JP5420584B2 - 二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法 - Google Patents

二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化チタン光触媒層を所定パターンの配置で形成するパターン形成方法に関する。
二酸化チタンは、紫外線の照射によって、光触媒活性や超親水性等の特性を発揮する。二酸化チタンの超親水性の利用に関しては、例えば、二酸化チタンのコート層に紫外線を選択的に照射することにより、親水領域と疎水領域からなるパターンを形成する技術がある。この種の親水・疎水パターンは、オフセット印刷等の平版印刷への応用(例えば特許文献1)、マイクロ化学における反応・分析システムへの応用等が知られている。この他、親水・疎水パターンを生体材料の表面形状として付与することにより骨芽細胞をパターン形成方向に増殖させる骨配向化技術の開発が期待されている。親水・疎水パターンを得るための二酸化チタンのコート層の形成には、例えば、ゾル塗布法、有機チタネート法、蒸着法等が選択して用いられる(特許文献1)。
また、上記パターンにおける親水領域とのコントラストを高めるために、疎水領域を撥水性の高い撥水領域として形成する技術が提案されている(特許文献2)。これは、基材に設けた酸化チタン等の光触媒含有層上にパターン化された金属層を設け、光触媒含有層及び金属層の上に撥水性薄膜層を形成し、光触媒含有層上の撥水性薄膜層を選択的に除去することにより、親水領域に対してパターン化された撥水領域を形成するものである。
これらの形成工程中、光触媒含有層上にパターン化された金属層(例えば銀の層)を設けるためには、光触媒含有層上に銀イオン含有溶液を配置し、所定パターンを有するネガマスクを介して選択的に紫外線を照射する。これにより、光触媒含有層が触媒活性を発揮して銀イオンを還元し、紫外線を照射した領域に銀が析出する。また、光触媒含有層上の撥水性薄膜層を選択的に除去する工程では、光触媒含有層と金属層との全面に紫外線を照射することにより、光触媒粒子が撥水性薄膜層の構成成分を分解・除去し、光触媒含有層上の撥水性薄膜層が選択的に除去される。
特開2000−62334公報 特開2009−69215公報
しかしながら、上記各技術において、二酸化チタンコート層の形成をゾル塗布法、有機チタネート法または蒸着法で行う場合は、母材との一体化が十分得られず、剥離を生じやすいという問題がある。
また、親水領域と撥水領域とを形成する場合は、上記塗布法等によれば母材との一体化が十分得られない上、遮光用金属層を形成するのに手間と時間とを要し、遮光用ネガマスクがパターン形成の自由度を制限するという問題がある。
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、母材と一体化した酸化層を簡便に形成し得る二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するため、チタンまたはチタン合金からなる基材表面に、レーザを加工閾値近傍の照射強度で照射し、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造からなる領域を所定パターンの配置で形成した後、酸化性雰囲気中で500℃以上、600℃未満で熱処理を施すことにより、ルチル型二酸化チタンを含有する酸化層を形成することを特徴とする二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法を提供するものである。
本発明に係る二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法においては、チタンまたはチタン合金からなる基材表面に、レーザを加工閾値近傍の照射強度で照射し、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造からなる領域を所定パターンで形成する。そして、粗面構造形成後に、酸化性雰囲気中で500℃以上、600℃未満で熱処理を施すことにより、ルチル型二酸化チタンを含有する酸化層を形成する。この熱処理により、粗面構造の微細凹凸はさらに分断されて、より微細な凹凸を形成する。配向性の高い微細凹凸の場合は、分断後も元の直線に沿った幾何学的異方性が得られる。
このようにして、極めて微細な凹凸を伴った粗面構造が形成されることにより、アナターゼ型二酸化チタンだけでなく、ルチル型二酸化チタンも、高い光触媒性を示すこととなる。したがって、レーザ照射と熱処理という乾式処理によって基材表面に母材と一体化した二酸化チタン層を形成することができる。この粗面構造は、所定パターンで形成されることにより、該パターンで区分けされた二酸化チタン光触媒層が、光触媒活性や超親水性等の特性を発揮する。したがって、パターン形状を適宜決定することにより、二酸化チタン光触媒層の特性に基づく効果をパターン形状に応じた形で奏することができる。例えば、粗面構造を微細溝構造とし、該粗面構造の配置パターンを複数の線状領域からなるものとして、該線状領域の長手方向に沿って微細溝構造を形成することにより、超親水性効果を線状パターンの微細溝構造に沿って発揮させ、これに基づいて、骨芽細胞をパターン形成方向に増殖させる骨配向化技術に有効な手段を提供することができる。
特に、レーザとして、フェムト秒レーザを用いれば、周辺領域への熱影響の少ない高精度な加工が可能となり、入射光と基板表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、周期構造が形成される。
上記の通り、本発明によれば、母材と一体化した酸化層を簡便に形成し得る二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法を提供することができる。
本発明の実施例において得られた周期構造試験片(未熱処理)の電子顕微鏡写真である。 水の接触角の測定結果を示すグラフであり、(a) はバフ研磨試験片、(b) は周期構造試験片のものを示す。 試験片における紫外線照射時の接触角変化を示すグラフである。 水滴を滴下した試験片の写真である。 試験片のX線回折強度を示すグラフである。 本発明の実施例において得られた周期構造試験片(熱処理後)の電子顕微鏡写真である。 熱処理後の試験片の分光反射率を示すグラフであり、(a) は周期構造試験片、(b) はバフ研磨試験片のものである。 本発明の試験片であって、(a) 紫外線照射前のもの及び(b) 後のもの写真であり、滴下した水滴の広がり状態を示す。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に係る二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法においては、チタンまたはチタン合金からなる基材表面に、レーザを加工閾値近傍の照射強度で照射し、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造を形成する。
チタン合金としては、例えば、チタン基合金が挙げられ、5族元素(5A族元素)、6族元素(6A族元素)、7族元素(7A族元素)、鉄族元素、白金族元素、11族元素(1B族元素)、14族元素(4B族元素)、3族元素(3A族元素、ランタノイド、アクチノイド、ミッシュメタルを包含する)よりなる群から選択される元素の少なくとも1種を含有するもの、チタンとの金属間化合物を形成する元素の少なくとも1種を含有するもの、α相とβ相の混合組織からなるチタン基合金などを挙げることができる。
照射するレーザは、パルス状とされ、加工閾値近傍の照射強度で照射することにより、ショット毎に周期性をもった微細凹凸が形成され、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面が粗面化される。この粗面構造は、直線偏光のレーザを用いた場合は、グレーティング状の凹凸による配向性の高い周期構造として形成される。一方、円偏光のレーザを用いた場合は、照射パルス毎に形成される突起状の周期構造が、照射位置の移動に伴い異方性のないランダムな微細凹凸として形成される。また、楕円偏光のフェムト秒レーザの場合は、楕円の扁平率が高いほど、異方性の高い微細凹凸が形成される。
なお、加工閾値近傍の照射強度とは、材料表面に形状や組織の変化を生じさせ得る限界的なエネルギ密度に近いエネルギ密度(フルエンス)を意味する。また、レーザが直線偏光、円偏光、楕円偏光であるというのは、主な偏光成分がこれらの偏光であることを意味しており、副次的に他の偏光成分を含むものであってもよい。
特に、レーザとして、フェムト秒レーザを用いれば、周辺領域への熱影響の少ない高精度な加工が可能となる。フェムト秒レーザの照射が行われると、材料表面にある欠陥、異物、結晶格子の不連続部位等が起点となって表面散乱光又はプラズマ波が発生し、これと入射光との干渉による周期的エネルギ強度分布に基づいて材料表面に周期構造が形成される。この不連続部位等は、レーザ照射前から材料表面に存在するものであっても、レーザ照射によって材料表面に発生したものでもよい。周期構造には、このようにして形成される初期的な周期構造も、それを元にして引き続いて形成される周期構造をも含む。
基材表面に粗面構造を形成した後、酸化性雰囲気中で熱処理を施す。酸化性雰囲気は、例えば大気下または同様の雰囲気とすることができる。この熱処理により、基材表面の粗面構造に結晶性の高い酸化層が形成されると共に、凹凸がより微細化して表面積が増大する。こうして、ルチル型二酸化チタンを含有する酸化層が基材表面に形成される。なお、これと共にアナターゼ型二酸化チタンも基材表面に形成されることがあるが、その含有率は低く、本発明において光触媒性を示すのは主としてルチル型二酸化チタンである。また、得られた酸化層は、微細凹凸が反射率を低減させるので、照射する紫外線を有効利用して光触媒性等の特性を効率的に発揮するという効果も得られる。
上記熱処理の温度は、500℃以上、600℃未満で行うのが望ましい。熱処理温度を500℃以上とすることにより、二酸化チタンの結晶化を促進することができる。一方、熱処理温度を600℃以上とすると、酸化層の凹凸構造が平滑化される傾向を示す。したがって、熱処理温度を500℃以上、600℃未満の範囲とすることにより、酸化層は、粗面構造の表面を増大するように成長し、光触媒性を高めることができる。
形成する酸化層の厚さは、50〜200nmとするのが望ましい。酸化層の厚さを50nm以上とすることにより、光反射率のピークを長波長側にシフトさせ、紫外線の反射率を低減することができ、光触媒性を一段と高めることができる。一方、酸化層の厚さが200nmを越えると、凹凸構造が不明瞭となり十分な反射率低減効果が得られない。
直線偏光レーザを用いることにより、粗面構造を微細溝構造とし、酸化層に異方性を付与する場合は、微細溝構造の溝間隔を100nm〜10μmとするのが望ましい。微細溝構造の溝間隔を10μm以下とすることにより、粗面構造による表面積増加と光反射率低減の効果を高めることができる。特に、溝間隔を1μm以下とすれば、照射する紫外線の波長と同程度となり、光反射率の低減効果が顕著に高められ、光触媒性が一段と高くなる。一方、溝間隔が、100nm未満の場合は、熱処理により溝構造が酸化層で埋没する傾向を示し十分な異方性が得られない。
[実施例]
以下に本発明の実施例を説明する。この実施例は、フェムト秒レーザを用いた所定パターンの周期構造の形成と熱処理により、粗面構造の幾何学的異方性と超親水性による濡れ性の異方性とを併せもつチタン表面の創製を目的としたものである。
1.背景
1-1. 骨再生における配向化
生体材料表面の表面形状および化学的性状が細胞反応に影響を及ぼすことが知られている。表面形状としてナノメートルオーダーの溝構造を付与した場合、骨芽細胞を溝方向に配向させることができる。また、化学的性状として超親水性を付与した場合、骨芽細胞の増殖が促進される。一方、骨は配向により高い力学機能を発揮しており、骨再生において骨密度の回復とともに、骨配向化の重要性が指摘されている。そのため、構造異方性に加えて濡れ性の異方性を併せもつインプラント材の開発が期待されている。
1-2. フェムト秒レーザによる周期構造
加工閾値近傍のエネルギー密度でフェムト秒レーザを照射すると、入射光と基板の表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、グレーティング状の周期構造が自己組織的に形成される。そして、フェムト秒レーザをオーバーラップさせながら走査させることで、配向性の高い周期構造を広範囲に拡張することが可能である。周期構造の間隔は例えば、約700nm、深さは約200nmとすることができる。このようにして周期構造は、例えば5000〜10000本/秒という速い加工速度で形成することができる。
1-3. チタン表面の超親水化
チタン表面にフェムト秒レーザにより周期構造を形成し、酸化性雰囲気中で熱処理(例えば、500℃以上、600℃未満)を行うことで光触媒機能が発現する。その結果、紫外線を照射することで表面を超親水化することができる。光触媒機能は周期構造形成または熱処理の単独プロセスでは発現せず、周期構造形成と熱処理の組み合わせが必要である。光触媒機能発現の大きな要因は、両プロセスの組合せによって、(i) 酸化膜表面積の増大、(ii) 紫外線反射率の低減、及び(iii) 結晶性の向上およびアナターゼ相の形成、が行われることである。
2. 実験方法
本発明に関して以下の2通りの実験を行った。第1の実験は、粗面構造を形成する二酸化チタン含有層を所定パターンで配置することによる効果を明らかにする実験であり、第2の実験は、上記効果を基礎付けるものであり、粗面構造を形成する二酸化チタン含有層が超親水性を示す効果を明らかにする実験である。
A.第1の実験(配置パターンの効果)
A-1. 試験片
試験片には純チタン(1mm×25mm×25mm,純度99.5%)を用いた。試験片の表面仕上げは(i) バフ研磨(Ra 0.03μm)[比較例]、(ii) 全面パターン(バフ研磨面全面に周期構造形成)[比較例]、(iii) 間欠パターン(ラインアンドスペース1mm/1mmで周期構造形成)[本発明の実施例]の3種類とした。なお,ラインアンドスペースと周期構造の配向方向は同一方向とした。3種類の試験片に対し、エタノールで10分間超音波洗浄後、電気炉を用いて酸化膜形成および結晶化を目的とした熱処理を行った。熱処理方法は、昇温(10℃/min)−設定温度保持(525℃、30min)−炉冷とした。
図1に周期構造試験片(未熱処理)の電子顕微鏡像を示す。この試験片は、チタン表面に、直線偏光のフェムト秒レーザを加工閾値近傍の照射強度でパルス照射し、照射領域をオーバーラップさせながら表面に対して相対移動させることにより、表面に微細溝からなる粗面構造を形成したものである。
A-2. 水滴形状観察
3種類の試験片に対し、紫外線(中心波長360nm,蛍光灯型4W,作動距離25mm)を30分間照射後、純水を1ml(1マイクロリットル)滴下し水滴形状を観察した。
A-3. 実験結果
30分間紫外線照射したバフ研磨試験片および全面パターン試験片の水滴写真を図4に示す。全面パターン試験片の水滴は光触媒機能による親水化のため、バフ研磨試験片の水滴より大きく広がった。周期構造の幾何学的異方性の影響のため、水滴形状は周期構造の配向方向を長軸方向とする楕円状となった。楕円が円に比べてどの程度扁平かを表す扁平率(1−短半径/長半径)は0.33であった。
紫外線未照射および30分間照射後の間欠パターン試験片の水滴写真を図8に示す。試験片の色の暗い部分が周期構造形成部分である。紫外線未照射の試験片[図8(a)]は光触媒機能が発現せず、水滴が大きく広がることはなかったが、周期構造とラインアンドスペースによる2種類の幾何学的異方性が存在する結果、水滴は短い扁平形状となり、その扁平率(1−短半径/長半径)は0.5となった。
間欠パターン試験片に30分間紫外線を照射したもの[図8(b)]は、周期構造形成部分だけが選択的に親水化するため、ラインアンドスペースの親水パターンが形成される。周期構造上に水滴を滴下すると、水滴は周期構造形成領域に沿って長い扁平形状となって広がり、その扁平率(1−短半径/長半径)は0.9よりやや大きい値となった。
このように、ラインアンドスペースで周期構造を形成し、周期構造形成部を選択的に光触媒化することにより粗面構造の幾何学的異方性と濡れ性の異方性とを有するチタン表面が創製された。
B.第2の実験(超親水性の実現)
B-1. 試験片
試験片には純チタン(1mm×25mm×25mm,純度99.5%)を用いた。試験片の表面仕上げは
(i) バフ研磨(Ra 0.03μm)[比較例]、(ii) 周期構造(バフ研磨面に周期構造形成)[本発明の超親水性を示す例]の2種類とした。2種類の試験片に対し、エタノールで10分間超音波洗浄後、電気炉を用いて酸化膜形成および結晶化を目的とした熱処理を行った。熱処理方法は、昇温(10℃/min)−設定温度保持(30min)−炉冷とした。
B-2. 接触角測定
熱処理後、7日間大気暴露させた試験片に対し、紫外線(中心波長360nm,蛍光灯型4W,作動距離25mm)を所定の時間(5, 10, 15, 20, 30分)照射後、純水を1μl(マイクロリットル)滴下し、θ/2法で接触角の測定をした。比較のため、未熱処理試験片に対してエタノールで10分間超音波洗浄後、7日間大気暴露させ、同様の手順で接触角の測定をした。
B-3. 実験結果
水の接触角の測定結果を図2に示す。バフ研磨試験片[図2(a)]は全ての熱処理条件で紫外線照射(10分)による親水化は認められなかった。周期構造試験片[図2(b)]は熱処理温度500℃〜575℃の条件で紫外線照射による超親水化が認められた。なかでも熱処理温度575℃の試験片は紫外線未照射時の接触角が16°と小さく、紫外線照射後も最も低接触角を示した。しかし、未熱処理および熱処理温度600℃では親水化は認められなかった。また、図示していないが、熱処理温度450℃では若干の親水化しか認められなかった。
熱処理温度525℃の試験片における紫外線照射時の接触角変化を図3に示す。周期構造試験片では紫外線照射時間5分で接触角8.6°、30分で3.3°となった。最も低接触角を示した熱処理温度575℃の周期構造試験片では紫外線照射時間30分で接触角1.6°となった。
B-4. 実験結果の評価
周期構造形成と適切な熱処理(500℃〜575℃)の組み合わせで親水化が起こる原因として、(i) 結晶性の向上、(ii) 表面積の増大、(iii) 紫外線反射率の低減が挙げられる。図5にX線回折の結果を示す。熱処理によりルチル型二酸化チタンのピークが認められる。また、熱処理をした周期構造試験片では、わずかなアナターゼ型二酸化チタンのピークも現れる。親水化には結晶化が重要な要因であり、熱処理は必須であるが、周期構造有無による決定的な結晶性の違いは認められない。
図6に熱処理後の周期構造試験片の電子顕微鏡像を示す。熱処理温度575℃の試験片は未熱処理時(図1参照)より表面積が増大する形で酸化膜成長していることがわかる。表面積の増加が親水化に大きな影響を与えるため、熱処理と周期構造形成の組み合わせが親水化に有効であったと考えられる。一方、熱処理温度により酸化膜の成長形態に違いがあり、熱処理温度600℃の試験片は滑らかな凹凸になっていた。そのため、親水化しなかったものと考えられる。
図7に、熱処理後の周期構造試験片[図7(a)]、バフ研磨試験片[図7(b)]の分光反射率を示す。周期構造試験片は、図7のグラフの縦軸スケールからも分かるように、反射率が顕著に低くなっている。また、周期構造試験片は、熱処理温度が高くなると酸化膜厚さが増加するため、反射率のピークが長波長側にシフトする。熱処理温度575℃の周期構造試験片は紫外線(320nm〜410nm)反射率が低いため光触媒活性が向上し、最も親水化したものと考えられる。
3.他の実施形態について
本発明は上記実施例に限定されるものでなく、例えば以下に説明するもの等、種々の形態を含むものである。
照射するレーザは、直線偏光レーザに代えて、円偏光レーザまたは楕円偏光レーザとしてもよい。基材表面に形成される二酸化チタン層の異方性は、円偏光レーザを用いた場合には表れず、楕円偏光レーザを用いた場合は低いものとなる。すなわち、円偏光レーザを加工閾値近傍の照射強度でパルス照射し、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造を形成した場合は、照射パルス毎に形成される突起状の周期構造が、照射位置の移動に伴い異方性のないランダムな凹凸の粗面構造として形成される。そして、これに熱処理が加えられることにより凹凸がより微細化し、異方性のない微細凹凸を表面に備えた酸化層が形成される。
楕円偏光レーザを用いる場合は、照射領域をオーバーラップさせながら、基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造を形成する。こうして形成される粗面構造は、直線偏光レーザと円偏光レーザとの中間的な異方性を有したものとなり、楕円の扁平度が高いほど高い異方性が得られる。その後の熱処理による凹凸の微細化により異方性は低下するが、粗面構造の幾何学的異方性をもった酸化層が形成される。
これに対し円偏光及び楕円偏光のいずれの照射の場合も、基材表面に形成される粗面構造からなる領域の配置を所定パターンとすることにより、該パターン形状による濡れ性の異方性が得られる。特に、粗面構造領域の配置パターンを複数の線状領域からなるものとすることにより、該線状領域に沿った濡れ性が発現する。さらに、該線状領域の長手方向に溝長手方向が沿うように前記微細溝構造を形成することにより、粗面構造の幾何学的異方性と濡れ性の異方性とを併せもつ表面形態が得られる。
上記実施例では、二酸化チタンが示す特有の性質を超親水性として評価し、生体材料への適用について述べたが、本発明は、濡れ性パターニングを用いた熱伝達性能の向上や微量溶液操作、微粒子整列等の用途にも適用することができる。

Claims (7)

  1. チタンまたはチタン合金からなる基材表面に、レーザを加工閾値近傍の照射強度で照射し、照射領域をオーバーラップさせながら基材表面に対して相対移動させることにより、基材表面に粗面構造からなる領域を所定パターンの配置で形成した後、酸化性雰囲気中で500℃以上、600℃未満で熱処理を施すことにより、ルチル型二酸化チタンを含有する酸化層を形成することを特徴とする二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  2. 前記所定パターンのレーザ照射及び熱処理によりルチル型二酸化チタンを含有する酸化層を形成した後に、該酸化層表面に撥水性薄膜を形成し、前記酸化層の光触媒活性化により前記粗面構造領域の撥水性薄膜を選択的に除去可能とすることを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  3. 前記レーザがフェムト秒レーザであることを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  4. 前記酸化層の厚さが50〜200nmであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  5. 直線偏光成分を含むレーザを用いることにより、前記粗面構造を微細溝構造とし、前記酸化層に異方性を付与することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  6. 前記基材表面に形成する粗面構造領域の配置パターンを複数の線状領域からなるものとし、該線状領域の長手方向に溝長手方向が沿うように前記微細溝構造を形成することを特徴とする請求項5に記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
  7. 前記微細溝構造の溝間隔が100nm〜10μmであることを特徴とする請求項またはに記載の二酸化チタン光触媒層のパターン形成方法。
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