性のメタロプロテアーゼを開示している。特に、バシラス属の種由来の中性のメタロプロテアーゼであるNprEとPMNは洗剤調合剤の条件に耐え、15mM未満の亜鉛濃度で約4週間安定性を示すことが見出された。さらに、これらの中性メタロプロテアーゼは比較的低い温度でも良好な洗浄効果を示す。特に、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来の組換え中性メタロプロテアーゼ、NprE、が他の洗剤調合剤よりもEquest Grass(Warwick)に対し良好な洗浄性能を示すことが示されている。従って、中性のメタロプロテアーゼが、もし十分に安定化される場合には、改善された商用に実現可能な産業用洗剤を作り出す可能性をもつ。
しかし、この中性のメタロプロテアーゼは、その活性の迅速な減少およびその結果、洗剤調合剤の貯蔵安定性を迅速に減少させる自己分解というプロテアーゼ共通の問題を抱えている。メタロプロテアーゼ(またはいずれかの酵素)を使用する比較的高い費用のため洗剤成分として商用に使用可能にするために使用前に活性の如何なる損失も最小限にすることが必要である。明らかに、メタロプロテアーゼの自己分解を最小にするいかなる組成及び/又は方法も使用時の所期の酵素活性(つまり、汚れ等のタンパク質成分の分解)を阻害することによりさらに余りに大きく費用を押し上げてはならない。よって、使用時の所期の活性を低下させることなく洗剤の貯蔵時に自己分解活性を最小にするために微妙なバランスを取らなければならない。従って、特に、中性のメタロプロテアーゼが洗剤調合剤や他の洗浄剤組成物に組み入れられる場合には、分解に対して中性のメタロプロテアーゼを安定化する方法、化合物、調合及び組成が依然必要とされている。
本発明は、メタロプロテアーゼ酵素とメタロプロテアーゼ阻害剤を含有する組成物と洗剤調合剤であって、それにより分解に対し安定性を改善させるものを提供する。この発明は、またこれらの阻害剤-安定化されたメタロプロテアーゼの組成物及び洗剤調合剤の調製方法も提供する。
明細書に開示された組成物と洗剤調合剤の全てはメタロプロテアーゼを含有し、改善された安定性は、酵素に結合し、この酵素の自己分解を防ぐメタロプロテアーゼ阻害剤を含有することにより生じる。これらの阻害剤により安定化した組成物と洗剤調合剤は、これらの阻害剤が結合し、貯蔵の間にメタロプロテアーゼの分解を効果的に減じ、しかし、その後、この組成物または洗剤が使用されるときは、稀釈されて阻害剤が解離し活性な酵素を与えるように調製されることが重要である。この発明は分解に対して安定化する特に効果的なメタロプロテアーゼ阻害剤としてタンパク質加水分解物を開示する。特に好ましい実施態様では、このタンパク質加水分解阻害剤はメタロプロテアーゼ自らによるタンパク質基質の加水分解により調製される。結果として得られた加水分解生成物は単離され、それを生成したメタロプロテアーゼの特に効果的な競合阻害剤である。
ある好ましい一組の実施態様では、この発明はメタロプロテアーゼ阻害剤がタンパク質加水分解である洗剤調合剤(とその調製方法)を与える。この発明のタンパク質加水分解物はある範囲のタンパク質(例.カゼイン)の加水分解(例.酵素的又は非酵素的)により生成されるペプチド断片を含む。本願の発明に関し阻害剤として有用なタンパク質加水分解物は、以下を非限定的に含む。:小麦グルテン加水分解物(例.HyPep4601TM)、大豆タンパク質酸加水分解物(例.アミソイ(Amisoy))、牛乳のカゼイン酸加水分解物(例.アミカーゼ(Amicase))、植物タンパク質由来の酵素加水分解物(例.プロテオースペプトン)を含む。加えて、この発明は1以上のメタロプロテアーゼ酵素による、例えば、目的のメタロプロテアーゼ酵素それ自身により、加水分解/消化により生成されたタンパク質加水分解素阻害剤の使用について教示する。
好ましい一組の実施態様では、この発明はバシラス属の種から単離された中性メタロプロテアーゼ、特にバシラス・アミロリキファシエンス(Bacillus amyloliquifaciens)、由来の組換え中性メタロプロテアーゼ、NprEを含む液体洗剤調合剤を提供する。
ある一実施態様では、この発明は、以下を含有する液体洗剤組成物を含む。:(a) 重量で約1%から約75%の界面活性剤 (b)重量で約10%から約95%の水(c)重量で約0.01%から約5%の中性メタロプロテアーゼ、及び(d) この阻害剤がこの中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%に結合するほどの量の中性メタロプロテアーゼ阻害剤、つまり、阻害剤が使用前に活性部位に結合し、または活性部位以外の部位に結合し、活性部位と基質の触媒的相互作用を阻害する程の量、そしてこの洗浄調合剤を適当に稀釈することにより、この阻害剤が、結合した中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約25%から解離することになるほどの量の中性メタロプロテアーゼ阻害剤。通常、液体洗剤調合剤が洗剤調合剤の200、400、500、600または1000倍もの稀釈となる多量の洗浄水へ加えられる場合が、適当な稀釈である。
この調合剤の一実施態様では、前記洗剤を稀釈したとき、阻害剤が結合した中性のメタロプロテアーゼ酵素の45%、65%、75%、85%、さらには95%以上が解離して阻害剤と結合していない状態となる。一実施態様では、調合剤用に選択された阻害剤は、pHが約6.5と約11の間で、好ましくはpHが約7.5と約9.5の間で約5mMから約15mMの間のみかけのKiで中性のメタロプロテアーゼを競合的に阻害する。ある好ましい実施態様では、洗剤調合剤は約pH8.0でみかけのKi〜10mMのタンパク質加水分解物である阻害剤を含む。
本調合剤で使用される阻害剤の絶対量は結合の親和性、酵素濃度や他の因子により変わりうるが、通常は阻害剤の量は、適当に稀釈する前の液体洗剤調合剤の重量の約0.01%と約15%の間、約0.5%と約5%の間、約0.1%と約2.5%の間である。
一実施態様では、この液体洗剤調合剤はポリプロピレングリコールと/またはカルシウムイオン(例.CaCl2)等の他の成分の存在によりさらに安定化される。いくつかの実施態様では、この調合剤はDW-AA、DW-AF、DW-AK、DW-CR、DW-CS、DW-CTからなる群から選択された一般的なHDL処方に従って作られたHDL洗剤である。いくつかの実施態様では、この液体洗剤調合剤はホウ素を含まない。
別の実施態様では、本発明は阻害剤により安定化された中性のメタロプロテアーゼ組成物であり、以下を含む。(a)の重量で 約0.001%から約10%の中性メタロプロテアーゼ(b)競合阻害剤、ここで競合阻害剤は前記中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%に結合する。一の好ましい実施態様では、この競合阻害剤はタンパク質加水分解物である。別の好ましい実施態様では、この中性メタロプロテアーゼはバシラス属の種由来で、特にB・アミロリキファシエンス由来のNprEである。この阻害剤-安定化組成物は液体または乾燥した(例.顆粒)調製品である。一実施態様では、この組成物はこの発明の上記に開示した洗剤調合剤の調製において前駆体成分として使用される。別の実施態様では、この阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、カプセル充填された粒子状である。
従って、別の実施態様では、この阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、この組成物を(a)水、(b)重量で約0.1%から約75%の洗剤界面活性剤、(c )重量で約5%から約15%のプロピレングリコール、及び(d) 約0.5mMから約5.0mMCa2+イオンと組み合わせる工程により洗剤組成物を調製するために使用される。
本発明の別の実施態様は、(a) 約6.5と約8.5の間のpHの水溶液緩衝液;(b) 重量で約0.1%から約75%の洗剤界面活性剤;(c)重量で約0.01%から約5%のメタロプロテアーゼ;及び(d)基質タンパク質(少なくとも1つ、つまり1以上のメタロプロテアーゼによる基質タンパク質の消化はメタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%に結合する生成物を生じる。)を含む成分を組み合わせる工程により製造された液体洗剤調合剤である。一実施態様では、この基質タンパク質は小麦グルテン、カゼイン、大豆タンパク質、植物性タンパク質からなる群から選択される。一実施態様では、この基質タンパク質は、重量で約0.01%から約15%で使用される。明細書に開示されている他の調合と同様、いくつかの実施態様では、このメタロプロテアーゼはバシラス属の種から単離された中性メタロプロテアーゼであり、特に、中性メタロプロテアーゼ、NprEである。
別の実施態様では、本発明は以下を含む阻害剤-安定化液体洗剤調合剤を調製する方法を提供する。(a)約6.5から約11の間のpH、約22℃から約37℃の温度で、水性の緩衝液中で少なくとも1個の、つまり1個以上の中性メタロプロテアーゼとタンパク質基質の混合物を保温する段階、ここで少なくとも一つの、つまり一以上のメタロプロテアーゼによる基質タンパク質の消化は加水分解生成物を生成する。;(b) 約5000Da未満の分子量をもつ加水分解生成物を単離する段階;及び(c)重量で約0.001%から約10%の中性メタロプロテアーゼを含む液体洗剤調合剤と段階(b)の加水分解生成物を組み合わせる段階。別の実施態様では、この発明は重量で約0.001%から約10%のメタロプロテアーゼを含む液体洗剤組成物とタンパク質加水分解生成物を組み合わせることを含む阻害剤-安定化液体洗剤調合剤を調製する方法を提供し、このタンパク質加水分解生成物は、pHが約6.5と約11の間で、温度が約22℃から約37℃で、水性緩衝液中に少なくとも一つの、つまり一以上の中性メタロプロテアーゼとタンパク質基質を含む混合物を保温することにより調製され、それにより、少なくとも一つの、つまり一以上のメタロプロテアーゼによる基質タンパク質の消化が加水分解生成物を生成し、約5000Da未満の分子量の加水分解生成物が中性メタロプロテアーゼと組み合わせる前に単離されるものである。一実施態様では、この保温混合物は、重量で約0.001%から約10%の中性メタロプロテアーゼと、約5%から約20%のタンパク質基質を含む。一つの好ましい実施態様では、この中性のメタロプロテアーゼはNprEであり、タンパク質基質は牛乳カゼインである。
一実施態様では、本発明は中性メタロプロテアーゼ遺伝子とタンパク質基質遺伝子を含む発現ベクターを含み、このタンパク質基質遺伝子生成物は中性メタロプロテアーゼ遺伝子生成物により酵素的に転換されタンパク質加水分解物である阻害剤を生成する。別の実施態様では、この発現ベクターはさらに、タンパク質基質遺伝子と機能的に連結しているプロモーターを含み、このプロモーターはタンパク質基質遺伝子生成物の発現を高め、中性メタロプロテアーゼ遺伝子生成物の発現は高めない。一実施態様では、この中性メタロプロテアーゼ遺伝子はバシラス属の種由来であり、このタンパク質基質はカゼインである。好ましい実施態様では、この中性メタロプロテアーゼ遺伝子はB・アミロリキファシエンス由来のNprEであり、このタンパク質基質はカゼインである。
図1は、ポリプロピレングリコール(PPG)とCaCl2を加えた場合に、比較的高濃度でNprEが時間経過後も高いAGLA活性を有することを示す実験的定量データのプロットを示す。全てのサンプルは、10%PPGと0.5mM CaCl2と解説に示されたNprE濃度を含む。塗りつぶした丸のデータは、PPG及びCaCl2が加えられていない625ppm NprEである対照を表す。
図2は、NprEによるカゼイン加水分解生成物が、NprEの競合的阻害剤であることを示す定常状態の速度論的データを示す。図2Aは阻害剤の量を増やしたときのNprE活性の基質依存性を示す。図2Bは共通のy切片を示す二重逆数プロットである。図2Cは阻害剤のペプチド濃度に対するみかけのKmの再プロットを示す。図2Dは、阻害剤であるペプチド濃度の量の増大に対する二重逆数プロットを示す。図2Cと2Dのx切片は約10mMのカゼイン加水分解生成物濃度のみかけのKiを示す。
図3は種々のタンパク質加水分解物の存在下で時間経過に伴うNprE活性の実験的定量データのプロットである。
発明の詳細な説明
概略
本発明は、分解に対して向上した安定性を示すメタロプロテアーゼ酵素とメタロプロテアーゼ阻害剤を含有する組成物と洗剤調合剤を提供する。本発明はまた、これらの阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物と洗剤調合剤を調製する方法も提供する。
明細書に開示された組成物と洗剤調合剤は全てメタロプロテアーゼを含み、増大した安定性は酵素へ非可逆的に結合する競合阻害剤を含み、それにより酵素の自己分解を防ぐことによる。明細書に記載されたような阻害剤は活性な部位に結合し、酵素と基質の活性部位での相互作用に直接に干渉する。また、阻害剤は活性部位以外の部位で結合し(つまり、活性部位に特異的ではない)そして、酵素と基質の触媒的相互作用を、例えば、活性部位における基質の相互作用に干渉するまたは妨げる三次または四次の構造変化を誘導することにより、阻害する。これらの阻害剤-安定化組成物と洗剤調合剤は阻害剤が結合し、貯蔵の間のメタロプロテアーゼの分解を効果的に減弱し、しかし、その後、組成物または洗剤が使用されるとき、稀釈において解離し、活性な酵素が供給されるように調製されることが重要である。本発明は、分解に対し安定化するため、特に効果的なメタロプロテアーゼ阻害剤としてタンパク質加水分解物を開示する。特に好ましい実施態様では、このタンパク質加水分解物である阻害剤は、メタロプロテアーゼ酵素それのみによるタンパク質基質の加水分解により調製される。得られた加水分解生成物は単離されても良く、それを生成したメタロプロテアーゼに対して特に効果的な競合的阻害剤である。
定義
本明細書において別に定義されている場合を除き、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野の技術者により一般に理解されているものと同一の意味を持つ。例えば、SingletonとSainsbury、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2nd Ed., John Wiley and Sons, NY(1994);及びHale とMarham、The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、明細書で使用されている多くの用語の一般的辞書を本願技術分野の技術者に提供する。本明細書に記載されているものと類似する或いは同等の方法と材料は本発明の実施で使用されるが、好ましい方法と材料は本明細書に述べられている。従って、直ぐ下に定義された用語は全体として本明細書を参照することにより、より十分に述べられることになる。また、本明細書で使用する場合、単数の表記は、文脈から明らかにそうでない場合を除き複数を含む。別に示されるのではない限り、それぞれ、核酸は、左から右へ5‘から3’方向へ書かれ、アミノ酸の配列は左から右へアミノ基からカルボキシ基の方向に書かれる。この発明が述べられた特定の方法論、試験手順、試薬に限定されないと理解されるべきである。なぜなら、本技術分野の技術者により使用される状況に応じて変わるからである。
本明細書全体の全ての最大値の限度は、より低い数値限度が明細書で明示されている場合のように、より低い数値限度を含む。本明細書全体の全ての最小値の数値限度は、より高い数値限度が明示的に記載されている場合のように、全てのより高い数値限度を含む。本明細書の全ての数値範囲は、より狭い数値限度が本明細書に全て明示されている場合のように、その広い数値範囲に含まれる全ての狭い数値範囲を含む。
引用されている全ての文書は、関連部分に関し、引用により本明細書組み入れられる。いずれの文書の引用も本発明に関して先行技術であることを認めるものとして解釈されてはならない。
本明細書で使用する場合、用語「酵素」は化学反応を触媒するいずれのタンパク質もいう。酵素の触媒的機能はその「活性」または「酵素的活性」を構成する。酵素は、酵素が実施する触媒的機能の種類、例えば、ペプチド結合の加水分解、に従い分類される。
本明細書で使用する場合、「有効量の酵素」は特定の用途(例.日常的衛生製品、洗浄剤組成物等)で求められる酵素活性を達成するために必要な酵素量をいう。このような有効量は本技術分野の通常の技術者により容易に確認でき、使用する特定酵素変異種、洗剤用途、この洗剤の具体的処方等の多くの因子に基づく。
本明細書で使用する場合、用語「プロテアーゼ」または「プロテナーゼ」はタンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒するいずれの酵素もいう。
本明細書で使用する場合、用語「メタロプロテアーゼ」、「メタロプロテナーゼ」または「メタロペプチダーゼ」はその触媒活性を行うために結合した金属イオンを要するプロテアーゼをいう。
本明細書で使用する場合、用語「中性メタロプロテアーゼ」は中性pHで活性が最大であり、触媒的活性のために亜鉛イオンを要するメタロプロテアーゼをいう。通常、中性のメタロプロテアーゼは30から40kDaの大きさである。本発明のこの中性のメタロプロテアーゼは「中性メタロエンドペプチダーゼ」ともいわれ、EC3.4.24.4の種類の酵素を含む。
本明細書で使用する場合、用語「基質」は、酵素が生成物を生じるためにその触媒的活性を及ぼす物質(例.化合物)をいう。メタロプロテアーゼの場合、非タンパク質化合物のペプチドまたはエステル結合に作用する場合もあるが、基質は普通タンパク質である。従って、用語「タンパク質基質」はタンパク質である基質をいう。
本明細書で使用する場合、用語「活性部位」は基質が結合し、触媒活性が生じる酵素の領域をいう。ある場合には、酵素は二以上の活性部位をもつ。通常、メタロプロテアーゼは、一箇所の活性部位をもつ。
本明細書で使用する場合、用語「阻害剤」は酵素活性の速度を減じるいずれかの基質をいう。例えば、阻害剤はタンパク質加水分解物、ポリペプチドまたはタンパク質加水分解物またはポリペプチドの天然または合成類縁体をいう場合がある。従って、阻害剤は中性のメタロプロテアーゼ酵素の活性部位に結合するタンパク質加水分解物の性能の面をまねる合成化合物を含み得る。
本明細書で使用する場合、用語「競合的阻害剤」は酵素へ可逆的に結合し、それにより基質が結合することを妨げる阻害剤をいい、つまり、この阻害剤は活性部位への結合について基質と競合する、または阻害剤が酵素分子の他の部分に結合し、活性部位での酵素との基質の触媒的相互作用を妨げるまたは抑制する。
本明細書で使用する場合、“Ki”または「阻害定数」は酵素-阻害剤結合複合体の解離定数、つまり遊離の酵素濃度(つまり[E])の、阻害剤の結合した酵素(つまり、[E・I])に対する比率をいう。Kiは、殆どの生化学の教科書(例えばFersht、”Enzyme Structure and Mechanism” W.H. Freeman, 第2版、1985年参照)に述べられている定常状態の酵素速度論の良く知られた技術を用いて決定できる。要約すれば、阻害定数、Kiは既知の基質による定量において酵素の定常状態での速度定数(つまり、KmとKcat)に対する阻害剤(つまり阻害剤の濃度)の効果を測定することにより決定される。
本明細書で使用する場合、「みかけのKi」は、実際の阻害剤の濃度が正確に決定できないとき測定されたKi の値である。例えば、阻害剤が加水分解生成物の混合物(つまり、タンパク質断片の混合物)であるとき、測定されるKi は「みかけのKi 」である。なぜなら、絶対的な阻害剤の濃度は、例えばペプチドの濃度の化学的な分析に基いてのみ見積もることができるからである。混合物中の酵素分子に結合し、結果として阻害を行う特定の断片の実際の濃度は測定された濃度よりずっと低いであろう。結果として「みかけのKi 」は精製された阻害剤を使用して決定されるKi値よりも高いであろう。
本明細書で使用する場合、用語「自己分解」は自らの酵素による組織または細胞の分解をいう。一実施態様では、この用語「自己分解」は、それ自身のポリペプチド鎖の酵素による加水分解、例えば、プロテアーゼ酵素による自己タンパク質分解をいう。
本明細書で使用する場合、酵素に関して用語「安定性」はある環境条件である期間にわたりある水準の機能的活性を維持する性能をいう。用語「安定性」は関心のある特定の環境条件について述べる多くの場面で使用できる。例えば、「自己分解に関する安定性」は酵素が自己分解(つまり、自己タンパク質分解)に耐える性能をいう。安定性の実質的な変化は、安定剤(例.阻害化合物)のない条件での酵素活性と比較して、酵素活性の半減期に少なくとも約5%またはそれ以上の増大または減少(殆どの実施態様では、増大が好ましい)により立証される。この用語はタンパク質の安定性を評価するためいずれか特定のプロテアーゼについて使用に限定することを意図していない。
本明細書で使用する場合、用語「酵素的変換」は、基質または中間体を酵素と接触させることにより基質または中間体を生成物へ変化させることをいう。いくつかの実施態様では、接触は、基質または中間体を適した酵素に直接に触れさせることにより行われる。他の実施態様では、接触は基質または中間体を酵素を発現し及び/または分泌する生物に触れさせる、及び/または所期の基質及び/または中間体を目的とする中間体及び/または最終製品に代謝する生物に接触させることをそれぞれ含む。
本明細書で使用する場合、用語「消化」はタンパク質の基質をプロテアーゼにより生成物へ酵素的に転換することをいう。
本明細書で使用する場合、用語「精製された」と「単離された」はサンプルから汚染物質を除くこと及び/又は物質(例.ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)が天然に組み合わされている物を除くことをいう。
本明細書で使用する場合、用語「加水分解物」は加水分解により生成されたいずれかの物質をいう。この用語は加水分解のいずれかの特定の方法により生成された物質に限定する意図はない。この用語は非酵素的反応と酵素的反応により生成された「加水分解物」を含むことを意図している。例えば、既知の加水分解酵素のいずれかは(例.セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、加水分解酵素等)この用語が本出願で使用される意味の範囲内にある加水分解物を生成することができる。同様に、加水分解の非酵素的方法(例.酸/塩基加水分解等)もこの用語が本出願で使用される意味の範囲内にある加水分解物を生成する。
本明細書で使用する場合、用語「タンパク質加水分解物」はいずれかの種類または分類のタンパク質の加水分解により生成される加水分解物をいう。いずれかの既知のタンパク質は加水分解されて本出願で使用されるこの用語の意味の範囲内にあるタンパク質加水分解物を生成する。「タンパク質加水分解物」は非酵素的方法と酵素的方法により生成されても良く、大きさが2から100個以上のアミノ酸にわたるタンパク質断片(例.ポリペプチド)を含んでもよい。さらに、本明細書で使用する場合、「タンパク質加水分解物」は単一の生成化合物に限定されず、加水分解生成物(例.タンパク質断片)の不均一な分布または混合物を含んでもよい。これはまた、加水分解生成物の均一な化合物または精製された画分も含んでよい。タンパク質加水分解物の好ましい実施態様はHyPep 4601TM(例.小麦グルテンからのタンパク質加水分解物)、アミソイ(Amisoy)(大豆タンパク質の酸加水分解物)、アミカーゼ(Amicase)(牛乳のカゼイン酸加水分解物)、プロテオースペプトン(Proteose peptone)(植物性タンパク質からの酵素的加水分解物)を含む。
本明細書で使用する場合、「タンパク質」はアミノ酸からなり、本願技術分野の技術者によりタンパク質として識別されるいずれかの組成物をいう。用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は本明細書では相互に入れ替えて使用される。あるペプチドがタンパク質の一部である場合、本技術分野の技術者は文脈の中でこの用語の使用を理解する。用語「野生型」と「天然型」は天然に見出されるタンパク質をいうために使用される。いくつかの実施態様では、野生型のタンパク質の配列はタンパク質工学の計画の開始点である。
本明細書で使用する場合、用語「関連タンパク質」または「類縁タンパク質」は機能的にまたは構造的に類似している(つまり、類似の作用及び/または構造をもつ)タンパク質をいう。この用語は異なる種から得られた同一または類似の酵素(つまり、構造及び機能の点で)を含むことを意図している。本発明を進化上の関連のあるいずれか特定の起源またはタンパク質に由来する関連するタンパク質に限定することは意図していない。加えて、用語、関連または類縁タンパク質は三次構造の類縁体と一次配列の類縁体を含む。従って、この用語は野生型の配列と比較して「変異型」または「突然変異型」配列をもつタンパク質を含む。
本明細書で使用する場合、用語「洗剤」「洗剤組成物」及び「洗剤調合剤」は汚れた対象物の洗浄用の洗浄媒体で使用することを意図された混合物をいう。いくつかの実施態様では、この用語は布地及び/または衣服の洗濯に関して使用される(例.「洗濯洗剤」)。他の実施態様では、この用語は皿、刃物類等(例.「皿洗い洗剤」)の洗浄に使用されるもののような洗剤をいう。一般的に、この用語は、例えばメタロプロテアーゼ酵素、タンパク質加水分解物のようなメタロプロテアーゼ阻害剤、ポリプロピレングリコールのような酵素安定化剤、界面活性剤、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、酸化還元酵素、洗浄助剤、漂白剤、漂白活性剤、青み剤及び蛍光染料、固化防止剤、マスキング剤、酵素活性剤、抗酸化剤、溶解剤を含む「重質液体(HDL)」調合剤等の処方を含むことが意図されている。本発明をいずれかの特定の洗剤調合剤または組成物に限定することは意図されていない。
本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は表面張力を減じる表面活性化合物である。この用語は非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性電解界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、半分極性非イオン性界面活性剤、及びそれらの混合物等の全ての良く知られた種類の界面活性剤と界面活性剤系を含むことを意図している。
本明細書で使用する場合、語句「洗剤安定性」は、ある環境条件下で、ある期間、洗浄媒体中で汚れた対象物を洗浄する性能を維持する洗剤組成物の性能をいう。洗剤安定性は、貯蔵期間(つまり、使用前)の安定性、または洗浄媒体中での使用時の安定性をいうため使用されることもある。洗剤安定性は安定性を測定するために使用されている洗浄試験の種類により変わりうる。さらに、洗剤安定性は、特定の洗剤成分が洗浄試験に関し相当に寄与している場合、洗剤調合剤中のこの特定の活性成分の安定性と密接に対応していることもある。
本明細書で使用する場合、「洗浄剤組成物」と「洗浄剤調合剤」は、別に記載がされているのではない限り、布地、皿、コンタクトレンズ、他の汚れた物質、髪(シャンプー)、皮膚(石鹸とクリーム)、歯(口腔洗浄剤、練り歯磨き)など洗浄を受ける物品から好ましくない化合物の除去に使用される組成物をいう。この用語は、この組成物が組成物中で使用されるメタロプロテアーゼと他の酵素と共存できるものである限り、特定の種類の好ましい洗浄剤組成物及び製品の形態(例.液体、ゲル、顆粒、またはスプレー組成物)に選ばれるいずれの材料/化合物をも含む。洗浄剤組成物の材料の具体的な選択は洗浄を受ける表面、物品または布地、及び使用時の洗浄条件に適した組成物の好ましい形態を考慮して一般的な技術者が容易に行うことができる。
用語「洗浄剤組成物」と「洗浄剤調合剤」は、さらにいずれの対象物及び/又は表面の洗浄、漂白、消毒、及び/または滅菌に適したいずれの組成物をもいう。この用語は洗剤組成物を非限定的に含むことが意図されている(例.液体及び/又は固体洗濯洗剤と繊細な布地用洗剤;例えばガラス、木、陶器と金属製のカウンタートップ及び窓用の硬い表面の洗浄剤調合剤;カーペット洗浄剤:オーブン洗浄剤;布用消臭剤;布用柔軟剤;織物と洗濯用予備しみ抜き剤(laundry pre-spotters)及び皿洗浄剤)。
さらに、用語「洗浄剤組成物」と「洗浄剤調合剤」は、本明細書で使用する場合、別途示されない限り、顆粒状または粉末状の全用途用または重質洗浄剤を含み、特に洗浄洗剤;液体、ゲルまたは糊状の全用途用洗浄剤、特にいわゆる重質液体(HDL)のタイプ;液体の繊細な布地用洗剤;手洗い用皿洗い用洗剤または軽質皿洗い用洗剤、特にあわ立ちの良いタイプ;家庭及び施設用の種々の錠剤、顆粒、液体及びすすぎの容易なタイプ等の皿洗い機用洗剤;抗菌性手洗いタイプ、洗浄石鹸(cleaning bar)、口腔洗浄剤、入れ歯洗浄剤、自動車またはカーペット洗浄剤、浴室洗浄剤等の液体洗浄剤及び消毒剤;髪のシャンプーと髪のリンス剤;シャワー用ゲルとフォームバス(foam bath)と金属洗浄剤;漂白用添加剤と「部分汚れ用洗剤(stain-stick)」または予備洗浄タイプを含む。
本明細書で使用する場合、「布地」は織物の材料を含む。よって、この用語は衣類、布地、織物用糸、繊維、不織布、天然材料、合成材料、及び他の織物材料を含むことを意図している。
用語「組み換えDNA分子」は、本明細書で使用する場合、分子生物学的技術という手段により繋ぎ合わされたDNA断片からなるDNA分子をいう。
用語「組み換えオリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチド配列の制限酵素による切断により生成された2以上のオリゴヌクレオチド配列のリガーゼによる結合、オリゴヌクレオチドの合成(例.プライマーまたはオリゴヌクレオチドの合成)等を非限定的に含む分子生物学的操作を用いて作成されたオリゴヌクレオチドをいう。
用語「調節因子」は、本明細書で使用する場合、核酸配列の発現のある面を制御する遺伝子の要素をいう。例えば、プロモーターは機能的に連結したコーディング領域の転写の開始を促す調節因子である。他の調節因子はスプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル及び終止シグナルを含む。
用語「プロモーター/エンハンサー」はプロモーターとエンハンサー両機能を与えることができる配列を含むDNAの断片を示す(例えば、レトロウィルスの長い末端の繰り返しはプロモーターとエンハンサーの両機能を含む。)エンハンサー/プロモーターは「内在性」または「外来性」または「異種性」である。内在性のエンハンサー/プロモーターはゲノム内の所与の遺伝子と天然に連結しているものである。外来性(異種性)のエンハンサー/プロモーターは遺伝子操作(つまり、分子生物学的技術)という手段により遺伝子に近い位置(juxtaposition)に置かれるものである。
本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、適した宿主内でDNAの発現を行うことができる、適した制御配列に機能的に連結しているDNA配列を含むDNA構造体をいう。そのような制御配列は、転写を行うプロモーター、そのような転写を制御する任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列と転写と翻訳の終止を制御する配列を含む。このベクターはプラスミド、ファージ粒子、または単にゲノムに挿入可能な配列である。適した宿主を軽質転換した後、このベクターは宿主のゲノムと独立して複製し機能し、またはいくつかの場合には、ゲノム自身に取り込まれる。
用語「プラスミド」、「発現プラスミド」及び「ベクター」は本明細書では相互に入れ替えて使用されるが、プラスミドが現在ベクターの最も普通に使用される形態である。しかし、この発明は、同等の機能を発揮し、この技術分野で既知である発現ベクターの他の形態を含むつもりである。
細胞へ核酸配列を挿入する文脈で用語「導入される」は形質転換、形質導入またはトランスフェクションを意味する。形質転換の手段は、この技術分野で知られているようなプロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈殿、電気的穿孔法、裸のDNA等を含む(Chang and Cohen, Mol.Gen.Genet.,168:111-115[1979];Smithら、Appl.Env.Microbiol.,51:634[1986];及びFerrariらによる総説 in Harwood, Bacillus, Plenum Publishing Corporation,pp.57-72[1989]参照)
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は一般的に、この技術分野で既知の組み換えDNA技術を用いて構成されたベクターで形質転換または感染された原核細胞または真核細胞宿主である。形質転換された宿主細胞はタンパク質の変異種をコードするベクターを複製でき、または好ましいタンパク質変異種を発現する。タンパク質変異種の前駆体またはプレプロ体(prepro-form)をコードするベクターの場合、そのような変異種は、発現されたとき、通常、宿主の培地へ宿主細胞から分泌される。
中性メタロプロテアーゼ酵素
メタロプロテアーゼは細菌、菌類及びより高度な生物に見出される種々の種類のプロテアーゼである。メタロプロテアーゼの活性部位に結合した金属イオンは水分子の触媒的活性化を起こす。この水分子は次に、ペプチド結合のカルボニル基の開裂をするため求核剤として機能する。多くの種類の配列と構造がこのクラスには存在するが、メタロプロテアーゼの大部分は活性部位に亜鉛イオンを結合している。いくつかのメタロプロテアーゼでは、活性を失うことなく亜鉛イオンがコバルトまたはニッケルのような別の金属イオンにより置き換えられることもある。現在理解されているところでは、メタロプロテアーゼの触媒的反応機構は、この酵素が開裂する結合のカルボニル基へ亜鉛と結合した水分子が攻撃して形成される非共有結合の正四面体中間体を含む。
中性のメタロプロテアーゼ(つまり、中性メタロエンドペプチダーゼ、EC3.4.24.4)は触媒活性に亜鉛イオンを絶対的に必要とするプロテアーゼのクラスに属する。これらの酵素は中性のpHで最大の活性であり、30から40kDaの大きさである。中性のメタロプロテアーゼはこのタンパク質の構造的安定性に寄与する2個から4個のカルシウムイオンを結合する。この中性メタロプロテアーゼ類は、カルボキシペプチダーゼA(消化酵素)、のほか細菌酵素テルモリシン(thermolysin)と他のテルモシリン様のプロテアーゼ(thermolysin-like proteases)(TLP)及び組織の再生と分解に関わる反応を触媒するマトリックスメタロプロテアーゼを含む。
恐らく、機能と安定性面で、最も良く特徴付けのなされている中性メタロプロテアーゼは、テルモリシンとTLP類である。多くの研究がバシラス・スブチリス テルモリシンを操作してその熱的安定性を増大させることに費やされた(例えば、Vriendらによる、Tweelら(編)のStability and Stabilization of Enzymes, Elsevierの,pp.93-99[1993]参照)高温での自己分解と変性を促す部分的な変性過程を防ぐことができる、分子モデリングにより同定された構造決定因子の変化によりTLPの安定性を増大させるために、多くの努力がなされた(例えば、van den Burgらによる Hopsu-Havuら(編)のProteolysis in Cell Functions Manipulating the Autolytic Pathway of a Bacillus Protease Biomedical and Health Research Vol.13,IOS Press[1997]p.576参照)。カルシウムイオンが中性メタロプロテアーゼ自己分解の防止を促すことができることが報告されている。B・ステアロテルモフィラス(B.stearothermophilus )中性プロテアーゼはカルシウムの添加により自己分解やタンパク質分解に対し安定化された(Duerrschmidtら、FEBS J..,272:1523-1534[2005])。
改善された特徴をもつ、NprE等の中性のメタロプロテアーゼを操作する組成物と方法は、2006年10月12日に出願の米国特許出願第11/581,102号に記載されている。これは引用により本明細書に組み入れる。他の面では米国特許出願第11/581,102号はその構造的安定性を維持するためにカルシウムと独立した中性のメタロプロテアーゼの操作に適した組成物と方法を提供する。それに記載された他の実施態様では、中性のメタロプロテアーゼの操作はタンパク質分解を予防できる特定の二次構造因子の部分的な変性を防ぐ。
安定な中性メタロプロテアーゼの中で、米国特許出願第11/581,102号にはバシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来の野生型メタロプロテアーゼ(例.精製MULTIFECT(登録商標)Neutral:「PMN」)と、NprEと呼ばれる組み換え中性メタロプロテアーゼ(例.バシラス・スブチリスにクローンされたバシラス・アミロリケファシエンスの中性メタロプロテアーゼ)が記載されている。
バシラス・アミロリケファシエンス由来の中性メタロプロテアーゼに加えて、本発明は、B.セレウス(B.cereus)、B.セレウスE33L、B・カルドリチカス(B.caldolyticus)、B・プミリス(B.pumilis)、B・メガテリウム(B.megaterium)、B・スブチリス・アミロサッカリチカス(B.subtilis amylosacchariticus)、ブレビバシラス・ブレビス(Brevibacillus brevis)、パエニバシラス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)(バシラス・ポリミクサ(Bacillus polymyxa))、B・ステアロテルモフィラス(B.stearothermophilus)、B・スリンギエンシス(B.thuringiensis)、B・スブチリス(B.subtilis)、S・アウレウス(S.aureus)及びアウレオリシン(aureolysin)から得られるメタロプロテアーゼ類縁体等を非限定的に含む他の起源由来の、特にバシラス属の種由来の関連する酵素及びアウレオリシン、細胞外エラスターゼ、中性プロテアーゼBの使用を意図している。
本発明の実施態様に関し有用なメタロプロテアーゼは、溶液または調製物中のメタロプロテアーゼではない、汚染タンパク質や他の化合物の除去により精製されても良い。いくつかの実施態様では、組み換えメタロプロテアーゼは細菌または菌類宿主細胞に発現され、これらの組み換えメタロプロテアーゼは、他の宿主細胞の構成要素の除去により精製される。そのようにして組み換えメタロプロテアーゼポリペプチドのパーセントは、サンプル中で大きくなる。特に好ましい実施態様では、本発明に従い使用されるメタロプロテアーゼは、SDS-PAGEまたはこの技術分野で知られている他の標準的方法により決定するとき、タンパク質成分の少なくとも約99%の水準まで十分に精製される。別の好ましい実施態様では、本発明のこのメタロプロテアーゼはこの組成物のプロテアーゼ成分の少なくとも約99%を占める。さらに他の実施態様では、このメタロプロテアーゼは、総タンパク質及び/またはプロテアーゼの少なくとも約90-95%の範囲で含まれる。
野生型と変異型のメタロプロテアーゼ酵素の機能的な特徴づけはいずれかの適した手段により行われ、好ましくは関心のある性質の評価に基づく。例えば、pHと/または温度安定性は、洗剤への安定性及び/または酸化安定性と同様、本発明のいくつかの実施態様で決定される。実際、一以上のこれらの特性(タンパク質分解または自己分解安定性、洗剤安定性、pH、温度、及び/又は酸化安定性)において種々の程度の安定性をもつメタロプロテアーゼ酵素は本発明の中で使用されても良いと考えられている。
洗剤調合剤の安定性について酵素を改善する一つの方法は酵素そのものの構造を変化させることである。つまり、洗剤調合剤中で増大した活性、及び/または特異性を示す変異したアミノ酸配列をもつ酵素の開発である。例えば、多くのプロテアーゼの変異種がこの技術分野で開示されている。例えばEP第0130756号、これは、米国再出願特許第34,606号(Genencor)に対応する;EP第0214435号(Henkel)、WO87/04461(Amgen);WO87/05050(Genex);EP0260105(Genencor);WO88/08028(Genex);WO88/08033(Amgen);WO95/27049(Solvay);WO95/30011(Procter&Gamble);WO95/30010(Procter & Gamble);WO95/29979(Procter & Gamble);米国特許第5,543,302号(Solvay);EP0251446(Genencor);WO89/06279(Novozymes A/S);WO91/00345(Novozymes A/S);EP0525610 A1(Solvay) を参照せよ。
少数のアミノ酸残基により、変異酵素は親タンパク質と互いに異なることができる。異なるアミノ酸残基の数は1以上であり、好ましくは、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸残基である。いくつかの好ましい実施態様では、変異種の間の異なるアミノ酸の数は1と10の間である。いくつかの特に好ましい実施態様では、関連するタンパク質と、特に変異したタンパク質は少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%のアミノ酸配列が同一である。
本発明の酵素の変異種を生じるに適したいくつかの方法がこの技術分野で知られている。この方法には、部位飽和変異誘発(site-saturation mutagenesis)、系統的変異導入法(sacnning mutagenesis)、挿入変異誘発(insertional mutagenesis)、ランダム変異誘発(random mutagenesis)、部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)、部位特異的進化(directed-evolution)のほか、種々の他の組み換えの方法等が非限定的に含まれる。
中性メタロプロテアーゼ変異種の配列の範囲は、2006年10月12日出願の米国特許出願第11/581,102号に記載され、引用により本明細書に組み入れる。これらの変異酵素は野生型の酵素とさまざまな程度で機能特性が異なりうる。しかし、そのような中性メタロプロテアーゼが自己分解活性をもち、そしてタンパク質加水分解物により競合的に阻害ざれる程度に応じ、これは本明細書に開示されている処方と方法に従い使用できる。従って、本明細書に述べられた阻害剤-安定化メタロプロテアーゼの実施態様は野生型中性メタロプロテアーゼ酵素を用いて使用されるだけでなく、ある範囲の活性な突然変異種や他の変異種を用いて使用されても良い。
ある実施態様では、本発明は、特定のタンパク質加水分解物が、洗剤調合剤において安定性を向上させるためより好ましい阻害剤結合特性を示すように、中性メタロプロテアーゼの活性部位を操作するため部位特異的変異誘発の使用を認めている。突然変異種の中性メタロプロテアーゼ「部位評価ライブラリー」(SEL)を作成する方法が2006年10月12日出願の米国出願第11/581,102号に開示され、これは引用により本明細書に組み入れられる。本発明に従い、これらのSELsは中性メタロプロテアーゼの活性部位の突然変異のライブラリーを作成するために使用でき、次に洗剤調合剤と洗浄剤組成物において自己分解に対し安定化するため、これらの阻害剤の性能を高めるタンパク質加水分解物(または他の阻害剤)の結合性についてスクリーニングを受けることができる。
阻害剤及び安定剤としてのタンパク質加水分解物
NprEのような中性のメタロプロテアーゼは、溶液で保存されるときは、時間の経過とともに活性が大きく低下することがある。この酵素活性の損失の多くは自己分解、つまり、中性のメタロプロテアーゼ分子が他のメタロプロテアーゼ酵素分子またはそれ自身をすら、触媒的にタンパク質分解することに帰せられる。自己分解はその酵素の折りたたまれた構造を非可逆的に壊すことができその機能と活性は大きく減少しまたは完全に破壊される。通常、活性のこの自己分解による活性の減少は、洗剤調合剤がさらされる洗浄条件でしばしば使用される比較的高温で悪化する。結果的に、この酵素活性の損失は洗剤の安定性の直接的な損失となる。
理想的には、自己分解を最小にするため各中性メタロプロテアーゼ分子は、それが使用されるときまでその触媒活性を維持すべきである。酵素の阻害剤はその活性をブロックする。しかし酵素の活性部位への阻害剤の結合は、非常に強固で不可逆的であることが多い。例えば、いわゆる「自殺阻害剤(suicide inhibitor)」は、触媒活性を再び持ち得ないように化学的に酵素の活性部位を変える。
ホウ素をベースにした阻害剤化合物(例.ホウ酸と種々のボロン酸)のような阻害剤を加えることにより洗剤調合剤中のセリンプロテアーゼの貯蔵安定性を改善する方法が知られている。これらのホウ素ベースの阻害剤はセリンプロテアーゼ酵素を可逆的に阻害することが知られている。例えば、ボロン酸によるセリンプロテアーゼスブチリシンの阻害に関する議論はMolecular & Cellular Biochemistry 51,1983,pp.5-32に記載されている。しかし、これらのホウ素ベースの阻害剤はメタロプロテアーゼを強く阻害することはない。メタロプロテアーゼは、セリンプロテアーゼと異なる触媒機構により機能する。加えて、いくつかの規制当局はホウ素-ベースの化合物の安全性に関し疑問を呈し始め、環境へのこれらの放出を制限することを考えている。
本発明の目的のため、可逆的にメタロプロテアーゼの自己分解活性を防ぐメタロプロテアーゼの阻害剤が望まれている。この阻害剤は、メタロプロテアーゼが貯蔵されているときは固くしかし可逆的に結合し、その後、その触媒的活性が望まれるときには酵素分子から解離し、それにより酵素に活性を回復させるべきである。さらに、この可逆的阻害剤は、この酵素が洗剤調合剤または他の洗浄剤組成物中の成分であるときには、その環境条件と適合できなければならない。
従って、一実施態様では、本発明は、次のものを含む阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物を提供する:(a) 重量で約0.001%から約10%の中性メタロプロテアーゼ。及び(b) 競合的阻害剤。ここで競合的阻害剤は前記中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%に結合する。この阻害剤-安定化組成物は液体または固体(例.顆粒)の調製物でありえる。一実施態様では、この組成物は下記にさらに詳しく述べられるこの発明の洗剤調合剤の調製において前駆体成分として使用される。別の実施態様では、この阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、下記に詳しく述べられるようにカプセル充填された粒子である。
比較的高濃度で貯蔵されると、セリンプロテアーゼ酵素は比較的高い活性を保持することは良く知られている。これは、この酵素が比較的高い濃度であるときに、セリンプロテアーゼ活性部位への自己分解生成物の結合によると信じられている。言い換えれば、自己分解生成物の解離速度は、非常に小さくなっている。実際、比較的高い触媒濃度では、阻害剤として作用する自己分解生成物が生じる。(希釈により)濃度が低くされると、自己分解生成物は、容易に解離でき、そして自己分解反応が再び始まる。
実施例1で下記に開示するように、この中性メタロプロテアーゼは、高濃度で貯蔵するとき、安定性が増大する。(つまり、時間が経過しても比較的高い活性を保持する)セリンプロテアーゼ酵素の場合と同様、濃度に伴う安定性の増大は、メタロプロテアーゼ酵素の自己分解生成物が阻害剤として作用していることを示している可能性がある。
従って、一実施態様では、本発明は中性のメタロプロテアーゼ溶液を含む安定化された中性のメタロプロテアーゼ調合剤を含み、この中性のメタロプロテアーゼの濃度は少なくとも約500ppm、1000ppm、2500ppm、5000ppm、10000ppmまたはそれ以上にですらある。一実施態様では、この中性メタロプロテアーゼ溶液はさらに少なくとも約10%のプロピレングリコールを含む。別の実施態様では、この中性メタロプロテアーゼ溶液はさらに少なくとも約0.5mM、例えば約0.5mMから約5mMのカルシウムイオンを含む(例.塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム)。一実施態様では、この中性メタロプロテアーゼ溶液は約0.5mMから約5mMのCaCl2を含む。
NprEのような、中性のメタロプロテアーゼが高濃度で自己分解の生成物による抑制をうけるという観察は、他の加水分解生成物が自己分解に対して安定化を行う阻害剤として作用しうることを示唆する。従って、一実施態様では、本発明は中性のメタロプロテアーゼとタンパク質加水分解物を含む、中性のメタロプロテアーゼ含有調合剤(または組成物)を含む。一実施態様では、このタンパク質加水分解物は中性メタロプロテアーゼそのものにより生成される。例えば、下記の実施例2で開示されているように、ミルクのカゼインのようなウシのタンパク質は活性な中性のメタロプロテアーゼ、例えばNprEにより処理を受け、酵素的にタンパク質加水分解混合物を生成する。通常、この酵素により生成されたタンパク質の加水分解物は種々の大きさのペプチド生成物の不均一な混合物であり、例えば、NprEで触媒されたカゼインの消化により生じたペプチドである。一実施態様では、この酵素により生じたタンパク質加水分解物の組成物はそのまま阻害剤として使用できる。他の実施態様では、この混合物はさらに単離及び/または精製され、より濃縮された及び/またはより均一なタンパク質加水分解物組成物となる。
本発明の一実施態様では、中性のメタロプロテアーゼが生成したタンパク質加水分解物は5000Da分子量除去膜を通り低分子量の混合物となる。この低分子量混合物は次に、貯蔵中の自己分解に対し中性メタロプロテアーゼを安定にするために中性メタロプロテアーゼを含む調合剤へ加えられる。
本発明に従い、このメタロプロテアーゼ阻害剤は競合的阻害剤であるべきである。競合的阻害剤(これは可逆的に結合する)を使用することにより、相当に少ない量のメタロプロテアーゼを洗剤調合剤や他の洗浄剤組成物に使用できる。阻害剤-安定化メタロプロテアーゼを生成するため競合的阻害剤を選択する際に考慮すべき要因は(1) メタロプロテアーゼ阻害剤はKiで選択されるべきであり、及び/又は、この阻害剤は、洗剤調合剤(または洗浄剤組成物)中の酵素分子の少なくとも約90%が貯蔵の間(つまり使用前)この阻害剤と結合するほどの十分な量で加えられるべきである。及び(2)阻害剤はまた、使用時、洗剤調合剤(または洗浄剤組成物)が水(または他の適した液体)で、約10倍から約10,000倍、または約10倍から約100,000倍に稀釈されるとき、少なくとも約25%,50%,75%,95%又はそれより多くの結合した阻害剤が酵素分子から解離するように選択されなければならない。
一実施態様では、競合阻害剤は、稀釈前にはメタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%と結合し、水(または他の適した液体)による約10倍から約10,000倍、または約10倍から約100,000倍に稀釈する時には、この阻害剤が結合した酵素分子の少なくとも約25%、50%、75%、95%またはそれより多くの結合した酵素分子から阻害剤が解離しそしてこれらの分子が触媒的に活性な形態で遊離するほどの量で含まれる。
本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼの実施態様の一つでは、選択されたメタロプロテアーゼ阻害剤はタンパク質加水分解物でありえる。本発明の一つの好ましい実施態様では、このメタロプロテアーゼ阻害剤はメタロプロテアーゼによりタンパク質を加水分解して調製されるタンパク質加水分解物である。一実施態様では、このメタロプロテアーゼはNprEであり、この阻害剤はNprEにより生成される牛乳カゼインの加水分解生成物である。別の実施態様では、このメタロプロテアーゼはNprE であり、この阻害剤は以下からなる群から選択されるタンパク質加水分解物である。小麦グルテン加水分解物(例.HyPep 4601TM)、大豆タンパク質酸加水分解物(例.アミソイ(Amisoy))、牛乳由来のカゼイン酸加水分解物(例.アミカーゼ(Amicase))、植物性タンパク質由来の酵素による加水分解物(例.プロテアーゼペプトン)、及びそれらのいずれかの組合せ。
多くの他のタンパク質加水分解生成物が市販されている。例えば、以下のタンパク質加水分解物がSigma Chemical のカタログに載せられている。アルブミン加水分解物(Albumin hydrolysate);カゼイン酸加水分解物ビタミン無含有(Casein acid hydrolysis vitamin free));カゼイン加水分解物(Casein Hydrolysate);カゼイン加水分解液体培地(Casein Hydrolysate broth);カゼインマグネシウム液体培地(Casein magnesium broth)、カゼイン酵母マグネシウム寒天培地(Casein yeast magnesium agar);カゼイン酵母マグネシウム液体培地(Casein yeast magnesium broth)、Edamin(登録商標)K、ゼラチン加水分解物酵素性(Gelatin hydrolysate enzymatic);トウモロコシ由来のグルテンの酵素的加水分解物(Gluten Enzymatic Hydrolysate from corn)、Hy-CaseP;Hy-Case(登録商標) M;ラクトアルブミン加水分解物(Lactalbumin hydrolysate);肝加水分解物(Liver Hydrolysate);N-Z-Amine(登録商標)B;N-Z-Amine(登録商標)BT;N-Z-Amine(登録商標)YTT;ペプトン(Peptone);カゼイン由来のペプトン,酸消化物(Peptone from casein,acid digest);ラクトアルブミン由来のペプトン、酵素性消化、易溶性(Peptone from lactalbumin,
Enzymatic digest, readily soluble);肉由来のペプトン、ペプシン消化、(Peptone from meat,peptic digest);ミルク固形物由来のペプトン(Peptone from milk solids);サケ由来のペプトン(Peptone from salmon);ペプトン(Peptone )Hy-Soy(登録商標)T;ペプトン(Peptone )N-Z-Soy(登録商標)BL4;プリマトン(Primatone);タンパク質加水分解物Amicase(登録商標)(Protein Hydrolysate Amicase(登録商標));タンパク質加水分解物N-Z-Amine(登録商標)AS(Protein Hydrolysis N-Z-Amicase(登録商標)AS);プロテオースペプトン(Proteose Peptone);大豆タンパク質酸加水分解物(Soy protein acid hydrolysate);トリプトン(Tryptone);トリプトース(Tryptose);及び植物加水分解物No.2(Vegetable Hydrolysate No2)。
これらのタンパク質加水分解混合物の全てはタンパク質の加水分解由来のペプチド断片の混合物を含むという共通の特徴を共有している。この共通の特徴に基づき、一般的な技術者なら各タンパク質加水分解混合物がメタロプロテアーゼの阻害剤になる可能性があることを認識するであろう。本発明の教示に従い、技術者は所期のメタロプロテアーゼを阻害する(及び自己分解に対し安定化する)性能についてこれらのタンパク質加水分解物をスクリーニングできよう。実際、これらのタンパク質加水分解混合物の多くは共通のタンパク質(例.カゼイン)の加水分解物がベースである。従って、当然にこの混合物は同様の構造をもつポリペプチド断片を含むと予想され、その結果として、メタロプロテアーゼの阻害剤として類似の機能をもちうる。下記にさらに説明するように、タンパク質加水分解物の機能は酵素の速度論について良く知られた技術を用いて容易に決定される。
一実施態様では、本発明に関し有用なこのメタロプロテアーゼ阻害剤は、目的のメタロプロテアーゼに関し観測されたKiに基づき選択された競合的阻害剤である。例えば、一実施態様では、本発明のタンパク質加水分解物のみかけのKi は標準的な良く知られた定常状態の酵素の速度論的技術を用いて測定することができる。約5000 Da未満の分子量をもつ、NprEが生成したカゼイン加水分解生成物の場合、定常状態の速度論的分析は約10 mMのみかけのKiを示す。
下記の実施例2で示すように、この中性メタロプロテアーゼが生成したカゼインタンパク質加水分解生成物の組成物は、この酵素の競合的阻害剤としてとして作用する。一実施態様では、本発明は、約15mM未満、約10mM未満、約5mM未満、約0.5mM未満またはこれより小さいみかけのKiを示すタンパク質加水分解物の使用を意図している。酵素が生成した加水分解物の組成物の性質はそれらが不均一なペプチドの混合物であり、これらのペプチドの中には弱い阻害剤として作用するものがあり、または全くこの酵素を阻害しないものがあるというものなので、みかけのKi値が決められる。
比較的精製された、比較的均一なタンパク質加水分解物の組成物の場合、測定されたKiは約100倍から1000倍低いと予想され、Ki ~1−10μMの範囲である。
一般的に、本発明は、メタロプロテアーゼに関する阻害剤のKiの測定値の約5倍から約10倍、約5倍から約100倍、またはそれより高い濃度の阻害剤とメタロプロテアーゼが共存しているとき最大の阻害が起こることを意図している。
洗剤調合剤中において、メタロプロテアーゼの阻害剤としてのタンパク質加水分解物の有用性に基づき、本発明は、液体洗剤調合剤、または洗浄剤組成物を含む他の用途の製品の調製の前駆体として使用できる阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物も意図している。この実施態様では、本発明は、重量で約0.001%から約10%の中性のメタロプロテアーゼを含む阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物を提供する。ここで、競合的阻害剤は前記中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約90%に結合している。この阻害剤-安定化組成物は液体または乾燥(例.顆粒)の調製物である。別の実施態様では、この阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物はカプセル充填された粒子である。
乾燥組成物の調製は、溶液中で、少なくとも90%のメタロプロテアーゼ分子が加水分解物阻害剤に結合する濃度で、タンパク質基質(例.カゼイン)、またはタンパク質加水分解物(例.アミソイ)と酵素を接触させることにより酵素と結合した阻害剤を最初に調製することを含む。この溶液は、次に、例えば、タンパク質の調剤の分野で良く知られた凍結乾燥(lyophilization, freeze-drying)、及び/または他の技術により脱水される。この結果得られた乾燥阻害剤-結合酵素組成物は、次に、任意に、水と他の洗剤調合剤成分で再調製されることにより阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ液体洗剤調合剤を調製する際の後の使用のため貯蔵される。
または、阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物はカプセル充填された粒子調合剤の調製のために使用できる。
例えば、別の実施態様では、この阻害剤−安定化剤メタロプロテアーゼ組成物は、この組成物を(a)水、(b)重量で約0.1%から約75%の洗剤界面活性剤(c)重量で約5%から約15%のプロピレングリコールと(d)約0.5mMから約5.0mMのCa2+イオンを併せる工程により洗剤調合剤を調製するために使用される。
例えば、一実施態様では、本発明は中性のメタロプロテアーゼと阻害剤を含む阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼ調合物(この阻害剤は酵素により生成されたタンパク質加水分解物であり、この調合剤中のこの阻害剤濃度はこの中性メタロプロテアーゼに関するこのタンパク質加水分解物の見かけのKiの少なくとも約5倍である。)を提供する。一実施態様では、みかけのKiは約5mMから約15mMであり、この調合剤で使用されるタンパク質加水分解生成物濃度は少なくとも約25mM、約35mM、約50mM、またはそれより高濃度である。
本発明の調合剤または組成物で使用される阻害剤の絶対量は阻害剤の結合親和性(つまりKi )、阻害剤の分子量、酵素の濃度及び他の因子に依存して変わりえる。通常、しかし、本発明の液体洗剤調合剤の実施態様で使用される阻害剤の量は、洗浄のためのこの調合剤の使用に関し何らかの稀釈が行われる前の重量の約0.01%と約15%の間、約0.05%と約5%の間、または約0.1%と約2.5%の間である。
ある別の実施態様では、特定のタンパク質基質は、特定の中性メタロプロテアーゼによる酵素的変換を受けた後により好ましい阻害特性を加水分解生成物に与えるように操作(例.部位特異的変異誘発の使用)されても良い。この変異タンパク質基質は阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼ組成物を調製するために使用できる。
中性メタロプロテアーゼを安定化するためのタンパク質基質を共に発現(Co-Expressing)するベクターと宿主細胞
一実施態様では、本発明は中性メタロプロテアーゼ遺伝子とタンパク質基質遺伝子を含む発現ベクターを提供する。ここで、このタンパク質基質遺伝子生成物は発現された中性メタロプロテアーゼにより酵素的に転換されタンパク質加水分解物阻害剤を生成する。中性メタロプロテアーゼとタンパク質基質遺伝子を含むクローン化されたベクターは、次に宿主細胞へ導入(細胞形質転換またはトランスフェクションで良く知られている技術により)でき、この2個のタンパク質遺伝子生成物を共に発現するために使用され得る。
このタンパク質基質は、中性メタロプロテアーゼと共に発現されるので、このタンパク質基質は、このメタロプロテアーゼによる酵素的転換を速やかに受けることができ、それによりタンパク質加水分解生成物(つまり、タンパク質加水分解物)が生成される。本明細書で述べられるように、得られたタンパク質加水分解物は、次に、中性メタロプロテアーゼを阻害することができ、新たに発現された酵素の自己分解に対して大きな保護となる。
この実施態様では、この共発現ベクターは効率的な遺伝子発現に必要な因子(例.目的遺伝子と機能的に連結しているプロモーター)を含む。いくつかの実施態様では、これらの必要な因子は、それが認識される(つまり、宿主により転写される)場合にはその遺伝子自身の相同のプロモーターや、外在性である転写終結因子(真核宿主細胞のポリアデニル領域)、またはこの中性メタロプロテアーゼ遺伝子の内在性終止領域として提供される。いくつかの実施態様では、抗生物質を含む培地での増殖によりプラスミドに感染した宿主細胞の培養の継続を可能にする抗生物質耐性遺伝子のような選別遺伝子もまた含まれる。
一つの好ましい実施態様では、タンパク質基質の産生を制御する遺伝子因子は、別のプロモーターが、タンパク質基質のみの産生を増大させ、中性プロテアーゼタンパク質の産生は増大しないようにその別のプロモーターと機能的に連結する。結果として、適した宿主のベクターの発現は、メタロプロテアーゼ以外のタンパク質基質遺伝子産生物を多量に産生することになる。発酵液体培地中でのメタロプロテアーゼに対するタンパク質基質の割合が大きくなったことにより加水分解産物の量が増大し、それにより加水分解産物がメタロプロテアーゼ分子へ結合し、自己分解を阻害する能力が増大する。
別の実施態様では、中性メタロプロテアーゼとタンパク質基質の産生を制御する遺伝子因子は単一の宿主細胞に形質転換された別のベクター(例.プラスミド)に存在する。この実施態様では、このタンパク質基質遺伝子が、このタンパク質基質をメタロプロテアーゼよりも多量に産生させるプロモーターと機能的に連結することも好ましい。
ある実施態様では、宿主細胞とベクターは、共発現されるタンパク質が細胞外発酵液体培地に分泌されるように選択される。
いくつかの実施態様では、この共発現ベクターは宿主細胞で複製するプラスミドである。この実施態様では、使用されるプラスミドは、プラスミドの複製に必要な良く知られた因子を含む。または、このプラスミドは宿主の染色体へ組み入れられるように設計されても良い。
B・スブチリス宿主に導入されるプラスミドベクターへ挿入したB・アミロリキファシエンス由来の中性メタロプロテアーゼ、NprEの遺伝子のクローニング、発現と発酵の技術は、2006年10月12日出願の米国特許出願第11/581,102号に開示されている。これは引用により本明細書に組み入れられる。本発明の一実施態様では、このNprE発現系は、NprE酵素のタンパク質基質の共発現に採用される。一つの好ましい実施態様では、この共発現されるタンパク質基質はカゼインである。
洗剤調合剤と洗浄剤組成物
本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、種々の洗剤調合剤と洗浄剤組成物を処方する上で有用である。これらの調合剤と組成物は例えば、洗濯用途、堅い表面の洗浄、自動皿洗い用途及び、入れ歯、歯、髪、皮膚のような美容用途に使用すると利点がある。しかし、本発明の中性メタロプロテアーゼ酵素の低温の溶液で効果が高くなること及び、優れた色保護特性(color-safety profile)から、この阻害剤-安定化組成物は理想的には洗濯用途に適している。
本明細書に開示されたものに加え、本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼとの使用に適している広い範囲の洗剤調合剤と洗浄剤組成物は、2006年10月12日の出願第11/581,102号に開示され、これは引用により本明細書に組み入れられる。
別途記載が無い場合には、本明細書に記載された全ての成分と組成物の水準は成分または組成物の活性の水準を参照して決められ、不純物、例えば残留溶媒又は副生成物(市販の材料には含まれることもある)を含まない。酵素の成分の重量は全活性タンパク質に基づく。すべてのパーセンテージと比率は別に示されている場合を除き、重量で計算される。全てのパーセンテージと比率は別に示されている場合を除き、全組成に基づき計算される。
例示された洗剤調合剤と洗浄剤組成物では、この酵素の水準は、純粋な酵素としてこの成分の合計重量により表され、特に別に記載があるのではない限り、洗剤成分はこの成分の合計重量で表される。
一実施態様では、本発明の洗剤調合剤と洗浄剤組成物は少なくとも(1) 界面活性剤、好ましくは非イオン性またはアニオン性界面活性剤;(2) 重量で約10%から約95%の水、及び(3) メタロプロテアーゼ酵素;及び(4) メタロプロテアーゼ阻害剤を含む。
他の実施態様では、この単純な洗剤調合剤には、さらに、追加の界面活性剤、洗浄助剤、キレート剤、色移り防止剤、沈降助剤(deposition aids)、分散剤、追加の酵素、酵素安定剤、触媒物質、漂白活性剤、漂白促進剤、過酸化水素、過酸化水素源、過酸前駆体、ポリマー性分散剤、粘土除去剤/抗再沈着剤、蛍光剤、発泡抑制剤、染料、香料、構造弾性化剤(structure elasticizing agent)、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープ、処理補助剤及び/または色素からなる群から選択される種々の物質(つまり、補助剤)が加えられても良い。
ある実施態様では、本発明は以下を含む液体洗剤調合剤を提供する。:(a) 重量で約1%から約75%の界面活性剤 (b)重量で 約10%から約95%の水 (c )重量で約0.01%から約5%の中性メタロプロテアーゼ、及び(d) 阻害剤が使用前に中性メタロプロテアーゼの少なくとも約90%に結合し、この洗剤調合剤を適当に稀釈することにより結合した中性メタロプロテアーゼ分子の少なくとも約25%から阻害剤が解離する量の中性メタロプロテアーゼ阻害剤。通常、洗剤洗剤調合剤が200、400、500、600、さらには1000倍もの稀釈に至る大量の洗浄水に加えられたとき、適当な稀釈となる。
この液体洗剤調合剤の別の実施態様では、この洗剤を稀釈したとき、阻害剤が結合した中性メタロプロテアーゼ酵素の45%、65%、75%、85%、さらに95%以上が解離し阻害剤の結合しない形となる。一実施態様では、この調合剤に選択される阻害剤は競合的にこの中性メタロプロテアーゼを約pH6.5と約pH11の間、好ましくは、約pH7.5と約9.5の間で約5mMから約15mMの間の見掛けのKiで阻害する。一の好ましい実施態様では、この液体洗浄剤調合剤は、約pH8.0で見掛けのKi~10mMをもつタンパク質加水分解物である阻害剤を含む。
本発明で提供される液体洗剤調合剤の一実施態様では、選択されたメタロプロテアーゼ阻害剤はタンパク質加水分解物である。好ましい実施態様では、このメタロプロテアーゼ阻害剤はこのメタロプロテアーゼによりタンパク質を加水分解することにより調製されたタンパク質加水分解物である。別の実施態様では、このメタロプロテアーゼはNprEであり、この阻害剤は、NprE により生成された牛乳のカゼインの加水分解物である。別の実施態様では、この阻害剤は、小麦グルテン加水分解物(例.HyPep 4601TM)、大豆タンパク質酸加水分解物(例.アミソイ)、牛乳のカゼイン酸加水分解物(例.アミカーゼ)、植物性タンパク質の酵素加水分解物(例.プロテオースペプトン)、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されたタンパク質加水分解物である。
本発明のタンパク質加水分解物により安定化されたこの中性メタロプロテアーゼ調合剤は特に重質液体(HDL)洗剤調合剤に良く適している。
一実施態様では、本発明のこの阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物はHDL洗剤調合剤に加えられても良く、ここでこのHDL洗剤調合剤は、重量で約30%と60%の間で水;約45%と約15%の間で活性成分をそれぞれ含み、阻害剤−安定化メタロプロテアーゼ組成物に対するHDL洗剤調合剤の比率は、容量で約9から1である。
いくつかの実施態様では、このHDL調合剤は、重量で約33%と53%の間の、約35%と51%の間の、または約36%と44%の間の水を含む。いくつかの実施態様では、このHDL調合物は、重量でわずか約40%、38%、36%、34%、32%、30%,またそれより低い%の水しか含まない。
一実施態様では、本発明のこのHDL洗剤調合剤はさらに約5%と15%の間の、約7.5%と12.5%の間の、又は少なくとも約10%のポリプロピレングリコールを含む。
一実施態様では、本発明のこのHDL洗剤調合剤は重量で、約20%と約50%の間の界面活性剤を含む。いくつかの実施態様では、このHDL調合剤はC12エトキシレート(Alfonic 1012-6,Hetoxol LA7,Hetoxol LA 4)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(例.Nacconol 90G)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate)(例.Sterol CS-370)、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される界面活性剤の混合物を含む。いくつかの実施態様では、このHDL調合剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩及びアルコールエトキシレートから選ばれる1以上の界面活性剤を含む。
一実施態様では、本発明のHDL洗剤調合剤は、重量で約35%から約52%の水と重量で約24%から約40%の界面活性剤を含み、この界面活性剤は、:Nacconol 90G、Alfonic 1012-6及びSterol CS-370を含む。別の実施態様では、このHDL調合剤(総量で90部分であるとして)で、容量で水と界面活性剤の比率は、ほぼ、30部分の水、17部分のNacconol 90G、13部分のAlfonic1012-6、及び10部分のSterol CS-370である。普通の技術者なら直ぐに、本発明に関し有用な別のHDL調合剤が同様の量で同等の界面活性剤を使用して調製できることを認識するだろう。
表1−5(下記)には本発明と使用できる一連の一般的なHDL調合剤の例についての処方を示す。これらの一般的な調合剤は種々の量の水と他の活性成分を含み、10部分の阻害剤−安定化メタロプロテアーゼ組成物に対する90部分の洗剤の比率で調合ざれている。ある好ましい実施態様では、この液体洗剤組成物は阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ(好ましくはタンパク質加水分解物安定化メタロプロテアーゼ)と一般的HDL洗剤調合剤のいずれか一つの成分を表1-5に記載の処方と同一の比率で含む。
上の表に開示された一般的HDL調合剤の処方は限定することを意図していない。一実施態様では、それらのいずれも種々の追加の補助物質を含む商用のHDL調合剤を調製する基礎として使用しても良い。しかし、本発明の阻害剤-安定化剤メタロプロテアーゼ組成物はこの技術分野で知られているいずれか他の適したHDL調合剤に加えられても良い。そのようなHDL調合剤は、ある範囲の緩衝剤、界面活性剤、及び/または他の補助剤の異なる組合せを含み得る。
本発明の洗剤調合剤、洗浄剤組成物及び洗浄剤添加剤は有効量のメタロプロテアーゼ酵素を要する。いくつかの実施態様では、必要とされる酵素水準は1以上の種のメタロプロテアーゼを加えることにより達成される。通常は、本発明の洗剤調合剤は、100%活性な酵素に基づき、洗浄前(つまり、貯蔵形態)の洗剤調合剤の重量で約0.0001-10%の、好ましくは、重量で約0.001-5%の、及び最も好ましくは、重量で約0.01%-2.0%の量でメタロプロテアーゼ酵素を含むべきである。この酵素の活性は、本発明と一致する調合剤のいずれを調製するときにも考えられなければならない。
いくつかの好ましい実施態様では、本明細書の洗剤調合剤と洗浄剤組成物は通常、水での洗浄操作で使用する間、洗浄水がpH、約5.0から約11.5、または別の実施態様では、約6.0から約10.5ですらあるよう調合される。いくつかの好ましい実施態様では、液体製品調合剤は通常、約3.0から約9.0の原液のpHをもつよう調合され、他方、いくつかの他の実施態様では、この調合剤は原液で、約3から約5のpHをもつ。いくつかの実施態様では、顆粒洗濯製品は通常約8から約11のpHをもつように調合される。推奨される使用水準でpHを調整する技術は緩衝剤、アルカリ剤、酸等の使用を含み、この技術分野の技術者には良く知られている。
カプセル充填された粒子調合剤
いくつかの実施態様では、阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼは顆粒組成物または液体中で使用されても良く、ここでこの阻害剤と複合された中性メタロプロテアーゼは貯蔵中にこの組成物の他の成分から保護するためカプセルに充填された粒子の形態である。カプセル充填は洗浄中に阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼの利用性を調整する追加手段を与えるもので阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼの使用成績を増進しえる。本発明のこのカプセル充填された阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼは種々の条件で使用できると考えられている。この阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼは、この技術分野で知られているいずれの適したカプセル化材料と方法を用いてカプセル化されることも意図されている。
いくつかの好ましい実施態様では、このカプセル化材料は通常少なくとも阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼの一部をカプセルに充填する。いくつかの実施態様では、このカプセル化材料は水溶性及び/または水分散性である。いくつかの別の実施態様では、このカプセル化物質は0℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。(ガラス転移温度に関する情報については、WO97/11151、特に6ページ、25行目から7ページ、2行目を参照せよ)
いくつかの実施態様では、このカプセル化材料は炭水化物、天然または合成のガム、キチンとキトサン、セルロースとセルロース誘導体、ケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィンろう及びそれらの組合せからなる群れから選択される。カプセル化材料が炭水化物であるいくつかの実施態様では、これは単糖、オリゴ糖、多糖、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、カプセル化材料はデンプンである。(いくつかの適したデンプンの例については、例えば、EP0992499、米国特許第4,977,252号、米国特許第5,354,559号及び米国特許第5,935,826号参照)
他の実施態様では、このカプセル化材料はプラスチック(例.熱可塑性プラスチック、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル及びこれらの混合物;使用できる市販の微小球はEXPANCEL(登録商標)[Casco Products, Stockholm,Sweden]、PM6545、PM6550、PM7220、PM7228、EXPENDOSPHERES(登録商標)及びQ-CEL(登録商標)[PQ社、Valley Forge、ペンシルバニア州]、LUXSIL(登録商標)とSPHERICEL1(登録商標)[Potters Industries社、Carlstadt、ニュージャージー州とValley Forge、ペンシルバニア州]を非限定的に含む。)から作られた微小球(microsphere)を含む。
洗浄用添加剤
本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、また洗浄用添加剤で使用される。本発明の少なくとも一つの酵素を含む洗浄用添加剤は、漂白の効果を増したい場合、洗浄工程に加えるのに理想的である。そのような例は、低温の溶液での洗浄用途を非限定的に含む。この添加剤は、最も単純な形態では、本発明により提供されるような一以上の阻害剤-安定化中性メタロプロテアーゼでも良い。いくつかの実施態様では、この添加剤は、ペルオキシジェン(peroxygen)源が使用され漂白効果を上げたい場合に、洗浄工程に添加するため投与形態で包装される。いくつかの実施態様では、一の投与形態は、丸薬状、錠剤、ゲルキャップ又は予め秤量された粉末及び/又は液体等の他の単回投与形態を含む。
いくつかの実施態様では、充填剤及び/又は担体物質が、そのような組成物の容量を増やすために含まれる。適した充填剤又は担体物質は、タルク、粘土等ほか硫酸塩、炭酸塩及びケイ酸塩の種々の塩を非限定的に含む。いくつかの実施態様では、液体組成物の充填剤及び/又は担体物質は、水と/またはポリオールとジオール等の低分子量の一級及び二級アルコールを含む。このようなアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノールとイソプロパノールを非限定的に含む。いくつかの実施態様では、この組成物は約5%から約90%のそのような材料を含む。他の実施態様では、酸性充填剤はこの組成物のpHを下げるため使用される。いくつかの他の実施態様では、この洗浄剤添加物は下記のような少なくとも一つの活性化されたペルオキシジェン源、及び/又は以下により詳しく説明する補助成分を含む。
洗剤調合剤と洗浄剤組成物の調製と使用する方法
本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物は、いずれかの適した洗剤調合剤または洗浄剤組成物に調合されても良く、調合者は適した製造方法を選んで使用する。このような調合方法は、この技術分野で良く知られている。例えば、米国特許第5,879,584号、米国特許第5,691,297号、米国特許第5,574,005号、米国特許第5,569,645号、米国特許第5,565,422号、米国特許第5,516,448号、米国特許第5,489,392号、米国特許第5,486,303号、米国特許第4,515,705号、米国特許第4,537,706号、米国特許第4,515,707号、米国特許第4,550,862号、米国特許第4,561,998号、米国特許第4,597,898号、米国特許第4,968,451号、米国特許第5,565,145号、米国特許第5,929,022号、米国特許第6,294,514号、及び米国特許第6,376,445号を参照せよ。これらのそれぞれは引用により本明細書に組み入れられる。
好ましい実施態様では、本発明のこの洗剤調合物と洗浄剤組成物は布地と/または表面の洗浄で使用される。いくつかの実施態様では、表面と/又は布地の少なくとも一部は、本発明の少なくとも一実施態様の洗浄剤組成物と、原液でまたは洗浄液に希釈されて接触し、その表面と/又は布地は、任意に洗浄及び/又は濯ぎを受ける。本発明の目的のため、「洗浄」はごしごし洗うことと機械的な撹拌を非限定的に含む。本発明の調合剤により洗浄されえる布地は普通の消費者の使用条件で洗濯されえるいずれの布地も含む。
好ましい実施態様では、本発明のこの洗剤組成物と洗浄剤組成物は溶液中で約500ppmから約15,000ppmの濃度で使用される。洗浄溶媒が水であるいくつかの実施態様では、水温は普通、約5℃から約90℃の範囲である。布地洗浄のいくつかの好ましい実施態様では、水と布地の質量比は通常、約1:1から約30:1である。
本発明に有用な添加物質
本発明の目的に必須ではないが、いくつかの実施態様では、本明細書に述べられた非限定的な補助剤の一覧は本発明の洗浄剤組成物での使用に適している。確かに、いくつかの実施態様では、補助剤は本発明の洗浄剤組成物に加えられる。いくつかの実施態様では、補助剤は洗浄性能を補助及び/または増進し、洗浄される対象物を処理し、及び/又は洗浄剤組成物の美観を修飾する(例.香料、着色剤、染料等)。このような補助剤は本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ組成物を含む調合剤と組成物へ加えられることが理解される。これらの追加成分の正確な性質とその含有量は組成物の物理的形態とそれが使用される洗浄操作の性質により変わる。
適した補助剤は、界面活性剤、洗浄助剤、キレート剤、染料移転防止剤、沈殿助剤、分散剤、追加の酵素、酵素安定化剤、触媒物質、漂白活性剤、漂白増強剤、過酸化水素、過酸化水素源、予め調製された過酸、ポリマー性分散剤、粘土除去/再沈着防止剤、蛍光剤、発泡抑制剤、染料、香料、構造弾性剤、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープ、処理助剤及び/または色素を非限定的に含む。
本明細書に明示的に記載されたものに加え、追加の補助剤がこの技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,576,282号、第6,306,812B1号及び第6,326,348B1号参照。)いくつかの実施態様では、先に述べた補助成分は本発明の調合剤と組成物の残余を形成する。
界面活性剤 いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は少なくとも一つの界面活性剤又は界面活性系を含み、この界面活性剤は非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両電解性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、半分極性非イオン性界面活性剤、及びそれらの混合物である。本発明の阻害剤-安定化メタロプロテアーゼ洗剤調合剤で有用な界面活性剤の例は、C12エトキシレート(Alfonic 1012-6、Hetoxol LA7、Hetoxol LA4)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(例.Nacconol 90G)、及びラウレス硫酸ナトリウム(例.Steol CS-370)を、それのみ又は混合物で含む。
いくつかの低pHの洗浄剤組成物の実施態様(例.約3から約5の原液pHをもつ組成物)では、この組成物は通常、アルキルエトキシル化硫酸塩を含まない。なぜなら、この種の界面活性剤はそのような酸性条件下ではその組成物により加水分解され得ると信じられているからである。
いくつかの実施態様では、この界面活性剤は、洗浄剤組成物の重量の約0.1%から約75%の水準で含まれ、他方別の実施態様ではこの水準は約1%から約50%、他方さらに別の実施態様では、この水準は約5%から約40%である。
洗浄助剤-いくつかの実施態様では、本発明のこの洗浄剤組成物は、1以上の洗浄助剤又は洗浄助剤系を含む。少なくとも一つの洗浄助剤を含むいくつかの実施態様では、この洗浄剤組成物は、洗浄剤組成物の重量の少なくとも約1%、約3%から約60%または約5%から約40%の洗浄助剤を含む。
洗浄助剤は、ポリリン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアルカノールアンモニウム塩、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の炭酸塩、アルミノケイ酸洗浄助剤、ポリカルボキシレート化合物、エーテルヒドロキシポリカルボキシレート、マレイン酸無水物とエチレン又はビニルメチルエーテルのコポリマー、1,3,5-トリヒドロキシ ベンゼン-2,4,6-トリスルホン酸、及びカルボキシメチルオキシコハク酸、エチレンジアミン四酢酸とニトリロ三酢酸のようなポリ酢酸の種々のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩、メリチック酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5-トリカルボン酸、カルボキシメチロキシコハク酸とそれらの可溶な塩を非限定的に含む。確かに、いずれの適した洗浄助剤も本発明の種々の実施態様に使用することが考慮されている。
キレート剤−ある実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は少なくとも1つのキレート剤を含む。適したキレート剤は、銅、鉄及び/またはマンガンのキレート剤及びそれらの混合物を非限定的に含む。少なくとも一つのキレート剤が使用される実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は、対象となる洗浄剤組成物の重量の約0.1%から約15%、または約3.0%から約10%のキレート剤を含む。
沈降補助剤−いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は少なくとも一つの沈降補助剤を含んでいる。適した沈降補助剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカルボキシレート、ポリテレフタル酸のような土壌遊離ポリマー、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルガイト、イライト、ベントナイト、ハロサイト及びそれらの混合物のような粘土を非限定的に含む。
染料移転防止剤−いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は1以上の色移り防止剤を含む。適した重合性色移り防止剤はポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルイミダゾール、ポリビニロキサゾリドンとポリビニルイミダゾールまたはそれらの混合物を非限定的に含む。
少なくとも1つの染料移転防止剤が使用される実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は、洗浄剤組成物の重量で約0.0001%から約10%、約0.01%から約5%、さらに約0.1%から約3%の染料移転防止剤を含む。
分散剤−いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は少なくとも一つの分散剤を含む。適した水溶性の有機分散剤はホモポリマーの、または共重合体の酸又はそれらの塩を非限定的に含み、このポリカルボン酸は2個以下の炭素により互いに分離されている少なくとも2個のカルボキシル基を含む。
酵素−いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は、本明細書で述べられたようなメタロプロテアーゼに加えて、洗浄性能と/又は布地保護性を与える一以上の酵素を含む。適した酵素の例は、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシリナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ及びアミラーゼ又はそれらの混合物を非限定的に含む。いくつかの実施態様では、アミラーゼと組み合わせたプロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ及び又はセルラーゼのような従来の使用できる酵素を含む酵素の組合せ(つまり、「カクテル」)が使用される。
酵素安定化剤−本発明のいくつかの実施態様では、本発明の洗剤調合剤で使用される酵素は安定化される。酵素安定化の種々の技術は本発明で使用されることが意図されている。例えば、いくつかの実施態様では、本明細書で使用される酵素は、最終組成物中の亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマグネシウム(II)イオン及び他の金属イオン(例.バリウム(II)、スカンジウム(II)、鉄(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、スズ(II)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)及びオキソバナジウム(IV))の水溶性の発生源でそのようなイオンを酵素に与えるものの存在により安定化される。
触媒金属錯体−−いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は1以上の触媒金属錯体を含む。いくつかの実施態様では、金属−含有漂白触媒が使用される。いくつかの好ましい実施態様では、金属漂白触媒は、明確な漂白触媒活性をもつ遷移金属カチオン(例.銅、鉄、チタン、ルテニウム、タングステン、モリブデン又はマンガンカチオン)、殆ど或いは全く漂白触媒活性をもたない予備の金属カチオン(例.亜鉛又はアルミニウムカチオン)と、触媒及び予備金属カチオンの明確な安定化定数をもつ金属イオン遮蔽剤(sequestrate)、特にエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四(メチレンホスホン酸)とそれらの水溶性の塩を含む触媒系を含む。(例えば米国特許第4,430,243号参照)
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄剤組成物はマンガンの化合物という手段により触媒される。そのような化合物と使用量はこの技術分野で良く知られている。(米国特許第5,576,282号参照)。別の実施態様では、コバルト漂白触媒が本発明の洗浄剤組成物で使用されている。種々のコバルト漂白触媒がこの技術分野で知られている。(米国特許第5,597,936号と米国特許第5,595,967号参照)そのようなコバルト触媒は既知の手順により容易に調製される(例えば米国特許第5,597,936号と米国特許第5,595,967号参照)。
別の実施態様では、本発明の洗浄剤組成物は巨大多環式の硬い構造の配位子(“MRL”)の遷移金属錯体を含む。実施上の問題として、限定するものではないが、いくつかの実施態様では、本発明により提供される組成物と洗浄方法は、少なくとも100万分の1の桁数で水性の洗浄媒体中に活性なMRL 種を与えるように調整され、いくつかの好ましい実施態様では、約0.005ppmから約25ppm、より好ましくは約0.05ppmから約10ppm、最も好ましくは約0.1ppmから約5ppmのMRLを洗浄液に与えるように調整される。
この遷移金属漂白触媒での好ましい遷移金属は、マンガン、鉄とクロムを非限定的に含む。好ましいMRLは、また交差架橋された特別な超-硬性配位子(special ultra-rigid ligands)(例.5,12-diethyl-1,5,8,12-tetraazabicyclo[6.6.2]hexadecane)を非限定的に含む。適した遷移金属MRLは既知の手順により容易に調製される(例えば、WO00/32601と米国特許第6,225,464号参照)。
実施例
以下の実施例は本発明の好ましい実施態様と諸相を実証しかつ更に説明するために与えられ、その範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
以下の実験の開示においては、以下の略号を用いる。℃(摂氏温度);rpmまたはRPM(1分当たりの回転);Da(ダルトン)、kDa(キロダルトン);g(グラム);μgとug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μlとul(マイクロリットル);ml(ミリリットル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);μmとum(マイクロメートル);M(モル);mM(ミリモル);μMとuM(マイクロモル);U(単位);MW(分子量);sec(秒);min(分);hr(時間);OD280(280nmにおける光学濃度); OD405(405nmにおける光学濃度);OD600(600nmにおける光学濃度);PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);EtOH(エタノール);PBS(リン酸緩衝液を加えた食塩水[150mM NaCl、10mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2]);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン);TAED(N,N,N’,N’-テトラアセチルエチレンジアミン);MES(2-モルホリノエタンスルホン酸、一水和物;f.w.195.24;Sigma #M-3671);CaCI2(塩化カルシウム、無水;f.w. 110.99;Sigma#C-4901);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド、f.w.73.09,d=0.95);w/v (重量対容量);NprE(中性メタロプロテアーゼ);PMN(精製MULTIFECT(登録商標)メタロプロテアーゼ)
以下の定量法が下記の実施例で使用された。
A.NprE濃度決定のための96ウェルマイクロタイタープレート(MTPs)を使用するブラッドフォード(Bradford)定量法
ブラッドフォード定量法は96ウェルMTP形式で作成され以下の実施例で使用されるサンプルについてNprEプロテアーゼ濃度の決定のために使用された。
このブラッドフォード定量法で、使用された化学物質と試薬は以下の通り。:クイックスタートブラッドフォード染料試薬(Quick Start Bradford dye reagent)(BIO-RAD、#500-0205);稀釈緩衝液;10mM NaCl、0.1mM CaCl2、0.005% TWEEN(登録商標)-80
使用される装置はBiomek FX Robot(Beckman)とSpectraMAX(340型)MTP読み取り器;MTPはCostar製(9017型)であった。
試験では、200μlのブラッドフォード染料試薬が各ウェルにピペットで移され、15ulの稀釈緩衝液が加えられた。最後に、10ulのろ過された液体培地がウェルに加えられた。
完全に混合した後、このMTPは室温で少なくとも10分間静置された。混合されうる空気泡は除かれ、ウェルの光学濃度が595nmで読み取られた。
タンパク質の濃度を決定するために、サンプルの読み取り値から対照値(つまり対照ウェルから得られる)が差し引かれた。得られたOD595値はサンプル中のタンパク質濃度の相対的な測定値を与える。0から5μgの間のNprE検量線は直線性をもつのでOD595 nm値をタンパク質濃度の相対的な尺度として使用することができた。上澄液中のNprEの予想濃度は200-300μg/mlであったので、試験で使用された10μlのサンプル容量中には5μg未満のタンパク質が含まれ、直線性の範囲内の値である。
B.NprE活性と阻害の速度定数を決定するAGLA定量法
下記のこの「AGLA」定量法から再現性のある中性メタロプロテアーゼ活性(例.NprE)が得られる。この定量法は所定の実験条件に適合させられるが、修飾された手順により得られたいずれのデータも元の方法で得られた結果と照合されるべきである。
中性メタロプロテアーゼは、Abz-AGLA-Nba(2-アミノベンゾイル-L-アラニルグリシル-L-ロイシル-L-アラニノ-4-ニトロベンジルアミド;f.w. 583.65;BaChem AG、Bubendorf, スイスから#H-6675として、またはVWRからカタログ#100040-598として入手可能)のグリシンとロイシンの間のペプチド結合を開裂する。溶液中で遊離した2-アミノベンゾイル-L-アラニルグリシン(Abz-AG)は340nmの極大をもつ励起光により415nmに極大をもつ蛍光を発する。Abz-AG の蛍光は、開裂を受けていない(intact)AbZ-AGLA-Nba中のニトロベンジルアミド により消光される。
これらの実験では、AbZ-AGLA-Nbaのプロテアーゼによる開裂によるAbz-AG の遊離が蛍光スペクトル(λexc.=340nm/λemis.=415nm)によりモニターされる。Abz-AG の出現速度はタンパク質分解活性の尺度である。定量は基質が制限されない初期速度条件下で行われた。
定量装置
温度調整つきマイクロプレートミキサー(例.エッペンドルフサーモミキサー)が再現性のある定量結果のため必要とされた。定量溶液は酵素を加える前にマイクロプレートミキサー内で好ましい温度(例.25℃)に保たれる。酵素溶液がミキサー内のプレートへ加えられ、激しく撹拌され、プレートリーダーへ速やかに移された。
連続的なデータの記録、一次回帰分析及び温度制御の能力のある蛍光分光光度計が使用された。例えば、SpectraMax M5、Gemini EM(Molecular Devices, Sunnyvale、カリフォルニア)が使用された。このリーダーは、常に所期の温度に維持されていた(例.25℃)このリーダーはトップリード(top-read)蛍光検出用に設定され、励起は350nmに設定され、発光検出はカットオフフィルターを使用せずに415nmが測定された。PMTは1ウェル当たり中程度の感度と5回の読み取りに設定された。自動校正が起動されたが、最初の読み取りまえのみ校正を行った。この定量はモニターされるため選ばれたウェルの数に従い最小にした読み取り間隔で3分間測定された。このリーダーはミリ-RFU/分(毎分当たりの千分の一の相対的蛍光単位(relative fluorescence units per minute))の速度を計算するために設定された。この速度(Vmax点)を計算するために行われた測定数は、測定の間隔により計算される2分間に対応する回数(例えば、10秒ごとの測定なら、この速度を計算するため12点を使用する)に設定された。最大RFUは50,000に設定された。
酵素と基質原液のピペットによる全ての秤量はポジティブディスプレースメントピペット(Rainin Microman)で行われた。緩衝液、定量及び酵素の試験液は試験管、試薬貯蔵びん又は貯蔵マイクロプレートから取り、シングル又はマルチ-チャンネル空気置換ピペットにより加えられた。少数のウェルを使用する際は、試薬の損失を最小にするためリピーターピペット(エッペンドルフ)をマイクロプレートのウェルへ定量溶液を移すために使用しても良い。マイクロプレート全体の試験を同時に行うためBeckman FX またはCybio Cybi-ウェルのような自動ピペッティング装置もまた試験液貯蔵マイクロプレートから酵素溶液を定量用マイクロプレートへ移すために使用されても良い。
試薬と溶液
MES緩衝原液−52.6mM MES/ NaOH, 2.6mM CaCl 2 ,pH6.5:MES酸(10.28g)と292mg無水CaCl2が約900mLの精製水に溶解された。この溶液はNaOHでpH6.5(25℃で又は、温度調節つきpHプローブで)に調整された。このpH-調整緩衝液は、総量1Lにされた。最終溶液は0.22μmの無菌フィルターでろ過され室温で保管された。
酵素稀釈緩衝液-50mM MES、2.5mM CaCl 2 、pH6.5 :この緩衝液は95mLのMES 緩衝原液に5mLの精製水を加えることにより調製された。
酵素原液:精製されたNprE酵素は酵素稀釈緩衝液で約1ppm(1μg/mL)の濃度に稀釈された。MULTIFECT(登録商標)中性メタロプロテアーゼ(野生型NprE)は稀釈され6ppm(6μg/mL)未満の濃度とされた。連続的な稀釈が好ましい。溶液は室温で1時間安定であった。しかし、より長期の貯蔵では、この溶液は氷上で保存された。
基質原液- DMFの48mM Abz-AGLA-Nba:約28mgのAbZ-AGLA-Nba が小さい試験管に採られた。これは約1mL(容量は秤量されたAbZ-AGLA-Nba量により変わる)のDMFで溶解され、数分ボルテックスで撹拌された。この溶液は遮光され室温で貯蔵された。AbZ-AGLA-Nba はDMFに溶解され、調製された日に使用された。
基質稀釈緩衝液-50mM MES、2.5mMCaCl 2 、5%DMF、pH6.5 :5mLの純粋なDMFが95mLのMES緩衝液原液へ加えられた。この緩衝液は速度定数を決定するために使用された。
定量溶液-試験溶液-50mM MES、2.5mM CaCl 2 、5%DMF、2.4mM Abz-AGLA-NbapH6.5 1mLの基質原液が19mLの基質稀釈緩衝液に加えられ、ボルテックスで撹拌された。この溶液は室温で遮光して貯蔵された。
定量手順
全ての緩衝液と試験液が調製された。各酵素の稀釈液は、別途記載がない限り3回繰り返して定量された。全てのウェルが満たされないとき、(プレートリーダーに入れるため)酵素試験液貯留マイクロプレートはプレートの左から縦の列を満たすようにされる。対応する定量プレートは同様に準備された。マイクロプレート蛍光分光光度計は先に述べたように設定された。
最初に、200μLの定量溶液が96ウェルのマイクロプレートに加えられた。このプレートは遮光して温度制御されたマイクロプレートミキサーで25℃で10分間撹拌された。この定量は原液マイクロプレートから10μLの試験酵素溶液をミキサー中の定量用マイクロプレートへ移すことにより開始された。最初に最左側の列から移すため、任意に96ウェルピペッティング、または8ウェルのマルチチャンネルピペットが使用された。この溶液は15秒激しく撹拌された(エッペンドルフサーモミキサーで900rpm)。直ぐに、この定量用マイクロプレートはマイクロプレート蛍光分光光度計に移され、350nmでの励起と415nmでの発光で蛍光の記録が始められた。この蛍光分光光度計のソフトウェアは各ウェルの蛍光の増大をミリ-RFU/分の回帰直線に照らして反応速度を計算した。いくつかの実験では、最初のプレートが読み込まれている間に、第2のプレートが温度を平衡にするためマイクロプレートミキサーに入れられた。
初期速度は生成物濃度(つまり、遊離した2−アミノベンゾイルの蛍光)に関し0.3mM生成物濃度まで直線的であった。これは、約22,000RFUの対照の蛍光をもつ2.3mMのAbz-AGLA-Nbaで反応を開始したときの溶液の約50,000RFUに対応する。
参考例1
高濃度で貯蔵することによるNprE安定性の増大
この参考例はこの酵素がより高濃度で、及び/又は10%のポリプロピレングリコール(PPG)とCaCl2の存在下保持されたとき生じる中性メタロプロテアーゼの安定性の増大を説明する。
サンプルはpH8.0で10mM HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))緩衝液に625から10000ppmの濃度範囲で中性メタロプロテアーゼ,NprEを含むように調製された。全てのサンプルは、625ppmNprE濃度の1対照サンプルを除き、10%PPG と0.5mM CaCl2を含む。全てのサンプルは6時間にわたり32℃で保温した。サンプルのNprE活性は、種々の温度ポイントでのAGLA活性の定量により測定された。
結果
図1に示すように、625ppm NprEを含み、PPGとCaCl2を含まない対照サンプルは最初の2時間以内に殆ど全ての活性を失った。それに対し、他のサンプルのNprE活性は比較的高いタンパク質濃度と相関してその活性の大部分を維持した。10,000μg/mL(又はppm)のNprE濃度では、この酵素は活性を失う前の1.5時間殆ど完全な活性を維持する。比較して、625、1250及び2500ppmのタンパク質のサンプルは活性が減少(1.5時間で〜60%)した。対照サンプルと比較して高濃度のサンプルは貯蔵性が顕著に増大した。
濃度の増大とNprEの安定性の増大の相関を示すこれらの結果は生成物阻害による安定化と一致するものである。
実施例2
カゼイン加水分解生成物によるNprE阻害
この実施例は、後に競合的阻害により中性メタロプロテアーゼを安定化するために使用されるタンパク質加水分解生成物を生成する中性メタロプロテアーゼの使用を説明する。
材料と方法
牛乳カゼイン由来のカゼイン(カタログ#C7078;Sigma Chemical,St.Louis,ミズーリー)を100mg/mLで0.4mg/mLの中性メタロプロテアーゼ,NprEと10mLの緩衝液(50mM MES、2.5mM CaCl2、pH6.5)中で32℃に設定して一夜振とうしながら保温した。得られた分解混合物は未反応の微粒子を除くために4℃で30分間SM-24 固定角度ローターを備えたSorvall RC-5B Plus遠心分離機(Thermo Fisher Scientific、社.,Waltham マサチューセッツ)で18,000回転で遠心分離された。遠心分離後、上澄液は、Vivaspin 20遠心分離ろ過器(Sartorius AG, ドイツ)を用いて5K MWCO膜を通してろ過された。ろ過された流出物(約5000Da未満の分子量の加水分解生成物(ここでは「カゼインペプチド」とも呼ばれる)のみを含むべきである)が収集された。
カゼイン加水分解物の定量はトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)定量法を用いて行われた。この定量法は標品として遊離したアミノ酸を用いて混合物中のペプチドに含まれる遊離のアミンを比色定量から決定するものである。通常は、10μLのサンプルが120mMのホウ酸塩緩衝液、pH9中の60μLの1.2mg/mLのTNBSと混合され、50℃で15分間保温する。この反応混合物は次に140μLの500mMリン酸塩緩衝液、pH7.5で中和された。色の変化は420nmでモニターされ、アミノ酸標品(カタログ#AAS18;Sigma Chemical,St.Lois,ミズーリー)に対応させられた。定量されたカゼイン加水分解物の混合物は下記のNprE阻害反応の速度論を研究するため使用される原液を調製するために使用された。
カゼイン加水分解混合物によるNprE阻害の速度論は上記の一般的なAGLA活性定量法を使用して行われたが、定量混合物中のカゼイン加水分解物の濃度は変化させた。標準的ミカエリス−メンテンの酵素反応速度のプロットが作成され、カゼイン加水分解物のみかけのKi等の種々の速度定数を求めるために使用された。この定量液は、室温でpH6.5の2.5mMCaCl2と0.005%Tween 80を含む50mM MES緩衝液であった。
結果
図2は先に述べられたように生成され単離されたカゼイン加水分解物によるNprE阻害を示す。図2A-2Dは蛍光性AGLA基質に対するカゼイン加水分解物による阻害について標準的なミカエリス・メンテンの反応速度論に関するプロットを示す。図2Bは二重逆数プロットが共通のy−切片をもちこの加水分解物がNprEの競合的阻害剤として作用することを示す。図2Cと2Dは見掛けのKmと二重逆数プロットの傾きの再プロットをそれぞれ示す。
これらの結果はNprEによるミルクカゼインの分解により生成されたカゼイン加水分解生成物の混合物が、また見掛けのKi~10mMをもつNprEのタンパク質加水分解物の阻害剤でもあることも示す。
実施例3
液体洗剤調合剤におけるNprEの安定性の増進
この実施例は中性メタロプロテアーゼ含有洗剤調合剤を安定化するためのある範囲のタンパク質加水分解物の使用について説明する。
試験材料
以下のタンパク質加水分解物はSigma Chemical (セントルイス、ミズーリー州)から得られ、さらに精製を受けることなく使用された。:小麦グルテンのHyPep4601TMタンパク質加水分解物(カタログ#H6874)、アミソイ、大豆タンパク質酸加水分解物(カタログ#S1674)、アミカーゼ、牛乳カゼイン酸加水分解物(カタログ#A2427)、及びプロテアーゼペプトン、植物性タンパク質由来の酵素加水分解物(カタログ#P0431)、牛乳由来のカゼイン(カタログ#;Sigma Chemicals, St. Louis、ミズーリー州)がNprEによる加水分解のために使用された。
タンパク質加水分解物原液
タンパク質加水分解物原液は、市販の試薬を用いて10mM HEPES緩衝液pH8.0中で70mg/mlの濃度で調製された。
牛乳カゼイン加水分解物は2.5mMCaCl2を含む50mM MES 緩衝液中の8mg/mL NprEで、pH6.5、37℃でカゼインを分解することにより生成された。未分解の原料は遠心分離とその後のMWCO 5kDa膜による透析により除かれた。ろ過された流出物は収集され、分けられて、その後に使用のため-20℃で貯蔵された。カゼイン加水分解物はニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)ペプチド定量(実施例2のように)により〜90mMであると決定された。
重質液体(HDL)洗剤の調製
この実施例で使用されるHDL洗剤調合剤は、DW-CTであった。この調合剤は37%の水含量であり、容量で90%まで規定され安定化剤又は酵素のような成分を加える余地10%(容量で)を残している。これは上記表1に示す処方に従い調製された。
定量は(表1のように調製された)5mLのDW-CT 、1mLのpH8.0の500mM HEPES、及び44mLの蒸留水を混合して作られる10% DW-CT洗剤調合剤を使用して行われた。
安定性定量サンプル調製
安定性定量サンプルは、阻害剤が加えられない対照サンプルとともに5個の異なるタンパク質加水分解物候補化合物を使用して調製された。
一般に、20μLの阻害剤原液は10μLの50mg/mL NprE原液と予備混合された。次に、220μLの10mM HEPESの10% DW-CT洗剤調合剤が各サンプルに加えられ、最終のNprE濃度は2mg/mLであった。サンプルはサーモミキサー(エッペンドルフ)中でマイクロタイタープレートで32℃で保温した。
各サンプルの酵素の最終濃度は2mg/mL NprEであった。それぞれのサンプル中のこの最終阻害剤濃度は、アミソイ、アミカーゼ、HyPep4601、またはプロテオースペプトンのそれぞれについて5.6mg/mL 、またはカゼイン加水分解物混合物、7.2mM(12.5倍の稀釈に基づく)であった。DW-CT洗剤調合剤の最終稀釈は9%であった。
残存AGLA活性定量
安定性定量サンプル(上記のように調製)のそれぞれの残存NprE活性は、使用した定量溶液がpH6.5で50mM MES、2.5mMCaCl2、0.005%Tween80であった点を除き一般的AGLA活性定量法を用いて種々の時点で測定された。残存AGLA活性定量は9000-倍稀釈の範囲以上で線型であることが見出された。
安定性定量サンプルのSDS-PAGE
これらの阻害剤により与えられるNprE自己分解に対する保護の水準の別の測定としてSDS-PAGE分析が、自己分解生成物に対する分解を受けていないNprE残存分の相対的な量を決定するために各安定性定量サンプルについて行われた。
安定性試験保温時間の終了時(t =200分)、10μLの各サンプルが採取され、200μLの1NHCLにより反応が終了させられた。直ぐに、200μLの5%TCAが加えられた。TCA沈殿を氷冷で20分間実施した。この沈殿は、遠心分離により収集され、さらに氷冷却した90%アセトンで洗浄された。次に1.5Xサンプルローディングバッファーに再懸濁され、5分間95℃で加熱した。このサンプルは次に4-12%のSDS-PAGEゲルに移された。電気泳動とゲルのCoomassie青染色によるゲルの可視化は、この技術分野で良く知られているSDS-PAGE標準的試験手順を使用して行われた。
結果
図3で示されているように、メタロプロテアーゼNprEは、HDL洗剤調合剤,DW-CT中で保温されると、約1時間で元の活性の80%より多くを失う。タンパク質加水分解阻害剤を同一のNprE洗剤調合剤に加えると大きく酵素の安定性を増強した。例えば、アミソイ(大豆タンパク質の加水分解物)、NprEに分解されたカゼイン加水分解物、HyPep4601TM(小麦グルテン加水分解物)、アミカーゼ(カゼイン酸加水分解物)、及びプロテオースペプトン(植物性タンパク質加水分解物)を含む洗剤調合剤は全て大きな残存NprE活性を示した。アミソイは3時間後に50%をこえる残存活性をもつ最も安定なNprE HDL 洗剤調合剤となった。カゼイン加水分解物を加えた調合剤も非常に良く機能し3時間後に依然、40%の活性を示した。
200分における安定性定量サンプルのこのSDS-PAGEの結果は、タンパク質加水分解物アミソイとカゼイン加水分解物が、洗剤調合剤中でのNprE自己分解に対し最も強い保護を与えたことを示した。これらのタンパク質加水分解物の安定化性能はこれらのサンプルのSDS-PAGEが、自己分解物を示す検出可能な低分子量のバンドがなく単一の強いNprEバンドを示したという事実により根拠付けられた。実際、NprEバンドの強度は、保温処理を受けなかった対照NprEサンプルに匹敵した。一方、阻害剤を加えずに保温処理を受けたNprEサンプルのSDS-PAGEは殆ど全く検出可能なNprEバンドを示さず、保護を受けていないNprEが洗剤調合剤中で200分後には殆ど完全に分解されることを示した。HyPep4601タンパク質加水分解サンプルも、アミソイやカゼイン加水分解物ほどに強くはないが、低分子量の生成物は殆どまたは全く視認できず、単一の強いNprEバンドを示した。タンパク質加水分解物アミカーゼとプロテオースペプトンはSDS-PAGEにおいてNprEバンドを示したが、阻害剤を加えずに保温処理を受けたサンプルのNprEバンドよりわずかに明るいのみであった。従って、SDS-PAGEの結果はAGLA定量を用いて測定した残存NprE活性と一致する(図3に示す)。
この明細書で記載された全ての特許と刊行物は本発明が属する技術分野の技術者の水準を示している。全ての特許と刊行物は、各刊行物が特に指定され、個別に引用によりくみ入れられると示されている場合と同程度に引用により本明細書に組み入れられる。
本発明の個々の実施態様が説明され述べられてきたが、本発明の本質と範囲から逸脱することなく種々の他の変更と修飾を行いうることは、この技術分野の技術者に明らかであろう。そのため、請求項に本発明の範囲内にある全てのそのような変更や修飾を含めるつもりである。
本明細書に説明された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素、限定がなくても実施できる。使用された用語と表記は、限定するためではなく記述を目的とした用語として使用され、そのような用語と表記の使用により、示され記述された特徴またはその一部と同等のものを除外する意図はない。むしろ請求項の発明の範囲内で種々の修飾が可能であることが認められる。従って、本発明は好ましい実施態様と任意の特徴により具体的に開示されたが、明細書に開示された概念の修飾と変更はこの技術分野の技術者にゆだねられ、そのような修飾と変更が請求項により定められるこの発明の範囲内にあると考えられるべきことが理解されるべきである。
本発明は本明細書で広く、包括的に述べてきた。包括的開示の範囲内にあるより狭い範囲の概念や限定的分類もまた本発明の一部を形成する。これはその包括的概念からいずれかの下位のものを除外する条件又は否定的限定のある発明に関する包括的記述にも、除外されるものが具体的に本明細書に示されているか否かに関わらず、当てはまる。