JP5421131B2 - 共重合ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、常圧下でカチオン染料に可染性である常圧カチオン可染性ポリエステル組成物の製造方法に関する。さらに詳細には、直接エステル化反応法により、製造コストを抑え、且つ共重合ポリエステルの色相が大幅に改善された常圧カチオン可染性を有する共重合ポリエステル組成物の製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維は、その化学的特性から分散染料、アゾイック染料でしか染色できないため、鮮明且つ深みのある色相が得られにくいという欠点があった。かかる欠点を解消する方法として、ポリエステルにスルホイソフタル酸の金属塩を2〜3モル%共重合する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
しかしながら、かかる方法によって得られるポリエステル繊維は、高温・高圧下でしか染色することができず、天然繊維やウレタン繊維などと交編、交織した後に染色すると、天然繊維、ウレタン繊維が脆化するという問題があった。これを常圧、100℃付近の温度で十分に染色しようとすれば、スルホイソフタル酸の金属塩を多量にポリエステルに対して共重合されることが必要となるが、この場合、スルホネート基による増粘効果から、ポリエステルの重合度を高くすることができず、溶融紡糸にて得られるポリエステル繊維の強度が著しく低下し、さらに紡糸操業性が著しく悪化するという問題があった。
一方、このような問題を解決するため、イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染性モノマーを共重合する技術が開示されている(例えば、特許文献3〜4参照。)。イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染性モノマーとしては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホネートなどが例示されているが、これらのカチオン可染性モノマー共重合ポリエステルは熱安定性が悪く、常圧カチオン可染化させるため、共重合量を増加させようとしても、重合反応途中で熱分解が進行し、高分子量化させることが困難であった。さらに溶融紡糸する際の熱履歴による分解が大きく、結果として得られる糸の強度が弱くなるという欠点を有していた。また、使用する5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホネートは非常に高価であり、結果として得られるカチオン可染性ポリエステルのコストが大幅に増大するという問題があった。
かかる問題を解決する方法として、耐光性の低下が少なく、且つ常圧可染性を出す方法としてアジピン酸、セバシン酸のような直鎖炭化水素のジカルボン酸、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分、また、平均分子量が400〜1000のポリアルキレングリコールをスルホイソフタル酸の金属塩と共重合する方法が提案されている(例えば、特許文献5〜6参照。)。
これらの方法は、共重合成分によりポリエステルのガラス転移温度を低下させることにより、100℃以下の温度におけるポリエステル中への染料の拡散速度を上げることで、常圧でのカチオン可染を可能にしている。しかしながら、いずれの方法でも得られたポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の強度が低くなり、強いては得られる布帛の引き裂き強度が低下する、ガラス転移温度が低くなるために熱セット性が悪化し、仮撚捲縮加工性が悪く風合いが硬くなる、更には染色堅牢度が低いなどの問題があった。
かかる問題を解決する方法として、スルホイソフタル酸の金属塩に加え、分子量が2000以上のポリエチレングリコールを共重合する方法、アジピン酸、セバシン酸などの直鎖炭化水素のジカルボン酸を共重合する方法、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分を共重合する方法が提案されている(例えば、特許文献5〜6参照。)。
しかしながら、これらいずれの方法でも得られたポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の強度が低くなり、強いては得られる布帛の引き裂き強度が低下する、更には染色堅牢度が低いなどの問題があった。
また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエステルを鞘部に、95モル%以上がエチレンテレフタレートの繰返し単位からなるポリエステルを芯部に配した複合繊維が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしながら、鞘部を構成する共重合ポリエステル中のスルホイソフタル酸成分の共重合量には、前述と同様の理由で限界があり、十分な染着性を得ることが困難であること、並びに複合繊維とすることで紡糸工程での加工コストが増加、又は繊維断面形状などに制約が生じるなどの課題があった。
上記の背景に鑑み、本発明者らは、スルホイソフタル酸ナトリウムとスルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩とを共重合することにより、高重合度で且つ常圧でのカチオン可染が可能なポリエステル組成物を提案した(例えば、特許文献8〜10参照)。
本方法は、ジメチルテレフタル酸を原料とするエステル交換反応法には最適に用いられる。しかし、近年、ポリエステル繊維製品に対するコスト低減の要求が強まっており、より経済性の高い直接エステル化法で製造する方法の確立が嘱望されている。また、エステル交換反応法で製造した場合、エステル交換反応用の触媒を使用する必要があり、ポリエステルの色相の悪化や、耐熱性の低下などの課題があり、これらに対する市場要求も厳しくなってきている。
特公昭34−010497号公報 特開昭62−089725号公報 特開平01−162822号公報 特開2006−176628号公報 特開2002−284863号公報 特開2006−200064号公報 特開平07−126920号公報 特開2009−144294号公報 特開2009−161693号公報 特開2009−161694号公報
本発明の目的は、経済性の高い直接エステル化反応法を用いて、常圧下でのカチオン染色が可能で、色相が良好で、且つ高重合度の常圧カチオン可染性ポリエステル組成物の製造方法を提供するものである。
上記の課題に鑑み本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成される共重合ポリエステル組成物の製造方法に関し、該ポリエステルはテレフタル酸(A)およびエチレングリコールをエステル化反応させ次いで重縮合反応をさせて製造され、スルホイソフタル酸の金属塩のビスヒドロキシアルキルエステルである5−ナトリウムスルホイソフタル酸のジヒドロキシエチルエステル(B)、及び下記化学式(I)で表される化合物(C)
Figure 0005421131
[上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10個のヒドロキシル基を有するアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩を表す。]
が前記ポリエステルに共重合されたポリエステルであり、下記(1)〜(6)を同時に満足することを特徴とする共重合ポリエステル組成物の製造方法である。
(1)テレフタル酸(PTA)とエチレングリコール(EG)を、EG/PTAモル比=1.0〜1.5となる比率でスラリー化させること
(2)化合物(B)と化合物(C)が下記式(い)及び(ろ)を同時に満足するように配合すること
3.0≦b+c≦5.0 ・・・(い)
0.2≦c/(b+c)≦0.7 ・・・(ろ)
[上記数式中、bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする化合物(B)の共重合量(モル%)、cは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記化学式(I)で表される化合物(C)の共重合量(モル%)を表す。]
(3)化合物(B)をエステル化反応終了後に添加すること
(4)化合物(C)をエステル化反応終了後に添加すること
(5)共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対し、50〜300mmol%のナトリウム化合物を、エステル化反応終了後に添加すること
(6)共重合ポリエステルに対し、フェノール系化合物(Y)及び/又はチオエーテル系化合物(Z)を下記式(は)及び(に)を同時に満足するように配合すること。
0.2≦y+z≦4.0 ・・・(は)
0.3≦y/(y+z)≦1.0 ・・・(に)
[上記式中、yは共重合ポリエステル重量を基準とするフェノール系化合物(Y)の配合量(重量%)、zは共重合ポリエステル重量を基準とするチオエーテル系化合物(Z)の配合量(重量%)を表す。]
本発明によれば、常圧下でのカチオン染料を用いた染色操作による染着性が良好で、且つポリエステル組成物の色相が良好で、繊維強度の高いポリエステル繊維を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
(共重合ポリエステルについて)
本発明における共重合ポリエステルとはエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであり、主たる繰り返し単位とは共重合ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分あたり80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを指している。好ましくは90モル%以上が、より好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることである。共重合ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分あたり他の20モル%以下の範囲内で他の成分が共重合されていても良い。その他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸を挙げる事ができ、グリコール成分として1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビス(トリメチレングリコール)、ビス(テトラメチレングリコール)、トリエチレングリコール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノールを挙げる事ができ、これらの1種以上のジカルボン酸と1種以上のグリコール成分を反応させて得られる成分を繰り返し単位として共重合されていても良い。
(化合物(B)について)
本発明で使用されるスルホイソフタル酸の金属塩若しくはスルホイソフタル酸の金属塩のビスヒドロキシアルキルエステル(B)(以下スルホイソフタル酸の金属塩等と称する。)としては、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)や、スルホイソフタル酸の金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)の炭素数1〜6のビスヒドロキシアルキルエステルが例示される。ビスヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基を挙げることができる。
これらに該当するスルホイソフタル酸の金属塩の炭素数1〜6のビスヒドロキシアルキルエステルの具体例としてはスルホイソフタル酸のリチウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸のリチウム塩のビスヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸のリチウム塩のビスヒドロキシブチルエステル、スルホイソフタル酸のリチウム塩のビスヒドロキシペンチルエステル、スルホイソフタル酸のリチウム塩のビスヒドロキシヘキシルエステル、スルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシブチルエステル、スルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシペンチルエステル、スルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシヘキシルエステル、スルホイソフタル酸のカリウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸のカリウム塩のビスヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸のカリウム塩のビスヒドロキシブチルエステル、スルホイソフタル酸のカリウム塩のビスヒドロキシペンチルエステル、スルホイソフタル酸のカリウム塩のビスヒドロキシヘキシルエステル、スルホイソフタル酸のルビジウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸のルビジウム塩のビスヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸のルビジウム塩のビスヒドロキシブチルエステル、スルホイソフタル酸のルビジウム塩のビスヒドロキシペンチルエステル、スルホイソフタル酸のルビジウム塩のビスヒドロキシヘキシルエステル、スルホイソフタル酸のセシウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸のセシウム塩のビスヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸のセシウム塩のビスヒドロキシブチルエステル、スルホイソフタル酸のセシウム塩のビスヒドロキシペンチルエステル、スルホイソフタル酸のセシウム塩のビスヒドロキシヘキシルエステルを挙げる事ができる。これらの中でもスルホイソフタル酸のナトリウム塩のビスヒドロキシエチルエステルが好ましい。
必要に応じてこれら化合物のマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩を併用しても良い。これらの化合物群の中では、熱安定性、コストなどの面から、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩又は5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩のビスヒドロキシエチルエステルが好ましく例示され、特に5−ナトリウムスルホイソフタル酸又は5−ナトリウムスルホイソフタル酸のビスヒドロキシエチルエステルが特に好ましく用いられる。
本発明においては、直接エステル化法を用いてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応物を重縮合する方法により製造される。この際に、スルホイソフタル酸の金属塩等をジカルボン酸及び/又はビスヒドロキシエチルエステルとしてエステル化反応終了後に添加する必要がある。例えばテレフタル酸ジメチルを出発原料とするエステル交換反応法で好ましく用いられるジカルボン酸ジメチルを、本発明の直接エステル化法に適用すると、重縮合反応性が著しく低下し、所望の重合度の共重合ポリエステルを得る事ができない。本発明においては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸のジエチレングリコールエステルが特に好ましく例示される。これらの条件を満たす化合物である場合に、ポリエステル繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。なお化合物(B)としてスルホイソフタル酸金属塩のジメチルエステルなどのビスアルキルエステル化合物を用いた場合には、エステル化反応生成物との反応性が好ましくなく、本発明に用いるには好ましくない。
(化合物(C)について)
また、下記式(I)で表される化合物(C)としては、5−スルホイソフタル酸又はその低級アルキルエステルの4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩である。
Figure 0005421131
[上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10個のヒドロキシル基を有するアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩を表す。]
4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩としては、リン元素又は窒素元素にアルキル基、ベンジル基又はフェニル基が結合した4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級ホスホニウム塩であることが好ましい。また、4つある置換基は同一であっても異なっていても良い。さらにRは水素原子、メチル基、エチル基、プロプル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロプル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基等を好ましく挙げることができる。
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸エチルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、あるいはこれらイソフタル酸誘導体のビスヒドロキシエチルエステル、ビスヒドロキシプロプルエステル、ビスヒドロキシブチルエステル、ビスヒドロキシへキシルエステル、ビスヒドロキシオクチルエステル、ビスヒドロキシデシルエステルが好ましく例示される。
これらのイソフタル酸誘導体の中でも、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩のビスヒドロキシエチルエステル、5−スルホイソフタル酸テトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩がより好ましく例示される。さらに本発明においては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩のビスヒドロキシエチルエステルが特に好ましく用いられる。
これらの条件を満たす化合物である場合に、ポリエステル繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。
(EG/PTAモル比について)
本発明において、テレフタル酸(PTA)とエチレングリコール(EG)を主な原料としてポリエステルを製造するに際し、テレフタル酸とエチレングリコールを、EG/PTAモル比が1.0〜1.5の範囲となるように調整し、スラリー化することが必要である。モル比が1.0未満では、EG/PTAスラリーの粘度が上昇し、ハンドリング性が著しく低下すること、及びエステル化反応速度が著しく低下するため好ましくない。1.5よりも大きい場合、副反応として生成するジエチレングリコール含有量が増加するため好ましくない。EG/PTAモル比は1.1〜1.3の範囲が特に好ましい。
(数式(い)について)
本発明において、ポリエステルに共重合させる上記のスルホイソフタル酸の金属塩等(B)と上記の化合物(C)の量の合計は共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準として、(B)成分と(C)成分の和b+cが3.0〜5.0モル%の範囲である必要がある。3.0モル%より少ないと、常圧下でのカチオン染色では十分な染着を得ることができない。一方、5.0モル%より多くなると、得られるポリエステル糸の強度が低下するため実用に適さない。さらに染料を過剰に消費するため、コスト面でも不利である。このb+cの値は好ましくは3.2〜4.8モル%であり、より好ましくは3.3〜4.7モル%である。
(数式(ろ)について)
また、スルホイソフタル酸の金属塩(B)と化合物(C)の成分比は上記のモル%の値にて、c/(b+c)が0.2〜0.7の範囲にある必要がある。0.2未満、つまり化合物(B)の割合が多い状態では、スルホイソフタル酸金属塩による増粘効果により、得られる共重合ポリエステルの重合度を上げることが困難になる。一方、0.7を超えるとき、つまり化合物(C)の割合が多い状態では、共重合ポリエステル製造工程における重縮合反応が遅くなり、さらに化合物(C)の比率が多くなると熱分解反応が進むため重合度を上げることが困難となる。さらに、化合物(C)の比率が多くなると共重合ポリエステルの熱安定性が悪化し、溶融紡糸段階で再溶融した際の熱分解反応による分子量の低下が大きくなるため、得られるポリエステル糸の強度が低下するため、好ましくない。このc/(b+c)の値は好ましくは0.23〜0.65であり、より好ましくは0.25〜0.60である。
スルホイソフタル酸の金属塩等(B)をポリエステルに共重合することによりカチオン可染性は付与する事ができるが、スルホン酸金属塩基間のイオン結合に由来すると思われる共重合ポリエステルの溶融粘度の増粘効果のため共重合ポリエステルを高重合度化することが困難であった。そのため十分に高い重合度、高い固有粘度を有する共重合ポリエステルが得られず、その高い固有粘度でない共重合ポリエステルから得られるポリエステル繊維は、繊維強度が著しく低下する問題があった。一方その問題を解消するためにスルホイソフタル酸のテトラアルキルアンモニウム塩又はスルホイソフタル酸のテトラアルキルホスホニウム塩、即ち化合物(C)をポリエステルに共重合することが開示されているが、当該化合物は重合反応中に熱分解を起こしやすいため、共重合量を上げようとすると熱分解反応が進みやすい問題があり、繊維強度を高い値にすることが依然として困難であった。本発明の共重合ポリエステルにおいては、これらのスルホイソフタル酸の金属塩(B)と化合物(C)を併用し、双方の化合物の共重合量、共重合比率、共重合ポリエステルのガラス転移温度及び固有粘度を特定の範囲に設定することによって、充分なカチオン染料による染色性と高い繊維強度を両立させる事を見出し本発明に至ったものである。
(ナトリウム化合物)
本発明において、共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対し、50〜300mmol%のナトリウム化合物をエステル化反応の終了後に反応槽に添加し、ナトリウム化合物の存在下で重縮合反応を行って製造することが好ましい。ナトリウム化合物としては、ナトリウム金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
これらのナトリウム化合物のうち、例えば水酸化物のようにアルカリ性の強いナトリウム化合物を用いる場合、エチレングリコールなどのジオール若しくはアルコールなどの有機溶媒に溶解しにくい傾向がある。そのため水溶液で重合反応系に添加しなければならず、突沸など重合工程上問題となる場合がある。
さらに、水酸化物などのアルカリ性の強いナトリウム化合物を用いる場合、重合時に共重合ポリエステルが加水分解等の副反応を受けやすくなり、耐加水分解性が低下する傾向がある。また、重合時の共重合ポリエステルが着色しやすくなる傾向がある。このような点から、本発明における好適なナトリウム化合物は、ナトリウム金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物及び酸化物である。これらの中でも、取扱いの容易さ、入手しやすさの面から、ナトリウム金属の飽和脂肪族カルボン酸塩が好ましく、特に好ましくは酢酸塩である。すなわち酢酸ナトリウムを用いることが好ましい。
該ナトリウム化合物の添加量が50mmol%未満では、スルホン酸基の存在により、主に重縮合反応前半で発生するジエチレングリコールの含有量が増加する。一方、300mmol%を超えると添加したナトリウム成分が析出して異物となり、溶融紡糸工程での製糸性が悪化すると共に、ポリエステルの耐熱性が低下するため好ましくない。ナトリウム化合物の量は100〜200mmol%の範囲が特に好ましい。この範囲でナトリウム化合物を使用することによって化合物(B)、化合物(C)が重縮合反応槽に存在していても後述するように共重合ポリエステルに含有若しくは共重合されるジエチレングリコールの量を一定数値範囲以下にすることができる。
(フェノール系化合物について)
本発明で使用されるフェノール系化合物(Y)は、下記一般式(II)で表される単位構造を分子内に1個以上有するものが挙げられ、更に好ましくは下記一般式(II)で表される単位構造を分子内に2個以上有するものが挙げられ、一次酸化防止剤として有効な化合物である。中でも下記一般式(II)で表される単位構造を分子内に1個又は2個有する化合物が好ましい。
Figure 0005421131
[上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
は炭素数1〜5個のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基などを挙げることができ、これらの中でもメチル基、t−ブチル基が好ましい。
としてこのような単位構造(官能基)を有するフェノール系化合物として具体的には2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(商品名:スミライザーBHT等)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:アデカスタブAO−50、Irganox1076等)等のモノフェノール系化合物、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーWX、スミライザーWXR等)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーBBM等)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:アデカスタブAO−80、スミライザーGA−80等)等のビスフェノール系化合物、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30等)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:アデカスタブAO−330、Ionox330等)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン{別名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]}(商品名:Irganox1010等)、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエスエル(商品名:Antioxidant Hoechst TMOZ等)、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(商品名:アデカスタブAO−20)等の高分子型フェノール系化合物を挙げることができる。これらの中でもIrganox1010(商品名)等が好ましい。
(チオエーテル系酸化防止剤について)
本発明で使用されるチオエーテル系化合物(Z)は、下記一般式(III)で表される単位構造を分子内に1個以上含有するものが挙げられ、二次酸化防止剤として有効な化合物である。中でも下記一般式(III)で表される単位構造を分子内に1個又は2個有する化合物が好ましい。
Figure 0005421131
このような単位構造(官能基)を含むチオエーテル系化合物として具体的にはジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPL、ノクライザー400等)、ジミリスチル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPM、ラスミットMG等)、ジステアリル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPS、ラスミットSG等)、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン(商品名:アデカスタブAO−412S)等を挙げることができる。これらの中でもアデカスタブAO−412S(商品名)等が好ましい。
(数式(は)及び(に)について)
本発明により共重合ポリエステルは、前述の化合物(C)の耐熱性が低く、高温下での熱分解の影響により、溶融重合段階の後半で重合度が上がりにくくなる現象が発生する。そのため、所望の重合度のポリエステルを得るためには、反応時間を長くする、若しくは重縮合反応触媒を多量に添加する必要があるが、反応時間が長くなると、ポリエステルを長時間高温化で保持する事となりポリマーの色相が悪化すると共に、生産性が低下するなどの問題が発生する。また重縮合反応触媒の添加量を上げると、得られるポリエステルの色相が悪くなる上、ポリエステルの耐熱性が低下するために溶融紡糸時に再溶融する際の熱分解が大きくなるなどの問題が発生する。
これらの問題に対し、共重合ポリエステルに対し、フェノール系化合物(Y)及びチオエーテル系化合物(Z)を添加することにより、重合反応後半での分解を抑制し、それに伴い重合反応時間の短縮、並びに分解生成物による共重合ポリエステルの着色を抑制することができる。
フェノール系化合物(Y)及びチオエーテル系化合物(Z)の添加量は、共重合ポリエステルの重量を基準とし、y+zが0.2〜4.0重量%の範囲である必要がある。y+zが0.2重量%未満の場合は、反応時間の短縮及び着色抑制効果が十分でなく、4.0重量%を超える場合は、添加する化合物自身の熱劣化などの影響で、得られるポリエステルの色相が悪化するため好ましくない。
さらに、y/(y+z)が0.3〜1.0の範囲である必要がある。0.3以下の場合、チオエーテル系化合物自身の熱劣化などの影響で、得られるポリマーの色相が悪化するため好ましくない。
(DEG含有量について)
本発明における常圧カチオン可染性を有する共重合ポリエステル組成物に含有されるジエチレングリコールは、2.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは2.2重量%以下、更により好ましくは1.50〜2.2重量%である。一般にカチオン可染性ポリエステルを製造する際には、共重合ポリエステルの製造工程において副生するジエチレングリコール(DEG)量を抑制するために、DEG抑制剤として少量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、水酸化テトラアルキルホスホニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミンなどの少なくとも1種類を、使用するカチオン可染性モノマー(本発明の場合はスルホイソフタル酸の金属塩等(B)及び化合物(C)の全モル量)に対して、1〜20モル%程度を添加すること、又は上述のようにナトリウム化合物を添加することが好ましい。
(固有粘度について)
本発明の共重合ポリエステル組成物を構成する共重合ポリエステルの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は0.55〜1.00dL/gの範囲であることが好ましい。固有粘度が0.55dL/g未満である場合、得られるポリエステル繊維の強度が不足し、一方、1.00dL/gを超える場合、溶融粘度が高くなりすぎて溶融成型が困難になるため好ましくなく、また、溶融重合法に引続いて固相重合法により共重合ポリエステル組成物の重縮合工程での生産コストが大幅に増大するため好ましくない。常圧カチオン可染性ポリエステルの固有粘度としては、0.60〜0.90dL/gの範囲が更に好ましい。共重合ポリエステルの固有粘度を0.55〜1.00dL/gの範囲するためには、溶融重合を行う際の最終の重合温度、重合時間を調整したり、溶融重合法のみでは困難な場合には固相重合を行って適宜調整することができる。本発明においては、スルホイソフタル酸の金属塩等(B)及び化合物(C)を上記数式(い)及び(ろ)を満たすようにポリエチレンテレフタレートに対して共重合を行うことで上述のような手法により固有粘度を0.55〜1.00dL/gにすることが可能となる。
(共重合ポリエステルの製造方法について)
本発明においては、上記の組成を有する共重合ポリエステルは、テレフタル酸を含むジカルボン酸成分とエチレングリコールを直接エステル化法を用いてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応物を重縮合反応する方法により製造される。また、本発明においては、蒸留塔を有する1個の加圧エステル化反応槽と、真空発生装置を有する2個の重縮合反応槽を用い、回分式で共重合ポリエステルを製造する事が好ましい。この加圧エステル化反応槽と真空発生装置を有する重縮合装置はそれぞれ下記の温度、圧力を供給することができる装置であれば特段の制限はない。
本発明においては、下記の方法でエステル化反応及び重縮合反応を行うことが好ましい実施形態である。
(1)エステル化反応槽に、テレフタル酸のエチレングリコール溶液又はエチレングリコールのスラリーを仕込む。
(2)上記の混合溶液又はスラリーを攪拌しながら、トリエチルアミンと三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を加える。
(3)次いで、エステル化反応槽内を窒素で加圧し熱媒体でエステル化反応槽を昇温して、塔頂温度を140〜160℃に制御しながら、エチレングリコールを反応槽内に還流し、0.2〜0.5MPaの圧力(ゲージ圧)下で、230〜250℃でエステル化反応を行う。エステル化反応で生成する水、過剰量のエチレングリコールはエステル化反応槽に設置されている蒸留塔の塔頂からエステル化反応槽外に留去する。以下、エステル化反応物をオリゴマーと称することがある。
(4)エステル化反応生成物を重縮合反応槽に移送する。
(5)前述の化合物(B)及び化合物(C)、ナトリウム化合物、フェノール系化合物(Y)及び/又はチオエーテル系化合物(Z)を順次重縮合反応槽に添加する。この際、スルホイソフタル酸の金属塩(B)及び化合物(C)は、ジカルボン酸及び/又はジヒドロキシエチルエステルとして添加することが好ましい。これらの化合物はこの時期に添加させる事で、これらの化合物の熱分解反応を抑制しつつ、ポリエステルにランダムに共重合される又は共重合ポリエステル中に分散させることができる。この時期より前に添加されると長時間熱にさらされる事で熱分解反応が起こり、この時期より後に添加されるとランダムに共重合されたり、共重合ポリエステル中への分散が好ましくない状態となることがある。
(6)重縮合反応槽の圧力を段階的に0.3〜0.01kPaまで減圧し、併せて温度を段階的に240〜290℃に昇温して重縮合反応を行う。
(7)攪拌に必要な電力などにより重縮合反応の進行状態を観察し、所定の溶融粘度(又は重合度、平均分子量、固有粘度など)になったことを確認する。その後重縮合反応槽を常圧に戻し、重縮合反応槽から共重合ポリエステルを吐出し冷却後、チップカッターにてチップ状にカットする。
(その他添加剤について)
また、本発明における共重合ポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば前述のヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物以外の酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを含んでいても良い。特に艶消し剤などは特に好ましく添加される。さらに、本発明の製造方法においては、ジエチレングリコールの副生などの副反応抑制のため、トリエチルアミン等のアミン類を添加してもよい。
(溶融紡糸について)
本発明における共重合ポリエステルの製糸方法は、特に制限は無く、従来公知の方法が採用される。すなわち、乾燥した共重合ポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られるポリエステル繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。さらに、上述の方法で得られた未延伸糸若しくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。また、紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、三角形・四角形等の多角形、3以上の多葉形、C型断面、H型断面、X型断面、又はこれらの形状に更に中空を有する断面のいずれであってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の分析項目などは、下記記載の方法により測定した。
(ア)固有粘度:
共重合ポリエステル試料を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)チップカラー(Col−L,b):
粒状のポリマーサンプルを160℃×90分乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。Col−Lは73以上を可、Col−bは8以下を可とした。
(ウ)ジエチレングリコール(DEG)含有量:
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル試料チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
(エ)繊維の引張強度:
JIS L 1013記載の方法に準拠して測定した。
(オ)カチオン可染性:
得られたポリエステル延伸繊維から常法により丸編みのサンプルを作成し、その編物をカチオン可染CATHILON BLUE CD−FRLH)0.2g/L、CD−FBLH0.2g/L(いずれも保土ヶ谷化学株式会社製カチオン可染性染料)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて98℃で1時間、浴比1:50で染色し、次式により染着率を求めた。
染着率=(OD−OD)/OD ×100(%)
OD:染色前の染液の576nmの吸光度
OD:染色後の染液の576nmの吸光度
本発明では、染着率98%以上のものを可染性良好と判断した。



(カ)スルホイソフタル酸の金属塩(B)及び化合物(C)の共重合量
ポリマーサンプルをトリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定して、そのスペクトルパターンから常法に従って、各プロトン量により定量した。特にイソフタル酸骨格由来の水素原子に着目した。また下記のエネルギー分散型X線マイクロアナライザーを用いた測定による硫黄元素含有量、リン元素含有量も参考にした。
(キ)共重合ポリエステル中のフェノール系化合物(Y)及びチオエーテル系化合物(Z)等の含有量(硫黄元素等の含有量)
乾燥した共重合ポリエステル組成物サンプルを走査型電子顕微鏡(日立計測器サービス株式会社製S570型)にセットし、これに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA、株式会社堀場製作所製EMAX−7000)を用いてポリエステル組成物中の各元素の濃度を求めた。また後述の共重合量の定量方法でも実施するNMR測定結果も併用して含有量を定量した。
[実施例1]
予めオリゴマー225部が滞留するエステル化反応槽内に、攪拌下、窒素雰囲気で255℃に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調整されたスラリーを一定速度で供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去しながらエステル化反応を4時間実施し、反応を完結させた。このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として三酸化アンチモンをテレフタル酸成分に対して40mmol%になる量にて、酢酸ナトリウム・三水和物をテレフタル酸成分に対して150mmol%になる量にて、それぞれを投入した。さらに、5−スルホイソフタル酸ジエスエル・ナトリウム塩のエチレングリコール溶液(竹本油脂株式会社製:商品名:IPGS)を、スルホイソフタル酸ジエステル・ナトリウム塩として、テレフタル酸成分に対して2.5mol%となる量、5−スルホイソフタル酸・n−ブトキシホスホニウム塩(竹本油脂株式会社製:商品名:K31)をテレフタル酸成分に対して1.5mol%となる量を添加した。さらにペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製:商品名:Irganox1010)を、テレフタル酸成分に対し0.5wt%となる量を添加した後、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、重合槽の攪拌機電力が所定電力に到達した段階若しくは所定時間を経過した段階で反応を終了させた。さらに常法に従いチップ化して共重合ポリエステルを得た。得られたポリエステルの反応条件、品質結果を表1に示す。
さらに、このようにして得られたポリエステルチップを140℃、5時間乾燥後、紡糸温度285℃巻取り速度400m/minで330dtex/36フィラメントの原糸を作り、4.0倍に延伸して83dtex/36フィラメントの延伸糸を得た。結果を表1に示す。
[実施例2〜5、比較例1〜10]
実施例1において、各触媒組成などを表1の通り変更して共重合ポリエステルを得た。結果を表1に示す。なお、重合反応時間は210分を最大とし、210分以内に所定の拡販電力に到達しなかったものは、210分で強制的に反応終了とし、実施例1と同様にチップ化させた。
[比較例11]
テレフタル酸ジメチル180部、エチレングリコール108部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルとして、テレフタル酸ジメチルに対して2.5mol%、5−スルホイソフタル酸n−ブトキシホスホネート塩として、テレフタル酸ジメチルに対して1.0mol%となるように添加した混合物に対し、酢酸ナトリウム・三水和物をテレフタル酸ジメチルに対して150mmol%、酢酸マグネシウムをテレフタル酸成分に対して30mmol%を攪拌機、精留塔等を備えたエステル交換反応槽に添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールをエステル交換反応槽外に留出させながらエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを留出した時点でエステル交換反応を終了させた。
その後、エステル交換反応の反応生成物に三酸化アンチモンをテレフタル酸成分に対して40mmol%を添加した後に、エステル交換反応性生物を重合容器に移し、引き続いてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製:商品名:Irganox1010)をテレフタル酸成分に対し0.5wt%となる量を添加した後、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、重合槽の攪拌機電力が所定電力に到達した段階若しくは所定時間を経過した段階で反応を終了させた。さらに常法に従いチップ化して共重合ポリエステルを得た。さらに実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。品質結果を表1に示す。
Figure 0005421131
本発明によれば、色相が良好な常圧カチオン可染性ポリエステル繊維を提供することができる。その産業上の意義はきわめて大きい。

Claims (8)

  1. 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成される共重合ポリエステル組成物の製造方法に関し、該ポリエステルはテレフタル酸(A)およびエチレングリコールをエステル化反応させ次いで重縮合反応をさせて製造され、スルホイソフタル酸の金属塩のビスヒドロキシアルキルエステルである5−ナトリウムスルホイソフタル酸のジヒドロキシエチルエステル(B)、及び下記化学式(I)で表される化合物(C)
    Figure 0005421131
    [上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10個のヒドロキシル基を有するアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩を表す。]
    が前記ポリエステルに共重合されたポリエステルであり、下記(1)〜(6)を同時に満足することを特徴とする共重合ポリエステル組成物の製造方法。
    (1)テレフタル酸(PTA)とエチレングリコール(EG)を、EG/PTAモル比=1.0〜1.5となる比率でスラリー化させること
    (2)化合物(B)と化合物(C)が下記式(い)及び(ろ)を同時に満足するように配合すること
    3.0≦b+c≦5.0 ・・・(い)
    0.2≦c/(b+c)≦0.7 ・・・(ろ)
    [上記数式中、bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする化合物(B)の共重合量(モル%)、cは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記化学式(I)で表される化合物(C)の共重合量(モル%)を表す。]
    (3)化合物(B)をエステル化反応終了後に添加すること
    (4)化合物(C)をエステル化反応終了後に添加すること
    (5)共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対し、50〜300mmol%のナトリウム化合物を、エステル化反応終了後に添加すること
    (6)共重合ポリエステルに対し、フェノール系化合物(Y)及び/又はチオエーテル系化合物(Z)を下記式(は)及び(に)を同時に満足するように配合すること。
    0.2≦y+z≦4.0 ・・・(は)
    0.3≦y/(y+z)≦1.0 ・・・(に)
    [上記式中、yは共重合ポリエステル重量を基準とするフェノール系化合物(Y)の配合量(重量%)、zは共重合ポリエステル重量を基準とするチオエーテル系化合物(Z)の配合量(重量%)を表す。]
  2. フェノール系化合物(Y)が下記一般式(II)で表される単位構造を分子内に1個以上含有する酸化防止剤である、請求項1記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
    Figure 0005421131
    [上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
  3. チオエーテル系化合物(Z)が下記一般式(III)で表される単位構造を分子内に1個以上含有する酸化防止剤である、請求項1又は2のいずれかに記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
    Figure 0005421131
  4. 共重合ポリエステルを、蒸留塔を有する1個のエステル化反応槽と、真空発生装置を有する1個の重縮合反応槽を用いて回分式で製造することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
  5. 該共重合ポリエステル組成物中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
  6. 該共重合ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.00dL/gの範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
  7. 上記化合物(C)が、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩である請求項1〜6のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
  8. ナトリウム化合物が、酢酸ナトリウムである請求項1〜7のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル組成物の製造方法。
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