次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態は、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル1を区画形成する隔壁2を有する、柱状のハニカム成形体10(図1、図2を参照)を形成する工程と、ハニカム成形体のセルの端部に目封止部を形成する目封止工程とを有する。そして、目封止工程が、図6、図7に示すように、「有底筒状の外側容器4内に配設され、目封止用スラリー6が貯められた、「底部の外表面」及び「側面」に凹凸(凸部7)が形成され、凹凸(凸部7)の高さが0.2〜2.0mmであり、底部の外表面の凹凸(凸部7)が形成されている範囲の面積が底部の外表面全体の面積の50〜90%である有底筒状の内側容器5内に、一方の端部11を内側容器5の底面に押し付けながら、ハニカム成形体10を挿入して目封止用スラリー6をセル1内に圧入し(図6を参照)、その後、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く(図7を参照)」、目封止用スラリー圧入操作を有するものである。
ここで、図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される柱状のハニカム成形体10を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される柱状のハニカム成形体10の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図6は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム成形体10を内側容器5内に圧入した状態を示す、内側容器5の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜いている状態を示す、内側容器5の中心軸に平行な断面を示す模式図である。
このように、目封止工程が、「有底筒状の外側容器内に配設され、目封止用スラリーが貯められた、外表面に所定の条件で凹凸(凸部)が形成された有底筒状の内側容器内に、一方の端部を内側容器の底面に押し付けながら、ハニカム成形体を挿入して目封止用スラリーをセル内に圧入し、その後、ハニカム成形体を内側容器から引き抜く」という、目封止用スラリー圧入操作を有するものであるため、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し、ハニカム成形体と内側容器の底面との間に真空状態が形成され難くなることにより、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止することができる。また、ハニカム成形体を内側容器から引き抜くときに、ハニカム成形体が破損することを防止することができる。
従来、金属等により形成された容器に目封止用のスラリーを貯めておき、そこにハニカム成形体の端部を挿入し、その後ハニカム成形体を引き抜いて目封止を行っていた。この場合、ハニカム成形体を容器から引き抜くときに、ハニカム成形体の端面と容器の底面との間が真空状態となり、ハニカム成形体のセル内に充填された目封止用スラリー(乾燥前目封止部)の一部が、ハニカム成形体を容器から引き抜くに従って、ハニカム成形体から外部に引き抜かれる(乾燥前目封止部が突出する)という問題があった。このように、乾燥前目封止部の一部が外部に引き抜かれると、外部に引き抜かれた部分は、製品であるハニカム構造体を作製するまでに取り除かれるため、最終的にハニカム構造体内に残る目封止部の質量が変化するという問題があった。ここで、「ハニカム構造体内に残る目封止部の質量が変化する」とは、得られたハニカム構造体の各目封止部の深さが均一ではなく、目封止部によって異なる深さになることにより、ハニカム構造体の端面における場所によって、目封止部の質量が異なるようになることを意味する。また、乾燥前目封止部の端面が窪むように変形する(凹みが形成される)という問題もあった。更に、ハニカム成形体を内側容器から引き抜くときに、ハニカム成形体に負荷がかかり、ハニカム成形体が破損することがあるという問題もあった。
これに対し、本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法は、目封止用スラリーを貯める目封止用容器として、外側容器の中に所定の形状の内側容器が配置されたものを用いたため、ハニカム成形体(ハニカム成形体の端部)を目封止用スラリーが貯められた内側容器内に挿入し、その後ハニカム成形体(ハニカム成形体の端部)を内側容器から引き抜くときに、内側容器が変形するため、ハニカム成形体の端面と容器の底面との間が、真空状態とはならず、ハニカム成形体を容器から引き抜いても、乾燥前目封止部はハニカム成形体から抜けることはなく、また乾燥前目封止部の端面の窪むような変形も生じない。特に、内側容器と外側容器との間に真空状態が形成されると、ハニカム成形体(ハニカム成形体の端部)を内側容器から引き抜くときに、内側容器が変形し難くなるが、本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法では、内側容器が、外表面に凹凸(凸部)が形成された形状であるため、内側容器と外側容器との間に真空状態が形成されることを防止でき、これにより、ハニカム成形体(ハニカム成形体の端部)を内側容器から引き抜くときに、内側容器が、非常に容易に変形することができる。これにより、ハニカム構造体内に残る目封止部の質量が変化することを防止でき、乾燥前目封止部の端面が窪むように変形する(凹みが形成される)ことを防止でき、更に、ハニカム成形体を内側容器から引き抜くときに、ハニカム成形体が破損することを防止することができる。以下、本実施形の目封止ハニカム構造体の製造方法について工程毎に説明する。
(1)ハニカム成形体の形成(ハニカム成形体形成工程):
ハニカム成形体を形成する工程においては、まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料とすることが好ましい。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライト化原料、珪素−炭化珪素系複合材料、又はチタン酸アルミニウムが好ましく、コージェライト化原料が特に好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して3〜15質量%であることが好ましい。
水の含有量は、成形原料全体に対して7〜45質量%であることが好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して15質量%以下であることが好ましい。
次に、成形原料を成形して、図1、図2に示すような、柱状のハニカム成形体10を形成する。成形原料を成形する際には、まず、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。そして、坏土を押出成形して、柱状のハニカム成形体10を形成する。ハニカム成形体10は、流体の流路となる一方の端面10aから他方の端面10bまで延びる複数のセル1を区画形成する隔壁2を有するものである。ハニカム成形体10の、中心軸に直交する(セルの延びる方向に直交する)断面の形状は、用途に合わせて適宜決定することができる。例えば、円形(図1を参照)、楕円形、レーストラック形状、四角形、五角形、六角形、その他多角形、その他の形状を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法は特に制限されず、押出成形等の従来公知の成形法を用いることができる。所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させることが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜95質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、90〜180℃が好ましい。乾燥時間は1〜10時間が好ましい。
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さ(セルの延びる方向における長さ)が、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、両頭丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
(2)目封止部の形成(目封止工程):
次に、ハニカム成形体について、一方の端面における所定のセルの開口部と、他方の端面における残余のセルの開口部に目封止部を形成することが好ましい。目封止部を形成したハニカム成形体は、一方の端面側に目封止部が形成された所定のセルと、他方の端面側に目封止部が形成された残余のセルとが、交互に並び、両端面に市松模様が形成されることが好ましい。
ハニカム成形体に目封止を施す方法は、まず、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に孔を開けることが好ましい。より具体的には、ハニカム成形体の一方の端面全体に粘着性フィルムを貼着した後に、当該粘着性フィルムの、目封止部を形成しようとするセル(所定のセル)に相当する部分のみを、レーザーにより孔開けする方法等を好適に用いることができる。粘着性フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、熱硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルムの一方の表面に粘着剤が塗布されたもの等を好適に用いることができる。
次に、目封止スラリー圧入操作を行う。目封止スラリー圧入操作は、図6、図7に示すように、「有底筒状の外側容器4内に配設され、目封止用スラリー6が貯められた、外表面に所定の条件で凹凸(凸部7)が形成された有底筒状の内側容器5内に、一方の端部11を内側容器5の底面5aに押し付けながら、ハニカム成形体10を挿入することにより目封止用スラリー6をセル1内に圧入し、その後、ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く」操作である。ここで、上記のように「有底筒状の内側容器5内にハニカム成形体10を挿入する」ときには、内側容器5を固定しておき、ハニカム成形体10を内側容器5に向かって移動させてもよいし、ハニカム成形体10を固定しておき、内側容器5をハニカム成形体10に向かって移動させてもよい。また、「ハニカム成形体10を内側容器5から引き抜く」ときには、内側容器5を固定しておき、ハニカム成形体10を内側容器5から離すように移動させてもよいし、ハニカム成形体10を固定しておき、内側容器5をハニカム成形体10から離すように移動させてもよい。換言すれば、目封止スラリー圧入操作は、「有底筒状の外側容器4内に配設され、目封止用スラリー6が貯められた有底筒状の内側容器5内に、一方の端部11が内側容器5の底面5aに押し付けられながら、ハニカム成形体10が挿入されることにより目封止用スラリー6がセル1内に圧入されるように、内側容器5又はハニカム成形体10を移動させ、その後、ハニカム成形体10が内側容器5から引き抜かれるように、内側容器5又はハニカム成形体10を移動させる」操作である。また、内側容器5の方を移動させると、内側容器5が傾いたり振動したりすることにより、貯められたスラリーが偏ることがあるため、ハニカム成形体10を移動させるほうが好ましい。図3に示すように、内側容器5は、その開口部5bを外側容器4の開口部4bと同じ方向に向けて、外側容器4内に配設されている。尚、図6、図7においては、ハニカム成形体の端面に貼り付けたシート(粘着性フィルム)は省略されている。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、目封止用スラリー6が貯められた内側容器5が、外表面に所定の条件で凹凸(凸部7)が形成されたものである。内側容器5が、このような物性及び形状であるため、ハニカム成形体10(ハニカム成形体の端部)を内側容器5から引き抜くときに、内側容器5が、図7に示すように、内側容器の底面5aの中央部分が盛り上るように変形する。特に、内側容器5の外表面に凸部7が形成されているために、内側容器5と外側容器との間が真空状態にならず、内側容器が、外側容器によってその動きが制限されることなく容易に変形することができる。このとき、ハニカム成形体10の端面の外縁部分が、内側容器の底面5aから離れた状態となり、ハニカム成形体10の端面と内側容器5の底面5aとの間の真空状態の形成が妨げられる。これにより、ハニカム成形体を内側容器から引き抜いても、乾燥前目封止部21はハニカム成形体から抜けることはなく、また乾燥前目封止部21の端面の窪むような変形も生じない。ここで、乾燥前目封止部とは、ハニカム成形体のセル内に充填された目封止用スラリーであって、乾燥させる前のものを意味する。
内側容器5は、ヤング率が5〜550MPaであることが好ましく、10〜500MPaであることが更に好ましい。ヤング率が5MPaより小さいと、内側容器が軟らかすぎるため、ハニカム成形体10(ハニカム成形体の端部)を内側容器5から引き抜くときに、ハニカム成形体10が内側容器の底面5aに張り付いた状態が解消され難くなり、これにより、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。ヤング率が550MPaより大きいと、内側容器が変形し難いため、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。ヤング率は、JIS K6253に準拠して測定した値である。
内側容器5は、引張応力が0.5〜11MPaであることが好ましく、1〜7.5MPaであることが更に好ましい。引っ張り応力が0.5MPaより小さいと、内側容器5が瞬時に破断してしまうため、ハニカム成形体を引き抜きく際に内側容器5からハニカム成形体を同心円状に引き剥がすことが出来ず、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。引っ張り応力が11MPaより大きいと、ハニカム成形体取り出し時に内側容器5が密着してしまい、そのまま引き抜くと一気に剥がれワーク端面を傷つけたり、真空破壊を引き起こすことにより、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることがある。引張応力は、ダンベル状試験片による試験方法で測定した値である。
内側容器5は、外表面に凹凸(凸部7)が形成されたものである。「外表面に凹凸が形成される」とは、外表面に凹部、凸部、又は「凹部及び凸部の両方」が形成されることを意味する。また、「凹凸が形成される」には、エンボス加工等が形成されることも含まれる。本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法は、内側容器の外表面に「凸部」が形成された例である。
内側容器における凹凸が形成される外表面は、内側容器の、底部の外表面及び外周部の外表面(側面)の両方である。底部の外表面及び外周部の外表面(側面)のいずれか一方であると、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなる。ハニカム成形体(ハニカム成形体の端部)を内側容器から引き抜くときに、ハニカム成形体に引っ張られて、内側容器も外側容器から引き抜かれるように力が働く。このとき、内側容器と外側容器とが密着すると内側容器が変形し難くなる。そのため、内側容器における凹凸が形成される外表面は、特に、内側容器と外側容器とが密着し、真空状態を形成しやすい部分とすることが好ましい。内側容器の底部は、有底筒形状の底部のことである。また、内側容器の外周部は、有底筒形状の筒状の部分であり、外周部の外表面(側面)は、有底筒形状の筒状の部分の外表面である。凹凸は、内側容器の外表面全体に均一に形成されていることが好ましいまた、内側容器5は、筒形状の部分が円筒形(側面が底面に直交する筒形状)であってもよいし、円錐台状(側面と底面とにより形成される角度が直角ではなく、開口端部と底面の面積が異なる形状)であってもよい。内側容器5の形状が、円錐台状の場合、開口端部側の内周の直径が小さいことが好ましい。また、内側容器5の形状が、円錐台状の場合、内側容器5の内周の直径は、中心軸方向の両端部における直径の中で、小さい側の直径とする。
内側容器の底部の外表面の凹凸が形成されている範囲の面積が、底部の外表面全体の面積に対して、50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることが更に好ましい。50%より狭いと、ハニカム成形体と内側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなり、それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなる。90%より広いと、外側容器の内側容器と接する部分と内側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなり、それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなる。ここで、「内側容器の底部の外表面の凹凸が形成されている範囲の面積」とは、凹凸が形成されていないと仮定した場合の面を基準にして、凹凸によって占有されている部分(面)の面積の合計を意味する。また、「内側容器の底部の外表面全体の面積」とは、内側容器の底面が平面状であると仮定したときの当該底面の面積を意味する。
内側容器5の外表面に形成される凹部、凸部のそれぞれは、同じ形状及び同じ大きさ(高さ、面積)であることが好ましいが、必ずしも、同じ形状及び同じ大きさでなくてもよい。また、凹凸は、内側容器5の外表面全体(又は、底部の外表面全体)に均等に広がっていることが好ましいが、一部に偏って配置されていてもよい。凹凸は、本発明の効果を奏する位置に配置されることが好ましい。内側容器5の外表面の一部に、凹凸が設けられていない領域が形成されている場合には、当該凹凸が設けられていないエリアの面積は、外表面全体の面積には含めるが、「凹凸によって占有されていない面積」として取り扱う。
内側容器に形成された凹凸の高さ(凹凸高さ)は、0.2〜2.0mmであり、0.5〜1.75mmであることが好ましい。0.2mmより低いと、ハニカム成形体と内側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなり、それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなる。2.0mmより高いと、内側容器の凹凸形状が潰れて内側容器と外側容器とが密着し、内側容器と外側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなり、それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなる。「内側容器に形成された凹凸の高さ」とは、内側容器の凹凸が形成された領域において、当該領域の厚さ方向における「最も突き出た部分」と「最も凹んだ部分」との間の距離を意味する。例えば、内側容器の外表面の形状が、平面(外周面の場合は、平面を筒状に丸めた形状)に凸部が形成された形状(例えば、図4を参照)の場合、当該凸部の高さ(最も高い凸部の高さ)が「凹凸の高さ」となる。また、内側容器の外表面の形状が、平面(外周面の場合は、平面を筒状に丸めた形状)に凹部が形成された形状の場合、当該凹部の深さ(最も深い凹部の深さ)が「凹凸の高さ」となる。また、内側容器の外表面の形状が、凸部と凹部とを有する形状である場合には、厚さ方向における「最も高い凸部の高さ」と「最も深い凹部の深さ」との和となる。
内側容器の外表面に凸部が形成される場合、当該凸部の形状は特に限定されないが、柱状、球体の一部を切り出した形状等が好ましい。凸部が柱状の場合、円柱状、四角柱等の底面が多角形の柱状等が好ましい。また、凸部が柱状の場合、先端部分が丸く形成されていることが好ましい。先端部分が丸いことにより、内側容器と外側容器との密着をより効果的に防ぐことができる。また、凸部の形状が、球体の一部を切り出した形状の場合、球体を切断した切断面を内側容器の外表面に接合させた形状とすることが好ましい。そして、凸部の形状が、球体の一部を切り出した形状である場合、当該凸部が半球状又は半球状より小さい(球体を切断したときの切断面に相当する面から、球面の頂上に該当する部分までの距離(高さ)が、球体の半径と同じ又はそれより小さい)ことが好ましく、当該「高さ」が、球体の半径の25〜100%であることが更に好ましい。また、内側容器の外表面に凹部が形成される場合、当該凹部の形状は特に限定されないが、凹部の空間の形状が、球体の一部を切り出した形状、「円柱状、四角柱等の底面が多角形の柱状」等が好ましい。内側容器の外表面の形状が、凸部と凹部とを有する形状である場合には、上記、凸部の形状及び凹部の形状を有することが好ましい。
内側容器の外表面に凸部が形成される場合、当該凸部の底面(内側容器に接合している側の面)の大きさは、1〜9mm2であることが好ましく、3〜7mm2であることが更に好ましい。1mm2より小さいと、凸部が弱く、変形し易くなり、それにより、ハニカム成形体と内側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなることがある。それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなることがある。9mm2より大きいと、凸部が強く、変形し難くなり、それにより、ハニカム成形体と内側容器の底面との間に真空状態が形成され易くなることがある。それにより、内側容器内からハニカム成形体を引き抜く際に、内側容器が変形し難くなり、目封止部に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりすることを、防止し難くなることがある。
内側容器5は、図3、図4に示すように、目封止用容器3を構成する有底筒状の容器である。ここで、目封止用容器3は、有底筒状の外側容器4と、外側容器4内に配設された有底筒状の内側容器5とを備えるものである。内側容器5の厚さは、0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.0mmであることが更に好ましい。内側容器5の厚さが0.5mmより薄いと、内側容器5がワークに密着しやすくヒケ、目封止深さや端面エグレ等の品質の低下やゴムの破断等により生産性の低下を招くことがある。内側容器5の厚さが2.5mmより厚いと、圧入時に内側容器が外側容器と密着してしまいワーク引き抜き時にヒケや目封止深さ以上を引き起こしやすくなることがある。内側容器5の材質は、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム及び天然ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、機械的強度、耐摩耗性に優れる点で、ウレタンゴムが好ましい。図3は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される、目封止用容器3を模式的に示す斜視図である。図4は、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において使用される、目封止用容器3の、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
内側容器5の内周の直径は、ハニカム成形体10の中心軸に直交する断面の直径の102〜118%であることが好ましく、103〜115%であることが更に好ましい。102%より小さいと、ハニカム成形体と内側容器5が一体となりハニカム成形体側面のイタミを生じさせることがある。118%より大きいと、ハニカム成形体と内側容器のシール性が低下し目封止深さのバラツキを生じさせることがある。内側容器5の内周の直径とは、内側容器5の筒形状の部分(底部を除く部分)を中心軸に直交する平面で切断したときの、内径(内周側の直径)を意味する。尚、ハニカム成形体の底面が円形以外の形状である場合、内側容器5の内周は、ハニカム成形体の底面と同じ形状(相似形)であることが好ましい。また、その場合、内側容器5の内周(底面)の面積とハニカム成形体の底面の面積との比率が、「上記ハニカム成形体の底面及び内側容器の底面が円形の場合における、内側容器の内周(底面)の面積と、ハニカム成形体の底面の面積との比率」と、同じ面積比率であることが好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、内側容器の深さが、外側容器の深さの40〜150%であることが好ましい。更に、内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の90〜98%であることが好ましい。内側容器の深さが、外側容器の深さの40%未満であると、圧入時にハニカム成形体が内側容器の端をかみこんでしまい目封止し難くなることがある。内側容器の深さが、外側容器の深さの150%を超えると、圧入時にハニカム成形体が内側容器の折込部分をかみこんでしまい目封止し難くなることがある。また、内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の90%未満であると、内側容器と外側容器の中心点ズレが大きくなりハニカム成形体圧入時に内側容器中心部とハニカム成形体中心位置が合わず、目封止し難くなることがある。内側容器の外周の直径が、外側容器の内周の直径の98%を超えると、内側容器が外側容器に密着してしまい目封止品質を低下させることがある。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、外側容器4は、ASTM試験法による曲げ強さが、100MPa以上であることが好ましく、105〜150MPaであることが更に好ましい。100MPaより低いと、軟らかいため、内側に内側容器を入れて取り扱うときに、扱い難くなることがある。外側容器4の材質としては、金属が好ましく、更に具体的には、ステンレス鋼、アルミ合金が好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法においては、目封止用スラリーは、ハニカム成形体の成形原料と同じ原料を含むことが好ましい。また、目封止用スラリーの粘度は、常温で、10〜1000dPa・sであることが好ましい。10dPa・sより低いと、目封止部(乾燥前目封止部)に凹み(ひけ)が形成されたり、目封止部(乾燥前目封止部)が、ハニカム成形体の端面から突出(目抜け)したりし易くなることがある1000dPa・sより高いと、目封止用スラリーがハニカム成形体のセル内に充填され難くなることがある。目封止用スラリーの粘度は、B型粘度形で測定した値である。
ハニカム成形体を内側容器内に挿入するときの圧力は、0.05〜5.0MPa程度が好ましい。0.05MPaより低いと、目封止用スラリーがハニカム成形体のセル内に充填され難くなることがある。5.0MPaより高いと、ハニカム成形体が欠けたりすることがある。
上記目封止スラリー圧入操作を行って、ハニカム成形体のセルの一方の端部(ハニカム成形体の一方の端面)に目封止用スラリーを充填した後に、ハニカム成形体のセルの他方の端部(ハニカム成形体の他方の端面)にも目封止スラリー圧入操作により目封止用スラリーを充填することが好ましい。
ハニカム成形体の他方の端面に目封止用スラリーを充填する際には、まず、ハニカム成形体の他方の端面にシートを貼り付けた後、一方の端面において目封止用スラリーを充填しなかったセルに対応する位置に孔を開けることが好ましい。シートの種類や孔を開ける方法は、上記ハニカム成形体の一方の端面に目封止用スラリーを充填する場合と同様であることが好ましい。その後、目封止スラリー圧入操作を行って、ハニカム成形体の他方の端面に目封止用スラリーを充填する。目封止スラリー圧入操作については、上記ハニカム成形体の一方の端面に目封止用スラリーを充填する場合と同様であることが好ましい。
(3)目封止ハニカム構造体の作製:
目封止用スラリーが充填されたハニカム成形体を、焼成して、両端面の所定の位置に(例えば、市松模様を形成するように)目封止部が形成された、目封止ハニカム構造体(例えば、図8を参照)を作製することが好ましい。焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂(仮焼成)を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃を最高温度として、0.5〜40時間温度を保持して行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件としては、大気雰囲気下、必要に応じて窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下、1300〜1500℃の最高温度で、1〜50時間加熱保持することが好ましい。特に、コージェライト製ハニカム構造体を得る場合には、大気雰囲気下、1350〜1440℃の最高温度とすることが好ましい。
本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、乾燥させたハニカム成形体に目封止用スラリーを充填して、その後、ハニカム成形体及び乾燥前目封止部を焼成しているが、ハニカム成形体を焼成した後に目封止用スラリーを充填してもよい。その場合、乾燥させたハニカム成形体を上記「(3)目封止ハニカム構造体の作製」において記載した条件で焼成を行い、その後、焼成したハニカム成形体に、上記「(2)目封止部の形成」において記載した条件で、目封止用スラリーを充填することが好ましい。そして、焼成したハニカム成形体に目封止用スラリーを充填した後に、目封止部を固化させ、隔壁と密着させるため、必要に応じて、上記「(3)目封止ハニカム構造体の作製」において記載した条件で焼成等を行うことが好ましい。
得られた目封止ハニカム構造体の隔壁は、多孔質であることが好ましい。目封止ハニカム構造体の隔壁の開気孔率の下限値は30%であることが好ましく、35%であることが更に好ましい。目封止ハニカム構造体の隔壁の開気孔率の上限値は80%であることが好ましく、65%であることが更に好ましい。開気孔率の上限値及び下限値をこのような値とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。開気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがある。開気孔率が80%を超えると、強度が低下するとともに、熱伝導率が低下することがある。開気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
目封止ハニカム構造体の隔壁は、平均細孔径の下限値が5μmであることが好ましく、7μmであることが更に好ましい。また、平均細孔径の上限値が50μmであることが好ましく、35μmであることが更に好ましい。平均細孔径の上限値及び下限値をこのような値とすることにより、作製される目封止ハニカム構造体をフィルターとして使用した場合に、粒子状物質(PM)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が50μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルターに捕集されず通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。例えば、島津製作所社製、商品名:ポロシメータ 型式9810を使用して測定することが出来る。
目封止ハニカム構造体の隔壁の材質が炭化珪素である場合、炭化珪素粒子の平均粒径が5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることより、フィルターを、好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、100μmより大きいと気孔率が小さくなることがある。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすく、気孔率が小さすぎると圧力損失が上昇することがある。平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。
目封止ハニカム構造体のセル形状(目封止ハニカム構造体の中心軸(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。目封止を設ける場合は、八角形と四角形との組み合わせも好適な一例である。目封止ハニカム構造体の隔壁の厚さは、50〜2000μmであることが好ましい。隔壁の厚さが50μmより薄いと、得られる目封止ハニカム構造体の強度が低下することがあり、2000μmより厚いと、圧力損失が大きくなることがある。目封止ハニカム構造体のセル密度は、特に制限されないが、0.9〜311セル/cm2であることが好ましく、7.8〜62セル/cm2であることが更に好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(ハニカム成形体の作製)
コージェライト、有機バインダー、増孔剤、及び水からなる混合原料をハニカム状に成形した後、乾燥することにより、底面の直径314mm、長さ305mmの円筒状のハニカム成形体を作製した。作製したハニカム成形体の、その貫通方向と直行するセルの断面形状は正方形であり、隔壁の厚みは約310μmであり、セル密度は300セル/平方インチであった。
(目封止用スラリーの調製)
コージェライト粉末100質量部に対して、メチルセルロース1.5質量部、グリセリン8質量部、及び水40質量部を加え、混練することにより目封止用スラリーを調製した。なお、調製した目封止用スラリーの粘度は200dPa・sであった。
得られたハニカム成形体について、目封止用スラリー圧入操作を用いて、隣接するセルが互いに反対側の端部で封じられ、両端面が市松模様状を呈するように、各セルの端部に目封止部を形成した。目封止用スラリーとしては、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。目封止用スラリー圧入操作に用いる内側容器としては、底面が直径(円筒の内径に相当)320mmの円形であって高さが50mmの有底円筒状の容器を用いた。内側容器の厚さ(厚さ)は0.5mmとし、内側容器の深さは49.5mmとした。内側容器の材質は、ヤング率40MPa、引張応力1.5MPaのエーテル系のポリウレタンゴムとした。また、内側容器の底面及び側面には、均等に配置された円柱状の凸部(凹凸)が形成され、凹凸(凸部)の面積比率は70%、凹凸(凸部)の高さは1mmとした。また、凸部の中心軸に直交する断面の面積は、0.56mm2であった。外側容器としては、底面が直径(円筒の内径に相当)328mmの円形であって高さが45mmの有底円筒状の容器を用いた。外側容器の厚さは3mmとし、外側容器の深さは42mmとした。外側容器の材質はステンレス鋼(SUS304)とした。外側容器のASTM試験法による曲げ強さは、120MPaであった。ヤング率の測定は、エムアンドケー社製、商品名「デジテストII(検出器:Shore A)」を用いて、JIS K6253に準拠した方法で行った。また、引張応力の測定は、エムアンドケー社製、商品名「自動伸び計付引張試験機mini tech(シングルコラム卓上型)」を用いて行った。外側容器の深さの、内側容器の深さに対する比率(深さ比(%))(100×内側容器深さ/外側容器深さ)は、111%であった。また、外側容器の内周の直径に対する内側容器の外周の直径の比率(外周直径比(%))(100×内側容器の外周の直径/外側容器の内周の直径)は、98%であった。また、ハニカム成形体の中心軸に直交する断面の直径(ハニカム成形体直径)に対する、内側容器の内周の直径(内周直径比(%))(100×内側容器の内周の直径/ハニカム成形体直径)は、102%であった。
目封止用スラリー圧入操作の際には、ハニカム成形体の一方の端面に粘着フィルムを貼り付け、当該粘着フィルムの、目封止部を形成しようとするセルに対応する位置にレーザーで孔を開けた。粘着フィルムの材質は、PP(ポリプロピレン)とした。目封止用スラリー圧入操作を行う際には、外側容器内に内側容器を配設し、当該内側容器内に、目封止用スラリーを貯め、一方の端部を内側容器の底面に押し付けながら、ハニカム成形体を挿入して目封止用スラリーをセル内に圧入し、その後、ハニカム成形体を内側容器から引き抜いた。その後、ハニカム成形体を、100℃で120秒間乾燥した。内側容器に目封止用スラリーを貯めたときの、目封止用スラリーの深さは、10mmとした。その後、ハニカム成形体の他方の端面についても、同様にして、目封止用スラリーを充填し、乾燥させた。これにより、両端面が市松模様状を呈するように両端面に乾燥前目封止部が配設されたハニカム成形体を得た。
その後、ハニカム成形体を、アルゴン雰囲気下、最高温度1400℃で合計50時間焼成することにより目封止ハニカム構造体を得た。得られた目封止ハニカム構造体は、底面が、直径303mmの円形で、長さが305mmの円柱状であった。また、得られた目封止ハニカム構造体は隔壁が多孔質であった。目封止ハニカム構造体の平均細孔径は13μmであり、気孔率は41%であった。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値であり、気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
得られた目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、目封止ハニカム構造体の端面における目封止部の凹みの発生程度(窪みの発生比率)、及び目封止部の深さのバラツキ(目封止部の質量変化)を測定した。結果を表1に示す。
(窪みの発生比率)
目封止部の窪みの測定は、キーエンス社製マイクロスコープVHX−1000にて3次高さ測定を行うことにより評価する。ハニカム構造体の端面を基準として500μm以上の窪みを有する目封止部の割合が、目封止部全体の0%の場合を「A」、5%以下の場合を「B」、10%以下の場合を「C」、10%より多い場合を「D」とした。
(目封止部の質量変化)
内側容器に当初貯留した目封止材の質量を100として、目封止された目封止量との差分(差)を「目封止部の質量変化」とした。目封止後の目封止材の質量は、エーアンドデイ社製GP−32Kを用いて、目封止前のハニカム構造体の質量、及び目封止直後のハニカム構造体の質量を測定して、それら二つの質量の差分から算出した。評価は、「目封止部の質量変化」が0の場合を「A」、2以下の減少の場合を「B」、5以下の減少の場合を「C」、5より多い減少の場合を「D」とした。
(実施例2〜30)
内側容器に形成された凸部の高さ(凹凸高さ)、及び「凹凸面積比率」を表1に示すように変更し、更に、内側容器の形状を変更することにより、「深さ比」、「外周直径比」、「厚さ」及び「内周直径比」を変更し、内側容器のヤング率、及び引張応力を変更した以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られた目封止ハニカム構造体について、上記方法で、「窪みの発生比率」、及び「目封止部の質量変化」を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
内側容器の底部の外表面に凹凸(凸部)を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られた目封止ハニカム構造体について、上記方法で、「窪みの発生比率」、及び「目封止部の質量変化」を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2〜10)
内側容器に形成された凸部の高さ(凹凸高さ)、及び「凹凸面積比率」を表1に示すように変更し、更に、内側容器の形状を変更することにより、「深さ比」、「外周直径比」、「厚さ」及び「内周直径比」を変更し、内側容器のヤング率、及び引張応力を変更した以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られた目封止ハニカム構造体について、上記方法で、「窪みの発生比率」、及び「目封止部の質量変化」を測定した。結果を表2に示す。
(比較例6)
内側容器の側面に凹凸(凸部)を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られた目封止ハニカム構造体について、上記方法で、「窪みの発生比率」、及び「目封止部の質量変化」を測定した。結果を表2に示す。
表1より、内側容器の「底部の外表面」及び「側面」の両方に凹凸をつけることにより、目封止部の窪みの発生や、目封止部の質量変化を抑制できることがわかる。また、凹凸面積比率を、50〜90%とすることにより、目封止部の窪みの発生や、目封止部の質量変化を抑制できることがわかる。また、凹凸高さを、0.2〜2.0mmとすることにより、目封止部の窪みの発生や、目封止部の質量変化を抑制できることがわかる。