JP2010207708A - ハニカム構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】隔壁の壁面の強度低下を防止しつつ、再生時の温度上昇を抑制し、粒子状物質の捕集による圧力損失の増大を抑制することができるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、隔壁の表面が平面状であるとした場合の隔壁の表面積に対する、隔壁の表面積の比の値が、1.5〜5.0であり、隔壁の表面の算術平均表面粗さが1.0〜20.0μmであり、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が10〜140μmであるハニカム構造体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ハニカム構造体に関し、さらに詳しくは、隔壁の壁面の強度低下を防止しつつ、再生時の温度上昇を抑制し、粒子状物質の捕集による圧力損失の増大を抑制することができるハニカム構造体に関する。
自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業機械用定置エンジン等の内燃機関、その他の燃焼機器等から排出される排ガス中の粒子状物質は、環境への影響を考慮して排ガス中から除去する必要性が高まっている。そこで、セラミック等で作製されたハニカム構造体が、粒子状物質を除去するフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)として広く用いられている。DPFとしては、例えば、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された所定のセル(所定のセル)と、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された残余のセル(残余のセル)とが交互に配設された構造のものが用いられている。そして、使用時には、DPFの所定のセルが開口する一方の端部から流体(排ガス)を流入させ、流入した排ガスを、隔壁を透過させて残余のセル内に透過流体として流出させ、透過流体を残余のセルが開口する他方の端部から流出させることにより、排ガス中の粒子状物質を隔壁で捕集除去するものである。
ハニカム構造体をDPFとして使用する場合には、フィルタ内部に経時的に堆積したPMによる圧力損失の増大を取り除くため、フィルタ内部に堆積したPMを燃焼させて除去する(再生)必要がある。しかし、この再生時に、DPF内の温度が上昇し過ぎると、熱応力によってクラック等の欠陥が生じることがあるという問題があった。
このような問題に対し、ハニカム構造体を複数のハニカム形状のセグメントから構成し、各セグメント間を弾性質素材からなる接合材で接合一体化した構造とすることにより、ハニカム構造体に作用する熱応力を分散、緩和する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ハニカム構造体を構成する各セグメントの出口側端面に近い部位に、セグメントの平均細孔径より小さい粒子を含むスラリーを含浸後、熱処理することにより、当該部位を緻密化して熱容量及び熱伝導率を増加させ、フィルタ再生時における昇温を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−279729号公報 国際公開第2008/078799号パンフレット
しかし、特許文献1に記載の方法によると、再生時におけるDPFのクラック発生は低減されたが、接合材により、端面におけるセルの開口率が減少し、圧力損失が増大するものであった。また、特許文献2に記載の方法によると、緻密化による隔壁の気孔率減少により、圧力損失が増大するものであった。そのため、圧力損失を悪化させずに。DPF内の温度を低減する必要があった。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、隔壁の壁面の強度低下を防止しつつ、再生時の温度上昇を抑制し、粒子状物質の捕集による圧力損失の増大を抑制することが可能なハニカム構造体を提供することを特徴とする。
本発明によって以下のハニカム構造体が提供される。
[1] 流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、前記隔壁の表面が平面状であるとした場合の前記隔壁の表面積に対する、前記隔壁の表面積の比の値が、1.5〜5.0であり、前記隔壁の表面の算術平均表面粗さが1.0〜20.0μmであり、前記隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が10〜140μmであるハニカム構造体。
[2] 前記隔壁の表面の算術平均表面粗さに対する局部山頂の平均間隔の比の値が3〜35である[1]に記載のハニカム構造体。
[3] 前記隔壁の表面が平面状であるとした場合の前記隔壁の表面積に対する、前記隔壁の表面積の比の値が、全体的に均一である[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
[4] 前記隔壁の表面の算術平均表面粗さが、全体的に均一である[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
[5] 前記隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が、全体的に均一である[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
[6] 所定の前記セルの一方の開口端部と、残余の前記セルの他方の開口端部とに目封止部を有する[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
[7] 前記入口側端面の開口率が、前記出口側端面の開口率より大きい[6]に記載のハニカム構造体。
[8] 前記隔壁に触媒成分が担持された[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体。
本発明のハニカム構造体は、隔壁の表面が平面状であるとした場合の当該隔壁の表面積に対する、隔壁の表面積の比の値が、1.5〜5.0であることより、隔壁の表面積が大きいために放熱が良好になり再生時の温度上昇を抑制することができる。そして、隔壁の表面の算術平均表面粗さが1.0〜20.0μmであることより、隔壁の壁面の強度を良好に維持しながらPM捕集時の圧力損失の増大を抑制することができる。そして、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が10〜140μmであることより、隔壁の壁面の強度を良好に維持しながら触媒コート量の増大を抑えることができる。
本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 本発明のハニカム構造体の一実施形態の、中心軸方向に平行な断面の一部を示す模式図である。 図1Bの領域Aを拡大した模式図である。 隔壁表面が平面状であるとした場合の隔壁を示し、図2に示す隔壁に対応する模式図である。
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
図1A及び図1Bに示すように、本発明のハニカム構造体の一実施形態は、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで貫通する複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有し、「隔壁1の表面(隔壁表面3)が平面状であるとした場合の隔壁1の表面(隔壁表面3)の表面積」に対する、「隔壁表面3の表面積(実際の隔壁表面3の表面積)」の比の値が、1.5〜5.0であり、隔壁表面3の算術平均表面粗さRaが1.0〜20.0μmであり、隔壁表面3の局部山頂の平均間隔Sが10〜140μmのハニカム構造体である。ここで、「隔壁の表面」は、セル内に露出する隔壁の表面のことである。また、「算術平均表面粗さRa」とは、JIS B0601−1994に規定された値であって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。また、「局部山頂の平均間隔S」とは、JIS B0601−1994に規定された値であって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分において隣り合う局部山頂間に対応する平均線の長さ(局部山頂の間隔)を求め、この多数の局部山頂の間隔を算術平均した値である。隔壁表面3には凹凸が形成されており、凸部4は、隔壁表面3に形成された凸状の部分である。また、「隔壁1の表面が平面状であるとした場合の隔壁1の表面(隔壁表面)3の表面積」とは、図3に示すように、隔壁1aの表面に凹凸がなく、「隔壁1aの表面が平面状であったと仮定した場合における隔壁表面3の表面積」という意味である。図1Aは、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図1Bは、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、中心軸方向に平行な断面の一部を示す模式図である。図2は、図1Bの領域Aを拡大した模式図である。図3は、隔壁表面3が平面状であるとした場合の隔壁1aを示し、図2に示す隔壁1に対応する模式図である。
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1の表面が平面状であるとした場合の隔壁1の表面(隔壁表面3)の表面積に対する、隔壁表面3の表面積の比の値(表面積比)が、1.5〜5.0であり、2.0〜4.0が好ましい。1.5より小さいと、隔壁表面3の表面積が小さいため、放熱効果が低減し、再生時の温度上昇を抑制することができない。5.0より大きいと、隔壁表面3の凹凸が大きくなるため、隔壁表面(壁面)3の強度が低下し、また、表面積の増大により触媒担持量が増加するため、コスト高となる。ここで、「隔壁表面の表面積」は、マイクロCTで隔壁の表面状態を取り込み、コンピュータ処理により算出した値である。具体的には、ハニカム構造体の観察したい部位が中央になるようにテストピースを作成することにより測定用サンプルとし、マイクロCTで測定する。マイクロCTを測定する装置としては、例えば、東陽テクニカ社製、商品名:「skyscan1172」を挙げることができる。
隔壁表面の表面積は、上記CT撮影した画像を三次元立体データに再構築し、隔壁の表面を認識し、隔壁表面の空間座標より隔壁の表面積を算出している。
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁表面3の算術平均表面粗さRaが1.0〜20.0μmであり、2.0〜15.0μmが好ましい。1.0μmより小さいと、粒子状物質が隔壁表面3の凹凸部分に捕捉され(隣接する凸部4,4間に挟まれるように捕捉され)難くなり、隔壁に形成された細孔内に入り込む粒子状物質の量が増大するため、粒子状物質の堆積による圧力損失が増大する。20.0μmより大きいと、隔壁表面3の凹凸が大きくなるため、隔壁表面3の強度が低下し、また、表面積の増大により触媒担持量が増加するため、コスト高となる。「隔壁表面の算術平均表面粗さRa」は、JIS B0601−1994に準拠した方法で測定した値である。
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁表面3の局部山頂の平均間隔Sが10〜140μmであり、15〜100μmが好ましい。10μmより小さいと、触媒担持量が増加するため、コスト高となる。140μmより大きいと、粒子状物質が隔壁表面3の凹凸部分に捕捉され難くなり、隔壁に形成された細孔内に入り込む粒子状物質の量が増大するため、粒子状物質の堆積による圧力損失が増大する。「隔壁表面の局部山頂の平均間隔S」は、JIS B0601−1994に準拠した方法で測定した値である。
本実施形態のハニカム構造体100は、「隔壁表面の表面積」、「隔壁表面の算術平均表面粗さRa」及び「隔壁表面の局部山頂の平均間隔S」を所定の範囲に規定したため、圧力損失を悪化させずに、再生時のDPF内の温度を低減することができる。
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1の表面の算術平均表面粗さRaに対する、隔壁1の表面の局部山頂の平均間隔Sの比の値(S/Ra)が3〜35であることが好ましく、5〜25が更に好ましい。3より小さいと、粒子状物質が隔壁表面3の凹凸部分に捕捉され難くなり、隔壁に形成された細孔内に入り込む粒子状物質の量が増大するため、粒子状物質の堆積による圧力損失が増大することがある。35より大きいと、隔壁表面3の凹凸が大きくなるため、隔壁表面3の強度が低下し、また、表面積の増大により触媒担持量が増加するため、コスト高となることがある。
本実施形態のハニカム構造体100は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム形状であり、隔壁1の平均細孔径が、5〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大することがあり、40μmより大きいとPMを捕集するフィルタ機能が低下することがある。隔壁1の平均細孔径は、水銀ポロシメーターで測定した値である。
隔壁1の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、40〜80%であることが更に好ましい。30%より小さいと、圧力損失が増大することがあり、80%より大きいとハニカム構造体100が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
隔壁1の厚さは、7〜20milであることが好ましく、8〜16milであることが更に好ましい。7milより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがあり、20milより厚いと、排ガスがセル内を通過するときの圧力損失が大きくなることがある。隔壁1の厚さは、軸方向断面を顕微鏡観察することにより測定した値である。尚、1(mil)は1000分の1インチである。
ハニカム構造体100の中心軸に直交する断面のセル密度は、140〜350cpsi(21.7〜54.3セル/cm)であることが好ましく、160〜320cpsi(24.8〜49.6セル/cm)であることが更に好ましい。21.7セル/cmより小さいと、ハニカム構造体100の強度が低下することがあり、54.3セル/cmより大きいと、圧力損失が高くなることがある。また、ハニカム構造体100の入口側端面の開口率が、出口側端面の開口率より大きいことが好ましい。ここで、「端面の開口率」とは、断面積中の目封じされていないセルの面積の割合のことをいう。
ハニカム構造体100のセル形状は特に限定されないが、中心軸に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。
本実施の形態のハニカム構造体1(隔壁3)を構成する材料としては、セラミックスを主成分とする材料、耐熱紙又は焼結金属等を好適例として挙げることができる。セラミックスを主成分とする材料からなるものである場合、具体的なセラミックスとしては、炭化珪素、炭化珪素を骨材とし珪素を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、アルミナタイタネート、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、及びLAS(リチウムアルミニウムシリケート)又はこれらを組み合わせたものを好適例として挙げることができる。特に、炭化珪素、コージェライト、ムライト、窒化珪素、アルミナ、アルミナタイタネート等のセラミックスが、耐アルカリ特性上好適である。中でも酸化物系のセラミックスは、安価である点でも好ましい。
また、ハニカム構造体100は、その最外周に位置する外周壁を有してもよい。なお、外周壁は成形時にハニカム構造体と一体的に形成させる成形一体壁だけでなく、成形後に、ハニカム構造体の外周を研削して所定形状とし、セメント等で外周壁を形成するセメントコート壁でもよい。
本実施形態のハニカム構造体100は、所定のセルの一方の開口端部と、残余のセルの他方の開口端部とに目封止部を有することが好ましい。更に、一方の端部が開口され且つ他方の端部に目封止部を有する所定のセルと、上記一方の端部に目封止部を有し且つ上記他方の端部が開口された残余のセルとが交互に配設され、各端面が、目封止されたセルと目封止されていないセルとにより市松模様が形成されたものであることが好ましい。セルの開口部に目封止を形成する目封止部の材質としては、特に限定されないが、炭化珪素、炭化珪素を骨材とし珪素を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、アルミナタイタネート、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、及びLAS(リチウムアルミニウムシリケート)又はこれらを組み合わせたものを好適例として挙げることができる。そして、目封止部の材質は隔壁の材質と同じであることが更に好ましい。目封止部の、ハニカム構造体の端面からセル内に入り込む深さは、特に限定されないが、圧力損失を低減し、触媒を担持したときの触媒有効面積を大きくし、強度を高くするという観点から1〜20mmが好ましい。本実施形態のハニカム構造体100は、所定のセルの他方の端部及び残余のセルの一方の端部に目封止部を備えているが、各セルが目封止部を備える位置はこれに限定されない。すなわち、本発明のハニカム構造体は、一方の端面側に開口部を有する所定のセルと他方の端部側に開口部を有する残余のセルに、所定のセルの一方の端面側の開口部から流入した流体が隔壁を透過して残余のセルの他方の端面側の開口部から流出するように形成された目封止部を備えていればよい。つまり、目封止部が、セルの端部だけではなく、セルの内部に形成されていてもよい。
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1に触媒成分が担持されたものであることが好ましい。隔壁1に触媒を担持することにより、フィルタ再生時のPMの燃焼を促進させたり、排ガス中の有害物質を浄化したりすることができる。隔壁に触媒成分を担持する方法としては、例えば、触媒成分を含む溶液を、アルミナ粉末のような高比表面積の耐熱性無機酸化物からなる粉末を含浸させた後、乾燥、焼成して、触媒成分を含有する粉末を得、この粉末にアルミナゾルや水などを加えて触媒スラリーを調製し、これにハニカムセグメント又はハニカム構造体を浸漬させて、スラリーをコートしてから、乾燥、焼成するといった方法を用いることができる。
触媒成分としては、Pt、Rh、Pdからなる群より選択される少なくとも一種の貴金属を用いることが好ましい。これら貴金属の担持量は、ハニカム構造体単位体積当たり、0.3〜3.5g/Lとすることが好ましい。
次に、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の製造方法について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、例えば、以下のような方法により製造することができるが、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法は、以下の方法に限定されることはない。
まず、公知の方法でハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の形成は、成形原料として、所定のセラミック原料、分散剤、造孔材、バインダ等を用い、当該成形原料を混合し、混練して坏土を調製する。セラミック原料としては、焼成により、上記本発明のハニカム構造体を構成する材料として挙げたセラミックスとなるものを使用することが好ましい。分散剤等については公知のものを用いることができる。
成形原料を混練して坏土を調製する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、得られた坏土を、ハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体を作製する方法としては、特に制限はなく、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができる。中でも、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。
次に、得られたハニカム成形体の両端部に目封止部を形成する。目封止部を形成する方法は特に限定されないが、例えば、まず一方の端面に、セルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施す。そして、コージェライト化原料、水またはアルコール、及び有機バインダを含む目封止スラリーを、貯留容器に貯留しておく。そして、上記マスクを施した側の端部を、貯留容器中に浸漬して、マスクを施していないセルの開口部に目封止スラリーを充填して目封止部を形成する。他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成する。これにより、上記一方の端部において目封止されていないセルについて、他方の端部において目封止され、他方の端部においても市松模様状にセルが交互に塞がれた構造となる。また、目封止は、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成した後に、施してもよい。この場合、ハニカム焼成体に目封止を施した後に再度焼成することにより、ハニカム構造体が得られる。
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を乾燥させて、ハニカム乾燥体を作製することが好ましい。乾燥の方法も特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
次に、得られたハニカム乾燥体の隔壁に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法は限定されないが、例えば、ハニカム乾燥体を、アルミナ、ダイヤモンド等の砥粒が混合された空気流中に一定時間曝す(空気流がハニカム乾燥体のセル内を通るようにする)ことにより、ハニカム乾燥体のセル内の隔壁表面を処理することが好ましい。これにより、隔壁表面を粗くすることができ、所望の隔壁表面の状態を得ることができる。
また、隔壁の表面処理は、下記方法により本焼成を行った後に行ってもよい。この場合、ハニカム乾燥体(又は仮焼体)を本焼成したもの(焼成体)を、アルミナ、ダイヤモンド等の砥粒を分散させた液をポンプ循環させた液中に、又はアルミナ、ダイヤモンド等の砥粒が混合された空気流中に、一定時間曝す(液又は空気流が焼成体のセル内を通るようにする)ことにより、焼成体のセル内の隔壁表面を処理し、ハニカム構造体を得ることが好ましい。
次に、得られたハニカム乾燥体を本焼成する前に仮焼して仮焼体を作製することが好ましい。「仮焼」とは、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を燃焼させて除去する操作を意味する。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、10〜100時間程度である。
次に、得られた仮焼体を焼成(本焼成)することによってハニカム構造体を得る。本発明において「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよいが、コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましい。また、3〜10時間程度焼成することが好ましい。
次に、得られたハニカム構造体に触媒を担持する。触媒の担持方法は、特に限定されず、公知の方法で担持することができる。例えば、先ず、所定の触媒を含有する触媒スラリーを調製する。次いで、この触媒スラリーを、吸引法等の方法により、ハニカム構造体の隔壁表面、及び、隔壁の細孔の内表面にコートする。その後、室温又は加熱条件下で乾燥することにより、本実施形態のハニカム触媒体を製造することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒径45μmのタルク、平均粒径10μmのカオリン、平均粒径5μmのアルミナ、平均粒径3μmの水酸化アルミニウム、及び平均粒径40μmの溶融シリカを、タルク40質量%、カオリン20質量%、アルミナ14質量%、水酸化アルミニウム16質量%、溶融シリカ10質量%の割合で混合して、コージェライト化原料を調製した。次に、コージェライト化原料100質量部に対して、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体からなる発泡済みの発泡樹脂を2質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース4質量部、ラウリン酸カリ石鹸0.5質量部、水30質量部を混合し、混練して可塑性とし、この可塑性の原料を真空土練機で混練することにより円柱状の坏土を得た。得られた坏土を、押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。次に、得られたハニカム成形体を、誘電乾燥の後、熱風乾燥により絶乾し、所定の寸法に両端面を切断してハニカム乾燥体を得た。
得られたハニカム乾燥体に目封止部を形成した。得られたハニカム乾燥体の一方の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部を、コージェライト化原料からなる目封止スラリーに浸漬し、市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。コージェライト化原料としては、ハニカム乾燥体に用いたものと同じ組成のものを用いた。更に、他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成した。
その後、1420℃で4時間焼成してハニカム焼成体を得た。
その後、ハニカム焼成体の隔壁の表面処理を行った。開閉可能な管の中に、耐水性ファンを入れ、吹き出し方向にハニカム焼成体を固定し、ハニカム焼成体のセル中に水流を通過させた。そして、ファンとハニカム焼成体の間にダイヤモンド砥粒を分散(水流中に分散)し、ハニカム焼成体の隔壁表面を水流中にダイヤモンド砥粒を分散させたスラリーによりエッチング処理(表面処理)した。エッチング処理後、十分に水洗し、乾燥させ、ハニカム構造体を得た。上記表面処理用のスラリーは、平均粒径4μmのダイヤモンド砥粒を水(100質量部)に20質量部混合したものとした。
得られたハニカム構造体は、底面の直径144mm、長さ152mmの円筒形であり、セル密度は46.5セル/cm(300cpsi)であった。また、隔壁の厚さは、300μmであり、平均細孔径は20μmであり、気孔率は50%であった。平均細孔径、気孔率、は市販の水銀ポロシメーターで測定した値である。
得られた、ハニカム構造体について、以下の方法で、隔壁の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率(cm/秒)、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。結果を表1に示す。表1において、「S/Ra」の欄は、隔壁表面の算術平均表面粗さRaに対する、隔壁表面の局部山頂の平均間隔Sの比の値を示す。
(表面積比)
隔壁の表面をマイクロCT(東陽テクニカ社製、商品名:「skyscan1172」)で測定し、CT撮影した画像を三次元立体データに再構築し、隔壁の表面を認識し、隔壁表面の空間座標より隔壁の表面積を算出する。そして、当該隔壁の表面が平面状であると仮定した場合の面積に対する比の値を求める。
(算術平均表面粗さRa(μm))
表面粗さ計測装置(Taylor Hobson社製、FTS−S4C型)を用いて測定する。計算方法は、JIS B0601に準じる。先端測定部には2μm円錐型ダイヤモンドを使用する。
(局部山頂の平均間隔S(μm))
表面粗さ計測装置(Taylor Hobson社製、FTS−S4C型)を用いて測定する。計算方法は、JIS B0601に準じる。先端測定部には2μm円錐型ダイヤモンドを使用する。
(熱拡散率(cm/s))
熱拡散率は、熱伝導率をその物質の密度と比熱の積で割った値であり、レーザーフラッシュ法(JIS R1611)により測定する。
(煤付き圧力損失)
ハニカム構造体の両端面に、内径(直径)130mmのリングを圧接し、このリングを介して、スートジェネレーターで発生させたスート(煤)を、ハニカム構造体の直径130mmの範囲内に流入し、4g/Lの煤を捕集させる。その後、ハニカム構造体が煤を捕集した状態で、2.27Nm/分の空気を流し、フィルタ前後の圧力差を測定して、煤を捕集した状態での圧力損失を評価する。
(強度)
ハニカム構造体を作製した方法と同様の方法で、幅30mm、厚さ7mm、長さ150mmのコージェライト質平板を5個作製する。尚、コージェライト質平板の表面処理(隔壁の表面処理に相当)は、焼成、切削の後に行った。得られたコージェライト質平板についてJIS R1601に準じて、4点曲げ強度を測定する。
Figure 2010207708
(実施例2)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を3.1μmとした以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面積、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を2.2μmとした以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(実施例4)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を1.9μmとした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(実施例5)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を1.4μmとした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を5.2μmとした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
ハニカム焼成体の隔壁の表面処理の条件として、表面処理に用いるスラリーに含有されるダイヤモンド砥粒の平均粒径を1μmとした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、隔壁の表面の表面積比、隔壁の表面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRa)、隔壁の表面の局部山頂の平均間隔S(平均間隔S)、熱拡散率、煤付き圧力損失(圧力損失)及び強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜5のハニカム構造体は、熱拡散率、煤付き圧力損失及び強度に優れていることがわかる。比較例1のハニカム構造体は、表面積比及び表面粗さRaが大きいため、強度が弱いことがわかる。比較例2のハニカム構造体は、表面積比及び表面粗さRaが小さいため、熱拡散率が小さく、煤付き圧力損失が大きいことがわかる。
本発明のハニカム構造体は、例えば、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排ガスに含まれる粒子状物質を捕集、除去するために好適に用いられる。
1,1a:隔壁、2:セル、3:隔壁表面、4:凸部、11:一方の端面、12:他方の端面、100:ハニカム構造体、A:領域。

Claims (8)

  1. 流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、
    前記隔壁の表面が平面状であるとした場合の前記隔壁の表面積に対する、前記隔壁の表面積の比の値が、1.5〜5.0であり、
    前記隔壁の表面の算術平均表面粗さが1.0〜20.0μmであり、
    前記隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が10〜140μmであるハニカム構造体。
  2. 前記隔壁の表面の算術平均表面粗さに対する局部山頂の平均間隔の比の値が3〜35である請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記隔壁の表面が平面状であるとした場合の前記隔壁の表面積に対する、前記隔壁の表面積の比の値が、全体的に均一である請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
  4. 前記隔壁の表面の算術平均表面粗さが、全体的に均一である請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
  5. 前記隔壁の表面の局部山頂の平均間隔が、全体的に均一である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体。
  6. 所定の前記セルの一方の開口端部と、残余の前記セルの他方の開口端部とに目封止部を有する請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体。
  7. 前記入口側端面の開口率が、前記出口側端面の開口率より大きい請求項6に記載のハニカム構造体。
  8. 前記隔壁に触媒成分が担持された請求項1〜7のいずれかに記載のハニカム構造体。
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