以下、本発明の一実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[構成]
図1には、一実施形態に係るフィルタ制御装置100を備えるFM受信装置200の概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、FM受信装置200は、フィルタ制御装置100に加えて、アンテナ210と、RF処理ユニット220とを備えている。また、FM受信装置200は、適応フィルタユニット230と、遅延ユニット240と、アナログ処理ユニット250とを備えている。さらに、FM受信装置200は、スピーカユニット260と、入力ユニット270とを備えている。なお、適応フィルタユニット230が、適応フィルタ部としての機能を果たすようになっている。
上記のフィルタ制御装置100は、再生処理ユニット110と、制御ユニット120とを備えている。
ここで、再生処理ユニット110は、適応フィルタユニット230から送られた信号FLD、及び、遅延ユニット240から送られた信号DLDを受ける。そして、再生処理ユニット110は、信号FLD,DLDに対して検波処理を施し、検波結果を、検波信号DTD1,DTD2として、制御ユニット120へ送る。また、再生処理ユニット110は、信号FLDの検波結果に対してステレオ復調処理を施す。このステレオ復調結果が、信号DMDとして、アナログ処理ユニット250へ送られる。
なお、再生処理ユニット110の構成については、後述する。
また、制御ユニット120は、FM受信装置200の動作を統括制御する。この制御ユニット120の構成については、後述する。なお、制御ユニット120が、制御部としての機能を果たすようになっている。
上記のアンテナ210は、放送波を受信する。アンテナ210による受信結果は、受信信号RFSとして、RF処理ユニット220へ送られる。
上記のRF処理ユニット220は、制御ユニット120から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局の信号を受信信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット230及び遅延ユニット240へ送る。このRF処理ユニット220は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」とも呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット220は、ミキサ(混合器)と、中間周波フィルタ(以下、「IFフィルタ」とも呼ぶ)と、振幅安定化部と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
ここで、入力フィルタは、アンテナ210から送られた受信信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合する。
IFフィルタは、ミキサから出力された信号のうち、予め定められた中間周波数範囲の信号を選択して通過させる。こうしてIFフィルタを通過した信号は、信号IFSとして、フィルタ制御装置100及び振幅安定化部へ送られる。
振幅安定化部は、IFフィルタから送られた信号IFSの振幅を所定振幅に調整する。こうして振幅安定化された信号は、中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット230及び遅延ユニット240へ送られる。
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、制御ユニット120から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
上記の適応フィルタユニット230は、RF処理ユニット220から送られた中間周波信号IFDを受ける。そして、適応フィルタユニット230は、制御ユニット120から指定されたフィルタ制御FLCに従って、いわゆるマルチパスの発生による受信信号の歪みの除去等を行うためのフィルタリング処理を行う。適応フィルタユニット230によるフィルタリング処理結果は、信号FLDとして、フィルタ制御装置100へ送られる。
なお、適応フィルタユニット230の構成については、後述する。
上記の遅延ユニット240は、RF処理ユニット220から送られた中間周波信号IFDを受ける。そして、遅延ユニット240は、上述の適応フィルタユニット230のフィルタリング処理による遅延に対応する時間だけ、中間周波信号IFDを遅延させる。遅延ユニット240による遅延結果は、信号DLDとして、フィルタ制御装置100へ送られる。
上記のアナログ処理ユニット250は、フィルタ制御装置100から送られた信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット250は、フィルタ制御装置100による制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット260へ送る。
かかる機能を有するアナログ処理ユニット250は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット110から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるレフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果は音量調整部へ送られる。
また、音量調整部は、DA変換部から送られたLチャンネル及びRチャンネルのアナログ変換結果信号を受ける。そして、音量調整部は、フィルタ制御装置100からの音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による音量調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
また、パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット260へ送られる。
上記のスピーカユニット260は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット260は、アナログ処理ユニット250から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
上記の入力ユニット270は、FM受信装置200の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。入力ユニット270への入力結果は、入力データIPDとしてフィルタ制御装置100へ送られる。
《適応フィルタユニット230の構成》
次に、上記の適応フィルタユニット230の構成について説明する。この適応フィルタユニット230は、本実施形態では、IIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタとして構成され、図2に示されるように、加算器312と、直列接続された2N個の遅延器3131〜3132Nと、(2N+1)個の係数倍器3140〜3142Nと、加算器315、係数更新部316とを備えている。
上記の加算器312は、RF処理ユニット220から送られた中間周波信号IFD、及び、加算器315から送られた信号YFを受ける。そして、加算器312は、中間周波信号IFDと信号YFとを加算し、信号X0(T)を生成する。こうして生成された信号X0(T)は、遅延器3131、係数倍器3140及び係数更新部316へ送られる。
上記の遅延器313j(j=1〜2N)のそれぞれは、入力した信号Xj-1(T)を単位遅延時間τだけ遅延させ、信号Xj(T)として出力する。この結果、信号Xj(T)と信号X0(T)との関係は、次の(1)式で表される。
Xj(T)=X0(T−j・τ) …(1)
なお、本実施形態では、遅延器313jのそれぞれは、周期τの不図示の基準クロックに同期して信号Xj-1(T)をサンプリングして出力する。このため、単位遅延時間τの間、サンプリング結果が遅延器313jに保持されて、出力されるようになっている。ここで、単位遅延時間τは、信号周期の1/4となっている。
遅延器313jにより生成された信号Xj(T)は、係数倍器314jへ向けて送られる。ここで、遅延器313Nにより生成された信号XN(T)(=Y(T))は、信号FLDとして、再生処理ユニット110へも送られる。なお、係数倍器3140へは、上述したように、信号X0(T)が送られるようになっている。
上記の係数倍器314m(m=0〜2N)のそれぞれは、信号Xm(T)、及び、係数更新部316からのタップ係数Km(T)を受ける。そして、係数倍器314mは、信号Xm(T)とタップ係数Km(T)とを乗算する。この乗算の結果は、加算器315へ送られる。
上記の加算器315は、係数倍器3140〜3142Nによる乗算結果[X0(T)・K0(T)]〜[X2N(T)・K2N(T)]を受ける。そして、加算器315は、次の(2)式により、信号YF(T)を算出する。
YF(T)=X0(T)・K0(T)+…+X2N(T)・K2N(T) …(2)
こうして算出された信号YF(T)は、加算器312へ送られる。
上記の係数更新部316は、加算器312から送られた信号X0(T)、遅延器3131〜3132Nから送られた信号X1(T)〜X2N(T)を受ける。そして、係数更新部316は、制御ユニット120から送られたフィルタ制御FLCに従って、CMA(Constant Modulus Algorithm)アルゴリズムを使用してタップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。こうして算出されたタップ係数Km(T)(m=0〜2N)は、係数倍器314mへ送られる。
ここで、係数更新部316は、次の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。
ERR(T)=([Y(T)]2+[Y(T−τ)]2)1/2−VTH …(3)
Km(T−τ)=Km(T)−α・ERR(T)・Pm(T) …(4)
Pm(T)=Xm(T)・Y(T)+Xm(T−τ)・Y(T―τ) …(5)
(3)式における値VTHは所定の収束値であり、実験、シミュレーション、経験等により、予め定められる。また、(4)式における値αは、収束速度を調整するパラメータ値であり、制御ユニット120により指定される。ここで、値αが大きくなるほど、収束速度が速くなるようになっている。なお、以下の説明においては、値αを「収束係数α」と呼ぶ。
《再生処理ユニット110の構成》
次いで、上記の再生処理ユニット110の構成について説明する。この再生処理ユニット110は、図3に示されるように、検波部1111と、検波部1112と、ステレオ復調部113とを備えている。なお、検波部1111が、第1検波部の機能を果たすとともに、検波部1112が、第2検波部の機能を果たすようになっている。
上記の検波部1111は、適応フィルタユニット230から送られた信号FLDを受ける。そして、検波部1111は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DTD1を生成する。こうして生成された検波信号DTD1は、ステレオ復調部113及び制御ユニット120へ送られる。
上記の検波部1112は、遅延ユニット240から送られた信号DLDを受ける。そして、検波部1112は、信号DLDに対して、検波部1111の場合と同様の所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DTD2を生成する。こうして生成された検波信号DTD2は、制御ユニット120へ送られる。
上記のステレオ復調部113は、検波部1111から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、ステレオ復調部113は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を検波信号DTD1に対して施し、信号DMDを生成する。生成された信号DMDは、アナログ処理ユニット250へ送られる。
《制御ユニット120の構成》
次に、上記の制御ユニット120の構成について説明する。この制御ユニット120は、図4に示されるように、ローパスフィルタ(LPF)部1211S,1212Sと、ハイパスフィルタ(HPF)部1212Nとを備えている。また、制御ユニット120は、レベル検出部1220,1221S,1222S,1222Nと、処理制御部125とを備えている。
上記のLPF部1211Sは、フィルタ制御装置100の再生処理ユニット110から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、LPF部1211Sは、音声帯域(ステレオ用主チャンネルの信号に加えて、パイロット信号及びステレオ用副チャンネルの信号も含む)の成分を通過させる。LPF部1211Sを通過した信号PD1Sは、レベル検出部1221Sへ送られる。
上記のLPF部1212Sは、再生処理ユニット110から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、LPF部1212Sは、音声帯域の成分を通過させる。LPF部1212Sを通過した信号PD2Sは、レベル検出部1222Sへ送られる。
なお、LPF部1211S,1212Sの特性が、図5に示されている。
上記のHPF部1212Nは、再生処理ユニット110から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、HPF部1212Nは、音声帯域(ステレオ用主チャンネルの信号に加えて、パイロット信号及びステレオ用副チャンネルの信号も含む)よりも周波数が高い帯域の成分を通過させる(図6参照)。HPF部1212Nを通過した信号PD2Nは、レベル検出部1222Nへ送られる。
なお、HPF部1212Nの特性が、図6に示されている。
上記のレベル検出部1220は、RF処理ユニット220から送られた信号IFSを受ける。そして、レベル検出部1220は、信号IFSのレベルを検出する。このレベル検出部1220による検出結果は、選局されている希望局の放送波の電界強度を反映したものとなっている。レベル検出部1220による検出結果は、検出レベルSLVとして、処理制御部125へ送られる。
上記のレベル検出部1221Sは、LPF部1211Sから送られた信号PD1Sを受ける。そして、レベル検出部1221Sは、信号PD1Sのレベルを検出する。このレベル検出部1221Sによる検出結果は、検出レベルLV1Sとして、処理制御部125へ送られる。
上記のレベル検出部1222Sは、LPF部1212Sから送られた信号PD2Sを受ける。そして、レベル検出部1222Sは、信号PD2Sのレベルを検出する。このレベル検出部1222Sによる検出結果は、検出レベルLV2Sとして、処理制御部125へ送られる。
上記のレベル検出部1222Nは、HPF部1212Nから送られた信号PD2Nを受ける。そして、レベル検出部1222Nは、信号PD2Nのレベルを検出する。このレベル検出部1222Nによる検出結果は、信号PD2Sに含まれるノイズ成分の大きさを反映したものとなっている。レベル検出部1222Nによる検出結果は、検出レベルLV2Nとして、処理制御部125へ送られる。
上記の処理制御部125は、様々な処理を行うことにより、FM受信装置200の機能を実現させる。この処理制御部125は、入力ユニット270からの入力データIPDを解析する。そして、入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、処理制御部125は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット220へ送る。また、入力データIPDの内容が、音量調整態様を含む音量調整指定であった場合には、処理制御部125は、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット250へ送る。
また、処理制御部125は、レベル検出部1220,1221S,1222S,1222Nから送られた検出レベルSLV、LV1S,LV2S,LV2Nを受ける。そして、処理制御部125は、これらのレベルSLV、LV1S,LV2S,LV2Nに基づいて、適用フィルタユニット230のフィルタリング動作態様を決定する。決定されたフィルタリング動作態様は、フィルタ制御FLCとして、適応フィルタユニット230へ送られる。
ここで、処理制御部125は、希望局の放送波の電界強度を反映した検出レベルSLVに対応して定まる閾値TH1(SLV)の情報、及び、信号DTD2の音声帯域成分である信号PD2Sにおけるノイズ成分の大きさを反映した検出レベルLV2Nに対応して定まる閾値TH2(LV2N)の情報を、内部に保持している。そして、処理制御部125は、閾値TH1(SLV)の情報及び閾値TH2(LV2N)の情報を参照しつつ、検出レベルLV1Sと検出レベルLV2Sとレベル差ΔLVに基づいて、適用フィルタユニット230のフィルタリング動作態様を決定する。
なお、処理制御部125によるフィルタリング動作態様の決定処理の詳細については、後述する。
図7には、上述した閾値TH1(SLV)の例が示されている。この図7の例に示されるように、閾値TH1は、検出レベルSLVが高い場合には、小さな値となっている。これは、希望局の放送波の電界強度が高く、検出レベルSLVが高い場合には、一般に、信号PD2Sおけるノイズ成分の比率が小さく、適応フィルタユニット230により除去されるノイズ量が少ない、すなわち、レベル差ΔLVが小さいことに対応している。なお、本実施形態においては、検出レベルSLV2以上の場合には、閾値TH1を所定値TH11となるようにしている。
また、図7の例に示されるように、閾値TH1は、検出レベルSLVが値SLV2以下の場合には、検出レベルSLVが小さくなるほど閾値TH1が大きくなるようになっている。これは、希望局の放送波の電界強度が低くなるほど、一般に、信号PD2Sおけるノイズ成分の比率が大きくなり、適応フィルタユニット230により除去されるノイズ量が多くなっていく、すなわち、レベル差ΔLVが大きくなっていくことに対応している。
なお、本実施形態では、検出レベルSLVが、放送音声の有効な再生を行うことができない電界強度に対応する値SLV1未満については、閾値TH1は設定されないようになっている。また、本実施形態では、図7に示されるように、検出レベルSLVの変化に対応する閾値TH1の変化を、折れ線状の変化となるようにしている。
なお、本実施形態では、閾値TH1(SLV)の情報は、検出レベルLV2Nが所定の基準レベルLV2N,0である場合を想定して、実験、シミュレーション等により予め定められるようになっている。
図8には、上述した閾値TH2(LV2N)の例が示されている。なお、本実施形態では、図8に示されるように、検出レベルLV2Nの変化に対応する閾値TH2の変化を、折れ線状の変化となるようにしている。また、本実施形態では、閾値TH2(LV2N)の情報は、検出レベルLV2Nが所定の基準レベルLV2N,0である場合を値「0」として、値「0」に対する相対値が閾値TH2(LV2N)の値となるように、実験、シミュレーション等により予め定められるようになっている。
[動作]
以上のようにして構成されたFM受信装置200の動作について、フィルタ制御装置100の制御ユニット120における処理制御部125による適応フィルタユニット230の制御処理に主に着目して説明する。
前提として、入力ユニット270には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット220へ送られているものとする。また、入力ユニット270には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット250へ送られているものとする(図1参照)。
こうした状態で、アンテナ210で放送波を受信すると、受信信号RFSが、アンテナ210からRF処理ユニット220へ送られる。そして、RF処理ユニット220において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換され、信号IFSとして、制御ユニット120へ送られる。また、RF処理ユニット220において、信号IFSの振幅が調整された後、中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット230及び遅延ユニット240へ送られる(図1参照)。
中間周波信号IFDを受けた適応フィルタユニット230では、上述したようにして適応フィルタリング処理が施される。そして、適応フィルタユニット230は、適応フィルタリング処理の処理結果を、信号FLDとして、再生処理ユニット110へ送る(図1参照)。
また、中間周波信号IFDを受けた遅延ユニット240は、中間周波信号IFDに対して、適応フィルタユニット230における適応フィルタリング処理による処理遅延時間である時間Nτの遅延処理を施す。そして、遅延ユニット240は、遅延処理結果を、信号DLDとして、再生処理ユニット110及び制御ユニット120へ送る(図1参照)。
再生処理ユニット110では、検波部1111が信号FLDを受ける。信号FLDを受けた検波部1111は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施して検波信号DTD1を生成する。そして、検波部1111は、検波信号DTD1を、ステレオ復調部113及び制御ユニット120へ送る(図3参照)。
また、再生処理ユニット110では、検波部1112が信号DLDを受ける。信号DLDを受けた検波部1112は、信号DLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施して検波信号DTD2を生成する。そして、検波部1112は、検波信号DTD2を、制御ユニット120へ送る(図3参照)。
制御ユニット120では、LPF部1211Sが、検波部1111から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、LPF部1211Sは、検波信号DTD1における音声帯域の成分を選択的に通過させ、信号PD1Sとして、レベル検出部1221Sへ送る(図4参照)。
引き続き、レベル検出部1221Sが、信号PD1Sの信号レベルを検出する。そして、レベル検出部1221Sは、検出結果を、検出レベルLV1Sとして、処理制御部125へ送る(図4参照)。
また、制御ユニット120では、LPF部1212Sが、検波部1112から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、LPF部1212Sは、検波信号DTD2における音声帯域の成分を選択的に通過させ、信号PD2Sとして、レベル検出部1222Sへ送る(図4参照)。
引き続き、レベル検出部1222Sが、信号PD2Sの信号レベルを検出する。そして、レベル検出部1222Sは、検出結果を、検出レベルLV2Sとして、処理制御部125へ送る(図4参照)。
また、制御ユニット120では、HPF部1212Nが、検波部1112から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、HPF部1212Nは、検波信号DTD2における音声帯域よりも周波数が高い帯域の成分を選択的に通過させ、信号PD2Nとして、レベル検出部1222Nへ送る(図4参照)。
引き続き、レベル検出部1222Nが、信号PD2Nの信号レベルを検出する。そして、レベル検出部1222Nは、検出結果を、検出レベルLV2Nとして、処理制御部125へ送る(図4参照)。
さらに、制御ユニット120では、レベル検出部1220が、RF処理ユニット220から送られた信号IFSを受け、信号IFSの信号レベルを検出する。そして、レベル検出部1220は、検出結果を、検出レベルSLVとして、処理制御部125へ送る(図4参照)。
こうして検出された検出レベルSLV,LV1S,LV2S,LV2Nに基づいて、処理制御部125が、適応フィルタユニット230によるフィルタリング処理態様を決定する。かかる決定に際しては、図9に示されるように、まず、ステップS11において、処理制御部125が、検出レベルSLV,LV2Nを取得する。
次に、ステップS12において、処理制御部125は、検出レベルSLVが値SLV1未満であるか否かを判定する。この判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y)には、処理は、後述するステップS18へ進む。
ステップS12における判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)には、処理はステップS13へ進む。このステップS13では、処理制御部125が、閾値THを算出する。
かかる閾値THの算出に際して、処理制御部125は、まず、検出レベルSLVに基づき、上述した閾値TH1(SLV)の情報を参照して、閾値TH1を求める。引き続き、処理制御部125は、検出レベルLV2Nに基づき、上述した閾値TH2(LV2N)の情報を参照して、閾値TH2を求める。そして、処理制御部125は、次の(6)式により、閾値THを算出する。
TH=TH1+TH2 …(6)
次に、ステップS14において、処理制御部125が、検出レベルLV1S,LV2Sを取得する。引き続き、ステップS14において、処理制御部125が、次の(7)式により、レベル差ΔLVを算出する。
ΔLV=LV2S−LV1S …(7)
次いで、ステップS16において、処理制御部125は、レベル差ΔLVが閾値THより大きいか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS16:N)には、処理はステップS17へ進む。
ステップS17では、処理制御部125が、収束速度を高めるために、収束係数を値α1に決定する。そして、処理制御部125は、現時点において適応フィルタユニット230に対して指定している収束係数が値α1ではない場合には、決定された値α1を収束係数として採用すべき旨のフィルタ制御FLCを適応フィルタユニット230へ送る。この結果、適応フィルタユニット230は、指定された値α1を用いて、適応フィルタリング処理を行う。こうしてステップS17の処理が終了すると、処理はステップS11へ戻る。
ステップS16における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS16:Y)には、処理はステップS18へ進む。このステップS18では、処理制御部125が、収束速度を低めるために、収束係数を値α2(<α1)に決定する。そして、処理制御部125は、現時点において適応フィルタユニット230に対して指定している収束係数が値α1である場合には、決定された値α2を収束係数として採用すべき旨のフィルタ制御FLCを適応フィルタユニット230へ送る。この結果、適応フィルタユニット230は、指定された値α2を用いて、適応フィルタリング処理を行う。こうしてステップS18の処理が終了すると、処理はステップS11へ戻る。
以後、上記のステップS11〜S18の処理が繰り返され、処理制御部125による適応フィルタユニット230の制御が実行される。こうした処理制御部125による制御のもとで実行される適応フィルタユニット230による適応フィルタリング処理の結果の検波結果である検波信号DTD1が、ステレオ復調部113へ送られる(図3参照)。
検波信号DTD1を受けたステレオ復調部113は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、検波信号DTD1に対して施す。そして、ステレオ復調部113は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット250へ送る(図3参照)。
再生処理ユニット110から送られた信号DMDを受けたアナログ処理ユニット250では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット260へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット260が、アナログ処理ユニット250からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
以上説明したように、本実施形態では、制御ユニット120が、希望局が送出した放送波の電界強度と、ノイズレベルとに基づいて、閾値THを決定する。かかる閾値THの決定に際して、制御ユニット120は、当該電界強度が低くても、ノイズ成分が少なく、希望局の放送音声の再生品質を確保できる場合には、閾値THが過度に大きくならないようにする。一方、制御ユニット120は、当該電界強度が高くとも、ノイズ成分が多く、希望局の放送音声以外を再生してしまう場合には、閾値THが過度に大きくならないようにする。
また、制御ユニット120が、適応フィルタユニット230による中間周波信号IFDに対する適応フィルタリング処理結果を検波した検波信号DTD1と、遅延ユニット240による中間周波信号IFDに対する遅延処理結果を検波した検波信号DTD2とのレベル差ΔLVを算出する。そして、制御ユニット120が、レベル差ΔLVと、閾値THとの大小関係に応じて、適応フィルタユニット230のフィルタリング動作の収束速度を変化させる。すなわち、制御ユニット120は、レベル差ΔLVが閾値TH以下の場合には、収束速度を高めるための収束係数の値α1を適応フィルタユニット230に対して指定し、レベル差ΔLVが閾値THより大きな場合には、収束速度を低めるための収束係数の値α2を適応フィルタユニット230に対して指定する。
したがって、本実施形態によれば、聴取者における聴感上の違和感の発生の抑制と、良質な再生音声の出力との調和とを図ることができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、ノイズ成分の多さを評価するために、適応フィルタリング処理がなされていない中間周波信号の検波結果における音声帯域外の高周波成分の信号レベルを検出するようにした。これに対し、適応フィルタリング処理がなされている中間周波信号の検波結果における音声帯域外の高周波成分の信号レベルを検出するようにしてもよい。この場合には、適応フィルタリング処理におけるビート信号への収束を監視することもできる。
すなわち、希望局信号が弱いときに当該希望局信号と比べて強いビート信号が存在すると、適応フィルタでは、ビート信号に収束する周波数特性となる方向にフィルタ係数が更新される。そして、適応フィルタリング処理におけるビート信号への収束が進んでしまうと、希望局の放送波に対応する音声ばかりか、ノイズ音も殆ど出力されない無音状態となってしまう。かかるビート信号への収束による無音状態では、適応フィルタを通過した高周波成分の信号レベルが、希望局信号の信号レベルの割りに非常に低くなることが特徴となっている。
そこで、ビート信号への収束による無音状態の発生を防止するため、上述した実施形態と同様に、希望局信号の信号レベルを検出するとともに、適応フィルタリング処理がなされている中間周波信号の検波結果における音声帯域外の高周波成分の信号レベルを検出するようにする。そして、希望局信号の信号レベルの割りに当該高周波成分の信号レベルが低くなっている場合には、収束係数の値を小さくしたり、適応フィルタリング処理を中断する制御を行うようにする。かかる制御により、ビート信号への収束による無音状態の発生を防止することができる。
また、上記の実施形態では、希望局が送出した放送波の電界強度と、ノイズレベルとに基づいて、閾値THを決定するようにした。これに対し、当該電界強度及び当該ノイズレベルの一方に基づいて閾値を決定するようにした。
また、上記の実施形態では、ノイズレベルの評価のための音声帯域よりも周波数の高い帯域の成分の抽出に際して、HPFを採用した。これに対し、バンドパスフィルタ(BPF)を採用し、音声帯域よりも周波数の高い帯域の一部の周波数範囲を抽出し、抽出された成分の信号レベルを検出するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、ノイズレベルの評価のための音声帯域よりも周波数の高い帯域の成分の信号レベルを検出し、その検出結果を利用するようにした。これに対し、マルチパスノイズレベル、周波数軸上における隣接局の放送波の存在に伴う隣接妨害成分のレベル等の少なくとも1つを更に検出し、その検出結果を更に利用してノイズレベルを評価するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、レベル差ΔLVが閾値THより大きな場合、及び、希望局の電界強度が再生出力に適さないほど低い場合に、収束速度を低めるための収束係数の値を適応フィルタユニットに対して指定するようにした。これに対し、レベル差ΔLVが閾値THより大きな場合、及び、希望局の電界強度が再生出力に適さないほど低い場合に、適応フィルタユニットによるフィルタリング処理を停止させるようにしてもよい。また、レベル差ΔLVが閾値THより大きな場合には、収束速度を低めるための収束係数の値を適応フィルタユニットに対して指定するとともに、希望局の電界強度が再生出力に適さないほど低い場合には、適応フィルタユニットによるフィルタリング処理を停止させるようにしてもよい。
なお、上記の実施形態における再生処理ユニット110及び制御ユニット120を、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えた演算部としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。