JP5424729B2 - アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法 - Google Patents

アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法に関する。
低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法又はインモールド成形法がある。
インサート成形法は、印刷等により加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の加飾フィルム又はシートを、予め真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要な部分を除去した後、射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより、加飾フィルム又はシートと基材とを一体化させた成形品を得る方法である。
一方、インモールド成形法は、加飾フィルム又はシートを射出成形金型内に設置し、金型内にて真空成形を施した後、同じ金型内において基材となる樹脂を射出成形することにより、加飾フィルム又はシートと基材とを一体化させた成形品を得る方法である。
インサート成形又はインモールド成形に用いることができる表面硬度及び耐熱性に優れ、耐成形白化性に優れるアクリル樹脂フィルムとして、例えば、特許文献1には、特定の組成からなるゴム含有重合体と特定の組成からなる熱可塑性重合体とを特定の割合で混合してなるアクリル樹脂フィルムが開示されている。このアクリル樹脂フィルムは、成形品に加飾性を付与するばかりでなく、クリア塗装の代替材料としての機能を有すると共に、従来のアクリル樹脂フィルムに比べ、下記(1)〜(3)のような成形白化による意匠性の低下を招く可能性が低いため工業的利用価値の高いものである。
(1)インサート成形では、真空成形後にアクリル樹脂フィルム又はアクリル樹脂フィルムを積層した積層シートを取り除くための、またインモールド成形では、基材樹脂からはみ出したアクリル樹脂フィルムを取り除くための打ち抜き加工を行うと成形品の端部で白化が生じる。
(2)アンダーカットデザインの成形品を金型から取り外す際に白化が生じる。
(3)文字等の凸又は凹のデザインを有する成形品を得るために凹み又は凸のある金型を使用した際、真空又は圧空成形後も金型の凹み又は凸部分にはアクリル樹脂フィルムが金型に追従せず、更に基材樹脂をアクリル樹脂フィルムのガラス転移温度(以下、「Tg」という)以下の温度で射出成形しなければならないため、樹脂圧によりフィルムが延伸されると白化が生じ易く、場合によっては割れが生じる。
上記のように、特許文献1のアクリル樹脂フィルムは耐成形白化性に優れているものの、インサート成形等を施す際、真空成形後にアクリル樹脂フィルム又はこれを含む積層シートの不要部分を取り除くための打ち抜き加工(トリミング加工)工程において、アクリル樹脂フィルムに割れやクラックが発生する場合があり、成形時のトリミング加工性に改善の余地が有った。
トリミング加工性に優れたアクリル樹脂フィルムとして、例えば、特許文献2には、特定のゴム含有重合体を含有し、特定のゴム含有率及び特定のゲル含有率からなるアクリル樹脂フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献2のアクリル樹脂フィルムを用いた場合、成形を施す際のトリミング加工性に優れているものの、その前後の工程で加熱成形を施す際に、フィルム表面に荒れたような模様の発現が見られる場合があり、この加熱成形時における表面荒れ模様欠陥(表面柚子肌模様欠陥)の発現抑制に関して改善の余地が有った。
また、特許文献3には、良好な柔軟性を有し、且つ、着色処理を施す際に白色化することのないアクリル樹脂フィルムとして、アクリル系ゴム粒子及びアクリル系樹脂を含有する層と、耐衝撃材料を含まないアクリル系樹脂の層とからなるアクリル系樹脂積層体が開示されている。更に、特許文献4には、柔軟性を維持しつつ、成形時の折り曲げ加工や引張り加工においても白化が生じにくいアクリル樹脂フィルムとして、ゴム粒子を含有し、曲げ弾性率が1,500MPa以下であるアクリル系樹脂からなる軟質層と、曲げ弾性率が1,600MPa以上であるアクリル樹脂からなる硬質層とを含むアクリル系樹脂積層フィルムが開示されている。また、特許文献5には、貼合性、表面硬度及び製膜性に優れたアクリル樹脂フィルムとして、メタクリル樹脂を50質量%以上含有するアクリル樹脂からなる層と、ビカット軟化温度がそれより少なくとも5℃低いアクリル樹脂からなる層とを含むアクリル系樹脂積層フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献3〜5には、印刷等の絵柄層を施したアクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時のトリミング加工に関する記述はなく、また、印刷等の絵柄層を施したアクリル樹脂製加飾フィルムの成形時の加熱による表面荒れ模様欠陥の発現に関する記述はない。
特許文献1:特開2005−163,003号公報
特許文献2:特開2008−106,252号公報
特許文献3:特開2001−260,288号公報
特許文献4:特開2002−292,808号公報
特許文献5:特開2006−110,744号公報
本発明の課題とするところは、インサート成形又はインモールド成形法において、表面硬度、耐熱性、透明性、耐成形白化性、成形時のトリミング加工性に優れ、加熱成形を施しても表面荒れ模様欠陥の発現抑制に優れるアクリル樹脂製加飾フィルム、このアクリル樹脂製加飾フィルムを使用した成形用シート、アクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートを使用した積層成形品及びその積層成形品の製造方法を提供することである。
本発明の要旨とするところは、熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)が90℃以上である熱可塑性樹脂層(A−a)並びにアクリルゴム含有重合体(A−b−1)又はアクリルゴム含有重合体(A−b−1)及び熱可塑性重合体(A−b−2)を含有するアクリル樹脂組成物(X)を構成成分とし、熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)が90℃未満であるアクリル樹脂層(A−b)を有するアクリル樹脂系積層フィルム(A)の熱可塑性樹脂層(A−a)側に絵柄層(B)が積層され、アクリル樹脂層(A−b)が最外層に位置しているアクリル樹脂製加飾フィルムを第1の発明とする。
また、本発明の要旨とするところは、上記のアクリル樹脂製加飾フィルムを、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)の面を介して基材シート(C)に積層して得られる成形用シートを第2の発明とする。
更に、本発明の要旨とするところは、前記のアクリル樹脂製加飾フィルム又は上記の成形用シートを、前記のアクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)の面を介して、又は上記の成形用シートの基材シート(C)の面を介して成形品(D)に積層して得られる積層成形品を第3の発明とする。
また、本発明の要旨とするところは、前記のアクリル樹脂製加飾フィルム又は前記の成形用シートをアクリル樹脂系積層フィルム(A)側がキャビティ側となるように射出成形金型内で真空成形又は圧空成形し、次いで射出成形金型内に成形品(D)を構成する樹脂を射出成形してアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートと成形品(D)を一体化する積層成形品の製造方法を第4の発明とする。
本発明のアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートは、インサート成形又はインモールド成形法において、表面硬度、耐熱性、透明性、耐成形白化性、成形時のトリミング加工性に優れ、加熱成形を施しても表面荒れ模様欠陥の発現抑制に優れ、また簡易に製造できることから、本発明の積層成形品は自動車内装用部材、自動車外装用部材等の車両用部材、建築用内装材、建築用外装材等の建材、各種表面化粧材、光学部材等の多くの用途に使用することができる。

熱可塑性樹脂層(A−a)

本発明で使用される熱可塑性樹脂層(A−a)は、後述するアクリル樹脂層(A−b)と積層してアクリル樹脂系積層フィルム(A)を形成するための構成成分である。
熱可塑性樹脂層(A−a)は、熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)(以下、「HDT」という)が90℃以上である。
熱可塑性樹脂層(A−a)のHDTが90℃以上、好ましくは93℃以上で、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムは加熱成形を施しても表面荒れ模様欠陥の発現抑制に優れる。
また、熱可塑性樹脂層(A−a)の表面には後述する絵柄層(B)が積層されている。
熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する熱可塑性樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂;並びにこれらから選ばれる2種以上の共重合体、それらの混合物、複合体及び積層体が挙げられる。
これらの中で、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する熱可塑性樹脂成分としては、アクリル樹脂層(A−b)との熱融着性の点で、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂が好ましい。
また、後述する本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムの透明性(美麗さ)の点で、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する熱可塑性樹脂成分としてはアクリル樹脂が好ましい。
更に、熱可塑性樹脂層(A−a)としては、アクリルゴム含有重合体(A−a−1)及び熱可塑性重合体(A−a−2)を含有するアクリル樹脂組成物(Y)を構成成分とするアクリル樹脂層(A−a−α)がより好ましい。

アクリルゴム含有重合体(A−a−1)

本発明で使用されるアクリルゴム含有重合体(A−a−1)としては、例えば、特開平8−323,934号公報、特開平11−147,237号公報、特開2002−80,678号公報、特開2002−80,679号公報、特開2005−97,351号公報、特開2005−163,003号公報及び特開2005−139,416号公報に記載のアクリルゴム含有重合体が挙げられる。これらの中で、インサート成形又はインモールド成形を行った場合の耐成形白化性の点で、アクリルゴム含有重合体(A−a−1)としては、特開2005−163,003号公報及び特開2005−139,416号公報に記載のアクリルゴム含有重合体が好ましい。
アクリル樹脂組成物(Y)中のアクリルゴム含有重合体(A−a−1)の配合量としては、熱可塑性樹脂層(A−a)のHDTが90℃以上であれば特に限定されないが、通常、0〜50質量%である。

熱可塑性重合体(A−a−2)

本発明で使用される熱可塑性重合体(A−a−2)としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル(あ1)単位又はメタクリル酸アルキルエステル(あ1)を主成分とする単量体単位を有する重合体が挙げられる。
上記重合体の具体例としては、メタクリル酸アルキルエステル(あ1)単位50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル(い1)単位0〜50質量%及び共重合可能な二重結合を有する他の単量体(う1)単位0〜50質量%を含有する重合体が挙げられる。この重合体の還元粘度としては0.15L/g以下が好ましく、0.1L/g以下がより好ましい。また、この重合体の還元粘度としては、0.01L/g以上が好ましく、0.03L/g以上がより好ましい。更に、この重合体のFOXの式から求められるTgとしては80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
メタクリル酸アルキルエステル(あ1)単位の構成原料であるメタクリル酸アルキルエステル(あ1)としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するものが挙げられる。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル及びメタクリル酸n−ブチルが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、メタクリル酸メチルが好ましい。
アクリル酸アルキルエステル(い1)単位の構成原料であるアクリル酸アルキルエステル(い1)としては、アルキル基が直鎖状、分岐鎖状のもののいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、アクリル酸メチルが好ましい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(う1)単位の構成原料である共重合可能な二重結合を有する他の単量体(う1)としては、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;及びN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
メタクリル酸アルキルエステル(あ1)の含有量としては、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度、耐熱性の点及び加熱成形を施した際の印刷模様に同調した表面荒れ模様欠陥の発現抑制の点で、熱可塑性重合体(A−a−2)の構成原料となる単量体中に50〜100質量%が好ましく、80質量%以上がより好ましく、99.9質量%以下がより好ましい。
アクリル酸アルキルエステル(い1)の含有量としては、後述するアクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜性及び本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形に必要な靭性、加熱成形を施した際の印刷模様に同調した表面荒れ模様欠陥の発現抑制の点で、熱可塑性重合体(A−a−2)の構成原料となる単量体中に0〜50質量%が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、20質量%以下がより好ましい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(う1)の含有量としては、熱可塑性重合体(A−a−2)の構成原料となる単量体中に0〜50質量%が好ましい。
熱可塑性重合体(A−a−2)の製造方法としては特に限定されず、通常の懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等が挙げられる。

アクリル樹脂組成物(Y)

本発明で使用されるアクリル樹脂組成物(Y)はアクリルゴム含有重合体(A−a−1)及び熱可塑性重合体(A−a−2)を含有するが、必要に応じて一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤及び紫外線吸収剤を含むことができる。

アクリル樹脂層(A−a−α)

本発明で使用されるアクリル樹脂層(A−a−α)は、上述のアクリル樹脂組成物(Y)を構成成分とするものである。
本発明においては、熱可塑性樹脂層(A−a)中に、必要に応じて一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤及び紫外線吸収剤等を含むことができる。
本発明においては、後述する基材(C)の保護の点から、熱可塑性樹脂層(A−a)に耐候性を付与するために紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
紫外線吸収剤としては公知のものが挙げられるが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234(商品名)及び(株)ADEKA製アデカスタブLA−31(商品名)が挙げられる。また、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン1577(商品名)及び(株)ADEKA製アデカスタブLA−46(商品名)が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量としては、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。また紫外線吸収剤の添加量としては、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜時の工程汚れ、耐薬品性、透明性の点で、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
また、本発明においては光安定剤が添加されていることが好ましい。
光安定剤としては公知のものが挙げられるが、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐光性及び耐薬品性の点で、ラジカル捕捉剤であるヒンダードアミン系光安定剤等が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、サノールLS−770等(以上、商品名)が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の添加量としては、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の添加量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐光性及び耐薬品性の点で、0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上が特に好ましい。また、ヒンダードアミン系光安定剤の添加量としては、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜時の工程汚れの点で、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下が特に好ましい。
これら配合剤の添加方法としては、例えば、アクリル樹脂系積層フィルム(A)を成形するための押出機に、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する成分と共に配合剤を供給する方法及び熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する成分に予め配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法が挙げられる。後者の方法に使用する混練機としては、例えば、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー及びロール混練機が挙げられる。

アクリルゴム含有重合体(A−b−1)

本発明で使用されるアクリルゴム含有重合体(A−b−1)は後述するアクリル樹脂層(A−b)の構成成分であるアクリル樹脂組成物(X)を形成するためのものである。
アクリルゴム含有重合体(A−b−1)としてはアクリルゴム含有重合体(A−a−1)と同様の重合体を挙げることができるが、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度、耐熱性、透明性、インサート成形又はインモールド成形を施した際の耐成形白化性及びトリミング加工性の点で、以下に示すゴム含有重合体(A−b−1−1)及びゴム含有重合体(A−b−1−2)を含有するものが好ましい。
本発明においては、アクリルゴム含有重合体(A−b−1)としてゴム含有重合体(A−b−1−1)及びゴム含有重合体(A−b−1−2)を含有するものを使用する場合、アクリル樹脂製加飾フィルム(A)の耐成形白化性、耐熱性及び表面硬度の点で、ゴム含有重合体(A−b−1−1)とゴム含有重合体(A−b−1−2)の質量比(ゴム含有重合体(A−b−1−1)/ゴム含有重合体(A−b−1−2))は10/90〜90/10が好ましく、30/70〜90/10がより好ましい。

ゴム含有重合体(A−b−1−1)

ゴム含有重合体(A−b−1−1)は、下記の単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)を用いて、まず単量体混合物(1−A)を重合し、次いで単量体混合物(1−A)の重合物の存在下で単量体混合物(1−B)を重合し、更に単量体混合物(1−B)の重合物の存在下で単量体混合物(1−C)を重合して得られた多段重合によるゴム含有重合体である。
<単量体混合物(1−A)>
(1−A1)アクリル酸アルキルエステル 50〜99.9質量%
(1−A2)メタクリル酸アルキルエステル 0〜49.9質量%
(1−A3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%
(1−A4)多官能性単量体 0〜10質量%
(1−A5)グラフト交叉剤 0.1〜10質量%
尚、成分(1−A1)〜(1−A3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは25℃未満である。
<単量体混合物(1−B)>
(1−B1)アクリル酸アルキルエステル 9.9〜90質量%
(1−B2)メタクリル酸アルキルエステル 9.9〜90質量%
(1−B3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%
(1−B4)多官能性単量体 0〜10質量%
(1−B5)グラフト交叉剤 0.1〜10質量%
尚、成分(1−B1)〜(1−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは25℃〜100℃である。
<単量体混合物(1−C)>
(1−C1)メタクリル酸アルキルエステル 80〜100質量%
(1−C2)アクリル酸アルキルエステル 0〜20質量%
(1−C3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%
アクリル酸アルキルエステル(1−A1)、(1−B1)又は(1−C2)としては、熱可塑性重合体(A−a−2)の原料として使用されるアクリル酸アルキルエステル(い1)と同様のものが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
メタクリル酸アルキルエステル(1−A2)、(1−B2)又は(1−C1)としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するものが挙げられる。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル及びメタクリル酸n−ブチルが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、メタクリル酸メチルが好ましい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(1−A3)、(1−B3)又は(1−C3)としては、アクリル酸アルキルエステル(1−A1)、(1−B1)又は(1−C2)及びメタクリル酸アルキルエステル(1−A2)、(1−B2)又は(1−C1)以外の単量体であって、それらと共重合可能な二重結合を1分子内に1個有する単量体が挙げられる。その具体例としては、1〜8の炭素原子のアルコキシ基を有する低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
多官能性単量体(1−A4)又は(1−B4)としては、共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体が挙げられる。その具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
多官能性単量体(1−A4)又は(1−B4)の使用は、例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合に特に有効である。
尚、多官能性単量体(1−A4)又は(1−B4)が存在しなくても、下記のグラフト交叉剤(1−A5)又は(1−B5)が存在する場合、かなり安定なゴム含有重合体(A−b−1−1)を得ることができる傾向にある。
グラフト交叉剤(1−A5)又は(1−B5)としては、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体が挙げられる。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステルが挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステル、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレートが好ましく、メタクリル酸アリルエステルがより好ましい。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。グラフト交叉剤(1−A5)又は(1−B5)は、主としてそのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基又はクロチル基よりはるかに速く反応し化学的に結合する。
単量体混合物(1−A)、(1−B)又は(1−C)中には、上述した各成分(1−A1)〜(1−A5)、(1−B1)〜(1−B5)又は(1−C1)〜(1−C3)に加えて、更に連鎖移動剤を添加することができる。
連鎖移動剤としては公知のものが挙げられる。その具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール及び四塩化炭素が挙げられる。
単量体混合物(1−A)中のアクリル酸アルキルエステル(1−A1)の含有量は50〜99.9質量%である。単量体混合物(1−A)中のアクリル酸アルキルエステル(1−A1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−A)中のアクリル酸アルキルエステル(1−A1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、79.9質量%以下が好ましく、69.9質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−A2)の含有量は0〜49.9質量%である。単量体混合物(1−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−A2)の含有量としては20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−A2)の含有量としては44.9質量%以下が好ましく、39.9質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−A)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(1−A3)の含有量は0〜20質量%であり、0〜15質量%以下が好ましい。
単量体混合物(1−A)中の多官能性単量体(1−A4)の含有量は0〜10質量%である。単量体混合物(1−A)100質量%中の多官能性単量体(1−A4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−A)100質量%中の多官能性単量体(1−A4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性及び強靭さを付与する点で、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−A)中のグラフト交叉剤(1−A5)の含有量は0.1〜10質量%である。単量体混合物(1−A)中のグラフト交叉剤(1−A5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性が良好で、透明性等の光学的物性を低下させずに成形できる点で、0.5質量%以上が好ましい。また、単量体混合物(1−A)中のグラフト交叉剤(1−A5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性及び強靭さを付与する点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
成分(1−A1)〜(1−A3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の耐衝撃性の点で、25℃未満であり、10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
尚、本発明において、重合体のFOXの式で求められるTgは、ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されている、使用する単量体の夫々についての単独重合体としたときのTgの値を用いてFOXの式から算出される。
単量体混合物(1−A)の使用量としては、単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムに耐成形白化性を付与することができ、製膜性とインサート成形又はインモールド成形に適した靭性とを両立させる点で、15質量部以上が好ましい。また、単量体混合物(1−A)の使用量としては、単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)の合計を100質量部とした場合、車輌用部材等の積層体に適した表面硬度及び耐熱性を兼ね備えたフィルムを得る点で50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。
単量体混合物(1−A)を重合する際、単量体混合物(1−A)を一括で重合することもできるが、2段階以上に分けて重合することが好ましい。2段階以上に分けて重合する場合、各重合段階での単量体混合物の単量体組成比はそれぞれ異なっていることが好ましい。
単量体混合物(1−A)を2段階に分けて重合する場合、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性、耐衝撃性、耐熱性及び表面硬度の点で、1段階目に使用する単量体混合物(1−A−イ)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは、2段階目に使用する単量体混合物(1−A−ロ)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgよりも低いことが好ましい。具体的には、1段階目に使用する単量体混合物(1−A−イ)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性及び耐衝撃性の点で、−30℃未満が好ましく、また2段階目に使用する単量体混合物(1−A−ロ)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、−15℃〜10℃が好ましい。
1段階目に使用する単量体混合物(1−A−イ)の使用量としては、単量体混合物(1−A)中に1〜20質量%が好ましく、2段階目に使用する単量体混合物(1−A−ロ)の使用量としては、単量体混合物(1−A)中に80〜99質量%が好ましい。
単量体混合物(1−B)中のアクリル酸アルキルエステル(1−B1)の含有量は9.9〜90質量%である。単量体混合物(1−B)中のアクリル酸アルキルエステル(1−B1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、19.9質量%以上が好ましく、29.9質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−B)中のアクリル酸アルキルエステル(1−B1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−B2)の含有量は9.9〜90質量%である。単量体混合物(1−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−B2)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、39.9質量%以上が好ましく、49.9質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−B2)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−B)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(1−B3)の含有量は0〜20質量%である。単量体混合物(1−B)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(1−B3)の含有量としては15質量%以下が好ましい。
単量体混合物(1−B)中の多官能性単量体(1−B4)の含有量は0〜10質量%である。単量体混合物(1−B)中の多官能性単量体(1−B4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与する点で、6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−B)中のグラフト交叉剤(1−B5)の含有量は0.1〜10質量%である。単量体混合物(1−B)中のグラフト交叉剤(1−B5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性が良好で、透明性等の光学的物性を低下させずに成形できる点で、0.5質量%以上が好ましい。また、単量体混合物(1−B)中のグラフト交叉剤(1−B5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性及び強靭さを付与する点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
成分(1−B1)〜(1−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは25〜100℃である。成分(1−B1)〜(1−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性を車輌用部材等の用途に適したレベルとする点で、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、成分(1−B1)〜(1−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性及びアクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜性の点で、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。
単量体混合物(1−B)の使用量としては、単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性、表面硬度、耐熱性、製膜性及びインサート成形又はインモールド成形に必要とされる靭性を付与する点で、5〜35質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
単量体混合物(1−B)を重合する際、単量体混合物(1−B)を一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
単量体混合物(1−C)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−C1)の含有量は80〜100質量%である。単量体混合物(1−C)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−C1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−C)中のメタクリル酸アルキルエステル(1−C1)の含有量としては99質量%以下が好ましい。
単量体混合物(1−C)中のアクリル酸アルキルエステル(1−C2)の含有量は0〜20質量%である。単量体混合物(1−C)中のアクリル酸アルキルエステル(1−C2)の含有量としては1質量%以上が好ましい。また、単量体混合物(1−C)中のアクリル酸アルキルエステル(1−C2)の含有量としては10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(1−C)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(1−C3)の含有量は0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましい。
単量体混合物(1−C)に連鎖移動剤を添加する場合、連鎖移動剤の添加量としては、単量体混合物(1−C)100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。また、連鎖移動剤の添加量としては、0.2質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上が特に好ましい。
成分(1−C1)〜(1−C3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性を車輌用部材等の用途に適したレベルとする点で、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。
単量体混合物(1−C)の使用量としては、単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、15質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましい。また、単量体混合物(1−C)の使用量としては、単量体混合物(1−A)、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性を良好にするとともに、インサート成形又はインモールド成形に適した靭性を付与する点で、80質量部以下が好ましい。
単量体混合物(1−C)を重合する際、単量体混合物(1−C)を一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)のゲル含有率としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点からは、ゴム含有重合体(A−b−1−1)のゲル含有率は大きい程有利であるが、アクリル樹脂製加飾フィルムの成形性の点からは、ある量以上のフリーポリマー(非ゲル化ポリマー)の存在が必要であるため、ゴム含有重合体(A−b−1−1)のゲル含有率は80質量%以下が好ましい。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)の質量平均粒子径としては、0.03〜0.3μmが好ましい。ゴム含有重合体(A−b−1−1)の質量平均粒子径としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの機械的特性の点で、0.07μm以上がより好ましく、0.09μm以上が特に好ましい。また、ゴム含有重合体(A−b−1−1)の質量平均粒子径としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性、透明性、インサート成形又はインモールド成形における加熱成形時の透明性保持の点で、0.15μm以下がより好ましく、0.13μm以下が特に好ましい。
尚、本発明において、質量平均粒子径は動的光散乱法により測定した値である。市販の質量平均粒子径の測定器としては、例えば、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)が挙げられる。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)を得るための重合方法としては、まず単量体混合物(1−A)を重合し、次いで単量体混合物(1−A)の重合物の存在下で単量体混合物(1−B)を重合し、更に単量体混合物(1−B)の重合物の存在下に単量体混合物(1−C)を重合することにより得ることができる。この重合法としては、乳化重合による逐次多段重合法が好ましい。また、別の重合方法として、例えば、単量体混合物(1−A)及び(1−B)を乳化重合した後、単量体混合物(1−C)を懸濁重合系で重合する乳化懸濁重合法が挙げられる。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)を乳化重合により製造する場合は、単量体混合物(1−A)を予め水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給して重合し、その後、単量体混合物(1−B)及び単量体混合物(1−C)をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
単量体混合物(1−A)を予め水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、アセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有重合体(A−b−1−1)100gあたり0〜50個であるゴム含有重合体(A−b−1−1)を容易に得ることができる。このようなゴム含有重合体(A−b−1−1)をゴム含有重合体(A−b−1)として使用して得られるアクリル樹脂系積層フィルム(A)は、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有する。その結果、得られるアクリル樹脂系積層フィルム(A)の表面に、特に印刷抜けが発生し易い印圧の低い淡色の木目柄のグラビア印刷又はメタリック調、漆黒調等のベタ刷りのグラビア印刷を施した場合でも、印刷抜けが少なく、高いレベルでの印刷性を有する。
単量体混合物(1−A)を予め水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられるが、これらの中でアニオン系界面活性剤が好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が挙げられる。これらの中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。
上記界面活性剤の市販品としては、例えば、三洋化成工業(株)製のNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA及びフォスファノールRS−660NA並びに花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406及びラテムルP−0407(以上、全て商品名)がある。
単量体混合物(1−A)を予め水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製する方法としては、水中に単量体混合物(1−A)を仕込んだ後に界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体混合物(1−A)を投入する方法及び単量体混合物(1−A)中に界面活性剤を仕込んだ後に水を投入する方法が挙げられる。これらの中で、水中に単量体混合物(1−A)を仕込んだ後に界面活性剤を投入する方法及び水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体混合物(1−A)を投入する方法が好ましい。
上記乳化液を調製するための装置としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置及び膜乳化装置が挙げられる。
上記乳化液は、単量体混合物(1−A)の油中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体混合物(1−A)の油滴が分散したO/W型のいずれでもよいが、水中に単量体混合物(1−A)の油滴が分散したO/W型であって、分散相の油滴の直径が100μm以下であるものが好ましい。
単量体混合物(1−A)、(1−B)及び(1−C)を重合する際に使用する重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤及びこれら開始剤と酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらの中で、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤がより好ましい。
重合開始剤の添加量は重合条件等に応じて適宜決められる。また、重合開始剤の添加方法は、水相若しくは単量体相(油相)又はそれらの双方に添加する方法のいずれでもよい。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)を得るための具体的重合方法としては以下の方法が挙げられる。
まず、反応器に仕込んだ硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩及びロンガリットを含む水溶液を重合温度にまで昇温する。次いで、単量体混合物(1−A)、過酸化物等の重合開始剤、水及び界面活性剤を混合して調製した乳化液を反応器内に供給して重合を実施し、単量体混合物(1−A)の重合物を得る。更に、単量体混合物(1−B)を、過酸化物等の重合開始剤と共に、反応器内に供給して重合を実施し、単量体混合物(1−B)の重合物を得る。次いで、単量体混合物(1−C)を、過酸化物等の重合開始剤等と共に、反応器内に供給して重合を実施し、単量体混合物(1−C)の重合物を得る。
ゴム含有重合体(A−b−1−1)を得るための重合温度としては、重合開始剤の種類又はその量によって異なるが、通常、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、また、120℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。
乳化重合法で得られたゴム含有重合体(A−b−1−1)を含む重合体ラテックスは、濾過装置を用いて処理することが好ましい。この濾過処理は、重合中に発生するスケールをラテックスから除去するため、及び、原料中から又は重合中に外部から混入する夾雑物等を除去するための処理である。
濾過装置としては、例えば、袋状のメッシュフィルターを利用したISPフィルターズ・ピーテーイー・リミテッド社のGAFフィルターシステム、円筒型濾過室内の内側面に円筒型の濾材を配し、濾材内に攪拌翼を配した遠心分離型濾過装置並びに濾材が濾材面に対して水平の円運動及び垂直の振幅運動をする振動型濾過装置が挙げられる。
上記の方法等により得られたゴム含有重合体(A−b−1−1)を含む重合体ラテックスは回収操作を経てゴム含有重合体(A−b−1−1)の粉体とすることができる。
上記回収操作の方法としては、塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられる。
上記回収操作において、最終的に得られたゴム含有重合体(A−b−1−1)中の残存金属含有量としては800ppm以下にすることが好ましい。特に、マグネシウム塩、ナトリウム塩等の、水との親和性の強い金属塩を塩析剤として使用した場合は、残存金属含有量を極力少なくすることにより、アクリル樹脂製加飾フィルムを沸騰水中に浸漬した際の白化現象を抑制することができる。また、カルシウム塩を用いた塩析又は硫酸を用いた酸析凝固が、アクリル樹脂製加飾フィルムを沸騰水中に浸漬した際の白化現象を抑制することができる点で、好ましい。

ゴム含有重合体(A−b−1−2)

ゴム含有重合体(A−b−1−2)は、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物を重合した後、メタクリル酸アルキルエステル(あ2)又はメタクリル酸アルキルエステル(あ2)を主成分とする単量体混合物を重合して得られる多段重合によるゴム含有重合体である。
尚、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは25℃未満である。
ゴム含有重合体(A−b−1−2)の具体例として、以下に示すゴム含有重合体(2a)及びゴム含有重合体(2b)が挙げられる。

ゴム含有重合体(2a)

ゴム含有重合体(2a)に用いられるアクリル酸アルキルエステル(い2)としては、熱可塑性重合体(A−a−2)の原料として使用されるアクリル酸アルキルエステル(い1)と同様のものが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中で、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
アクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物に使用されるアクリル酸アルキルエステル(い2)以外の単量体としては、アクリル酸アルキルエステル(い2)と共重合可能な1個のビニル基を有する単量体(え2)が挙げられる。
アクリル酸アルキルエステル(い2)と共重合可能な1個のビニル基を有する単量体(え2)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン及びアクリロニトリルが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物中のアクリル酸アルキルエステル(い2)の使用量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性等の点で、35〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
本発明においては、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物中に架橋性単量体(お2)を添加することができる。
架橋性単量体(お2)としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ブタンジオール、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート及びアリルシンナメートが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
架橋性単量体(お2)の使用量としては、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。架橋性単量体(お2)の使用量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、0.3質量部以上がより好ましい。また、架橋性単量体(お2)の使用量としては10質量部を超えても物性的には特に問題ないが、使用量の増加に伴う効果の向上は小さい。
アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物の重合に際しては、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物を2段階以上に分けて重合することができる。
本発明においては、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物を重合する前に、アクリル酸アルキルエステル(い2)と共重合可能な1個のビニル基を有する単量体(え2)の一部としてメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体又は単量体混合物を重合することができる。
ゴム含有重合体(2a)に用いられるメタクリル酸アルキルエステル(あ2)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸シクロへキシルが挙げられる。
メタクリル酸アルキルエステル(あ2)を主成分とする単量体混合物に使用されるメタクリル酸アルキルエステル(あ2)以外の単量体としては、メタクリル酸アルキルエステル(あ2)と共重合可能な1個のビニル基を有する単量体(か2)が挙げられる。
メタクリル酸アルキルエステル(あ2)と共重合可能な1個のビニル基を有する単量体(か2)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン及びアクリロニトリルが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
メタクリル酸アルキルエステル(あ2)又はメタクリル酸アルキルエステル(あ2)を主成分とする単量体混合物中のメタクリル酸アルキルエステル(あ2)の使用量としては50〜100質量部が好ましい。
本発明においては、メタクリル酸アルキルエステル(あ2)又はメタクリル酸アルキルエステル(あ2)を主成分とする単量体混合物の重合に際しては、必要に応じて2段階以上に分けて重合することができる。
ゴム含有重合体(2a)の重合におけるメタクリル酸アルキルエステル(あ2)又はメタクリル酸アルキルエステル(あ2)を主成分とする単量体混合物の使用量としては、アクリル樹脂系積層フィルム(A)中でのゴム含有重合体(2a)の凝集による透明性の悪化の防止等の点で、アクリル酸アルキルエステル(い2)又はアクリル酸アルキルエステル(い2)を主成分とする単量体混合物100質量部に対して10〜400質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましい。
ゴム含有重合体(2a)の質量平均粒子径としては0.03〜0.3μmが好ましい。ゴム含有重合体(2a)の質量平均粒子径としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの機械的特性の点で、0.07μm以上がより好ましく、0.09μm以上が特に好ましい。また、ゴム含有重合体(2a)の質量平均粒子径としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性及び透明性の点で0.15μm以下がより好ましく、0.13μm以下が特に好ましい。

ゴム含有重合体(2b)

ゴム含有重合体(2b)は、下記の単量体混合物(2b−A)、単量体混合物(2b−B)及び単量体混合物(2b−C)を用いて、まず単量体混合物(2b−A)を重合し、次いで単量体混合物(2b−A)の重合物の存在下で単量体混合物(2b−B)を重合し、更に単量体混合物(2b−B)の重合物の存在下で単量体混合物(2b−C)を重合して得られた多段重合によるゴム含有重合体である。
ゴム含有重合体(2b)はアクリル樹脂製加飾フィルムに成形時のトリミング加工性及び耐成形白化性をバランスよく付与できる点で好適である。
<単量体混合物(2b−A)>
(2b−A1)アクリル酸アルキルエステル 50〜99.9質量%
(2b−A2)メタクリル酸アルキルエステル 0〜49.9質量%
(2b−A3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%
(2b−A4)多官能性単量体 0〜10質量%
(2b−A5)グラフト交叉剤 0.1〜10質量%
尚、成分(2b−A1)〜(2b−A3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは25℃未満である。
<単量体混合物(2b−B)>
(2b−B1)アクリル酸アルキルエステル 9.9〜90質量%
(2b−B2)メタクリル酸アルキルエステル 9.9〜90質量%
(2b−B3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%
(2b−B4)多官能性単量体 0〜10質量%
(2b−B5)グラフト交叉剤 0.1〜10質量%
尚、成分(2b−B1)〜(2b−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは0℃を超えて25℃未満である。
<単量体混合物(2b−C)>
(2b−C1)メタクリル酸アルキルエステル 80〜100質量%
(2b−C2)アクリル酸アルキルエステル 0〜20質量%
(2b−C3)共重合可能な二重結合を有する他の単量体 0〜20質量%。
上記の各種単量体混合物において、アクリル酸アルキルエステル(2b−A1)、(2b−B1)又は(2b−C2)、メタクリル酸アルキルエステル(2b−A2)、(2b−B2)又は(2b−C1)、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−A3)、(2b−B3)又は(2b−C3)、多官能性単量体(2b−A4)又は(2b−B4)及びグラフト交叉剤(2b−A5)又は(2b−B5)としては、夫々、ゴム含有重合体(A−b−1−1)の単量体混合物(1−A)におけるアクリル酸アルキルエステル(2b−A1)、メタクリル酸アルキルエステル(2b−A2)、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−A3)、多官能性単量体(2b−A4)又はグラフト交叉剤(2b−A5)と同様のものが挙げられる。
単量体混合物(2b−A)、(2b−B)又は(2b−C)中には、上述した各成分(2b−A1)〜(2b−A5)、(2b−B1)〜(2b−B5)又は(2b−C1)〜(2b−C3)に加えて、更に連鎖移動剤を添加することができる。
連鎖移動剤としてはゴム含有重合体(A−b−1−1)を得る際に使用することができる連鎖移動剤と同様のものが挙げられる。
単量体混合物(2b−A)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−A1)の含有量は50〜99.9質量%である。単量体混合物(2b−A)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−A1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの成形時のトリミング加工性の点で、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−A)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−A1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、97.9質量%以下が好ましく、94.9質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−A2)の含有量としては0〜49.9質量%である。単量体混合物(2b−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−A2)の含有量としては2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−A)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−A2)の含有量としては39.9質量%以下が好ましく、19.9質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−A)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−A3)の含有量は0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましい。
単量体混合物(2b−A)中の多官能性単量体(2b−A4)の含有量は0〜10質量%である。単量体混合物(2b−A)中の多官能性単量体(2b−A4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性の点で、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−A)中の多官能性単量体(2b−A4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの柔軟性及び強靭さの点で、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−A)中のグラフト交叉剤(2b−A5)の含有量は0.1〜10質量%である。単量体混合物(2b−A)中のグラフト交叉剤(2b−A5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性と、透明性等の光学的物性を低下させずに成形できる点で、0.5質量%以上が好ましい。また、単量体混合物(2b−A)中のグラフト交叉剤(2b−A5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの柔軟性及び強靭さの点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
成分(2b−A1)〜(2b−A3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの成形時のトリミング加工性の点で25℃未満であり、0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−A)の使用量としては、単量体混合物(2b−A)、単量体混合物(2b−B)及び単量体混合物(2b−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムに良好な耐成形白化性と成形時のトリミング加工性を付与することができ、アクリル樹脂系積層フィルム(A)に製膜性とインサート成形又はインモールド成形に適した靭性とを両立することができる点で、15質量部以上が好ましい。また、単量体混合物(2b−A)の使用量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに良好な耐成形白化性と成形時のトリミング加工性を付与することができ、アクリル樹脂系積層フィルム(A)に製膜性とインサート成形又はインモールド成形に適した靭性とを両立することができる点で、50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−A)を重合する際、単量体混合物(2b−A)を一括で重合することもできるが、2段階以上に分けて重合することもできる。
単量体混合物(2b−A)を2段階に分けて重合する場合、1段階目に使用する単量体混合物(2b−A−イ)の使用量としては、単量体混合物(2b−A)中に1〜20質量%が好ましく、2段階目に使用する単量体混合物(2b−A−ロ)の使用量としては、単量体混合物(2b−A)中に80〜99質量%が好ましい。
単量体混合物(2b−B)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−B1)の含有量は9.9〜90質量%である。単量体混合物(2b−B)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−B1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの成形時のトリミング加工性及び耐成形白化性の点で、19.9質量%以上が好ましく、29.9質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−B)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−B1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−B2)の含有量は9.9〜90質量%である。単量体混合物(2b−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−B2)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、39.9質量%以上が好ましく、49.9質量%以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−B)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−B2)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの成形時のトリミング加工性及び耐成形白化性の点で、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−B)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−B3)の含有量は0〜20質量%である。単量体混合物(2b−B)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−B3)の含有量としては15質量%以下が好ましい。
単量体混合物(2b−B)中の多官能性単量体(2b−B4)の含有量は0〜10質量%である。単量体混合物(2b−B)中の多官能性単量体(2b−B4)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与する点で、6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(2b−B)中のグラフト交叉剤(2b−B5)の含有量は0.1〜10質量%である。単量体混合物(2b−B)中のグラフト交叉剤(2b−B5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性が良好で、透明性等の光学的物性を低下させずに成形できる点で、0.5質量%以上が好ましい。また、単量体混合物(2b−B)中のグラフト交叉剤(2b−B5)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムに十分な柔軟性及び強靭さを付与する点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
成分(2b−B1)〜(2b−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgは0℃を超えて25℃未満である。成分(2b−B1)〜(2b−B3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性を車輌用部材等の用途に適したレベルに保持しつつ、良好なインサート成形時のトリミング加工性を与える点で、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。
単量体混合物(2b−B)の使用量としては、単量体混合物(2b−A)、単量体混合物(2b−B)及び単量体混合物(2b−C)の合計を100質量部とした場合、5〜35質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。このような範囲の単量体混合物(2b−B)の使用量は、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性、表面硬度、耐熱性及びインサート成形時のトリミング加工性の点で好ましい。また、このような範囲の単量体混合物(2b−B)の使用量は、アクリル樹脂系積層フィルム(A)のその他の物性、例えば、製膜性、インサート成形又はインモールド成形に必要とされる靭性を付与する点で好ましい。
単量体混合物(2b−B)を重合する際、単量体混合物(2b−B)を一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
単量体混合物(2b−C)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−C1)の含有量は80〜100質量%である。単量体混合物(2b−C)中のメタクリル酸アルキルエステル(2b−C1)の含有量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、90質量%以上が好ましい。
単量体混合物(2b−C)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−C2)の含有量は0〜20質量%である。単量体混合物(2b−C)中のアクリル酸アルキルエステル(2b−C2)の含有量としては10質量%以下が好ましい。
単量体混合物(2b−C)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−C3)の含有量は0〜20質量%である。単量体混合物(2b−C)中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(2b−C3)の含有量としては15質量%以下が好ましい。
単量体混合物(2b−C)に連鎖移動剤を添加する場合、連鎖移動剤の添加量としては、単量体混合物(2b−C)100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。連鎖移動剤の添加量としては、単量体混合物(2b−C)100質量部に対して0.2質量部以上がより好ましい。
成分(2b−C1)〜(2b−C3)から得られる重合体のFOXの式で求められるTgとしては、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性を車輌用部材等の用途に適したレベルとする点で、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
単量体混合物(2b−C)の使用量としては、単量体混合物(2b−A)、単量体混合物(2b−B)及び単量体混合物(2b−C)の合計を100質量部とした場合、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度及び耐熱性の点で、15質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましい。また、単量体混合物(2b−C)の使用量としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性、インサート成形又はインモールド成形に適した靭性、インサート成形時のトリミング加工性の点で、単量体混合物(2b−A)、単量体混合物(2b−B)及び単量体混合物(2b−C)の合計を100質量部とした場合、80質量部以下が好ましい。
単量体混合物(2b−C)を重合する際、単量体混合物(2b−C)を一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
ゴム含有重合体(2b)のゲル含有率、質量平均粒子径及び製造法に関しては、ゴム含有重合体(A−b−1−1)と同様のものが好ましい。

熱可塑性重合体(A−b−2)

本発明で使用される熱可塑性重合体(A−b−2)は後述するアクリル樹脂層(A−b)の構成成分であるアクリル樹脂組成物(X)を形成するために使用することができるものである。
熱可塑性重合体(A−b−2)としては、前述のアクリル樹脂層(A−a−α)の構成成分であるアクリル樹脂組成物(Y)に含有される熱可塑性重合体(A−a−2)と同様のものが挙げられる。

アクリル樹脂組成物(X)

本発明で使用されるアクリル樹脂組成物(X)はアクリルゴム含有重合体(A−b−1)又はアクリルゴム含有重合体(A−b−1)及び熱可塑性重合体(A−b−2)を含有する。
本発明においては、アクリル樹脂組成物(X)のゴム含有率は、アクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時のトリミング加工性の点で、26質量%以上が好ましい。また、アクリル樹脂組成物(X)のゴム含有率は、アクリル樹脂製加飾フィルムの表面硬度、耐熱性及び加熱成形時における表面荒れ模様欠陥の発現抑制の点で、50質量%未満が好ましく、40質量%未満がより好ましい。
尚、本発明において「ゴム」とは、アクリルゴム含有重合体(A−a−1)又はアクリルゴム含有重合体(A−b−1)において、原料として使用される単量体組成物から得られる重合体のFOXの式で求められるTgが25℃未満の重合体をいう。従って、アクリル樹脂組成物(X)のゴム含有率とは、アクリル樹脂組成物中の、Tgが25℃未満の重合体の占める割合をいう。
本発明においては、アクリル樹脂組成物(X)のゲル含有率は、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜性及びアクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時の耐成形白化性の点で、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、アクリル樹脂組成物(X)のゲル含有率は、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜性並びにアクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時のトリミング加工性及び加熱成形時における表面荒れ模様欠陥の発現抑制の点で、70質量%未満が好ましい。
このゲル含有率が45質量%以上の場合は、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製膜性及びアクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時の耐成形白化性に優れる。50質量%以上がより好ましい。
本発明においては、アクリル樹脂組成物(X)中に配合されるアクリルゴム含有重合体(A−b−1)のゴム含有率及びゲル含有率は特に限定されるものではなく、アクリル樹脂組成物(X)のゴム含有率及びゲル含有率が目的とする含有率となるように、アクリルゴム含有重合体(A−b−1)の重合処方を調整する方法や熱可塑性重合体(A−b−2)の配合量を調整する方法によって調整することができる。

アクリル樹脂層(A−b)

本発明で使用されるアクリル樹脂層(A−b)は上記のアクリル樹脂組成物(X)を構成成分とするものである。また、アクリル樹脂層(A−b)はHDTが90℃未満である。
アクリル樹脂層(A−b)のHDTを90℃未満、好ましくは86℃未満とすることにより、得られるアクリル樹脂製加飾フィルムを、インサート成形又はインモールド成形を行った場合にトリミング加工性に優れたものとすることができる。
また、アクリル樹脂層(A−b)のHDTとしては80℃以上が好ましい。アクリル樹脂層(A−b)のHDTを80℃以上とすることにより、後述する本発明の積層体の1表面を構成するアクリル樹脂層(A−b)が高温下で長時間曝露されてもアクリル樹脂層(A−b)の表面に白化、曇りが見られない。また、アクリル樹脂層(A−b)のHDTを80℃以上とすることにより、本発明の積層体を、車輌用途におけるフロントコントロールパネル等、車内で直射日光を受ける部分にも使用することができ、好ましい。
更に、アクリル樹脂層(A−b)のHDTとしては84℃以上がより好ましい。アクリル樹脂層(A−b)のHDTを84℃以上とすることにより、本発明の積層体の1表面を構成するアクリル樹脂層(A−b)の鉛筆硬度がHBより高い硬度となり、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等の各種車両用部材として好適である。
また、アクリル樹脂層(A−b)のHDTとしては85℃以上が特に好ましい。アクリル樹脂層(A−b)のHDTを85℃以上とすることにより、本発明の積層体の1表面を構成するアクリル樹脂層(A−b)の鉛筆硬度をF以上とすることができ、ガーゼ等表面の粗い布で擦傷しても傷がほとんど目立たない。
本発明においては、アクリル樹脂層(A−b)中に、熱可塑性樹脂層(A−a)の場合と同様に、必要に応じて一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤及び紫外線吸収剤等を含むことができる。また、紫外線吸収剤、光安定剤等の配合剤の種類や配合量及び配合剤の配合方法は熱可塑性樹脂層(A−a)の場合と同様とすることができる。
また、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムにおいては、アクリル樹脂層(A−b)は最外層に位置する。

アクリル樹脂系積層フィルム(A)

本発明で使用されるアクリル樹脂系積層フィルム(A)は熱可塑性樹脂層(A−a)とアクリル樹脂層(A−b)が積層された2層構造の積層フィルムである。
アクリル樹脂系積層フィルム(A)の厚みとしては、特に限定されないが、300μm以下が好ましい。
アクリル樹脂系積層フィルム(A)を塗装代替フィルムとして用いる場合は、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の厚みは50〜300μmが好ましい。この厚みを50μm以上とすることにより、十分な深みを有する成形品外観が得られる傾向にある。また、複雑な形状に成形する場合に延伸処理が施されてもアクリル樹脂系積層フィルム(A)の厚みを十分なものとすることができる。一方、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の厚みが300μm以下であると、アクリル樹脂系積層フィルム(A)は適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する。また、アクリル樹脂系積層フィルム(A)は、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。更には、製膜性が安定してアクリル樹脂系積層フィルム(A)の製造が容易になる。
アクリル樹脂系積層フィルム(A)を構成する熱可塑性樹脂層(A−a)とアクリル樹脂層(A−b)の層の厚みの比率(熱可塑性樹脂層(A−a)の厚み/アクリル樹脂層(A−b)の厚み)は特に限定されないが、1/99〜99/1が好ましい。
また、熱可塑性樹脂層(A−a)とアクリル樹脂層(A−b)の層の厚みの比率としては、アクリル樹脂製加飾フィルムのインサート成形又はインモールド成形時のトリミング加工性の点で、50/50以下がより好ましく、30/70以下が特に好ましく、20/80以下が最も好ましい。
一方、熱可塑性樹脂層(A−a)とアクリル樹脂層(A−b)の層の厚みの比率としては、アクリル樹脂製加飾フィルムの加熱成形時における表面荒れ模様欠陥の発現抑制の点で、5/95以上がより好ましく、10/90以上が特に好ましい。
本発明においては、アクリル樹脂系積層フィルム(A)は、必要に応じて、熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)の2層以外に他の層を形成することができる。他の層の形成場所は、アクリル樹脂層(A−b)が最外層に位置すれば、熱可塑性樹脂層(A−a)の表面及び熱可塑性樹脂層(A−a)とアクリル樹脂層(A−b)の間のいずれの場所でもよい。
本発明で使用されるアクリル樹脂系積層フィルム(A)の製造方法としては、例えば、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出成形法により熱可塑性樹脂層(A−a)、アクリル樹脂層(A−b)及び必要に応じて他の層の積層構造を形成する方法、及び熱可塑性樹脂層(A−a)、アクリル樹脂層(A−b)及び必要に応じて他の層を、夫々Tダイを用いた溶融押出法等によりフィルム状に成形して、各層を形成するフィルムを熱ラミネート法により積層する方法が挙げられる。
また、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製造方法として、熱可塑性樹脂層(A−a)又はアクリル樹脂層(A−b)の一方の樹脂層をフィルム状にし、その後他方の樹脂層を溶融押出し法により積層する、押出ラミネーション法が挙げられる。
これらの製造方法の中で、経済性及び工程簡略化の点で、上記の共押出成形法が好ましい。
本発明において、Tダイ法によりアクリル樹脂系積層フィルム(A)を成形する場合、金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法を採用することにより、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の表面平滑性を向上させ、アクリル樹脂系積層フィルム(A)に印刷処理した際の印刷抜けを抑制することができる。尚、金属ロールとしては、金属製の鏡面タッチロール、特許第2,808,251号公報又はWO97/28,950号公報等に記載の金属スリーブ(金属製薄膜パイプ)と成型用ロールからなるスリーブタッチ方式で使用されるロールを例示することができる。また、非金属ロールとしては、シリコーンゴム製等のタッチロールを例示することができる。更に、金属ベルトとしては、金属製のエンドレスベルトを例示することができる。尚、前記Tダイ法においては、これらの金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトを複数組み合わせて使用することができる。
上記の金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法では、溶融押出後の各樹脂層を形成するための原料を、実質的にバンク(樹脂溜まり)が無い状態で狭持し、実質的に圧延されることなく面転写させて製膜することが好ましい。バンク(樹脂溜まり)を形成することなく製膜した場合は、冷却過程にあるアクリル樹脂系積層フィルム(A)を形成する各樹脂層が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜したアクリル樹脂系積層フィルム(A)の加熱収縮率を低減することができる傾向にある。
また、溶融押出法を採用する場合は、印刷抜けの原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にあるアクリル樹脂系積層フィルム(A)を形成するための各樹脂層用の原料を濾過しながら押出しを実施することが好ましい。

絵柄層(B)

本発明で使用される絵柄層(B)は後述する積層体に意匠性を付与するためのものである。
絵柄層(B)は、印刷法で形成された印刷層及び蒸着法で形成された蒸着層から選ばれた少なくとも1層で形成することができる。

印刷層

印刷層は本発明の積層体の表面に模様、文字等を形成させる。
印刷層における印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層のバインダーとしては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂及び塩素化ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
印刷層の形成には、例えば、着色剤として適切な色の顔料又は染料をバインダーに含有させた着色インキを用いることができる。
顔料としては、例えば、次のものが挙げられる。黄色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料や弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としてはアニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
染料としては公知の染料が挙げられる。
印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法;ロールコート法、スプレーコート法等のコート法;及びフレキソグラフ印刷法が挙げられる。
印刷層の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜30μm程度である。
印刷層における印刷抜けの個数は、アクリル樹脂製加飾フィルムの意匠性、加飾性の点で、10個/m以下が好ましく、5個/m以下がより好ましく、1個/m以下が特に好ましい。印刷抜けの個数を10個/m以下とすることにより、アクリル樹脂製加飾フィルムを用いた積層体の外観がより良好となる。
本発明においては、インサート成形又はインモールド成形によって積層体を得る場合には、所望の表面外観が得られるよう、インサート又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜印刷層の厚さを選択することができる。

蒸着層

蒸着層を形成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、これらの合金又は金属化合物が挙げられる。
蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及びメッキ法が挙げられる。
本発明においては、インサート成形又はインモールド成形によって積層体を得る場合には、所望の表面外観が得られるよう、インサート又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜蒸着層の厚さを選択することができる。

アクリル樹脂製加飾フィルム

本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムはアクリル樹脂系積層フィルム(A)の熱可塑性樹脂層(A−a)側に絵柄層(B)が積層されているものである。
本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムは、熱可塑性樹脂層(A−a)と熱可塑性樹脂層(A−b)が積層されたアクリル樹脂系積層フィルム(A)を使用していることから、耐成形白化性に優れており、折り曲げ試験を行った際の折り目が全く白化しないか、又はごくわずかに白化する程度であり、インサート成形又はインモールド成形の工程で生じる成形白化がほとんど目立たない。また、インサート成形又はインモールド成形後も印刷柄を施したアクリル樹脂製加飾フィルムの印刷柄が消えることなく、意匠性に優れた成形品を得ることが出来る。

基材シート(C)

本発明において、基材シート(C)は後述する本発明の成形用シートを形成するための材料である。
基材シート(C)としては、例えば、熱可塑性樹脂及び硬化型樹脂が挙げられ、目的に応じて選択できる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等;及びこれらから選ばれる2種以上の共重合体、混合物、複合体又は積層体が挙げられる。
基材シート(C)には、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等の配合剤を配合することができる。

成形用シート

本発明の成形用シートは、基材シート(C)の表面に、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルムを絵柄層(B)の面が接触するように積層して得られる積層シートである。
本発明の成形用シートにおいては、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)が基材シート(C)と接するように積層されていることから、加飾層(B)が保護されると共に成形用シートに高級感を付与することができる。
本発明の成形用シートの製造方法としては、例えば、熱ラミネーション法が挙げられる。

成形品(D)

本発明で使用される成形品(D)は、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートを積層して積層成形品を得るために使用されるものである。
成形品(D)を構成する樹脂としては上記の基材シート(C)と同様のものが挙げられる。
成形品(D)には、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等の配合剤を配合することができる。
成形品(D)の製造方法としては特に限定されるものではないが、射出成形法等の各種成形法により得ることができる。

積層成形品

本発明の積層成形品は、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)の面を介して、又は成形用シートの基材シート(C)の面を介して成形品(D)に積層したものである。従って、本発明の積層成形品は、成形品(D)の表面に、絵柄層(B)、熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)が順に積層されたもの、又は、成形品(D)の表面に、基材シート(C)、絵柄層(B)、熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)が順に積層されたものであり、積層成形品の表面にはアクリル樹脂層(A−b)が形成されている。
本発明の積層成形品においては、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)が成形品(D)又は基材シート(C)と接するように積層されていることから、加飾層(B)が保護されると共に積層成形品に高級感を付与することができる。
本発明の積層成形品の製造方法としては、例えば、インサート成形法及びインモールド成形法が挙げられ、生産性の点で、インモールド成形法が好ましい。
インモールド成形法は、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートを加熱した後、真空引き機能を持つ金型内で真空成形を行い、次いで、同じ金型内において成形品(D)を構成する樹脂を射出成形することにより、本発明のアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートと成形品(D)とを一体化させた積層成形品を得る方法である。インモールド成形法は、フィルムの成形と射出成形を一工程で行えるため、作業性及び経済性の点で好ましい。
インモールド成形時の加熱温度としては、アクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートが軟化する温度以上が好ましい。インモールド成形時の加熱温度はアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートの熱的性質又は積層成形品の形状によって適宜設定することができるが、通常、70℃以上である。また、成形後の積層成形品の表面外観や離型性の点で、通常、170℃以下である。更に、エネルギー効率の点で、真空成形時の予備加熱温度は低い方が好ましいことから、インモールド成形時の加熱温度としては、135℃以下が好ましい。また、予備加熱温度を低くしても成形できる場合には、予備加熱温度を低くする代わりに予備加熱時間を短くすることもできる。この場合は、真空成形のハイサイクル化が可能となり、工業的利用価値が高い。
本発明においては、積層成形品を得る際に、アクリル樹脂製加飾フィルムのアクリル樹脂層(A−b)の面が積層成形品の表面となるように製造されることから、インサート成形又はインモールド成形時においてアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートの耐成形白化性及びトリミング加工性を損なうことなく、また加熱成形時におけるアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートの表面荒れ模様欠陥の発現抑制に優れ、且つ、積層成形品の表面の表面硬度や耐熱性に優れるという二律背反する性能を高度に満たすことができるため、工業的利用価値が極めて高い。
本発明においては、積層成形品をインモールド成形やインサート成形によって得る場合には、成形品(D)を構成する樹脂の射出成形後の収縮率をアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートの収縮率に近似させることが、積層成形品の反り又はアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートの剥がれ等の抑制の点で好ましい。
成形品(D)を構成する樹脂の射出成形後の収縮率を調整する方法としては、例えば、成形品(D)を構成する樹脂に充填材やエラストマー成分を配合する方法が挙げられる。
充填材の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ、ガラス繊維及びカーボン繊維が挙げられる。
本発明の積層成形品の用途としては、例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器等の各種フロントパネル;ボタン、エンブレム等の表面化粧材;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の各種部品;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;及び瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料、景品、小物等の雑貨等のその他各種用途が挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。また、実施例中の略号は表1の通りである。
また、本発明において、重合体、フィルム、成形用シート及び積層成形品に関する各種評価は以下の方法により実施した。
(1)質量平均粒子径
乳化重合にて得られた重合体ラテックスの重合体の粒子の質量平均粒子径を、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法で測定した。
(2)Tg
重合体用原料として使用する単量体の組成から、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から得られる重合体のTgを算出した。
(3)還元粘度
重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で熱可塑性重合体の還元粘度を測定した。
(4)ゲル含有率
所定量(抽出前質量)のゴム含有重合体を含有するアクリル樹脂組成物の粉体を押出成形してペレット状物を得た。このペレット状物の全量をアセトン溶媒中、還流下で抽出処理し、得られた処理液を遠心分離により分別し、乾燥後、アセトン不溶分の質量(抽出後質量)を測定した。ゲル含有率は下式にて算出した。
ゲル含有率(%)=(抽出後質量(g)/抽出前質量(g))×100
(5)HDT
アクリル樹脂系積層フィルム(A)の製造に使用される樹脂組成物のペレットを使用し、射出成形にてASTM D648に基づく熱変形温度測定試験片を作製し、約80℃で4時間アニールした。次いで、この試験片を用いて、特別な条件の記載がない限り、0.45MPaの低荷重で、ASTM D648に従って樹脂組成物のHDTを測定した。
(6)熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)の厚さ
アクリル樹脂系積層フィルム(A)を、切片の厚みが70nmとなるように断面方向に切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、J100S)にて観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)の厚さを求めた。
(7)耐成形白化性
厚さ90μmのアクリル樹脂系積層フィルム(A)を用いて作成したアクリル樹脂製加飾フィルムを、20℃の雰囲気下で、比較的速い速度で、180度折り曲げたときの白化状態を肉眼評価し、下記基準によりアクリル樹脂製加飾フィルムの耐成形白化性を評価した。
○:白化は認められない。
△:ごく僅かに白化が認められる。
×:白化が認められる。
(8)成形用シートの表面状態
アクリル樹脂製加飾フィルムと、基材シート(C)として、接着層(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)を有する厚さ1mmのABSシートを、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)と接着層とが接するように熱ラミネーションによって積層し、成形用シートを得た。
得られた成形用シートを、アクリル樹脂系積層フィルム(A)側がキャビティ側になるように、真空引き機能を持つ金型内に配置し、成形用シートが190℃に達するまでヒーターで加熱した後、真空成形し、成形用シートの予備成形品を得た。得られた予備成形品の表面荒れ模様欠陥の発現状態を肉眼評価し、下記基準により成形用シートの表面状態を評価した。
○:表面荒れ模様欠陥は見られず、表面状態は良好。
×:表面荒れ模様欠陥が見られ、表面状態は不良。
(9)成形用シートのトリミング加工性
上記(8)において成形用シートを真空成形して得られた成形用シートの予備成形品の端部に残る不要なアクリル樹脂製加飾フィルムの部分(積層成形品において、成形品と接着しない部分)を、アクリル樹脂系積層フィルム(A)側からトムソン打ち抜き型を用いてトリミングした後の、予備成形品の端部の状態を肉眼観察し、下記基準により成形用シートのトリミング加工性を評価した。
○:割れ、クラック共に認められなかった。
△:割れ、クラックが50成形品中、1個認められた。
×:割れ、クラックが50成形品中、2個以上認められた。
(10)インサート成形性
上記(9)で不要部をトリミングした後の成形用シートの予備成形品を、キャビティー側の金型の底、且つ、中央のゲートから横方向に3cmの位置に、面積1cm及び深さ1mmの正方形の凹みがある金型の底に、アクリル樹脂系積層フィルム(A)側がキャビティー側になるように配置した。
次いで、成形用シートのABSシート側に成形品を構成するABS樹脂(UMG・ABS(株)製、ダイヤペットABSバルクサムTM25(商品名))を射出成形し、インサート成形により積層成形品を得た。
積層成形品の形状は縦150mm、横120mm、厚さ2mm及び深さ10mmの箱型とした。また、使用した金型は、ゲート位置が金型の中央に1箇所及び中央ゲートの上下(積層成形品における縦方向)40mmの位置に各1箇所の計3箇所にゲートを有し、ゲート形状が直径1mmのピンポイントゲートであるものを使用した。更に、金型のキャビティー側の底面と側面を結ぶ角のコーナーRは約3である。つまり、アクリル樹脂製加飾フィルムがラミネートされる側の、成形品のエッジ部のコーナーRは約3である。尚、コーナーRは、フジツール(株)製、RADIUS GAGE(商品名)で測定した。
射出成形は、(株)日本製鋼所製、J85EL11型射出成形機(商品名)を用い、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%及び金型温度60℃の条件で行った。
得られた積層成形品に形成された面積1cm及び高さ1mmの凸部分又は積層成形品エッジ部のコーナー付近の状態を肉眼観察し、下記基準により積層成形品のインサート成形性を評価した。
○:白化は認められなかった。
△:若干の白化が認められた。
×:強い白化が認められた。
(11)鉛筆硬度
J1S K5600に従ってアクリル樹脂製加飾フィルム及び積層成形品の表面の鉛筆硬度を測定した。
[製造例1]ゴム含有重合体(A−b−1−1)(1)の製造
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、下記の単量体混合物(1−A)(1)の第1段目の重合用の単量体混合物(1−A−イ)(1)を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、乳化剤(1)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。この後、イオン交換水5部にSFS0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、前記で調製した乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体混合物(1−A)(1)の第1段目の重合を完結させた。続いて、下記の単量体混合物(1−A)(1)の第2段目の重合用の単量体混合物(1−A−ロ)(1)を90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(1−A)(1)の第2段目の重合を完結させ、重合体を得た。第1段目の重合で得られた重合体のFOXの式から求めたTgは−48℃であり、第2段目の重合の重合で得られた重合体のFOXの式から求めたTgは−10℃であった。
続いて、下記の単量体混合物(1−B)(1)を45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(1−B)(1)の重合を完結させた。単量体混合物(1−B)(1)の重合で得られる重合体のFOXの式から求めたTgは60℃であった。
この後、下記の単量体混合物(1−C)(1)を140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム含有重合体(A−b−1−1)(1)の重合体ラテックスを得た。単量体混合物(1−C)の重合で得られる重合体のFOXの式から求めたTgは99℃であった。
得られた重合体ラテックス中のゴム含有重合体(A−b−1−1)(1)の粒子の質量平均粒子径は0.11μmであった。
得られたゴム含有重合体(A−b−1−1)(1)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して固形分を回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(A−b−1−1(1))を得た。ゴム含有重合体(A−b−1−1)(1)のゲル含有率は70%で、ゴム含有率は30%であった。
粉体状のゴム含有重合体(A−b−1−1)214.3gを目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン1500mLに投入した後に3時間攪拌して、ゴム含有重合体(A−b−1−1)のアセトン分散液を調製した。次いで、この分散液を目開き32μmのナイロンメッシュで濾過した後、ナイロンメッシュごとクロロホルム中で15分間超音波洗浄してメッシュ上の捕捉物をクロロホルム洗浄した。この後、目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン150mLに上記の超音波洗浄後のメッシュ上の捕捉物をナイロンメッシュごと投入し、この液を15分間超音波処理した後、ナイロンメッシュを除去して、メッシュ上の捕捉物のアセトン分散液150mLを調製した。次いで、この分散液70mLについて、リオン(株)製、自動式液中微粒子計測器(型式:KL−01)にて25℃下で測定し、直径55μm以上の粒子の数を求めたところ、10個であった。
<単量体混合物(1−A−イ)(1)>
MMA 0.3部
n−BA 4.5部
1,3−BD 0.2部
AMA 0.05部
CHP 0.025部
<単量体混合物(1−A−ロ)(1)>
MMA 9.6部
n−BA 14.4部
1,3−BD 1.0部
AMA 0.25部
CHP 0.016部
<単量体混合物(1−B)(1)>
MMA 6.0部
MA 4.0部
AMA 0.075部
CHP 0.0125部
<単量体混合物(1−C)(1)>
MMA 57.0部
MA 3.0部
n−OM 0.264部
t−BH 0.075部
[製造例2]ゴム含有重合体(2a)(1)の製造
還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水310部、乳化剤(2)0.5部、炭酸ナトリウム0.1部、SFS0.5部、硫酸第一鉄0.00024部及びEDTA0.00072部の水溶液を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら下記の第1段目の単量体混合物を80℃で200分間にわたって滴下し、その後更に120分間重合を行い、重合体のラテックスを得た。この第1段目の単量体混合物の重合で得られる重合体のFOXの式から求めたTgは−29℃であった。
この重合体のラテックスに、引き続いて脱イオン水10部及びSFS0.15部の水溶液を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら下記のゴム含有重合体(2a)(1)の第2段目の単量体混合物を80℃で100分間にわたって滴下し、その後更に80℃で60分間重合を行い、ゴム含有重合体(2a)(1)のラテックスを得た。この第2段目の単量体混合物の重合で得られる重合体のFOXの式から求めたTgは99℃であった。
得られた重合体ラテックス中のゴム含有重合体(2a)(1)の質量平均粒子径は0.12μmであった。
得られたゴム含有重合体(2a)(1)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して固形分を回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(2a)(1)を得た。ゴム含有重合体(2a)(1)のゲル含有率は84%であり、ゴム含有率は62.5%であった。
<第1段目の単量体混合物>
n−BA 81.0部
St 19.0部
AMA 1.0部
tBH 0.25部
乳化剤(2) 1.1部
<第2段目の単量体混合物>
MMA 57.0部
MA 3.0部
n−OM 0.2部
t−BH 0.1部
[製造例3]ゴム含有重合体(2a)(2)の製造
還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。次いで、この重合容器内にSFS0.6部、硫酸第一鉄0.00012部及びEDTA0.0003部の混合水溶液を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第1段目の単量体混合物の1/15を仕込み、15分間保持した。次いで、残りの第1段目の単量体混合物を、水に対する第1段目の単量体混合物の増加率が8%/時間となるように滴下した後、60分間保持し、重合体のラテックスを得た。アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第1段目の単量体混合物から得られた重合体のFOXの式から求めたTgは4℃であった。
この重合体のラテックスにSFS0.6部を加え、15分間保持した。次いで、窒素雰囲気下で80℃で撹拌しながら、下記のアクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第2段目の単量体混合物を、水に対する第2段目の単量体混合物の増加率が4%/時間となるように滴下した後、120分間保持し、重合体のラテックスを得た。尚、アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第2段目の単量体混合物から得られる重合体のFOXの式から求めたTgは−38℃であった。
また、上記の2段重合で得られたアクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物から得られた重合体のFOXの式から求めたTgは−23℃であった。
この重合体のラテックスにSFS0.4部を加え、15分間保持した。次いで、窒素雰囲気下で80℃で撹拌しながら、下記のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を、水に対するメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の増加率が10%/時間となるように滴下した後、60分間保持し、ゴム含有重合体(2a)(2)の重合体ラテックスを得た。尚、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物から得られる重合体のFOXの式から求めたTgは99℃であった。
得られたゴム含有重合体(2a)(2)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
得られたゴム含有重合体(2a)(2)の重合体ラテックスを、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して固形分を回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(2a)(1)を得た。ゴム含有重合体(2a)(1)のゲル含有率は90%であり、ゴム含有率は62.5%であった。
<アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第1段目の単量体混合物>
MMA 18.0部
n−BA 20.0部
St 2.0部
AMA 0.4部
1,3−BD 0.14部
t−BH 0.18部
乳化剤(2) 1.0部
<アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の第2段目の単量体混合物>
n−BA 50.0部
St 10.0部
AMA 0.4部
1,3−BD 0.14部
t−HH 0.2部
乳化剤(2) 1.0部
<メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物>
MMA 57.0部
MA 3.0部
n−OM 0.3部
t−BH 0.06部
[製造例4]ゴム含有重合体(2b)の製造
攪拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、下記の単量体混合物(2b−A)の第1段目の重合用の単量体混合物(2b−A−イ)を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、乳化剤(1)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水186.5部を投入し、70℃に昇温した。この後、イオン交換水5部にSFS0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、前記で調製した乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体混合物(2b−A)の第1段目の重合を完結させた。続いて、下記の単量体混合物(2b−A)の第2段目の重合用の単量体混合物(2b−A−ロ)を90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(2b−A)の重合を完結させ、重合体を得た。第1段目の重合で得られた重合体及び第2段目の重合で得られた重合体のFOXの式から求めたTgは−48℃であった。
続いて、下記の単量体混合物(2b−B)を45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(2b−B)の重合を完結させた。単量体混合物(2b−B)の重合で得られる重合体のFOXの式から求めたTgは20℃であった。
この後、下記の単量体混合物(2b−C)を140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム含有重合体(2b)の重合体ラテックスを得た。単量体混合物(2b−C)から得られる重合体のFOXの式から求めたTgは84℃であった。
得られた重合体ラテックス中のゴム含有重合体(2b)の質量平均粒子径は0.12μmであった。
得られたゴム含有重合体(2b)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.0部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(2b)を得た。ゴム含有重合体(2b)のゲル含有率は60%で、ゴム含有率は40%であった。
粉体状のゴム含有重合体(2b)214.3gを目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン1,500mLに投入した後に3時間攪拌して、ゴム含有重合体(2b)のアセトン分散液を調製した。次いで、この分散液を目開き32μmのナイロンメッシュで濾過した後、ナイロンメッシュごとクロロホルム中で15分間超音波洗浄することでメッシュ上の捕捉物をクロロホルム洗浄した。この後、目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン150mLに上記の超音波洗浄後のメッシュ上の捕捉物をナイロンメッシュごと投入し、この液を15分間超音波処理した後、ナイロンメッシュを除去して、メッシュ上の捕捉物のアセトン分散液150mLを調製した。次いで、この分散液70mLについて、リオン(株)製、自動式液中微粒子計測器(型式:KL−01)にて25℃下で測定し、直径55μm以上の粒子の数を求めたところ、10個であった。
<単量体混合物(2b−A−イ)>
MMA 0.3部
n−BA 4.5部
1,3−BD 0.2部
AMA 0.05部
CHP 0.025部
<単量体混合物(2b−A−ロ)>
MMA 1.5部
n−BA 22.5部
1,3−BD 1.0部
AMA 0.25部
CHP 0.016部
<単量体混合物(2b−B)>
MMA 6.0部
n−BA 4.0部
AMA 0.075部
CHP 0.0125部
<単量体混合物(2b−C)>
MMA 55.2部
MA 4.8部
n−OM 0.19部
t−BH 0.08部
[製造例5]熱可塑性樹脂層(A−a)を構成するアクリル樹脂組成物の製造
アクリルゴム含有重合体(A−a−1)として、製造例1のゴム含有重合体(A−b−1−1)45部及び熱可塑性重合体(A−a−2)としてのMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g、HDT(荷重1.8MPa)=101℃)55部に、配合剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234(商品名)1.4部、(株)ADEKA製アデカスタブAO−50(商品名)0.1部及び(株)ADEKA製アデカスタブLA−67(商品名)0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、熱可塑性樹脂層(A−a)を構成するアクリル樹脂組成物のペレットを得た。尚、このアクリル樹脂組成物のHDTは94℃であった。
[製造例6]アクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物の製造
アクリルゴム含有重合体(A−b−1)として、ゴム含有重合体(A−b−1−1)75部及びゴム含有重合体(2b)15部並びに熱可塑性重合体(A−b−2)としてのMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g、HDT(荷重1.8MPa)=101℃)10部に、配合剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234(商品名)1.4部、(株)ADEKA製アデカスタブAO−50(商品名)0.1部及び(株)ADEKA製アデカスタブLA−67(商品名)0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、アクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物のペレットを得た。尚、このアクリル樹脂組成物のHDTは86℃、ゴム含有率は29%及びゲル含有率は62%であった。
[製造例7〜12]アクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物の製造
ゴム含有重合体として表2に記載された量のゴム含有重合体(A−b−1−1)並びにゴム含有重合体(A−b−1−2)として表2に記載されたゴム含有重合体(2a)(1)、(2a)(2)又は(2b)の種類及び量を使用した。それ以外は製造例6と同様にしてアクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物を得た。得られたアクリル樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
[実施例1]
製造例5で得た熱可塑性樹脂層(A−a)を構成するアクリル樹脂組成物と、製造例6で得たアクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物のペレットを、80℃で一昼夜乾燥した。
次いで、ノンベントスクリュー型30mmφの押出機を用いて、上記の熱可塑性樹脂層(A−a)を構成するアクリル樹脂組成物をシリンダー温度180〜240℃の条件で、500メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら可塑化した。
上記の熱可塑性樹脂層(A−a)を構成するアクリル樹脂組成物の可塑化と併行して、ノンベントスクリュー型40mmφの押出機を用いて、上記のアクリル樹脂層(A−b)を構成するアクリル樹脂組成物をシリンダー温度180〜240℃の条件で、500メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら可塑化した。
これらの過疎化したものを240℃に設定した2種2層用マルチマニホールドダイで押し出して得られた溶融状態のフィルム状物を、2本の金属製冷却ロール間を通し、バンク(樹脂溜まり)の無い状態で樹脂を挟持しながら圧延せずに面転写した後、これを巻取機で紙管に巻き取ることによって総厚さ90μmのアクリル樹脂系積層フィルム(A)を作製した。
アクリル樹脂系積層フィルム(A)の断面を観察したところ、熱可塑性樹脂層(A−a)の厚さは9μmであり、アクリル樹脂層(A−b)の厚さは81μmであった。
次に、アクリル樹脂系積層フィルム(A)の熱可塑性樹脂層(A−a)側に絵柄層(B)として木目柄をグラビア印刷にて設け、アクリル樹脂製加飾フィルムを得た。アクリル樹脂製加飾フィルムの耐折曲白化性及び鉛筆硬度を評価した。得られた結果を表3に示す。
このアクリル樹脂製加飾フィルムを用い、前述の(8)〜(11)の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例2〜6並びに比較例1、2及び5]
熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する構成成分及び熱可塑性樹脂層(A−b)を構成する構成成分として表3に示すアクリル樹脂組成物を使用した。それ以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品の評価結果を表3に示す。
[実施例7]
熱可塑性樹脂層(A−a)及びアクリル樹脂層(A−b)の厚さを表3に示す各厚さに変更した以外は実施例1と同様にアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品の評価結果を表3に示す。
[実施例8]
熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する構成成分としてMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g、HDT(荷重1.8MPa)=101℃)を使用した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム及び積層体の評価結果を表3に示す。
[実施例9]
熱可塑性樹脂層(A−a)を構成する構成成分としてポリカーボネート樹脂(出光興産(株)製、タフロンIB−2500(商品名)、MVF(300℃、1.2kgf)=1cm/10分、HDT(荷重1.8MPa)=132℃)を使用した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品の評価結果を表3に示す。
[比較例3]
2種2層用マルチマニホールドダイの代わりに、2種3層用マルチマニホールドダイを用いて押し出し、熱可塑性樹脂層(A−a)/アクリル樹脂層(A−b)/熱可塑性樹脂層(A−a)で構成される総厚さ90μmのアクリル樹脂系積層フィルム(A)を作製した。それ以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品の評価結果を表3に示す。
尚、上記のアクリル樹脂系積層フィルム(A)の断面を観察したところ、熱可塑性樹脂層(A−a)/アクリル樹脂層(A−b)/熱可塑性樹脂層(A−a)の各層の厚さは、それぞれ5μm/80μm/5μmであった。
[比較例4]
アクリル樹脂系積層フィルム(A)の熱可塑性樹脂層(A−a)側に絵柄層(B)を設ける代わりに、アクリル樹脂層(A−b)側に絵柄層(B)として木目柄をグラビア印刷にて設けた以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品を得た。アクリル樹脂製加飾フィルム、成形用シート及び積層成形品の評価結果を表3に示す。

Claims (5)

  1. 熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)が90℃以上である熱可塑性樹脂層(A−a)並びにアクリルゴム含有重合体(A−b−1)又はアクリルゴム含有重合体(A−b−1)及び熱可塑性重合体(A−b−2)を含有するアクリル樹脂組成物(X)を構成成分とし、熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)が90℃未満であるアクリル樹脂層(A−b)を有するアクリル樹脂系積層フィルム(A)の熱可塑性樹脂層(A−a)側に絵柄層(B)が積層され、アクリル樹脂層(A−b)が最外層に位置しているアクリル樹脂製加飾フィルム。
  2. 熱可塑性樹脂層(A−a)がアクリルゴム含有重合体(A−a−1)及び熱可塑性重合体(A−a−2)を含有するアクリル樹脂組成物(Y)を構成成分とするアクリル樹脂層(A−a−α)である請求項1に記載のアクリル樹脂製加飾フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のアクリル樹脂製加飾フィルムを、アクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)の面を介して基材シート(C)に積層して得られる成形用シート。
  4. 請求項1若しくは2に記載のアクリル樹脂製加飾フィルム又は請求項3に記載の成形用シートを、請求項1若しくは2に記載のアクリル樹脂製加飾フィルムの絵柄層(B)の面を介して、又は請求項3に記載の成形用シートの基材シート(C)の面を介して成形品(D)に積層して得られる積層成形品。
  5. 請求項1若しくは2に記載のアクリル樹脂製加飾フィルム又は請求項3に記載の成形用シートをアクリル樹脂層(A−b)側がキャビティ側となるように射出成形金型内で真空成形又は圧空成形し、次いで射出成形金型内に成形品(D)を構成する樹脂を射出成形してアクリル樹脂製加飾フィルム又は成形用シートと成形品(D)を一体化する積層成形品の製造方法。
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