しかしながら、このような従来の給湯システムにおいては、以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
すなわち、給湯装置に接続されるリモコンには多くの種類が存在しており、その種類に応じて省電力モード時に必要とされる電圧値も大小相違する。具体的には、たとえば、省電力モード時に表示させる表示部の数・範囲や音声出力の音量など、省電力モード下で動作させる電気負荷に応じて必要となる電圧値が相違する。そのため、従来のような2電圧出力の電源部を用いる構成では、接続されるリモコンによっては省電力モード時に必要な電圧が供給されずに電圧不足に陥り、リモコンの表示や音声出力が正常に行えなくなることがあるとの問題があった。特に、リモコンを交換した場合には、交換後のリモコンにおいて省電力モード時に必要とされる電圧が給湯装置から得られなくなるおそれがあった。
また、給湯装置に接続されるリモコンは1台とは限らず、台所や浴室などを含めて2台以上のリモコンが接続される場合がある。通常、台所のリモコンと浴室のリモコンとでは種類(表示部の数や範囲、音声出力の内容など)が相違するため、このように複数台のリモコンが接続される場合には、その一部が省電力モード時に電力不足に陥るおそれもあった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、省電力モード時における端末装置への供給電圧を最適化できる給湯システムを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る給湯システムは、給湯装置とこの給湯装置から通信線を介して電力の供給を受ける1又は複数の端末装置とで構成され、省電力モードにあるときには、通常モード時より低い電圧を上記端末装置に供給する構成を備えた給湯システムにおいて、上記給湯装置の電源部は、上記端末装置に対する電圧出力として、上記通常モード時の電圧値とは別に、省電力モード時用の電圧値として複数の電圧値を選択して出力できる電源部で構成され、上記給湯装置の制御部は、上記端末装置との通信の有無を判断し、存在が確認された端末装置から省電力モード時に端末装置が必要とする要求電圧に関する情報を受信し、その情報に基づいて、上記省電力モード時における端末装置に対する出力電圧を決定する制御構成を備えた
ことを特徴とする。
すなわち、この請求項1に係る給湯システムでは、省電力モード時に給湯装置の電源部から端末装置に対して出力する電圧を決定するにあたり、給湯装置の制御部は、端末装置との通信の有無を判断し、存在が確認された端末装置から受信した要求電圧(省電力モード時に端末装置が必要とする電圧)に関する情報に基づいて端末装置に対して出力する電圧値を決定する。そのため、この請求項1に係る給湯システムによれば、給湯装置の制御部は、省電力モード時に端末装置が電圧不足に陥らないように、端末装置に供給する電圧を設定することができる。
ここで、端末装置から給湯装置に対して送信される「要求電圧に関する情報」としては、要求電圧そのものの数値データを用いることができるのはもちろんのこと、たとえば、端末装置側からは端末装置の機種を特定する機種データを「要求電圧に関する情報」として給湯装置の制御部に送信するように構成し、給湯装置の制御部において受信した機種データを解析して端末装置の要求電圧を特定するように構成してもよい。
本発明の請求項2に係る給湯システムは、請求項1に記載の給湯システムにおいて、上記給湯装置の制御部は、上記端末装置から受信した要求電圧に関する情報に基づいて、最も高い要求電圧を基準に省電力モードにおける上記端末装置に対する出力電圧を決定することを特徴とする。
すなわち、この請求項2に係る給湯システムでは、省電力モード時に給湯装置の電源部から端末装置に対して出力する電圧を決定するにあたり、給湯装置の制御部が、端末装置から受信した要求電圧のうちで最も高い値を示した電圧値に基づいて、省電力モードにおける各端末装置への出力電圧を決定するように構成されているので、給湯装置に複数の端末装置が接続されている場合において、省電力モードに移行したことによって一部の端末装置が電圧不足に陥るようなことが防止される。
本発明の請求項3に係る給湯システムは、請求項1または2に記載の給湯システムにおいて、上記端末装置のうちの少なくともいずれか1つは、上記要求電圧に関する情報を上記端末装置の運転状態に基づいて作成することを特徴とする。
すなわち、この請求項3に係る給湯システムでは、給湯装置に接続される端末装置のうちの少なくともいずれか1の端末装置が、自己の運転状態に基づいて要求電圧に関する情報を作成して給湯装置の制御部に送信するように構成されているので、当該端末装置についての要求電圧が過大となることがない。したがって、給湯装置に接続される端末装置のすべてがこのような構成を備えていれば、省電力モード時に給湯装置の電源部から端末装置に供給される電力が真に必要な電圧値を超えて過大となることが防止され、消費電力の削減が図られる。
請求項4に係る給湯システムは、請求項1から3のいずれかに記載の給湯システムにおいて、上記給湯装置の電源部は、上記端末装置に対する出力電圧の値を連続的に変化させることが可能であることを特徴とする。
すなわち、この請求項4に係る給湯システムでは、給湯装置の電源部として、端末装置に対する出力電圧の値を連続的に変化させることができる電源部を採用することから、省電力モード時に端末装置に供給する電圧値として、必要最小限の電圧値を選択して出力することができるので、省電力モード時の電圧値を最適化することができる。
請求項5に係る給湯システムは、請求項1から4のいずれかに記載の給湯システムにおいて、上記省電力モード時における上記電源部の出力電圧を検出する電圧検出手段を備え、この電圧検出手段により検出された電圧値が所定値を下回ることを条件に、上記端末装置に対する電源部の出力電圧を通常モードにおける電圧値に変更することを特徴とする。
すなわち、この請求項5に係る給湯システムでは、省電力モード時における電源部の出力電圧を検出する電圧検出手段が備えられており、この電圧検出手段により検出される検出電圧値が、省電力モード時の出力電圧として設定された電圧値に基づいて定められる所定のしきい値電圧(所定値)を下回った場合には、端末装置に対する出力電圧を通常モードにおける出力電圧値に復帰させる。つまり、この請求項5に係る給湯システムでは、たとえば、給湯装置の電源部の異常などによって、省電力モード時に必要とされる電圧が電源部から出力されない場合には、電源部は通常モードの電圧出力(換言すれば、省電力モード時の出力電圧より高い電圧の出力)を行うこととなるので、端末装置が電圧不足に陥るのを回避することができる。
請求項6に係る給湯システムは、請求項1から5のいずれかに記載の給湯システムにおいて、上記通常モード時における上記電源部の出力電圧を検出する第2電圧検出手段を備え、この第2電圧検出手段により検出された電圧値が第2所定値を下回ることを条件に、上記端末装置に対する電源部の出力電圧を通常モードにおける出力電圧よりも低下させる制御を禁止することを特徴とする。
すなわち、この請求項6に係る給湯システムでは、通常モード時における電源部の出力電圧を検出する第2電圧検出手段が備えられており、この第2電圧検出手段により検出される検出電圧値が、通常モード時の出力電圧として設定された電圧値に基づいて定められる所定のしきい値電圧(第2所定値)を下回った場合には、端末装置に対する出力電圧を低下させる制御を禁止する。つまり、第2電圧検出手段の検出電圧値が上記所定のしきい値を下回った場合には、給湯装置の制御部は省電力モードへの移行を禁止することとなる。したがって、この請求項6に係る給湯システムによれば、通常モード時の出力電圧と省電力モード時の出力電圧とに相関関係がある電源部を採用した場合において、電源部の出力電圧が低下した状態で省電力モードに移行することが禁止されるので、端末装置が電圧不足に陥ることが回避される。なお、ここで省電力モードは電源部の出力電圧を低下させるモードであり、省電力モードへの移行が禁止されても、給湯装置の制御部および各端末装置(リモコン等)は電力供給が不要な回路への通電を遮断する省電力制御を実施できる。したがって、給湯装置の制御部および各端末装置(リモコン等)の制御部が、動作不要な回路への通電を遮断することによる省電力制御が禁止されるわけではない。
請求項1に係る発明によれば、端末装置から受信した要求電圧に関する情報に基づいて端末装置に供給する電圧値を決定するので、給湯装置の制御部は、省電力モード時に端末装置が省電力モードに応じた動作を行うのに不足のない電圧の供給を電源部に指令することができ、端末装置が電圧不足に陥ることなく省電力モードを実行することができる。
請求項2に係る発明によれば、端末装置の要求電圧のうちで最も高い値の電圧を基準に省電力モード時に各端末装置に電圧が供給されるので、複数の端末装置を接続しても、一部の端末装置が電圧不足に陥ることなく、省電力モードを実行することができる。
請求項3に係る発明によれば、端末装置が要求電圧に関する情報を端末装置の運転状態に基づいて作成するので、省電力モード時に端末装置に供給する電圧が必要な電圧値を超えて過大となることを防止でき、消費電力の削減効果を高めることができる。
請求項4に係る発明によれば、給湯装置の電源部として、端末装置に対する出力電圧の値を連続的に変化させることができる電源部が用いられるので、省電力モード時に端末装置に供給される電圧を必要最小限にとどめることができ、消費電力の削減効果を高めることができる。
請求項5に係る発明によれば、省電力モード時に必要とされる電圧が電源部から出力されないような場合に、電源部は省電力モード時の出力電圧より高い電圧を出力することになるので、省電力モードで正常な電圧出力が得られないときでも、端末装置の電圧が不足するのを防止することができる。
請求項6に係る発明によれば、通常モード時の出力電圧と省電力モード時の出力電圧とに相関関係がある電源部を給湯装置に採用した場合において、電源部の出力電圧が低下した場合には省電力モードへの移行が禁止されるので、電源部の異常で端末装置が電圧不足に陥るのが防止される。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1に本発明に係る給湯システムの概略構成を示す。図1に示すように、本発明に係る給湯システムは、給湯装置1と、この給湯装置1の端末装置であるリモコン2とを主要部として備えている。この給湯システムでは、後述するように、端末装置であるリモコン2には給湯装置1から駆動電力が供給されるように構成されている。そして、このリモコン2への電力供給に関して、本発明の給湯システムでは、リモコン2の全機能を作動させるに足る電圧を供給する通常モードと、リモコン2の一部機能を停止させることを前提に、リモコン2に供給する電圧を通常モード時より低くして供給する省電力モードとが備えられており、本発明はこの省電力モードの制御技術に関する。
給湯装置1は、図示しない給水管から供給される水を所望の給湯設定温度に加熱して出湯する温水生成装置である。この給湯装置1において温水生成に関する基本的な構成は公知であるのでここではその説明は省略し、以下では本発明に関連する事項を中心に説明する。
給湯装置1は、図1(a)に示すように、制御部3と、電源部4と、通信インターフェース5とを主要部として備えている。制御部3は、マイコンを制御中枢として備えた制御装置であって、給湯装置1の各部の制御を行うとともに、通信インターフェース5を介してリモコン2などの端末装置と通信を行うように構成されている。そして、本実施形態においては、この制御部3は、上記リモコン2との通信を利用して、電源部4の出力電圧の切替制御を行うように構成されている(詳細は後述する)。
電源部4は、商用電源7から供給される電源(AC100V)から、給湯装置1の各部の駆動電源およびリモコン2に供給する電源を生成する電源装置で構成されている。特に、上記リモコン2に供給する電源は、上記制御部3から与えられる電圧切替信号(図1(b)参照)に基づいて出力電圧を数段階に可変できるように構成されている。
具体的には、この電源部4は、少なくとも、上記通常モード時の電圧(通常電圧)と、省電力モード時の電圧(省電電圧)の出力が可能な構成を備えている。そして、本実施形態では、更にこの省電電圧として、上記電圧切替信号に応じて複数(具体的には2通り)の電圧値を選択して出力できる電源部4が用いられている。つまり、本実施形態では、この電源部4は、リモコン2に対する出力電圧として3パターン(たとえば、通常電圧としてDC15V、省電電圧としてDC12VとDC9V)の電圧出力ができるようにされている。
通信インターフェース5は、2芯の通信線6を介してリモコン2と通信をするための通信装置であって、本実施形態では、この通信インターフェース5は、リモコン2用の電源として上記電源部4から出力される電力を通信線6を介してリモコン2に供給する電源重畳通信を行う通信装置が用いられている。
なお、給湯装置1に複数(図示例では2a〜2x)のリモコン2が接続される場合には、図1(a)に示すように、各リモコン2a〜2xは、それぞれ通信線6を介して通信インターフェース5に接続され、各リモコン2には、電源部4からリモコン用の電源として出力される電圧が等しく供給される。つまり、電源部4から通常電圧DC15Vが出力される場合には、各リモコン2a〜2xにはそれぞれDC15Vが供給される。また、省電電圧として12Vが出力された場合には、各リモコン2a〜2xにはそれぞれDC12Vが供給される。
リモコン2は、給湯装置1を遠隔操作するための操作装置であって、上述したように、給湯装置1の電源部4から通信線6を介して電力供給を受けるように構成されている。具体的には、このリモコン2は、図2に示すように、操作入力用の操作部21、給湯装置1の状態などを表示する表示部22、音声メッセージや警報音等を出力する音声出力部23、リモコン2の各部を制御するとともに給湯装置1の制御部3と通信を行うリモコン制御部24、給湯装置1との通信インターフェース25、リモコン各部に電力を供給するリモコン電源部26を主要部として備えている。
操作部21は、給湯装置1に運転指令を与えるためのスイッチや給湯設定温度を入力するためのスイッチなどの各種操作スイッチで構成される。これらの操作スイッチで操作された内容はリモコン制御部24に与えられ、運転指令や給湯設定温度などはリモコン制御部24を介して給湯装置1の制御部3に与えられる。また、表示部22は、リモコン制御部24によって制御される蛍光表示管や発光ダイオードなどの表示素子を備えた表示装置で構成される。この表示部22を通じてユーザは給湯装置1の状態(たとえば、給湯装置1に運転指令が与えられているか否かや給湯設定温度など)を確認できるようにされている。音声出力部23は、所定の音声メッセージや操作スイッチの入力受付音、警報音などを出力できる音響装置で構成され、これら音声メッセージ等を通じてユーザに給湯装置1の状態を報知するようにされている。なお、この音声出力部23は、リモコン2の機種によっては設けられない場合がある。
リモコン制御部24は、マイコンを制御中枢として備えた制御装置で構成されている。そして、このリモコン制御部24は、上述した省電力モードに対応するための構成として、あらかじめ設定された一定の条件を満たす場合に、給湯装置1の制御部3に対して省電許可信号又は省電禁止信号を出力するように構成されている。
ここで、省電許可信号を出力する条件は、リモコン2の一部機能を停止させてもよい場合を想定して決定される。たとえば、自己または他のリモコン2において給湯装置1に対する運転指令が解除されたとき(なお、他のリモコン2で運転指令が解除されたとの情報は給湯装置1の制御部3との通信で取得する)、つまり、給湯装置1が運転停止状態にあるときや、給湯装置1に運転指令は与えられているが燃焼停止状態(運転待機状態)が一定時間継続し、かつ、リモコンのスイッチ操作がない状態が一定時間継続したときなどが省電許可の条件とされ、これらの条件のいずれかが満たされると、リモコン制御部24は給湯装置1の制御部3に対して省電許可信号を出力する(図1(b)参照)。
これに対して、省電禁止信号を出力する条件は、リモコン2の全機能を作動させる、つまり、リモコン2の表示部の表示などを通常の状態にする場合を想定して決定される。たとえば、自己または他のリモコン2において給湯装置1に対する運転指令が発せられたとき(なお、他のリモコン2で運転指令が発せられたとの情報は給湯装置1の制御部3を介して取得する)、つまり、給湯装置1の運転停止状態が解除されたときや、上記運転待機状態継続中に自己または他のリモコン2で所定のスイッチ操作(たとえば、給湯設定温度の設定変更操作など)がなされたときなどが省電禁止信号の出力条件とされ、これらの条件のいずれかが満たされると、リモコン制御部24は給湯装置1の制御部3に対して省電禁止信号を出力する(図1(b)参照)。
また、この他、このリモコン制御部24は、上記省電力モードに対応するためのもう一つの構成として、給湯システムが省電力モードに入ったときにリモコン2で必要とされる電圧(以下、「要求電圧」と称する)に関する情報を保持し、給湯装置1の制御部3からの要求に応じてこの情報を制御部3に送信する。
ここで、この要求電圧は、リモコン2の機種などに応じて適宜決定される。すなわち、給湯システムがリモコン2での電力消費を抑制する省電力モードに移行するときに、各リモコン2は、それぞれのリモコン制御部24にあらかじめ設定された制御プログラムにしたがって、表示部21の蛍光表示管や発光ダイオードの点灯範囲や点灯数を減じたり、音声出力部23の出力音量を下げるなどして、リモコン2での電力消費を抑制する省電力制御を開始するように構成されている。そのため、省電力制御の実行時にリモコン2が必要とする要求電圧は、各リモコン2の省電力制御の内容に応じて決定される。
リモコン制御部24は、各自この要求電圧に関する情報をそれぞれの内部のメモリ(たとえば、ROM)に記憶している。なお、この要求電圧に関する情報としては、要求電圧そのものの数値データを用いるが、たとえば、リモコン制御部24にはリモコン2の機種を特定するデータ(機種データ)を記憶させておき、リモコン制御部24がこの機種データを要求電圧に関する情報として給湯装置1の制御部3に送信するように構成することもできる。つまり、この場合は、給湯装置1の制御部3には機種データを要求電圧に換算するテーブルが備えられ、各リモコン2から送信される機種データに基づいて制御部3が各リモコン2の要求電圧を特定するように構成される。
なお、この他、リモコン制御部24には、内部クロックに基づく内部時計27が備えられており、この内部時計27に測定される時刻が上記表示部22に表示できるようにされている。
リモコン通信インターフェース25は、通信線6を介して供給される電力をリモコン電源部26に供給するとともに、給湯装置1の通信インターフェース5と通信を行うための通信装置で構成される。リモコン電源部26は、リモコン2の各部に電力を供給する電源装置であり、通信線6を介して給湯装置1の電源部4から供給される電源からリモコン制御部24や表示部22、音声出力部23などの駆動電源を生成する。
次に、このように構成された給湯システムにおける通常モードと省電力モードの切り替え動作について説明する。
A.省電力モードへの移行
各リモコン2のリモコン制御部24は、それぞれ省電許可信号を出力する条件が満たされたか否かを独自に判断し、条件が満たされた場合には、それぞれ所定の省電力制御(表示部22の一部消灯など)を開始し、その後にそれぞれのタイミングで給湯装置1の制御部3に対して省電許可信号を送信する。
これに対し、給湯装置1の制御部3は、通信インターフェース5に接続されたすべてのリモコン2から省電許可信号を受信することを条件に、この条件が満たされると、給湯システムの動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える。すなわち、すべてのリモコン2から省電許可信号を受信すると、給湯装置1の制御部3は、電源部4に対して電圧切替信号を出力し、電源部4からリモコン2に供給する電源の出力電圧を通常モード時の通常電圧(DC15V)から、省電力モード時用の省電電圧(DC12VまたはDC9V)に切り替える。
ここで、本実施形態の給湯システムでは、電源部4が省電電圧として2パターン(DC12VとDC9V)の電圧出力が可能であるため、省電力モードへの移行に際し、給湯装置1の制御部3は、省電電圧としてDC12VまたはDC9Vのいずれの出力を行うかを決定する。この決定は以下のようにして行われる。
すなわち、この決定にあたっては、まず始めに、給湯装置1の制御部3は、その起動時(制御部3に電力供給が開始された時点)またはリモコン2が接続された時に、接続されているリモコン2の要求電圧を確認し、該制御部3内のメモリ(たとえば、RAM)に記憶する。具体的には、この確認は図3に示す手順で行われる。
図3に示すように、制御部3は、各リモコン2の要求電圧の初期値として、通常モード時の通常電圧(DC15V)を用いる(図3ステップS1参照)。そして、この状態で制御部3はリモコン2との通信の有無を判断し(図3ステップS2参照)、接続されているリモコン2との通信を受信すると、当該通信先のリモコン2(たとえば、リモコン2aとする)を認識し、当該リモコン2aの存在をメモリに保持する(図3ステップS3参照)。リモコン2が複数接続されている場合には、同様の手順で他に接続されているすべてのリモコン2(たとえば、リモコン2b、…2x)と通信し、その存在をメモリに保持する(図3ステップS2、S3参照)。
そして、給湯装置1に接続されているリモコン2の存在を確認すると、次に、制御部3は、これら接続されているリモコン2から省電許可信号または省電禁止信号を受信したかを判断し(図3ステップS4参照)、省電許可信号を受信したときには当該信号を送信したリモコン2に要求電圧に関する情報の送信を要求して、当該リモコン2の要求電圧を制御部3のメモリ(たとえば、RAM)に記憶・保持する(図3ステップS5参照)。これに対し、省電禁止信号を受信したときには、要求電圧に関する情報の送信要求を行うことなく、通常電圧(DC15V)を制御部3のメモリに維持する(図3ステップS1参照)。
なお、本実施形態では、リモコン2から省電許可信号を受信したことを条件に、給湯装置1の制御部3がリモコン2に対して要求電圧に関する情報の送信を求める場合を示したが、この送信要求は省電許可信号の受信を待たずに存在が確認されたリモコン2に対して行うように構成することもできる。また、給湯装置1の制御部3が、リモコン2から受信した機種データに基づいて、既にリモコン2の要求電圧を特定している場合には、要求電圧の送信を要求することなく、特定した要求電圧を記憶させる。
図4は、給湯装置1の制御部3において省電力モードへの移行手順を示すフローチャートである。この図4に示すように、給湯装置1の制御部3は、省電力モードに移行するか否かを判断するにあたり、まず、給湯装置1にリモコン2が接続されているか否かを判断する(図4ステップS1参照)。この判断は図3のステップS3でメモリに記憶させた情報に基づいて行われ、この判断でリモコン2の接続がないと判断されると、制御部3は通常モードを維持する。つまり、この場合は、リモコン2による省電力制御は行われないので、電源部4に対して電圧切替信号は出力せず、電源部4の出力電圧は通常電圧(DC15V)の設定を維持する。
これに対して、給湯装置1にリモコン2の接続があると判断すると、次に、制御部3は、いずれかのリモコン2から省電許可信号を受信したかを判断する(図4ステップS2参照)。そして、省電許可信号を受信した場合には、当該省電許可信号を送信したリモコン2の要求電圧と、電源部4の省電電圧として対応可能な対応電圧(本実施形態ではDC12VとDC9V)とを比較し、要求電圧が対応電圧以下かを判断する(図4ステップS3参照)。ここで、たとえばリモコン2の要求電圧が対応可能電圧より高い場合(たとえば、要求電圧がDC12Vを超える場合)には、当該リモコン2に対して省電電圧の供給はできないので、省電力モードには入らず、図4ステップS6に移行して通常電圧を維持する。
そして、給湯装置1の制御部3は、この図4ステップS2およびS3の判断を接続されているリモコン2のすべてに対して行い、すべてのリモコン2において図4ステップS3の判断が肯定的、つまり、各リモコン2の要求電圧が対応電圧(DC12VまたはDC9V)以下の場合には省電力モードに移行する(図4ステップS5参照)。
その際、省電電圧として、DC12VまたはDC9Vのいずれを選択するかは、各リモコン2の要求電圧のうちで最も高い要求電圧を基準にして、この高い値を示す要求電圧値以上で、かつ、より小さい値の対応電圧を省電力モードにおける出力電圧に決定する。具体的には、図5に示すように、リモコン2として2台のリモコン2a,2bが接続されている場合に、双方ともに要求電圧が9V(または9V未満)であれば、電源部4の出力電圧は対応電圧(DC12V、DC9)のうちで低い値を示すDC9Vを選択する。これに対して、リモコン2a,2bのうちのいずれか一方または双方の要求電圧がDC12V(または、DC9Vを超え、かつDC12V未満)であれば、電源部4の出力電圧としてDC12Vを選択する。制御部3は、この選択にしたがって、電源部4に対応する電圧切替信号を出力する。
B.通常モードへの復帰
省電力モード実行中、各リモコン2のリモコン制御部24は、それぞれ省電禁止信号を出力する条件が満たされたか否かを独自に判断し、条件が満たされた場合には、それぞれのタイミングで給湯装置1の制御部3に対して省電禁止信号を送信する。
給湯装置1の制御部3は、通信インターフェース5に接続されているいずれかのリモコン2から省電禁止信号を受信すると、給湯システムの動作モードを省電力モードから通常モードに切り替える。すなわち、給湯装置1の制御部3は、電源部4に対して電圧切替信号を出力し、電源部4からリモコン2に供給する電源の出力電圧を通常モード時の通常電圧(DC15V)に復帰させるとともに、各リモコン2に通常モードへの復帰を指示し、省電力モードを終了する。
このように、本実施形態に示す給湯システムでは、給湯装置1の制御部3が省電力モードに移行する際に、電源部4からリモコン2に供給する電圧(電源部4の出力電圧)を、各リモコン2の要求電圧に基づいて決定(具体的には、最も高い要求電圧を基準に決定)するので、給湯装置1に接続されているリモコン2のすべてが電圧不足に陥ることなく、しかも可及的に小さい出力電圧で省電力モードを実行でき、省電効果の高い給湯システムが提供される。
また、本発明の適用にあたり、リモコン2のうちのいずれかに省電力モードに対応しないリモコン(省電許可信号を出力することなく省電禁止信号を出力しつづけるリモコンや省電許可信号及び省電禁止信号のいずれも出力しないリモコン)が含まれていた場合でも、当該リモコンからは省電許可信号が得られないので、制御部3が省電力モードに移行することはない(省電許可信号が得られない場合については図5の「無し」参照)。したがって、省電力モード未対応のリモコンが接続された場合でも誤動作が起こることなく、給湯システムを運用することができる。
なお、上述した実施形態では、電源部4のリモコン2に対する出力電圧として3パターン(省電電圧2パターン)の電源を用いたが、この電源部4の構成については、省電電圧の出力パターンを増やすことにより、よりきめ細かな制御を実現することができ、省電効果を高めることができる。さらに、この電源部4の構成として、少なくとも省電電圧に関して出力電圧の値を無段階に連続的に可変できる電源装置を用いれば、要求電圧に応じて適切な省電電圧の選択が可能となり、より一層省電効果を高めることができる。
一方、リモコン2側の構成についても、上述した実施形態では、各リモコン2の要求電圧に固定値を用いた場合を示したが、たとえば、この要求電圧をリモコン2の運転状態などに基づいてリモコン2自身が作成する変動値とすることもできる。具体的には、リモコン制御部24が、随時または定期的に表示部22の点灯範囲・点灯数、音声出力部23の音量などを判断して要求電圧を演算し直すように構成したり、あるいは、内部時計27で得られる時刻(時間帯)に応じて表示部22の表示輝度を変更しつつ時間帯ごとに要求電圧を演算するように構成することもできる。このように、要求電圧に変動値を用いることで、各リモコン2の要求電圧を予め余裕をもって定める必要がなくなるので、必要最小限にとどめることができ、省電効果を高めることができる。
実施形態2
次に、本発明の第2の実施形態について図6に基づいて説明する。この第2の実施形態に示す給湯システムは、省電力モード時の省電電圧を監視する機能を付加したもので、上述した実施形態1に示す給湯システムに、給湯装置の電源部の出力電圧を監視する回路を備えて構成されている。その他の構成は上述した実施形態1と共通するので、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図6はこの監視回路の概略構成を示している。この監視回路は、電源部4におけるリモコン用の電源出力電圧V1を給湯装置1の制御部3で監視できるように構成したもので、制御部3のマイコン31に設けられた電圧監視ポートと、電源部4の出力電圧V1を上記マイコン31に取り込むための電気回路(抵抗R1〜R3、ダイオードD1など)を電圧監視手段として備えている。
すなわち、この監視回路では、電源部4のリモコン用出力電圧V1を、抵抗R1,R2で分圧して(マイコン31に読み込み可能なレベルにまで下げて)、上記電圧監視ポートに入力するように構成されている。抵抗R3,ダイオードD1はマイコン31を保護するための素子である。なお、マイコン31の電源電圧切替ポートは、上述した電圧切替信号を出力するための出力ポートであり、この出力ポートを介して電源部4に電圧切替信号が与えられる。
しかして、このような出力電圧の監視回路を用いて、本実施形態では、給湯システムが省電力モードにあるとき(または、省電力モードに入ったとき)の電源部4の出力電圧V1をマイコン31で検出する。そして、制御部3は、このときにマイコン31に読み込まれた実際の出力電圧V1aの検出電圧値Aと、制御部3が省電電圧として決定(選択)していた目標電圧値V1bに基づいて設定される所定のしきい値B(ただし、しきい値Bは目標省電電圧値V1b>しきい値Bとする)とを比較して、検出電圧値Aがこのしきい値Bを下回っている(検出電圧値A<しきい値Bである)か否かを判断する。その判断の結果、検出電圧値Aがしきい値Bを下回っている場合には、制御部3は、電源部4の出力低下と判定して省電力モードを解除し、通常モードに復帰する。つまり、この場合、制御部3は、電源部4に対して通常電圧(DC15V)の出力を指令する電圧切替信号を出力し、リモコン2に通常電圧が供給されるようにする。
このように、本実施形態では、給湯装置1の制御部3が、省電力モード時における電源部4の出力電圧を検出する電圧検出手段を備え、この電圧検出手段により検出された電圧値が所定値(しきい値B)を下回ることを条件に、リモコン2に対する電源部4の出力電圧を通常モードにおける電圧値(通常電圧)に変更するように構成されるので、電源部4の異常等によって省電電圧が低下した場合でも、リモコン2が電圧不足に陥るのを防止でき、リモコン2の正常な動作を担保することができる。
なお、本実施形態に示す給湯システムでは、先に述べた判断(検出電圧値A<しきい値Bか否かの判断)で電源部4の出力低下と判定した場合には、その結果を制御部3のメモリ(RAMまたはEEPROMのような不揮発性のメモリ)に記憶し、以後の制御においては省電力モードに移行しないように構成される。
実施形態3
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態に示す給湯システムは、上述した実施形態2に示す給湯システムにおける省電力モード時の省電電圧を監視する機能に代えて、またはこれと併せて、通常モード時の通常電圧を監視する機能を付加したもので、上述した実施形態2に示す給湯システムと同様の監視回路を備えている。監視回路の構成、その他の基本構成は上述した実施形態1及び2と共通するので、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に示す給湯システムでは、図6に示す監視回路を用いて、給湯システムが通常モードにあるときに(具体的には、省電力モードに移行する前に)電源部4の出力電圧V1をマイコン31で検出する。そして、制御部3は、このときにマイコン31に読み込まれた実際の出力電圧V1cの検出電圧値Cと、制御部3が通常電圧としている目標電圧値V1dに基づいて設定される所定のしきい値D(ただし、しきい値Dは目標省電電圧値V1d>しきい値Dとする)とを比較して、検出電圧値Cがこのしきい値Dを下回っている(検出電圧値C<しきい値Dである)か否かを判断する。そして、この判断の結果、検出電圧値Cがしきい値Dを下回っている場合には、制御部3は、電源部4の出力電圧低下と判定し、省電力モードへの移行を禁止し、省電力モードに移行せずに通常モードを維持する。
このように、本実施形態では、給湯装置1の制御部3が、通常モード時における電源部4の出力電圧を検出する電圧検出手段を備え、この電圧検出手段により検出された電圧値が所定値(しきい値D)を下回ることを条件に、リモコン2に対する電源部4の出力電圧を通常モードにおける出力電圧よりも低下させる制御を禁止するように構成されるので、特に、通常モード時の出力電圧と省電力モード時の出力電圧とに相関関係がある電源部4を採用した場合において、電源部4の出力電圧が低下した状態で省電力モードに移行することが禁止されるので、省電力モードへの移行によってリモコン2が電圧不足に陥ることが回避される。
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
たとえば、上述した実施形態では、給湯装置1の端末装置としてリモコンを用いた場合を示したが、給湯装置1の電源部4から電力供給を受ける装置であれば、リモコン以外の端末装置についても本発明は適用可能である。
なお、上述した実施形態に示す給湯装置には、一般給湯機能、風呂釜機能、あるいは温水暖房機能の各単機能給湯装置、あるいは、これらの複合機が含まれ、また、ガス給湯器、石油給湯器あるいは電気温水器など、温水を生成する装置であればその燃料等の種類を問わず本発明は適用可能である。