次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態は、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル1を区画形成する隔壁2を有する、柱状のハニカム成形体10(図1、図2を参照)を形成する工程と、ハニカム成形体のセルの端部に目封止部を形成する目封止工程とを有する。そして、目封止工程が、図9〜図12に示すように、「有底筒状の外側容器4内に配設された「底部5cの一部に凸部形成領域7を有する有底筒状の内側容器5」内に、目封止用スラリー6を貯留し、外側容器4と内側容器5との間にガス8を吹き込んで凸部形成領域7を内側容器5の内側5bに向けて突出させて凸部7aを形成した状態で、ハニカム成形体10を、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら内側容器5内に挿入して、目封止用スラリー6をセル1内に圧入し(図11を参照)、その後、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く(図12を参照)」、目封止用スラリー圧入操作を有するものである。尚、外側容器4と内側容器5との間にガス8を吹き込み始めるのは、内側容器5内に目封止用スラリー6を貯留する前であってもよいし、内側容器5内に目封止用スラリー6を貯留した後であってもよい。
ここで、図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される柱状のハニカム成形体10を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される柱状のハニカム成形体10の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図9は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、目封止用容器3の内側容器5に目封止用スラリー6が貯められた状態を示す、内側容器5の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図10は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、目封止用容器3の内側容器5に目封止用スラリー6が貯められるとともに、内側容器5に凸部7aが形成された状態を示す、中心軸に平行な断面を示す模式図である。図11は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム成形体10を内側容器5内に圧入した状態を示す、内側容器5の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図12は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜いている状態を示す、内側容器5の中心軸に平行な断面を示す模式図である。
このように、目封止工程の目封止用スラリー圧入操作において、「外側容器と内側容器との間にガスを吹き込んで凸部形成領域を内側容器の内側に向けて突出させて凸部を形成した状態で、ハニカム成形体を、一方の端部を内側容器の底面に押し付けながら内側容器内に挿入して、目封止用スラリーをセル内に圧入する」ため、ハニカム成形体の端面の中で上記凸部に当接する領域においては、他の領域と比較して、セル内に圧入される目封止用スラリーの量が少なくなり、目封止部の深さが浅くなる。これにより、目封止ハニカム構造体の端面において、目封止部の深さが異なる複数の領域を形成することが可能になる。
ハニカム構造体を配管に装着して使用する際に、排ガスの偏流によって「端面の一部の領域」が強く押圧されても、その強く押圧される領域に形成された目封止部の目封止深さ(目封止部の、セルの延びる方向における長さ)が深いと、目封止部が抜け落ち難くなる。そのため、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、目封止ハニカム構造体の端面における「排ガスの偏流等により強く押圧される領域」の目封止部の目封止深さを深く形成することにより、排ガスの偏流等により「その深く形成された目封止部」が強く押圧されても、目封止部が抜け難くなるようにすることが可能になる。以下、本実施形の目封止ハニカム構造体の製造方法について工程毎に説明する。
(1)ハニカム成形体の形成(ハニカム成形体形成工程):
ハニカム成形体を形成する工程においては、まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料とすることが好ましい。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライト化原料、珪素−炭化珪素系複合材料、又はチタン酸アルミニウムが好ましく、コージェライト化原料が特に好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して3〜15質量%であることが好ましい。
水の含有量は、成形原料全体に対して7〜45質量%であることが好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して15質量%以下であることが好ましい。
次に、成形原料を成形して、図1、図2に示すような、柱状のハニカム成形体10を形成する。成形原料を成形する際には、まず、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。そして、坏土を押出成形して、柱状のハニカム成形体10を形成する。ハニカム成形体10は、流体の流路となる一方の端面10aから他方の端面10bまで延びる複数のセル1を区画形成する隔壁2を有するものである。ハニカム成形体10の、中心軸に直交する(セルの延びる方向に直交する)断面の形状は、用途に合わせて適宜決定することができる。例えば、円形(図1を参照)、楕円形、レーストラック形状、四角形、五角形、六角形、その他多角形、その他の形状を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法は特に制限されず、押出成形等の従来公知の成形法を用いることができる。所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させることが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜95質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、90〜180℃が好ましい。乾燥時間は1〜10時間が好ましい。
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さ(セルの延びる方向における長さ)が、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、両頭丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
(2)目封止部の形成(目封止工程):
次に、ハニカム成形体について、一方の端面における所定のセルの開口部と、他方の端面における残余のセルの開口部に目封止部を形成することが好ましい。目封止部を形成したハニカム成形体は、一方の端面側に目封止部が形成された所定のセルと、他方の端面側に目封止部が形成された残余のセルとが、交互に並び、両端面に市松模様が形成されることが好ましい。
ハニカム成形体に目封止を施す方法は、まず、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に孔を開けることが好ましい。より具体的には、ハニカム成形体の一方の端面全体に粘着性フィルムを貼着した後に、当該粘着性フィルムの、目封止部を形成しようとするセル(所定のセル)に相当する部分のみを、レーザーにより孔開けする方法等を好適に用いることができる。粘着性フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、熱硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルムの一方の表面に粘着剤が塗布されたもの等を好適に用いることができる。
次に、目封止スラリー圧入操作を行う。目封止スラリー圧入操作は、図9〜図12に示すように、「有底筒状の外側容器4内に配設された「底部5cの一部に凸部形成領域7を有する有底筒状の内側容器5」内に、目封止用スラリー6を貯留し、外側容器4と内側容器5との間にガス8を吹き込んで凸部形成領域7を内側容器5の内側5b向けて突出させて凸部7aを形成した状態で、ハニカム成形体10を、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら内側容器5内に挿入して、目封止用スラリー6をセル1内に圧入し(図11を参照)、その後、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く(図12を参照)」操作である。
ここで、上記のように「有底筒状の内側容器5内にハニカム成形体10を挿入する」ときには、内側容器5を固定しておき、ハニカム成形体10を内側容器5に向かって移動させてもよいし、ハニカム成形体10を固定しておき、内側容器5をハニカム成形体10に向かって移動させてもよい。また、「ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く」ときには、内側容器5を固定しておき、ハニカム成形体10を内側容器5から離すように移動させてもよいし、ハニカム成形体10を固定しておき、内側容器5をハニカム成形体10から離すように移動させてもよい。換言すれば、目封止スラリー圧入操作は、「有底筒状の外側容器4内に配設され、目封止用スラリー6が貯められた、有底筒状の内側容器5内に、一方の端部11が内側容器5の底面5aに押し付けられながら、ハニカム成形体10が挿入されることにより目封止用スラリー6がセル1内に圧入されるように、内側容器5又はハニカム成形体10を移動させ、その後、ハニカム成形体10が内側容器5から引き抜かれるように、内側容器5又はハニカム成形体10を移動させる」操作である。また、内側容器5の方を移動させると、内側容器5が傾いたり振動したりすることにより、貯められたスラリーが偏ることがあるため、ハニカム成形体10を移動させるほうが好ましい。図9に示すように、内側容器5は、その開口部を外側容器4の開口部と同じ方向に向けて、外側容器4内に配設されている。そして、内側容器5と外側容器4とから目封止用容器3が形成されている。つまり、目封止用スラリー6が貯留された目封止用容器3に、ハニカム成形体10を挿入することにより、ハニカム成形体に目封止部を形成するということもできる。尚、図11、図12においては、ハニカム成形体の端面に貼り付けたシート(粘着性フィルム)は省略されている。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、図3〜図5に示すように、「有底筒状の外側容器4」と、「有底筒状の外側容器4内に配設された「底部5cの一部に凸部形成領域7を有する有底筒状の内側容器5」」とを備えた目封止用容器3を用いる。そして、目封止用容器3を用いて、「有底筒状の外側容器4内に配設された「底部5cの一部に凸部形成領域7を有する有底筒状の内側容器5」内に、目封止用スラリー6を貯留し、外側容器4と内側容器5との間にガス8を吹き込んで凸部形成領域7を内側容器5の内側5bに向けて突出させて凸部7aを形成した状態で、ハニカム成形体10を、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら内側容器5内に挿入して、目封止用スラリー6をセル1内に圧入し(図11を参照)、その後、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く(図12を参照)」、目封止スラリー圧入操作を行う。
尚、「凸部7aを形成した状態」は、ハニカム成形体10を内側容器5内に挿入し始めるときの状態であり、ハニカム成形体10を内側容器5内に挿入して凸部7aに当接した後は、ハニカム成形体10が挿入されるに従い凸部7aは押しつぶされていき、目封止用スラリー6をセル1内に圧入し終えた後には、図11に示すように、凸部7aは平らな状態となる。つまり、「凸部7aを形成した状態で、ハニカム成形体10を、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら内側容器5内に挿入する」ことにより、図11に示すように、凸部7aがハニカム成形体10の一方の端部11に押しつぶされて、平らな状態になる。従って、「外側容器4と内側容器5との間にガス8を吹き込んで凸部形成領域7を内側容器5の内側5bに向けて突出させて凸部7aを形成した状態で、ハニカム成形体10を、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら内側容器5内に挿入」して、「凸部7aが、ハニカム成形体10の一方の端部11に押しつぶされて平らな状態となって」、「目封止用スラリー6をセル1内に圧入」するのである。図3は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される、目封止用容器を模式的に示す斜視図である。図4は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される目封止用容器の、中心軸に平行な断面を示す模式図である。図5は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される目封止用容器において、内側容器に凸部を形成した状態を示す、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法において、内側容器5は、底部5cの一部に凸部形成領域7を有する有底筒状である。内側容器5の凸部形成領域7を除く部分のヤング率が、10〜50MPaであり、凸部形成領域7のヤング率が、内側容器5の上記凸部形成領域7を除く部分のヤング率に対して15〜95%であることが好ましい。そして、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分のヤング率が、10〜50MPaであり、凸部形成領域7のヤング率が、内側容器5の上記凸部形成領域7を除く部分のヤング率に対して20〜90%であることが更に好ましい。凸部形成領域7のヤング率が、内側容器5の上記凸部形成領域7を除く部分のヤング率に対して15%より低いと、凸部形成領域7が柔らかくなるため、エアーを吹き込んだ時に、凸部の大きさを制御し難くなることがある。凸部形成領域7のヤング率が、内側容器5の上記凸部形成領域7を除く部分のヤング率に対して95%より高いと、凸部形成領域7が硬くなるため、エアーの圧力では凸部を形成し難くなることがある。ヤング率は、JIS K6253に準拠して測定した値である(デュロメータタイプA、中硬度用を使用)。
内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の材質が、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム及び天然ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であり、凸部形成領域7の材質が、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム及び天然ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリウレタンゴムであることが更に好ましい。これにより、凸部形成領域7のヤング率と、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分のヤング率とを、上記のように制御することが可能となる。内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の材質としては、機械的強度、耐摩耗性に優れる点で、ポリウレタンゴムが好ましい。尚、同じ種類の材質であってもヤング率を変えることが可能であるため、例えば、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の材質と、凸部形成領域7の材質とを、いずれもポリウレタンゴムとし、それぞれの材質(ポリウレタンゴム)のヤング率だけを変えることも好ましい態様である。ここで、ポリウレタンゴムのヤング率は、ポリウレタンゴムの原料、発泡度等を変えることにより変えることができる。
内側容器5の凸部形成領域7は、ハニカム成形体を内側容器に圧入したときに、「作製しようとする目封止ハニカム構造体の端面において、目封止深さを深くしたい領域」に相当する部分に、当接する領域とすることが好ましい。例えば、図8Aに示すように、内側容器の底面5aにおいて、凸部形成領域7が十字状に形成されていることが好ましい。この場合、直行する2本の線(帯)の幅は10mm以上が好ましく、20mm以上が更に好ましい。当該2本の線(帯)の幅の上限は300mmが好ましく、200mmが更に好ましい。また、図8Bに示す内側容器の底面5aのように、凸部形成領域7がリング状に形成されていることも好ましいしい態様である。この場合、凸部形成領域7の内径(直径)は、リング状の凸部形成領域7の外径(直径)の、5〜90%の大きさであることが好ましい。また、凸部形成領域7の外径(直径)は、内側容器の底面5aの直径の、5〜100%の大きさであることが好ましい。図8Aは、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される目封止用容器を構成する、内側容器の底面を模式的に示す平面図である。図8Bは、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の他の実施形態において使用される目封止用容器を構成する、内側容器の底面を模式的に示す平面図である。
また、内側容器5は、筒形状の部分が円筒形(側面が底面に直交する筒形状)であってもよいし、円錐台状(側面と底面とにより形成される角度が直角ではなく、開口端部と底面の面積が異なる形状)であってもよい。内側容器5の形状が、円錐台状の場合、開口端部側の内周の直径が小さいことが好ましい。また、内側容器5の形状が、円錐台状の場合、内側容器5の内周の直径は、中心軸方向の両端部における直径の中で、小さい側の直径とする。
内側容器5の厚さは、0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.0mmであることが更に好ましい。内側容器5の厚さが0.5mmより薄いと、内側容器5がハニカム成形体に密着しやすくヒケ、目封止深さや端面エグレ等の品質の低下やゴムの破断等により生産性の低下を招くことがある。内側容器5の厚さが2.5mmより厚いと、ハニカム成形体の圧入時に、内側容器が外側容器と密着してしまいハニカム成形体を引き抜く時に、ヒケ(目封止部の端面の凹み)や目封止深さ異常を引き起こしやすくなることがある。
内側容器5の内周の直径は、ハニカム成形体10の中心軸に直交する断面の直径の102〜118%であることが好ましく、103〜115%であることが更に好ましい。102%より小さいと、ハニカム成形体と内側容器5が一体となりハニカム成形体側面のイタミを生じさせることがある。118%より大きいと、ハニカム成形体と内側容器のシール性が低下し目封止深さのバラツキを生じさせることがある。内側容器5の内周の直径とは、内側容器5の筒形状の部分(底部を除く部分)を中心軸に直交する平面で切断したときの、内径(内周側の直径)を意味する。尚、ハニカム成形体の底面が円形以外の形状である場合、内側容器5の内周は、ハニカム成形体の底面と同じ形状(相似形)であることが好ましい。また、その場合、内側容器5の内周(底面)の面積とハニカム成形体の底面の面積との比率が、「上記ハニカム成形体の底面及び内側容器の底面が円形の場合における、内側容器の内周(底面)の面積と、ハニカム成形体の底面の面積との比率」と、同じ面積比率であることが好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、内側容器5の深さが、外側容器4の深さの40〜150%であることが好ましい。更に、内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の90〜98%であることが好ましい。内側容器の深さが、外側容器の深さの40%未満であると、圧入時にハニカム成形体が内側容器の端をかみこんでしまい目封止し難くなることがある。内側容器の深さが、外側容器の深さの150%を超えると、圧入時にハニカム成形体が内側容器の折り込み部分をかみこんでしまい目封止し難くなることがある。内側容器5の深さは、具体的には、20〜50mmが好ましい。また、内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の90%未満であると、内側容器と外側容器の中心点ズレが大きくなりハニカム成形体圧入時に内側容器中心部とハニカム成形体中心位置が合わず、目封止し難くなることがある。内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の98%を超えると、内側容器が外側容器に密着してしまい目封止品質を低下させることがある。
本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、図6、図7に示すように、目封止用容器3aにおける内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さが、凸部形成領域7の厚さより、厚いことが好ましい。凸部形成領域7の厚さを薄くすることにより、図7に示すように、外側容器と内側容器の間にガス8を吹き込んだ時に、凸部形成領域7が、内側容器の内側5bに向かって突き出し、凸部7aが形成される。そして、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さが、0.5〜2.5mmであり、凸部形成領域7の厚さが、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さに対して10〜65%であることが好ましい。そして、凸部形成領域7の厚さが、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さに対して15〜60%であることが更に好ましい。凸部形成領域7の厚さが、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さに対して10%より薄いと、凸部形成領域7が柔らかくなるため、エアーを吹き込んだ時に、凸部の大きさを制御し難くなることがある。凸部形成領域7の厚さが、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分の厚さに対して65%より厚いと、凸部形成領域7が硬くなるため、エアーの圧力では凸部を形成し難くなることがある。図6は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の他の実施形態において使用される目封止用容器の、中心軸に平行な断面を示す模式図である。図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の他の実施形態において使用される目封止用容器において、内側容器に凸部を形成した状態を示す、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
内側容器5の凸部形成領域7を除く部分と、凸部形成領域7との、厚さを変える方法は、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分と、凸部形成領域7との、材質を変える方法に比べると、1つの材質で内側容器5を作製することができるため(異なる材質間の繋ぎ目がないため)、内側容器5の耐久性が高くなる。
また、内側容器5の凸部形成領域7を除く部分と、凸部形成領域7との、材質及び厚さの両方を変えることにより、所望のヤング率が得られるようにしてもよい。
本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態においては、内側容器5の凸部形成領域を除く部分の引張応力が、0.5〜11MPaであることが好ましく、1.0〜7.5MPaであることが更に好ましい。引っ張り応力が0.5MPaより小さいと、内側容器5が瞬時に破断することがあるため、ハニカム成形体を引き抜きく際に内側容器5からハニカム成形体を同心円状に引き剥がし難くなり、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。引っ張り応力が11MPaより大きいと、ハニカム成形体を内側容器5から取り出す時に、内側容器5が密着することがあり、そのまま引き抜くと一気に剥がれハニカム成形体端面を傷つけることがあり、また、真空破壊を引き起こすことにより、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。引張応力は、ダンベル状試験片による試験方法で測定した値である。
内側容器5の凸部形成領域の引張応力は、0.075〜10.45MPaであることが好ましく、0.1〜9.9MPaであることが更に好ましい。引っ張り応力が0.075MPaより小さいと、エアー吹き込み時に破損する恐れがある。引っ張り応力が10.45MPaより大きいと、エアー圧力では変形しにくく、制御が困難となることがある。
また、加圧用ガスの吹き込みによって内側容器の内側に向かって突き出すように形成された凸部の、内側容器の底面からの高さは0.1〜5.0mmが好ましい。0.1mmより低いと、目封止部の深さを変化させ難くなることがある。5.0mmより高いと、目封止部の深さのバラツキが大きくなることがある。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、外側容器4は、図3〜図5に示すように、有底筒状である。そして、外側容器4は、側面にガス導入口4aを有することが好ましい。ガス導入口4aを通じて、ガス(加圧用ガス)8を、外部から外側容器4内に導入することができる。ガス導入口4aは、外側容器4の側面に形成された貫通孔4cと、貫通孔4cに連通する筒状部4bとから構成されている。筒状部4bは、内径が1.0〜10.0mmであることが好ましく、長さが10〜100mmであることが好ましい。貫通孔の直径は、0.5〜9.5mmであることが好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法に用いられる目封止用容器3は、内側容器5と外側容器4との間に空間が空いており、ガス導入口4aから導入されたガスが凸部形成領域7を押圧し易くなっていることが好ましい。外側容器4と内側容器5との間にガスを吹き込むときの、当該ガスの圧力は、0.05〜0.35MPaであることが好ましく、0.1〜0.3MPaであることが更に好ましい。0.05MPaより低いと、凸部形成領域7を変形させて凸部を形成し難くなることがある。0.35MPaより高いと、内側容器5の凸部形成領域7以外の領域も変形させることがあり、目封止部の深さを制御し難くなることがある。ガス導入口4aから導入する加圧用ガスの種類としては、特に限定されないが、空気、窒素等を挙げることができる。加圧用ガスは、ガスボンベから配管を通じてガス導入口4aに送られてもよいし、圧縮装置により圧縮された加圧用ガスが、配管を通じてガス導入口4aに送られてもよい。
内側容器5の開口部には、外側に突き出るように鍔部(内側容器の鍔部)5dが形成されていることが好ましい。そして、外側容器4の開口部には、外側に突き出るように鍔部(外側容器の鍔部)4dが形成されていることが好ましい。内側容器5及び外側容器4に鍔部が形成されていることにより、内側容器5及び外側容器4を取り扱い易くなる。また、内側容器5の鍔部5dを外側容器4の鍔部4dの上に載せるようにすると、内側容器5の底部と外側容器4の底部との間に隙間を形成することができ(内側容器の深さが、外側容器の深さより浅い場合)、ガス導入口4aから導入されたガスが凸部形成領域7を押圧し易い構造とすることができる。
また、内側容器の鍔部5dと外側容器の鍔部4dとは、間からガスが漏れ出さないように貼り付けられていることが好ましい。これにより、ガス導入口4aからガスを導入したときに、内側容器の鍔部5dと外側容器の鍔部4dとの間からガスが漏れ出すことを防止することができる。内側容器の鍔部5dと外側容器の鍔部4dとを貼り付ける方法としては、把持部材を用いて固定したり、接着剤を用いて固定したりする方法を挙げることができる。把持部材としては、バネの力で挟む構造や、螺子で締め付ける構造のものを用いることができる。接着剤としては、接着した後に、容易に取り外せるものであることが好ましい。また、内側容器の鍔部5dと外側容器の鍔部4dとを、直接ネジ留めすることも好ましい態様である。
外側容器4は、ASTM試験法による曲げ強さが、100MPa以上であることが好ましく、105〜500MPaであることが更に好ましい。100MPaより低いと、軟らかいため、内側に内側容器を入れて取り扱うときに、扱い難くなることがある。外側容器4の材質としては、金属が好ましく、更に具体的には、ステンレス鋼、アルミ合金が好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、目封止用スラリーは、ハニカム成形体の成形原料と同じ原料を含むことが好ましい。また、目封止用スラリーの粘度は、常温で、10〜1000dPa・sであることが好ましい。10dPa・sより低いと、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりし易くなることがある1000dPa・sより高いと、目封止用スラリーがハニカム成形体のセル内に充填され難くなることがある。目封止用スラリーの粘度は、B型粘度形で測定した値である。
ハニカム成形体を内側容器内に挿入するときの圧力は、0.05〜5.0MPaが好ましい。0.05MPaより低いと、目封止用スラリーがハニカム成形体のセル内に充填され難くなることがある。5.0MPaより高いと、ハニカム成形体が欠けたりすることがある。
上記目封止スラリー圧入操作を行って、ハニカム成形体のセルの一方の端部(ハニカム成形体の一方の端面)に目封止用スラリーを充填した後に、ハニカム成形体のセルの他方の端部(ハニカム成形体の他方の端面)にも、同様に、目封止スラリー圧入操作により目封止用スラリーを充填することが好ましい。
ハニカム成形体の他方の端面に目封止用スラリーを充填する際には、まず、ハニカム成形体の他方の端面にシートを貼り付けた後、一方の端面において目封止用スラリーを充填しなかったセルに対応する位置に孔を開けることが好ましい。シートの種類や孔を開ける方法は、上記ハニカム成形体の一方の端面に目封止用スラリーを充填する場合と同様であることが好ましい。その後、目封止スラリー圧入操作を行って、ハニカム成形体の他方の端面に目封止用スラリーを充填する。目封止スラリー圧入操作については、上記ハニカム成形体の一方の端面に目封止用スラリーを充填する場合と同様であることが好ましい。
(3)目封止ハニカム構造体の作製:
目封止用スラリーが充填されたハニカム成形体を、焼成して、両端面の所定の位置に(例えば、市松模様を形成するように)目封止部が形成された、目封止ハニカム構造体(例えば、図13を参照)を作製することが好ましい。焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂(仮焼成)を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃を最高温度として、0.5〜40時間温度を保持して行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件としては、大気雰囲気下、必要に応じて窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下、1300〜1500℃の最高温度で、1〜50時間加熱保持することが好ましい。特に、コージェライト製ハニカム構造体を得る場合には、大気雰囲気下、1350〜1440℃の最高温度とすることが好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法によって製造された目封止ハニカム構造体は、例えば、図13に示すような、端面101の一部の領域において、目封止部102の深さが異なる目封止ハニカム構造体である。図13は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態によって製造されたハニカム構造体100の、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、乾燥させたハニカム成形体に目封止用スラリーを充填して、その後、ハニカム成形体及び乾燥前目封止部を焼成しているが、ハニカム成形体を焼成した後に目封止用スラリーを充填してもよい。その場合、乾燥させたハニカム成形体を上記「(3)目封止ハニカム構造体の作製」において記載した条件で焼成を行い、その後、焼成したハニカム成形体に、上記「(2)目封止部の形成」において記載した条件で、目封止用スラリーを充填することが好ましい。そして、焼成したハニカム成形体に目封止用スラリーを充填した後に、目封止部を固化させ、隔壁と密着させるため、必要に応じて、上記「(3)目封止ハニカム構造体の作製」において記載した条件で焼成等を行うことが好ましい。
得られた目封止ハニカム構造体の材質はセラミックであることが好ましく、得られた目封止ハニカム構造体の隔壁は、多孔質であることが好ましい。目封止ハニカム構造体の隔壁の開気孔率の下限値は30%であることが好ましく、35%であることが更に好ましい。目封止ハニカム構造体の隔壁の開気孔率の上限値は80%であることが好ましく、65%であることが更に好ましい。開気孔率の上限値及び下限値をこのような値とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。開気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがある。開気孔率が80%を超えると、強度が低下するとともに、熱伝導率が低下することがある。開気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
目封止ハニカム構造体の隔壁は、平均細孔径の下限値が5μmであることが好ましく、7μmであることが更に好ましい。また、平均細孔径の上限値が50μmであることが好ましく、35μmであることが更に好ましい。平均細孔径の上限値及び下限値をこのような値とすることにより、作製される目封止ハニカム構造体をフィルターとして使用した場合に、粒子状物質(PM)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が50μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルターに捕集されず通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。例えば、島津製作所社製、商品名:ポロシメータ 型式9810を使用して測定することが出来る。
目封止ハニカム構造体の隔壁の材質が炭化珪素である場合、炭化珪素粒子の平均粒径が5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることより、フィルターを、好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、100μmより大きいと気孔率が小さくなることがある。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすく、気孔率が小さすぎると圧力損失が上昇することがある。平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。
目封止ハニカム構造体のセル形状(目封止ハニカム構造体の中心軸(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。目封止を設ける場合は、八角形と四角形との組み合わせも好適な一例である。目封止ハニカム構造体の隔壁の厚さは、50〜2000μmであることが好ましい。隔壁の厚さが50μmより薄いと、得られる目封止ハニカム構造体の強度が低下することがあり、2000μmより厚いと、圧力損失が大きくなることがある。目封止ハニカム構造体のセル密度は、特に制限されないが、0.9〜311セル/cm2であることが好ましく、7.8〜62セル/cm2であることが更に好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(ハニカム成形体の作製)
コージェライト、有機バインダー、増孔剤、及び水からなる混合原料をハニカム状に成形した後、乾燥することにより、底面の直径310mm、長さ305mmの円筒状のハニカム成形体を作製した。作製したハニカム成形体の、その貫通方向と直行するセルの断面形状は正方形であり、隔壁の厚みは約310μmであり、セル密度は300セル/平方インチであった。
(目封止用スラリーの調製)
コージェライト粉末100質量部に対して、メチルセルロース1.5質量部、グリセリン8質量部、及び水40質量部を加え、混練することにより目封止用スラリーを調製した。なお、調製した目封止用スラリーの粘度は200dPa・sであった。
(目封止部の形成)
得られたハニカム成形体について、目封止用スラリー圧入操作を用いて、隣接するセルが互いに反対側の端部で封じられ、両端面が市松模様状を呈するように、各セルの端部に目封止部を形成した。目封止用スラリーとしては、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。
目封止用スラリー圧入操作に用いる内側容器としては、底面が直径(円筒の内径に相当)320mmの円形であって高さが45mmの有底円筒状の容器を用いた。内側容器の厚さ(厚さ)は0.5mmとし、内側容器の深さは49.5mmとした。内側容器としては、底部に、図8Aに示すような、十字状の凸部形成領域が形成されたものを用いた。十字状の凸部形成領域の、十字形状を形成する各線(帯)の幅は、80mmとした。内側容器の材質(凸部形成領域を除く部分の材質)は、ヤング率40MPa、引張応力1.5MPaのエーテル系のポリウレタンゴムとした。内側容器の凸部形成領域の材質は、ヤング率25MPa、引張応力0.9MPaのポリウレタンゴムとした。
目封止用スラリー圧入操作に用いる外側容器としては、底面が直径(円筒の内径に相当)328mmの円形であって高さが45mmの有底円筒状の容器を用いた。外側容器の厚さは3mmとし、外側容器の深さは42mmとした。外側容器の材質はステンレス鋼(SUS304)とした。外側容器のASTM試験法による「曲げ強さ」は、100MPaであった。
外側容器の深さの、内側容器の深さに対する比率(深さ比(%))(100×内側容器深さ/外側容器深さ)は、111%であった。また、外側容器の内周の直径に対する内側容器の外周の直径の比率(外周直径比(%))(100×内側容器の外周の直径/外側容器の内周の直径)は、98%であった。また、ハニカム成形体の中心軸に直交する断面の直径(ハニカム成形体直径)に対する、内側容器の内周の直径(内周直径比(%))(100×内側容器の内周の直径/ハニカム成形体直径)は、103%であった。
ヤング率の測定は、エムアンドケー社製、商品名「デジテストII(検出器:Shore A)」を用いて、JIS K6253に準拠した方法で行った。また、引張応力の測定は、エムアンドケー社製、商品名「自動伸び計付引張試験機mini tech(シングルコラム卓上型)」を用いて行った。
目封止用スラリー圧入操作の際には、ハニカム成形体の一方の端面に粘着フィルムを貼り付け、当該粘着フィルムの、目封止部を形成しようとするセルに対応する位置にレーザーで孔を開けた。粘着フィルムの材質は、PP(ポリプロピレン)とした。目封止用スラリー圧入操作を行う際には、外側容器内に内側容器を配設し、当該内側容器内に、目封止用スラリーを貯め、外側容器と内側容器との間に加圧用ガスを吹き込んで凸部形成領域を内側容器の内側に向けて突出させて凸部を形成し、当該凸部が形成された状態で、一方の端部を内側容器の底面に押し付けながら、ハニカム成形体を内側容器内に挿入して目封止用スラリーをセル内に圧入し、その後、ハニカム成形体を内側容器から引き抜いた。加圧用ガスとしては空気を用いた。そして、エアーコンプレッサを用いて、0.2MPaの圧力(ガス圧力)で、空気を外側容器と内側容器との間に吹き込んだ。形成された凸部の高さは、2mmであった。
その後、ハニカム成形体を、100℃で120秒間乾燥した。内側容器に目封止用スラリーを貯めたときの、目封止用スラリーの深さは、10mmとした。その後、ハニカム成形体の他方の端面についても、同様にして、目封止用スラリーを充填し、乾燥させた。これにより、両端面が市松模様状を呈するように両端面に乾燥前目封止部が配設されたハニカム成形体を得た。尚、下記「基準目封止深さ」を10mmにすることを目標にし、更に、「凸部形成領域の目封止深さ」を8mmにすることを目標にして、ハニカム成形体に目封止用スラリーを充填した。
(目封止ハニカム構造体の作製)
その後、ハニカム成形体を、大気雰囲気下、1400℃で合計20時間焼成することにより目封止ハニカム構造体を得た。得られた目封止ハニカム構造体は、底面が、直径300mmの円形で、長さが305mmの円柱状であった。また、得られた目封止ハニカム構造体は隔壁が多孔質であった。目封止ハニカム構造体の平均細孔径は13μmであり、気孔率は50%であった。
得られた目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、「基準目封止深さ」、「凸部形成領域の目封止深さ」、「基準目封止深さ制御性」、「凸部形成領域の目封止深さ制御性」及び「目封止品質」を測定した。結果を表1に示す。表1において、「ヤング率比」は、内側容器の凸部形成領域以外の部分のヤング率に対する、内側容器の凸部形成領域のヤング率の比の値である。「厚さ比」は、内側容器の凸部形成領域以外の部分の厚さに対する、内側容器の凸部形成領域の厚さの比の値である。また、「材質」欄における「基準」欄は、内側容器の凸部形成領域(凸部)を除く部分の材質を示し、「材質」欄における「凸部」欄は、内側容器の凸部形成領域(凸部)の材質を示す。
(基準目封止深さ)
「基準目封止深さ」とは、目封止ハニカム構造体の端面において、内側容器の凸部形成領域(凸部)と当接しない部分に形成された目封止部の深さを意味する。目封止部の深さは、目封止ハニカム構造体を、セルの延びる方向に平行に切断して、ノギスを用いて測定する。30個の目封止ハニカム構造体を作製し、各目封止ハニカム構造体について20個の目封止部の目封止深さを測定し、合計600個の目封止部について測定された目封止深さを平均した値を「基準目封止深さ」とする。
(凸部形成領域の目封止深さ)
「凸部形成領域の目封止深さ」とは、目封止ハニカム構造体の端面において、内側容器の凸部形成領域(凸部)と当接する部分に形成された目封止部の深さを意味する。目封止部の深さは、上記「基準目封止深さ」の場合と同様に測定する。そして得られた平均値を「凸部形成領域の目封止深さ」とする。
(基準目封止深さ制御性)
「基準目封止深さ(平均値)」の、目標とする「基準目封止深さ」との「差」の絶対値が、0.1mm未満である場合を「基準目封止深さ制御性」が「A」であるとし、0.1〜1.0mmである場合を「基準目封止深さ制御性」が「B」であるとし、1.0〜2.5mm(1.0mmを除く)である場合を「基準目封止深さ制御性」が「C」であるとする。上記A〜Cの評価においては、「A」が最も良好な結果であり、「B」が次に良好な結果であり、「C」がその次に良好な結果であり、いずれも合格である。尚、「基準目封止深さ(平均値)」の、目標とする「基準目封止深さ」との差の絶対値が、2.5mmを超えると不合格となる。
(凸部形成領域の目封止深さ制御性)
「凸部形成領域の目封止深さ(平均値)」の、目標とする「凸部形成領域の目封止深さ」との「差」の絶対値が、0.1mm未満である場合を「凸部形成領域の目封止深さ制御性」が「A」であるとし、0.1〜1.0mmである場合を「凸部形成領域の目封止深さ制御性」が「B」であるとし、1.0〜2.5mm(1.0mmを除く)である場合を「凸部形成領域の目封止深さ制御性」が「C」であるとする。上記A〜Cの評価においては、「A」が最も良好な結果であり、「B」が次に良好な結果であり、「C」がその次に良好な結果であり、いずれも合格である。尚、「凸部形成領域の目封止深さ(平均値)」の、目標とする「凸部形成領域の目封止深さ」との差の絶対値が、2.5mmを超えると不合格となる。
(目封止品質)
目封止部の端面(外部に露出する側の端面)の凹みを、キーエンス社製、マイクロスコープVHX−1000にて3次高さ測定を行うことにより評価する。ハニカム構造体の端面を基準として500μm以上の凹みを有する目封止部の割合が、目封止部全体の0%である場合を「A」、5%以下である場合を「B」、10%以下である場合を「C]とする。「A」、「B」及び「C」は、いずれも合格である。尚、ハニカム構造体の端面を基準として500μm以上の凹みを有する目封止部の割合が、目封止部全体の10%を超えると不合格となる。
(実施例2〜14)
内側容器の凸部形成領域の「ヤング率比」及び「厚さ比」を表1に示すように変更し、ガス圧力を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られた目封止ハニカム構造体について、上記方法で、「基準目封止深さ」、「凸部形成領域の目封止深さ」、「基準目封止深さ制御性」、「凸部形成領域の目封止深さ制御性」及び「目封止品質」を測定した。結果を表1に示す。尚、各実施例においては、内側容器の凸部形成領域以外の部分の、ヤング率及び厚さは変化させていない。表1において、実施例14の材質である「ネオプレスポンジ」は、スポンジ状のネオプレンゴムのことである。
表1より、「ヤング率比」が15〜95%であると、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好であるが、20〜90%とすることにより、更に、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好になることがわかる。また、「厚さ比」が10〜65%であると、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好であるが、15〜60%とすることにより、更に、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好になることがわかる。また、「ガス圧力」が0.05〜0.35MPaであると、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好であるが、0.1〜0.3MPaとすることにより、更に、目封止深さ制御性及び目封止品質が良好になることがわかる。