しかしながら、このような従来の給湯システムには以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
すなわち、従来の給湯システムにおいて、省電力モード時に給湯装置の電源部からリモコンに供給する供給電圧(電源電圧)の電圧値は、給湯システムの施工状況にかかわらず、あらかじめ規定値として設定された電圧値が用いられている。
ところで、省電力モード時の電源電圧の電圧値は低ければ低いほど省電力モードによる省電力効果が高まるが、その一方で、あまり低すぎると通信線の電気抵抗による電圧降下によって、リモコンへの供給電圧がリモコンの動作に必要な最低限の電圧レベルを下回ってしまうおそれがあるので、従来の給湯システムでは、施工可能な通信線の長さ(通信線の抵抗値)に上限を設定するとともに、通信線がこの最大の長さで施工された場合であってもリモコンが電圧不足に陥らないように省電力モード時の電源電圧の電圧値(規定値)を設定している。
そのため、従来の給湯システムでは、通信線が最大の長さ未満で施工された場合には(実際の施工のほとんどはこの最大の長さよりも短い通信線で施工される)、省電力モード時に、リモコンの動作に必要な最低限の電圧レベルを上回る電圧がリモコンに供給されることになり、その分だけリモコンで無駄な電力が消費されていた。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、施工状況に応じて端末装置に供給する電源電圧を変更することができる給湯システムを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る給湯システムは、給湯装置の電源部から通信線を介して端末装置へ電源を供給する構成を備えた給湯システムにおいて、上記給湯装置の制御部は、省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の最適化制御として、上記端末装置に対する供給電圧を低下させたときに、端末装置からの通信がある限り、または、上記端末装置から送られてくる通信の内容が供給電圧の低下に対して否定的なものでない限り、端末装置への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行することによって、端末装置に供給する最適供給電圧を決定する制御構成を備えたことを特徴とする。
すなわち、この請求項1に係る給湯システムでは、端末装置に対する供給電圧を省電力化するにあたり、給湯装置の制御部が端末装置に対する供給電圧を徐々に低下させながら、その際の端末装置との通信状況に基づいて端末装置に供給する最適供給電圧を決定するので、通信線の長さなどの施工状況に応じて、端末装置に供給する最適な供給電圧を決定できる。
本発明の請求項2に係る給湯システムは、請求項1に記載の給湯システムにおいて、省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の最適化制御として、上記給湯装置の制御部は、上記端末装置に対するアップデート通信を行っている状態で、アップデート通信に対する端末装置からの応答信号がある限り、端末装置への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行した上で端末装置からの応答信号がなくなれば、応答信号が得られていたときの最低供給電圧を最適供給電圧とする制御構成を備えたことを特徴とする。
すなわち、請求項2に係る給湯システムでは、端末装置に対する供給電圧を決定するにあたり、給湯装置の制御部は端末装置に対するアップデート通信を行いながら端末装置に対する供給電圧を徐々に低下させていく。このとき、端末装置に供給される電圧が端末装置の動作に必要な最低限の電圧レベル以上であれば端末装置からアップデート通信に対する応答信号が得られるが、最低限の電圧レベル未満になると端末装置からの応答信号がなくなる。そのため、この請求項2に係る給湯システムでは、給湯装置の制御部が端末装置に対する供給電圧を低下させていきながらアップデート通信に対する端末装置からの応答信号を監視し、応答信号がなくなれば、応答信号がなくなる直前、つまり、応答信号が得られていたときの最低供給電圧を端末装置に供給する最適供給電圧とする。これにより、端末装置に対して、当該端末装置が通信可能な状態を維持できる最低レベルの電圧を供給することができるようになり、端末装置に対する供給電圧を可及的に小さくすることができる。
なお、この請求項2に係る給湯システムは、端末装置とのアップデート通信を利用して端末装置に対する最適供給電圧を決定するので、端末装置側の構成を変更することなく、つまり、給湯装置側の設計変更だけで、端末装置に対する供給電圧の最適化を図ることができる。
本発明の請求項3に係る給湯システムは、請求項1に記載の給湯システムにおいて、上記端末装置の制御部に給湯装置から供給される電源電圧を検出する電圧検出手段を備えてなり、省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の最適化制御として、上記給湯装置の制御部は、上記端末装置から供給電圧低下の停止を求める通信を受信しない限り、端末装置への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行し、端末装置から供給電圧低下の停止を求める通信を受信した時の供給電圧を最適供給電圧とする制御構成を備えたことを特徴とする。
すなわち、請求項3に係る給湯システムでは、端末装置側に給湯装置から供給される電源電圧を検出する電圧検出手段が備えられる。そして、端末装置に対する供給電圧を決定するにあたり、給湯装置の制御部は、端末装置から供給電圧低下の停止を求める通信を受信するまで端末装置に対する供給電圧を徐々に低下させていく。これに対して、端末装置の制御部は、給湯装置から供給される電圧(つまり、電圧検出手段で検出される電圧)が所定電圧(具体的には、端末装置の動作に必要な最低限の電圧レベルよりわずかに高い電圧)まで低下したときに、給湯装置の制御部に対して供給電圧低下の停止を求める通信を行う。これにより、給湯装置の制御部は、これ以上下げると端末装置が電圧不足に陥る電源電圧の下限値を認識することができる。そのため、給湯装置の制御部は、この下限値を下回らないように端末装置に供給する電圧を決定することで、端末装置の動作に必要な最低限の電圧レベルに近い値の電圧を端末装置に供給することができ、端末装置に対する供給電圧を可及的に小さく設定することができる。
なお、この請求項3に係る給湯システムは、端末装置側に電圧検出手段を設ける必要があることから、この発明を既存の給湯システムに適用するには、端末装置側の交換が必要になるが、端末装置に供給される電圧を直接に監視するので、端末装置に対する供給電圧の最適化をより正確に行うことができる。
本発明の請求項4に係る給湯システムは、請求項2または3に記載の給湯システムにおいて、上記端末装置として上記給湯装置に複数の端末装置が接続されてなり、省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の上記最適化制御の実行時に、上記給湯装置の制御部は、接続された端末装置のいずれにも最適供給電圧が決定されていない限り、端末装置への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行し、いずれか一台において最適供給電圧が決定されるとその電圧を接続されているすべての端末装置に対する最適供給電圧とすることを特徴とする。
すなわち、この請求項4に係る給湯システムでは、給湯装置に複数の端末装置が接続されている場合において、端末装置に対する供給電圧の最適化制御を行うにあたり、給湯装置の制御部は、すべての端末装置に対して同時に供給電圧を低下させていく。そして、その際に、接続された端末装置のうちの一台において最適供給電圧が決定されるとその電圧を接続されているすべての端末装置に対する最適供給電圧とする。そのため、この請求項4に係る給湯システムでは、端末装置ごとに動作に必要な最低限の電圧レベルが相違したり、端末装置ごとに通信線の長さが相違したりするような場合において、いずれかの端末装置が電圧不足で動作不能に陥るのが防止される。
本発明の請求項5に係る給湯システムは、上記給湯装置が所定条件を満たしたときに通常モードから省電力モードに遷移し、その省電力モードにおける上記端末装置への供給電圧を上記通常モードの供給電圧よりも低くする制御構成を備えた給湯システムにおいて、上記省電力モードにおける供給電圧を、上記請求項1から4のいずれかに記載された省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の最適化制御により決定することを特徴とする。
すなわち、この請求項5に係る給湯システムでは、省電力モード時における端末装置への供給電圧を決定するにあたり、請求項1から4のいずれかに記載の端末装置に対する供給電圧を省電力化する最適化制御を用いるので、省電力モード時に端末装置に供給する電源電圧を可及的に小さくすることができ、省電力モード時の省電力効果が高い給湯システムを提供することができる。
本発明の請求項6に係る給湯システムは、請求項1から5のいずれかに記載の給湯システムにおいて、省電力を目的とする、端末装置に対する供給電圧の最適化制御が、給湯装置の試運転時に実行されることを特徴とする。
そして、本発明の請求項7に係る給湯システムは、請求項2から6のいずれかに記載の給湯システムにおいて、上記給湯装置の制御部は、上記端末装置に対する供給電圧を低下させていくにあたり、上記供給電圧を段階的又は連続的に低下させていくことを特徴とする。
本発明に係る給湯システムによれば、給湯装置の電源部から通信線を介して端末装置へ電源を供給する構成を備えた給湯システムにおいて、給湯装置の制御部は、端末装置に対する供給電圧を省電力化する最適化制御として、端末装置に対する供給電圧を低下させたときに、端末装置からの通信がある限り、または、端末装置から送られてくる通信の内容が供給電圧の低下に対して否定的なものでない限り、端末装置への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行することによって、端末装置に供給する最適供給電圧を決定するので、通信線の長さなどの施工状況に応じて、端末装置に供給する最適な供給電圧を決定できる。
そして、本発明の給湯システムは、端末装置に対する供給電圧の最適化制御として、給湯装置の制御部が端末装置に対するアップデート通信を行いながら端末装置に対する供給電圧を低下させていき、アップデート通信に対する端末装置からの応答信号がなくなれば、応答信号が得られていたときの最低供給電圧を最適供給電圧とする制御構成を備えることにより、応答信号がなくなる直前の電圧を端末装置に供給する最適供給電圧とすることができるので、端末装置に対する供給電圧を可及的に小さくすることができ、省電力効果の高い給湯システムを提供することができる。
また、本発明の給湯システムは、端末装置に対する供給電圧の最適化制御として、給湯装置の制御部が端末装置に対する供給電圧を低下させていき、これに対して、端末装置の制御部は電圧検出手段で検出される給湯装置からの供給電圧が所定電圧以下になると給湯装置の制御部に対して供給電圧低下の停止を求める通信を行い、給湯装置の制御部がこの通信を受信した時の供給電圧を最適供給電圧とする制御構成を備えることにより、端末装置に対して、動作に必要な最低限の電圧レベルの電圧供給を行うことができるので、端末装置に対する供給電圧を可及的に小さくし、省電力効果の高い給湯システムを提供することができる。
また、本発明の給湯システムは、端末装置に対する供給電圧の最適化制御の実行時に、給湯装置の制御部がすべての端末装置に対して同時に供給電圧を低下させていき、接続された端末装置のうちの一台において最適供給電圧が決定されるとその電圧を接続されているすべての端末装置に対する最適供給電圧とすることにより、端末装置ごとに動作に必要な最低限の電圧レベルが相違したり、端末装置ごとに通信線の長さが相違したりするような場合においても、いずれかの端末装置が電圧不足で動作不能に陥ることなく、端末装置に対する供給電圧を可及的に小さくすることができ、省電力効果の高い給湯システムを提供することができる。
さらに、本発明の給湯システムは、省電力モードを備えた給湯システムにおいて、省電力モード時の端末装置に対する供給電圧の決定にあたり、上述した端末装置に対する供給電圧の最適化制御を行うことにより、省電力モード時に端末装置に供給する電源電圧を可及的に小さくすることができ、省電力モード時の省電力効果が高い給湯システムを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1に本発明に係る給湯システムの概略構成を示す。図1に示すように、本発明に係る給湯システムは、給湯装置1と、この給湯装置1を遠隔操作するためのリモコン2とを主要部として備えている。
給湯装置1は、図示しない給水管から供給される水を給湯設定温度に加熱・昇温させて出湯する機能を備えた温水生成装置で構成されている。この種の給湯装置1において、温水を生成する熱交換器や燃焼部(加熱手段)等の構成は公知であるので、ここではその説明は省略し、本発明に関する事項について説明する。
この給湯装置1は、リモコン2に対して電力供給ができるように構成された給湯装置であって、図1に示すように、制御部3と、電源部4と、通信インターフェース5とを主要部として備えている。
制御部3は、給湯装置1の各部を制御する制御装置を構成するものであって、制御手段としてCPU、ROM、RAM、I/Oポートなど有するマイコン(図示せず)を備えている。そして、この制御部3は、通信インターフェース5を介してリモコン2と通信可能に構成されており、リモコン2との間で制御信号や制御データなどのやりとりを行いながら給湯装置1の各部を制御するように構成されている。
ここで、本実施形態に示す給湯装置1は、リモコン2に対する電力供給機能に関して、リモコン2の全機能を動作させるに足りる電圧(通常電圧V1)を供給する通常モードと、リモコン2の一部の機能を停止させる(リモコン2側が所定の省電力制御を行う)ことを前提に、通常モード時よりも低い電圧(省電電圧V2)を供給する省電力モードとが備えられており、これらのモードの切り替えが制御部3において行われるように構成されている。
この省電力モードは、給湯装置1が運転待機状態(燃焼部などの加熱手段(図示せず)が動作していない状態)を一定時間継続するなど所定の条件を満たしたときに、リモコン2に対する供給電圧を通常モード時よりも低くして、リモコン2側での電力消費を抑制する動作モードであり、たとえば、リモコン2の運転スイッチがオンの状態(給湯装置1内に所定流量以上の通水があれば加熱手段による加熱が許可される状態)にあるが給湯装置1内に所定流量以上の通水がなく加熱手段が動作していない状態が一定時間継続した場合や、リモコン2の運転スイッチがオフの状態(給湯装置1内に所定流量以上の通水があっても加熱手段の動作が禁止される状態)になってから一定時間が経過した場合などに通常モードから遷移するように構成されている。
そして、本実施形態に示す給湯装置1では、この省電力モードに関して、制御部3が、省電力モード時にリモコン2に供給する省電電圧V2の最適化(リモコン2に対する供給電圧の最適化制御)を行うように構成されている(詳細は後述する)。
電源部4は、商用電源7から供給される電源(AC100V)に基づいて、給湯装置1の各部に供給する電源とリモコン2に供給する電源とを生成する電源装置で構成されている。そして、リモコン2に供給する電源に関しては、制御部3からの指示に基づいて通常電圧V1と省電電圧V2を切り替えて出力できるように構成されており、さらに、この省電電圧V2に関しては、後述するように制御部3の指示に基づいてその電圧値を調整できるように構成されている。すなわち、電源部4は、上記省電電圧V2の値を可変することができるように構成されている。
通信インターフェース5は、2芯の通信線6を介して制御部3とリモコン2とが通信するための通信手段であって、本実施形態では、この通信インターフェース5としては、上記電源部4から出力される直流電圧に通信信号を重畳して送受信する通信装置が用いられている。なお、本実施形態では、通信インターフェース5には複数(図示例では2a,2bの2台)のリモコン2が接続されるが、これら各リモコン2a,2bには、電源部4からリモコン用の電源として出力される電圧(通常電圧V1または省電電圧V2)が等しく供給される。
リモコン2は、給湯装置1を遠隔操作するための操作装置であって、本実施形態では、このリモコン2が給湯装置1の端末装置を構成している。すなわち、このリモコン2は、上述したように、給湯装置1の電源部4から通信線6を介して電圧供給を受けるように構成されている。
このリモコン2は、この種の給湯システムにおいて一般に用いられているリモコンと同様の公知の構成からなる操作装置であって、操作入力用の操作スイッチなどで構成された操作部21と、給湯装置1の状態などを表示する表示部22と、音声メッセージや警報音等を出力する音声出力部23と、リモコン2の各部を制御するとともに給湯装置1の制御部3と通信を行うリモコン制御部24と、給湯装置1との通信インターフェース25と、リモコン各部に電力を供給するリモコン電源部26とを主要部として備えている。図1において2aは浴室に設置される浴室リモコン、2bは台所に設置される台所リモコンを示している。
ここで、操作部21は、給湯装置1の運転スイッチや給湯設定温度の設定スイッチなどの各種操作スイッチで構成され、これらの操作スイッチで操作された内容はリモコン制御部24に与えられ、リモコン制御部24を介して給湯装置1の制御部3に与えられる。表示部22は、給湯装置1の状態等を視認可能に表示する表示装置であって、リモコン制御部24によって制御される蛍光表示管や発光ダイオードなどの表示素子を備えた表示装置で構成される。音声出力部23は、所定の音声メッセージや操作スイッチの入力受付音、警報音などを出力できる音響装置で構成され、これら音声メッセージ等を通じてユーザに給湯装置1の状態などを報知するようにされている。なお、この音声出力部23は、リモコン2の機種によっては設けられない場合がある。
リモコン制御部24は、CPU,ROM,RAM,I/Oポートなどを有するマイコン(図示せず)を備えた制御装置で構成されている。このリモコン制御部24は、上記操作部21の操作内容に応じてリモコン各部を制御するとともに、給湯装置1の制御部3に対して遠隔操作指令を与えるなどの各種処理を実行する。そして、本実施形態では、このリモコン制御部24は、給湯装置1の制御部3と定期的(たとえば、数秒〜十数秒ごと)にアップデート通信を行い、操作部21などでの設定内容が給湯装置1の制御部3に反映されるように構成されている。
また、リモコン制御部24は、上述した給湯装置1の制御部3が省電力モードを有することに対応して、制御部3が省電力モードに移行する際には、表示部22の表示を消灯させるなどリモコン2の一部の機能を停止させてリモコン2での消費電力を抑制する制御(省電力制御)を行うように構成されている。なお、この省電力制御中においても、リモコン制御部24は制御部3と定期的なアップデート通信を行うように構成されている。
リモコン通信インターフェース25は、通信線6を介して供給される電力をリモコン電源部26に供給するとともに、給湯装置1の通信インターフェース5と通信を行うための通信装置で構成されている。リモコン電源部26は、リモコン2の各部に電力を供給する電源装置であり、通信線6を介して給湯装置1の電源部4から供給される電源からリモコン制御部24や表示部22、音声出力部23などの駆動電源を生成する。
次に、このように構成された給湯システムの動作について説明する。この給湯システムにおいては、上述したように、給湯装置1に接続されるリモコン2に対して、給湯装置1の電源部4からリモコン2の駆動電力が供給されるが、給湯装置1の制御部3が通常モードにあるときには、給湯装置1の電源部4からリモコン2に対しては通常電圧V1(たとえば、DC15V)が供給される。
これに対して、給湯装置1の運転待機状態が一定時間継続するなどの所定の条件(省電力モードに移行する条件)が満たされると、制御部3の動作モードが通常モードから省電力モードに遷移して、リモコン2に対する供給電圧が上記通常電圧V1から省電電圧V2に切り替えられる。
そして、本実施形態に示す給湯システムでは、この省電力モード時においてリモコン2に供給する省電電圧V2は、給湯システムの施工状況(具体的には、通信線6の長さなど)に応じて、制御部3が最適な電圧値(具体的には、省電力制御中のリモコン2が動作に必要な最低限の電圧レベル)となるように自動的に調整するように構成されている。図2は、このリモコン2に対する供給電圧の最適化制御(省電電圧V2の自己調整機能)の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、この省電電圧V2の自己調整は、給湯装置1の制御部3が省電力モードにあるときに行われる。具体的には、給湯装置1の制御部3は、まず、制御部3の動作モードが省電力モードにあるか否かを判断する(図2ステップS1参照)。なお、省電力モードにあるか否かの判断に代えて、制御部3は省電力モードに遷移する条件が成立したか否かを判断してもよい。
この判断の結果、制御部3が省電力モードになく通常モードにあるときには、制御部3はリモコン2に対する供給電圧として通常電圧V1を選択し、給湯装置1の電源部4に対して通常電圧V1を出力するように指示する(図2ステップS14参照)。これにより、リモコン2には給湯装置1の電源部4から通常電圧V1が供給され、制御部3とリモコン制御部24は定期的なアップデート通信を行う(図2ステップS15参照)。
これに対して、制御部3が省電力モードにあるときは、制御部3は省電電圧V2の自己調整が未だ完了していないか否かを判断する(図2ステップS2参照)。本実施形態では、この省電電力V2の自己調整は、給湯システムに対する電源投入後(給湯装置1の電源部4を商用電源7に接続した後)における最初の省電力モード時に行うものとされており、この図2ステップS2では、既に省電電力V2の自己調整が完了しているかを判断している。
ここで、省電電圧V2の自己調整が未だなされていない場合(具体的には、当該省電力モードが電源投入後最初の省電力モードである場合)、制御部3は、まず、省電電圧V2を決定するために、リモコン2に供給する電圧を一旦通常電圧V1に設定する(図2ステップS3参照)。そして、この状態でリモコン2とのアップデート通信を行いながら(図2ステップS4参照)、制御部3からのアップデート通信の呼びかけに対してリモコン2から応答信号(ACK信号)があるか否かを判断する(図2ステップS5参照)。
この状態、つまりリモコン2に通常電圧V1が供給されている状態では、制御部3からのアップデート通信の呼びかけに対して、リモコン2からは正常に応答信号が得られるので、この応答信号が得られたら、制御部3は、電源部4からリモコン2に出力する電圧を所定レベル(図示例では、0.1V)だけ下げて(図2ステップS6参照)、次のアップデート通信時にリモコン2から正常な応答信号があるか否かを判断する(図2ステップS5参照)。そして、アップデート通信でリモコン2からの応答信号がなくなるまで、この処理(図2ステップS5、S6の処理)を繰り返し行う。すなわち、制御部3は、リモコン2に対するアップデート通信を行いながら、リモコン2に対する供給電圧を徐々に低下させる処理を繰り返し行い、アップデート通信に対するリモコン2からの応答信号がなくなるまで供給電圧を下げていく処理を行う。
このようにして、リモコン2に供給する電圧を下げていくことにより、リモコン2に供給される電圧が、省電力制御中のリモコン2の動作に必要な最低限の電圧レベル(リモコン2がアップデート通信に対する応答信号を送信するのに必要な電圧レベル)を下回ると、制御部3からのアップデート通信の呼びかけに対して、リモコン2からの応答信号がなくなる(図2ステップS5の判断が「No」となる)ので、そうなると、制御部3は図2ステップS7に移行して、リモコン2からの応答信号が得られていたときの最低供給電圧、つまり、現在リモコン2に供給している電圧に電圧を下げるときに用いた上記所定レベル(図示例では0.1V)を加算して得た電圧値を省電電圧V2の最適供給電圧として決定し(図2ステップS7参照)、省電電圧V2の自己調整処理を終了する(図2ステップS8参照)。
ここで、本実施形態のように、給湯装置1に複数のリモコン2a,2bが接続されている場合、制御部3は、図2ステップS6の処理を行うにあたり、すべてのリモコン2a,2bに対して同時に供給電圧を低下させていく。本実施形態では、各リモコン2a,2bに電力を供給する通信インターフェース5は接続された各リモコン2a,2bに同じ電圧を供給するように構成されているので、制御部3は電源部4に対して出力電圧を下げる指示を与えるだけで、すべてのリモコン2a,2bに対して同時に供給電圧が下げられる。
そして、制御部3は、図2ステップS5、S6の処理を繰り返した結果、接続されたリモコン2a,2bのうちのいずれか一台からの応答信号がなくなると、その時点で図2ステップS7に移行して最適供給電圧を決定する。つまり、接続されたリモコン2a,2bのいずれにおいても最適供給電圧が決定されていなければ、リモコン2への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行し、いずれか1台のリモコン2において最適供給電圧が決定されると、その電圧値を接続されているすべてのリモコン2に対する最適供給電圧として用いる。そのため、本実施形態の給湯システムでは、浴室リモコン2aと台所リモコン2bとでその動作に必要な最低限の電圧レベルが相違している場合や、浴室リモコン2aと台所リモコン2bとで通信線6の長さが相違する場合においても、省電力モード時にいずれか一方のリモコン2が電圧不足に陥ることはない。
なお、このようにして決定された省電電圧V2の最適値は、制御部3の記憶手段(たとえば、マイコンのRAMや、マイコンに外部メモリ(たとえば、不揮発性メモリ)が備えられている場合には当該メモリ)に記憶される。そして、このように記憶された省電電圧V2が制御部3に保持されている場合には、上記図2ステップS2の判断では、省電電力V2の自己調整が完了していると判断される(図2ステップS2の判断が「No」となる)。
そこで、次に、図2ステップS2の判断において省電電力V2の自己調整が完了していると判断された場合(当該省電力モードが電源投入後2回目以降の省電力モードである場合)について説明する。
この場合、制御部3には既に省電電圧V2が保持されているので、この場合には、制御部3は、リモコン2に対する供給電圧として制御部3に保持されている省電電圧V2を用いる(図2ステップS9参照)。すなわち、この場合、制御部3は、電源部4に対して、記憶手段に保持されている省電電圧V2の値での電圧出力を指示する。
なお、ここでの省電電圧V2は、上述した自己調整機能によって既に調整された値であるので、このまま固定値として用いることもできるが、本実施形態の給湯システムでは、たとえば、通信線6の経年劣化等によって線路抵抗が上昇したような場合にリモコン2が電圧不足に陥るおそれがあるので、この省電電圧V2に対しても自己調整を行うように構成されている。すなわち、省電力モードでリモコン2に省電電圧V2が供給されている場合でも、制御部3とリモコン制御部24は定期的にアップデート通信を行うので(図2ステップS10参照)、本実施形態では、この省電力モード中のアップデート通信を利用して、省電力モード中においても省電電圧V2の自己調整を行うように構成されている。
具体的には、リモコン2に省電電圧V2を供給している状態にある場合、制御部3はアップデート通信の呼びかけに対するリモコン2から応答信号が途絶えたか否かを判断する(図2ステップS11参照)。そして、リモコン2からの応答信号がない場合(通信途絶になった場合)には、制御部3は、電源部4からリモコン2に出力する電圧を所定レベル(図示例では、0.1V)だけ上げて(図2ステップS12参照)、次のアップデート通信時においてもリモコン2からの応答信号がないか否かを判断する(図2ステップS11参照)。そして、アップデート通信でリモコン2から応答信号が得られるようになるまで、この処理(図2ステップS11、S12の処理)を繰り返し行う。すなわち、制御部3は、リモコン2に対するアップデート通信を行いながら、リモコン2に対する供給電圧を徐々に上昇させていき、アップデート通信に対するリモコン2からの応答信号が得られるまで供給電圧を上げていく処理を行う。
このようにして、リモコン2に供給する電圧を上げていくことにより、制御部3からのアップデート通信の呼びかけに対して、リモコン2からの応答信号が得られるようになると(図2ステップS11の判断が「No」となると)、制御部3は、図2ステップS13に移行して、このときの電源部4の出力電圧を最適供給電圧、つまり、新たな省電電圧V2として決定し、その値を制御部3の記憶手段に更新・保持させる(図2ステップS13参照)。
なお、給湯装置1に複数のリモコン2a,2bが接続されているときは、いずれか1台のリモコン2についてアップデート通信に対する応答信号が得られなくなれば、制御部3は、すべてのリモコン2から応答信号が得られるようになるまで、図2ステップS11、S12の処理を行い、すべてのリモコン2から応答信号が得られるようになったときの電源部4の出力電圧を新たな省電電圧V2として制御部3の記憶手段に保持させる。
このように、本実施形態の給湯システムでは、省電力モード時にリモコン2に供給する省電電圧を決定するにあたり、給湯装置1の制御部3が、リモコン2からのアップデート通信がある限り、リモコン2への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行しながら、リモコン2からのアップデート通信に対する応答信号がなくなれば、応答信号が得られていたときの最低供給電圧を最適供給電圧として決定するので、通信線の長さや経年劣化による線路抵抗の変化などの施工状況に応じて、リモコン2に供給する最適な供給電圧を決定できる。しかも、省電力モード時に、リモコン2には、給湯装置1との通信可能な状態を維持できる最低レベルの電圧が供給されることととなり、リモコン2に対する供給電圧を可及的に小さくすることができ、省電力モード時の省電力効果の高い給湯システムを提供することができる。
ここで、本発明の適用により、省電電圧V2は、従来の省電電圧が固定された給湯システムに比して概ね数V(たとえば、1〜3V)程度下げることができるようになる。この種のリモコン2において、省電力制御実行中の消費電力は約1W程度であるので、省電電圧を1V下げることにより得られる省電力効果は極めて大きい。
なお、この省電力モードは、たとえば、リモコン2の運転スイッチがオフで省電力モードにあるときには運転スイッチのオン操作により解除され、また、運転スイッチがオンの状態で省電力モードにあるときには、リモコン2の操作や給湯装置1への所定流量以上の通水によって解除される。そして、省電力モードが解除されると、制御部3は、電源部4に対して通常電圧V1の出力を指示する。
また、本実施形態では、制御部3に省電電圧V2を最初に保持させるための処理が電源投入後における最初の省電力モード時に行われるように構成した場合を示したが、この処理は、給湯システムへの電源投入直後に行う試運転などにおいて、リモコン2を強制的に省電力制御に移行させて(つまり、制御部3を強制的に省電力モードに遷移させて)行うように構成することも可能である。
さらに、本実施形態では、省電電圧V2の最適値を決定するにあたり、リモコン2に供給する電圧を段階的に変化させていく場合を示したが(図2ステップS6、S12参照)、リモコン2に供給する電圧を変更しながら最適値を探す構成であれば、たとえば、リモコン2に供給する電圧を連続的に低下または上昇させていきながらリモコン2からの応答信号の有無を判断するように構成することも可能である。
実施形態2
次に、本発明の第2の実施形態について図3及び図4に基づいて説明する。上述した実施形態1に示す給湯システムでは、省電電圧V2の最適化は、リモコン2とのアップデート通信を利用して、給湯装置1の制御部3側だけの処理で行うように構成していた。この第2の実施形態では、省電電圧の最適化の処理を制御部3とリモコン制御部24とで分担して行うように構成している。
具体的には、この実施形態では、図3に示すように、リモコン2側に給湯装置1から供給される電源電圧を検出する電圧検出回路(電圧検出手段)27が備えられており、この電圧検出回路27での検出結果がリモコン制御部24に入力されるように構成されている。その他の構成は上述した実施形態1と同様であるので、構成が共通する部分は同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態では、省電電圧V2の最適化は図4に示すように、給湯システムの試運転、(具体的には、たとえば、給湯システムの電源投入直後に動作確認のために行われる試運転や、給湯装置1に内蔵する所定の操作スイッチ(図示せず)またはリモコン2の操作部21の所定操作によって給湯装置1を強制的に試運転の状態にする試運転モードに遷移させた時など)に行うように構成されている。
すなわち、この実施形態では、給湯システムに電源が投入され(商用電源7が接続される)、給湯装置1の電源部4からリモコン2に電源が供給されると、各リモコン2のリモコン制御部24から給湯装置1の制御部3に対して、リモコン2への供給電圧の低下を求める電圧降下要求信号が送信される(図4ステップS1参照)。
給湯装置1の制御部3は、リモコン2からこの電圧降下要求信号を受信すると、この電圧降下要求信号に応じて、給湯装置1の電源部4に対してリモコン2への供給電圧を下げる旨の指示を行う(図4ステップS2参照)。これにより、電源部4は、リモコン2に対する供給電圧を徐々に低下させる処理を行う(図4ステップS3参照)。このリモコン2への供給電圧を下げる処理は、上述した実施形態1に示すように、リモコン2への供給電圧を所定レベル(たとえば、0.1V)ずつ段階的に下げるように構成されるが、たとえば、連続的に供給電圧を下げるように構成することもできる。
このとき、リモコン制御部24は、上記電圧検出回路27の検出結果を監視して、電圧検出回路27の検出結果があらかじめ設定された判定値Xまで低下したか否かを判定する(図4ステップS4参照)。ここで、この判定値Xは、リモコン2ごとにリモコン制御部24に設定・保持された値が用いられる。具体的には、この判定値Xは、リモコン2が省電力制御を行っているときに当該リモコン2の動作に必要とする最低限の入力電圧(リモコン2の最低入力電圧)に基づいて設定される。つまり、この判定値Xはリモコン2で行われる省電力制御の内容に応じてリモコン2ごとに設定される。なお、この判定値Xとしては、上記リモコン2の最低入力電圧と同じであることが望ましいが、実際には、リモコン2への供給電圧を下げる際(図4ステップS3参照)の下げ幅などに応じて最低入力電圧よりわずかに高い電圧値が用いられる。
そして、上記電圧検出回路27の検出結果がこの判定値Xまで下がると、リモコン制御部24は、給湯装置1の制御部3に対して供給電圧を低下させる処理の停止を求める電圧降下停止信号を送信する(図4ステップS5参照)。
これに対して、給湯装置1の制御部3は、リモコン2からの電圧降下停止信号を受信すると、電源部4に対してリモコン2への供給電圧の低下処理の停止を指示する(図4ステップS5参照)。これにより、電源部4の出力電圧を低下させる制御が停止され、リモコン2には最低入力電圧と同じ、または、最低入力電圧にきわめて近い値の電圧が供給されることとなる。
なお、給湯装置1に複数のリモコン2a,2bが接続されている場合には、いずれか1台のリモコン2からの電圧降下停止信号が受信されると、制御部3はその時点で電源部4におけるリモコン2への供給電圧の低下処理を停止させる。
そして、制御部3は、このときの電源部4の出力電圧(つまり、電源部4に対して電圧の低下処理の停止を求めたときの電圧)を最適な供給電圧、つまり、省電電圧V2として決定し、その値を制御部3の記憶手段(たとえば、不揮発性の記憶手段としてEEPROM)に記憶・保持させて(図4ステップS6参照)、リモコン2に対する供給電圧の最適化制御を終了する。つまり、最適化制御の終了に伴って、制御部3の動作モードを通常モードに設定して、リモコン2に対して通常電圧V1の供給を開始する。
このように、本実施形態の給湯システムでは、省電力モード時にリモコン2に供給する省電電圧V2を決定するにあたり、給湯装置1の制御部3が、リモコン2から供給電圧低下の停止を求める通信を受信しない限り、リモコン2への供給電圧を低下させる処理を繰り返し実行し、リモコン2から供給電圧低下の停止を求める通信(供給電圧の低下に対して否定的な通信)を受信した時の供給電圧を最適供給電圧として決定するので、通信線6の長さなどの施工状況に応じて、リモコン2に供給する最適な供給電圧を決定することができる。
なお、この実施形態2に係る発明は、実施形態1に係る発明と組み合わせて用いることもできる。すなわち、給湯システムの設置当初の電源投入時には実施形態2に示した方法で省電電圧V2を決定し、その後に省電力モードにあるときは、制御部3でアップデート通信に対するリモコン2からの応答信号の有無を監視し、応答信号が途絶した場合には省電電圧V2を上昇させるように構成することも可能である。
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
たとえば、上述した実施形態では、給湯装置1の端末装置としてリモコンを用いた場合を示したが、給湯装置1の電源部4から電力供給を受ける装置であれば、リモコン以外の端末装置についても本発明は適用可能である。
また、上述した実施形態では、給湯装置1の制御部3に設けられる記憶手段としてEEPROMを例示したが、フラッシュメモリやマイコンのRAMなどの他の記憶装置を用いることももちろん可能である。
また、上述した実施形態では、リモコン2への供給電圧の最適化制御をリモコン2に対する省電電圧V2の設定に用いる場合を示したが、本発明は省電電圧V2の最適化だけでなく端末装置に供給する通常電圧V1の最適化にも適用可能である。すなわち、端末装置側の制御部に端末装置が通常の制御時に必要な電圧の判定値X2を保持させておくとともに端末装置に電圧検出回路を設けておき、給湯装置1の電源部4から端末装置に供給される電圧を変化させながら端末装置に供給される電圧を端末装置の制御部で監視して、給湯装置1の電源部4から端末装置に供給される電圧が上記判定値X2となるように調整することもできる。
なお、上述した実施形態に示す給湯装置には、一般給湯機能、風呂釜機能、あるいは温水暖房機能の各単機能給湯装置、あるいは、これらの複合機が含まれ、また、ガス給湯器、石油給湯器あるいは電気温水器など、温水を生成する装置であればその燃料等の種類を問わず本発明は適用可能である。