JP4044460B2 - 冷間成形ばね用鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、冷間成形法によってコイルばねに成形するのに適したばね用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特許第3064672号公報
【0003】
近年、地球温暖化の観点から二酸化炭素ガスの排出量削減が強く求められている。そのため、自動車等の車両には、燃費向上に繋がる車体の軽量化が重要となっており、懸架用コイルばねにおいても一層の軽量化が図られている。コイルばねの軽量化を達成するためには、使用するばね素線の直径を細くするか、あるいは使用するばね素線の長さを短くする必要がある。所要のばね特性を維持しつつコイルばねの軽量化を達成するには、引張強度で1900MPa以上(ロックウェル硬さHRCでは52以上に相当)の高い材料強度が求められている。
【0004】
ところで、懸架用コイルばねの製造方法には、大別して熱間成形法と冷間成形法の二種類がある。前者は、鋼線を熱間加工によってコイル形状に成形した後、焼入れ焼戻しを行って所要のばね強度に調整するため、成形が比較的容易である。一方、後者は、あらかじめ所要のばね強度に調整された鋼線を用い、冷間加工によってコイル形状に成形するため、ばねの製造における設備面・工程面での簡素化効果が高く経済的な方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
冷間加工性ばね用鋼には、焼入れ焼戻し後において上記のような高強度が求められると同時に、冷間加工に耐え得る強靭性も必要とされる。そのような鋼材を得るためには、高強度の観点からすればC含有量を高めることが考えられるが、その場合は強靭性の付与が困難となるため、逆にC含有量を低減させることにより靭性を確保しつつ、強度不足を補うための合金元素を添加させることになる。また、強靭化対策としてV、Nb、Ti、Al等の合金元素を添加し、微細炭窒化物による結晶粒微細化効果を利用することも有効である。しかし、合金元素を多量に添加させると熱間圧延後の強度(硬さ)が過度なものとなり、その後の引抜きや伸線加工、コイリング等の冷間加工の際に割れやカッピー状の断線が発生したり、または焼入れの際に割れが生じてしまうといった問題があった。そのため、熱間圧延後に焼鈍等の軟化処理を行い、加工性を改善したりする方法も取られるが、この場合は製造コストが増大するといった問題が生じてしまう。
【0006】
さらに、上記のような鋼材は、V系炭化物が鋼材表面で局部電極となり腐食ピットを発生させるため、腐食疲労強度に劣るものとなってしまうという問題もあった。
【0007】
したがって、本発明の課題は、高強度及び強靭性、耐腐食疲労強度特性を満足させ、且つ、冷間加工性及び耐焼割れ性を改善させた、冷間成形ばね用鋼を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・発明の効果】
上記課題を解決するため、本発明の冷間成形ばね用鋼の第一では、
0.36質量%以上0.46質量%以下のCと、
1.8質量%以上2.6質量%以下のSiと、
0.2質量%以上1.2質量%以下のMnと、
0.015質量%以下のPと、
0.01質量%以下のSと、
0.1質量%以上0.5質量%以下のCuと、
0.1質量%以上1.5質量%以下のNiと、
0.05質量%以上1質量%以下のCrと、
0.002質量%以上0.012質量%以下のNと、
0.0005質量%以上0.003質量%以下のBと、
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つ、
Cの含有量をWC、Mnの含有量をWMn、Crの含有量をWCr、Siの含有量をWSi、Niの含有量をWNi、Bの含有量をWBとしたとき、
WC+WMn+WCrが1.2質量%以上2質量%以下、
及びWSi/3+WCr/2+WMn+353WBが1.4質量%以上2.1質量%以下、
及びWCu+WNiが0.4質量%以上であることを特徴とする。
また、本発明の冷間成形ばね用鋼の第二では、
0.36質量%以上0.46質量%以下のCと、
1.8質量%以上2.6質量%以下のSiと、
0.2質量%以上1.2質量%以下のMnと、
0.015質量%以下のPと、
0.01質量%以下のSと、
0.1質量%以上0.5質量%以下のCuと、
0.1質量%以上1.5質量%以下のNiと、
0.05質量%以上0.40質量%以下のCrと、
0.002質量%以上0.012質量%以下のNと、
0.05質量%以上0.5質量%以下のMoとを含有し、且つ、
0.05質量%以上0.3質量%以下のV;
0.02質量%以上0.05質量%以下のNb;
0.02質量%以上0.07質量%以下のTi;
0.005質量%以上0.04質量%以下のAl;
0.0005質量%以上0.003質量%以下のB;
のうちいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つ、
Cの含有量をW C 、Mnの含有量をW Mn 、Crの含有量をW Cr 、Siの含有量をW Si 、Niの含有量をW Ni 、Bの含有量をW B としたとき、
C +W Mn +W Cr が1.2質量%以上2質量%以下、
及びW Si /3+W Cr /2+W Mn +353W B が1.4質量%以上2.1質量%以下、
及びW Cu +W Ni が0.4質量%以上であることを特徴とする。
なお、本明細書にて「主成分」(「主体に」等も同様)とは、着目している材料あるいは組織において、最も質量含有率の高い成分(相も概念として含む)を意味する。
【0009】
上記本発明の冷間成形ばね用鋼は、鋼材の化学組成分を特定することによって、高強度及び強靭性、耐腐食疲労強度特性を満足させ、且つ、冷間加工性及び耐焼割れ性を具備するとともに、特に懸架用コイルばねを製造するに適した冷間成形用ばね鋼を得ることに成功したものである。
【0010】
以下、本発明における各数値範囲の限定理由を説明する。
本発明の冷間成形ばね用鋼の組成限定理由は以下の通りである。
Fe(鉄):主成分
Feは、鋼を構成するのに必須の成分であるため、本発明の冷間成形ばね用鋼の主成分として含有させる。
【0011】
C(炭素):0.36質量%以上0.46質量%以下
Cは、焼入れ焼戻し後の鋼の強度を高めるために必須の元素である。所望のばね強度を得るには0.36質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると、焼入れ焼戻し後の靭性が低下し疲労強度及び腐食疲労強度を劣化させるばかりでなく、圧延後の硬さが硬くなり過ぎ冷間加工性を低下させてしまうので、上限を0.46質量%とする。
【0012】
Si(ケイ素):1.8質量%以上2.6質量%以下
Siは、固溶強化元素として鋼の強度及び耐へたり性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るには1.8質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると靭性が低下し疲労特性を劣化させるばかりでなく、製造工程中の高温加熱時に鋼表面に脱炭を生じ、加工性をも悪化させてしまうので、上限を2.6質量%とする。
【0013】
Mn(マンガン):0.2質量%以上1.2質量%以下
Mnは、鋼溶製時の脱酸材として有効であると共に、焼入れ性の向上に寄与する元素である。また、Sによる害を無害化する効果も有する。これらの効果を得るには0.2質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると焼入れ時に粒界酸化を助長し脆化を招くだけでなく、圧延後の線材の硬さを過度に高め冷間加工性をも劣化させてしまうので、上限を1.2質量%とする。
【0014】
P(リン):0.015質量%以下
Pは、オーステナイト化加熱時にオーステナイト粒界に偏析して、結晶粒界を脆弱化させてしまうので、低減することが望ましい元素である。経済性を考慮して含有量の上限を0.015質量%以下とする。
【0015】
S(硫黄):0.01質量%以下
Sは、Pと同様にオーステナイト粒界を脆化させ、またMnSを形成してばねの疲労強度の劣化を招いてしまうので、低減することが望ましい元素である。経済性を考慮して含有量の上限を0.01質量%以下とする。
【0016】
Cu(銅):0.1質量%以上0.5質量%以下
Cuは、鋼の耐腐食性を高めるのに有効な元素で、腐食疲労強度を向上させる効果がある。また、フェライト脱炭の防止にも有効である。これらの効果を得るためには0.1質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると熱間加工性が損なわれてしまうので、上限を0.5質量%とする。
【0017】
Ni(ニッケル):0.1質量%以上1.5質量%以下
Niは、鋼の耐腐食性を高めるのに有効な元素で、腐食疲労強度を向上させる効果がある。また、フェライト脱炭の防止に有効である。これらの効果を得るためには0.1質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると鋼のコストが増加してしまうので、上限を1.5質量%とする。
【0018】
Cr(クロム):0.05質量%以上1質量%以下
Crは、焼入れ性の向上に寄与する元素である。この効果を得るためには0.05質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させるとMnと同様に圧延後の線材の硬さを過度に高め、冷間加工性を劣化させてしまうので、上限を1質量%とする。
【0019】
N(窒素):0.002質量%以上0.012質量%以下
Nは、鋼中で結晶粒微細化に寄与する炭窒化物及び窒化物を形成する効果がある。この効果を得るためには0.002質量%以上の含有が必要であるが、過剰に含有させると、粗大なNb炭窒化物が生成して粒界ピン止め効果が得られず、またTiN系の介在物を生成し鋼の疲労強度を低下させるため、その上限を0.012質量%とする。
【0020】
さらに、Cの含有量をWC、Mnの含有量をWMn、Crの含有量をWCr、Siの含有量をWSi、Niの含有量をWNiとしたとき、本発明の冷間成形ばね用鋼は次の要件を満たす。
【0021】
WC+WMn+WCr:1.2質量%以上2質量%以下
本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、焼入れ硬化した状態で鋼が引張強度1900MPa以上(ロックウェル硬さHRCでは52以上に相当)の高強度を確保するためには、C、Mn、Crのそれぞれの含有率が上記の本発明の特定する範囲にあるほか、さらにWC+WMn+WCrが1.2質量%以上必要であることが判った。しかし、その値が過度に大きくなると、圧延材の伸線加工時にカッピー状割れあるいは破断が生じてしまうため、上限を2質量%とする。
【0022】
WSi/3+WCr/2+WMn+353W B:1.4質量%以上2.1質量%以下
また、焼入れ硬化した状態で鋼が引張強度1900MPa以上(ロックウェル硬さHRCでは52以上に相当)の高強度を確保するためには、Si、Cr、Mn、Bのそれぞれの含有率が上記の本発明の特定する範囲にあるほか、さらにWSi/3+WCr/2+WMn+353W Bが1.4質量%以上必要であることが判った。しかし、その値が過度に大きくなると鋼の焼入れ性が過剰となり、鋼の焼入れ時に焼割れを生じてしまうことがあるため、上限を2.1質量%とする。
【0023】
WCu+WNi:0.4質量%以上
また、上記鋼が引張強度1900MPa以上(ロックウェル硬さHRCでは52以上に相当)の高強度を有しつつ、優れた腐食疲労強度を確保するためには、Cu、Niのそれぞれの含有率が上記の本発明の特定する範囲にあるほか、さらにWCu+WNiが0.4質量%以上必要であることが判った。
【0024】
また、本発明の冷間成形ばね用鋼では、上記組成に加え、
0.05質量%以上0.3質量%以下のV;
0.02質量%以上0.05質量%以下のNb;
0.02質量%以上0.07質量%以下のTi;
0.005質量%以上0.04質量%以下のAl;
のうちの1種又は2種以上を含有することができる。
【0025】
以下、各数値の限定範囲を説明する。なお、上述した限定範囲と同一であるものは省略する。
【0026】
V(バナジウム):0.05質量%以上0.3質量%以下
Vは、鋼中で炭化物、炭窒化物を形成してオーステナイト結晶粒を微細化させたり、また析出硬化に寄与してばねの耐へたり性を向上させる効果がある。これらの効果を得るためには0.05質量%以上の含有が必要である。Vの炭化物は鋼表面で局部電極となり腐食ピットを形成して亀裂破壊の起点となってしまうので、上限を0.3質量%とする。また、上限を超えて含有させると巨大な一次炭化物が晶出し、冷間加工性が劣化してしまう。
【0027】
Nb(ニオブ):0.02質量%以上0.05質量%以下
Nbは、Vと同様に鋼中で炭化物、炭窒化物を形成してオーステナイト結晶粒を微細化させる効果がある。この効果を得るためには0.02質量%以上の含有が必要である。しかし、過剰に含有してもその効果は飽和し、むしろ鋼の熱間加工性及び冷間加工性を低下させるので、上限を0.050%とする。
【0028】
Ti(チタン):0.02質量%以上0.07質量%以下
Tiは、Nb、Vと同様に鋼中で炭化物、炭窒化物を形成してオーステナイト結晶粒を微細化させる効果がある。この効果を得るためには0.02質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると、鋼の焼入れ加熱時に未溶解化合物として残留し、そのサイズが比較的大きいため、破壊の起点となって疲労強度の低下をもたらすので、上限を0.07質量%とする。
【0029】
Al(アルミニウム):0.005質量%以上0.04質量%以下
Alは、鋼中で窒化物を形成してオーステナイト結晶粒の微細化に寄与するが、酸化物形成傾向の強い元素なので多量に含有すると鋼中の酸化物系介在物量を増し、鋼の清浄度を損なう。それゆえ、Al含有率の上限を0.040%とする。また、鋼中のO(酸素)含有率は20ppm以下とすることが好ましい。
【0030】
B(ホウ素):0.0005質量%以上0.003質量%以下
Bは、鋼の結晶粒界に優先的に偏析し、P、Sの結晶粒界偏析を防止して靭性を向上させる効果がある。また、線材の冷間加工性を向上させるためにSi、Mn、Crなどの焼入れ性に寄与する合金元素を低減すると、素材の焼入れ性が不足し、不完全焼入れ組織を生じてしまうが、Bはこのような焼入れ性低下を補う効果もある。これらの効果を得るためには0.0005質量%以上の含有が必要であるが、過剰に含有させるとB窒化物を形成して、鋼の靭性を損ない、また鋼の疲労特性も悪化させるので、上限を0.0030質量%とする。
【0031】
また、上記課題を解決するため、本発明の冷間成形ばね用鋼では、
0.36質量%以上0.46質量%以下のCと、
1.8質量%以上2.6質量%以下のSiと、
0.2質量%以上1.2質量%以下のMnと、
0.015質量%以下のPと、
0.01質量%以下のSと、
0.1質量%以上0.5質量%以下のCuと、
0.1質量%以上1.5質量%以下のNiと、
0.05質量%以上0.40質量%以下のCrと、
0.002質量%以上0.012質量%以下のNと、
を含有し、且つ、
0.05質量%以上0.3質量%以下のV;
0.02質量%以上0.05質量%以下のNb;
0.02質量%以上0.07質量%以下のTi;
0.005質量%以上0.04質量%以下のAl;
0.0005質量%以上0.003質量%以下のB;
のうちいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つ、
Cの含有量をW C 、Mnの含有量をW Mn 、Crの含有量をW Cr 、Siの含有量をW Si 、Niの含有量をW Ni 、Bの含有量をW B としたとき、
C +W Mn +W Cr が1.2質量%以上2質量%以下、
及びW Si /3+W Cr /2+W Mn +353W B が1.4質量%以上2.1質量%以下、
及びW Cu +W Ni が0.4質量%以上であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の冷間成形ばね用鋼では、上記組成に加え、0.05質量%以上0.5質量%以下のMoを含有することができる。
Moは、焼入れ性の向上に寄与する効果がある。また、耐食性を高め、腐食疲労強度を向上させる効果もある。これらの効果を得るためには0.05質量%以上の含有が必要であるが、過度に含有させると圧延後の線材にベーナイトが生成し、冷間加工性の劣化を招いてしまうので、上限を0.5質量%とする。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
表1及び2に示す化学組成を有する鋼を溶製して得た鋼塊を分塊圧延し、さらに線材圧延によってφ13mmの圧延線材とした。線材圧延は鋼片を1100℃に加熱し圧延終了温度869℃として行った。圧延終了後は空冷とした。なお、表中の各々の組成において、本発明で規定する組成範囲を逸脱しているものには、下限を下回る場合は下向矢印(↓)、上限を上回る場合は上向矢印(↑)を付している。
【0034】
また、WC+WMn+WCrの値、及びWSi/3+WCr/2+WMn+353WBの値、及びWCu+WNiの値は、表3及び4に示している。なお、表中にはWC+WMn+WCrを「C+Mn+Cr」と、WSi/3+WCr/2+WMn+353WBを「Si/3+Cr/2+Mn+353*B」と、WCu+WNiを「Cu+Ni」と表している。
【0035】
【表1】
Figure 0004044460
【0036】
【表2】
Figure 0004044460
【0037】
前記圧延線材の切断面について硬さを測定した。ロックウェルCスケール硬さを30点測定し、平均硬さに6倍の標準偏差σ(バラツキ)を加えたものを「圧延後硬さ」として表3及び4に示す。該圧延後硬さはHRC34を上限とする。また、前記圧延線材にボンダ皮膜処理を施し、冷間でφ12mmまで伸線加工し、伸線材を得た。該伸線加工の際における、破断発生の有無を「伸線時破断の有無」として表3及び4に示す。
【0038】
前記伸線材を周波数30kHz、電流300Aの条件で高周波コイル中に通線させた後、直ちに水冷により焼入れを行い、焼入れ材を得た。該焼入れ材にについて割れの発生の有無を調べ、その結果を「焼割れ」として表3及び4に示す。また、前記焼入れ材の断面芯部硬さを測定した。ロックウェルCスケール硬さを20点測定し、その平均値を「焼入れ後硬さ」として、所望の硬さ(HRC52)を満たしているかを評価した。その結果を表3及び4に示す。
【0039】
前記焼入れ材を焼戻して、硬さHRC52の焼戻し材を得た。該焼戻し材から採取した試験片に対して、塩水噴霧試験機を用いて、▲1▼35℃で5%NaCl水溶液を2h噴霧し、▲2▼相対湿度70%で60℃の環境において4h乾燥させ、▲3▼相対湿度95%で35℃の環境において2h保持するサイクル▲1▼〜▲3▼を9回繰り返した後、応力振幅を700MPaとして両振りねじり疲労試験を行った。破断繰返し数を測定し、破断までの繰返し回数で腐食疲労特性を評価した。「腐食疲労強度」として表3及び4に示す。なお、破断繰返し数が100000回に達するか否かを良否の判断基準とした。
【0040】
また、前記疲労試験後の腐食部の断面から、腐食ピットの深さを計40点計測し、ピット深さの最大値(最大ピット深さ)を測定した。最大ピット深さが100μm以上か否かを良否の判断基準とした。最大ピット深さの測定結果を「腐食ピット深さ」として表3及び4に示す。また、腐食ピット深さと、前記破断繰返し数との関係を図1に示す。
【0041】
次に、表1及び2に示す化学組成を有する鋼を溶製して得た鋼塊を分塊圧延し、線材圧延によってφ16mmの圧延線材を得た。線材圧延は鋼片を1100℃に加熱し圧延終了温度869℃として行った。そして圧延終了後、空冷し、更に焼入れ焼戻し処理を施して硬さHRC52の焼戻し材を得た。その後、該焼戻し材から、JIS3号2mmUノッチ試験片を作製し、シャルピー衝撃試験を実施した。そして、得られた値から、所望の靭性(シャルピー衝撃値で40J/cm以上)を満たしているかを評価した。その結果を「シャルピー衝撃試験」として、表3及び4に示す。シャルピー衝撃値が40J/cmを下回ると、腐食疲労強度が急激に劣化するため、40J/cm以上か否かを良否の判断基準とする。
【0042】
【表3】
Figure 0004044460
【0043】
【表4】
Figure 0004044460
【0044】
以下、表3及び4、並びに図1に示した評価結果について説明する。
本発明が特定する組成範囲を充足する本発明24〜33は、いずれの試験においても、良好な特性を示し、本発明とする腐食疲労強度に優れた高強度ばね鋼であることがわかった。
【0045】
本発明が特定する範囲よりもWC+WMn+WCr値が低い比較例1及び2は(比較例1はC含有量、また比較例2はCr含有量及びWSi/3+WCr/2+WMn+353WB値についても不足)、焼入れ後の硬さがHRC52を下回っており、強度及び焼入れ性が不足したものであった。
【0046】
本発明が特定する範囲よりもWSi/3+WCr/2+WMn+353WB値が不足している比較例3〜5は(比較例3はSi含有量、比較例4はMn含有量についても不足)、比較例1及び2の場合と同様に、焼入れ後の硬さがHRC52を下回っており、強度及び焼入れ性が不足したものであった。
【0047】
本発明が特定する範囲よりもWSi/3+WCr/2+WMn+353WB値が過剰な比較例6〜9は(比較例6はSi含有量、比較例7はMn含有量、比較例Cr含有量、比較例9はB含有量についても過剰)、焼入れ時に焼割れが生じた。
【0048】
本発明が特定する範囲よりもP含有量が過剰な比較例10、12、14、またS含有量が過剰な比較例11、13は、シャルピー衝撃試験値が40J/cmを下回っており、靭性が不足したものであった。また、これらは腐食疲労強度も不足しており、中でも比較例10、11、13では腐食ピット深さが100μmを超えていた。
【0049】
比較例16〜23に関しては(比較例16はC、比較例17はSi、比較例18はCr、比較例19はV、比較例20はBの含有量が過剰なものであり、また比較例21はCu、比較例22はNiの含有量が不足しており、さらに比較例23はWCu+WNiが不足している)、いずれも腐食疲労強度が不足しており、また腐食ピット深さも100μmを超えたものであった。
【0050】
以上、本発明24,28〜33によって示すごとく、本発明が特定する化学組成を有する鋼は、圧延材の伸線加工性に優れ、焼入れにおいても割れを生じることがなく、製造性に優れている。また、焼入れ材の強度もHRC52以上、すなわち引張強度1900MPa以上の高強度を保持しつつ、靭性及び腐食疲労強度に優れる等、ばね鋼として所用の諸特性も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】腐食ピット深さと、破断繰返し回数との関係を表す図

Claims (4)

  1. 0.36質量%以上0.46質量%以下のCと、
    1.8質量%以上2.6質量%以下のSiと、
    0.2質量%以上1.2質量%以下のMnと、
    0.015質量%以下のPと、
    0.01質量%以下のSと、
    0.1質量%以上0.5質量%以下のCuと、
    0.1質量%以上1.5質量%以下のNiと、
    0.05質量%以上1質量%以下のCrと、
    0.002質量%以上0.012質量%以下のNと、
    0.0005質量%以上0.003質量%以下のBと、
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つ、
    Cの含有量をWC、Mnの含有量をWMn、Crの含有量をWCr、Siの含有量をWSi、Niの含有量をWNi、Bの含有量をWBとしたとき、
    WC+WMn+WCrが1.2質量%以上2質量%以下、
    及びWSi/3+WCr/2+WMn+353WBが1.4質量%以上2.1質量%以下、
    及びWCu+WNiが0.4質量%以上、
    であることを特徴とする冷間成形ばね用鋼。
  2. 0.05質量%以上0.3質量%以下のV;
    0.02質量%以上0.05質量%以下のNb;
    0.02質量%以上0.07質量%以下のTi;
    0.005質量%以上0.04質量%以下のAl;
    のうちの1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間成形ばね用鋼。
  3. 0.05質量%以上0.5質量%以下のMoを含有することを特徴とする請求項2記載の冷間成形ばね用鋼。
  4. 0.36質量%以上0.46質量%以下のCと、
    1.8質量%以上2.6質量%以下のSiと、
    0.2質量%以上1.2質量%以下のMnと、
    0.015質量%以下のPと、
    0.01質量%以下のSと、
    0.1質量%以上0.5質量%以下のCuと、
    0.1質量%以上1.5質量%以下のNiと、
    0.05質量%以上0.40質量%以下のCrと、
    0.002質量%以上0.012質量%以下のNと、
    0.05質量%以上0.5質量%以下のMoとを含有し、且つ、
    0.05質量%以上0.3質量%以下のV;
    0.02質量%以上0.05質量%以下のNb;
    0.02質量%以上0.07質量%以下のTi;
    0.005質量%以上0.04質量%以下のAl;
    0.0005質量%以上0.003質量%以下のB;
    のうちいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つ、
    Cの含有量をW C 、Mnの含有量をW Mn 、Crの含有量をW Cr 、Siの含有量をW Si 、Niの含有量をW Ni 、Bの含有量をW B としたとき、
    C +W Mn +W Cr が1.2質量%以上2質量%以下、
    及びW Si /3+W Cr /2+W Mn +353W B が1.4質量%以上2.1質量%以下、
    及びW Cu +W Ni が0.4質量%以上、
    であることを特徴とする冷間成形ばね用鋼。
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