以下、本発明の一実施形態を、図1〜図7を参照して説明する。本実施形態においては、車両内に配置され、IBOC方式の規格に準拠したアナログ/デジタルラジオ放送波を受信して処理する放送受信装置を例示して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[構成]
図1には、一実施形態に係る放送受信装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。図1に示されるように、放送受信装置100は、アンテナ110と、RF処理ユニット120、再生処理ユニット130とを備えている。また、放送受信装置100は、アナログ処理ユニット140と、スピーカユニット150と、入力ユニット180とを備えている。さらに、放送受信装置100は、制御ユニット190を備えている。
上記のアンテナ110は、放送局から送信されているIBOC方式の規格に準拠した放送波を受信する。この放送波には、サイマル放送として放送されるアナログ放送波とデジタル放送波とが含まれている。アンテナ110による受信信号RFSは、RF処理ユニット120へ送られる。
本実施形態では、デジタル放送波が第1放送波に対応し、アナログ放送波が第2放送波に対応している。
上記のRF処理ユニット120は、アンテナ110から送られたアナログ放送波とデジタル放送波とが含まれている放送波の受信信号RFSを受ける。RF処理ユニット120は、制御ユニット190から送られたサイマル放送の選局指令CSLに従って、選局すべき希望放送局の信号を受信信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する中間周波信号IFDに変換する。こうして得られた中間周波信号IFD(以下、単に「信号IFD」とも記す)は、再生処理ユニット130に送られる。
上記の再生処理ユニット130は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、再生処理ユニット130は、信号IFDにおけるアナログ放送成分に対する再生処理を行うとともに、信号IFDにおけるデジタル放送成分に対する再生処理を行う。引き続き、再生処理ユニット130は、制御ユニット190による制御のもとで、アナログ放送波の再生信号及びデジタル放送波の再生信号に基づく信号BPD(再生信号)を生成し、アナログ処理ユニット140へ供給する。ここで、信号BPDは、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号の2つの信号から構成されている。再生処理ユニット130の構成の詳細については、後述する。
上記のアナログ処理ユニット140は、再生処理ユニット130から送られた信号BPDを受ける。そして、アナログ処理ユニット140は、制御ユニット190による制御のもとで、出力音声信号AOSを生成して、スピーカユニット150へ送る。
かかる機能を有するアナログ処理ユニット140は、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、音量調整部は、再生処理ユニット130から送られた信号BPDを受ける。そして、音量調整部は、制御ユニット190から送られた音量調整指令VLCに従って、信号BPDに含まれるLチャンネル信号及びRチャンネル信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による音量調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット150へ送られる。
上記のスピーカユニット150は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット150は、アナログ処理ユニット140から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
上記の入力ユニット180は、放送受信装置100の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。入力ユニット180への入力結果は、入力データIPDとして制御ユニット190へ送られる。
上記の制御ユニット190、様々な処理を行うとともに、放送受信装置100の全体を制御する。この制御ユニット190は、入力ユニット180から送られた入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、指定された希望放送局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット120へ送る。また、入力データIPDの内容が音量調整指定であった場合には、制御ユニット190は、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット140へ送る。
制御ユニット190は、デジタル放送波の受信品質を示すビットエラー率BERを、再生処理ユニット130から受ける。そして、制御ユニット190は、当該ビットエラー率BERに基づいて、デジタル放送波の受信品質を評価する。また、制御ユニット190は、再生処理ユニット130から送られたアナログ放送処理信号のレベル値ALV及びデジタル放送処理信号のレベル値DLVを受ける。そして、制御ユニット190は、最新のレベル値ALV,DLVの取得時を含む所定期間におけるレベル値ALVの時間平均(アナログ放送音声の平均エネルギ)及びレベル値DLVの時間平均(デジタル放送音声の平均エネルギ)を、逐次、算出する。
ここで、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との値の違いは、アナログ放送音声とデジタル放送音声との音量の違いを反映しているとともに、アナログ放送音声とデジタル放送音声との音質の違いを反映している。なお、「所定期間」は、アナログ放送処理信号のレベル値の一時的な変動、及び、デジタル放送処理信号のレベル値の一時的な変動に影響を受けず、かつ、最新の信号レベル値を、逐次、算出するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
そして、制御ユニット190は、デジタル放送波の受信品質に基づいて、ミュート指令MUC、信号選択制御指令SSL及びブレンド制御指令BLCを生成して再生処理ユニット130へ送ることにより、再生出力する放送を選択する「再生出力選択制御処理」を行う。また、制御ユニット190は、デジタル放送波の受信品質、並びに、レベル値ALVの時間平均及びレベル値DLVの時間平均に基づいて、ブレンド制御指令BLCを生成して再生処理ユニット130へ送ることにより、デジタル放送の音声再生とアナログ放送の音声再生とを切り替える際のブレンド処理を制御する「ブレンド制御処理」を行う。さらに、制御ユニット190は、デジタル放送波の受信品質、並びに、レベル値ALVの時間平均及びレベル値DLVの時間平均に基づいて、ミュート指令MUC、乗算指令APC及び信号選択制御指令SSLを生成して再生処理ユニット130へ送ることにより、デジタル放送の再生音声の聴感上のノイズを消去する「ノイズ消去処制御処理」を行う。
すなわち、制御ユニット190は、制御部及び比較部の一部の機能を果たすようになっている。制御ユニット190が実行する制御処理の詳細については、後述する。
<再生処理ユニット130の構成>
次に、再生処理ユニット130の構成について説明する。
再生処理ユニット130は、図2に示されるように、アナログ放送処理部131と、デジタル放送処理部132と、レベル検出部133とを備えている。また、再生処理ユニット130は、ミュート部134と、再生信号生成部135とを備えている。
上記のアナログ放送処理部131は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、アナログ放送処理部131は、信号IFDにおけるアナログ放送成分に対する再生処理を行う。アナログ放送処理部131による再生処理結果は、アナログ放送処理信号ABD(第2再生信号)(以下、「アナログ放送処理信号」又は、単に「信号ABD」とも記す)として、レベル検出部133及び再生信号生成部135へ送られる。
かかる機能を有するアナログ放送処理部131は、検波部と、ステレオ復調部とを備えている(いずれも不図示)。
検波部は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、検波部は、信号IFDにおけるアナログ放送成分の周波数帯域の信号成分に対して、所定の方式で検波処理を施して、検波信号を生成する。こうして生成された検波信号は、ステレオ復調部へ送られる。
ステレオ復調部は、検波部から送られた検波信号を受ける。そして、ステレオ復調部は、検波信号に対してステレオ復調処理を施し、信号ABDを生成する。ステレオ復調部は、生成された信号ABDを、レベル検出部133及び再生信号生成部135へ送る。なお、信号ABDは、Lチャンネル信号及びRチャンネル信号の2つの信号から構成されている。
このように、アナログ放送処理部131は、第2生成部の機能を果たすようになっている。
上記のデジタル放送処理部132は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、デジタル放送処理部132は、信号IFDにおけるデジタル放送成分に対する再生処理を行う。デジタル放送処理部132による再生処理結果は、デジタル放送処理信号DBD(第1再生信号)(以下、「デジタル放送処理信号」又は、単に「信号DBD」とも記す)として、レベル検出部133及びミュート部134へ送られる。
かかる機能を有するデジタル放送処理部132は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)復調部と、デコード部とを備えている(いずれも不図示)。
OFDM復調部は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、OFDM復調部は、信号IFDにおけるデジタル放送成分の周波数帯域の信号成分に対して、OFDM復調処理を施して、OFDM復調信号を生成する。こうして生成されたOFDM復調信号は、デコード部へ送られる。
デコード部は、OFDM復調部から送られたOFDM復調信号を受ける。そして、デコード部は、OFDM復調信号に対して復号処理を行う。この復号に際して、デコード部は、OFDM復調信号に対して符号の誤り検出を行ったうえで誤り訂正を行う。デコード部は、当該誤り訂正の結果に含まれる音声の復号結果を、信号DBDとして、レベル検出部133及びミュート部134へ送る。また、デコード部は、誤り訂正ができなかった事象の所定時間における発生回数をビットエラー率(符号誤り率)BERとして、制御ユニット190へ送る。なお、信号DBDは、Lチャンネル信号及びRチャンネル信号の2つの信号から構成されている。
このように、デジタル放送処理部132は、第1生成部及び検出部の機能を果たすようになっている。
上記のレベル検出部133は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを受ける。そして、レベル検出部133は、信号ABDのパワーレベルを検出する。検出された信号ABDの信号レベルは、レベル値ALVとして、制御ユニット190へ送られる。
また、レベル検出部133は、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDを受ける。そして、レベル検出部133は、信号DBDのパワーレベルを検出する。検出された信号DBDの信号レベルは、レベル値DLVとして、制御ユニット190へ送られる。すなわち、レベル検出部133は、比較部の一部の機能を果たすようになっている。
上記のミュート部134は、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDを受ける。そして、ミュート部134は、制御ユニット190から送られたミュート指令MUCに従って信号DMDを生成し、再生信号生成部135へ送る。
ここで、ミュート部134は、制御ユニット190から送られたミュート指令MUCによりミュート設定が指定された場合には、信号DBDに対してミュート処理を施し、信号DMDとして再生信号生成部135へ送る。また、ミュート部134は、ミュート指令MUCによりミュート設定が指定されていない場合には、信号DBDそのものを信号DMDとして再生信号生成部135へ送る。
上記の再生信号生成部135は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを受けるとともに、ミュート部134から送られた信号DMDを受ける。そして、再生信号生成部135は、制御ユニット190による制御のもとで、信号ABD及び信号DMDに基づいて信号BPDを生成する。こうして生成された信号BPDは、アナログ処理ユニット140へ送られる。
《再生信号生成部135の構成》
次いで、再生信号生成部135の構成について説明する。
再生信号生成部135は、図3に示されるように、乗算部136と、信号選択部137とを備えている。また、再生信号生成部135は、ブレンド処理部138を備えている。
上記の乗算部136は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを受ける。そして、乗算部136は、制御ユニット190から送られた乗算指令APCに従って、信号ABDに対して増幅処理又は減衰処理を施す。乗算部136による乗算処理結果は、信号AADとして信号選択部137へ送る。
上記の信号選択部137は、乗算部136から送られたアナログ放送系の信号AAD、及び、ミュート部134から送られたデジタル放送系の信号DMDを受ける。そして、信号選択部137は、制御ユニット190から送られた信号選択制御指令SSLに従って、信号AAD及び信号DMDのいずれか一方を選択し、信号DADとして、ブレンド処理部138へ送る。
ここで、信号選択部137は、制御ユニット190から送られた信号選択制御指令SSLによりアナログ放送の再生信号を選択すべきことが指定された場合には、信号AADを選択する。また、信号選択部137は、制御ユニット190から送られた信号選択制御指令SSLによりデジタル放送の再生信号を選択すべきことが指定された場合には、信号DMDを選択する。
上記のブレンド処理部138は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABD、及び、信号選択部137から送られた信号DADを受ける。そして、ブレンド処理部138は、制御ユニット190から送られたブレンド制御指令BLCの内容に従って、信号ABD及び信号DADに基づく信号BPDを生成し、アナログ処理ユニット140へ送る。
このブレンド処理部138は、放送音声信号の切替期間を除く通常期間においては、ブレンド制御指令BLCに含まれる「選択指令」に従って、信号ABD及び信号DADのいずれか一方を選択し、信号BPDとして、アナログ処理ユニット140へ送る。
また、ブレンド処理部138は、信号ABDから信号DADへの選択信号の切替、又は、信号DADから信号ABDへの選択信号の切替に際して、ブレンド制御指令BLCに含まれる「選択指令」、「切替期間」に基づき、当該切替期間において、切替前信号のレベルを徐々に低くしていくととともに、切替後信号のレベルを徐々に高くして、当該切替前信号及び切替後信号を混合した信号BPDを生成する。そして、ブレンド処理部138は、当該切替期間の終了時点で、選択信号の切替を完了させる。すなわち、ブレンド処理部138は、信号混合部の機能を果たすようになっている。
[動作]
以上のようにして構成された放送受信装置100の動作について、制御ユニット190による「再生出力選択制御処理」、「ブレンド制御処理」及び「ノイズ消去処制御処理」に主に着目して説明する。
前提として、入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望放送局に対応する選局指令CSLが、制御ユニット190からRF処理ユニット120へ送られているものとする。また、入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、制御ユニット190からアナログ処理ユニット140へ送られているものとする(図1参照)。
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、受信信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。RF処理ユニット120は、選局指令CSLに従い、希望放送局の信号を受信信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する信号IFDに変換する。そして、RF処理ユニット120は、当該信号IFDを、再生処理ユニット130のアナログ放送処理部131及びデジタル放送処理部132へ送る(図2参照)。
アナログ放送処理部131は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDにおけるアナログ放送成分に対する再生処理を行い、信号ABDを生成する。そして、アナログ放送処理部131は、生成された信号ABDを、レベル検出部133及び再生信号生成部135へ送る(図2参照)。
また、デジタル放送処理部132は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDにおけるデジタル放送成分に対する再生処理を行い、ビットエラー率BERを検出するとともに、信号DBDを生成する。そして、デジタル放送処理部132は、生成された信号DBDを、レベル検出部133及びミュート部134へ送るとともに、検出されたビットエラー率BERを、制御ユニット190へ送る(図2参照)。
また、レベル検出部133では、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDのパワーレベルを検出して、レベル値ALVを制御ユニット190へ送るとともに、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDのパワーレベルを検出して、レベル値DLVを制御ユニット190へ送る(図2参照)。
制御ユニット190は、デジタル放送処理部132から送られたビットエラー率BERを受けると、ビットエラー率BERに基づいて、デジタル放送波の受信品質を、逐次、評価する。また、制御ユニット190は、最新のレベル値ALV,DLVの取得時を含む所定期間でのレベル値ALVの時間平均、及び、レベル値DLVの時間平均を、逐次、算出する。このような状況のもとで、制御ユニット190による「再生出力選択制御処理」、「ブレンド制御処理」及び「ノイズ消去処制御処理」が行われる。
<再生出力選択制御処理>
まず、制御ユニット190による再生出力する放送を選択する「再生出力選択制御処理」について説明する。
かかる「再生出力選択制御処理」は、制御ユニット190がデジタル放送波の受信品質が所定値ESTD以上であるといえる状態が所定の一定時間以上継続しているか否かの判定を行うことで、デジタル放送波に基づく音声再生が可能であるか否かのデジタル放送選択判定を行う。そして、当該デジタル放送選択判定の結果が肯定的である場合には、再生出力する放送として「デジタル放送」を選択するための制御を行う。
この「デジタル放送」を再生出力放送に選択するに際して、制御ユニット190は、信号DBDに対してミュート処理を行わない旨のミュート指令MUCを生成し、ミュート部134へ送る。また、制御ユニット190は、ミュート部134から送られた信号DMDを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを生成し、信号選択部137へ送る。さらに、制御ユニット190は、信号選択部137から送られた信号DADを選択すべき旨の「選択指令」を含むブレンド制御指令BLCを生成し、ブレンド処理部138へ送る。
制御ユニット190から送られたミュート指令MUCを受けると、ミュート部134は、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDそのものを、信号DMDとして再生信号生成部135へ送る(図2,3参照)。次いで、信号選択制御指令SSLを受けた再生信号生成部135の信号選択部137が、信号DBDそのものである信号DMDを選択し、信号DADとしてブレンド処理部138へ送る(図3参照)。
そして、「選択指令」を含むブレンド制御指令BLCを受けたブレンド処理部138が、信号DBDそのものである信号DADを、信号BPDとしてアナログ処理ユニット140へ送る(図3参照)。この結果、再生出力する放送として「デジタル放送」が選択される。
一方、デジタル放送選択判定の結果が否定的である場合には、再生出力する放送として「アナログ放送」を選択するための制御を行う。「アナログ放送」を再生出力放送に選択するに際して、制御ユニット190は、アナログ放送処理部131から送られる信号ABDを選択すべき旨の「選択指令」を含むブレンド制御指令BLCを生成し、ブレンド処理部138へ送る。
制御ユニット190から送られた「選択指令」を含むブレンド制御指令BLCを受けると、ブレンド処理部138は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを、信号BPDとしてアナログ処理ユニット140へ送る(図3参照)。この結果、再生出力する放送として「アナログ放送」が選択される。
なお、本実施形態では、「アナログ放送」を再生出力放送に選択している場合にも、制御ユニット190は、ミュート部134に対して、ミュート処理を行わない旨のミュート指令MUCを送るようになっている。また、制御ユニット190は、「アナログ放送」を再生出力放送に選択している場合に、信号選択部137に対して、ミュート部134から送られた信号DMDを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを送るようになっている。
<ブレンド制御処理>
次に、制御ユニット190によるデジタル放送の音声再生とアナログ放送の音声再生とを切り替える際の「ブレンド制御処理」について説明する。
かかる「ブレンド制御処理」は、制御ユニット190が、上述したデジタル放送選択判定に基づき、「デジタル放送」を再生出力放送に選択している信号DADから信号ABDへの選択信号の切替、又は、「アナログ放送」を再生出力放送に選択している信号ABDから信号DADへの選択信号の切替が必要であるか否かを判定する。当該判定の結果が肯定的であった場合には、制御ユニット190は、まず、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との差の絶対値を算出する。引き続き、制御ユニット190は、算出された差の絶対値に基づいて、「切替期間」を導出する。そして、制御ユニット190は、切替先の放送を指定した「選択指令」及び導出された「切替期間」を含むブレンド制御指令BLCを生成し、ブレンド処理部138へ送る。
ここで、「切替期間」は、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との差が大きいほど長くなっている。そして、当該差に基づく切替期間の導出関係は、放送音声信号の切替に際して、利用者に聴感上の違和感を与えないようにするとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
制御ユニット190から送られた当該ブレンド制御指令BLCを受けると、ブレンド処理部138は、当該ブレンド制御指令BLCに含まれる「選択指令」、「切替期間」に基づき、当該切替期間において、切替前の信号の混合比を「1」から「0」に変化させるとともに、切替後の信号の混合比を「0」から「1」に変化させて、切替前の信号及び切替後の信号を混合した信号BPDを生成する。そして、ブレンド処理部138は、当該切替期間の終了時点で、放送音声信号の切替を完了させる。この結果、ブレンド処理部138による信号ABDから信号DADへの放送音声信号の切替、又は、信号DADから信号ABDへの放送音声信号の切替が、切替期間をかけて行われる(図3参照)。
なお、制御ユニット190は、一の放送信号への切替中に、再生出力選択制御処理により、他の放送信号に戻すべきと判定した場合には、その時点での各信号の混合比、並びに、その時点でのレベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との差の絶対値に基づいて、再度、「切替期間」を導出する。そして、制御ユニット190は、切替先の放送を指定した「選択指令」及び導出された「切替期間」を含むブレンド制御指令BLCを生成し、ブレンド処理部138へ送る。
図4,5には、(A)デジタル放送波の受信品質の例、(B)当該受信品質でのブレンド処理部138によるブレンド処理及びブレンド処理部138から出力される信号BPDの内容の例を併記したものが示されている。ここで、図4に示される受信状態でのレベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との差の絶対値ΔL1は、図5に示される受信状態での当該差の絶対値ΔL2に比べて、小さくなっている。このため、図4に示される受信状態での切替期間長T1は、図5に示される受信状態での切替期間長T2に比べて、短くなっている。
<ノイズ消去処制御処理>
次に、制御ユニット190によるデジタル放送音声の「ノイズ消去処制御処理」について説明する。
「ノイズ消去処制御処理」は、ブレンド処理部138が出力する信号BPDが、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDに基づく信号である場合に行われる。ここで、信号BPDが信号DBDに基づいている場合には、上述した「デジタル放送」を再生出力放送に選択しているときと、デジタル放送の音声再生とアナログ放送の音声再生とを切り替えているブレンド処理が行われているときとがある。
かかる「ノイズ消去処制御処理」は、制御ユニット190が、ビットエラー率BERが一時的に所定値BED以上に増加し、聴感上のノイズが発生するか否かを判定する。この判定の結果が肯定的である期間(以下、「ノイズ発生期間」とも記す)に、制御ユニット190は、ノイズを消去するための制御を行う。
なお、「ノイズ発生期間」が発生する以前では、制御ユニット190は、ミュート処理を行わない旨のミュート指令MUCをミュート部134へ送るとともに、ミュート部134から送られた信号DMDを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを信号選択部137へ送っている。
かかる制御に際して、制御ユニット190は、信号DBDに対してミュート処理を行う旨のミュート指令MUCを生成し、ミュート部134へ送る。また、かかる制御に際して、制御ユニット190は、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均とに基づいて、次の(1)式により、乗算係数COF(>0)を算出する。
COF=(レベル値DLVの時間平均)/(レベル値ALVの時間平均) …(1)
そして、制御ユニット190は、算出された乗算係数COFを指定した乗算指令APCを生成し、乗算部136へ送る。
さらに、制御ユニット190は、乗算部136から送られた信号AADを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを生成し、信号選択部137へ送る。
制御ユニット190から送られたミュート指令MUCを受けると、ミュート部134は、デジタル放送処理部132から送られた信号DBDをミュートする。また、制御ユニット190から送られた乗算指令APCを受けると、乗算部136は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを、当該乗算指令APCで指定された乗算係数COFで乗算させた信号AADを生成する。そして、乗算部136は、生成された信号AADを信号選択部137へ送る(図3参照)。ここで、乗算係数COFが「1」より大きいときには、乗算部136は、信号ABDを増幅した信号AADを生成する。また、乗算係数COFが「1」より小さいときには、乗算部136は、信号ABDを減衰させた信号AADを生成する。
次いで、信号選択制御指令SSLを受けた信号選択部137が、乗算部136から送られた信号AADを選択し、信号DADとしてブレンド処理部138へ送る。そして、ブレンド処理部138が、当該信号DADに基づく信号BPDを生成し、アナログ処理ユニット140へ送る(図3参照)。この結果、一時的に発生するはずであったノイズが消去される。
そして、ノイズ発生期間が終了すると、制御ユニット190は、ミュート処理を行わない旨のミュート指令MUCを生成し、ミュート部134へ送る。また、ノイズ発生期間が終了すると、制御ユニット190は、ミュート部134から送られた信号DMDを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを生成し、信号選択部137へ送る。
図6には、「デジタル放送」を再生出力放送に選択している受信状態のときの、デジタル放送波の受信品質の例、ビットエラー率BERの変化例、並びに、当該受信状況においてブレンド処理部138から出力される信号BPDの内容の例を、併記したものが示されている。図6に示されるように、ビットエラー率BERが一時的に所定値BED以上に増加した場合には、制御ユニット190は、ブレンド処理部138がデジタル放送系の信号「D」に替えて、アナログ放送系の信号「A」を、信号BPDとして一時的に出力するように制御する。
また、図7には、デジタル放送の音声再生とアナログ放送の音声再生とを切り替えているブレンド処理が行われているときの、デジタル放送波の受信品質の例、ビットエラー率BERの変化例、並びに、当該受信状況におけるブレンド処理部138によるブレンド処理及びブレンド処理部138から出力される信号BPDの内容の例を、併記したものが示されている。ビットエラー率BERの例と、ブレンド処理部138によるブレンド処理及び選択放送の例とを併記したものが示されている。図7に示されるように、ビットエラー率BERが一時的に所定値BED以上に増加した場合には、制御ユニット190は、ブレンド処理部138が切替期間においては、混合放送信号「M」に替えて、アナログ放送系の信号「A」を、信号BPDとして一時的に出力するように制御する。
なお、図7に示されるように、デジタル系の信号とアナログ系の信号との混合比は、ビットエラー率BERの一時的な所定値BED超の有無に関わらない態様で変化する。
以上説明したように、本実施形態では、アナログ放送処理部131が、アナログ放送成分に対する再生処理を行い、アナログ放送処理信号ABDを生成する。また、デジタル放送処理部132が、デジタル放送成分に対する再生処理を行い、デジタル放送処理信号DBDを生成するとともに、デジタル放送波の受信品質を示すビットエラー率BERを検出する。また、レベル検出部133が、アナログ放送処理信号ABDのレベル値ALV、及び、デジタル放送処理信号DBDのレベル値DLVを検出する。そして、制御ユニット190が、ビットエラー率BERに基づいて、デジタル放送波の受信品質を評価する。また、制御ユニット190は、最新のレベル値ALV,DLVの取得時を含む所定期間でのレベル値ALVの時間平均、及び、レベル値DLVの時間平均を算出する。
このような状況のもとで、「デジタル放送」を再生出力放送に選択している信号DADから「アナログ放送」を再生出力放送に選択する信号ABDへの選択信号の切替、又は、「アナログ放送」を再生出力放送に選択している信号ABDから「デジタル放送」を再生出力放送に選択する信号DADへの選択信号の切替が必要であると判定された場合には、制御ユニット190は、まず、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均との差の絶対値を算出する。引き続き、制御ユニット190は、算出された差の絶対値に基づいて、当該差の絶対値が大きいほど期間長が長くなる態様で「切替期間」を導出する。そして、制御ユニット190は、切替先の放送を指定した「選択指令」及び導出された「切替期間」を含むブレンド制御指令BLCを生成し、ブレンド処理部138へ送る。
ブレンド処理部138は、当該ブレンド制御指令BLCに含まれる「選択指令」、「切替期間」に基づき、当該切替期間において、切替前信号のレベルを徐々に低くしていくととともに、切替後信号のレベルを徐々に高くして、当該切替前信号及び切替後信号を混合した信号BPDを生成する。そして、ブレンド処理部138は、当該切替期間の終了時点で、選択信号の切替を完了させる。
このため、アナログ放送音声とデジタル放送音声との音量の違いを考慮するとともに、アナログ放送音声とデジタル放送音声との音質の違いを考慮した、聴感上の違和感を低減させた放送音声信号の切り替えを行うことができる。
また、本実施形態では、ビットエラー率BERが一時的に増加し、デジタル放送音声において聴感上のノイズが発生すると判定された場合には、制御ユニット190が、レベル値ALVの時間平均とレベル値DLVの時間平均とに基づいて、乗算係数COFを算出し、算出された乗算係数COFを指定した乗算指令APCを生成し、乗算部136へ送る。また、制御ユニット190は、乗算部136から送られたアナログ放送系の信号AADを選択すべき旨の信号選択制御指令SSLを生成し、信号選択部137へ送る。
乗算部136は、アナログ放送処理部131から送られた信号ABDを、当該乗算指令APCで指定された乗算係数COFで乗算させた信号AADを生成し、信号選択部137へ送る。次いで、信号選択部137が、信号AADを選択し、信号DADとしてブレンド処理部138へ送る。そして、ブレンド処理部138が、当該信号DADに基づく信号BPDを生成し、アナログ処理ユニット140へ送る。
このため、デジタル放送の音声再生とアナログ放送の音声再生とを切り替えているブレンド処理が行われているときに、デジタル放送の再生音声からノイズが一時的に発生するような場合に、当該一時的に発生するはずであったノイズが消去され、アナログ放送系の音声が再生される。また、「デジタル放送」を再生出力放送に選択しているときに、デジタル放送の再生音声からノイズが一時的に発生するような場合であっても、当該一時的に発生するはずであったノイズが消去され、アナログ放送系の音声が再生される。
したがって、本実施形態によれば、アナログ放送とデジタル放送とでサイマルとなっている放送を受信処理した際に、簡易に、放送音声信号の切り替えの際における聴取者の聴感上の違和感を低減させることができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、ミュート部を備えることとしたが、当該ミュート部を、放送受信装置の構成要素から省略するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、再生信号生成部が乗算部及び信号選択部を備えるようにしたが、当該乗算部及び信号選択部を、放送受信装置の構成要素から省略するようにしてもよい。この場合には、デジタル放送の音声からノイズが一時的に発生するときには、出力音声が消音される。
また、上記の実施形態では、デジタル放送の復号処理の際に検出したビットエラー率に基づいて、デジタル放送波の受信品質を評価した。これに対して、受信したデジタル放送波に基づく信号のCNR(Carrier to Noise Ratio)を検出して、当該CNRに基づいて、デジタル放送波の受信品質を評価するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、アナログ放送波を周波数変調(FM)放送波としたが、アナログ放送波は振幅変調(AM)放送波であってもよい。
また、上記の第1及び第2実施形態では、IBOC方式のサイマル放送に本発明を適用したが、DAB(Digital Audio Broadcasting)方式によるデジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送とを利用したサイマル放送等の他の方式のサイマル放送に本発明を適用することができる。
また、上記の実施形態では、ラジオ放送に本発明を適用したが、例えば、テレビジョン放送に本発明を適用することができる。
また、上記の実施形態においては、車両に配置される放送受信装置に本発明を適用したが、車両以外の他の移動体に配置される放送受信装置にも本発明を適用することもできるし、スマートフォン等の携帯端末装置に配置される放送受信装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記の制御ユニットの一部又は全部を中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における制御ユニットの機能を実現するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。