JP5425484B2 - 衛生用紙 - Google Patents

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Description

本発明は、付着した汚れや液体を拭き取るための衛生用紙に関するものであり、より詳細には、水分や油分などの裏抜けのない衛生用紙に関するものである。
近年、汚れ落ちや節水の点で手洗いよりも優れるという理由から、食器洗い機の普及率が向上している。食器洗い機を用いる場合、内部に食べかすや汚れが蓄積してしまわないように、食器の予洗いを行わなければならない。予洗いの方法としては、水で軽くすすぐのが一般的であったが、水洗いによる手荒れが生じる他、予洗いと食器洗い機とで水を二重に使用することとなり、環境に優しいものではなかった。そのため、水を使用することなく手軽に汚れを除去できるという利点から、使い捨ての衛生用紙がしばしば利用されており、食器洗い機の普及率の向上と共に、食べかすなどの食器の汚れの拭き取り除去に優れた衛生用紙のニーズが高まっている。
食器に付着する汚れの種類としては、食べかすと油汚れが主なものとなっており、これらの汚れを効率良く除去可能とするために、一般的に、衛生用紙には、例えば下記特許文献1に示すようなエンボス加工が施される。このように、衛生用紙にエンボス加工を施すことによって、エンボスの凹部で汚れを掻き取るようにして除去できるようになるため、汚れの除去効率が向上する。また、エンボス加工を施すと、表面積が増加するため、油や水分の吸収効率が向上する。
特開2008−142434号公報 特開2008−237814号公報 特開2005−95344号公報 特開2008−88587号公報 特開平1−111099号公報 特開昭62−155914号公報 特開昭63−93350号公報 特開平10−52637号公報
しかしながら、エンボス加工を施した衛生用紙は、油や水分の吸収効率が良い反面、吸収した油や水分が裏抜けしてしまい、使用者の手が汚れてしまうという問題があった。
また、使用済の衛生用紙をゴミ箱などの廃棄場所で放置すると、衛生用紙に付着した食べかすや油分などが腐敗して悪臭を放ってしまうという問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸収した油や水分が裏抜けすることがなく、廃棄後に悪臭が周囲に漂ってしまうことを防止可能とされた衛生用紙を提供することにある。
次に、上記課題を解決するための手段とそれらの作用効果を示す。
〔請求項1に係る発明〕
食器に付着した汚れの拭き取りに用いられる衛生用紙であって、
吸液可能な基材紙の片面側にフィルム層を有し、
深さ0.8〜1.7mmの複数の単位エンボスが基材紙からフィルム層に向かってテーパー角度40〜65度で凹むように形成され、
それら単位エンボスの平面形状の総面積が、基材紙の表面積に対して5〜50%であり、
かつ、単位エンボスを形成した状態での厚みが500〜1800μmである、
ことを特徴とする衛生用紙。
〔作用効果〕
本項記載の発明は、基材紙側が拭き取り面とされ、フィルム層側が使用者による保持面とされて、使用されるようになっている。本項記載の発明によれば、使用者による保持面が、フィルム層とされているため、基材紙に吸収された油や水分が、保持面側に裏抜けしてしまうことがなく、使用者の手が汚れてしまうことがない。
また、本項記載の発明では、基材紙の片面側にフィルム層を有しているため、基材紙をフィルム層で包み込むようにして衛生用紙を丸めて廃棄することによって、基材紙に付着した食べかすや油分などが腐敗して生じる臭気が、衛生用紙を透過しないため、悪臭が周囲に漂ってしまうことを防止することができる。
さらに、本項記載の発明では、複数の単位エンボスが設けられているため、汚れの掻き取り性が向上する。
単位エンボスの平面形状の総面積は、基材紙の表面積に対して5〜50%とされていることが好ましい。基材紙の表面積に対して5%未満の場合、50%超過の場合には所望する拭き取り性が達成することが困難となる。
単位エンボス2の深さは、0.8〜1.7mmが好適である。深さが0.8mm未満の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、1.7mm超過の場合、基材紙10が拭き取り時に破断するおそれがある。
単位エンボスを形成した状態での衛生用紙の厚みは、500〜1800μmが好適である。500μm未満であると基材紙10の厚みが確保できずに吸収量が過度に少なくなってしまい、1800μm超過であると剛性が高まり過ぎて折り畳み困難になってしまったり、微細な溝部分の拭き取りが困難になったりという問題が生じる。
〔請求項2に係る発明〕
複数の直線形エンボスが、相互に交わって格子状のパターンの格子エンボスを構成するよう形成されており、単位エンボスは、直線形エンボスに囲まれた格子部に配置されている、請求項1に記載の衛生用紙。
〔作用効果〕
本項記載の発明では、複数の直線形エンボスが、相互に交わって格子状のパターンの格子エンボスを構成するよう形成されていると、拭き取り時に液体が格子エンボスを伝うため、吸収拡散が生じて液体の拭き取り性が向上する。
また、単位エンボスが、直線形エンボスに囲まれた格子部に配置されているため、単位エンボスと直線形エンボスとが、それぞれ偏在することがない。
〔請求項3に係る発明〕
基材紙には脱臭剤が含まれている、請求項1或いは請求項2に記載の衛生用紙。
〔作用効果〕
基材紙に、脱臭剤が含まれていることによって、使用後に基材紙に付着した食べかすや油分などが腐敗して生じる臭気が、周囲に漂ってしまうことを防止することができる。
〔請求項4に係る発明〕
脱臭剤が重曹である、請求項3に記載の衛生用紙。
〔作用効果〕
脱臭剤が重曹であると、重曹の脱臭効果を得ることができるとともに、本項記載の発明に係る衛生用紙を食器の汚れの拭き取りに使用した際に、脱臭剤の一部が食器に付着して残留したとしても、人体に対して害を与えることがない。
〔請求項5に係る発明〕
基材紙とフィルム層の間に脱臭層を有している、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の生成用紙。
〔作用効果〕
本項記載の発明のように、基材紙とフィルム層との間に、脱臭層が介在されていることによって、使用後に基材紙に付着した食べかすや油分などが腐敗して生じる臭気が、周囲に漂ってしまうことを防止することができる。
〔請求項6に係る発明〕
単位エンボスの平面形状が、長手方向長さ3〜9mm、幅方向長さ2〜5mmの多角形状とされている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の衛生用紙。
〔作用効果〕
本項記載の発明では、単位エンボスの平面形状が多角形状であるため、単位エンボスに頂角が現れる。このように単位エンボスに頂角が現れていることによって、ラードなどの高粘度の汚れの掻き取り性が向上する。
〔請求項7に係る発明〕
単位エンボスの平面形状が六角形状である、請求項6に記載の衛生用紙。
〔作用効果〕
単位エンボスは、六角形状の他、四角形状や八角形状などの他の角形状とすることも可能であるが、頂角の少ない角形状では、単位エンボス内側の平たい部分の面積が少ないため、液体が単位エンボスを伝い難くなるに伴って吸収拡散が起こり難くなり、十分な吸液性を得ることが困難になってしまう。一方、頂角の多い角形状では、角部の角度が緩やかになりすぎて、高粘度の汚れの掻き取り性が低下してしまう。以上のような理由から、単位エンボスの形状としては、単位エンボス内側の平たい部分の面積を確保と、高粘度の汚れの掻き取り性とをバランス良く両立できる六角形状とするのが最も好ましい。
〔請求項8に係る発明〕
単位エンボスの平面形状が円状である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の衛生用紙。
本項記載の発明のように、単位エンボスは円形とすることも可能である。
以上に示したように、本発明によれば、吸収した油や水分が裏抜けすることがなく、廃棄後に悪臭が周囲に漂ってしまうことを防止可能とされた衛生用紙を提供することが可能となる。
本発明に係る衛生用紙の第1実施形態を示しており、図2のA−A矢視に対応する断面図である。 本発明に係る衛生用紙の第1実施形態を示す平面図である。 本発明に係る衛生用紙の第2実施形態を示す平面図である。 本発明に係る衛生用紙のその他の実施形態を示す平面図である。
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。図1に示すのは、第1実施形態に係る衛生用紙1の層構造であり、この衛生用紙1は、紙から成り吸液可能とされた基材紙10と、この基材紙10の片側に積層された非透液性と非透臭性とを有するフィルム層20とから構成されている。
衛生用紙1の坪量(JIS P 8124:1998)は、36〜120g/m2であり、好適には54〜90g/m2である。36g/m2未満の場合には、基材紙10の坪量を確保することが難しく十分な吸水性を得ることができず、また、120g/m2超過の場合には、剛性が高まり衛生用紙1を4つ折りにする際に大きな抵抗となるおそれがあり、特に、微細部品、部品の溝部分の拭き取りが困難になるおそれがある。
(基材紙)
基材紙10は、2〜4枚の薄基材紙を積層することで構成されている。基材紙10は、5枚以上の薄基材紙を積層して構成することも可能であるが、基材紙10には、フィルム層20が積層されており、基材紙10を6層以上の構造とすると、衛生用紙1が過度に多層となってしまい、拭き取り使用時に積層部でズレが生じ易くなってしまう。そうすると、衛生用紙1の表面に皺が発生し、拭き取り性が低下するおそれがある。この一方、基材紙10は、単層とすることも可能であるが、吸液性能を確保すべく一定の嵩を得るために必要な構成繊維の量が増えると共にコスト増となってしまう。
基材紙10を形成する薄基材紙の構成繊維は、LUKP、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜30重量%、NUKP、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜90重量%を含有するものとされる。なお、LUKP、LBKPとしては、FSC認証されたチップから生産されたパルプを含有するのが好適である。NBKP、LBKP以外の構成繊維としては、ケナフパルプ、マニラ麻等の非木材パルプ、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維が例示できる。
薄基材紙の製造は、NBKP、LUKP及びLBKP、NUKPを含む抄造原料を、既知のクレープ紙、薄基材紙の製造に基づいて抄造することができる。
基材紙10を構成する薄基材紙一枚あたりの坪量(JIS P 8124:1998)は、18〜28g/m2であり、好適には24〜26g/m2である。18g/m2未満の場合には、十分な吸液量を発言させることが困難となり、また、28g/m2超過の場合には、剛性が高まり衛生用紙1を4つ折りにする際に大きな抵抗となるおそれがあり、特に、微細部品、部品の溝部分の拭き取りが困難になるおそれがある。
基材紙10を構成する薄基材紙一枚あたりの密度は、25〜120kg/m3とされ、より好ましくは、50〜80kg/m3とされる。25kg/m3未満であるとエンボス形成時に破断しやすくなり加工しにくくなる。120kg/m3超過であると剛性が高まり、拭き取りの際に不具合が生じる。
基材紙10の厚みは、200〜600μmとされ、より好ましくは、300〜500μmとされる。200μm未満であると吸液量が確保できなくなり、600μm超過であると剛性が高まり過ぎて折り畳み困難になってしまったり、微細な溝部分の拭き取りが困難になるおそれがある。
基材紙10には、臭気を分解又は吸着可能な脱臭剤が内添又は外添される。この脱臭剤としては、一般的に使用されているものを適用でき、例えば、お茶がら、ゼオライト、重曹などとすることができる。その中でも特に、重曹は、高い脱臭効果を得ることができるとともに、食器の汚れの拭き取りに使用した際に、脱臭剤の一部が食器に付着して残留したとしても、人体に対して害を与えることがないため、より好ましい。
脱臭剤の添加量は、パルプスラリーに対する重量比で0.1〜50kg/tとされ、特に1.0〜20kg/tとすることが好ましい。0.1kg/t未満であると十分な脱臭効果を得ることができなくなり、一方、50kg/t超過であるとフィルムと紙のはり合わせが不良となってしまう。
(フィルム層)
基材紙10に積層されるフィルム層20は、樹脂から成るフィルムを基材紙10上にラミネートすることで形成される。フィルム層20を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVCD)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、ナイロンなどの各種樹脂をフィルム加工することで形成される。その中でも特に、ガスバリア性、防湿性、及びヒートシール性に優れ、低コストで構成できる点から、ポリエチレンを選択することが好ましい。
これらの材料からフィルムを製造する方法は特に限定されず、Tダイ法、インフレーション法などの溶融押出成型法、溶液流延法(溶液キャスト法)、カレンダー法、圧縮成形法などの公知のフィルム成形方法を採用することができる。
フィルム層20を脱臭紙20にラミネートする方法は特に制限されず、例えば押出しラミネート(エクストルージョンラミネート)、ウェット・ラミネート、ドライ・ラミネートなどの公知のラミネート方法を用いることができる。この中でも特に、生産性やコストの点で優れたドライ・ラミネートを用いることが好ましい。
フィルム層20は、厚みが20〜70μmとされており、より好ましくは20〜30μmとされている。フィルム層20の厚みが20〜70μmの範囲内であると、柔らかく、手に馴染みやすいため、拭き取る際に滑りにくい。しかしながら、フィルム層20の厚みが20μm未満であると適切な強度を得ることができずに破損しやすくなってしまい、70μm超過であると剛性が高まり過ぎて折り畳み困難になってしまったり、微細な溝部分の拭き取りが困難になったりという問題が生じる。
(エンボス)
衛生用紙1には、図1及び図2に示すように、平面形状が六角形状の単位エンボス2が多数施されている。これらの単位エンボス2は、図1に示すように、基材紙10にフィルム層20が積層された状態で施され、基材紙10側からフィルム層20側に向かって凹むように施されている。
単位エンボス2は、長手方向長さ(EL)が4.5mm、幅方向長さ(EW)が3mm、深さ(ED)が1.1mm、テーパー角度(Eθ)が60度となるように形成されている。なお、本説明においては、深さ(ED)とは、基材紙10の表面から単位エンボス2の凹部3の底面までの距離をいい、テーパー角度(Eθ)とは、単位エンボス2の凹部3の延長線と基材紙10の表面との交差する角度をいい、厚さ(T)とは、衛生用紙1の一方の表面から他方の表面までの距離をいう。
単位エンボス2を形成した際の、図1における符号Tによって示される衛生用紙1の厚みは、500〜1800μmであり、より好ましくは700〜1200μmとされる。500μm未満であると基材紙10の厚みが確保できずに吸収量が過度に少なくなってしまい、1800μm超過であると剛性が高まり過ぎて折り畳み困難になってしまったり、微細な溝部分の拭き取りが困難になったりという問題が生じる。なお、衛生用紙1の厚さTは、尾崎製作所製のピーコックにより測定される。
単位エンボス2の長手方向長さ(EL)については、特に制限はないが、3〜9mmが好適であり、幅方向長さ(EW)に対し、125〜200%にするのがより好適である。なお、長手方向長さ(EL)が3mm以下の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、9mm以上の場合、基材紙10が拭き取り時に破断するおそれがある。
単位エンボス2の幅方向長さ(EW)については、特に制限はないが、2〜5mmが好適である。なお、幅方向長さ(EW)が2mm以下の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、5mm以上の場合、基材紙10が拭き取り時に破断するおそれがある。
単位エンボス2の深さ(ED)については、0.8〜1.7mmが好適である。なお、深さ(ED)が0.8mm未満の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、1.7mm超過の場合、基材紙10が拭き取り時に破断するおそれがある。
単位エンボス2のテーパー角度(Eθ)については、特に制限はないが、40〜65度が好適である。なお、テーパー角度(Eθ)が40度以下の場合、単位エンボス2の凹部3の周縁が鈍り粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、65度以上の場合、基材紙10が拭き取り時に破断するおそれがある。
各単位エンボス2は、単位エンボス2の長辺4が、隣接する単位エンボス2の長辺4に対し長手方向にズレた位置に形成し、単位エンボス2の長辺4の両側の角部5が、隣接する対向する単位エンボス2の長辺4の両側の角部5にそれぞれ対向する位置に形成されている。
また、各単位エンボス2は、隣接する単位エンボス2に対して、長手方向ピッチ(PL)が6mm、幅方向ピッチ(PW)が3mmの位置に形成されており、亀甲パターン状を成すようになっている。
単位エンボス2の長手方向ピッチ(PL)については、特に制限はないが、4〜10mmが好適である。また、単位エンボス2の幅方向ピッチ(PW)についても、特に制限はないが、2〜5mmが好適である。単位エンボス2を長手方向ピッチ(PL)が6mm、幅方向ピッチ(PW)が3mmの位置に亀甲パターン状に形成した場合、基材紙10(衛生用紙1)の表面積が、単位エンボス2を形成する前の表面積に対し、144%と増加するため拭き取り性が格段に向上する。
なお、表面積は、簡易的には単位エンボス2を引張力1000CN/25mmで単位エンボス2の長辺4に直角方向に伸長した場合に発生する断面伸長率を2乗することによって算出でき、121%であった。断面伸長率を2乗して算出した場合、単位エンボス2を形成した後の基材紙10の表面積が、単位エンボス2を形成する前の基材紙10の表面積に対し、拭き取り性の観点から110〜130%が好適である。
単位エンボス2の凹部3の底部は平面とされている。これらの単位エンボス2の平面形状の総面積は、基材紙10の表面積に対し5〜50%とされており、より好ましくは30〜40%とされている。単位エンボス2の平面形状の総面積が、基材紙10の表面積に対して5%未満の場合、50%超過の場合には所望する拭き取り性が達成することが困難となる。
亀甲パターン状に形成された単位エンボス2の長辺4の延在方向が、基材紙10(衛生用紙1)の横方向に対する交差角度(θ)が45度で形成されている。
交差角度(θ)については、特に制限はないが、衛生用紙1を横方向あるいは縦方向にスライドさせながら拭き取りを行う際に、単位エンボス2の鋭角部分であり長辺4がスライド方向に対し傾斜した場合、拭き取り性が高まることから30〜60度が好適である。さらに、縦方向とは、抄造時における基材紙10流れ方向に沿う方向でありMD方向と言われ、横方向とは、縦方向と直交する方向でありCD方向と言う場合もある。
単位エンボス2の形成方法は、例えば、一対のエンボスロール間に基材紙10を通して形成することができ、特に、単位エンボス2を嵩高にする観点からスチールマッチエンボスを使用することが好適である。この場合、エンボス圧が、10〜80kgf/cm2、好ましくは10〜25kgf/cm2となるようにするのが好適である。エンボス圧が10kgf/cm2以下の場合、単位エンボス2の長辺3を含む周縁部を鋭角にすることができず拭き取り性が下がるおそれがあり、80kgf/cm2以上の場合、単位エンボス2の形成時に基材紙10が破断するおそれがある。
一対のエンボスロールに関しては、単位エンボス2が亀甲パターン状に付与された金属ロールと弾性ロールとの組み合せが好適である。この場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、A30〜A90であるのが好適である。ショア硬度がA30以下の場合、つまり弾性ロール表面がやわらかい場合、基材紙10が破断するおそれがあり、A90以上の場合、つまり弾性ロール表面が硬い場合、単位エンボス2が基材紙10に形成できず、基材紙10を構成する薄基材紙を積層できないおそれがある。
以上のようにして単位エンボス2が形成された基材紙10は、既知の方法に従って、インターフォルダ等により積層し折り畳んだり、巻き取ったりして製品とする。
(作用効果)
次に、本実施形態に係る衛生用紙1の作用効果について説明する。
本実施形態に係る衛生用紙1は、基材紙10側が拭き取り面とされ、フィルム層20側が使用者による保持面とされて、使用されるようになっている。本実施形態に係る衛生用紙1によれば、使用者による保持面が、非透液性を有するフィルム層20とされているため、基材紙10に吸収された油や水分が、保持面側に裏抜けしてしまうことがなく、使用者の手が汚れてしまうことがない。
本実施形態に係る衛生用紙1では、フィルム層20が非透臭性(ガスバリア性)を有しているため、基材紙10をフィルム層20で包み込むようにして衛生用紙1を丸めて廃棄することによって、基材紙10に付着した食べかすや油分などが腐敗して生じる臭気が、衛生用紙1を透過しないため、悪臭が周囲に漂ってしまうことを防止することができる。
本実施形態に係る衛生用紙1のように、単位エンボス2が、基材紙10側からフィルム層20側に向かって凹むよう形成されていると、フィルム層20側から基材紙10側に向かって凹むよう形成されている場合に比べて、拭き取り面が滑らかになり、拭き取り対象との接触面積が大きくなるため、液体を確実に吸収して拭き取ることが可能となる。
本実施形態に係る衛生用紙1のように、基材紙10に、臭気を分解又は吸着可能な脱臭剤が含まれていることによって、使用後に基材紙10に付着した食べかすや油分などが腐敗して生じる臭気が、周囲に漂ってしまうことを防止することができる。
本実施形態に係る衛生用紙1によれば、単位エンボス2が六角形状であるため、単位エンボス2に六角形の頂角から成る角部が現れる。このように単位エンボス2に角部が形成されることによって、ラードなどから成る高粘度の汚れの掻き取り性が向上する。
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る衛生用紙の第2実施形態について説明する。第2実施形態の衛生用紙1は、層構造は第1実施形態に係る衛生用紙と同じとされており、基材紙10に対してフィルム層が積層されている。そして、本実施形態に係る衛生用紙1は、相互に交わることで格子状のパターン成して格子エンボスを構成する直線形エンボス6、7に囲まれる部分である各格子部8に、六角形状の単位エンボス2が亀甲パターン状を成すように複数形成されている。直線形エンボス6、7及び単位エンボス2は、基材紙10にフィルム層20が積層された状態で施され、基材紙10側からフィルム層20側に向かって凹むように施されている。
図3は、第2実施形態に係る衛生用紙1の基材紙10に形成されたエンボスパターンを示している。なお、単位エンボス2、基材紙10、フィルム層については第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
格子パターンを形成する直線形エンボス6、7は、幅(LW)が2mm、深さ(LD)が1.1mmであり、直線形エンボス6で囲まれる格子部8の対角線距離で定義されるエンボスピッチ(LP)が19mmであり、格子パターンは、基材紙10(衛生用紙1)の水平方向に対し交差角度が45度である。格子パターンとすると、粘度の低い水分等を拭き取った際には、直線形エンボス6の凹部内を水分等が拡散、吸収されながら進行するため、粘度の低い水分等の拭き取り性が高まる。
直線形エンボス6、7の幅(LW)および深さ(LD)については、特に制限はないが、拭き取り性の観点から1〜3mmが好適である。また、エンボスピッチ(LP)については、特に制限はないが、拭き取り性の観点から10〜30mmが好適であり、15〜25mmがより好適である。
直線形エンボス6、7の平面形状の総面積が、基材紙10の表面積に対して2〜40%とするのが好適であり、10〜20%がより好適である。直線形エンボス6、7の平面形状の総面積が、基材紙10の表面積に対して2%未満の場合、40%超過の場合には所望する拭き取り性が達成することが困難となる。
また、格子パターンは、基材紙10の水平方向に対し交差角度が45度である。すなわち、格子パターンを形成する一方の直線形エンボス6の延在方向と基材紙10の横方向の横方向に対する交差角度(Lθ1)が45度で形成され、格子パターンを形成する他方の直線形エンボス7の延在方向と基材紙10の横方向に対する交差角度(Lθ2)も同様に45度で形成されいる。交差角度(Lθ1、2)については、特に制限はないが、拭き取り性の観点から30〜60度が好適である。
第2実施形態に係る衛生用紙1においては、図3に示すように各格子部8に形成される単位エンボス2は、単位エンボス2の長辺6の延在方向が基材紙10の縦方向と平行に形成されているが、単位エンボス2の長辺6の延在方向を基材紙10の横方向に対して30〜60度の交差角度をつけて形成しても良い。
直線形エンボス6、7及び単位エンボス2の形成方法は、例えば、一対のエンボスロール間に基材紙10を通して形成することができ、特に、直線形エンボス6、7及び単位エンボス2を嵩高にする観点からスチールマッチエンボスを使用することが好適である。この場合、エンボス圧が、10〜80kgf/cm2、好ましくは10〜25kgf/cm2となるようにするのが好適である。エンボス圧が10kgf/cm2以下の場合、単位エンボス2の長辺3を含む周縁部を鋭角にすることができず拭き取り性が下がるおそれがあり、80kgf/cm2以上の場合、直線形エンボス6、7及び単位エンボス2の形成時に基材紙10が破断するおそれがある。
一対のエンボスロールに関しては、直線形エンボス6、7が格子パターン状に、単位エンボス2が亀甲パターン状が付与された金属ロールと弾性ロールとの組み合せが好適である。この場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、A30〜A90であるのが好適である。ショア硬度がA30以下の場合、つまり弾性ロール表面がやわらかい場合、基材紙10が破断するおそれがあり、A90以上の場合、つまり弾性ロール表面が硬い場合、直線形エンボス6、7及び単位エンボス2が基材紙10に形成できず、基材紙10を構成する薄基材紙を積層できないおそれがある。
以上のようにして直線形エンボス6、7及び単位エンボス2が形成された基材紙10は、既知の方法に従って、インターフォルダ等により積層し折り畳んだり、巻き取ったりして製品とする。
(作用効果)
次に、本実施形態に係る衛生用紙1の作用効果を説明する。
本実施形態に係る衛生用紙1では、基材紙10に、格子エンボスを成す直線形エンボス6、7と、直線形エンボス6、7によって囲まれる部分に、六角形状の単位エンボス2とが形成されている。格子状のパターンを成す直線形エンボス6、7は、拭き取り時に液体が直線形エンボス6、7を伝うため、吸収拡散が生じて液体の拭き取り性が向上する。この一方、六角形状の単位エンボス2は、高粘度のこびりつくような汚れの拭き取り性に優れている。本実施形態に係る衛生用紙1の基材紙10は、直線形エンボス6、7と単位エンボス2とを兼ね備えているため、両者のメリットを享受することができる。
〔他の実施形態〕
次に、本発明に係る衛生用紙の他の実施形態を示す。
単位エンボスの平面形状は、六角形状の他、四角形状や八角形状などの他の角形状や、図4に示されるような円状のエンボス40とすることも可能である。ただし、頂角の少ない角形状では、単位エンボス内側の平たい部分の面積が少ないため、液体が単位エンボス2を伝い難くなるに伴って吸収拡散が起こり難くなり、十分な吸液性を得ることが困難になってしまう。特に、単位エンボス2の平面形状が四角形とされて頂角の角度が90度であると、衛生用紙の柔軟性が損なわれて使いづらいという欠点がある。
一方、頂角の多い角形状や円形では、角部の角度が緩やかになりすぎて、高粘度の汚れの掻き取り性が低下してしまう。以上のような理由から、単位エンボスの形状としては、単位エンボス内側の平たい部分の面積を確保と、高粘度の汚れの掻き取り性とをバランス良く両立できる六角形状とするのが最も好ましい。
さらに、単位エンボスは、六角形状の中でも正六角形であることがより好ましい。正六角形は、平面充填が可能な図形であり、且つ、平面充填が可能な正多角形(正三角形、正四角形、正六角形)の中でも面積あたりの周長が最も短い。そのため、同じ面積の他の図形と比べて、一定面積の平面上に配置できる図形の数が最も多い。つまり、単位エンボスの平面形状が正六角形であると、より多数の単位エンボスを形成することが可能となる。そうすると、基材紙の強度が高まるため、液体を吸収した際にも、エンボスの形状が維持されやすくなるため、掻き取り性が低下しにくくなる。
なお、他の角形状や、円形のエンボスとされた単位エンボス40は、第2実施形態に係る衛生用紙と同様に、相互に交わることで格子状のパターン成して格子エンボスを構成する直線形エンボスとの併設も可能である。
基材紙に脱臭剤を添加する代わりに、或いは脱臭剤を併用して、基材紙とフィルム層との間に、臭気を分解又は吸着可能な脱臭層を介在することもできる。脱臭層の形成方法としては、上記に示した脱臭剤を層状に形成する他に、脱臭層として脱臭紙を介在させることも可能である。この脱臭紙の製造方法としては、脱臭剤を懸濁させたスラリーを紙に塗布する方法や、脱臭剤に活性炭繊維を用いてセルロース繊維との混抄紙とする方法や、脱臭剤としてゼオライト等の無機粉体を用い抄紙時にこの無機粉体を漉き込む方法などが挙げられる。
直線形エンボス及び単位エンボスは、フィルム層側から基材紙側に向かって凹むよう形成することも可能であるが、基材紙側からフィルム層側に向かって凹むよう形成されている方が、拭き取り面が滑らかになり、拭き取り対象との接触面積が大きくなるため、液体を確実に吸収して拭き取ることが可能となることから、後者を選択することが好ましい。
本発明に係る衛生用紙の効果を確認するため、吸水性、グリスの拭き取り性、引張強度、水分の拭き取り性、液体の裏抜け、臭気について評価を行った。
実施例1〜11及び比較例1〜2の単位エンボスの形状、格子エンボスの有無、単位エンボスの縦方向ピッチ、単位エンボスの横方向ピッチ、単位エンボスの深さ、テーパー角度、プライ数(薄基材紙の積層枚数)、フィルム厚、重曹のパルプスラリーに対する重量比での添加量、基材紙を構成する薄基材紙一枚あたりの密度、エンボス付与前の表面積に対する付与後の表面積の比率、単位エンボスを形成した状態での衛生用紙の厚さは表1に示すとおりである。
なお、実施例、比較例とも基材紙を構成する薄基材紙の坪量は、24.2g/m2とした。
フィルム層は、ポリエチレンから形成し、ドライ・ラミネートによって基材紙に積層した。
格子エンボスを構成する直線形エンボスは、幅(LW)を2mm、深さ(LD)を1.1mmとし、直線形エンボスで囲まれる格子部の対角線距離で定義されるエンボスピッチ(LP)を19mmとした。格子パターンは、基材紙(衛生用紙)の水平方向に対し交差角度が45度となるよう配置した。また、直線形エンボスの平面形状の総面積は、基材紙の表面積に対して15%とした。
以下に吸水性、グリスの拭き取り性、引張強度、水分の拭き取り性、液体の裏抜け、臭気についての評価基準を示す。
〔吸水量〕
試料(寸法:横315mm×縦405mm)を10cm角に裁断し、表面と裏面を交互に4枚重ねした状態で水に3分間浸した後取出し、網状の水平台の上に30秒放置した後の重量を測定し、増加重量を算出した。
なお、衛生用紙1m2あたりの吸水量[g/m2]が、3000以上の場合を「◎」、2500〜3000の場合を「○」、2000〜2500の場合を「△」、2000以下の場合を「×」とした。
〔グリスの拭き取り性〕
表面平滑な水平台(天板材質:セグラン、セルロン)上に、グリス(昭和シェル石油製、名称:カートリッジグリス、型式:EP―2)1.5gへらで均一に延ばし、試料(寸法:横315mm×縦405mm)を4つ折りにして、基材紙面をグリスの塗布面に接触させると共に、試料に500gのおもりを載せた状態で水平台上を約5秒間スライド移動させた後、グリスの残存状態を目視評価した。
なお、90%超過拭き取れた場合を「◎」、70〜90%拭き取れた場合を「○」、70%未満しか拭き取れなかった場合を「△」とした。
〔引張強度〕
衛生用紙の引張強度をJIS P 8113に準じて評価した。
なお、引張強度[CN/25mm]が、5000以上の場合「◎」、3500〜5000の場合「○」、2000〜3500の場合「△」、2000以下の場合「×」とした。
〔水分の拭き取り性〕
表面平滑な水平台(天板材質:セグラン、セルロン)上に、蒸留水を1.0g滴下し、試料(寸法:横315mm×縦405mm)を4つ折りにして、基材紙面を蒸留水の滴下面に接触させると共に、試料に50gのおもりを載せた状態で水平台上を約5秒間スライド移動させた後、グリスの残存状態を目視評価した。
なお、90%超過拭き取れた場合を「◎」、70〜90%拭き取れた場合を「○」、70%未満しか拭き取れなかった場合を「△」とした。
〔液体の裏抜け〕
試料(寸法:横315mm×縦405mm)に対して、蒸留水1000μlを滴下し、約10秒後に、裏抜けがないか手で触って確認する。裏抜けがない場合「○」、裏抜けがあった場合「×」とした。
〔臭気〕
フィルム側を外側にして、一握りほどの食べかす等を包み込むようにし、ビニール袋に入れて気温25℃、湿度80%の室内に放置し、丸一日後、ビニール袋の開口付近から臭いを嗅ぎ、漂う臭気を評価した。
なお、ほとんど臭わない場合を「◎」、やや臭う場合を「○」、非常に臭う場合を「△」とした。
Figure 0005425484
表1に示すとおり、本発明に係る衛生用紙は、吸収した油や水分が裏抜けすることがなく、廃棄後に悪臭が周囲に漂ってしまうことを防止可能となっている。
本発明は、油分や水分や汚れの拭き取りを目的とするシート状物として利用可能である。
1・・・衛生用紙
2・・・単位エンボス
6、7・・・直線形エンボス(格子エンボス)
10・・・基材紙
20・・・脱臭紙
30・・・フィルム層

Claims (8)

  1. 食器に付着した汚れの拭き取りに用いられる衛生用紙であって、
    吸液可能な基材紙の片面側にフィルム層を有し、
    深さ0.8〜1.7mmの複数の単位エンボスが基材紙からフィルム層に向かってテーパー角度40〜65度で凹むように形成され、
    それら単位エンボスの平面形状の総面積が、基材紙の表面積に対して5〜50%であり、
    かつ、単位エンボスを形成した状態での厚みが500〜1800μmである、
    ことを特徴とする衛生用紙。
  2. 複数の直線形エンボスが、相互に交わって格子状のパターンの格子エンボスを構成するよう形成されており、単位エンボスは、直線形エンボスに囲まれた格子部に配置されている、請求項1に記載の衛生用紙。
  3. 基材紙には脱臭剤が含まれている、請求項1或いは請求項2に記載の衛生用紙。
  4. 脱臭剤が重曹である、請求項3に記載の衛生用紙。
  5. 基材紙とフィルム層の間に脱臭層を有している、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の生成用紙。
  6. 単位エンボスの平面形状が、長手方向長さ3〜9mm、幅方向長さ2〜5mmの多角形状とされている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の衛生用紙。
  7. 単位エンボスの平面形状が六角形状である、請求項6に記載の衛生用紙。
  8. 単位エンボスの平面形状が円状である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の衛生用紙。
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