JP5418941B2 - 基材上に形成された膜の検査方法 - Google Patents
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動的接触角測定法とは、薄膜基板上の液滴に物理的運動エネルギーを与えて液滴が変形する際の接触角を測定する方法であり、動的接触角には前進接触角と後退接触角がある(図1参照)。この動的接触角測定法として、特許文献1及び特許文献2に記載の方法が知られている。
また、特許文献2には、容器に入れた液体中に薄膜を形成した基板を垂直に浸漬し、基板と液体の界面において形成されるメニスカスの角度を直接測定するか、又は基板に垂直に働く力Fをミクロ天秤で測定し、この力Fと液体の表面張力γLV及び基板の幅Lの関係式(F=2L・γLV・cosθ)から接触角θを算出する方法(ウィルへルミ・プレート法)が記載されている。
(1)
1)標準となる膜を形成した基材(A)について、液体の後退接触角又は前進接触角を測定する工程、
2)上記1)における後退接触角又は前進接触角の測定に使用する液体と同じ液体に対して、検査する膜を形成した基材(B)を、上記基材(A)の後退接触角と同じ角度で引き上げる又は前進接触角と同じ角度で沈める際に、レーザー光照射手段と反射光を検知するスクリーンを有するレーザー測定装置から照射されるレーザー光を基材と液体との界面に照射し、反射した光をスクリーン上に受けることにより反射光を検知する工程、及び、
3)液体面にレーザー光を照射して反射した光を検知したスクリーン上の位置と、上記2)において反射した光を検知したスクリーン上の位置の差異を測定する工程
を有することを特徴とする基材上に形成された膜の検査方法、
(2)
2)の工程において、液体に対して基材(B)を引き上げる又は沈める方法として、角度を保ったまま基材(B)自体を液体から引き上げる又は液体に沈めることを特徴とする上記(1)記載の基材上に形成された膜の検査方法、
(3)
2)の工程において、液体に対して基材(B)を引き上げる又は沈める方法として、基材は固定し、液体面を低下又は上昇させることを特徴とする上記(1)記載の基材上に形成された膜の検査方法、
(4)
レーザー光を照射させる位置を、基材と液体との界面に沿ってスキャンさせることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の基材上に形成された膜の検査方法、及び、
(5)
レーザー測定装置を基材と液体との界面に沿って複数設けることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の基材上に形成された膜の検査方法に関する。
(6)
液体収納容器;膜の形成された基材を液体収納容器中の液体に浸すことができる位置に配置され、膜の形成された基材を任意の角度に保持し移動させる手段;及び、液体収納容器の上方に設けられ、レーザー光照射手段と反射光を検知するスクリーンを有するレーザー測定手段;とを有する膜検査装置に関する。
本発明において、膜とは、ディップ法(浸漬法)、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り、スクリーン印刷などの周知の方法を用いて基材上に作製できる無機又は有機の膜であれば特に制限されないが、1μm以下の膜厚を有する無機又は有機の薄膜が好適である。
金属系界面活性剤としては、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が好ましく、このような金属系界面活性剤としては、式(I)
R1 nMXm−n (I)
〔式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、R1は、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一であっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合が好ましい。
また、これらの化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
こうして得られる有機薄膜は、単分子膜であっても2層以上の多層膜であってもよい。
本発明は、標準となる膜と検査する膜との動的接触角(後退接触角又は前進接触角)、好ましくは、後退接触角の差異をレーザー光を用いて測定することにより、膜の状態の検査をする方法である。
また、本発明において、前進接触角とは、拡張収縮法においては液滴が拡張する過程で生じる液滴の接触角をいい、傾斜法においては傾斜した液滴の下側の接触角をいう(図1参照)。
本発明において、「標準となる膜」とは、実用的に使用可能な膜であればよいが、通常、最も良い状態の膜、即ち、最密充填膜が使用される。
1)の工程は、2)の工程の前にあらかじめ行っておけばよいが、2)の工程と連続して行っても良い。また、1)の工程は、標準となる膜の後退接触角又は前進接触角を一度測定しておけば、膜の検査を行う都度測定しなくてもよい。
即ち、膜をコーティングした基材上に液滴を付与して、拡張収縮法又は傾斜法により後退接触角又は前進接触角を測定する。
拡張収縮法を用いる場合、後退接触角の値は、例えば、薄膜上に液体を付与して液体を徐々に吐出して液滴を拡張した後、その液滴を吸引し液滴が収縮する過程で、液滴の接触角を複数回測定したときの平均値で表される。液滴の収縮時の所定の一点の液滴の接触角を測定した値とすることができるが、より正確な判別ができる点から、平均値を用いることが好ましい。具体的に、例えば、0〜10μLの間で液体を吐出吸引(液滴を拡張収縮)させる場合において、液滴収縮時の0.5μLから8μLまでの間、0.05μLの間隔で測定した液滴の接触角の平均値を求めることにより決定することができる。拡張収縮法における接触角の測定は、例えば、Drop Master 700(協和界面科学株式会社製)を用いて測定することができる。
m:液滴の質量
g:重力加速度
α:液滴の転落角
γL:液の表面エネルギー
θA:前進接触角
θR:後退接触角
傾斜法における接触角の測定は、例えば、Drop Master 700(協和界面科学株式会社製)を用いて測定することができる。
基材を液から引き上げる際、又は、基材を液に沈める際に、レーザー測定装置を液面に沿って基材に向けて移動させてレーザー光を基材に近づけ、反射光を検知装置のスクリーン上に受けることにより、反射光を検知する。また、基材をレーザー測定装置に向けて移動させてレーザー光を基材に近づけることもできる。
このスクリーン上の反射光の受光位置を計測することにより、標準膜と同等の膜であるか、それとも欠陥膜であるかを評価することができる。
本発明において使用する膜検査装置は、基本構造として、
液体収納容器と、
膜の形成された基材を液体収納容器中の液体に浸すことができる位置に配置され、膜の形成された基材を任意の角度に保持し移動させる手段と、
液体収納容器の上方に設けられ、レーザー光照射手段と反射光を検知するスクリーンを有するレーザー測定手段とを有する。
図5に示される装置は、液体(図中では「試料液体」)が収納された液体容器、薄膜を形成した基材(図中では「試料平板」)を液体容器中の液体に浸すことができる位置に配置された傾斜台、及び、液体容器の上方に設けたレーザー測定装置(XYステージ、レーザー照射装置、レーザー受光面、ノギス等を有する)からなる。
レーザー照射部から出た入射光は、液面で反射後、反射光が受光面に投影される。
図5に示されるとおり、膜を形成した基材(図中では「試料平板」)を傾斜台に取り付け、その一部を試料液体に沈める。傾斜台は回転機構により任意の角度に設定できる。液体容器の上方に、レーザー照射装置と受光面(スクリーン)で構成されるレーザー測定装置を水平に設置し、レーザー光を液面に向けて照射する。次いで、レーザー測定装置を液面と平行に移動させ、レーザー光の照射位置を基材と液面の境界に近づける。液面で反射した光は、受光面(スクリーン)上にビームスポットを形成する。ビームスポットの位置を受光面(スクリーン)に固定したデジタルノギスで測定する。
式[1]で示されるシラン系界面活性剤、該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒、及び水を含む薄膜形成用溶液中に、ガラス基板を浸漬し、基板上に単分子膜(I)を形成した(試料(A)〜(C))。具体的には以下のようにして単分子膜(I)を形成した。
式[1]で示されるシラン系界面活性剤として、n−オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)(Gelest社製)を用いた。
4つ口フラスコに、チタンテトライソプロポキシド(商品名:A−1、日本曹達社製:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)12.4gをトルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、変性アルコール/ドライアイスバス中で−40℃に冷却した。別に、イオン交換水1.26g(H2O/Ti=1.6モル比)をイソプロパノール11.3gに混合後、−40℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−40℃に維持した。滴下終了後、冷却しながら30分間攪拌後、その後室温に昇温して、無色透明な部分加水分解溶液を得た。溶液の固形分濃度は、酸化チタン換算で5重量%であった。
水分含量450ppmのトルエンに、最終濃度0.5重量%に相当する式[1]で示されるシラン系界面活性剤を加え室温で30分間攪拌した。次に、式[1]で示されるシラン系界面活性剤の1/10倍モル(TiO2換算)相当の触媒溶液を滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌した。この溶液中の水分含量を500ppmになるように水を加え膜形成用溶液を得た。
ガラス基板を、上記膜形成用溶液中に5分間浸漬後、引き上げ、炭化水素系洗浄剤(NSクリーン 株式会社ジャパンエナジー製)で超音波洗浄して取り除き、乾燥して試料を得た。原子間顕微鏡による観察の結果、当該試料は良好な単分子膜であり、これを標準膜とした。
Drop Master 700(協和界面科学株式会社製)を用い、液体としては、ブチルカルビトールアセテートを用いた。載置台に上記(4)で作製した基材を載せ、ブチルカルビトールアセテートの液滴を、0〜10μLの間で吐出吸引した。液滴の拡張時及び収縮時のそれぞれの過程において、0.5μL〜8μLの間、0.05μLの間隔で、液滴の動的接触角を複数回測定し、その平均値を求めた。その結果、後退接触角は49.4°であった。
上記Iにおいて調製した膜形成用溶液中に、ガラス基板を5分間浸漬後、引き上げ、炭化水素系洗浄剤(NSクリーン 株式会社ジャパンエナジー製)で超音波洗浄して取り除き、乾燥して試料を得た。
レーザー光の傾斜角度(図3又は4のφL):70°〜80°
液面からスクリーンまでの距離:約200〜250mm
気温及び液温:25±0.5°
Claims (6)
- 1)標準となる膜を形成した基材(A)について、液体の後退接触角又は前進接触角を測定する工程、
2)上記1)における後退接触角又は前進接触角の測定に使用する液体と同じ液体に対して、検査する膜を形成した基材(B)を、上記基材(A)の後退接触角と同じ角度で引き上げる又は前進接触角と同じ角度で沈める際に、レーザー光照射手段と反射光を検知するスクリーンを有するレーザー測定装置から照射されるレーザー光を基材と液体との界面に照射し、反射した光をスクリーン上に受けることにより反射光を検知する工程、及び、
3)液体面にレーザー光を照射して反射した光を検知したスクリーン上の位置と、上記2)において反射した光を検知したスクリーン上の位置の差異を測定する工程
を有することを特徴とする基材上に形成された膜の検査方法。 - 2)の工程において、液体に対して基材(B)を引き上げる又は沈める方法として、角度を保ったまま基材(B)自体を液体から引き上げる又は液体に沈めることを特徴とする請求項1記載の基材上に形成された膜の検査方法。
- 2)の工程において、液体に対して基材(B)を引き上げる又は沈める方法として、基材は固定し、液体面を低下又は上昇させることを特徴とする請求項1記載の基材上に形成された膜の検査方法。
- レーザー光を照射させる位置を、基材と液体との界面に沿ってスキャンさせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基材上に形成された膜の検査方法。
- レーザー測定装置を基材と液体との界面に沿って複数設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材上に形成された膜の検査方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の基材上に形成された膜の検査方法を実施するための膜検査装置において、
液体収納容器;
膜の形成された基材を液体収納容器中の液体に浸すことができる位置に配置され、当該基材を任意の角度に保持し、移動させる手段;及び、
液体収納容器の上方に設けられ、レーザー光照射手段と反射光を検知するスクリーンを有するレーザー測定手段;
とを有する膜検査装置。
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