JP5412574B2 - Fm受信装置及びフィルタリング処理方法 - Google Patents
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Description
本発明は、FM受信装置、フィルタリング処理方法及びフィルタリング処理プログラム、並びに、当該フィルタリング処理プログラムが記録された記録媒体に関する。
従来から、FM(Frequency Modulation)放送波を受信して処理し、放送コンテンツを再生するFM受信装置が広く普及している。こうしたFM放送波に利用されるVHF帯の電波は、建造物等によって反射される。この結果、FM放送の直接波に加えて、建造物等による反射波が、FM受信装置によって受信されるマルチパス現象が発生する。
かかるマルチパス現象が発生すると、直接波と反射波との干渉によるマルチパスフェーディングにより、放送コンテンツの再生品質が劣化する。特に、FM受信装置が車両等の移動体に搭載される場合には、マルチパス現象の影響を受けやすい環境で使用されることが多い。
このため、マルチパスフェーディングの影響を抑制するための様々な技術が提案されている。こうした提案技術の一つとして、マルチパスフェーディングの影響の抑制に効果のあるデジタル適応フィルタを採用するとともに、FM受信装置におけるFM放送波の受信波(以下、「FM受信波」と呼ぶ)の電界強度に応じて、IIR(Infinite Impulse Response)型の適応フィルタと、FIR(Finite Impulse Response)型の適応フィルタとを使い分ける技術がある(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。
この従来例の技術では、FM受信波の電界強度が所定の閾値より大きく、マルチパスフェーディングの影響が大きくなり得ると判断される場合には、IIR型の適応フィルタを選択する。また、FM受信波の電界強度が所定の閾値より小さく、フラットフェーディングの影響が大きくなり得ると判断される場合には、FIR型の適応フィルタを選択する。
上述した従来例の技術では、FM受信波の電界強度が所定の閾値よりも大きな場合には、一律にIIR型の適応フィルタを使用している。しかしながら、FM受信波の電界強度が高い場合であっても、例えば、ビル街等で発生する遅延時間の短いマルチパス現象に対しては、IIR型の適応フィルタでは、マルチパスフェーディングの影響の抑制効果が低い。また、IIR型の適応フィルタは、FIR型の適応フィルタと比べて、収束速度が遅い。このため、FM受信波の電界強度が所定の閾値よりも大きな場合にはいつでも、IIR型の適応フィルタが、FIR型の適応フィルタよりも優れたマルチパスフェーディングの影響の抑制効果を発揮する訳ではない。
また、FM受信装置におけるフィルタリング処理においては、選局周波数と周波数軸上で隣接する隣接局のFM放送波に起因する隣接妨害を考慮することが必要な場合もある。こうした隣接妨害の抑制に際して、FIR型フィルタは、隣接妨害除去効果や、中間周波数帯の狭帯域化による中間周波信号の歪の抑制効果を発揮するが、IIR型の適応フィルタは、こうした効果を発揮しない。この点からも、FM受信波の電界強度が高い場合に、一律にIIR型の適応フィルタを使用することが最適とはいえない。
このため、マルチパス現象等の影響を適切に抑制し、放送コンテンツの再生品質を向上することができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、選局された希望局が発信した放送コンテンツの再生品質を向上させることができるFM受信装置及びフィルタリング処理方法を提供することを目的とする。
本発明は、第1の観点からすると、FM波の電界強度を検出する第1検出部と;前記FM波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;フィルタ選択指令により、有限インパルス応答型フィルタ及び無限インパルス応答型フィルタのいずれか一方のフィルタが選択された場合に、前記選択されたフィルタにより、前記FM波の中間周波信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;前記第1検出部により検出された電界強度が所定電界強度より低い第1条件を満たす場合、及び、前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベルよりも低く、かつ、前記マルチパスノイズのレベルが、前記第1所定マルチパスノイズレベルよりも低い第2所定マルチパスノイズレベル以上であると判断される第2条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る第1制御部と;を備えることを特徴とするFM受信装置である。
本発明は、第2の観点からすると、FM波の電界強度を検出する第1検出部と;前記FM波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;フィルタ選択指令により、有限インパルス応答型フィルタ及び無限インパルス応答型フィルタのいずれか一方のフィルタが選択された場合に、前記選択されたフィルタにより、前記FM波の中間周波信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;を備えるFM受信装置において使用されるフィルタリング処理方法であって、前記第1検出部により検出された電界強度が所定電界強度より低い第1条件、及び、前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベルよりも低く、かつ、前記マルチパスノイズのレベルが、前記第1所定マルチパスノイズレベルよりも低い第2所定マルチパスノイズレベル以上であると判断される第2条件のいずれかを満たすか否かを判定する判定工程と;前記判定工程における判定結果が肯定的であった場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る制御工程と;を備えることを特徴とするフィルタリング処理方法である。
本発明は、第3の観点からすると、本発明のフィルタリング処理方法を演算部により実行させる、ことを特徴とするフィルタリング処理プログラムである。
本発明は、第4の観点からすると、本発明のフィルタリング処理プログラムが、演算部により読取可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[構成]
図1には、一実施形態に係るFM受信装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、FM受信装置100は、アンテナ110と、高周波処理部としてのRF処理ユニット120とを備えている。また、FM受信装置100は、フィルタユニット130と、再生処理ユニット140と、アナログ処理ユニット150とを備えている。さらに、FM受信装置100は、スピーカユニット160と、操作入力ユニット170と、受信制御ユニット190とを備えている。
図1には、一実施形態に係るFM受信装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、FM受信装置100は、アンテナ110と、高周波処理部としてのRF処理ユニット120とを備えている。また、FM受信装置100は、フィルタユニット130と、再生処理ユニット140と、アナログ処理ユニット150とを備えている。さらに、FM受信装置100は、スピーカユニット160と、操作入力ユニット170と、受信制御ユニット190とを備えている。
上記のアンテナ110は、放送波を受信する。アンテナ110による受信結果は、受信信号RFSとして、RF処理ユニット120へ送られる。
上記のRF処理ユニット120は、受信制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局の信号を受信信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する信号IFDとして、フィルタユニット130へ送る。このRF処理ユニット120は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」とも呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット120は、ミキサ(混合器)と、AD(Analogue to Digital)変換器と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
ここで、入力フィルタは、アンテナ110から送られた受信信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合する。AD変換器は、ミキサによる混合結果をAD変換して信号IFDを生成し、生成された信号IFDをフィルタユニット130へ送る。
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、受信制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
上記のフィルタユニット130は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、フィルタユニット130は、いわゆるマルチパスの発生による受信信号の歪みを除去、及び、隣接妨害を除去するためのフィルタリング処理を行う。なお、フィルタユニット130の構成については、後述する。
フィルタユニット130は、フィルタリング処理結果を、信号FLDとして、再生処理ユニット140へ送る。また、フィルタユニット130は、選局すべき希望局に対応する受信信号の電界強度の検出結果を、信号レベルSLDとして、再生処理ユニット140へ送る。
上記の再生処理ユニット140は、フィルタユニット130から送られた信号FLD及び信号レベルSLDを受ける。そして、再生処理ユニット140は、信号FLDに対して検波処理を施した後に、検波結果に対して復調処理を施して信号DMDを生成し、生成された信号DMDをアナログ処理ユニット150へ送る。ここで、復調処理には、信号レベルSLDを参照して行われるLチャンネル信号及びRチャンネル信号へのセパレーション処理が含まれている。なお、再生処理ユニット140の構成については、後述する。
上記のアナログ処理ユニット150は、再生処理ユニット140からの信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット150は、受信制御ユニット190による制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット160へ送る。
アナログ処理ユニット150は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット140から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるレフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA(Digital to Analogue)変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果は音量調整部へ送られる。
また、音量調整部は、DA変換部から送られたLチャンネル及びRチャンネルのアナログ変換結果信号を受ける。そして、音量調整部は、受信制御ユニット190からの音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
上記のパワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット160へ送られる。
上記のスピーカユニット160は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット160は、アナログ処理ユニット150から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
操作入力ユニット170は、FM受信装置100の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。操作入力ユニット170への操作入力結果は、操作入力データIPDとして受信制御ユニット190へ送られる。
受信制御ユニット190は、操作入力ユニット170からの操作入力データIPDを解析する。そして、操作入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、受信制御ユニット190は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット120へ送る。また、操作入力データIPDの内容が、音量調整態様を含む音量調整指定であった場合には、受信制御ユニット190は、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット150へ送る。
次に、上記のフィルタユニット130の構成について説明する。このフィルタユニット130は、図2に示されるように、バンドパスフィルタ(BPF)部131と、可変バンドパスフィルタ(可変BPF)部132と、適応フィルタ部133と、フィルタ制御部135とを備えている。
上記のBPF部131は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部131は、信号IFDに含まれる周波数成分の内で、所定の中心周波数IF0を中心として、下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲の周波数帯の成分を選択的に通過させる。BPF部131を通過した信号WBDは、可変BPF部132及びフィルタ制御部135へ送られる。
なお、BPF部131の通過帯域の下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲は、希望局の放送の再生に際して理想的な再生が可能な帯域となるように予め設定される。BPF部131の通過率の周波数変化特性の例が、図3に示されている。
図3においては、中心周波数IF0より周波数の低い下方隣接局の中心周波数が「IF-」として示され、中心周波数IF0より周波数の高い上方隣接局の中心周波数が「IF+」として示されている。また、図3においては、希望局の信号の周波数分布の例が曲線SP0(F)として示され、隣接局の信号の下方隣接局及び上方隣接局の信号の周波数分布の例が曲線SP-(F),SP+(F)として示されている。こうした図3における表記は、後述する図4,7,8においても同様となっている。
上記の可変BPF部132は、BPF部131から送られた信号WBDを受ける。そして、可変BPF部132は、フィルタ制御部135から送られた通過帯域幅指令BWCに従って、中心周波数IF0を中心とし、通過帯域幅指令BWCにより指定された通過帯域幅内の成分を選択的に通過させる。可変BPF部132を通過した信号CBDは、適応フィルタ部133へ送られる。
なお、可変BPF部132の通過帯域幅が最大となる場合には、可変BPF部132を通過する信号の下限周波数VFLMは、上述したBPF部131を通過する信号の下限周波数FLに一致している。また、可変BPF部132を通過する信号の上限周波数VFUMは、上述したBPF部131を通過する信号の上限周波数FUに一致している。そして、可変BPF部132の通過帯域幅は、通過帯域幅指令BWCの指定により、最大通過帯域幅よりも狭い帯域幅となるようになっている。可変BPF部132の通過率の周波数変化特性の例が、図4に示されている。
上記の適応フィルタ部133は、可変BPF部132から送られた信号CBDを受ける。そして、適応フィルタ部133は、フィルタ制御部135による制御に従って、信号CBDに対して、適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタ部133によりフィルタリング処理された信号FLDは、再生処理ユニット140へ送られる。なお、適応フィルタ部133の構成については、後述する。
上記のフィルタ制御部135は、RF処理ユニット120から送られた信号IFD、及び、BPF部131から送られた信号WBDを受ける。そして、フィルタ制御部135は、信号IFD,WBDに基づいて、可変BPF部132の通過帯域幅、及び、適応フィルタ部133におけるフィルタリング処理の制御を行う。また、フィルタ制御部135は、希望局の放送波の電界強度を反映した信号WBDのレベルの検出し、信号レベルSLDとして、再生処理ユニット140へ送る。なお、フィルタ制御部135の構成については、後述する。
次いで、上記の適応フィルタ部133の構成について説明する。適応フィルタ部133は、図5に示されるように、増幅部211と、加算器212と、2N個の遅延器2131〜2312Nと、(2N+1)個の係数倍器2140〜2142Nと、加算器215とを備えている。また、適応フィルタ部133は、係数更新部216と、スイッチ部217と、スイッチ部218とを備えている。
上記の増幅部211は、可変BPF部132からの信号CBDを受ける。そして、増幅部211は、フィルタ制御部135から送られた増幅率指令AMCによって指定された増幅率で増幅し、信号SAを生成する。こうして生成された信号SAは、加算器212へ送られる。
上記の加算器212は、増幅部211から送られた信号SA、及び、スイッチ部217から送られた信号SBを受ける。そして、加算器212は、信号SAと信号SBとを加算し、信号X0(T)を生成する。こうして生成された信号X0(T)は、遅延器2131及び係数倍器2140へ送られる
上記の遅延器213j(j=1〜2N)のそれぞれは、入力した信号Xj-1(T)を単位遅延時間τだけ遅延させ、信号Xj(T)として出力する。この結果、信号Xj(T)と信号X0(T)と関係は、次の(1)式で表される。
Xj(T)=X0(T−j・τ) …(1)
Xj(T)=X0(T−j・τ) …(1)
なお、本実施形態では、遅延器213jのそれぞれは、周期τの不図示の基準クロックに同期して信号Xj-1(T)をサンプリングして出力する。このため、単位遅延時間τの間、サンプリング結果が遅延器213jに保持されて、出力されるようになっている。ここで、遅延時間τは、入力信号X0(T)の信号周期の1/4となっている。
遅延器213jにより生成された信号Xj(T)は、係数倍器214jへ向けて送られる。ここで、遅延器213Nにより生成された信号XN(T)(=YI(T))は、スイッチ部218へも送られる。なお、係数倍器2140へは、上述したように、信号X0(T)が送られるようになっている。
上記の係数倍器214m(m=0〜2N)のそれぞれは、信号Xm(T)、及び、係数更新部216からのタップ係数Km(T)を受ける。そして、係数倍器214mは、信号Xm(T)とタップ係数Km(T)とを乗算する。この乗算の結果は、加算器215へ送られる。
上記の加算器215は、係数倍器2140〜2142Nによる乗算結果[X0(T)・K0(T)]〜[X2N(T)・K2N(T)]を受ける。そして、加算器215は、次の(2)式により、信号YF(T)を算出する。
YF(T)=X0(T)・K0(T)+…+X2N(T)・K2N(T) …(2)
こうして算出された信号YF(T)は、スイッチ部217及びスイッチ部218へ送られる。
YF(T)=X0(T)・K0(T)+…+X2N(T)・K2N(T) …(2)
こうして算出された信号YF(T)は、スイッチ部217及びスイッチ部218へ送られる。
上記の係数更新部216は、加算器212から送られた信号X0(T)、遅延器2131〜2132Nから送られた信号X1(T)〜X2N(T)、及びスイッチ部218から送られた信号Y(=FLD)を受ける。そして、係数更新部216は、フィルタ制御部135から送られたフィルタ選択指令FLSにより指定されフィルタリング処理指定に従い、CMA(Constant Modulus Algorithm)アルゴリズムを使用してタップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。こうして算出されたタップ係数Km(T)(m=0〜2N)は、係数倍器214mへ送られる。
ところで、フィルタ制御部135は、後述するように、フィルタ選択指令FLSにより、フィルタリング処理として、「IIR」指定、「FIR」指定及び「OFF」指定のいずれかを指定する。そして、フィルタ選択指令FLSにより「IIR」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の初期値の全てを「0」とした上で、次の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。
ERR(T)=([Y(T)]2+[Y(T−τ)]2)1/2−VTH …(3)
Km(T−τ)=Km(T)−α・ERR(T)・Pm(T) …(4)
Pm(T)=Xm(T)・Y(T)+Xm(T−τ)・Y(T―τ) …(5)
ここで、値VTHは所定の収束値であり、実験、シミュレーション、経験等により、予め定められる。また、値αは、収束速度を調整する値であり、実験、シミュレーション、経験等により予め定められる。
ERR(T)=([Y(T)]2+[Y(T−τ)]2)1/2−VTH …(3)
Km(T−τ)=Km(T)−α・ERR(T)・Pm(T) …(4)
Pm(T)=Xm(T)・Y(T)+Xm(T−τ)・Y(T―τ) …(5)
ここで、値VTHは所定の収束値であり、実験、シミュレーション、経験等により、予め定められる。また、値αは、収束速度を調整する値であり、実験、シミュレーション、経験等により予め定められる。
また、フィルタ選択指令FLSにより「FIR」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の初期値を所定値とした上で、上述の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。さらに、フィルタ選択指令FLSにより「OFF」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の全てを、常時「0」とする。
上記のスイッチ部217は、端子a及び端子bを有しており、フィルタ制御部135から送られたスイッチ制御指令SC1に従って、端子a及び端子bとを接続したり、開放したりする。ここで、端子aは、加算器212の入力端子の一方と接続されている。また、端子bは、加算器215の出力端子と接続されている。
スイッチ部217では、スイッチ制御指令SC1により「閉」指定がなされると、端子aと端子bとが接続される。この結果、加算器215から出力された信号YFが、加算器212に送られることになる。
また、スイッチ部217では、スイッチ制御指令SC1により「開」指定がなされると、端子aと端子bとが非接続とされる。そして、端子bからは「0」値信号が、加算器212に送られることになる。
上記のスイッチ部218は、端子c、端子d及び端子eを有しており、フィルタ制御部135から送られたスイッチ制御指令SC2に従って、端子cと端子dとを接続したり、端子cと端子eとを接続したりする。ここで、端子cは、再生処理ユニット140の入力端子と接続されている。また、端子dは、加算器215の出力端子と接続されている。また、端子eは、遅延器213Nの出力端子と接続されている。
スイッチ部218では、スイッチ制御指令SC2により「d選択」指定がなされると、端子cと端子dとが接続される。この結果、適応フィルタ部133からは、信号YFが、信号FLDとして、再生処理ユニット140へ送られる。
また、スイッチ部218では、スイッチ制御指令SC2により「e選択」指定がなされると、端子cと端子eとが接続される。この結果、適応フィルタ部133からは、信号YIが、信号FLDとして、再生処理ユニット140へ送られる。
次に、上記のフィルタ制御部135の構成について説明する。フィルタ制御部135は、図6に示されるように、第1検出部としてのレベル検出部221と、第2検出部の一部としての振幅変調(AM)成分抽出部222と、第2検出部の一部としてのレベル検出部223とを備えている。また、フィルタ制御部135は、第3検出手段の一部としてのBPF部224,225と、第3検出手段の一部としてのレベル検出部226,227とを備えている。さらに、フィルタ制御部135は、評価部並びに第1及び第2制御部としてのフィルタ設定部229を備えている。
上記のレベル検出部221は、BPF部131から送られた信号WBDを受ける。そして、レベル検出部221は、信号WBDのレベルを検出する。このレベル検出部221による検出結果は、選局されている希望局の放送波の電界強度を反映したものとなっている。レベル検出部221による検出結果は、信号レベルSLDとして、フィルタ設定部229及び再生処理ユニット140へ送られる。
上記のAM成分抽出部222は、BPF部131から送られた信号WBDを受ける。そして、AM成分抽出部222は、信号WBDのAM変調成分を抽出する。かかるAM変調成分は、マルチパスフェーディングの影響により発生するものである。AM成分抽出部222による抽出結果は、信号MPDとして、レベル検出部223へ送られる。
上記のレベル検出部223は、AM成分抽出部222から送られた信号MPDを受ける。そして、レベル検出部223は、信号MPDのレベルを検出する。このレベル検出部223による検出結果は、マルチパスフェーディングの影響度を反映したものとなっている。レベル検出部223による検出結果は、マルチパスレベルMPLとして、フィルタ設定部229へ送られる。
上記のBPF部224は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部224は、上述した周波数IF-(図3又は図4参照)を中心とする狭帯域の成分を通過させる。BPF部224を通過した信号NMDは、レベル検出部226へ送られる。なお、BPF部224の通過率の周波数変化特性の例が、図7に示されている。
上記のBPF部225は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部225は、上述した周波数IF+(図3又は図4参照)を中心とする狭帯域の成分を通過させる。BPF部225を通過した信号NPDは、レベル検出部227へ送られる。なお、BPF部225の通過率の周波数変化特性の例が、図8に示されている。
上記のレベル検出部226は、BPF部224から送られた信号NMDを受ける。そして、レベル検出部226は、信号NMDのレベルを検出する。このレベル検出部226による検出結果は、周波数IF-を中心周波数とする下方隣接局の電界強度、ひいては信号WBDにおける下方隣接局の信号の混入度を反映している。レベル検出部226による検出結果は、下方隣接局レベルNLMとして、フィルタ設定部229へ送られる。
上記のレベル検出部227は、BPF部225から送られた信号NPDを受ける。そして、レベル検出部227は、信号NPDのレベルを検出する。このレベル検出部227による検出結果は、周波数IF+を中心周波数とする上方隣接局の電界強度、ひいては信号WBDにおける上方隣接局の信号の混入度を反映している。レベル検出部227による検出結果は、上方隣接局レベルNLPとして、フィルタ設定部229へ送られる。
上記のフィルタ設定部229は、レベル検出部221,223,226,227から送られた信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPを受ける。そして、フィルタ設定部229は、これらのレベルSLD,MPL,NLM,NLPに基づいて、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードを決定する。かかるモード決定処理については、後述する。
フィルタ設定部229が決定するフィルタリング処理のモードとしては、IIRモード、FIRモード及びOFFモードがある。フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、増幅率AIを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部133へ送るとともに、「閉」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「IIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る。この結果、適応フィルタ部133は、信号YFを帰還させつつタップ係数を更新するとともに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送るIIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。
なお、増幅率AIは、IIR型適応フィルタリング動作の安定性の観点から、実験、シミュレーション、実験等に基づいて、予め定められる。
フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、増幅率AF(>AI)を指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部133へ送るとともに、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、「d選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「FIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る。この結果、適応フィルタ部133は、信号YFを帰還させずにタップ係数を更新するとともに、信号YFを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送るFIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。
なお、増幅率AFは、FIR型適応フィルタリング動作の安定性の観点から、実験、シミュレーション、実験等に基づいて、予め定められる。
フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「OFF」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る。この結果、適応フィルタ部133は、フィルタリング処理を行わずに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送る(図5参照)。
また、フィルタ設定部229は、信号レベルSLD、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPに基づいて、可変BPF部132の通過帯域幅を決定する。そして、フィルタ設定部229は、決定された通過帯域幅を指定した通過帯域幅指令BWCを可変BPF部132へ送る。なお、通過帯域幅決定処理については、後述する。
次に、上記の再生処理ユニット140の構成について説明する。再生処理ユニット140は、図9に示されるように、検波部141と、ステレオ復調部142とを備えている。
上記の検波部141は、フィルタユニット130から送られた信号FLDを受ける。そして、検波部141は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DADを生成する。こうして生成された検波信号DADは、ステレオ復調部142へ送られる。
上記のステレオ復調部142は、検波部141から送られた検波信号DAD、及び、フィルタユニット130から送られた信号レベルSLDを受ける。そして、ステレオ復調部142は、信号レベルSLDに対応したセパレーション率によるセパレーション処理を含めたステレオ復調処理を信号FLDに対して施し、信号DMDを生成する。生成された信号DMDは、アナログ処理ユニット150へ送られる。
なお、ステレオ復調部142は、信号レベルSLDが高いほど、高いセパレーション率によるセパレーション処理を行うようになっている。
[動作]
以上のようにして構成されたFM受信装置100の動作について、フィルタ設定部229による適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理に主に着目して説明する。
以上のようにして構成されたFM受信装置100の動作について、フィルタ設定部229による適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理に主に着目して説明する。
前提として、操作入力ユニット170には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット170には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット150へ送られているものとする(図1参照)。
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、受信信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号の中心周波数を、上述した中心周波数IF0とする態様の周波数変換が行われた後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、フィルタユニット130へ送られる(図1参照)。
フィルタユニット130では、BPF部131及びフィルタ制御部135が、信号IFDを受ける。信号IFDを受けたBPF部131は、信号IFDに含まれる周波数成分の内で、所定の中心周波数IF0を中心として、下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲の周波数帯の成分を選択的に通過させ、信号WBDとして、可変BPF部132及びフィルタ制御部135へ送られる(図2参照)。
フィルタ制御部135では、BPF部224,225が、信号IFDを受ける。信号IFDを受けたBPF部224は、周波数IF-を中心とする狭帯域の成分を通過させ、信号NMDとして、レベル検出部226へ送る。そして、レベル検出部226が、信号NMDのレベルを検出し、検出結果を、下方隣接局レベルNLMとして、フィルタ設定部229へ送る(図6参照)。
また、信号IFDを受けたBPF部225は、周波数IF+を中心とする狭帯域の成分を通過させ、信号NPDとして、レベル検出部227へ送る。そして、レベル検出部227が、信号NPDのレベルを検出し、検出結果を、上方隣接局レベルNLPとして、フィルタ設定部229へ送る(図6参照)。
一方、フィルタ制御部135では、レベル検出部221及びAM成分抽出部222が、BPF部131から送られた信号WBDを受ける。信号WBDを受けたレベル検出部221は、信号WBDのレベルを検出し、検出結果を、信号レベルSLDとして、フィルタ設定部229及び再生処理ユニット140へ送る(図6参照)。
また、信号WBDを受けたAM成分抽出部222は、信号WBDのAM変調成分を抽出し、抽出結果を、信号MPDとして、レベル検出部223へ送る。そして、レベル検出部223が、信号MPDのレベルを検出し、検出結果を、マルチパスレベルMPLとして、フィルタ設定部229へ送る(図6参照)。
上述のようにして検出された信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPに基づいて、フィルタ設定部229が、可変BPF部132の通過帯域幅の決定処理、及び、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理を行う。
<可変BPF部132の通過帯域幅の決定処理>
可変BPF部132の通過帯域幅の決定に際して、フィルタ設定部229は、まず、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPのうちから、レベルの高いものを選択する。こうして選択されたレベルを、以下において「隣接局レベルNLV」と呼ぶ。
可変BPF部132の通過帯域幅の決定に際して、フィルタ設定部229は、まず、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPのうちから、レベルの高いものを選択する。こうして選択されたレベルを、以下において「隣接局レベルNLV」と呼ぶ。
次に、フィルタ設定部229は、隣接局レベルNLVと信号レベルSLDとのレベル比NLR(=NLV/SLD)とを算出する。引き続き、フィルタ設定部229は、レベル比NLRに基づいて、BPF部131を通過した出力される信号WBDにおける隣接妨害成分の混入度を評価する。
次いで、フィルタ設定部229は、評価された混入度に基づいて、可変BPF部132の通過帯域幅を決定する。そして、フィルタ設定部229は、決定された通過帯域幅を指定した通過帯域幅指令BWCを可変BPF部132へ送る。
なお、フィルタ設定部229は、評価された混入度が低いほど、通過帯域幅を広く決定するようになっている。
通過帯域幅指令BWCを受けた可変BPF部132は、通過帯域幅指令BWCにより指定された通過帯域幅を有し、中心周波数IF0を中心とする帯域内の信号WBD内の成分を通過させる。可変BPF部132を通過した信号CBDは、適応フィルタ部133へ送られる。
<適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理>
適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理に際して、図10に示されるように、まず、ステップS11において、フィルタ設定部229が、信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPを収集する。
適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードの決定処理に際して、図10に示されるように、まず、ステップS11において、フィルタ設定部229が、信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPを収集する。
引き続き、ステップS12において、フィルタ設定部229は、信号レベルSLDが閾値TSL未満か否かを判定する。ここで、閾値TSLは、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、マルチパスフェーディングが生じる信号レベルと、フラットフェーディングが生じる信号レベルとの間の値に予め定められる。
ステップS12における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y)には、処理は、後述するステップS18へ進む。一方、ステップS12における判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)には、処理はステップS13へ進む。
ステップS13では、フィルタ設定部229は、上述のようにして算出されるレベル比NLRが閾値TL1以上であるかを判定する。ここで、閾値TL1は、隣接妨害及びマルチパスフェーディングの双方が発生した場合に、一般に隣接妨害の影響の方が深刻となる隣接局信号の混入度を判断するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
ステップS13における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS13:Y)には、隣接妨害の影響の抑制を最優先すべきと判断し、処理はステップS18へ進む。一方、ステップS13における判定の結果が否定的であった場合(ステップS13:N)には、処理はステップS14へ進む。
ステップS14では、フィルタ設定部229は、レベル比NLRが閾値TL2(<TL1)以下であるかを判定する。ここで、閾値TL2は、隣接妨害の影響を抑制のために適応フィルタリング処理を必要としない程度の隣接妨害であるかを判断するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
ステップS14における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS14:Y)には、隣接妨害の影響を抑制するための適応フィルタリング処理を必要としないと判断し、処理はステップS16へ進む。このステップS16では、フィルタ設定部229は、マルチパスレベルMPLが閾値TM2以上あるか否かを判定する。ここで、閾値TM2は、マルチパスフェーディングの影響を抑制するために適応フィルタリング処理を必要としない程度であるかを判断するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
ステップS16における判定の結果が否定的であった場合(ステップS16:N)には、処理はステップS19へ進む。このステップS19では、フィルタ設定部229が、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードをOFFモードに決定する。そして、フィルタ設定部229は、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「OFF」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る(図6参照)。この結果、適応フィルタ部133は、フィルタリング処理を行わずに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送る(図5参照)。この後、処理はステップS11へ戻る。
ステップS16における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS16:Y)には、処理は、ステップS15へ進む。また、上述したステップS14における判定の結果が否定的であった場合(ステップS14:N)にも、処理はステップS15へ進む。
ステップS15では、フィルタ設定部229は、マルチパスレベルMPLが閾値TM1(>TM2)以上あるか否かを判定する。ここで、閾値TM1は、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、IIR型適応フィルタ及びFIR型適応フィルタのいずれが有効であるかという観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
ステップS15における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS15:Y)には、処理はステップS17へ進む。このステップS17では、フィルタ設定部229が、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードをIIRモードに決定する。そして、フィルタ設定部229は、増幅率AIを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部133へ送るとともに、「閉」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「IIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る(図6参照)。この結果、適応フィルタ部133は、信号YFを帰還させつつタップ係数を更新するとともに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送るIIR型適応フィルタリングとして動作する。この後、処理はステップS11へ戻る(図5参照)。
ステップS15における判定の結果が否定的であった場合(ステップS15:N)には、処理はステップS18へ進む。また、上述したように、ステップS12又はステップS13における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y、又は、ステップS13:Y)にも、処理はステップS18へ進む。
ステップS18では、フィルタ設定部229が、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードをFIRモードに決定する。そして、フィルタ設定部229は、増幅率AFを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部133へ送るとともに、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部133へ送る。また、フィルタ設定部229は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、「d選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部133へ送るとともに、「FIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部133へ送る。この結果、適応フィルタ部133は、信号YFを帰還させずにタップ係数を更新するとともに、信号YFを信号FLDとして再生処理ユニット140へ送るFIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。この後、処理はステップS11へ戻る。
以上のようにしてステップS11〜S19の処理を繰り返すことにより、フィルタ設定部229は、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードを決定し、決定されたモードによるフィルタリング処理の設定を適応フィルタ部133に対して行う。かかる設定が行われた適応フィルタ部133は、設定されたモードに対応するフィルタリング処理を、可変BPF部132から送られた信号CBDに対して施す。そして、適応フィルタ部133は、フィルタリング処理結果を、信号FLDとして再生処理ユニット140へ送る。
フィルタユニット130から信号FLDを受けた再生処理ユニット140では、検波部141が信号FLDに対して検波処理を施した後に、ステレオ復調部142が、信号レベルSLDに対応したセパレーション率によるセパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、検波結果に対して施す。この結果が、信号DMDとして、アナログ処理ユニット150へ送られる(図9参照)。
再生処理ユニット140からの信号DMDを受けたアナログ処理ユニット150では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット160へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット160が、アナログ処理ユニット150からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
以上説明したように、本実施形態では、レベル検出部221が、希望局の放送波の電界強度を検出するとともに、AM成分抽出部222及びレベル検出部223が協働してマルチパスノイズのレベルを検出する。そして、希望局の放送波の電界強度が高く、かつ、マルチパスノイズのレベルが比較的低い場合には、フィルタ設定部229が、適応フィルタ部133が行うべきフィルタリング処理を、FIR型フィルタリング処理に決定する。そして、フィルタ設定部229は、FIR型フィルタリング処理のための設定を、適応フィルタ部133に対して行う。
したがって、本実施形態によれば、選局された希望局から発信された放送コンテンツの再生品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、BPF部224及びレベル検出部226が協働して下方隣接局の放送波の電界強度を検出するとともに、BPF部225及びレベル検出部227が協働して上方隣接局の放送波の電界強度を検出する。引き続き、フィルタ設定部229は、下方隣接局及び上方隣接局の放送波の電界強度の検出結果に基づいて、隣接妨害の程度を評価する。
そして、フィルタ設定部229は、希望局の放送波の電界強度が高く、かつ、マルチパスノイズのレベルが高くとも、隣接妨害の程度が高い場合には、適応フィルタ部133が行うべきフィルタリング処理を、FIR型フィルタリング処理に決定する。そして、フィルタ設定部229は、FIR型フィルタリング処理のための設定を、適応フィルタ部133に対して行う。
一方、フィルタ設定部229は、希望局の放送波の電界強度が高く、かつ、マルチパスノイズのレベルが高く、さらに、隣接妨害の程度が低い場合に限って、適応フィルタ部133が行うべきフィルタリング処理を、IIR型フィルタリング処理に決定する。そして、フィルタ設定部229は、IIR型フィルタリング処理のための設定を、適応フィルタ部133に対して行う。
このため、本実施形態によれば、マルチパスフェーディング、フラットフェーディング及び隣接妨害の影響を総合的に考慮したフィルタリング処理を、適応フィルタ部133に行わせることができる。
また、本実施形態では、希望局の放送波の電界強度が高く、マルチパスノイズ及び隣接妨害の程度が非常に低い場合には、適応フィルタ部133におけるフィルタリング処理をOFFとする。このため、適応フィルタ部133のフィルタリング処理による信号の変形が無い状態で、希望局の放送に対応する信号が、信号FLDとして送られてくるので、信号レベルSLDに対応したセパレーション率による理想的なセパレーション処理を行うことができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、AM成分抽出部222及びレベル検出部223が協働してマルチパスレベルの検出を行うようにしたが、上述した(3)式により算出されるERR(T)を、マルチパスレベルとして採用してもよい。この場合には、AM成分抽出部222及びレベル検出部223を省略することができる。
また、上記の実施形態では、マルチパスレベルを単に所定閾値と比較するようにしたが、マルチパスレベルが所定閾値を超えている継続時間、又は、マルチパスレベルが所定閾値を超える頻度が所定値以上であることをもって、検出されたマルチパスレベルが所定閾値を超えたと判断するようにしてもよい。この場合には、車両の走行等に伴うマルチパスレベルの頻繁な変化があっても、フィルタリング処理のモードの頻繁な変更を抑制することができる。
また、上記の実施形態では、適応フィルタ部133のフィルタリング処理のモードを3種類としたが、OFFモードを除いた2種類としてもよい。この場合には、フィルタ設定部229におけるOFFモード関連の処理を省略することができる。
なお、上記の実施形態におけるフィルタユニット130、再生処理ユニット140及び受信制御ユニット190を、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
Claims (8)
- FM波の電界強度を検出する第1検出部と;
前記FM波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;
フィルタ選択指令により、有限インパルス応答型フィルタ及び無限インパルス応答型フィルタのいずれか一方のフィルタが選択された場合に、前記選択されたフィルタにより、前記FM波の中間周波信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;
前記第1検出部により検出された電界強度が所定電界強度より低い第1条件を満たす場合、及び、前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベルよりも低く、かつ、前記マルチパスノイズのレベルが、前記第1所定マルチパスノイズレベルよりも低い第2所定マルチパスノイズレベル以上であると判断される第2条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る第1制御部と;
を備えることを特徴とするFM受信装置。 - 前記第1制御部は、前記マルチパスノイズのレベルが、前記第1所定マルチパスノイズレベル以上となる期間の割合が第1所定値以上である場合に、前記マルチパスノイズのレベルが、第1所定マルチパスノイズレベル以上であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のFM受信装置。
- 前記FM波の周波数帯の信号を、所定の中間周波数帯の信号に変換する高周波処理部と;
前記高周波処理部により変換された第1信号における前記所定の中間周波数帯に含まれる第1周波数帯の成分を選択的に通過させるバンドパスフィルタ部と;
前記バンドパスフィルタ部を通過した第2信号を、前記第1周波数帯に含まれ、周波数幅指令により指定された周波数幅を有し、前記第1周波数帯に含まれる第2周波数帯の成分を選択的に通過させ、前記適応フィルタ部へ送る可変バンドパスフィルタ部と;
前記FM波を発信したFM局に、周波数に関して隣接する隣接FM局から発信された隣接FM波の電界強度を検出する第3検出部と;
前記第1検出部により検出された電界強度及び前記第3検出部により検出された電界強度に基づいて、前記第1信号における前記隣接FM波の信号の混入度を評価する評価部と;
前記評価された混入度に基づいて前記周波数幅を決定し、前記決定された周波数幅とすべき旨の前記周波数幅指令を、前記可変バンドパスフィルタ部へ送る第2制御部と;を更に備え、
前記第1制御部は、
前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記評価された混入度が第1所定混入度以上である第3条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタによる処理を選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送り、
前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが前記第1所定マルチパスノイズレベル以上であると判断され、かつ、前記評価された混入度が前記第1所定混入度未満である第4条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記無限インパルス応答型フィルタによる処理を選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のFM受信装置。 - 前記第2所定マルチパスノイズレベルは、0レベルより大きなレベルであり、
前記第1制御部は、
前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが前記第2所定マルチパスノイズレベル未満であると判断され、かつ、前記評価された混入度が、前記第1所定混入度よりも低い第2所定混入度以上である第5条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタによる処理を選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送り、
前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが前記第2所定マルチパスノイズレベル未満であると判断され、かつ、前記評価された混入度が、前記第2所定混入度未満である第6条件を満たす場合には、前記フィルタ選択指令として、前記フィルタリング処理を行わない旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る、
ことを特徴とする請求項3に記載のFM受信装置。 - 前記第2所定マルチパスノイズレベルは、0レベルである、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のFM受信装置。
- FM波の電界強度を検出する第1検出部と;前記FM波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;フィルタ選択指令により、有限インパルス応答型フィルタ及び無限インパルス応答型フィルタのいずれか一方のフィルタが選択された場合に、前記選択されたフィルタにより、前記FM波の中間周波信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;を備えるFM受信装置において使用されるフィルタリング処理方法であって、
前記第1検出部により検出された電界強度が所定電界強度より低い第1条件、及び、前記第1検出部により検出された電界強度が前記所定電界強度以上であって、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベルよりも低く、かつ、前記マルチパスノイズのレベルが、前記第1所定マルチパスノイズレベルよりも低い第2所定マルチパスノイズレベル以上であると判断される第2条件のいずれかを満たすか否かを判定する判定工程と;
前記判定工程における判定結果が肯定的であった場合には、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る制御工程と;
を備えることを特徴とするフィルタリング処理方法。 - 請求項6に記載のフィルタリング処理方法を演算部により実行させる、ことを特徴とするフィルタリング処理プログラム。
- 請求項7に記載のフィルタリング処理プログラムが、演算部により読取可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
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