JP5418199B2 - 強度と靱性に優れた板ばね用鋼及び板ばね部品 - Google Patents

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Description

本発明は、脱炭を抑制できると共に、強度と靱性に優れた板ばね用鋼及び板ばね部品に関する。
自動車用の懸架ばねとしては、板ばねや、丸棒を素材としたばねでねじり応力が負荷されるばね(トーションバー、スタビライザ、(太径)コイルばね等。以下、適宜、丸棒ばねという。)が使用されている。コイルばねは一般的に乗用車に多く使用されており、板ばねはトラックに多く使用されている。この板ばねや丸棒ばねは、自動車の足廻り部品の中では重量的に大きい部品の中の1つであり、従来から軽量化のために高強度化の検討が継続して続けられている部品である。
この高強度化においては疲労強度の向上が特に重要であり、そのための対策の一つとして、材料の高硬度化がある。
ところが、丸棒ばねでも板ばねでも、高硬度化により引張強さを高めると通常環境では疲労強度向上に効果があるが、硬度の上昇に伴い靱性が低下するため、腐食環境下においてばね表面に腐食ピットを生じたり、何らかの原因によって表面傷等の欠陥を生じた場合には、硬度が低い場合に比較してその影響が大きくなり、疲労強度が大きく低下してしまうという問題があった。そのため、高硬度化しても靱性が低下しない強度及び靱性に優れた板ばね用鋼の開発が強く望まれていた。
高硬度化しても高強度と高靱性を両立するための対策については、従来から様々な研究が行われており、例えば特許文献1に示されるような技術が報告されている。
特開平11−29839号公報
しかしながら、高強度と高靱性を両立させるために提案されている従来のばね鋼は、上記した特許文献等のように、弁ばねや懸架ばね等のコイルばね、スタビライザーやトーションバー等の丸棒を素材とした丸棒ばねへの適用を前提としたものが多く、板ばねへの適用を前提とするばね鋼の開発は丸棒ばね用の開発に比べると少なかった。
そして、従来の丸棒ばねを前提に提案された鋼材は、丸棒ばねでは顕著に生じないが板ばねでは顕著に生じる板ばね特有の問題を解決できる最適な成分系とはなっていなかった。
具体的には、板ばねにおいては、丸棒ばねの素材と比較して最終製品の断面積がかなり大きいため、棒鋼や線材等からなる丸棒ばねに比較して圧延後の冷却速度が小さくなると共に、圧延による断面積の減少率も小さいため、脱炭が最終製品に残りやすいという点を考慮する必要がある。
また、鋼の靱性の向上には、C含有率を低くすることが有効であるが、例えばHV500以上にまで硬度を高くすると低温焼き戻しとなり、従来の板ばね用鋼においては低温焼き戻し脆性域に入ってしまう。そのため、従来鋼においては優れた硬度と靱性とを両立させることが困難であった。
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、脱炭を抑制できると共に、強度と靱性に優れた板ばね用鋼及び板ばね部品を提供しようとするものである。
第1の発明は、質量%で、C:0.40〜0.50%未満、Si:0.40〜0.85%、Mn:0.55〜1.20%、Cr:0.70〜1.50%、Ti:0.010〜0.070%未満、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不純物元素からなることを特徴とする板ばね用鋼にある(請求項1)。
第2の発明は、質量%で、C:0.40〜0.50%未満、Si:0.40〜0.85%、Mn:0.55〜1.20%、Cr:0.70〜1.50%、Ti:0.010〜0.070%未満、B:0.0005〜0.0050%を含有し、
さらに質量%で、Cu:0.20〜0.50%、Ni:0.20〜1.00%、及びV:0.05〜0.30%から選ばれる1種以上を含有し、
残部がFe及び不純物元素からなることを特徴とする強度及び靱性に優れた板ばね用鋼にある(請求項2)。
第3の発明は、第1又は第2の発明の板ばね用鋼を用いて成形されたことを特徴とする板ばね部品にある(請求項3)。
第1及び第2の発明の板ばね用鋼は、上記特定組成を有している。
具体的には、上記板ばね用鋼は、C含有率を比較的低くしながら脱炭量の増加に問題が生じない範囲でSiを上記特定含有率で含有している。そのため、焼き戻し軟化抵抗を高め、より高い温度での焼き戻しを可能にするとともに、低温焼き戻し脆性域の温度域を高温側にシフトさせることができる。さらに、Ti及びBを必須元素として添加してあるため、粒界強度の向上を図ることができる。
その結果、例えばHV500以上という高硬度域においても、優れた靱性を示すことができる。
このように、本発明によれば、脱炭を抑制できると共に、強度と靱性に優れた板ばね用鋼を提供することができる。
次に、第3の発明の板ばね部品は、上記第1又は第2の発明の板ばね用鋼を用いて成形されたものである。具体的には、上記板ばね部品は、上記板ばね用鋼をばね形状に成形し、焼入及び焼戻しを行って作製することができる。
このように、本発明の板ばね部品は、上記第1又は第2の発明の板ばね用鋼を用いているため、優れた強度及び靱性を兼ね備えると共に、脱炭を抑制することができる。
実施例にかかる、炭素(C)量と衝撃値との関係を示す説明図。 実施例にかかる、ケイ素(Si)量と衝撃値との関係を示す説明図。 実施例にかかる、ケイ素(Si)量と脱炭深さとの関係を示す説明図。 実施例にかかる、硬さと衝撃値との関係を示す説明図。
本発明の板ばね用鋼は、上記のごとく、C、Si、Mn、Cr、Ti、及びBを上記特定の組成範囲で含有する。
以下、各成分毎に含有率の範囲を限定した理由について説明する。
C:0.40〜0.50%未満
Cは、焼入焼戻し処理後に十分に優れた強度及び硬さを確保するために不可欠な元素である。
Cの含有率が0.40%未満の場合には、板ばねとして十分な強度を確保することができなくなるおそれがある。
一方、0.50%以上の場合には、高硬度域で十分な靱性を確保することが困難になるおそれがある。
また、本願発明においては、C含有率を上記特定範囲に制限しつつ、Ti及びBを含有している。そのため、上記ばね用鋼は、硬度と靱性をより高いレベルで兼ね備えることができる。
即ち、通常、低硬度域においてはC含有率が低い方が靱性は大きくなるが、例えばHV500以上の高硬度域においては焼き戻し温度が低くなって低温焼き戻し脆性域になってしまうため、Cの含有率が低い方がかえって靱性が低下するという結果となる。しかし、本願発明のように、上記特定量のTi及びBの添加と後述の特定量のSiの添加との組合せの効果によって、C含有率を低くした状態でも高硬度域における靱性が大きく向上し、C含有率が高い場合よりもさらに靱性を向上させることができる。
Si:0.40〜0.85%
Siは、低C含有率の鋼において、優れた強度及び硬さを確保するために必要な元素である。また、低温焼き戻し脆性域の温度範囲を高温側に変化させる効果があるため、高硬度化のために低温で焼もどした場合の靱性を大きく高めることのできる元素である。
Siの含有率が0.40%未満の場合には、上記効果が十分に得られず、低温での焼き戻しにより十分な靱性を確保させることが困難になる。その結果、優れた強度及び硬さを両立させることが困難になる。一方、0.85%を超える場合には、丸棒を素材とするばねに比べて断面積が大きく、圧延後の冷却速度が小さくなる板ばね用鋼においてはフェライト脱炭を助長させ、疲労強度の低下の原因となる。
また、靱性をより向上できるという観点から、Si含有率は0.50%を超えて含有させることが好ましい。
Mn:0.55〜1.20%
Mnは、板ばね用鋼として必要な焼入性を確保するために必要不可欠な元素である。
Mnの含有率が0.55%未満の場合には、焼入性を確保することが困難になるおそれがある。一方、1.20%を超える場合には、焼入性が過剰になり、焼割れが発生し易くなるおそれがある。
Cr:0.70〜1.50%
Crは、板ばね用鋼として必要な焼入性を確保するために必要不可欠な元素である。
Crの含有率が0.70%未満の場合には、焼入性を確保することが困難になるおそれがある。一方、1.50%を超える場合には、焼入性が過剰になり、焼割れが発生し易くなるおそれがある。
Ti:0.010〜0.070%未満
鋼は、含有が避けられない不純物元素として微量のNを含有しているが、Tiは、Nの存在下でTiNの形成を促すことによりBNの生成を抑制し、B添加による後述の効果が損なわれることを防止する効果がある。
Tiの含有率が0.010%未満の場合には、BN生成の抑制効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、Tiを0.070%以上添加してもTi添加による上述の効果が飽和するため、経済的な観点からTi含有率の上限は上述のごとく0.070%未満がよい。
B:0.0005〜0.0050%
Bは、板ばね用鋼として必要な焼入性を確保するために必要不可欠な元素であり、さらに粒界強度の向上にも効果がある。また、上記した通り、Tiとの複合添加により高硬度域での靱性向上に大きな効果を有する。
Bの含有率が0.0005%未満の場合には、上述の効果を十分に得ることができなくなるおそれがある。また、Bは、極めて少量の含有で効果を得られる元素であり、多量に含有させてもその効果が飽和する。よって、B含有率の上限は上述のごとく0.0050%とすることがよい。
上記第1の発明の板ばね用鋼は、上記のごとくC、Si、Mn、Cr、Ti、及びBを上記特定の組成範囲で含有し、残部がFe及び不純物元素からなる。
一方、上記第2の発明の板ばね用鋼は、上記第1の発明と同様にC、Si、Mn、Cr、Ti、及びBを上記特定量含有し、さらに質量%で、Cu:0.20〜0.50%、Ni:0.20〜1.00%、及びV:0.05〜0.30%から選ばれる1種以上を含有し、残部がFe及び不純物元素からなる。

このようにCu、Ni、及びVから選ばれる1種以上を上記特定の含有率で含有する場合には、硬度、靱性、及び耐食性をより向上させることができる。
以下、Cu、Ni、及びVの各成分毎に含有率の範囲を限定した理由について説明する。
Cu:0.20〜0.50%
Cuは、腐食環境において生成する腐食ピットの成長を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。
Cu含有率が0.20%未満の場合には、Cuによる耐食性の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、0.50%を超えて添加してもCu添加による耐食性の向上効果が飽和すると共に、熱間加工性が悪くなるおそれがある。
Ni:0.20〜1.00%
Niも、Cuと同様に、腐食環境において生成する腐食ピットの成長を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。
Ni含有率が0.20%未満の場合には、Niによる耐食性の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、1.00%を超えて添加してもNi添加による耐食性の向上効果が飽和するおそれがあり、経済的な観点からNi含有率の上限は1.00%がよい。
V:0.05〜0.30%
Vは、Vは、焼入焼戻し組織を微細化させ、強度及び靱性をバランス良く向上させる効果がある。
Vの含有率が0.05%未満の場合には、V添加による結晶粒の微細化効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、0.30%を超えて添加してもV添加による作用効果が飽和するおそれがあり、経済的な観点からV含有率の上限は0.30%がよい。
なお、上記板ばね用鋼は、鋼の製造時に必須の工程である脱酸処理に必要な量のAl(0.040%以下程度)を不純物として含有してもよい。
上記板ばね部品は、上記板ばね用鋼を成形し、焼入及び焼戻しを施すことにより作製することができる。これにより焼戻しマルテンサイト組織とすることができる。
また、既に説明した通り、上記板ばね用鋼は、特に高硬度域にて従来鋼と比べて優れた特性(高強度及び高靱性の両立)が得られるため、ビッカース硬さ500以上の硬さにて使用することが好ましい。
ビッカース硬さは、焼入後に行う焼戻し温度の適切な調整により、上述のごとく500以上に調整することができる。
(実施例1)
本例は、本発明の板ばね用鋼にかかる実施例及び比較例について説明する。
まず、表1に示す化学成分を有する板ばね用鋼(試料E1〜試料E13、及び試料C1〜試料C10)を複数種類用意した。なお、表1に記載の成分のうちCu、Niについては、これらの一部は不純物としての含有率を示してある。
表1に示す板ばね用鋼のうち、上記試料E1〜試料E10は本発明鋼であり、上記試料C1〜試料C5はC、Si、及びB等の一部成分含有率が本発明鋼とは異なる比較鋼であり、試料C6は従来鋼であるSUP10、試料C7は従来鋼であるSUP11A、試料C8は従来鋼であるSUP6である。
Figure 0005418199
表1に示す成分の鋼材は、真空誘導溶解炉を用いて溶製し、得られた鋼塊からφ18mmの丸棒に鍛伸加工した後、焼きならし処理を施すことにより丸棒に加工し、後述する試験用の供試材とした。また、実際の板ばねと同一形状で行う試験については、上記鋼塊を鋼片に圧延し、さらに幅70mm、厚さ20mmに熱間圧延した後、焼ならし処理を施すことにより試験片を準備した。
このようにして得られた丸棒及び板材を用いて、後述の各種評価試験に用いる試験片(丸棒試験片又は板材試験片)を作製し、各種評価を行った。具体的には、丸棒については、後述の衝撃試験、及び脱炭試験を実施し、板材については、後述の圧延材脱炭試験、耐久試験、及び耐食性評価を実施した。
次に、評価方法について説明する。
<衝撃試験>
上述の丸棒からUノッチ試験片を作製し、ねらい硬さHV540(ビッカース硬さ)になるように成分の違いによる焼き戻し軟化抵抗の違いを考慮し、焼き戻し温度を調整して焼入及び焼戻しを施し、組織を焼戻しマルテンサイト組織とした。その後、室温にて衝撃試験を実施した。
このようにして各試料(試料E1〜試料E10、及び試料C1〜試料C8)の衝撃値を測定した。その結果を表2に示す。
また、炭素(C)含有率と衝撃値、及びケイ素(Si)含有率と衝撃値との関係をグラフにプロットした。C含有率と衝撃値との関係を図1に示し、Si含有率と衝撃値との関係を図2に示す。
<脱炭試験>
まず、φ18mmの丸棒から切削により直径φ8mm、高さ12mmの円柱型試験片を作製(試験前の脱炭量は0)した。次いで、円柱型試験片を真空中で昇温速度900℃/分で加熱し、温度900℃で5分間加熱した。その後、大気雰囲気にて、予め測定しておいた上述の板材作製時における熱間圧延後の冷却曲線と同等の冷却速度で冷却した。次いで、試験片を切断し、研磨した後、ナイタールによりエッチングした。その後、光学顕微鏡により表層の脱炭深さ(DM−F)を測定した。その結果を表2に示す。
また、ケイ素(Si)含有率と脱炭深さとの関係をグラフにプロットした。これを図3に示す。
<圧延材脱炭試験>
圧延により作製した幅70mm×厚さ20mmの圧延材を長手方向に垂直な断面で切断し、光学顕微鏡により脱炭深さ(DM−F)を測定した。その結果を表2に示す。また、板材との形状・断面積等の違いによる脱炭深さへの影響を明確するため、板材製造に用いた鋼塊と同じ鋼塊を圧延してφ12mmの丸棒を作製し、同様に断面を切断して脱炭深さ(DM−F)を測定した。その結果を表2に示す。
<耐久試験>
熱間圧延により作製した幅70mm×厚さ20mmの圧延材を板ばね形状に成形加工した。次いで、ねらい硬さHV540(ビッカース硬さ)になるように焼入及び焼戻しを施し、焼戻しマルテンサイト組織とした後、ショットピーニング処理を施した。このようにして得られたショットピーニング処理を施した板ばね部品について、680±500MPaの応力で破断するまで耐久試験を実施し、各試料から得られた板ばね部品の破断寿命を測定した。
破断寿命は、破断が生じるまでの回数を測定し、40万回を超える場合を「○」として評価し、40万回以下の場合を「×」として評価した。その結果を表2に示す。
<耐食性評価>
圧延により作製した幅70mm×厚さ20mmの圧延材に焼入及び焼戻しを施してマルテンサイト組織とした後、切削により幅30mm×厚さ8mm×長さ100mmの板状試験片を作製した。次いで、板状試験片に、濃度5wt%、温度35℃の塩化ナトリウム水溶液(塩水)を2時間噴霧し(塩水噴霧処理)、温度60℃の熱風で4時間乾燥させ(乾燥処理)、さらに温度50℃、湿度95%以上の条件で2時間湿潤させた(湿潤処理)。これらの塩水噴霧処理、乾燥処理、及び湿潤処理を1サイクルとし、これを合計60サイクル繰り返し行った。その後、試験片表面に生成した腐食生成物を除去し、腐食部の断面に現れる最大の腐食ピット深さを光学顕微鏡を用いて測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0005418199
表2及び図1〜図3より知られるごとく、Cの含有率が低すぎる試料C1は、狙い硬さを得るための焼き戻し温度が著しく低くなり、疲労寿命(破断寿命)が低下していた。
また、Cの含有率が高すぎる試料C2及びSiの含有率が低すぎる試料C3は、高硬度としたときの衝撃値が低く、靱性が不十分であった。
また、Siの含有率が高すぎる試料C4は、フェライト脱炭量が増加し、疲労寿命が低下していた。ここで、試料C4においては、比較のため、自動車のコイルばねの形状及び寸法に相当するφ12mmの棒鋼についての脱炭深さも同時に示したが、Si含有量が高いにもかかわらず、フェライト脱炭は確認できなかった。この結果より、φ10〜φ20mm程度で用いられる自動車等のコイルばねやさらに細い弁ばね等では問題のない高Si材も板ばね用としては使用時に脱炭による疲労強度低下の可能性が高いことがわかる。
また、Bを含有していない試料C5は、粒界強度が低いため、高硬度域での衝撃値及び疲労寿命が低下していた。
また、従来鋼である試料C6及び試料C7は、ねらい硬さを得る焼き戻し温度が低温焼き戻し脆性域となるため、本例のように硬度を高くした場合の衝撃値が低く、靱性が悪い。さらに、疲労寿命も低下していた。
また、従来鋼である試料C8は、フェライト脱炭量が多くなっていた。
これに対し、本願発明の試料E1〜試料E12は、低炭素含有率でも、優れた強度及び靱性を兼ね備えると共に、フェライト脱炭が生じにくいため、耐久性にも優れていることがわかる。そのため、例えばトラック等の自動車用の板ばね等に好適に用いることができる。
また、図2より知られるごとく、衝撃値を高くして靱性をより向上させるためには、Si含有率を高めることが効果的であり、特に0.50%を超える量まで高めるとより好ましいことがわかる。
以上のように、質量%で、C:0.40〜0.50%未満、Si:0.40%〜0.85%、Mn:0.55〜1.20%、Cr:0.70〜1.50%、Ti:0.010〜0.070%未満、B:0.0005〜0.0050%を含有する板ばね用鋼(試料E1〜試料E10)が好適であることがわかる。かかる板ばね用鋼を採用することにより、脱炭を抑制できると共に、強度と靱性に優れた板ばね部品の実現が可能になる。
(実施例2)
実施例1においては、HV540を狙い硬さとしたが、本例においては、狙い硬さを変更した試験片について衝撃試験を行い、硬さと衝撃値との関係を調べた。
即ち、実施例1の試料E1、試料E7、試料C3、及び試料C6について、狙い硬さを変えて焼入及び焼戻しを施して試験片を作製し、実施例1と同様に衝撃試験を行った。その結果を表3及び図4に示す。図4は、横軸に各試料のビッカース硬さ(HV)をとり、縦軸に各試料の衝撃値をとり、硬さと衝撃値との関係を示すものである。
Figure 0005418199
表3及び図4より知られるごとく、試料C3及び試料C6は、硬さを高くすると、衝撃値が低下し、靱性が劣化することがわかる。
これに対し、本願発明の組成範囲にある試料E1及び試料E2は、硬さを高くしても、高い衝撃値を維持しており、優れた強度と靱性を兼ね備えることがわかる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.40〜0.50%未満、Si:0.40〜0.85%、Mn:0.55〜1.20%、Cr:0.70〜1.50%、Ti:0.010〜0.070%未満、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不純物元素からなることを特徴とする強度及び靱性に優れた板ばね用鋼。
  2. 質量%で、C:0.40〜0.50%未満、Si:0.40〜0.85%、Mn:0.55〜1.20%、Cr:0.70〜1.50%、Ti:0.010〜0.070%未満、B:0.0005〜0.0050%を含有し、
    さらに質量%で、Cu:0.20〜0.50%、Ni:0.20〜1.00%、及びV:0.05〜0.30%から選ばれる1種以上を含有し、
    残部がFe及び不純物元素からなることを特徴とする強度及び靱性に優れた板ばね用鋼。
  3. 請求項1又は2に記載の板ばね用鋼を用いて成形されたことを特徴とする板ばね部品。
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