JP5425274B2 - 樹脂散布装置及びその制御方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、コンクリートなどからなる構造物の表面上に液状樹脂などを散布するための樹脂散布装置に関するものである。
特開平5−33310号公報
コンクリート構造物における床面の補業、補修に当たり、新旧のコンクリートの打ち継ぎ面の接着強度を増すため、旧構造物の表面に接着剤を塗布する作業がなされる。
従来においてこの作業は、ハケやローラーを用いた人力施工が主であり、部分的に機械を用いた場合であっても、ハンドスプレーガンを人力で操作することにより施工されていた。
そのため、担当作業者の個人差から、施工面に対する散布量を均質とすることは難しく、施工精度を高めることが難しかった。そして、人力による限界から、小規模の施工に限定されていた。
なお、構造物の表面上に液状樹脂を散布するための樹脂散布装置としては、例えば特許文献1に係る発明「排水性舗装の強化剤散布装置」が存在する。
この特許文献1に係る発明は、自走式トラクタに、樹脂液主剤及び硬化剤を混合して散布する樹脂混合物散布装置と硅砂散布装置とを設け、両装置の散布ノズルを横行装置の横行台に設けた装置を提供するものである。この構成により、舗装面における砕石がはがれて飛散するのを防止し、排水性、吸音性が優れ、滑り止めを兼ねた排水性舗装を得ることができる。
ところが、この特許文献1に係る装置では、自走式トラクタの制御と各散布装置の制御とが統一して行われていなかったため、高い精度での施工を行うことが難しかった。
そして、この特許文献1に係る装置では、道路上に樹脂などを散布するものであって、装置自体には樹脂などの飛散防止の措置が特に取られていなかった。
ところが、施工場所によっては樹脂が周囲に飛散すると困る場合がある。例えば空港施設における路面に対して施工を行う場合、航空機に樹脂が誤って付着してしまった場合、航空機の運行上深刻な危険を及ぼす可能性があり、施工者に補償が求められる恐れがあった。
このように、樹脂の飛散が厳しく制限される施工場所においては、施工範囲の周囲に仮設壁を設けたり、周囲に養生シートを敷き詰めたりしなければならず非効率である。そして、本来の施工範囲の周辺まで上記のような対策を施さなければないため、施工場所における日常業務に影響が及ぶことがある。
上記の問題に鑑み、本願発明は人力施工の問題点をふまえ、高い精度であり、かつ大規模施工を可能にさせる樹脂散布装置及びその制御方法を提供することを課題とする。
また本願発明は、周囲に樹脂を極力飛散させることのない樹脂散布装置及びその制御方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、構造物Cの表面C1上に液状樹脂Rを散布するための樹脂散布装置であって、移動体部1、噴射ノズル部2、制御部3、ミスト吸引部4を備えており、移動体部1は駆動輪11を備え、構造物Cの表面C1上を少なくとも一方向に移動可能とされており、噴射ノズル部2は、上記移動体部1の、移動方向における端部に設けられており、噴射口21から液状樹脂Rを噴射できるものであって、構造物Cの表面C1に平行であり、かつ、上記移動体部1の移動方向に交わる方向へと移動可能とされており、制御部3は、上記移動体部1及び噴射ノズル部2の移動を制御するものであり、ミスト吸引部4は飛散防止カバー4aを備えており、この飛散防止カバー4aが、上記噴射ノズル部2の噴射口21と上記構造物Cの表面Cとの間の空間を覆うものであり、この飛散防止カバー4aには吸引口42aが開口されており、この吸引口42aが、集塵機5に連続する排気路Eの端部とされたものであり、 上記飛散防止カバー4aが、内周面の横断面形状が円形とされた側面部43aを有しており、上記飛散防止カバー4aと一体に、上記排気路Eを有する吸引管42が設けられており、この吸引管42が上記吸引口42aを有しており、この吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記吸引口42aにおける、上記側面部43aの径方向Dを基準とした角度θが、径外側を起点として80°〜95°の範囲にあることを特徴とする樹脂散布装置を提供する。
また、本願の請求項2に係る発明は、構造物Cの表面C上に液状樹脂Rを散布するための樹脂散布装置であって、移動体部1、噴射ノズル部2、制御部3、ミスト吸引部4を備えており、移動体部1は駆動輪11を備え、構造物Cの表面C上を少なくとも一方向に移動可能とされており、噴射ノズル部2は、上記移動体部1の、移動方向における端部に設けられており、噴射口21から液状樹脂Rを噴射できるものであって、構造物Cの表面Cに平行であり、かつ、上記移動体部1の移動方向に交わる方向へと移動可能とされており、制御部3は、上記移動体部1及び噴射ノズル部2の移動を制御するものであり、ミスト吸引部4は飛散防止カバー4aを備えており、この飛散防止カバー4aが、上記噴射ノズル部2の噴射口21と上記構造物Cの表面Cとの間の空間を覆うものであり、この飛散防止カバー4aには吸引口42aが開口されており、この吸引口42aが、集塵機5に連続する排気路Eの端部とされたものであり、 上記飛散防止カバー4aが、内周面の横断面形状が円形とされた側面部43aを有しており、上記飛散防止カバー4aと一体に、上記排気路Eを有する吸引管42が設けられており、この吸引管42が上記吸引口42aを有しており、この吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記側面部43aの内周面と同心である仮想面(X)の水平方向の接線と一致することを特徴とする樹脂散布装置を提供する。
また、本願の請求項3に係る発明は、上記吸引管42が、飛散防止カバー4aの中心軸を挟んで、軸対称に二箇所以上設けられたことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂散布装置を提供する。
また、本願の請求項4に係る発明は、上記飛散防止カバー4aが、外筒部43と、この外筒部43の内部に設けられた内筒部44とを有しており、上記吸引口42aが、上記外筒部43と内筒部44との間に設けられたものであって、
上記外筒部43と内筒部44との間であり、上記吸引口42aの下方に、案内羽根45が設けられており、この案内羽根45が、上記吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aと平行に設けられたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂散布装置を提供する。
また、本願の請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂散布装置を用いた、樹脂散布装置の制御方法であって、上記噴射ノズル部2が、移動範囲における一端から移動を開始して同他端で停止し、上記噴射ノズル部2の移動の際にのみ液状樹脂Rの噴射がなされ、上記移動体部1が、噴射ノズル部2の移動中には停止し、噴射ノズル部2が上記他端で停止した後には、既に樹脂を散布した範囲とは逆方向へと移動するものであり、上記制御部3にあらかじめ入力された制御パターンにより、上記の動作が繰り返して自動制御されることを特徴とする樹脂散布装置の制御方法を提供する。
本願の発明は、制御部3が、上記移動体部1及び噴射ノズル部2の移動を制御するものであることにより、両者の制御を統一的になすことができ、高い精度の施工が可能である。そして、噴射ノズル部2が移動体部1の移動方向に交わる方向へと移動可能とされているため、この移動範囲を拡大することにより、大規模施工が可能である。
また、吸引口42aが開口された飛散防止カバー4aを備え、この吸引口42aが集塵機5に連続する排気路Eの端部とされたことにより、構造物Cの表面C1上に定着しなかった液状樹脂Rの飛沫(ミスト)を吸い出し、この飛沫を集塵機5で回収することができる。このことから、周囲に樹脂を極力飛散させることがない。
また、本願発明は、排気路Eを有する吸引管42が設けられ、この吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記吸引口42aにおける、上記側面部43aの径方向Dを基準とした角度θが、径外側を起点として80°〜95°の範囲にあることにより、飛散防止カバー4aの内部に旋回流Fを発生させることができ、効果的に飛散防止カバー4aの内部空間に存在する飛沫を吸い出すことができる。
また、排気路Eを有する吸引管42が設けられ、この吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、側面部43aの内周面と同心である仮想面Xの水平方向の接線と一致することにより、飛散防止カバー4aの内部に旋回流Fを発生させることができ、効果的に飛散防止カバー4aの内部空間に存在する飛沫を吸い出すことができる。
また、吸引管42が、飛散防止カバー4aの中心軸を挟んで、軸対称に二箇所以上設けられたことから、飛沫の吸い出しをより効率的に行うことができる。
また、飛散防止カバー4aが、外筒部43と、この外筒部43の内部に設けられた内筒部44とを有し、上記外筒部43と内筒部44との間であり、吸引口42aの下方に案内羽根45が設けられており、この案内羽根45が、上記吸引管42の上記吸引口42aにおける軸線Aと平行に設けられたことにより、飛散防止カバー4a内の空気がこの案内羽根45に導かれて旋回流Fがより発生しやすく、吸引効率を高めることができる。
また、噴射ノズル部2が移動しつつ液状樹脂Rの噴射がなされ、移動体部1が、噴射ノズル部2の移動中には停止し、噴射ノズル部2が停止した後に、既に樹脂を散布した範囲とは逆方向へと移動するものであり、制御部3にあらかじめ入力された制御パターンによりこれらの動作が繰り返して自動制御されることにより、一方向への施工区間と逆方向への施工区間とをずらせつつ施工範囲をカバーしていく際において、各施工区間の端部において液状樹脂Rの散布量が多くなることがなく、均一な施工が可能であり、広い範囲を高い精度で施工可能である。
以下、本願発明を実施の形態の一例をとりあげつつ説明する。図1は本実施例に係る樹脂散布装置の側面図であり、図2は同平面図である。図4は本実施例に係る飛散防止カバーを示す。図7は施工方法を示す。
なお、本願における説明上の方向は、図1上の左方を「前方」とし、同右方を「後方」とする。また、図2上の左方を「左方」とし、同右方を「右方」とする。
なお、本願発明において樹脂を散布する対象である構造物Cの表面C1は、本実施例では水平面を前提としているが、傾斜面であっても良いし、樹脂散布装置の移動体部1を重力に抗しつつ構造物Cの表面C1との位置関係を保つことができるものであれば、垂直面やそれに近い急な傾斜面であっても良い。また、構造物Cの表面C1は平坦面であっても良いし、粗面であっても良い。
本実施例に係る樹脂散布装置は、移動体部1、噴射ノズル部2、制御部3、ミスト吸引部4を備えている。
移動体部1は本体フレーム12に駆動輪11を備えたものであり、構造物Cの表面C1上を少なくとも一方向に移動可能とされている。本実施例の駆動輪11は、図2に示す電動機13の動力が減速機14及び駆動軸15を介して伝達されることにより駆動されるもので、平行に設けられた二条の無限軌道輪(キャタピラー)が一組とされたものであり、前進・後進が可能となっている。この無限軌道輪(キャタピラー)は直進性に優れるという利点を有しており望ましいが、駆動輪11をこのような無限軌道輪(キャタピラー)とはせずに、一般的な車輪としても良い。また、本実施例ではゴムキャタピラーが用いられているが、金属製のキャタピラーが用いられたものであっても良く、種々に変更し得る。
また、構造物Cの表面C1が垂直面やそれに近い急な傾斜面である場合、例えば構造物Cの表面C1に沿うようにして設けられた、仮設のレールあるいはラックに沿い、移動体部1を重力に抗した状態で移動させることができる車輪や歯車を移動体部1に備えたものとすることで適用が可能である。
移動体部1には他にアーム部16及び集塵機5が設けられている。これらの機能については後述する。
移動体部1には、移動体部1の移動方向と直交する方向に延びるようにしてノズル支持レール6が設けられている。本実施例に係るノズル支持レール6は図2に示すように、移動体部1の後端部に左右方向に延びる支持構造体6aに設けられたものである。この支持構造体6aは、3本の横構造材(本実施例では構造用鋼管)が縦断面視にて三角形状に配位され(図1参照)、かつ、上記の各横構造材がトラス材で連結されたトラス構造を有することにより、軽量でありながら高い剛性を有している。そのため、施工範囲の左右方向寸法に応じた寸法で支持構造体6aを形成することが容易であり、これにより大規模施工が可能である。なお、本実施例に係る支持構造体6aの左右方向寸法は4.5mである。
この支持構造体6aは、エレバーターハンドル61を回転させることにより、構造物Cの表面C1からの高さを変更することができるようになっており、これにより、噴射ノズル2を最適な位置とすることができる。
上記のノズル支持レール6には横移動ベース部7が設けられている。この横移動ベース部7は、ノズル支持レール6に沿って回転する車輪71、四節リンク構造を有するリンク部72、噴射ノズル部2を取り付ける部分であるノズル支持部73、駆動用電動機74、ギアボックス75を備えている。リンク部72は電動シリンダーが備えられたことにより上下動可能となっており、構造物Cの表面C1に対して適切な高さに噴射ノズル部2を配置することができる。ギアボックス75の回転軸の先端には駆動用ギア(図示していない)が設けられており、駆動用電動機74の動力は、このギアボックス75を介してこの駆動用ギアに伝達される。駆動用ギアは、ノズル支持レール6に平行に移動体部1に設けられたラックに噛み合うものであって、これにより駆動用電動機74の回転に伴い、横移動ベース部7をノズル支持レール6に沿って左右方向に移動させることができる。
本実施例では、ノズル支持レール6の1組につき1台の横移動ベース部7が設けられているが、2台以上の横移動ベース部7が設けられたものとし、各々の横移動ベース部7毎に施工範囲を分担するものとしても良い。
また、本願発明においてこのノズル支持レール6は必須のものではなく、横移動ベース部7が、移動体部1の移動方向(本実施例では前後方向)に交わる方向(本実施例では左右方向)へと移動可能とされたものであれば良い。一例として、移動体部1にアーム、チェーン、ベルトによって支持されることが考えられるが、その他種々の手段を採用し得る。
噴射ノズル部2は、上記のようにノズル支持レール6を介して、移動体部1の移動方向における端部(本実施例では後端部)に設けられている。具体的には、上記横移動ベース部7のノズル支持部73に、噴射口21が下方を向くようにして取り付けられている。この噴射ノズル部2は噴射口21から液状樹脂Rを噴射できるものであって、ノズル支持レール6に沿って上記横移動ベース部7が移動することにより、構造物Cの表面C1に平行であり、かつ、上記移動体部1の移動方向に交わる方向へと移動可能とされている。つまり、噴射ノズル部2はこのノズル支持レール6に沿って移動する。
本実施例における噴射ノズル2から噴射される液状樹脂Rの噴射パターンSPは、図3に示すように前後方向に細長いものとされている。図示のように、各噴射パターンSPは、前後方向両端部において先細りの形状となっており、液状樹脂Rの噴射量が少なくなる。よって、施工範囲全体で液状樹脂Rを均等に散布するために、後述のように、液状樹脂Rの噴射パターンSPの前後方向の両端部がオーバーラップするようにして順次施工する。
噴射ノズル部2には樹脂供給ホース8が接続されている。本実施例における樹脂供給ホース8は、樹脂散布装置とは別に施工場所の周辺に配置された高圧ポンプ車P(図示しない)に接続されており、この高圧ポンプ車Pから、圧縮空気及び液状樹脂Rが供給される。液状樹脂Rとして、例えばエポキシ系接着剤のように二液式のものが用いられる際には、二本の樹脂供給ホース8が噴射ノズル部2に接続されて二液が別々に供給される。そして、噴射ノズル部2の内部で圧縮空気と液状樹脂Rとが混合された状態で噴射口21から構造物Cの表面C1に高圧で噴出される。なお、本実施例のように、高圧ポンプ車Pから液状樹脂Rなどを供給するものではなく、移動体部1に樹脂タンク、コンプレッサー、ポンプの一式が搭載されたものであっても良い。
上記噴射ノズル部2には、液状樹脂Rの流路を開閉できる開閉弁22が備えられている。この開閉弁22は、本実施例では後述の制御部3によって制御されており、上記噴射ノズル部2が上記ノズル支持レール6に沿って移動している際にのみ開放される。具体的には、図7(A)に示す、区間W1〜W5の各々である。この開閉弁22は、移動体部1に設けられたコンプレッサー(図示しない)により供給された圧縮空気により操作される。このように開閉弁22が噴射ノズル部2の移動中にのみ開放されることにより、図7に示すように、一方向への施工区間と逆方向への施工区間とを後方にずらせつつ施工範囲をカバーしていく際において、各施工区間の端部において液状樹脂Rの散布量が多くなることがなく、均一な施工が可能である。
本実施例にて用いられる液状樹脂Rの種類は接着剤である。この接着剤は、コンクリート板同士やコンクリート板と鉄板とを接着したり、樹脂シートを構造物Cの表面C1に接着させる機能を有している。本実施例では二液式のエポキシ樹脂系の接着剤が用いられているが、液状であれば、その他種々の組成を有する接着剤を用いることができる。また、接着剤の他に、塗料や、構造物の表面に皮膜を形成するための樹脂など、種々の液状樹脂を用いることができる。
噴射ノズル部2は、種々の形態で実施可能である。例えば、1台の横移動ベース部7に複数の噴射ノズル部2〜2が設けられたものであっても良い。また、一つの噴射ノズル部2に複数の噴射口21が設けられたものであっても良い。複数の噴射ノズル部2〜2が設けられた場合においては、横一列に噴射口が配列されたものであっても良いし、平面視において多角形状に配列されたものであっても良い。また、噴射口21から噴出された液状樹脂Rの噴射パターンについても、本実施例のもの以外に、円形、楕円形、長円形など、種々な形状とすることができる。
また、本願発明に係る装置は樹脂散布装置であるが、液状樹脂Rの散布のみに装置の使用が限定されるものではない。例えば噴射ノズル部2を取り替えることにより、粒状の樹脂などの固体を噴射するものともできるし、構造物Cの表面C1の下地処理などを目的として、高圧水を噴射ノズル部2から噴射するウォータージェット加工にこの装置を活用することも可能である。
本実施例においては、移動体部1に制御部3が設けられている。この制御部3が、移動体部1の無限軌道輪(キャタピラー)11、横移動ベース部7の駆動用電動機74、噴射ノズル部2の開閉弁22を統一的に制御することにより、均一に液状樹脂Rを散布することができ、高い精度の施工が可能である。この制御部3にはマイクロコンピュータ(「プログラム・コントローラー」と称する)が内蔵されており、あらかじめ入力された制御パターンにより、上記各部を自動制御(全自動プログラム運転制御)できる。この制御部3は上記マイクロコンピュータの他に、各部を操作するためのスイッチ、インバータ、リレーなどを備えている。なお、調整・位置合わせの際や本装置の移動時においては、上記制御部3による制御を切って、手動操作を行うこともできる。
上記制御パターンの入力は、制御部3と別体であるパーソナルコンピュータ上で専用のソフトウェアを用いて作成した制御パターンを、上記マイクロコンピュータに転送することにより行われる。具体的な運転制御の内容については後述する。
ミスト吸引部4は、移動体部1に設けられた集塵機5が構造物Cの表面C1上に定着しなかった液状樹脂Rの飛沫(ミスト)を吸い出して回収し、樹脂散布装置の周囲に飛散させないために設けられる。
このミスト吸引部4は飛散防止カバー4aを備えており、この飛散防止カバー4aが噴射ノズル部2の噴射口21と構造物Cの表面C1との間の空間を覆うものである。飛散防止カバー4aの内周面の横断面形状は円形とされている。本実施例における飛散防止カバー4aの形状は、図4に示すように、上方が略円錐形状で下方が円筒形状とされ、内部が中空とされたものである。形状はこれに限られず、円筒形状(図5参照)、円錐形状、半球形状、釣鐘形状など、種々の形状で実施することができる。
飛散防止カバー4aの上部には取付ベース41が設けられており、この取付ベース41は横移動ベース部7のノズル支持部73に固定されている。そして、飛散防止カバー4aの上部に噴射ノズル部2が貫通しており、噴射ノズル部2の噴射口21が飛散防止カバー4a内に設けられている。
また、本実施例における飛散防止カバー4aの下端部には、ゴム板からなるスカート部46が設けられており、構造物Cの表面C1との間に生じる隙間ができるだけ小さくなるようにされている。本実施例のスカート部46の下端部分は、図示のように周方向に細かく分割されており、施工時に構造物Cの表面C1をこすった場合であっても抵抗が小さくなるようになされている。
飛散防止カバー4aの内面には、図4(A)に示すように吸引口42aが開口されている。この吸引口42aが、図1に示すように移動体部1に設けられた集塵機5に接続された排気路Eの端部とされている。本実施例では、飛散防止カバー4aと一体に吸引管42が4箇所設けられており、これら4箇所の吸引管42の各々に4本のダクトホース47が取り付けられている。そして、図2に示すように、本体フレーム12に対して移動可能とされたアーム部16の先端に集合チャンバー48が設けられており、上記4本のダクトホース47がこの集合チャンバー48にてまとめられ、この集合チャンバー48と集塵機5とが1本の連結ホース49により結ばれている。本実施例における上記の排気路Eとは、飛散防止カバー4aから、ダクトホース47、集合チャンバー48、連結ホース49の各々を経て集塵機5に至る空気流路である。
上記のアーム部16は、本体フレーム12に対して回動可能とされた基端側アーム16aと、上記基端側アーム16aに対して回動可能とされた先端側アーム16bとを備えたものであり、各アーム16a,16bの回動可能な範囲内において上記集合チャンバー48を移動させることができ、排気路Eを横移動ベース部7の左右方向への動作に追随させることができる。これにより施工範囲内のどの位置に飛散防止カバー4aが存在していても、後述する液状樹脂Rの飛沫の回収を確実になすことができる。
吸引口42aは、飛散防止カバー4aの内部空間を浮遊する、構造物Cの表面C1上に定着しなかった液状樹脂Rの飛沫を吸い出し、飛散防止カバー4aの内部を施工中において負圧に保つためのものであって、この飛沫は集塵機5で回収される。これにより、施工中においても樹脂散布装置から、構造物Cの表面C1上に定着しなかった液状樹脂Rの飛沫が飛散してしまうことがほとんどない。飛散防止カバー4aにて吸引口42aが設けられる位置は特に問わないが、下記のように旋回流Fを発生させることができるような位置関係に設けることが望ましい。
本実施例における吸引管42は、図4に示すように、飛散防止カバー4aのうち上方である円錐形状部分の下端部分に沿うようにして、斜め上方約40°の角度で突出して設けられている。この吸引管42のうち、少なくとも根元部分(飛散防止カバー4aとの接続部分)における突出方向は、図6(A)に示すように、吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記側面部43aの内周面と同心である仮想面Xの水平方向の接線と一致するものとされている。
なお、図6(B)(C)は、他の実施例として飛散防止カバー4aを円筒状とした場合を示しており、そのうち図6(B)は、吸引管42が円筒状体の側面部43aに設けられた場合を示し、図6(C)は、図5に示すように吸引管42が円筒状体の上端面43bに設けられた場合を示している。いずれの場合においても、本実施例と同様、吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記側面部43aの内周面と同心である仮想面Xの水平方向の接線と一致するものとされている。
上記のように吸引管42が構成されたことにより、図4に示すように、飛散防止カバー4aの内部に、側面部43aの内周面に沿うようにして旋回流Fを発生させることができ、効果的に飛散防止カバー4aの内部空間に存在する飛沫を吸い出すことができる。
ここで本願発明は、本実施例のように軸線Aの水平方向成分が上記側面部43aの内周面と同心である仮想面Xの水平方向の接線と一致するものに限らず、この軸線Aの水平方向成分が、吸引口42aにおける、上記側面部43aの径方向Dを基準とした角度θが、径外側を起点として80°〜95°の範囲にあれば、上記と同様に旋回流Fを発生させることができるため許容される(図4(B)参照)。なお、このことを上記仮想面Xの水平方向の接線を基準として言い換えると、吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が、上記側面部43aの内周面と同心である仮想面Xの水平方向の接線に対して、上記側面部43aの径内方向寄りに5°、同径外寄りに10°の振れまでは許容されることとなる。
なお、吸引管42は、本実施例では飛散防止カバー4aの外部にのみ突出するものであるが、逆に飛散防止カバー4aの内部にのみ突出して設けても良く、また、飛散防止カバー4aの内部と外部とを貫通するものとしても良い。
上記のように吸引管42を設けただけでも飛散防止カバー4a内に旋回流Fを発生させることが可能であるが、本実施例の飛散防止カバー4aでは、図4に示すように、外筒部43と、この外筒部43の内部に設けられた内筒部44とを有した二重構造とされており、吸引口42aが、外筒部43と内筒部44との間に設けられたものであって、外筒部43と内筒部44との間であり、吸引口42aの下方に、案内羽根45が設けられたものとされている。
この案内羽根45は、吸引管42の吸引口42aにおける軸線Aと平行に設けられている。このようにして案内羽根45が設けられたことにより、飛散防止カバー4a内の空気がこの案内羽根45に導かれるため、旋回流Fがより発生しやすく、吸引効率を高めることができる。
なお、場合によっては、この吸引管42の根元部分の飛散防止カバー4aに対する突出方向について、吸引口42aにおける軸線Aの水平方向成分が上記の条件を満たさないものであり、専ら上記案内羽根45により旋回流Fを発生させるものであっても良い。
本実施例では図4(B)に示すように、この吸引管42が、飛散防止カバー4aの中心軸(垂直方向の仮想軸)を挟んで、軸対称に4箇所設けられている。つまり、周方向に90°毎に吸引管42が設けられている。このように吸引管42を複数設けることにより、上記の旋回流Fをより効果的に発生させることができ、飛沫の吸い出しをより効率的に行うことができる。なお、この吸引管42は飛散防止カバー4aの一つ当たりに、2箇所(図5参照)や5箇所以上に設けても良い。
次に、図7とともに、本実施例に係る樹脂散布装置を用いた施工方法について説明する。本装置は手動制御することも可能ではあるが、通常は制御部3にあらかじめ入力された制御パターンにより、動作が自動制御(全自動プログラム運転制御)される。
まず、施工開始前に各部の調整を行う。本装置を手動にて施工開始位置に設置する。そして、ノズル支持レール6が構造物Cの表面C1と平行になるように、エレベーターハンドル61を回転させて左右の高さを調節する。次に、リンク部72を上下動させて噴射ノズル部2及び飛散防止カバー4aの高さを調節する。そして、ノズル支持レール6上での噴射ノズル部2の左右方向の移動範囲、つまり、液状樹脂Rの噴射がなされる区間の始点及び終点を設定する。この設定は、制御部3上にて、あるいはノズル支持レール6に取り付けられたクランプなどの位置を調整することによって行われる。
上記のように各部を調整した後、図7(A)に示すように装置の自動運転が開始される。制御部3に設けられた自動運転始動ボタンを操作担当者が押すことにより、上記噴射ノズル部2が、上記のようにあらかじめ設定された左右方向の移動範囲における一端から移動を開始し、一定速度で移動して同他端で停止する(図7における区間W1、W3、W5(W5は移動途中を図示)、なお、図中の実線は噴射ノズル2の軌跡を示す)。開閉弁22は上記のように噴射ノズル部2が移動する際にのみ開放され、噴射ノズル2が停止すると閉鎖される。開閉弁22が開放されている間は、噴射口21から構造物Cの表面C1に向けて液状樹脂Rの噴射がなされる。なお、噴射ノズル部2の移動速度は、目的の塗布量に応じ、制御部3において任意に調整しておくことができる。
移動体部1は、上記のように噴射ノズル部2が移動する際においては停止している。そして、この移動体部1が、噴射ノズル部2が上記他端で停止した後に前進する(図7における区間B1、B3、なお、図中の破線は噴射ノズル2の軌跡を示す)。つまり、移動体部1が、既に樹脂を散布した範囲とは逆方向に移動する。この際、図3に示したように、既に樹脂を散布した範囲における、噴射ノズル2の噴射パターンSP1と、下記のように次に樹脂を散布する範囲における、同噴射パターンSP2とが、わずかにオーバーラップするようにして移動体部1が前進し、施工範囲において均一に液状樹脂Rを散布することができる。なお、この際のオーバーラップ幅OWは、噴射幅SWである、噴射ノズル2の噴射パターンSPに関する、前後方向の両端部における液状樹脂Rの噴射量の減少をカバーし、前後方向において均一な噴射量となる距離とされる。
移動体部1が上記のように前進した後、噴射ノズル2が、上記他端から上記一端まで上記とは逆方向に一定速度で移動し、液状樹脂Rの散布がなされる(図7における区間W2、W4)。そして、移動体部1が再び前進する(図7における区間B2、B4)。
施工範囲の液状樹脂Rの散布が終了するまで、上記パターンの動作が自動的に繰り返し行われる。このようにして、本願発明に係る樹脂散布装置は、広い範囲を高い精度で施工可能である。
なお、本実施例では、移動体部1は、上記のように噴射ノズル部2が移動する際においては停止するように制御がなされているが、これに限らず、移動体部1と噴射ノズル部2が同時に移動し、斜め方向に液状樹脂Rが散布されるように制御されたものであっても良い。
本実施例に係る樹脂散布装置の側面図である。 本実施例に係る樹脂散布装置の平面図である。 本実施例に係る樹脂散布装置における、液状樹脂の噴射パターンを示す概略図である。 本実施例に係る飛散防止カバーを示し、(A)は側面図、(B)は平面図である。 他の実施例に係る飛散防止カバーを示す斜視図である。 本願発明に係る飛散防止カバーの吸引管の位置関係を示す概略図であり、(A)は本実施例に係るもの、(B)(C)は他の実施例に係るものであって、各図上段は側面視、同下段は平面視におけるものである。 本実施例に係る樹脂散布装置を用いた施工方法を示す説明図であり、(A)は平面視におけるもの、(B)は側面視におけるものである。
1 移動体部
11 駆動輪
2 噴射ノズル部
21 噴射口
3 制御部
4 ミスト吸引部
4a 飛散防止カバー
42 吸引管
42a 吸引口
43 外筒部
43a 側面部
44 内筒部
45 案内羽根
5 集塵機
6 ノズル支持レール
6a 支持構造体
7 横移動ベース部
72 リンク部
73 ノズル支持部
A 軸線
C 構造物
C1 構造物の表面
D 側面部の径方向
E 排気路
R 液状樹脂
X 仮想面
θ 軸線の側面部の径方向を基準とした角度

Claims (5)

  1. 構造物(C)の表面(C1)上に液状樹脂(R)を散布するための樹脂散布装置であって、
    移動体部(1)、噴射ノズル部(2)、制御部(3)、ミスト吸引部(4)を備えており、
    移動体部(1)は駆動輪(11)を備え、構造物(C)の表面(C1)上を少なくとも一方向に移動可能とされており、
    噴射ノズル部(2)は、上記移動体部(1)の、移動方向における端部に設けられており、噴射口(21)から液状樹脂(R)を噴射できるものであって、構造物(C)の表面(C1)に平行であり、かつ、上記移動体部(1)の移動方向に交わる方向へと移動可能とされており、
    制御部(3)は、上記移動体部(1)及び噴射ノズル部(2)の移動を制御するものであり、
    ミスト吸引部(4)は飛散防止カバー(4a)を備えており、
    この飛散防止カバー(4a)が、上記噴射ノズル部(2)の噴射口(21)と上記構造物(C)の表面(C1)との間の空間を覆うものであり、
    この飛散防止カバー(4a)には吸引口(42a)が開口されており、この吸引口(42a)が、集塵機(5)に連続する排気路(E)の端部とされたものであり、
    上記飛散防止カバー(4a)が、内周面の横断面形状が円形とされた側面部(43a)を有しており、
    上記飛散防止カバー(4a)と一体に、上記排気路(E)を有する吸引管(42)が設けられており、
    この吸引管(42)が上記吸引口(42a)を有しており、
    この吸引管(42)の上記吸引口(42a)における軸線(A)の水平方向成分が、上記吸引口(42a)における、上記側面部(43a)の径方向(D)を基準とした角度(θ)が、径外側を起点として80°〜95°の範囲にあることを特徴とする樹脂散布装置。
  2. 構造物(C)の表面(C1)上に液状樹脂(R)を散布するための樹脂散布装置であって、
    移動体部(1)、噴射ノズル部(2)、制御部(3)、ミスト吸引部(4)を備えており、
    移動体部(1)は駆動輪(11)を備え、構造物(C)の表面(C1)上を少なくとも一方向に移動可能とされており、
    噴射ノズル部(2)は、上記移動体部(1)の、移動方向における端部に設けられており、噴射口(21)から液状樹脂(R)を噴射できるものであって、構造物(C)の表面(C1)に平行であり、かつ、上記移動体部(1)の移動方向に交わる方向へと移動可能とされており、
    制御部(3)は、上記移動体部(1)及び噴射ノズル部(2)の移動を制御するものであり、
    ミスト吸引部(4)は飛散防止カバー(4a)を備えており、
    この飛散防止カバー(4a)が、上記噴射ノズル部(2)の噴射口(21)と上記構造物(C)の表面(C1)との間の空間を覆うものであり、
    この飛散防止カバー(4a)には吸引口(42a)が開口されており、この吸引口(42a)が、集塵機(5)に連続する排気路(E)の端部とされたものであり、
    上記飛散防止カバー(4a)が、内周面の横断面形状が円形とされた側面部(43a)を有しており、
    上記飛散防止カバー(4a)と一体に、上記排気路(E)を有する吸引管(42)が設けられており、
    この吸引管(42)が上記吸引口(42a)を有しており、
    この吸引管(42)の上記吸引口(42a)における軸線(A)の水平方向成分が、上記側面部(43a)の内周面と同心である仮想面(X)の水平方向の接線と一致することを特徴とする樹脂散布装置。
  3. 上記吸引管(42)が、飛散防止カバー(4a)の中心軸を挟んで、軸対称に二箇所以上設けられたことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂散布装置。
  4. 上記飛散防止カバー(4a)が、外筒部(43)と、この外筒部(43)の内部に設けられた内筒部(44)とを有しており、
    上記吸引口(42a)が、上記外筒部(43)と内筒部(44)との間に設けられたものであって、
    上記外筒部(43)と内筒部(44)との間であり、上記吸引口(42a)の下方に、案内羽根(45)が設けられており、
    この案内羽根(45)が、上記吸引管(42)の上記吸引口(42a)における軸線(A)と平行に設けられたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂散布装置。
  5. 上記請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂散布装置を用いた、樹脂散布装置の制御方法であって、
    上記噴射ノズル部(2)が、移動範囲における一端から移動を開始して同他端で停止し、
    上記噴射ノズル部(2)の移動の際にのみ液状樹脂(R)の噴射がなされ、
    上記移動体部(1)が、噴射ノズル部(2)の移動中には停止し、噴射ノズル部(2)が上記他端で停止した後には、既に樹脂を散布した範囲とは逆方向へと移動するものであり、
    上記制御部(3)にあらかじめ入力された制御パターンにより、上記の動作が繰り返して自動制御されることを特徴とする樹脂散布装置の制御方法。
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