JP2009007644A - クロムモリブデン鋼の代替鋼の成分設計方法 - Google Patents

クロムモリブデン鋼の代替鋼の成分設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Moの使用量を低減でき、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても内部硬さの差や引張強度の差が殆どなく、またクロムモリブデン鋼と比べて耐食性を改善し、しかも耐遅れ破壊性にも優れた代替鋼の成分を設計する方法を提供する。また、伸線材をボルト形状に成形するときの冷間加工性を改善できる代替鋼の成分設計方法を提供する。
【解決手段】クロムモリブデン鋼のMoを0.05%(質量%の意味。以下同じ)以下に低減する一方、鋼中のCrを本文で規定する式(1)を満足するように増量し、且つSiを前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満とし、Mnを0.20%以上、前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満とし、更にTi:0.01〜0.15%とB:0.0005〜0.003%を含有し、更にCu:0.25%以下(0%を含まない)及び/又はNi:0.25%以下(0%を含まない)を含有するように設計する。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用や各種産業機械用のボルトの素材として使用されるクロムモリブデン鋼に関するものであり、より詳細には、クロムモリブデン鋼の代替鋼を設計する方法に関するものである。
引張強さが約1000N/mm2を超える高強度ボルトは、一定期間後に突然脆性破壊するいわゆる遅れ破壊が生じ易い。そこで高強度ボルト用の鋼としては、耐食性を有しており、しかも耐遅れ破壊性を改善するために、比較的高温で焼戻しできるクロムモリブデン鋼が使用されている。
クロムモリブデン鋼としては、JISの場合は、G4053(2003年)に化学成分が規定されており、この規定によると、Moを少なくとも0.15%含有している。しかし近年、Mo元素の価格高騰により、クロムモリブデン鋼の鋼材費が高くなってきた。そのためボルト1本当たりに占める鋼材費の割合が高くなってきている。
そこでボルトのコストを削減するために、Moの使用量を低減した代替鋼が求められる。ところが本発明者らが代替鋼について検討したところ、Moの使用量を単純に低減すると、焼入性や耐食性が劣化する他、耐遅れ破壊性も著しく低下することが判明した。
ところで上記ボルトは、例えば、溶製したボルト用鋼を圧延し、軟化焼鈍した後、伸線し、ボルト形状に成形した後、焼入れ焼戻しして製造される。ところがMoの使用量を単純に低減した代替鋼を、Mo低減前のクロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻しすると、鋼材の品質が大きく変化(例えば、内部硬さの低下や引張強度の低下)することが分かった。そのためクロムモリブデン鋼と同程度の品質を確保するには、焼戻し条件を変えなければならない。
また、伸線材をボルト形状に成形する際には、冷間加工性が良好であることも要求される。
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、Moの使用量を低減でき、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても内部硬さの差や引張強度の差が殆どなく、またクロムモリブデン鋼と比べて耐食性を改善し、しかも耐遅れ破壊性にも優れた代替鋼の成分を設計する方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、伸線材をボルト形状に成形するときの冷間加工性を改善できる代替鋼の成分設計方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係るクロムモリブデン鋼の代替鋼の成分設計方法とは、クロムモリブデン鋼のMoを0.05%(質量%の意味。以下同じ)以下に低減する一方、鋼中のCrを下記式(1)を満足するように増量し、且つSiを前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満に低減し、Mnを0.20%以上、前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満とし、更に、Ti:0.01〜0.15%およびB:0.0005〜0.003%とし、更に、Cu:0.25%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.25%以下(0%を含まない)とする点に要旨を有する。
Cr+1.8×AMo≦BCr≦ACr+4.2×AMo …(1)
式中、ACrはクロムモリブデン鋼中のCr量(%)を示し、AMoはクロムモリブデン鋼中のMo量(%)を示し、BCrは代替鋼中のCr量(%)を示す。
上記方法で設計された代替鋼は、前記クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししたときに、内部硬さの差が±10Hv以内であり、引張強度の差が±30MPa以内となる。上記クロムモリブデン鋼は、強度を高めるために、JISで規定されるSCM430、SCM432、SCM435、SCM440、またはSCM445のいずれかであることが好ましい。
前記代替鋼に含まれるN量を0.01%以下(0%を含まない)とすることにより、耐遅れ破壊性を一層向上させることができる。前記代替鋼は、更に他の成分として、(a)Al:0.15%以下(0%を含まない)、(b)Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはCa:0.005%以下(0%を含まない)、等を含有することが好ましい。
本発明には、上記代替鋼の成分設計方法に基づいて成分調整する機械構造用合金鋼の製造方法も含まれる。
本発明によれば、クロムモリブデン鋼中のCr量とMo量に基づいて代替鋼中のCr量を増量することにより代替鋼中のMoの使用量を低減できる。この代替鋼は、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度が同程度で、しかも耐遅れ破壊性にも優れている。また、代替鋼にCuとNiを含有させることで、クロムモリブデン鋼に比べて耐食性を改善できる。また、クロムモリブデン鋼中のSiとMnを低減する一方で、TiとBを添加して成分設計した代替鋼は、冷間加工時の変形抵抗が小さくなるため、冷間加工性を改善できる。
本発明では、クロムモリブデン鋼のMoの使用量を0.05%以下に低減することが重要である。価格が高騰しているMoの使用量を低減することで、コストを削減できるからである。
Moの使用量はできるだけ低減することが好ましく、例えば0.03%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.01%以下であり、最も好ましくは0%である。
ところがクロムモリブデン鋼の化学成分に対して、Mo使用量を単に低減すると、耐遅れ破壊性が劣化する他、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても同程度の硬さや引張強度を確保することができない。
そこで本発明では鋼中のCrを、下記(1)式を満足するように増量する。
Cr+1.8×AMo≦BCr≦ACr+4.2×AMo …(1)
式中、ACrはクロムモリブデン鋼中のCr量(%)を示し、AMoはクロムモリブデン鋼中のMo量(%)を示し、BCrは代替鋼中のCr量(%)を示す。
Crは、Moの代替元素であり、焼戻し後の硬さと引張強度を確保するために重要な元素である。特にCrは、焼入れ性を高めて高強度を確保する上で有用に作用する元素であり、強度を高めても冷間鍛造性(特に変形能)を大きく劣化させないという特色を有している。また、Crは耐食性の向上にも作用する。
上記(1)式は、代替鋼中のCr量を、クロムモリブデン鋼中のCr量とMo量に基づいて成分設計することを示しており、上記(1)式を規定した理由は次の通りである。クロムモリブデン鋼(成分設計前)と代替鋼(成分設計後)について夫々試験片を作製し、これを同じ条件で焼戻しし、試験片に含まれるCr量とMo量が内部硬さと引張強度に及ぼす影響度合いを調べた。その結果、Cr量とMo量が、内部硬さと引張強度に及ぼす影響度合いは、Cr:Mo=1:3であった。例えば、クロムモリブデン鋼からMoを0.1%低減した場合、同じ条件で焼戻ししてクロムモリブデン鋼(成分設計前)と同じ内部硬さと引張強度を確保するには、Crを0.3%余分に添加しなければならないことが分かった。こうしたことから下記(1a)式を導き出した。
またこのときの標準偏差(σ)を求めたところ約0.4であった。従って±3σをとったところ、上記(1)式を導出するに至った。
代替鋼中のCr量(BCr)が上記(1)式を満足するように成分設計すれば、代替鋼中のMoを0.05%以下に低減しても、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻しすることにより同程度の硬度や引張強度を維持でき、しかも耐遅れ破壊性を確保することができる。具体的には、前記クロムモリブデン鋼と前記代替鋼とを同じ条件で焼戻ししても、内部硬さの差が±10Hv以内となり、引張強度の差が±30MPa以内となる。
但し、上記BCrが、上記(1)式の左辺の値[ACr+1.8×AMo]を下回ると、焼入れ性が悪くなるため、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても硬度や引張強度が低下する。従ってBCrは、「ACr+2.2×AMo」以上とすることが好ましく、より好ましくは「ACr+2.6×AMo」以上、更に好ましくは「ACr+2.8×AMo」以上とする。
しかし上記BCrが、上記(1)式の右辺の値[ACr+4.2×AMo]を超えると、焼入れ性が良くなり過ぎるため、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻しすると、硬度や引張強度が高くなり過ぎる。また、耐遅れ破壊性も劣化する。更に、伸線材を冷間加工するときの変形抵抗が大きくなり、冷間加工性が悪くなる。従ってBCrは、「ACr+3.8×AMo」以下とすることが好ましく、より好ましくは「ACr+3.4×AMo」以下、更に好ましくは「ACr+3.2×AMo」以下とする。特に好ましくは、下記(1a)式を満足するように増量するのがよい。
Cr=ACr+3.0×AMo …(1a)
上記のようにクロムモリブデン鋼中のMoを低減する替わりにCrを増量したとしても、伸線材をボルト形状に成形するときの冷間加工性を高めることはできない。そこで冷間加工性を高めるには、使用される環境や地域、用途によって規格されるクロムモリブデン鋼の規格値における下限値よりもSiとMnを低減する一方で、BとTiを添加すればよい。
クロムモリブデン鋼のSiとMn量は、JIS(2003年)の場合には、G4053に下記表1に示すように規定されている。
Figure 2009007644
ところが本発明者らが検討したところ、Siは、球状化焼鈍した後の鋼を冷間加工するときの変形抵抗を高め、冷間加工性を悪化させることが分かった。また、Siは、焼入れ等の熱処理時に粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させることも判明した。従って代替鋼の成分を設計するに当っては、Siをクロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満に低減する。即ち、上記クロムモリブデン鋼がJIS規格品であれば、Siを0.15%未満に低減すればよい。好ましくは0.13%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.08%以下である。なお、Siは脱酸剤として用いられるため、下限は例えば0.01%以上(特に0.03%以上)である。
一方、Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、強度を高めるために含有される元素であるが、本発明者らが検討したところ、圧延後の冷却時における変態を促進させ、冷間加工性を悪化させることが分かった。また、Mnは、軟化工程(球状化焼鈍)時に鋼材が軟質化するのを阻害するため、これによって冷間加工性が悪くなる。更に、Mnは、粒界へ偏析して粒界強度を低下させ、耐遅れ破壊性も低下させる。従って本発明では、Mnをクロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満に低減する。即ち、Mnは下記表2に示す上限を満足するのがよい。Mnの好ましい上限とより好ましい上限についても下記表2に示す。
Figure 2009007644
但し、Mnが少な過ぎると、後述するようにTiとBを添加したとしても、焼入れ性を確保することができない。従ってMnは0.20%以上とする。好ましくは0.22%以上、より好ましくは0.27%以上である。
上記のようにMnを低減すると焼入れ性が不足するため、クロムモリブデン鋼と代替鋼とを同じ条件で焼戻ししても強度不足となり、内部硬さや引張強度を確保できない。そこで本発明では、クロムモリブデン鋼にTiとBを下記範囲で含有するように調整する。
[Ti:0.01〜0.15%およびB:0.0005〜0.003%]
TiとBは、耐遅れ破壊性を向上させる元素である。特にBは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効に作用する。また、Bは、耐遅れ破壊性を向上させるのにも作用する。従ってBは0.0005%以上含有するように成分設計する。好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.0013%以上である。しかし0.003%を超えると、鋼の靭性が低下する。従ってBは0.003%以下とする。好ましくは0.0025%以下、より好ましくは0.002%以下である。
Tiは、Bと併用添加してBの焼入れ性を向上させる元素である。即ち、Tiは、鋼中のNを固定してTiNを形成し、BNが生成するのを抑制してBをフリーな状態で存在させ、焼入れ性を向上させる元素である。また、Tiは、TiNやTiCを析出させて結晶粒を微細化し、耐遅れ破壊性を向上させる。従ってTiは0.01%以上含有するように成分設計する。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.04%以上である。しかし0.15%を超えると、加工性が低下し、熱間圧延後の表面に疵を形成する原因となる。従ってTiは0.15%以下とする。好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.08%以下である。
上述したように、クロムモリブデン鋼中のMoを低減する替わりにCrを増量すると、Cr添加による耐食性改善作用がある程度得られる。しかし、Crを増量した代替鋼であってもクロムモリブデン鋼と比べると耐食性が劣る場合があった。そこで本発明では、代替鋼の耐食性を成分設計前のクロムモリブデン鋼よりも高めるために、NiとCuを含有させる。
Niは、耐食性を向上させる元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、0.05%以上含有するのがよい。より好ましくは0.08%以上であり、更に好ましくは0.10%以上、特に好ましくは0.12%以上である。しかし過剰に含有すると、コスト高となり、Mo量を低減することによるコスト削減効果が損なわれる。従ってNiは0.25%以下とする。好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.18%以下である。
Cuは、Niと同様に耐食性を向上させる作用を有する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、0.05%以上のCuを含有するのがよい。より好ましくは0.08%以上であり、特に好ましくは0.10%以上である。JISによれば、Cuは0.30%を超えてはならないと規定されている。しかし過剰に含有すると粒界脆化を起こして耐遅れ破壊性を劣化させる原因となるほか、加工性も劣化させる。従って本発明では、Cuは0.25%以下とする。好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.17%以下である。
なお、NiとCuを併用するときは、NiとCuの合計を0.25%以下とするのがよい。好ましくは0.2%以下である。
本発明は、クロムモリブデン鋼のMoを0.05%以下、Siを前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満、Mnを0.20%以上、前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満に低減すると共に、鋼中のCr量を前記クロムモリブデン鋼中のCr量やMo量に基づいて代替鋼の成分を設計するところに特色があり、代替鋼を構成する他の元素は、元のクロムモリブデン鋼と同様であり、例えばJISの場合は、G4053に「クロムモリブデン鋼」として規定されている範囲を満足すればよい。即ち、JISに規定されるクロムモリブデン鋼に従えば、C、P、S量は下記表3の通りである。
Figure 2009007644
代替鋼の基本成分は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避不純物(例えば、P、S、Cu、トランプ元素等)である。特に、Pは0.025%以下(0%を含まない)、Sは0.025%以下(0%を含まない)であることが好ましい。
Pは、粒界偏析を起こして、耐遅れ破壊性を劣化させる元素である。従ってPは0.025%以下であることが好ましく、より好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.012%以下、特に好ましくは0.010%以下である。
Sは、鋼中で硫化物(例えば、MnSなど)を形成し、応力が負荷されたときにこの硫化物が応力集中箇所となって破壊の原因となる。従ってSは0.025%以下であることが好ましく、より好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.012%以下、特に好ましくは0.010%以下である。
なお、クロムモリブデン鋼(成分設計前)の基本成分に対して、代替鋼の基本成分が、Cで±0.02%、Pで±0.01%、Sで±0.015%であれば、クロムモリブデン鋼と代替鋼の成分は同じと考えてよい。
クロムモリブデン鋼としては、上記表1に挙げた鋼種の中でも、特にSCM430、SCM432、SCM435、SCM440、またはSCM445のいずれかであることが好ましい。これらの鋼種は、Cを多く含むため、鋼の焼入れ性が良く、高強度(例えば、引張強度が1000〜1400N/mm)を確保できるからである。
前記代替鋼に含まれるN量は特に限定されず、通常クロムモリブデン鋼に含まれる量と同様であってもよいが、特に0.01%以下(0%を含まない)であるのが好ましい。Nは、鋼中にAlNやTiNを形成して結晶粒を微細化し、耐遅れ破壊性を向上させるからである。Nは、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.006%以下である。なお、Nは0.002%以上であることが好ましく、より好ましくは0.0035%以上である。
本発明では、上記代替鋼が、更に他の元素として、(a)Al、(b)Mgおよび/またはCa、等を含有することも有効であり、含有させる成分の種類に応じて特性が更に改善される。これらの成分を含有する場合の好ましい範囲について以下説明する。
[(a)Al:0.15%以下(0%を含まない)]
Alは、鋼中のNを捕捉してAlNを形成し、結晶粒を微細化して耐遅れ破壊性を向上する元素である。しかし0.15%を超えると、酸化物系介在物が多く生成し、この介在物が耐遅れ破壊性を却って低下させる。従ってAlは0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.12%以下、更に好ましくは0.11%以下である。Alの下限は0.02%であることが好ましく、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.07%、特に好ましくは0.09%である。
[(b)Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはCa:0.005%以下(0%を含まない)]
MgとCaは、耐食性を向上させる元素であり、酸性になった腐食ピット部を中和し、応力が集中するのを低減する作用を有する。即ち、本発明ではCrを増量しているが、Crを増量すると耐食性が向上する一方で、腐食ピットを形成しやすい。そこでMgやCaを含有させると、腐食ピットを中和して応力が集中するのを防止できる。しかし多量に含有すると、鋼中に酸化物系介在物が生成し、この介在物が耐遅れ破壊性を低下させる。
従ってMgは0.005%以下であることが好ましく、より好ましくは0.0040%以下、更に好ましくは0.0035%以下である。Caは0.005%以下であることが好ましく、より好ましくは0.0040%以下、更に好ましくは0.0035%以下である。一方、Mgの下限は0.001%であることが好ましく、より好ましくは0.0020%、更に好ましくは0.0025%である。Caの下限は0.001%であることが好ましく、より好ましくは0.0020%、更に好ましくは0.0025%である。
MgとCaは夫々単独で、或いは併用して使用できる。MgとCaを併用する場合には、合計を0.008%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.007%以下、更に好ましくは0.006%以下である。
本発明におけるクロムモリブデン鋼の代替鋼は、上記の通りに構成されており、この代替鋼を用いて製造されるボルトは、引張強度が1000〜1400N/mm程度となり、しかもMoの使用量を低減しているにもかかわらず耐遅れ破壊性に優れている。
上記代替鋼を用いてボルトを製造するに当たっては、上記成分設計方法に基づいて鋼の化学成分を調整し、得られた機械構造用合金鋼(代替鋼)を成分設計前のクロムモリブデン鋼と同じ条件で圧延した後、軟化焼鈍や伸線等を行い、次いでボルト形状に成形加工したものを焼入れ焼戻しすればよい。代替鋼の化学成分が、上述した要件を満足すれば、成形加工時の変形抵抗が小さくなるため、冷間加工性が良好になり、また成分設計前のクロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても、内部硬さの差が±10Hv以内で、引張強度の差が±30MPa以内となるからである。
圧延から成形加工までの間には、一般的に、軟化焼鈍や伸線を何度か繰り返し行うが、このときの手順は特に限定されない。例えば、後記する実施例に示した条件aのように、上記代替鋼を熱間圧延した後、球状化焼鈍→伸線加工し、次いで成形加工してもよい。また、下記条件bのように、上記代替鋼を熱間圧延した後、伸線加工→球状化焼鈍→伸線加工し、次いで成形加工してもよい。或いは、下記条件cのように、上記代替鋼を熱間圧延した後、球状化焼鈍→伸線加工→球状化焼鈍→伸線加工し、次いで成形加工してもよい。
熱間圧延や球状化焼鈍、伸線加工、成形加工などの条件については特に限定されず、成分設計前のクロムモリブデン鋼と同じ条件にすればよい。
なお、本発明の成分設計方法は、クロムモリブデン鋼に適用できるものであるから、該クロムモリブデン鋼に相当する鋼(SCM相当鋼)として海外の例えばISO、SAE、AISI、DIN EN、NF EN、BS EN、ENなどの規格で規定されている鋼種にも適用できる。これらの規格で規定されているSCM相当鋼の成分組成は、下記表4および表5の通りである。なお、DIN ENで規定される22CrMoS35、DIN EN、NF EN、BS EN、ENで規定される42CrMo4や42CrMoS4のSiは、0.15%未満に低減すればよい。また、各元素の範囲は、JISで規定されるクロムモリブデン鋼の範囲と若干ずれる場合があるが、本発明の効果には影響を及ぼさないことを確認している。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記実験例1〜5では、JISで規定されるクロムモリブデン鋼と、その代替鋼とを同じ条件で焼戻ししたときの内部硬さの差と引張強度の差について検討すると共に、耐遅れ破壊特性の改善効果と耐食性の改善効果について検討した。一方、下記実験例6〜10では、JISで規定されるクロムモリブデン鋼と、その代替鋼について冷間加工性の改善効果について検討した。
[実験例1(SCM435相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、下記表6のA1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用いた。鋼種A1は、JISで規定されるSCM435相当鋼である。この鋼を、φ11.5mmまで熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。焼入れ温度は下記表7に示す温度とし、この温度で30分間保持した後、油冷して焼入れを行なった。焼戻し温度は下記表7に示す温度とし、この温度で90分間加熱した後、水冷して焼戻しを行なった。
また、鋼種A1の化学成分を基準とし、成分設計した下記表6に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種A2〜A16;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記と同じ条件で熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。
なお、表6には、クロムモリブデン鋼中のCr量とMo量から算出した「ACr+1.8×AMo」と「ACr+4.2×AMo」の値を示した。また、表6には、代替鋼中のCr量(BCr)が、上記(1)式を満足する場合を○、満足しない場合を×で示した。
得られた供試鋼のD/4位置(Dは直径)の硬さを、ビッカース硬度計を用いて4箇所測定し、その平均値を内部硬さとした。結果を下記表7に示す。表7には、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)の内部硬さとの差が±10HV以内の場合を判定○(合格)、±10を超える場合を判定×(不合格)として判定結果を示した。
また、得られた供試鋼から、図1に示す形状の引張試験用試験片と、図2に示す形状の遅れ破壊試験用試験片を夫々切り出し、夫々の試験片を用いて引張試験または遅れ破壊試験を行った。結果を下記表7に示す。
引張試験の結果として、表7にクロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)の引張強さとの差が±30MPa以内の場合を判定○(合格)、±30を超える場合を判定×(不合格)として判定結果を示した。
遅れ破壊試験は、図2に示す形状の遅れ破壊試験用試験片を、酸(15質量%HCl)に30分間浸漬した後、水洗、乾燥し、この試験片に大気中で応力を負荷し、100時間経過後における破断の有無を観察して行なった。負荷した応力は、1000N/mm2(切欠き引張強さの約50%に相当)、1500N/mm2(切欠き引張強さの約75%に相当)、1800N/mm2(切欠き引張強さの約90%に相当)の3段階とした。負荷応力が1500N/mm2の場合に破断が無ければ「耐遅れ破壊性に優れている」と評価し、負荷応力が1800N/mm2の場合に破断が無ければ「耐遅れ破壊性に特に優れている」と評価し、表7に○で示した。試験片の数は各5本とし、破断が認められた試験片が1本でも有る場合を「耐遅れ破壊性に劣り、破断有り」とし、表7に×で示した。
また、得られた供試鋼から、φ7.0×長さ40mmの耐食性試験用試験片を切り出し、該試験片を用いて耐食性試験を行った。耐食性試験として、複合サイクル試験機を用い、試験片に塩水噴霧を8時間行った後、温度35℃、湿度60%で16時間保持するサイクルを2週間行う腐食促進試験を行い、腐食による試験片の質量減少量(腐食減量)を測定した。
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)から切り出した試験片の腐食減量に対する、代替鋼(成分設計後の鋼)から切り出した試験片の腐食減量の比(成分設計後の鋼の腐食減量/成分設計後の鋼の腐食減量)を算出した。この比の値が1に近づくほど、成分設計後の鋼の耐食性は、成分設計前の鋼の耐食性と殆んど変化していないことを意味し、この比の値が小さくなるほど、成分設計後の鋼の耐食性は、成分設計前の鋼の耐食性よりも向上していることを意味する。本発明では、この比が0.9以下である場合を耐食性改善効果有り(合格、判定○)、0.9を超える場合を耐食性改善効果無し(不合格、判定×)として評価した。結果を下記表7に示す。
下記表6と表7から次のように考察できる。鋼種A1は従来鋼であり、鋼種A2〜A16は従来鋼の化学成分に対して鋼中のMoを低減し、化学成分を設計変更した例である。
No.2とNo.3は、鋼中のCuとNiが従来鋼(No.1)よりも少ないため、耐食性が悪くなっている。No.4は、鋼中のCrが少な過ぎるため、従来鋼(No.1)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さが低く、引張強度も低くなる。No.5は、鋼中のCrが多過ぎるため、従来鋼(No.1)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さが高く、引張強度も高くなる。また、耐遅れ破壊性も悪くなっている。
これに対し、No.8、No.11〜18は、Moの使用量を低減しているにもかかわらず、従来鋼(No.1)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度が同程度である。また、No.8、No.11〜18は、従来鋼(No.1)よりも耐遅れ破壊性が良好で、耐食性も向上している。
No.9とNo.10は、参考例であり、これらの例は、本発明で規定する要件を満足する代替鋼であるが、焼戻し温度を従来鋼の焼戻し温度と変えたため、内部硬さの差や引張強度の差が大きくなった。
なお、No.6とNo.7は、従来鋼(No.1)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度が同程度であり、耐遅れ破壊性も耐食性も良好であるが、後記する実験例6で示すように、変形抵抗が大きく、冷間加工性が改善できていない(表16参照)。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
[実験例2(SCM430相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、下記表8のB1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用い、上記実験例1と同様に熱間圧延、焼入れ焼戻し処理し、供試鋼を得た。鋼種B1は、JISで規定されるSCM430相当鋼である。
また、鋼種B1の化学成分を基準とし、成分設計した下記表8に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種B2〜B4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記と同じ条件で熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。得られた供試鋼について、上記実験例1と同じ条件で内部硬さの測定、引張強度試験、遅れ破壊試験、耐食性試験を行った。結果を下記表9に示す。
下記表8と表9から次のように考察できる。鋼種B1は従来鋼であり、鋼種B2〜B4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のMoを低減し、化学成分を設計変更した例である。No.22〜24は、Moの使用量を低減しているにもかかわらず、従来鋼(No.21)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度は同程度である。また、No.22〜24は、従来鋼(No.21)よりも耐遅れ破壊性が良好で、耐食性も向上している。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
[実験例3(SCM432相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、下記表10のC1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用い、上記実験例1と同様に熱間圧延、焼入れ焼戻し処理し、供試鋼を得た。鋼種C1は、JISで規定されるSCM432相当鋼である。
また、鋼種C1の化学成分を基準とし、成分設計した下記表10に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種C2〜C4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記と同じ条件で熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。得られた供試鋼について、上記実験例1と同じ条件で内部硬さの測定、引張強度試験、遅れ破壊試験、耐食性試験を行った。結果を下記表11に示す。
下記表10と表11から次のように考察できる。鋼種C1は従来鋼であり、鋼種C2〜C4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のMoを低減し、化学成分を設計変更した例である。No.32〜34は、Moの使用量を低減しているにもかかわらず、従来鋼(No.31)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度は同程度である。また、No.32〜34は、従来鋼(No.31)よりも耐遅れ破壊性が良好で、耐食性も向上している。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
[実験例4(SCM440相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、下記表12のD1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用い、上記実験例1と同様に熱間圧延、焼入れ焼戻し処理し、供試鋼を得た。鋼種D1は、JISで規定されるSCM440相当鋼である。
また、鋼種D1の化学成分を基準とし、成分設計した下記表12に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種D2〜D4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記と同じ条件で熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。得られた供試鋼について、上記実験例1と同じ条件で内部硬さの測定、引張強度試験、遅れ破壊試験、耐食性試験を行った。結果を下記表13に示す。
下記表12と表13から次のように考察できる。鋼種D1は従来鋼であり、鋼種D2〜D4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のMoを低減し、化学成分を設計変更した例である。No.42〜44は、Moの使用量を低減しているにもかかわらず、従来鋼(No.41)と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度は同程度である。また、No.42〜44は、従来鋼(No.41)よりも耐遅れ破壊性が良好で、耐食性も向上している。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
[実験例5(SCM445相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、下記表14のE1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用い、上記実験例1と同様に熱間圧延、焼入れ焼戻し処理し、供試鋼を得た。鋼種E1は、JISで規定されるSCM445相当鋼である。
また、鋼種E1の化学成分を基準とし、成分設計した下記表14に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種E2〜E4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記と同じ条件で熱間圧延した後、焼入れ焼戻し処理を行ない、供試鋼を得た。得られた供試鋼について、上記実験例1と同じ条件で内部硬さの測定、引張強度試験、遅れ破壊試験、耐食性試験を行った。結果を下記表15に示す。
下記表14と表15から次のように考察できる。鋼種E1は従来鋼であり、鋼種E2〜E4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のMoを低減し、化学成分を設計変更した例である。No.52〜54は、Moの使用量を低減しているにもかかわらず、クロムモリブデン鋼と同じ条件で焼戻ししても内部硬さや引張強度は同程度である。また、No.52〜54は、従来鋼(No.51)よりも耐遅れ破壊性が良好で、耐食性も向上している。
Figure 2009007644
Figure 2009007644
[実験例6(SCM435相当鋼)]
クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、上記表6のA1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼(鋼種A1)を用いた。この鋼を下記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
(条件a)
上記鋼をφ12.0mmまで熱間圧延した後、球状化焼鈍し、φ11.0mmまで伸線加工した。その後、φ10mm×長さ15mmの形状の圧縮試験片に機械加工した。
なお、上記球状化焼鈍は、760℃で5時間保持した後、冷却速度15℃/時間で650℃まで徐冷した後、大気放冷して行った。
また、鋼種A1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表6に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種A2〜A16;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、圧下率70%で端面拘束圧縮試験して変形抵抗を測定した。測定結果を下記表16に示す。
また、代替鋼の変形抵抗からクロムモリブデン鋼の変形抵抗を引いた値(成分設計後の鋼の変形抵抗−成分設計前の変形抵抗)を算出し、下記表16に併せて示した。
また、代替鋼の変形抵抗が、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)の変形抵抗よりも小さくなる場合を合格(○)、大きくなる場合を不合格(×)と判定した。判定結果を下記表16に示す。
上記表6と下記表16から次のように考察できる。鋼種A1は従来鋼であり、鋼種A2〜A16は従来鋼の化学成分に対して化学成分を設計変更した例である。
No.62、63、66、67は、鋼中のSiとMnを低減していないため、従来鋼(No.61)よりも変形抵抗が大きく、冷間加工性を改善できていない。
特に、No.63とNo.67から明らかなように、鋼中のSiとMnを低減していない場合は、TiとBを添加しても、変形抵抗が従来鋼(No.61)よりも大きくなり、冷間加工性を改善できないことが分かる。
No.65は、鋼中のCrが多過ぎるため、従来鋼(No.61)よりも変形抵抗が大きく、冷間加工性を改善できていない。
これに対し、No.68〜76は、鋼中のSiとMnを低減し、TiとBを添加しているため、従来鋼(No.61)より変形抵抗が小さく、冷間加工性を改善できている。
なお、No.64は、従来鋼(No.61)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性を改善できているが、上記実験例1で示したように、焼入れ焼戻し後の引張強さが低くなるか、耐遅れ破壊性に劣っている(表7参照)。
Figure 2009007644
[実験例7(SCM430相当鋼)]
上記実験例6において、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、上記表6の鋼種A1の代わりに、上記表8のB1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼(鋼種B1)を用いた。この鋼種B1を上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
また、上記鋼種B1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表8に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種B2〜B4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表17に示した。
上記表8と下記表17から次のように考察できる。鋼種B1は従来鋼であり、鋼種B2〜B4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のSiとMnを低減すると共に、TiとBを添加して化学成分を設計変更した例である。No.82〜84は、従来鋼(No.81)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性が良好である。
Figure 2009007644
[実験例8(SCM432相当鋼)]
上記実験例6において、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、上記表6の鋼種A1の代わりに、上記表10のC1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼(鋼種C1)を用いた。この鋼種C1を上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
また、上記鋼種C1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表10に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種C2〜C4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表18に示した。
上記表10と下記表18から次のように考察できる。鋼種C1は従来鋼であり、鋼種C2〜C4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のSiとMnを低減すると共に、TiとBを添加して化学成分を設計変更した例である。No.92〜94は、従来鋼(No.91)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性が良好である。
Figure 2009007644
[実験例9(SCM440相当鋼)]
上記実験例6において、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、上記表6の鋼種A1の代わりに、上記表12のD1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼(鋼種D1)を用いた。この鋼種D1を上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
また、上記鋼種D1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表12に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種D2〜D4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表19に示した。
上記表12と下記表19から次のように考察できる。鋼種D1は従来鋼であり、鋼種D2〜D4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のSiとMnを低減すると共に、TiとBを添加して化学成分を設計変更した例である。No.102〜104は、従来鋼(No.101)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性が良好である。
Figure 2009007644
[実験例10(SCM445相当鋼)]
上記実験例6において、クロムモリブデン鋼(成分設計前の鋼)として、上記表6の鋼種A1の代わりに、上記表14のE1に示す化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼(鋼種E1)を用いた。この鋼種E1を上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
また、上記鋼種E1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表14に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種E2〜E4;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件aで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表20に示した。
上記表14と下記表20から次のように考察できる。鋼種E1は従来鋼であり、鋼種E2〜E4は従来鋼の化学成分に対して鋼中のSiとMnを低減すると共に、TiとBを添加して化学成分を設計変更した例である。No.112〜114は、従来鋼(No.111)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性が良好である。
Figure 2009007644
[実験例11(SCM435相当鋼)]
上記実験例6において、条件aの代わりに下記条件bで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
(条件b)
上記鋼をφ14.3mmまで熱間圧延した後、φ12.0mmまで伸線加工した。その後、球状化焼鈍し、φ11.0mmまで伸線加工した。次いで、φ10mm×長さ15mmの圧縮試験片に機械加工した。なお、球状化焼鈍条件は、上記実験例6と同じである。
また、鋼種A1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表6に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種A2〜A16;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件bで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表21に示した。
上記表6と下記表21から次のように考察できる。No.122、123、126、127は、鋼中のSiとMnを低減していないため、従来鋼(No.121)よりも変形抵抗が大きくなり、冷間加工性を改善できていない。
特に、No.123とNo.127から明らかなように、鋼中のSiとMnを低減していない場合は、TiとBを添加しても、変形抵抗が従来鋼(No.121)よりも大きくなり、冷間加工性を改善できないことが分かる。
No.125は、鋼中のCrが多過ぎるため、従来鋼(No.121)よりも変形抵抗が大きく、冷間加工性を改善できていない。
これに対し、No.128〜136は、鋼中のSiとMnを低減し、TiとBを添加しているため、従来鋼(No.121)より変形抵抗が小さくなり、冷間加工性を改善できている。
なお、No.124は、従来鋼(No.121)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性を改善できているが、上記実験例1で示したように、焼入れ焼戻し後の引張強さが低くなるか、耐遅れ破壊性に劣っている。
Figure 2009007644
[実験例12(SCM435相当鋼)]
上記実験例6において、条件aの代わりに下記条件cで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。
(条件c)
上記鋼をφ14.3mmまで熱間圧延した後、球状化焼鈍し、φ12.0mmまで伸線加工した。その後、球状化焼鈍し、φ11.0mmまで伸線加工した。次いで、φ10mm×長さ15mmの圧縮試験片に機械加工した。なお、球状化焼鈍条件は、上記実験例6と同じである。
また、鋼種A1の化学成分を基準とし、成分設計した上記表6に示す化学成分を含有する代替鋼(鋼種A2〜A16;残部はFeおよび不可避不純物)を用い、上記条件cで熱間圧延等して圧縮試験片を作製した。得られた圧縮試験片を用い、上記実験例6と同じ条件で変形抵抗を測定した。圧縮試験片の変形抵抗と判定結果を下記表22に示した。
上記表6と下記表22から次のように考察できる。No.142、143、146、147は、鋼中のSiとMnを低減していないため、従来鋼(No.141)よりも変形抵抗が大きくなり、冷間加工性を改善できていない。
特に、No.143とNo.147から明らかなように、鋼中のSiとMnを低減していない場合は、TiとBを添加しても、変形抵抗が従来鋼(No.141)よりも大きくなり、冷間加工性を改善できないことが分かる。
No.145は、鋼中のCrが多過ぎるため、従来鋼(No.141)よりも変形抵抗が大きく、冷間加工性を改善できていない。
これに対し、No.148〜156は、鋼中のSiとMnを低減し、TiとBを添加しているため、従来鋼(No.141)より変形抵抗が小さくなり、冷間加工性を改善できている。
なお、No.144は、従来鋼(No.141)よりも変形抵抗が小さく、冷間加工性を改善できているが、上記実験例1で示したように、焼入れ焼戻し後の引張強さが低くなるか、耐遅れ破壊性に劣っている。
Figure 2009007644
図1は、引張試験用試験片の形状を示す模式図である。 図2は、遅れ破壊試験用試験片の形状を示す模式図である。

Claims (7)

  1. クロムモリブデン鋼のMoを0.05%(質量%の意味。以下同じ)以下に低減する一方、鋼中のCrを下記式(1)を満足するように増量し、且つSiを前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満に低減し、Mnを0.20%以上、前記クロムモリブデン鋼の規格値における下限値未満とし、
    更に、Ti:0.01〜0.15%およびB:0.0005〜0.003%とし、
    更に、Cu:0.25%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.25%以下(0%を含まない)とすることを特徴とするクロムモリブデン鋼の代替鋼の成分設計方法。
    Cr+1.8×AMo≦BCr≦ACr+4.2×AMo …(1)
    [式中、ACrはクロムモリブデン鋼中のCr量(%)を示し、AMoはクロムモリブデン鋼中のMo量(%)を示し、BCrは代替鋼中のCr量(%)を示す。]
  2. 前記クロムモリブデン鋼と前記代替鋼とを同じ条件で焼戻ししたとき、内部硬さの差が±10Hv以内であり、引張強度の差が±30MPa以内である請求項1に記載の代替鋼の成分設計方法。
  3. 前記クロムモリブデン鋼が、JISで規定されるSCM430、SCM432、SCM435、SCM440、またはSCM445のいずれかである請求項1または2に記載の代替鋼の成分設計方法。
  4. 前記代替鋼に含まれるNを0.01%以下(0%を含まない)とする請求項1〜3のいずれかに記載の代替鋼の成分設計方法。
  5. 前記代替鋼が、更に他の成分として、Al:0.15%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の代替鋼の成分設計方法。
  6. 前記代替鋼が、更に他の成分として、Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはCa:0.005%以下(0%を含まない)
    を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の代替鋼の成分設計方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の代替鋼の成分設計方法に基づいて成分調整することを特徴とする機械構造用合金鋼の製造方法。
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