JP5417733B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、熱転写シートに関するものである。
熱転写を利用した画像形成方法における熱転写シートとして、基材の一方の面上に、色材層として昇華性染料とバインダーからなる昇華転写型インク層を設けた昇華型熱転写シートや、該昇華転写型インク層の代わりに顔料とワックスからなる熱溶融転写型インク層を設けた熱溶融型の熱転写シートが知られている。
これらの熱転写シートは、更に、必要に応じ、基材の色材層と同一面上に、熱転写受像シートに転写する保護層を設けることもできる。
これらの熱転写シートは、一般に、基材の色材層と反対側の面にサーマルヘッドからの熱エネルギーに耐え得るよう耐熱滑性層が設けられている。
ところが、このような熱転写シートは、製造後に巻き取り状態で保管した際、色材層と耐熱滑性層とが接することにより、色材層から耐熱滑性層へ染料が移行する(キック)という問題があった。そして、この耐熱滑性層へ移行した染料が巻き返されることにより、他の色の色材層、保護層等へ再転移し(バック)、この汚染された層が受像シートへ熱転写されることにより指定された色と異なる色相となり印画精度を著しく損なってしまうという問題もあった。更に、耐熱滑性層と色材層の長期接触により、色材層表面に染料がブリードし、印画の際に未印画部(サーマルヘッドからの加熱がない領域)が着色する地汚れが生じることがあった。
一方、近年のプリンターの高速化に伴い、サーマルヘッドの熱エネルギー増加、インクリボンの高感度化、色材層における染料含有率の増加等が求められるが、これらの変更は、色材層から耐熱滑性層への染料の移行や、この移行に起因した熱転写時のトラブル発生の可能性を高めるものである。このため、キックバック性能が良好な耐熱滑性層への要求は更に大きくなってきている。
キックバック性能を改良した熱転写シートとして、例えば、耐熱滑性層に用いるポリビニルアセタール樹脂のTgを80℃以上に、滑剤として使用するリン酸エステルの融点を35℃以上に限定し、保護膜への再転写(バック)を抑制した熱転写シート(例えば、特許文献1)、耐熱滑性層の粗度(SRz)を3.0μm以上に限定して、ラミネート層への着色(バック)を抑制した熱転写シート(例えば、特許文献2)、耐熱性樹脂と、融点が33℃以上でありIO値が0.23以上である滑剤と、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の混合物から形成した耐熱滑性層を備えた熱転写シート(例えば、特許文献3)等が挙げられる。
ところが、近年の熱転写シートを用いた熱転写記録方式では、印画速度を高速化することや、より高濃度で鮮明な画像を出力するため、サーマルヘッドの熱エネルギーは、増加の一途をたどっている。このようなサーマルヘッドの熱エネルギーの増加に伴い、熱転写時にサーマルヘッド部分に背面層の耐熱樹脂がかき取られることによりヘッドカス(以下、印画カスともいう)が溜まり、この印画カスが溜まった部分で染料等が転写されず、得られる印画物に色抜けが発生するという問題が顕在化してきた。特に、上述のようなキックバック性能の向上を図った熱転写シートにおいてこのような印画カスの発生が顕著に見られる。
特開平9−300827号公報 特開2000−225775号公報 特開2002−11967号公報
本発明は、上記現状に鑑み、熱転写時に印画カスの発生を充分に抑制することができ、色抜けのない高品位の印画物を得ることができる熱転写シートを提供することを目的とするものである。
本発明は、基材の一方の面に色材層を有し、上記基材の他方の面に耐熱滑性層を有する熱転写シートであって、上記耐熱滑性層は、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)と、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂(A2)と、滑剤(A3)と、フィラーとを含むものであり、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計重量の50質量%以下であり、上記滑剤(A3)として、金属石鹸及びリン酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種を含み、上記樹脂(A2)は、ポリメチルメタクリレートであることを特徴とする熱転写シートである。
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)のブチリル基含有率が50%以上であることが好ましい。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、耐熱滑性層への染料の移行や該移行した染料の再移転の防止性能を高度に付与された熱転写シートとして、ブチリル基の含有率を所定の割合以上としたセルロース・アセテート・ブチレート樹脂を主成分とする耐熱滑性層を備えた熱転写シートを既に開発している。また、本発明者らが先に開発した熱転写シートの耐熱滑性層の組成について、更に鋭意検討した結果、印画カスの発生を抑制するには、耐熱滑性層の組成を変更する必要があることに想到した。すなわち、熱転写シートの耐熱滑性層に含有させるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂の含有量を所定の範囲内に制限することで、印画カスの発生を充分に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の熱転写シートを構成する各層毎に詳述する。
(基材)
本発明における基材としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルム;コンデンサー紙、パラフィン紙、合成紙等の紙類;不織布;紙や不織布と樹脂との複合体;等が挙げられる。
上記基材は、厚さが一般に約0.5〜50μmであり、好ましくは約1.5〜10μmである。
上記基材は、隣接する層との接着性を向上させるため、表面処理を施してもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記表面処理は、1種のみ行ってもよいし、2種以上行ってもよい。
本発明では上記表面処理の中でも、コストが低い点で、コロナ処理又はプラズマ処理が好ましい。また、必要に応じ、その一方の面又は両面に下引き層(プライマー層)を形成するものであってもよい。
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートは、基材の色材層と反対側の面に耐熱滑性層が設けられている。
上記耐熱滑性層は、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)と、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂よりなる群より選択される少なくとも一種の樹脂(A2)と、滑剤(A3)とを含むものである。
上記熱転写シートは、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)を耐熱滑性層に特定量含有することにより、染料の耐熱滑性層への移行を抑制することができる。
上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、該セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び後述する樹脂(A2)の合計重量の50質量%以下である。上記耐熱滑性層において、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)の含有量が50質量%より高い場合、本発明の熱転写シートを用いて熱転写画像の作製を行うと、サーマルヘッドへ付着する印画カスの発生を充分に抑制できなくなる。上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)の含有量の好ましい下限は15質量%、好ましい上限は50質量%であり、より好ましい下限は20質量%、より好ましい上限は30質量%である。
なお、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)の含有量は、該セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の固形重量和におけるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)の固形重量の割合から算出した値である。
上記耐熱滑性層において、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、染料の再転移を防止する点で、ブチリル基の含有率が50%以上であることが好ましい。50%未満であると、染料の再転移性が高くなり、印画精度を著しく損なうことがある。
なお、本明細書において、上記ブチリル基の含有率は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂を構成するトリエステル中にあるブチリル基の含有量を重量%で表したものである。
上記ブチリル基の含有率は、ASTM規格D817に基づいて測定した値である。
上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、数平均分子量が1万〜10万であることが好ましい。1万未満であると、上記耐熱滑性層と保護層等とのブロッキングや、耐熱性、強度が不充分となることがあり、10万を超えると、本発明の熱転写シートにより、基材との接着性が阻害され、印画カスの発生を充分に抑制できないことがある。より好ましい下限は15000、より好ましい上限は6万である。
なお、上記数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、標準物質:ポリスチレン)にて測定した値である。
また、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、耐熱性、強度等の点で、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましい。
上記耐熱滑性層における上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)と混合させる樹脂(A2)は、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂である。
上記アクリル系樹脂は、アクリル樹脂であってもよいし、メタクリル樹脂等のアクリル誘導体であってもよい。上記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、アクリルポリオール樹脂、スチレンアクリル共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリメチルメタクリレートが好ましい。なお、上記樹脂(A2)としてのアクリル系樹脂は、シリコーン変性アクリル樹脂を含まない。
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。
上記樹脂(A2)は、インクリボンの保存温度を鑑みてガラス転移温度(Tg)が60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
上記樹脂(A2)は、一種又は二種以上を用いることができる。上記樹脂(A2)として二種以上を用いる場合、例えば、アクリル系樹脂又はポリビニルアセタール樹脂を二種以上用いてもよいし、アクリル系樹脂とポリビニルアセタール樹脂とを組合せて用いてもよい。
本発明において、上記樹脂(A2)はアクリル系樹脂であることが好ましい。
上記耐熱滑性層は、滑剤(A3)として金属石鹸、シリコーンオイル、シリコーン変性樹脂及びリン酸エステルよりなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記滑剤(A3)は、耐熱滑性層の滑り性を向上させるために添加するものである。
本発明の熱転写シートは、滑剤(A3)として一種の滑剤を含むものであっても、添加量の最適化によって充分な滑性を発現させることが可能であるが、滑剤(A3)として複数の滑剤を併用することにより、低印画エネルギーから高印画エネルギー領域に至るまで、より安定な滑性を得ることができる。
上記金属石鹸としては、例えば、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩等が挙げられる。
上記アルキルリン酸エステルの多価金属塩としては、プラスチック用添加剤として公知のものを使用することができる。
上記アルキルリン酸エステルの多価金属塩は、一般に、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩を多価金属で置換することによって得られ、種々のグレードのものが入手可能である。
本発明におけるアルキルリン酸エステルの多価金属塩は、例えば、下記一般式1又は一般式2で表されるものが好ましい。
Figure 0005417733
Figure 0005417733
各式中、Rは、炭素数12以上のアルキル基であり、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムを表し、nは、Mの原子価を表す。
上記Rは、炭素数12〜18のアルキル基であることが好ましい。上記Rとしては、例えば、セチル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられるが、コスト面及びブリードアウト等の汚染性の問題を避ける点で、なかでもステアリル基が好ましい。
上記Mとして表されるアルカリ土類金属としては、例えば、バリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
上記アルキルカルボン酸の金属塩としては、例えば、下記一般式3で表されるものが挙げられる。
Figure 0005417733
上記式3中、Rは炭素数11以上のアルキル基を表し、Mはアルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム又はリチウムを表し、nはMの原子価を表す。
上記Rは、炭素数11〜18のアルキル基であることが好ましい。上記Rとしては、例えば、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられるが、入手容易性、コスト面及びブリードアウト等の汚染性の問題を避ける点で、ドデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基が好ましく、ステアリル基がより好ましい。
上記Mで表されるアルカリ土類金属としては、例えばバリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
上記金属石鹸は、特に高印画エネルギー領域において滑性を発現することができ、耐熱性の点で、マグネシウム系、亜鉛系又はアルミニウム系の化合物であることが好ましく、亜鉛系の化合物であることがより好ましい。
上記金属石鹸は、平均粒径が3〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましい。
上記平均粒径が大き過ぎると、印画汚れが生じ易くなり、また小さ過ぎると耐熱滑性層に充分な滑性を得ることができず、印画シワ等の問題が生じることがある。
上記平均粒径は、レーザー回折法により測定した値である。
上記金属石鹸を含有させる場合、その含有量は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計重量100重量部あたり1〜50重量部の割合であることが好ましく、2〜30重量部であることがより好ましい。
上記金属石鹸の含有量が、上記範囲未満であると熱印加時におけるサーマルヘッドとの滑性不足、離型性不足により融着を引き起こす傾向がある。一方、その含有が上記範囲を越えると、耐熱滑性層の物理的強度の低下や塗膜の耐熱性不足を引き起こすことがある。
本発明の熱転写シートにおいて、上記シリコーンオイルを滑剤(A3)として使用した場合、低印画エネルギーから高印画エネルギー領域に至るまで優れた滑性を発現させることができる。
上記シリコーンオイルとしては、従来公知の何れのものを使用してもよい。
上記シリコーンオイルを含有させる場合、その含有量は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計重量100重量部あたり1〜30重量部の割合であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。上記シリコーンオイルの含有量が、上記範囲未満であるとサーマルヘッドとの離型性を得ることができず、サーマルヘッドと融着しやすくなる。一方、上記範囲を超えると染料移行性が増大したり、印画時にサーマルヘッドを汚染してしまうことがある。
本発明の熱転写シートにおいて、上記リン酸エステルを滑剤(A3)として使用した場合、低印画エネルギーから高印画エネルギー領域に至るまで優れた滑性を発現させることができる。
上記リン酸エステルとしては、例えば、(1)炭素数6〜20の飽和又は不飽和高級アルコールのリン酸モノエステル又はジエステル、(2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル、(3)上記飽和又は不飽和高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数1〜8)のリン酸モノエステル又はジエステル、(4)炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェノール又はアルキルナフトールのリン酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。
上記(1)及び(3)における飽和又は不飽和高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
上記(3)におけるアルキルフェノールとしては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニルフェノール等が挙げられる。
上記リン酸エステルを含有させる場合、その含有量は、配合比率が上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計重量100重量部に対し0.5〜10重量部であることが好ましい。上記配合比率が該範囲より低いと充分な滑り性が得られないことがあり、該範囲より多いと染料汚染性が増大することがある。
上記リン酸エステルを使用する場合、印画時にリン酸エステルの分解に起因してサーマルヘッドが腐食しないようアルカリ性物質を併存させてもよい。
上記アルカリ性物質としては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、有機アミン等が挙げられる。
上記アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミナ、マグネシウムアルミニウムグリシネート等が好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。
上記有機アミンとしては、常温で不揮発性であり、沸点が200℃以上であるものが好ましく、例えば、モノ−、ジ−又はトリ−メチルアミン、モノ−、ジ−又はトリ−エチルアミン、モノ−、ジ−又はトリ−プロピルアミン等が挙げられる。
上記アルカリ性物質は、上記リン酸エステル1モルに対して0.1〜10モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明の熱転写シートにおいて、上記シリコーン変性樹脂を滑剤(A3)として使用した場合、低印画エネルギー領域で優れた滑性を発現させることができるとともに、高印画エネルギー領域においても好適に滑性を発現でき、印画シワの発生を好適に防止することができる。
上記シリコーン変性樹脂とは、その分子の一部にポリシロキサン基を有する樹脂を意味する。
上記シリコーン変性樹脂は、従来公知の方法、例えば、ポリシロキサン基含有ビニルモノマーと別の種類のビニルモノマーとの共重合、熱可塑性樹脂と反応性シリコーンとの反応等により調製することができる。
上記シリコーン変性樹脂としては、熱可塑性樹脂とポリシロキサン基含有ビニルモノマーをブロック共重合させる方法、熱可塑性樹脂とポリシロキサン基含有ビニルモノマーをグラフト共重合させる方法、又は、熱可塑性樹脂に反応性シリコーンを反応させる方法により調製したものが挙げられる。
上記シリコーン変性樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が好ましく、色材層から耐熱滑性層への染料移行を低減させる点で、アクリル樹脂がより好ましい。
上記反応性シリコーンとは、主鎖にポリシロキサン構造を有し、片末端又は両末端に熱可塑性樹脂の官能基と反応する反応性官能基を有する化合物である。
上記反応性官能基としては、アミノ基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
上記シリコーン変性樹脂は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計重量100重量部あたり0.5〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。
上記シリコーン変性樹脂の含有量が、上記範囲未満であると、熱印加時におけるサーマルヘッドとの滑性不足、離型性不足により融着を引き起こす傾向がある。一方、その含有量が上記範囲を越えると、染料汚染性が増大することがある。
本発明における耐熱滑性層は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び樹脂(A2)等と滑剤(A3)とに加え、サーマルヘッドに付着するカスのクリーニング性、滑性やブロッキング防止の調整等を目的として、フィラーを含有するものであってもよい。
上記フィラーとしては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコーンゴムフィラー、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられ、なかでも、タルク、シリコーンゴムフィラー、炭酸カルシウム等が好ましい。
上記フィラーの添加量は、クリーニング性、滑性及び耐熱性の点で、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び上記樹脂(A2)の合計100質量部あたり1〜30質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上記フィラーを添加する効果が殆ど得られず、30質量部を超えると、本発明の熱転写シートによる熱転写時の印画カス発生の原因となり、また、耐熱滑性層の可撓性や皮膜強度が低下することがある。より好ましい下限は1質量部、より好ましい上限は20質量部である。
上記耐熱滑性層は、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)、上記樹脂(A2)及び滑剤(A3)と、所望に応じてフィラー、後述のイソシアネート等とを溶媒に溶解又は分散させて塗工液を調製し、得られた塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の塗工方法で塗工し乾燥することで形成される。
上記耐熱滑性層は、上述のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)と樹脂(A2)と滑剤(A3)とを含有するものであれば、例えば、架橋剤を添加しなくても染料転移性を低減させることができるが、塗膜の耐熱強度向上や染料転移性を低減させる点で、イソシアネートの作用によって架橋したものであってもよい。
本発明におけるイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、特開平7−149062号公報記載の芳香族系ポリイソシアネートのアダクト体、シリコーン変性イソシアネート化合物等が挙げられる。
上記イソシアネートの使用量は、架橋強度、染料移行の防止等の点で、上記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)、上記樹脂(A2)の合計重量100重量部に対し1〜20重量部であることが好ましい。
上記耐熱滑性層は、一般に乾燥固形基準で2.0g/m以下の塗工量であれば、充分な性能を有する耐熱滑性層を形成することができる。
上記塗工量は、好ましくは乾燥固形基準で0.1〜1.5g/mであり、より好ましくは下限が0.2g/m、上限が1.0g/mである。
上記耐熱滑性層は、厚みが薄すぎると耐熱滑性層の有する機能が充分に発揮できなくなることがあり、厚すぎると印画時の感度が低下することがある。
(色材層)
本発明の熱転写シートは、所望の画像がモノカラーである場合には、色材層として適宜選択した1色の層のみ形成してもよいし、所望の画像がフルカラー画像である場合には、色材層として、シアン、マゼンタ及びイエロー(更に、必要に応じてブラック)を選択して、イエロー、マゼンタ及びイエロー(更に、必要に応じてブラック)の色材層を形成することができる。
本発明の熱転写シートは、昇華型熱転写シートである場合には、色材層として昇華性の染料を含む層を形成し、熱溶融型の熱転写シートである場合には、色材層として顔料等で着色した熱溶融性インキ層を形成する。
以下、昇華型熱転写シートの場合を説明するが、本発明は昇華型熱転写シートのみに限定されるものではない。
昇華型の色材層に用いられる昇華型の染料としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
上記昇華性の染料としては、例えば、ジアリールメタン系染料;トリアリールメタン系染料;チアゾール系染料;メロシアニン染料;ピラゾロン染料;メチン系染料;インドアニリン系染料;アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料;キサンテン系染料;オキサジン系染料;ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料;チアジン系染料;アジン系染料;アクリジン系染料;ベンゼンアゾ系染料;ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料;スピロピラン系染料;インドリノスピロピラン系染料;フルオラン系染料;ローダミンラクタム系染料;ナフトキノン系染料;アントラキノン系染料;キノフタロン系染料;等が挙げられ、更に具体的には、特開平7−149062号公報に例示の化合物等が挙げられる。
上記色材層において、昇華性染料は色材層の全固形分に対し5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%の量である。
上記昇華性の染料の使用量が、上記範囲未満であると印字濃度が低くなることがあり、上記範囲を超えると保存性等が低下することがある。
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、一般に、耐熱性を有し、染料と適度の親和性があるものを使用することができる。
上記バインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;等が挙げられる。
上記バインダー樹脂としては、なかでも、耐熱性、染料の移行性等の点、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が好ましく、ビニル系樹脂がより好ましく、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等が更に好ましい。
上記色材層は、所望により、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を使用してもよい。
上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル等が挙げられる。
上記無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
上記有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
上記色材層は、上述の染料とバインダー樹脂とを、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、更に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、上述の基材の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
上記有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等が挙げられる。
上記色材層の塗工量は、乾燥固形基準で0.2〜6.0g/m、好ましくは0.2〜3.0g/m程度である。
(その他)
本発明の熱転写シートは、基材の一方の面に色材層を設け、該基材の他方の面に耐熱滑性層を設けてなるものであれば、転写保護層や下引き層やその他の層を設けてなるものであってもよい。
上記転写保護層を上述の色材層と面順次に形成した場合、画像形成後に画像面を保護する保護層を転写することができる。
上記転写保護層の層構成及び組成は特に限定されず、使用する基材シート、色材層等の特徴に応じて、従来公知の技術より選択することができる。
上記下引き層は、基材と染料層又は基材と耐熱滑性層の接着性を考慮し、特に染料層と基材の間に設ける場合は染料の転写効率を向上させる組成等を従来公知の技術より適宜選択して設けることができる。
本発明の熱転写シートは、耐熱滑性層を上述した組成とすることで、熱転写時のサーマルヘッドから加えられる熱エネルギーによって、該サーマルヘッドに印画カスが付着することを好適に抑制することができる。よって、近年の高エネルギー化したサーマルヘッドを用いた高速印画においても、充分に高品位の印画物を得ることが可能となる。
本発明の熱転写シートは、上述の基材の耐熱滑性層側にサーマルヘッド等により所定箇所を加熱・加圧し、転写インク層のうち印字部に相当する箇所の染料を被転写材に転写させて印字することができる。
本発明の熱転写シートが熱昇華型の熱転写シートである場合、上記被転写材として熱転写受像シート等を使用することができる。
上記熱転写受像シートとしては、記録面が染料受容性を有するものであれば特に限定されず、例えば、紙、金属、ガラス、合成樹脂等の基材の少なくとも一方の面に染料受容層を形成したものを挙げることができる。
上記熱転写シートは、熱溶融型の熱転写シートである場合、通常の紙、プラスチックフィルム等を被転写材として使用することもできる。
上記熱転写を行う際に使用するプリンターとしては、特に限定されず、公知の熱転写プリンターを使用することができる。
本発明の熱転写シートは、上述の構成よりなるものであるので、熱転写時に高エネルギー化されたサーマルヘッドを用いた場合であっても、印画カスが発生することを充分に抑制することができるため、印画物に色抜けが発生することを防止でき、高品位の印画物を得ることができる。また、インクリボン保存時における耐熱滑性層への染料移行を抑制させることもでき、サーマルヘッド汚染が防止でき、色再現性(印画精度)が高く、地汚れ等の問題を生じ難くすることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
(実施例1〜6及び比較例1、2)
基材として、厚さ6μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム〔PET〕(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ダイヤホイルK203E)を用い、その易接着面とは反対の面に表1に示す組成の耐熱滑性層塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.5g/mになるように塗布し、80℃、1分間乾燥して、耐熱滑性層を形成し、耐熱滑性層塗工シートを作製した。
なお、表1の数値は質量部を示す。また、使用した市販品は下記の通りである。
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(CAB)樹脂:
CAB551−0.01(固形分100wt%、ブチリル基53.0%、アセチル基2.0%、水酸基1.5%、Tg85℃、数平均分子量16000、イーストマンケミカルカンパニー社製)
CAB531−1(固形分100wt%、ブチリル基50.0%、アセチル基3.0%、水酸基1.7%、Tg115℃、数平均分子量4万、イーストマンケミカルカンパニー社製)
アクリル樹脂:ダイヤナールBR−83(固形分100wt%、三菱レイヨン株式会社製)
ポリエステル樹脂:サイマックUS380(固形分30wt%、東亜合成株式会社製)
ステアリン酸亜鉛:SZ−PF(堺化学工業株式会社製)
リン酸エステル:プライサーフM−208BM(固形分100wt%、第一工業製薬株式会社製)
タルク:ミクロエースP−3(固形分100wt%、日本タルク株式会社)
溶剤:メチルエチルケトン/トルエン=1/1( KT−11)
Figure 0005417733
次に、得られた耐熱滑性層塗工シートの耐熱滑性層と反対側面に、下記組成の色材層と工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.8g/mになるように塗布し、乾燥して色材層を形成し、実施例1〜6及び比較例1、2の熱転写シートを作製した。
<色材層塗工液組成>
C.I.ソルベントブルー63 3.0部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1、積水化学工業社製) 3.0部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 82.0部
実施例及び比較例で得られた熱転写シートを用いて、キヤノン社製、CP−740を用いて0階調、128階調及び255階調の印画を、印画メートル数400m、800m及び1600mでそれぞれ行った。サーマルヘッドに付着する印画カスの状態を目視にて確認を行った。評価は、図1に示したサーマルヘッドの各領域への印画カスの付着状態ごとに下記基準にて行った。結果を表2に示した。なお、図1は、印画を行ったサーマルヘッド部分の断面の模式図である。
(評価基準)
1 発熱抵抗体上に印画カスが溜まっている。
2 コモン電極上に印画カスが溜まっている。
3 領域Aを覆うように印画カスが溜まっている。
4 領域Aに薄っすら印画カスが溜まっている。
5 印画カスが溜まらない。
なお、評価が4又はであると、印画物に色抜けが生じる恐れが殆どなく、良好な印画物を得ることができる。
Figure 0005417733
表2に示したように、実施例に係る熱転写シートによると、各階調での評価が全て4であり、印画カスの発生を充分に抑制することができ、印画物への色抜けは殆ど生じることがなかった。なお、図2に、実施例1に係る255階調、印画メートル数1600mにおけるサーマルヘッドの状態の模式図を示す。
これに対し、比較例に係る熱転写シートは、0階調の評価は4であるものの、128階調及び255階調での結果が3以下であり、印画カスの発生を充分に抑制できず、印画物に色抜けが発生した。なお、図3に、比較例2に係る255階調、印画メートル数400mにおけるサーマルヘッドの状態の模式図を示す。
本発明の熱転写シートは、上述の構成よりなるものであるので、熱転写時に印画カスの発生を充分に抑制することができ、色抜けのない高品位の印画物を得ることができる。また、インクリボン保管時において耐熱滑性層への染料の移行が抑制させることもでき、サーマルヘッド汚染が防止でき色再現性が高く、地汚れ等の問題が生じにくい。また、過剰な架橋によりキックバック抑制を達成している構成ではないためにインキの安定性も高い。
実施例及び比較例の評価において使用したサーマルヘッドの断面の模式図である。 実施例1に係るサーマルヘッドの断面を示す模式図である。 比較例2に係るサーマルヘッドの断面を示す模式図である。

Claims (2)

  1. 基材の一方の面に色材層を有し、前記基材の他方の面に耐熱滑性層を有する熱転写シートであって、
    前記耐熱滑性層は、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)と、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A2)と、滑剤(A3)と、フィラーとを含むものであり、
    前記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)は、前記セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)及び前記樹脂(A2)の合計重量の50質量%以下であり、
    前記滑剤(A3)として、金属石鹸及びリン酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種を含み、
    前記樹脂(A2)は、ポリメチルメタクリレートである
    ことを特徴とする熱転写シート。
  2. セルロース・アセテート・ブチレート樹脂(A1)のブチリル基含有率が50%以上である請求項1記載の熱転写シート。
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