JP5418890B2 - 座金及び締結構造 - Google Patents
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Description
CO2排出量の削減には、自動車の燃費を向上させることが最も有効であり、燃費を向上させる一方策として、車両重量の低減が重要である。
このようなマグネシウム合金は、製錬技術や溶解・鋳造技術の進歩によりアルミニウム合金と同等以上の耐食性を有する部品が製造できるようになったことと、中国製マグネ合金地金が低価格で購入できるようになった事などを背景に、主にダイカスト部品での採用が進んでいる。
つまり、マグネシウム合金部品を鉄系ボルトで締結した場合、マグネシウム合金の接触部に水分が加わると締結ボルトの周囲が激しく腐食し、締結ボルトのゆるみや、部材の損傷が発生する。
また、マグネシウム合金部材の側にカチオン電着塗装と粉体塗装を施す一方、ボルトの側には亜鉛ニッケルめっきとコスマー処理を施し、これらの間にアルマイト処理を施したアルミニウム製ワッシャを介装することが知られている(特許文献2参照)。
また、締結軸力が高く、締結面が高応力になった場合、樹脂やアルマイト皮膜に亀裂や剥離が生じ、亀裂部や剥離部から腐食が優先的に進行するという問題がある。
また、本発明の締結構造は、鉄合金又はアルミニウム合金から成るボルトを用いて、当該ボルトとは異なる金属から成る部材を締結して成る締結構造において、上記ボルトと部材の間に本発明の上記座金が介在していることを特徴としている。
上記陽極酸化処理工程においては、座金基材を常温下の電解液中で陽極酸化処理を実施する。電解液は、硫酸やアクリル樹脂組成物で構成された水溶液であるが、銀を含有する陽極酸化皮膜を形成するために、電解液に硝酸銀を添加している。施したのち、さらに別の含浸液(硫酸、アクリル酸、硝酸銀などで構成された水溶液)中で含浸処理を実施する。
O(酸素)は、酸化アルミニウムの主成分であるAlと共に、酸化アルミニウムを構成する主要な元素であって、皮膜中における含有量が35.5%に満たないと、十分な耐電食性を確保することができない。皮膜中のO濃度については、陽極酸化処理工程において十分な酸化皮膜が形成されていることを表しており、処理温度や処理時間の調整によって、増減させることができる。
S(硫黄)は、耐電食性を向上させるのに有効な元素であるが、酸化アルミニウム被膜中の含有量が2.1%に満たない場合は十分な効果が得られない一方、7.9%を超えると皮膜の耐久性が損なわれることから、2.1〜7.9%の上記範囲内とする。
なお、酸化アルミニウム皮膜中のSは、陽極酸化処理時の電解液中の硫酸からもたらされるものであって、電解液中の硫酸濃度や処理時間の調整によって皮膜中のS濃度を増減させることができる。
N(窒素)は、Sと同様に、耐電食性の向上に寄与する元素であるが、このような効果を発揮させるには、酸化アルミニウム皮膜中の含有量を少なくとも6.2%とする必要がある。一方、19.8%を超えると皮膜の耐久性が確保できなくなることから、上記したように6.2〜19.8%の範囲内とする。
酸化アルミニウム皮膜中のNは、陽極酸化処理時の電解液に含まれる硝酸銀に由来するものであって、電解液中の硝酸銀濃度や処理時間、電流密度を調整することによって皮膜中のN濃度を増減させることができる。
Ag(銀)は、酸化アルミニウム皮膜の耐久性向上に有効な元素であるが、皮膜中の含有量が過剰になると、耐電食性が損なわれるため、5.2%以下に抑えることが必要となる。
このAgは、陽極酸化処理時の電解液に含まれる硝酸銀から酸化アルミニウム皮膜中にもたらされるものであって、電解液中の硝酸銀濃度や処理時間、電流密度を調整することによって皮膜中のAg濃度を増減させることができる。なお、Agは、皮膜の基材側界面に偏在する傾向があるので、その検出や定量にはこれを配慮する必要がある。
また、アルミニウム合金製基材の硬度については、十分な耐へたり性を確保する観点から、70HRF以上であることが好ましい
すなわち、本発明の締結構造は、鉄合金又はアルミニウム合金から成るボルトを用いて、このボルトとは異なる金属、例えば、標準電極電位の低いマグネシウム合金から成る部材を締結したものであって、上記ボルトと部材の間に本発明の上記座金を介在させた構造を有する。したがって、両金属部材間に局部電池が形成されるのを阻止して、電食の発生を防止することができる。
このとき、ボルト材料とは異なる金属から成る部材の代表例としては、例えばオイルパン、シリンダーヘッドカバー、チェーンケース、トランスミッション用ケースなどを挙げることができ、特にこれら部材がマグネシウム合金製の場合に、当該締結構造採用の効果が顕著なものとなる。
成分及び硬度の異なる各種のアルミニウム合金製板材を準備し、これら板材から、外径20mm、内径8.5mm、厚さ3mmの座金基材を切り出した。
そして、上記基材に下記の処理条件の下に、それぞれ陽極酸化処理を施し、当該基材の表面に成分組成の異なる酸化アルミニウム皮膜を形成し、実施例、参考例及び比較例に相当する座金をそれぞれ作製した。
・電解液・・・硫酸:180g/L、アクリル樹脂組成物:10〜15g/L、
硝酸銀:10〜25g/L
・処理温度・・・10〜20℃
・電流密度・・・1〜3A/dm2
実施例及び参考例については、電解液成分、処理温度、電流密度を上記範囲内で変化させることによって、それぞれの皮膜組成を変化させている。一方、比較例については、電解液濃度、処理温度、電流密度を上記範囲外で設定することによって、皮膜組成を変化させている。
また、表中の比較例11及び12は、それぞれ公知例を示し、前者はNiめっきを30μmの厚さに施したもの、後者はフッ素樹脂から成るコーティングを10μmの厚さに施したものである。
上記により作製され、表1に示した実施例、参考例及び比較例の座金の性能を以下の試験方法に基づいてそれぞれ評価し、その結果を表2に示す。
図2に示すように、30×30×5mmのサイズを有するマグネシウム合金板11の中央に、8.5mm径の穴を開け、上記実施例、参考例及び比較例により得られた座金1を取り付けた鋼製ボルト12(M8)を挿通し、鋼製ナット13により締結した。
この締結品のナット側をゴム系材料によってマスキングを施したのち、50℃に保持した3.5%NaCl水溶液中に24時間浸漬した。そして、浸漬試験後のマグネシウム合金板11について、断面を観察し、電食による減肉量(最大電食深さ)を測定した。この結果を表2に示す。なお、電食による板材の減肉は、部品の穴あきや亀裂の発生、締結ボルトの軸力低下を招くことから、少ないほど望ましいことは言うまでもない。
図3に示すように、20×20×17mmのサイズのマグネシウム合金板15の中央に、8.5mm径の穴を開け、上記実施例、参考例及び比較例により得られた座金1を取り付けた鋼製ボルト12(M8)を挿通し、上記同様に、鋼製ナット13により締結した。
このように締結した部材を150℃に保持した加熱炉に500時間放置した後、室温に戻した状態で残存軸力を測定し、加熱試験前後の軸力変化率を算出することにより、座金の耐へたり性を評価した。この結果を表2に併せて示す。なお、表中には、加熱試験前の初期の軸力に対する残存軸力を百分率で表記しており、これがが低い場合には、締結部品の緩みによる振動発生や気密性、水密性の劣化を招くことから、当然のことながら高いほど望ましい。
図3と同様に、マグネシウム合金板15を鋼製ボルト12とナット13によって締結するに際し、締結軸力を0〜30kNとし、各締結軸力における皮膜の割れや剥離の有無を観察することによって、各座金に形成された皮膜の耐久性を評価した。表2にこの結果を示す。
これら比較例のうち、公知例に属するNiめっき皮膜を備えた座金(比較例11)は、特に耐電食性に劣り、樹脂皮膜を備えた座金(比較例12)については、耐電食性は比較的良好であるものの、耐へたり性及び皮膜の耐久性において劣ることが判明した。
B 基材(アルミニウム合金)
1 座金
11、15 マグネシウム合金板
12 鋼製ボルト
13 鋼製ナット
Claims (8)
- アルミニウム合金から成る基材の表面に、質量比で35.5〜54.2%のO、2.1〜7.9%のS、6.2〜19.8%のN、1.2〜5.2%のAgを含有し、残部をAl及び不可避的不純物とする酸化アルミニウム皮膜を備えたことを特徴とする座金。
- 上記基材が、質量比で0.4〜1.5%のMgと、0.5%以下のCuを含有するアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の座金。
- 上記基材の硬さが70HRF以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の座金。
- 鉄合金又はアルミニウム合金から成るボルトを用いて、当該ボルトとは異なる金属から成る部材を締結して成る締結構造において、上記ボルトと部材の間に請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の座金が介在していることを特徴とする締結構造。
- 上記座金と接触する部材がマグネシウム合金から成るものであることを特徴とする請求項4に記載の締結構造。
- 請求項4又は5に記載の締結構造を備えたことを特徴とする車両用部品。
- 内燃機関用部品又駆動系部品であることを特徴とする請求項6に記載の車両用部品。
- 上記部材がオイルパン、シリンダーヘッドカバー、チェーンケース、又はトランスミッション用ケースであることを特徴とする請求項4又は5に記載の締結構造。
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