(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る流体測定装置1について図1乃至図3を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る流体測定装置1の構成を示した概略図である。本実施の形態の流体測定装置1には複数(本実施形態では5つ)の流体測定手段2A〜2Eを有する流体測定器3が設けられている。
各流体測定手段2A〜2Eは、同一構成になっている。そこで、ここでは1つの流体測定手段2Aの構成のみを代表して説明し、他の流体測定手段2B〜2Eについては、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
流体測定手段2Aは、ガス測定室10を有する。ガス測定室10内には被検体であるガスを測定するためのガス測定センサ11が配設されている。ガス測定センサ11としては例えば、球状弾性表面波素子センサを使用している。
また、ガス測定室10は流入管路26と、流出管路27とを有する。流入管路26には流入側ガス弁12が、流出管路27には流出側ガス弁13が設けられている。各流体測定手段2A〜2Eの流入側ガス弁12、流出側ガス弁13はそれぞれガス弁制御装置14と接続されている。そして、ガス弁制御装置14によって各流体測定手段2A〜2Eの流入側ガス弁12と、流出側ガス弁13の開閉動作がそれぞれ制御されている。
各流体測定手段2A〜2Eのガス測定室10の流入管路26は、1つの被計測ガスの導入ガス管4に連結されている。各流体測定手段2A〜2Eのガス測定室10の流出管路27は、1つの排気ポンプ15に連結されている。そして、排気ポンプ15からの吸引圧力によって外気のガスを各流体測定手段2A〜2Eのガス測定室10内に取り入れる。
各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11は球状弾性表面波制御回路17に接続されている。ガス弁制御装置14は中央制御装置16と接続されている。中央制御装置16は球状弾性表面波制御回路17及び被計測ガス時間変化表示器18と接続されている。球状弾性表面波制御回路17はバースト信号を各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11に後述する適宜のタイミングで入力し、各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11からの出力を適宜のタイミングで計測する。この計測結果は、順次、球状弾性表面波制御回路17を介して中央制御装置16に送られる。中央制御装置16は、各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11からの流体測定データを集積することによって各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11から送られる計測結果を時間変化として処理し、被計測ガス時間変化表示器18に表示する。
ここで、ガス測定センサ11として用いられる球状弾性表面波素子センサについて図2を参照にして説明する。図2は流体測定装置1の流体測定手段2Aのガス測定室10の構造を示した図である。なお、他の流体測定手段2B〜2Eのガス測定室10についても同様の構成であり、説明は省略する。
ガス測定センサ11として用いられる球状弾性表面波素子センサは、直径が1mm又は3.3mm程度の球状弾性表面波素子20の表面に30nm程度パラジウムとニッケルの合金の感応膜20Aをコーティングして形成する。球状弾性表面波素子20は固定用接着剤20Bによってガス測定室10に固定されている。球状弾性表面波素子20は弾性表面波を周回させるための円環状に連続した弾性表面波周回路21を少なくとも1つ含む。弾性表面波周回路21には、弾性表面波励起要素としてすだれ電極22が設けられている。すだれ電極22には球状弾性表面波制御回路17から150MHz程度の高周波バースト電圧が印加される。すだれ電極22にバースト状に電圧が印加されると、弾性表面波は励起され、弾性表面波周回路21に沿って弾性表面波は多重周回する。弾性表面波周回路21を特定の回数周回した弾性表面波はすだれ電極22によって受信され、球状弾性表面波制御回路17に電圧信号として出力される。この結果、バースト信号入力後の所定の時刻における出力信号の位相や強度を計測することができる。この計測結果から弾性表面波の周回速度や減衰率を求めることができる。
ここで、感応膜20Aであるバラジウムとニッケルの合金はガス測定室10内の水素の濃度によって弾性特性が変化する。バラジウムとニッケルの合金の弾性特性が変化すると、球状弾性表面波素子20の弾性表面波周回路21を周回する弾性表面波の周回速度や減衰率は変化する。したがって、弾性表面波の周回速度や減衰率を求めることで、ガス測定室10内の水素濃度を計測できる。
なお、感応膜20Aを形成する部材は水素の濃度によって弾性特性が変化するバラジウムとニッケルの合金に限られず、ある特定の流体の作用によって弾性特性が変化する部材であればよい。
また、ガス測定センサ11は電気抵抗式ガスセンサであってもよい。電気抵抗式ガスセンサはある特定の流体を吸着することで電気抵抗を変化させる部材からなる感応膜を有する。感応膜の電気抵抗を計測することである特定の流体の濃度を計測することができる。
また、ガス測定センサ11はFET型(電界効果型トランジスタ型)ガスセンサであってもよい。FET型ガスセンサはFETのゲート電極部にある特定の流体と選択的に反応する部材からなる感応膜を有し、感応膜はある特定の流体を吸着することで仕事関数を変化させる。感応膜の閾値電圧や抵抗変化を計測することで、仕事関数を求め、ある特定の流体の濃度を求めることができる。
次に、本実施形態に係る流体測定装置1の作用について図3を参照して説明する。図3は流体測定装置1の各流体測定手段2A〜2Eの動作について示した相関図である。
まず、5つの流体測定手段2A〜2Eのいずれか、例えば図1に示すように流体測定手段2Bの流入側ガス弁12と、流出側ガス弁13とを開く。これにより、排気ポンプ15からの吸引力が流体測定手段2Bのガス測定室10に作用する。そのため、導入ガス管4から流入側ガス弁12を介して流体測定手段2Bのガス測定室10に被測定流体が導入される。このとき、被測定流体の導入によってガス測定室10内の古いガスが排気され、新しいガスと交換される。ガスの交換が完了したのち、流体測定手段2Bの流入側ガス弁12と、流出側ガス弁13とを閉じる。ガスの交換時間はガス弁12、13の開閉時間も含め0.1秒程度である。
流体測定手段2Bの流入側ガス弁12と、流出側ガス弁13とを閉じた後、導入されたガスをガス測定センサ11の感応膜に作用させるため、適宜の設定時間この状態で待機する。上記設定時間は、例えば直径が3.3mmの球状弾性表面波素子20にパラジウムとニッケルの合金膜30nmを形成した水素センサでは2.0秒間程度である。
流体測定手段2Bの流入側ガス弁12と、流出側ガス弁13とを閉じた後、上記設定時間の経過後、ガス測定センサ11のすだれ電極22に1回目のバースト信号が入力される。そして、弾性表面波周回路21を特定の回数周回した弾性表面波を測定し、位相・強度の解析が行われる。
バースト信号の応答特性の測定は予め設定された平均化回数分だけ行われる。ここで、弾性表面波の影響がなくなるまでには1ms程度時間を要するため、2回目以降の測定は前回の測定から1ms以上経過してから行われる。つまり、前回のバースト信号を入力してから1ms経過後に、次のバースト信号を入力する。所定の平均化回数測定を行ったら、平均化したデータを算出する。ここで、平均化回数を100回とすると弾性表面波の測定時間に0.1秒要する。
したがって、流体測定手段2Bのガス測定室10内のガスの交換時間(ガス弁12、13の開閉時間も含む)をt1、ガス測定室10に導入されたガスがガス測定センサ11の感応膜に作用が完了するまでの時間をt2、弾性表面波の測定時間をt3とすると、ガス測定センサ11の1台が必要な計測時間t0は式(1)のようになる。
t0=t1+t2+t3=2.2秒 ・・・(1)
式(1)は流体測定手段2B以外の流体測定手段2A、2C〜2Eのガス測定センサ11についても同様に成り立つ。したがって、1つの流体測定手段2Bのガス測定センサ11のみでは計測時の時間分解能が2.2秒となる。
また、図3に示すように、本実施形態では流体測定手段2Bのガス測定室10のガス弁12、13が開いてからt0/5時間の経過後、次の流体測定手段2Cのガス測定室10のガス弁12、13が開く。これにより、流体測定手段2Bのガス測定室10からt0/5時間、遅れて次の流体測定手段2Cのガス測定室10で流体測定手段2Bと同様のガス測定の動作が行われる。
さらに、流体測定手段2Cのガス測定室10のガス弁12、13が開閉してからt0/5時間の経過後、さらに次の流体測定手段2Dのガス測定室10のガス弁12、13が開く。これにより、流体測定手段2Cのガス測定室10からt0/5時間、遅れて次の流体測定手段2Dのガス測定室10で流体測定手段2Cと同様のガス測定の動作が行われる。
つまり、上述したガス測定動作が5つの流体測定手段2A〜2Eのガス測定室10で順次にt0/5時間の間隔で行われる。これは、5つの流体測定手段2A〜2Eの1台の各ガス測定センサ11が必要なガス計測の時間t0の1/5の時間である。したがって、t0を2.2秒とすると、本実施形態における流体測定装置1の計測時の時間分解能t´は式(2)のようになる。
t´=t0÷5台=0.44秒 ・・・(2)
したがって、流体測定装置1の計測時の時間分解能は、5つの流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されない。つまり、流体測定装置1では5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定室10にガスを導入して測定する動作を各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、流体測定を行う。このとき、導入したガスが5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置1の計測時の時間分解能を高めることができる。また、ガス測定センサ11の台数を増やすことで、より高い時間分解能で計測を行うことができる。
そこで、上記構成の流体測定装置1においては以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の流体測定装置1では、5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定室10にガスを導入する動作を各流体測定手段2A〜2Eのガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、行う。これにより、導入したガスが5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、5つの流体測定手段2A〜2Eの各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置1の計測時の時間分解能を高めることができる。このため、ガスの組成や構成の変化を高い時間分解能で検出することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る流体測定装置25について図4を参照にして説明する。本実施形態では第1の実施形態の流体測定装置1の構成を次の通り変更した流体測定装置25を設けたものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図4は流体測定装置25の構成を示した図である。本実施の形態の流体測定装置25には複数(本実施形態では5つ)の流体測定手段2A´〜2E´を有する流体測定器3が設けられている。
各流体測定手段2A´〜2E´は、同一構成になっている。そこで、ここでは1つの流体測定手段2A´の構成のみを代表して説明し、他の流体測定手段2B´〜2E´については、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
流体測定手段2A´は、ガス測定室10を有する。ガス測定室10内には被検体であるガスを測定するためのガス測定センサ11が配設されている。ガス測定センサ11は、第1の実施形態と同様に球状弾性表面波素子センサが使用されている。
また、ガス測定室10は流入管路26と、流出管路27とを有する。流出管路27には小型ポンプ23が設けられている。小型ポンプ23は、例えばダイアフラムと一般に呼ばれているポンプが使用される。
流体測定手段2A´〜2E´の小型ポンプ23はそれぞれポンプ制御装置24と接続されている。そして、ポンプ制御装置24によって流体測定手段2A´〜2E´の小型ポンプ23の駆動がそれぞれ制御されている。ポンプ制御装置24は中央制御装置16に接続されている。
次に、本実施形態に係る流体測定装置25の作用について説明する。
まず、5つの流体測定手段2A´〜2E´のいずれか、例えば図4に示すように流体測定手段2B´の小型ポンプ23を駆動する。これにより、小型ポンプ23からの吸引力が流体測定手段2B´のガス測定室10に作用する。そのため、導入ガス管4から流体測定手段2Bのガス測定室10に被測定流体が導入される。このとき、被測定流体の導入によってガス測定室10内の古いガスが排気され、新しいガスと交換される。ガスの交換が完了したのち、流体測定手段2B´の小型ポンプ23の駆動を停止する。
ガスを流体測定手段2A´〜2E´に導入する作用以外については、第1の実施形態と同様である。
よって、ガス測定センサ11の1台が必要な計測時間t0とすると、本実施の形態の流体測定装置25においても、ガス測定動作が5つの流体測定手段2A´〜2E´のガス測定室10で順次にt0/5時間の間隔で行われる。これは、5つの流体測定手段2A´〜2E´の1台の各ガス測定センサ11が必要なガス計測の時間t0の1/5の時間である。したがって、t0を2.2秒とすると、本実施形態における流体測定装置25の計測時の時間分解能t´は0.44秒となる。
したがって、流体測定装置25の計測時の時間分解能は、5つの流体測定手段2A´〜2E´のガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されない。つまり、流体測定装置25では5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定室10にガスを導入して測定する動作を各流体測定手段2A´〜2E´のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、流体測定を行う。このとき、導入したガスが5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置25の計測時の時間分解能を高めることができる。また、ガス測定センサ11の台数を増やすことで、より高い時間分解能で計測を行うことができる。
そこで、上記構成の流体測定装置25においては以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の流体測定装置25では、5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定室10にガスを導入する動作を各流体測定手段2A´〜2E´のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、行う。これにより、導入したガスが5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置25の計測時の時間分解能を高めることができる。このため、ガスの組成や構成の変化を高い時間分解能で検出することができる。
さらに、本実施形態の流体測定装置25では、5つの流体測定手段2A´〜2E´の各ガス測定室10にガスを導入する際に小型ポンプ23を用いている。小型ポンプ23は、第1の実施形態で用いられる排気ポンプ15に比べ排気量が少ない。このため、小型ポンプ23で流体測定手段2A´〜2E´のガス測定室10を排気する場合、排気ポンプ15でガス測定室10を排気する場合のようにガス測定室10内の圧力が低下せず、ガス測定室10の圧力は外気とほぼ同じになる。弾性表面波の位相・強度は周囲の圧力によって影響を受けることから、被測定流体の計測において気圧は重要な要素となる。流体測定装置25では小型ポンプ23を用いることで、流体測定手段2A´〜2E´ガス測定室10の圧力の低下を防止することができる。
また、第1の実施形態に係る流体測定装置1の流体測定手段2A〜2Eの流出管路27に設けられたガス弁13が閉じている状態において、ガス弁13に僅かな隙間が生じている可能性がある。この場合、その隙間から排気ポンプ15によって排気されることによって、流体測定手段2A〜2Eのガス測定室10内のガス状態が変化し、被測定流体の測定に大きな影響を及ぼす。ガス状態の変化を防止するためには、より精密なガス弁13が必要となるが、これにはコストがかかる。一方、本実施形態に係る流体測定装置25では流体測定手段2A´〜2E´の小型ポンプ23が起動している時間(ガス測定室10がガス交換を行っている時間)以外はガス測定室10内でガスの移動は起こらない。したがって、小型ポンプ23を用いることで、ガス測定室10内のガス状態の変化を有効に防止することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る流体測定装置30について図5を参照して説明する。本実施形態では第1の実施形態の流体測定装置1の構成を次の通り変更した流体測定装置30を設けたものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図5は流体測定装置30の構成を示した図である。本実施の形態の流体測定装置30には複数(本実施形態では6つ)の流体測定手段2A1〜2F1を有する流体測定器29が設けられている。
流体測定手段2A1〜2F1は流体測定器29内に同心円上に設けられている。ここで、各流体測定手段2A1〜2E1は同一構成になっている。そこで、ここでは1つの流体測定手段2A1の構成のみを代表して説明し、他の流体測定手段2B1〜2F1については、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
流体測定器29は流体測定器本体29aを有する。流体測定器本体29aは円板状のセンサ保持手段31と、2つのガス容器ジグ32、33とから構成されている。センサ保持手段31は、固定円板31aを有する。固定円板31aの中心部には、軸挿通孔31a1が形成されている。固定円板31aには、軸挿通孔31a1の周囲に6つの円孔31a2が同心円上に沿って等間隔で配置されている。6つの円孔31a2には、ガスが透過できる構造となっているメッシュフィルター34がそれぞれ装着されている。
各メッシュフィルター34上には、被検体であるガスを測定するためのガス測定センサ11がそれぞれ配設されている。ガス測定センサ11は、第1の実施形態と同様に球状弾性表面波素子センサが使用されている。ガス測定センサ11は、第1の実施形態と同様に球状弾性表面波制御回路17(図1参照)に接続されている。
2つのガス容器ジグ32、33は、センサ保持手段31の固定円板31aの両側(図5中で、固定円板31aの上下)に配設されている。図5中で、固定円板31aの上側には、ガスの流入側となる流入側ガス容器ジグ32、固定円板31aの下側には、ガスの流出側となる流出側ガス容器ジグ33がそれぞれ配設されている。
流入側ガス容器ジグ32には、中心部に軸挿通孔32aが形成され、軸挿通孔32aの周囲に6つの円孔32bが同心円上に沿って等間隔で配置されている。同様に、流出側ガス容器ジグ33には、中心部に軸挿通孔33aが形成され、軸挿通孔33aの周囲に6つの円孔33bが同心円上に沿って等間隔で配置されている。
本実施の形態の流体測定器本体29aは、円板状のセンサ保持手段31の固定円板31aの上に流入側ガス容器ジグ32、センサ保持手段31の下に流出側ガス容器ジグ33がそれぞれ積み重ねられる状態で、これらが一体化されて形成されている。ここで、固定円板31aの6つの円孔31a2と、流入側ガス容器ジグ32の6つの円孔32bと、流出側ガス容器ジグ33の6つの円孔33bとはそれぞれ対応する位置に配置されている。そのため、固定円板31aと、流入側ガス容器ジグ32と、流出側ガス容器ジグ33とが積み重ねられた際に、固定円板31aの6つの円孔31a2と、流入側ガス容器ジグ32の6つの円孔32bと、流出側ガス容器ジグ33の6つの円孔33bとはそれぞれ連通される。これにより、流体測定器本体29aの内部に流体測定を行う6つのガス測定室10が形成されている。そして、ガス測定室10内にそれぞれガス測定センサ11が配置されることにより、センサ保持手段31上には6つの流体測定手段2A1〜2F1のガス測定センサ11が同心円上に配置されている。
流体測定器29は各流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10への被測定流体の流入状態を切り替える切り替え手段28を有する。切り替え手段28は、2つのガス弁リング(流入側ガス弁リング35および流出側ガス弁リング36)と、ガス弁リングシャフト44とから構成されている。
流入側ガス弁リング35は、図5中で、流入側ガス容器ジグ32の上側に配置され、流出側ガス弁リング36は、流入側ガス容器ジグ32の下側に配置されている。さらに、流入側ガス弁リング35には、1つの流入口37が形成されている。この流入口37は、流入側ガス容器ジグ32の6つの円孔32bのいずれかと連通する位置に配置されている。流出側ガス弁リング36には、1つの流出口38が形成されている。この流出口38は、流出側ガス容器ジグ33の6つの円孔33bのいずれかと連通する位置に配置されている。なお、流入口37には金属製のメッシュフィルター39が設けられている。
また、2つのガス弁リング35、36の中心部には、ガス弁リングシャフト44が固定されている。ガス弁リングシャフト44は、流体測定器本体29aの流入側ガス容器ジグ32の軸挿通孔32aと、固定円板31aの軸挿通孔31a1と、流出側ガス容器ジグ33の軸挿通孔33a内にそれぞれ回転自在に挿通されている。さらに、ガス弁リングシャフト44の下端部は、ガス弁リング回転モータ45に固定されている。そして、ガス弁リング回転モータ45によってガス弁リングシャフト44が図5中で、反時計回り方向に回転駆動され、このガス弁リングシャフト44を介して2つのガス弁リング35、36が同時に同方向に回転駆動されるようになっている。
図5中で、流入側ガス弁リング35の上側には、ガス取り込みユニット40が配設されている。ガス取り込みユニット40の中心部には、ガス導入口41が設けられている。ガス取り込みユニット40の下面には、ガス導入口41よりも大径な円形凹部41aが形成されている。この円形凹部41aの径は、流入側ガス弁リング35の回転時に流入口37が移動するリング状の移動軌道の外周縁部の径とほぼ同じ大きさに設定されている。
さらに、図5中で、流出側ガス弁リング36の下側には、ガス排気ユニット42が配設されている。ガス排気ユニット42の中心部には、軸挿通孔42aが形成されている。この軸挿通孔42aには、ガス弁リングシャフト44が回転自在に挿通されている。
ガス排気ユニット42の外周面には、ガス排気管43の一端部が連結されている。このガス排気管43の他端部は図示しない減圧ポンプに連結されている。ガス排気ユニット42の上面には、大径な円形凹部42bが形成されている。この円形凹部42bの径は、流出側ガス弁リング36の回転時に流出口38が移動するリング状の移動軌道の外周縁部の径とほぼ同じ大きさに設定されている。この円形凹部42bは、ガス排気管43と連通している。
次に、本実施形態に係る流体測定装置30の作用について説明する。本実施の形態の流体測定装置30の動作時には、ガス弁リング回転モータ45が回転駆動されるとともに、図示しない減圧ポンプが駆動される。このとき、ガス弁リング回転モータ45を駆動させることで、ガス弁リングシャフト44が回転し、2つのガス弁リング35、36がガス弁リングシャフト44を中心に回転する。
流入側ガス弁リング35の回転時において、流入口37は流入側ガス容器ジグ32の6つの円孔32bのいずれか1つと連通する。このとき、流入側ガス弁リング35の流入口37と連通する流入側ガス容器ジグ32のいずれか1つの円孔32bによって6つの流体測定手段2A1〜2F1のいずれかの流入管部46が形成されている。
また、流出側ガス弁リング36の回転時において、流出口38は流出側ガス容器ジグ33の6つの円孔33bのいずれか1つと連通する。このとき、流出側ガス弁リング36の流出口38と連通する流出側ガス容器ジグ33のいずれか1つの円孔33bによって6つの流体測定手段2A1〜2F1のいずれかの流出管部47が形成されている。
つまり、ガス弁リング35、36の回転時において、図示しない減圧ポンプの駆動によって作用する吸引圧力によって図5中に矢印で示すようにガス取り込みユニット40のガス導入口41から円形凹部41a内に被測定流体が導入される。この被測定流体は、続いて流入側ガス弁リング35の流入口37からメッシュフィルター39を通って、流体測定手段2A1〜2F1のいずれかのガス測定室10に導入される。このとき、被測定流体が導入されるガス測定室10からは同時にガス測定室10内のガスが流出側ガス弁リング36の流出口38からガス排気ユニット42の円形凹部42bを経てガス排気管43側に排気される。
ここで、6つの流体測定手段2A1〜2F1のうちの1つ、例えば、図5に示すように流体測定手段2A1のガス測定室10にガスが導入された場合には、第1の実施形態で説明したように、導入されたガスをガス測定センサ11の感応膜に作用させるため、適宜の設定時間この状態で待機する。上記設定時間の経過後、ガス測定センサ11のすだれ電極22に1回目のバースト信号が入力される。そして、弾性表面波周回路21を特定の回数周回した弾性表面波を測定し、位相・強度の解析が行われる。この測定を平均化回数分行う。
ここで、ガス測定センサ11の1台が必要な計測時間をt0とすると、本実施形態に係る流体測定装置30では流体測定手段2A1のガス測定室10にガスを導入し始めてからt0/6時間経過すると、流入側ガス弁リング35の流入口37が次の流体測定手段2B1の流入側ガス容器ジグ32の流入管部46と連通し、流出側ガス弁リング36の流出口38が流体測定手段2B1の流出側ガス容器ジグ33の流出管部47と連通する。これにより、流体測定手段2Aのガス測定室10からt0/6時間遅れて次の流体測定手段2B1のガス測定室10で流体測定手段2A1と同様のガス測定の動作が行われる。そして、流体測定手段2B1のガス測定室10にガスを導入し始めてからt0/6時間経過すると、流入側ガス弁リング35の流入口37がさらに次の流体測定手段2C1の流入側ガス容器ジグ32の流入管部46と連通し、流出側ガス弁リング36の流出口38が流体測定手段2C1の流出側ガス容器ジグ33の流出管部47と連通する。これにより、流体測定手段2B1のガス測定室10からt0/6時間遅れて次の流体測定手段2C1のガス測定室10で流体測定手段2B1と同様のガス測定の動作が行われる。
つまり、上述したガス測定動作が6つの流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10で順次にt0/6時間の間隔で行われる。これは、6つの流体測定手段2A1〜2F1の1台の各ガス測定センサ11が必要なガス計測の時間t0の1/6の時間である。したがって、t0を2.2秒とすると、本実施形態における流体測定装置30の計測時の時間分解能t´は0.37秒となる。
その結果、流体測定装置30の計測時の時間分解能は、6つの流体測定手段2A1〜2F1のガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されない。つまり、本実施の形態の流体測定装置30では6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定室10にガスを導入して測定する動作を各流体測定手段2A1〜2F1のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、流体測定を行うことができる。このとき、導入したガスが6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置30の計測時の時間分解能を高めることができる。また、ガス測定センサ11の台数を増やすことで、より高い時間分解能で計測を行うことができる。
そこで、上記構成の流体測定装置30においては以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の流体測定装置30では、6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定室10にガスを導入する動作を各流体測定手段2A1〜2F1のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、行うことができる。これにより、導入したガスが6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、6つの流体測定手段2A1〜2F1の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置30の計測時の時間分解能を高めることができる。このため、ガスの組成や構成の変化を高い時間分解能で検出することができる。
なお、流体測定手段2A1〜2F1のいずれか1つのガス測定室10で順次にガスの交換が行われる構成ならば、必ずしも流体測定手段2A1〜2F1を同心円上に配置しなくてもよい。
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態に係る流体測定装置48について図6を参照して説明する。本実施形態は、第3の実施形態の流体測定装置30の構成を流体測定装置48のように変更したものである。なお、第3の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図6は流体測定装置48の全体の概略構成を示した図である。本実施の形態の流体測定装置48には複数(本実施形態では8つ)の流体測定手段2A2〜2H2を有する流体測定器48Aが設けられている。
本実施の形態の流体測定器48Aは、ほぼ円筒状のセンサ保持手段31と、センサ保持手段31の内部に配設された回転ガス供給筒50とを有する。センサ保持手段31には、8つの流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10が同心円上に並設されている。ここで、各流体測定手段2A2〜2H2は同一構成になっている。そこで、ここでは1つの流体測定手段2A2の構成のみを代表して説明し、他の流体測定手段2B2〜2H2については、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
センサ保持手段31の内周面側には、各流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10と対応する位置に流入口51aがそれぞれ形成されている。さらに、センサ保持手段31の外周面側には、各流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10と対応する位置に流出口51bがそれぞれ形成されている。そして、センサ保持手段31の内周面の流入口51aと、各流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10との間に流入管路55、センサ保持手段31の外周面の流出口51bとの間に流出管路56がそれぞれ形成されている。これにより、ガス測定室10の内周面側に流入管路55がセンサ保持手段31の半径方向に延設され、ガス測定室10の外周面側に流出管路56がセンサ保持手段31の半径方向に延設されている。
各流出管路56には、抵抗フィルター54が設けられている。抵抗フィルター54は、ガス測定室10の内部のガスが自然に外部に漏洩することや、外部からガスがガス測定室10に侵入することを短時間の間、抑制する効果を持つ。
流体測定手段2A2のガス測定室10内には被検体であるガスを測定するためのガス測定センサ11が配設されている。ガス測定センサ11は、第1の実施形態と同様に球状弾性表面波素子センサが使用されている。ガス測定センサ11は、第1の実施形態と同様に球状弾性表面波制御回路17(図1参照)に接続されている。
回転ガス供給筒50は、センサ保持手段31の軸心位置を中心に図6中で、反時計回り方向に回転駆動される。回転ガス供給筒50の外周面には、8つの流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10のいずれかの流入口51aと連通可能な1つのガス供給口50aを有する。
そして、被検体であるガスは図6の回転ガス供給筒50内部の紙面垂直方向側から供給される。回転ガス供給筒50の回転にともない回転ガス供給筒50のガス供給口50aと8つの流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10のいずれかの流入口51aとの連通状態が順次、切り替えられるようになっている。これにより、回転ガス供給筒50の回転時において、ガス供給口50aは流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10のいずれか1つの流入口51aと連通し、連結するガス測定室10は順次切り替わる。そして、ガス供給口50aから流体測定手段2A2〜2H2のいずれか1つの連通しているガス測定室10にガスが導入される。したがって、回転ガス供給筒50によって流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10への被測定流体の流入状態を切り替える切り替え手段57を構成する。
回転ガス供給筒50の外周面には、ガスシール用の弾性樹脂52が装着されている。ガス測定センサ11でのガス測定時には、弾性樹脂52によって流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10内のガスが保持される構造である。
次に、本実施形態に係る流体測定装置48の作用について説明する。本実施の形態の流体測定装置48の動作時には、回転ガス供給筒50が図6中で、反時計回り方向に回転駆動されるとともに、被検体であるガスは図6の回転ガス供給筒50内部の紙面垂直方向側から供給される。まず、8つの流体測定手段2A2〜2H2のいずれか、例えば図6に示すように流体測定手段2A2のガス測定室10にガスを導入する。この際、回転ガス供給筒50のガス供給口50aが流体測定手段2A2の流入管路55と連通している。
流体測定手段2A2のガス測定室10にガスが導入された場合には、第1の実施形態で説明したように、導入されたガスをガス測定センサ11の感応膜に作用させるため、適宜の設定時間この状態で待機する。上記設定時間の経過後、ガス測定センサ11のすだれ電極22に1回目のバースト信号が入力される。そして、弾性表面波周回路21を特定の回数周回した弾性表面波を測定し、位相・強度の解析が行われる。この測定を平均化回数分行う。
ここで、ガス測定センサ11の1台が必要な計測時間をt0とすると、流体測定手段2A2のガス測定室10にガスを導入し始めてからt0/8時間経過すると、回転ガス供給筒50のガス供給口50aは次の流体測定手段2B2の流入管路55と連通する。これにより、流体測定手段2A2のガス測定室10からt0/8時間遅れて次の流体測定手段2B2のガス測定室10で流体測定手段2A2と同様のガス測定の動作が行われる。そして、流体測定手段2B2のガス測定室10にガスを導入し始めてからt0/8時間経過すると、回転ガス供給筒50のガス供給口50aはさらに次の流体測定手段2C2の流入管路55と連通する。これにより、流体測定手段2B2のガス測定室10からt0/8時間遅れて次の流体測定手段2C2のガス測定室10で流体測定手段2B2と同様のガス測定の動作が行われる。
つまり、上述したガス測定動作が8つの流体測定手段2A2〜2H2のガス測定室10で順次にt0/8時間の間隔で行われる。これは、8つの流体測定手段2A2〜2H2の1台の各ガス測定センサ11が必要なガス計測の時間t0の1/8の時間である。したがって、t0を2.2秒とすると、本実施形態における流体測定装置1の計測時の時間分解能t´は0.28秒となる。
したがって、流体測定装置48の計測時の時間分解能は、8つの流体測定手段2A2〜2H2のガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されない。つまり、本実施の形態の流体測定装置48では8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定室10にガスを導入して測定する動作を各流体測定手段2A2〜2H2のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、流体測定を行う。このとき、導入したガスが8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置48の計測時の時間分解能を高めることができる。また、ガス測定センサ11の台数を増やすことで、より高い時間分解能で計測を行うことができる。
そこで、上記構成の流体測定装置48においては以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の流体測定装置48では、8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定室10にガスを導入する動作を各流体測定手段2A2〜2H2のガス測定センサ11で行われる1回の流体測定に要する流体測定時間よりも短い設定時間毎に時間差をつけて順次、行うことができる。これにより、導入したガスが8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、8つの流体測定手段2A2〜2H2の各ガス測定センサ11の1台あたりに必要なガス測定の時間に制限されずに流体測定装置48の計測時の時間分解能を高めることができる。このため、ガスの組成や構成の変化を高い時間分解能で検出することができる。
また、この実施例では、同心円上に配置した2A2〜2H2のガス測定室に対して回転ガス供給筒50が陽圧となり被測定液体を送り出しているが、回転ガス供給筒50を印圧とすることで流入と流出口を全て逆に動作して周囲から被測定ガスを取り込んで測定出来る事は明白である。
なお、本発明の第1乃至第4の実施形態に係る流体測定装置では測定対象はガス(気体)であったが、測定対象が液体であっても同様の動作が行われる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について図7乃至図11を参照して説明する。図7は例えば第3の実施形態(図5参照)の流体測定装置30を用いた空間流体分布可視化装置100の全体の概略構成を示した図である。
空間流体分布可視化装置100は、流体測定装置ユニット101と、ガス濃度分布変化表示装置(表示ユニット)105とを有する。流体測定装置ユニット101は、ほぼ矩形状の支持板101aと、複数(本実施形態では25個)の流体測定装置30とを有する。流体測定装置30は、1つ1つが第3の実施形態(図5参照)の流体測定装置30と同一構造である。支持板101a上には、25個の流体測定装置30が縦横に5個ずつ2次元に配置されている。以下説明のため、25個の流体測定装置30は、図7に示すように縦横にA〜Yの参照符号を順に付して示す。
さらに、空間流体分布可視化装置100は、排気ユニット102と、回転モータ制御ユニット103と、計測ユニット104とを有する。排気ユニット102は、流体測定装置ユニット101の流体測定装置30A〜30Yの各ガス排気管43とそれぞれ接続されている。排気ユニット102は、例えばポンプなどが組み込まれ、流体測定装置30A〜30Yの減圧排気を行う。
ガス弁リング回転モータ制御ユニット103は、流体測定装置30A〜30Yの各ガス弁リング回転モータ45に接続されている。ガス弁リング回転モータ制御ユニット103は、各流体測定装置30A〜30Yにおいて流体測定手段2A1〜2F1のいずれか1つのガス測定室10でt0/6時間ごとに順次にガスの交換が行われるように、ガス弁リング35、36及びガス弁リングシャフト44を制御する。
計測ユニット104は、25個の流体測定装置30A〜30Yと、ガス弁リング回転モータ制御ユニット103とに接続されている。計測ユニット104は、流体測定装置30A〜30Yにバースト信号を入力し、その出力結果を受信する。
さらに、計測ユニット104には、ガス濃度分布表示装置105及び入力装置106がそれぞれ接続されている。ガス濃度分布表示装置105は、一般的なディスプレイまたはタッチパネル式ディスプレイである。ガス濃度分布表示装置105は、表示画面130を有し、表示画面130内に流体測定装置30の数(本実施形態では25個)に対応した表示要素131を有する。各流体測定装置30A〜30Yの位置と表示画面130内の各表示要素131A〜131Yの位置情報をそれぞれ対応させ、被測定流体の測定結果を流体測定装置30A〜30Yごとに表示画面130内の対応する位置の表示要素131A〜131Yに表示する。これにより、ガス濃度分布表示装置105には、ガス分布変化の状態や、タスク状況等が表示される。
図8は空間流体分布可視化装置100の構成を示すブロック図である。計測ユニット104は設定周波数発生装置110を有する。設定周波数発生装置110で高周波信号を発生する。設定周波数発生装置110は設定長バースト切り出し装置111に接続されている。設定長バースト切り出し装置111は、設定周波数発生装置110で発生した高周波信号を任意に定めた時間長毎に切り出すスイッチ装置である。これにより、高周波バースト信号が生成される。
設定長バースト切り出し装置111は第1送信スイッチ装置112に接続されている。第1送信スイッチ装置112は、設定長バースト切り出し装置111により切り出された高周波バースト信号を、流体測定装置30A〜30Yに切り替えながら入力するものである。各流体測定装置30A〜30Yはそれぞれ流体測定手段2A1〜2F1を有し、それぞれの流体測定手段2A1〜2F1にはガス測定センサ11が設けられている。第1送信スイッチ装置112は、ガス測定センサ11の弾性表面波周回路21を弾性表面波が1周する周回時間程度かそれ以上の時間をかけて高周波バースト信号の入力先を順次切り替える。ガス測定センサ11の球状弾性表面波素子20の直径1mmである場合、高周波バースト信号が150MHzであれば、1μs以上の時間をかけて入力先を切り替え、直径が3.3mmであれば、約3.3μsの時間が経ってから切り替える。
なお、第1送信スイッチ装置112は、各流体測定装置30A〜30Yへの高周波バースト信号の入力先を切り替える時刻と、それらの流体測定装置30A〜30Yのいずれかからの出力信号が検出される時刻とが一致する場合、高周波バースト信号の入力を待機する。これにより、入力信号の影響により出力信号が検出されなくなることを回避できるので、高精度に出力信号を検出することができる。
第1送信スイッチ装置112は流体測定装置30A〜30Y毎に設けられた受信スイッチ装置113A〜113Yに接続されている。受信スイッチ装置113A〜113Yは流体測定装置30A〜30Yからの弾性表面波の周回信号を取り出すものである。取り出された周回信号は、流体測定装置30A〜30Yからの出力信号として、ADコンバータ114に送出される。
受信スイッチ装置113A〜113Yは第2送信スイッチ装置115A〜115Yに接続されている。第2の送信スイッチ装置115A〜115Yは同一構成になっている。そこで、ここでは1つの第2の送信スイッチ装置115Aの構成のみを代表して説明し、他の第2の送信スイッチ装置115B〜115Yについては、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。第2送信スイッチ装置115Aは流体測定装置30Aに接続されている。第2送信スイッチ装置115Aは高周波バースト信号の入力先を、流体測定装置30Aの流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10へのガスの流入状況に応じて、流体測定装置30Aの各流体測定手段2A1〜2F1に設けられたガス測定センサ11に順次切り替えながら入力するものである。第2送信スイッチ装置115Aはt0/6毎に高周波バースト信号の入力先を順次切り替える。
ADコンバータ(ADC)114は、アナログの出力信号をデジタル信号に変換する装置である。なお、第1送信スイッチ装置112の切り替えの時間差に応じて、各流体測定装置30A〜30Yからの出力信号がADコンバータ114に入ってくる。この結果、各流体測定装置30A〜30Yからの出力信号は分離されると共に異なる時刻に順次出力されているので、ADコンバータ114は1つだけでよいことになる。ADコンバータ114は検波装置116に接続されている。検波装置116は、ADコンバータ114でデジタル化された出力信号を、位相と強度のデータに変換する装置である。
検波装置116は加算装置117に接続されている。加算装置117は、検波装置116で演算された位相と強度のデータを加算する装置である。この加算装置117は、各流体測定装置30A〜30Yに対応して加算領域117A〜117Yを有しており、各加算領域117A〜117Yにおいて加算されたデータを一時保存する。
加算装置117は平均化装置118A〜118Yに接続されている。平均化装置118A〜118Yは、データを演算する機能を有しており、最初の流体測定装置30Aから最後の流体測定装置30Yへの高周波バースト信号の入力が、後述する制御装置121により設定される平均化回数繰り返して実行された場合、それらの各流体測定装置30A〜30Yからの出力信号を平均化するものである。1回だけの測定ではノイズの影響を除去することができず、データは複数回測定される。すなわち、流体測定装置30Yの測定データが記憶されると、再度、1個目の流体測定装置30Aから測定が開始される。ただし、2回目以降の測定を行う場合は、前回の弾性表面波の周回の影響がなくなってから行なわれる必要がある。そのため、例えば流体測定装置30Aについて2回目以降の測定を行うとすると、前回の高周波バースト信号の入力から1ms以上の時間を待って行われる。
平均化装置118A〜118Yは記憶装置119A〜119Yに接続されている。記憶装置119A〜119Yは、平均化装置118A〜118Yで平均化されたデータを、流体測定装置30A〜30Yのそれぞれに対応させて記憶するものである。なお、ここでは、各記憶装置19A〜19Nは、単一の記憶装置19の中で各々のデータをアドレスで切り分けて保存するとしてもよい。また、データを順次保存するとともに、外部のパーソナルコンピュータ(PC)等に送信できるような構成としてもよい。
インターフェイス(IF)120は、上述した各装置110〜119を有する計測ユニット104全体を制御している制御装置121とのデータの中継を可能とするものである。具体的には、インターフェイス120は、USBやEthernet(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、IEEE-1394、PHS、WCDMA、CDMA2000、IEEE-802.xx等の有線及び無線に関係なく命令やデータが転送できるようなものである。
制御装置121は、計測ユニット104全体を制御するコンピュータであり、高周波バースト信号の周波数制御や、バースト信号長の調整、第1送信スイッチ装置112の切り替え制御、受信スイッチ装置113A〜113Yの切り替え制御等を行ない、測定プログラムを実行して弾性波の応答測定を開始する。制御装置121はガス弁リング回転モータ制御ユニット103に接続されており、第2送信スイッチ装置115A〜115Yの切り替え制御も行う。また、制御装置121は、平均化回数を設定し、平均化装置118A〜118Yの演算を制御する。それから、制御装置121は、平均化装置118A〜118Yにより平均化された出力信号に基づいて、各流体測定装置30A〜30Yからの弾性表面波の応答特性を測定する。さらに、制御装置121は、独自でも動作可能であるが、他のコンピュータとの通信や、ガス濃度分布表示装置105の制御、入力装置106からのデータ入力の受付及び入力数値のエラー処理等を行なう。
入力装置106は、一般的なキーボードやマウス、専用の入力装置、上記タッチパネルディスプレイなどで構成され、計測ユニット104の各種設定値や、バースト信号の周波数、バースト長、平均化回数等の入力を可能にするものである。
次に本実施形態に係る空間流体分布可視化装置100の作用について図9A乃至図10を参照して説明する。以下、ステップS301〜S303、S318〜S322の操作については、25個の流体測定装置30A〜30Yについて同様である。そのため、ここでは1つの流体測定装置30Aについての操作について代表的に説明し、他の流体測定装置30B〜30Yについてはその説明を省略する。
まず、流体測定装置30Aにおいて、流体測定手段2A1〜2F1のいずれか1つ、例えば流体測定手段2A1のガス測定室10にガスが導入し、引き続きガス弁リング35及び36を回転しながら順次他の流体測定手段2B1〜2F1のガス測定室10に被測定ガスを導入する(ステップS301,S303)。すべての流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10へのガスの導入が完了したら、流体測定手段2A1から測定を開始するために第2送信スイッチ115を流体測定手段2A1に切り替える(前記したようにこれらの操作は流体測定装置30A〜30Yの全てについて平行して行うことができる。)(ステップS302−YES,S318)ここで、流体測定装置30Aの流体測定手段2A1のガス測定センサ11の感応膜にガスの作用が完了するまで待つ(ステップS319)。感応膜へのガスの作用が完了したら、図9Bに記載する測定ステップ(S304からS316)を行う。ガスの導入からガス測定センサ11の感応膜にガスが作用するまでに要する時間t4は、前述したようにガスの交換時間t1が0.1秒で感応膜へのガスの作用時間t2が2.0秒(直径が3.3mmの球状弾性表面波素子20を用いた場合)であるため、2.1秒ある。
ここで、図9Bに示したステップS304からS316は、前記したように30Aから30Yについて、ガスの導入と感応膜への作用が終了した時点で、測定を単一の計測ユニット104を用いて高速に且つ並行して行う動作を示している。最初の流体測定装置30Aへの信号の入力が1回目である場合、設定長バースト切り出し装置111を介して、入力用高周波バースト信号が生成される(ステップS304−YES,S305)。なお、設定長バースト切り出し装置111では、各流体測定装置30A〜30Yから出力される信号が時間分離されるように、弾性表面波がガス測定センサ11の弾性表面波周回路21を1周する周回時間よりも短くなるような高周波バースト信号が生成される。
次に、高周波バースト信号が、第1送信スイッチ装置112、受信スイッチ装置113A及び第2送信スイッチ装置115Aを介して、最初の流体測定装置30Aの流体測定手段2Aのガス測定センサ11に入力される。そして、最初の流体測定装置30Aに高周波バースト信号が入力されると、第1送信スイッチ装置112により、高周波信号の入力先が他の流体測定装置30B〜30Yに順次切り替えられる(ステップS306)。この際、第1送信スイッチ装置112により、最初の流体測定装置30Aからの出力信号が検出される検出時刻前に、高周波バート信号の入力先が他の流体測定装置30B〜30Yに順次切り替えられる。また、第2送信スイッチ装置115Aは流体測定装置30Aの流体測定手段2Aのガス測定センサ11に、第2送信スイッチ装置115Bは流体測定装置30Bの流体測定手段2Aのガス測定センサ11に、・・・、第2送信スイッチ装置115Yは流体測定装置30Yの流体測定手段2Aのガス測定センサ11に高周波バースト信号を入力するように切り替えられている。高周波バースト信号が入力されると、ガス測定センサ11の弾性表面波周回路21を弾性表面波が周回する。
そして、最初の検出時刻以後、最初の流体測定装置30Aから最後の流体測定装置30Yまでの出力信号が受信スイッチ装置113A〜113Yを介して順次検波される(ステップS307−YES)。ここでは、弾性表面波が100周したときの周回信号が測定対象とされているので、最初の流体測定装置30Aに高周波バースト信号を入力してから330μs(直径が3.3mmの球状弾性表面波素子20を用いた場合)以後に出力信号が順次検出される。
検波工程では、検出信号の回数を示すカウンタ値がカウントされた後(ステップS308)、AD(Analog to Digital)コンバータ114によりデジタル化された出力信号から、位相データと強度データとが検波装置116により求められる(ステップS309)。そして、カウンタ値に基づいて、加算装置117のデータ保管場所にデータが振り分けられる(ステップS310)。なお、カウンタ値が流体測定装置30A〜30Yの総数より多くなる場合には、その値がリセットされる(ステップS311−YES,S312)。これにより、カウンタ値と各流体測定装置30A〜30Yを対応付けることが可能となる。
この後、予め設定された平均化回数分の応答特性の測定が行われる(ステップS313−NO)。なお、前述したように弾性表面波の周回信号の影響がなくなるまでには1ms程度の時間を要するので、2回目以降の測定は、前回の測定から1ms以上経ってから行われる(ステップS314)。すなわち、最初の流体測定装置30Aに入力後、再度、流体測定装置30Aに入力する場合、制御装置121が、1ms以上経過しているかどうかを判断し、1ms以上経っていなければ(ステップS314−NO)、1ms以上待つ。また、制御装置121は、各流体測定装置30A〜30Yに高周波バースト信号を入力するタイミングがステップS307の検波タイミングと重ならないないかどうかを判断し、重なっていたら、重ならないように入力するタイミングをずらす(ステップS315)。その後、ステップS305に進む。
上述のステップS305〜S315までの処理が平均化回数実行されると、流体測定装置30A〜30Y毎の測定データの平均値が平均化装置118A〜118Yにより算出される(ステップS313−YES,S316)。算出された測定データの平均値は、各流体測定装置30A〜30Yに対応して設けられた記憶装置119A〜119Yに記憶される。
30Aから30Yの測定が完了したら、それぞれについてガス弁リング35及び36を回転して(ステップS321)、流体測定手段2B1の測定に移行する(ステップS317−NO)。
また、ガス測定センサ11の1台が必要な計測時間をt0とすると、例えば流体測定装置30Aにおいて、t0/6時間ごとにガスが導入される流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10が順次に切り替わる。このため、ガスの測定を行う流体測定手段2A1〜2F1のガス測定センサ11はt0/6時間ごとに順次切り替わることとなる。なお、t0は平均化回数を100回とすると2.2秒となる。
ここで、ガス測定を続けて行う場合は、第2送信スイッチ115を次回ガス計測を行う流体測定手段2A1〜2F1のいずれかに切り替える(ステップS322)。そして、定量的に正確な測定結果を得るため、次回ガス計測を行う流体測定手段2A1〜2F1のうちのいずれかのガス測定室10へガスが導入されてからガス測定センサ11の感応膜への作用が完了するために必要な時間t4を経過するまで待つ(ステップS319)。また、このステップS319は、ガスの測定を行うために必要な時間間隔t0を前回の測定から経過したかどうかによって判断できることも明らかである。
さらに、30A〜30Yの相対的な違いや変化を求めるだけであればt4あるいはt0時間の経過を必ずしも待つ必要がなく、本発明は特にそれを除外しない。
この後、上述のステップS319〜S322までの操作を測定が終了するまで実施する(ステップS317−NO)。
空間流体分布可視化装置100は、高周波バースト信号を最初の流体測定装置30Aに入力した場合、その最初の流体測定装置30Aからの出力信号を検出する検出時刻前に、高周波バースト信号の入力先を他の流体測定装置30B〜30Yに第1送信スイッチ装置112によって順次切り替え、最初の検出時刻以後、最初の流体測定装置30Aから最後の流体測定装置30Yまでの応答特性の出力信号を順次検出する。このため、空間流体分布可視化装置100によれば、単一の設定周波数発生装置110からの高周波信号が入力される複数の流体測定装置30A〜30Yの応答特性を測定する場合、一つの流体測定装置30の応答特性を測定してから他の流体測定装置30の応答特性を測定するものに比して、高速に測定する。
また、空間流体分布可視化装置100では例えば流体測定装置30Aにおいて、流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10にt0/6時間ごとに順次に被測定ガスを導入し、流体測定手段2A1〜2F1でt0/6時間ごとに順次に測定動作を行う。これは、流体測定装置30B〜30Yについても同様である。このため、流体測定装置30A〜30Yの計測時の時間分解能はt0/6となり、ガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間t0に制限されない。つまり、流体測定装置30A〜30Yでは複数の流体測定手段2A1〜2F1のガス測定室10でガスを導入する動作を連携して行い、導入したガスがガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、ガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されずに流体測定装置30A〜30Yの計測時の時間分解能を高めることができる。
したがって、空間流体分布可視化装置100では図11に示すように、流体測定装置30A〜30Yで計測した水素濃度が変化する様子をガス濃度分布表示装置105にt0/6ごとに更新して表示することができる。ここで、t0を2.2秒とするとおよそ0.37秒ごとに水素濃度が変化する様子を表示できる。
以上より、流体測定装置30A〜30Yを用いた空間流体分布可視化装置100では1秒より短い時間での応答が可能となる。このため、ガス濃度のムラを可視化することができる。例えば、図11では水素濃度のムラが図中の矢印で示す方向に流れることが観察でき、矢印と反対方向に水素発生源が存在することが分かる。
そこで、上記構成の空間流体分布可視化装置100においては以下の効果を奏する。すなわち、空間流体分布可視化装置100は、高周波バースト信号を最初の流体測定装置30Aに入力した場合、その最初の流体測定装置30Aからの出力信号を検出する検出時刻前に、高周波バースト信号の入力先を他の流体測定装置30B〜30Yに第1送信スイッチ装置112によって順次切り替え、最初の検出時刻以後、最初の流体測定装置30Aから最後の流体測定装置30Yまでの応答特性の出力信号を順次検出する。これにより、空間流体分布可視化装置100によれば、単一の設定周波数発生装置110からの高周波信号が入力される複数の流体測定装置30A〜30Yの応答特性を測定する場合、一つの流体測定装置30の応答特性を測定してから他の流体測定装置30の応答特性を測定するものに比して、高速に測定することができる。
また、流体測定装置30A〜30Yでは複数の流体測定手段2A〜2Fのガス測定室10でガスを導入する動作を連携して行い、導入したガスがガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、ガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されずに流体測定装置30A〜30Yの計測時の時間分解能を高めることができる。これにより、空間流体分布可視化装置100では1秒より短い時間での応答が可能となり、ガスの流れを可視化することができる。
なお、ガス濃度分布表示装置105の表示画面130では流体測定装置30A〜30Yの測定結果を色の濃淡のみで表示しているが、色の種類も併せて変化させて表示することで、ある特定の流体の濃度だけでなく、流体の種類も計測することができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施の形態の空間流体分布可視化装置200について図12乃至図16を参照して説明する。なお、第5の実施形態(図7乃至図11参照)と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12は本実施形態に係る空間流体分布可視化装置200の構成を示した図である。空間流体分布可視化装置200は、流体測定装置ユニット200Aと、ガス濃度分布表示ユニット(表示ユニット)203とを有する。流体測定装置ユニット200Aは、直線状の棒状の支持体202と、複数の流体測定装置201A〜201Nとを有する。複数の流体測定装置201A〜201Nは、直線状の棒状の支持体202上に所定の間隔(本実施形態では所定の等間隔)に支持されている。支持体202の基端部はガス濃度分布表示ユニット203の外装ハウジングの所定の位置に固定されている。
ガス濃度分布表示ユニット203の外装ハウジングには位置情報測定部204が固定されている。ガス濃度分布表示ユニット203は、外装ハウジングの外表面に露出した表示装置205を含んでいる。
位置情報測定部204は、図示しない公知の加速度センサ及び角速度センサの少なくともいずれか一方を備えており、本実施形態では図示しない公知の加速度センサ及び角速度センサの両方を備えている。加速度センサ及び角速度センサのそれぞれは少なくともX軸とY軸方向の2方向に作用可能であり、好ましくはさらにZ軸方向を加えた3方向に作用可能である。
流体測定装置ユニット200Aの構成について図13〜図15を参照して説明する。図13は支持体202の一部の拡大図で、複数の流体測定装置201A〜201Nのいずれか、例えば流体測定装置201Bの周辺部分の構造を示した図である。図14は、流体測定装置201Bの内部構造を示した図である。
流体測定装置201Bには複数(本実施形態では8つ)の流体測定手段2A3〜2H3を有する流体測定器201B1が設けられている。8つの流体測定手段2A3〜2H3は流体測定器201B1内に同心円上に設けられている。ここで、各流体測定手段2A3〜2H3は同一構成になっている。そこで、ここでは1つの流体測定手段2A3の構成のみを代表して説明し、他の流体測定手段2B3〜2H3については、同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
流体測定器201B1は、円筒状のガス導入筒部216と、流体測定器本体210と、回転吸気管213とを有する。流体測定器本体210は、センサ保持手段210aと、金属製のメッシュフィルター部212と、ガス弁リング211とを有する。センサ保持手段210aには8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10が同心円上に設けられている。流体測定手段2A3のガス測定室10内には被検体であるガスを測定するためのガス測定センサ11が配設されている。
センサ保持手段210aの内周面側には、各流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10と対応する位置に流出口221aがそれぞれ形成されている。さらに、センサ保持手段210aの底面には、各流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10と対応する位置に流入口221bがそれぞれ形成されている。
ガス導入筒部216は、図13中で、流体測定器本体210の下側に配置されている。ガス導入筒部216の外周面には複数の複数のガス吸引孔217が設けられている。ガス導入筒部216と流体測定器本体210との間にはメッシュフィルター部212と、ガス弁リング211とが配設されている。ガス弁リング211は、図15に示すように回転吸気管213に固定されている。そして、このガス弁リング211と回転吸気管213とが一体に回転するようになっている。
ガス弁リング211には、8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流入口221bと連通するガス供給口211aが形成されている。メッシュフィルター部212はこのガス供給口211aを覆う状態でガス弁リング211に固定されている。なお、メッシュフィルター部212は、必ずしもガス弁リング211に固定する必要はなく、流体測定器本体210に固定されていてもよい。
回転吸気管213には、図14に示すように8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流出口221aと連通可能な1つのガス吸入口214を有する。回転吸気管213には、図示しない吸気装置が連結されている。
そして、図示しない吸気装置からの吸引力によって被検体であるガスは図13のガス導入筒部216の複数のガス吸引孔217からガス導入筒部216の内部に吸引される。このとき、ガス弁リング211と回転吸気管213とが一体に回転する。そして、ガス導入筒部216の内部のガスは、ガス弁リング211のガス供給口211aと連通する8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流入口221bからそのガス測定室10の内部に吸引される。このとき、同時に回転吸気管213のガス吸入口214が図14に示すように8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流出口221aと連通される。これにより、ガス弁リング211と回転吸気管213との一体回転によって、ガス弁リング211のガス供給口211aと8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流入口221bとの連通状態と、回転吸気管213のガス吸入口214と8つの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10のいずれか1つの流出口221aとの連通状態とが順次、切り替えられるようになっている。これにより、流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10への被測定流体の流入状態を切り替える切り替え手段222が構成されている。
回転吸気管213の外周面はガス漏れ防止用グリス215が塗布されている。このガス漏れ防止用グリス215によって、ガス測定センサ11でのガス測定時に流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10からのガス漏れを防止している。また、支持体202の内部には吸気管支持板216aが設けられており、回転吸気管213を支持している。
次に、本実施形態に係る空間流体分布可視化装置200の作用について図16を参照して説明する。空間流体分布可視化装置200を、図16中の左側に示す如く、上記所望の空間におけるガス計測開始位置(初期位置)に保持し、流体測定装置201A〜201Nを使用して、上記所望の空間における複数の流体測定装置201A〜201Nが配置されている複数の位置のガスの濃度を測定する。
ガス濃度分布表示ユニット203は流体測定装置201A〜201Nの測定値と、ガス濃度の測定を終了した時点で位置情報測定部204により測定された流体測定装置201A〜201Nの位置情報(図16中の左側に示す初期位置)とが入力され、これらガス濃度の測定値と流体測定装置201A〜201Nの位置情報とを基に、図16中の左側に示す初期位置での2次元における所定のガス濃度の直線状の分布D1を表示装置205に表示する。
次に図16中の左側に示す初期位置から空間流体分布可視化装置200を図16中の右側に示す終了位置まで水平に直線状に移動させる。ここで、上記移動中に流体測定装置201A〜201Nが上記初期位置と上記終了位置の他に上記初期位置と上記終了位置の間に等間隔で4箇所測定を行うこととする。ガス濃度分布表示ユニット203は4箇所で測定する度にその位置での流体測定装置201A〜201Nにより測定された直線状のガスの濃度の分布を、例えば図16の左側の初期位置のガス濃度分布表示ユニット203の表示装置205上に参照符号D1で示されている如く、また図16の右側の終了位置のガス濃度分布表示ユニット203の表示装置205上に参照符号D6で示されている如く、表示装置205上に表示できる。
ガス濃度分布表示ユニット203は、さらに、上記初期位置から上記終了位置に至るまでに複数の位置で流体測定装置201A〜201Nが測定した直線状のガスの濃度分布D1,…D6を基礎に、支持体202が移動した図16中の左側に示す初期位置から図16中の右側に示す終了位置までの四角形状の水平な空間領域において2点鎖線の縞模様で図示されているガス濃度の実際の概略的な分布に対応して、図16中の右側の終了位置の空間流体分布可視化装置200のガス濃度分布表示ユニット203の表示装置205の四角形状の領域に実線の縞模様で図示されている如く表示することができる。
なおガス濃度分布表示ユニット203は、上記初期位置を基準とした上記移動中の流体測定装置201A〜201Nの位置を位置情報測定部204により知ることができる。
本実施形態に係る空間流体分布可視化装置200においても第1の実施形態と同様に高周波バースト信号を最初の流体測定装置201Aに入力した場合、その最初の流体測定装置201Aからの出力信号を検出する検出時刻前に、高周波バースト信号の入力先を他の流体測定装置201B〜201Nに第1送信スイッチ装置112によって順次切り替え、最初の検出時刻以後、最初の流体測定装置201Aから最後の流体測定装置201Nまでの応答特性の出力信号を順次検出する。
また、例えば流体測定装置201Aの流体測定手段2A3〜2H3のガス測定センサ11の1台が必要な計測時間をt0とすると、ガス弁リング211の流入口と回転吸気管213のガス吸入口214によってガスの交換が行われる流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10はt0/8時間ごとに順次に切り替わる。このため、流体測定装置201Aでは流体測定手段2A3〜2H3でt0/8時間ごとに順次にガスの測定動作が行われる。これは流体測定装置201B〜201Nについても同様である。したがって、流体測定装置201A〜201Nの計測時の時間分解能はt0/8時間となる。
したがって、上述したようにt0を2.2秒とすると、およそ0.28秒ごとに流体測定装置201A〜201Nによりガスの測定を行うことができる。このため、支持体202が移動した図16中の左側に示す初期位置から図16中の右側に示す終了位置までの四角形状の水平な空間領域において、より多くの計測位置でガスの濃度を計測することができる。1秒より短い時間分解能でガスの計測を行うことが可能であることにより、ガス濃度のムラを可視化することができる。
そこで、上記構成の空間流体分布可視化装置200においては以下の効果を奏する。すなわち、空間流体分布可視化装置200は、高周波バースト信号を最初の流体測定装置201Aに入力した場合、その最初の流体測定装置201Aからの出力信号を検出する検出時刻前に、高周波バースト信号の入力先を他の流体測定装置201B〜201Nに第1送信スイッチ装置112によって順次切り替え、最初の検出時刻以後、最初の流体測定装置201Aから最後の流体測定装置201Nまでの応答特性の出力信号を順次検出する。これにより、空間流体分布可視化装置200によれば、単一の設定周波数発生装置110からの高周波信号が入力される複数の流体測定装置201A〜201Nの応答特性を測定する場合、一つの流体測定装置201の応答特性を測定してから他の流体測定装置201の応答特性を測定するものに比して、高速に測定することができる。
また、速流体測定装置201A〜201Yでは複数の流体測定手段2A3〜2H3のガス測定室10でガスを導入する動作を連携して行い、導入したガスがガス測定センサ11の感応膜に作用する時間を並行して待つため、ガス測定センサ11の1台あたりに必要な測定時間に制限されずに流体測定装置201A〜201Nの計測時の時間分解を高めることができる。これにより、空間流体分布可視化装置200では1秒より短い時間での応答が可能となり、ガスの流れを可視化することができる。
なお、本発明において流体測定手段とは、その内部に導入した流体(ガスあるいは液体)の測定を行うものであって、流体測定手段自体が、薬液やエネルギーの照射による改質工程、濃縮機能を有し、これらの工程、機能を計測の動作過程に含むことを除外するものではない。
また、吸着物や反応物の離脱や解離を行う感応膜の初期化機能を流体測定手段の計測の動作過程に含むことを除外するものではない。一般に、ガス計測や生理物質の計測では対象分子の量は少なく、流体測定手段の感度を高くする必要がある。感応膜を使用する場合には、ガス測定室10内のガス濃度の平衡状態に対応して変化する感応膜へのガスの付着状況を計測するタイプの流体測定手段もあるが、このタイプの流体測定手段では感度の高い感応膜を用いた場合、感応膜に一度吸着したガスは離脱しにくい。流体測定手段において不可逆タイプの感応膜を使用したうえで、感応膜を初期化する工程も行うことにより、感度の高い流体測定手段を実現することができる。
また、本発明のガス測定センサ11は必ずしも感応膜を有する必要はない。感応膜の代わりに、例えば表面の分子構造の違いによりガスの吸着状態が変化することを利用してもよく、ガスの密度計測のように、感応膜を使用せず弾性表面波の伝搬速度の変化(位相の変化)や減衰率の変化(周回に伴う強度の変化)によって計測を行ってもよい。
さらに、感応膜は必ずしも特定のガスのみに反応するものである必要はない。現在、多くのガス測定センサでは、構造的あるいは物理的特性の違いに対して互いに反応特性の異なる複数の感応膜にガスを平行して反応させ、それぞれの感応膜での反応量を総合的に解析して対象とするガスの特定あるいは識別をする方法を採用している。つまり、ガス測定室10内のガス有無、濃度、そして種類によってガス測定センサ11の出力が変化する工程が、感応膜によって補助され、これにより、ガスの識別及び検出をすることができればよい。
したがって、本発明において、各流体測定手段のガス測定センサ11は単一のセンサである必要はない。前述したように、反応特性の異なる複数の感応膜を感知部に有し、それぞれの応答を分析して計測結果を導くセンサであってもよい。また、各流体測定手段は、ガスに対して反応するセンサ以外に温度計や圧力計を有していてもよく、これらの測定結果を表示する構成にしてもよい。あるいは、各流体測定手段は、流体の測定を行う各流体測定手段を順次切り替える動作時の切り替え速度を制御する手段を有していてもよい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
1,25,30,48,201…流体測定装置、 2A〜2E,2A´〜2E´,2A1〜2F1,2A2〜2H2,2A3〜2H3…流体測定手段、 3,29,48A,201B1…流体測定器、 10…ガス測定室、 11…ガス測定センサ、 12,13…ガス弁、 14…ガス弁制御装置、 16…中央制御装置、 17…球状弾性表面波制御回路、 23…小型ポンプ、 24…ポンプ制御装置、 28,57,222…切り替え手段、 29a,210…流体測定器本体、 31,210a…センサ保持手段、 35,36,211…ガス弁リング、 37…流入口、 38…流出口、 44…ガス弁リングシャフト、 45…ガス弁リング回転モータ、 50…回転ガス供給筒、 50a…ガス供給口、 100,200…空間流体分布可視化装置、 211a…ガス供給口、 213…回転吸気管、 214…ガス吸入口。