JP5412300B2 - ガス吹き込みランス - Google Patents

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Description

本発明は溶鋼等の金属溶湯に酸素ガスやアルゴンガス等のガスを吹き込むガス吹き込みランスに関する。ランスは、金属溶湯に浸漬されつつその湯面に沿って延設されている部分をもつ構造でも良いし、あるいは、湯面に対してほぼ垂直方向に沿って金属溶湯に浸漬される構造でも良い。
ガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体と、芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、芯体および耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ酸素ガスやアルゴンガス等のガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを有する(特許文献1,2)。一般的には、耐火物層は芯体を被覆するキャスタブル層で形成されている。上記したランスによれば、耐久性を更に向上させることが要請されている。
特開2008−121072号公報 特開2008−101244号公報
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、耐久性および寿命を更に高め得るのに有利なガス吹き込みランスを提供することを課題とする。
本発明に係るガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体と、前記芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、前記芯体および前記耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを具備するランスにおいて、
前記芯体は前記第1ガス通路を形成するパイプ状の金属で構成され、所定断面形状の主要部と前記第1ガス吹出口を持ち前記主要部と異なる長円形の異形断面を持つ先端部と前記主要部と前記先端部との間にあり前記所定断面から前記異形断面に移行する傾斜部とからなり、
前記耐火物層は、前記先端部と前記傾斜部の外周面に嵌合保持されるよう前記先端部が挿通する異形孔を持つ円盤ブロック状の定形れんが部と、前記定形れんが部前記先端部前記傾斜部および前記主要部を被覆するキャスタブル層とからなり、
前記定形れんが部前記先端部及び前記傾斜部を覆う前記キャスタブル層の先端部分はアルミナーマグネシアーカーボン系の耐火物で形成されている、
ことを特徴とする
ランスの使用時には、ランスの先端部分である定形れんが部、先端部及び傾斜部を覆うキャスタブル層の先端部分はアルミナーマグネシアーカーボン系の耐火物で形成されている先端キャスタブル層が金属溶湯に浸漬または接近された状態で、第1ガス吹出口から第1ガスが金属溶湯に吹き出される。キャスタブル層は、流動性をもつスラリー状の耐火物を乾燥固化させたものである。先端キャスタブル層は、アルミナ−マグネシア−カ−ボンで形成されているため、高い耐溶損性をもつ。ここで、カーボンは金属溶湯に対して濡れ性が低いため、金属溶湯との直接接触性を低下させることができる。更にカーボンは伝熱性が良いため、先端キャスタブル層における温度の局所的な過熱を抑制させるのに有利である。このようにアルミナ−マグネシア−カ−ボンで形成されている先端キャスタブル層は、高い耐溶損性をもち、耐久性および寿命を向上できる。
本発明によれば、耐溶損性を高め、耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することができる。
基本形態に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスおよび第2ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。 基本形態に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。 基本形態に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線方向に沿って切断した縦断面図である。 基本形態に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスおよび第2ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。 基本形態1に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。 基本形態1に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線方向に沿って切断した縦断面図である。 実施形態2に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。 実施形態2に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線方向に沿って切断した縦断面図である。 実施形態3に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線方向に沿って切断した縦断面図である。 実施形態4に係り、ランスの先端キャスタブル層をこれの軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
先端キャスタブル層はランスの先端を被覆しており、アルミナ−マグネシア−カ−ボン系で形成されている。アルミナは耐溶損性の向上に寄与できる。マグネシアは耐溶損性の向上、耐割れ性の向上に寄与できる。ここで、先端キャスタブル層の全体を100%とするとき、質量%で、例えば、マグネシアは1〜55%、殊に5〜45%、10〜35%が挙げられ、カ−ボンは0.1〜10%、殊に1〜6%、2〜5%にできる。残部はアルミナにできる。カーボンが上記値よりも低いと、金属溶湯との濡れ性が高くなり、耐溶損性が低下し、好ましくない。カーボンが上記値よりも高いと、アルミナやマグネシウムの割合が過剰に低下し、好ましくない。カーボンとしては、ピッチ、コークス、カーボンブラック、黒鉛が例示できる。
定形れんが部は焼成れんが、プレキャストブロック、プレキャストブロックを焼成させたもの、不焼成れんがで形成できる。定形れんが部が焼成工程を経ている場合には、その定形れんが部は、キャスタブル層よりも強度および耐熱性に優れている。このような定形れんが部がランスの先端部に先端キャスタブル層に被覆されつつ存在しているため、ランスのうち金属溶湯に浸漬または接近されるランス先端部の耐久性および寿命を更に一層高め得る。
芯体は第1ガス通路を形成するパイプ状の金属で構成され、所定断面形状の主要部と第1ガス吹出口を持ち主要部と異なる長円形の異形断面を持つ先端部と主要部と先端部との間にあり所定断面から異形断面に移行する傾斜部とからなる。定形れんが部は芯体の先端部と傾斜部の外周面に嵌合保持されるよう先端部が挿通する異形孔を持つ円盤ブロック状である。
吸熱作用を発揮できる第2ガス(例えばプロパンガス、メタンガス、エタンガス、ブタンガス等の炭化水素系のガス)を金属溶湯に向けて吹き出す第2ガス吹出口をもつ第2ガス通路がランスに設けられていることが好ましい。ここで、芯体の軸長方向において、第2ガス通路は先端キャスタブル層を通過することが好ましい。先端キャスタブル層はカーボンを含有しているため、先端キャスタブル層における伝熱性を高めことができる。この場合、吸熱作用を発揮できる第2ガスが第2ガス通路を流れて吸熱作用を発揮させれば、先端キャスタブル層に含まれている伝熱性が高いカーボンを介して、先端キャスタブル層を効果的に冷やすことができ、先端キャスタブル層の耐久性、長寿命化に一層貢献できる。
本発明の芯体は第1ガス通路をもつパイプ状の金属で構成され、所定断面形状の主要部と第1ガス吹出口を持ち主要部と異なる長円形の異形断面を持つ先端部と主要部と先端部との間にあり所定断面から異形断面に移行する傾斜部とからなっている。そして定形れんが部は芯体の先端部と傾斜部の外周面に嵌合保持されるよう先端部が挿通する異形孔を持つ円盤ブロック状である。そして定形れんが部は
芯体の先端部と傾斜部の外周面に嵌合保持されている。このため定形れんが部の回り止めを図り得、定形れんが部を芯体の先端部に安定的に保持できる。好ましくは、定形れんが部を芯体に保持する保持力を高める保持要素が設けられている。この場合、定形れんが部を芯体に安定的に保持できる。好ましくは、吸熱作用を発揮できる第2ガスを溶湯に向けて吹き出す第2ガス吹出口をもつ第2ガス通路が設けられており、芯体の軸長方向において、第2ガス通路は定形れんが部の位置を通過する。この場合、定形れんが部が冷却され、定形れんが部の過剰高温化が抑制され、定形れんが部の耐久性を向上できる。
本発明のランスの前提となる基本形態
図1〜図3は、本発明のランスの前提となる基本形態の概念を示す。この基本形態のガス吹き込みランス1は、溶鋼等の金属溶湯Mに酸素ガスまたはアルゴンガス(不活性ガス)等の第1ガスを吹き込むものである。ランス1は、長手方向に沿って延びる軸線P1を持つランス本体11と、ランス本体11の軸線P1に対して角度θで曲成されている軸線P2をもつ先端部12とをもつ。ランス1は、長手方向に延びる金属(例えば鋼)製の芯体2と、芯体2の外周壁面側に被覆され少なくとも先端部が金属溶湯Mに浸漬される耐火物層3と、芯体2および耐火物層3のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯Mに向けて吹き出す第1ガス吹出口41をもつ第1ガス通路4とを有する。
第1ガスを吹き出す第1ガス吹出口41は、ランス1の先端部12の軸長方向に沿って湯面M1に沿って第1ガスを金属溶湯Mに向けて噴出させるものであり、先端部12の軸長方向の端面12fの中央域において開口する。場合によっては、第1ガス吹出口41はランス1の先端部12の外周面において開口していても良い。芯体2は、互いに同軸的に配置された金属(例えば鋼)製の内パイプ51および金属(例えば鋼)製の外パイプ52を有する。芯体2を構成する内パイプ51の内周壁面は、軸長方向に沿って第1ガスが流れる第1ガス通路4を形成する。第1ガスは酸素を含むガス、空気またはアルゴンガスを採用できる。第1ガスが酸素を含むガスである場合には、取鍋等の容器に貯留されている金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。反応部分では酸化反応により金属溶湯は昇温される。第1ガスがアルゴンガスである場合には、取鍋等の容器に貯留されている金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。第1ガス通路4の他端部側には、第1ガスを第1ガス通路4に供給する第1ガス供給口43が形成されている。第1ガス供給口43は第1ガス供給源400に繋がる。
耐火物層3は、芯体2の外側部を被覆する耐火物で形成されたキャスタブル層32を有する。キャスタブル層32は、バインダ(無機系バインダまたは有機系バインダ)を含む流動性をもつスラリー状の耐火物を芯体3の外周壁面に被覆した状態で乾燥固化させたものである。キャスタブル層32は、芯体2の長手方向において先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、軸長方向において本キャスタブル層320の先端側に位置する先端キャスタブル層322とを有する。
本キャスタブル層320の外周面320pは軸線P1,P2の回りを包囲する。先端キャスタブル層322の外周面322pは軸線P1,P2の回りを包囲する。本キャスタブル層320は耐溶性、コストなどを考慮して、例えばアルミナ系、または、アルミナ−シリカ系で形成されている。アルミナ−シリカ系の場合には、本キャスタブル層320の全体を100%とするとき、質量%で、アルミナは30〜90%、殊に50〜80%にでき、シリカは10〜70%、殊に20〜40%にできる。但し、配合割合はこれらに限定されるものではない。
先端キャスタブル層322は、本キャスタブル層320よりも高い耐溶損性をもつことが好ましい。耐溶損性の確保を考慮すると、先端キャスタブル層322は、アルミナ−マグネシア−カーボン系の耐火物で形成されていることが好ましい。この場合、先端キャスタブル層の全体を100質量%とするとき、アルミナは70〜95%、殊に80〜90%、マグネシアは1〜50%、殊に3〜30%、カ−ボンは0.5〜5%、殊に1〜3%にできる。カーボンが上記値よりも低いと、金属溶湯との濡れ性が高くなり、好ましくない。カーボンが上記値よりも高いと、伝熱性が過剰に高くなり、耐久性が低下するおそれがある。先端キャスタブル層322においてカーボンが含有されていると、カーボンが金属溶湯に対して濡れ性が低いため、高い耐溶損性を発揮でき、耐久性および寿命を向上できる。更に、カーボンは高い伝熱性を有するため、先端キャスタブル層322の均熱化に一層貢献でき、耐溶損性を一層高めるのに有利である。
基本形態によれば、先端キャスタブル層322は例えば次のよう形成できる。一例として、粒径10mm以下のアルミナ90質量%、粒径5mm以下のマグネシア5質量%、カーボン(黒鉛)2質量%と、残部としてバインダとしてセメント(3質量%)を、ペレタイザーを用いて混合して骨材を製造することができる。この骨材に所定の水を混練した後、振動かけながら流し込みを行なうことができる。24時間経過した後、脱枠して、300℃×48時間乾燥することができる。このようにして先端キャスタブル層322を形成できる。本キャスタブル層320は次のようにして形成できる。粒径10mm以下のアルミナ70質量%、粒径5mm以下のシリカ25質量%、バインダとしてセメント5質量%を配合して所定の水を混練した後、振動かけながら流込みを行った。24時間後脱枠して、300℃×48時間乾燥した。このようにして本キャスタブル層320を形成できる。
ここで、図2は芯体2の先端部12の軸線P2に対して直角方向に沿って切断された横断面を示す。芯体2の先端部12の横断面は、芯体2の先端部12以外の部分に対して異なる異形状をなす異形状部22を有する。外パイプ52の縮径部分52rは、芯体2の横断面において、偏平化された長円形状をなしており、長径DLおよび短径DSをもつ。このような異形状部22により、溶湯Mに向けて第1ガス吹出口41から噴出される第1ガスの流速の調整を期待できる。図1から理解できるように、芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから軸長方向において離れるにつれて(ランス1の基端側に向かうにつれて)拡径するように傾斜する偏平なほぼ円錐状の傾斜部2rをもつ。芯体2の先端部2fにおいて、第2ガス通路61を流れる第2ガスが、傾斜部2rを構成する外パイプ52の縮径部分52rに衝突したり接触したりする度合いが高くなる。この場合、第2ガスの吸熱作用を外パイプ52の縮径部分52rに効率よく伝達できる効果を期待でき、異形状部22,その外周側の先端キャスタブル層322,定形れんが部31の長寿命化に貢献できる。また、断面長円形状または楕円形状の異形状部22により、これが断面真円である場合に比較して、異形状部22の表面積を増加でき、先端キャスタブル層322,定形れんが部31への伝熱面積を増加でき、これらの長寿命化に更に貢献できる。異形状部22が設けられているため、第1ガス供給口43が断面真円である場合に比較して、第1ガス供給口43の開口面積を調整でき、先端キャスタブル層322等の組成に合わせて第1ガス供給口43からのガス吹き込み速度を調整できる。
基本形態によれば、図3に示すように、冷却作用である吸熱作用を発揮できる第2ガスを溶湯Mに向けて吹き出す第2ガス吹出口61をもつ第2ガス通路6がランス1の内部に設けられている。第2ガスはプロパンガスとされていることが好ましいが、冷却作用を発揮できるガスであれば何でも良い。更に、アルゴンガス等の不活性ガスとしても良い。プロパンガスは溶鋼等の高温の金属溶湯Mの熱の影響で熱分解されると、吸熱作用を果たし、その周囲を冷却させ、金属製の芯体2の先端部2fの先端キャスタブル層322付近を冷却させることが好ましい。吸熱のため冷却作用を発揮する第2ガスを吹き出す第2ガス吹出口61は、第1ガス吹出口41をリング状に包囲する。このため、第1ガス吹出口41から吹き出される第1ガスが酸素ガスまたは酸素含有ガスである場合、酸素に起因する酸化反応に伴う第1ガス吹出口41付近の過剰高温化現象を抑制させるのに貢献できる。図2に示すように、偏平化された第1ガス吹出口41および第2ガス吹出口61については短径方向が金属溶湯Mの深さ方向に沿っており、長径方向が湯面M1に沿っている。この場合、湯面M1に対して深さ寸法Hxが確保される。よって第1ガス吹出口41および第2ガス吹出口61を金属溶湯Mの湯面M1内に浸漬させつつ、第1ガス吹出口41および第2ガス吹出口61からガスが吹き出すとき、湯面M1の過剰揺動を抑制させるのに貢献できる。第1ガス吹出口41および第2ガス吹出口61が深さ方向に短径となるように偏平化されているため、先端キャスタブル層322の厚さt1(先端キャスタブル層322のうち金属溶湯Mの深さ方向の厚さ)が増加するためである。
図3に示すように、第2ガス通路6は、内パイプ51の外周壁面と外パイプ52の内周壁面との間において芯体2の長手方向(軸線P1,P2が延びる方向)に沿って、第2ガスを通過させ得るように形成されている。第2ガス通路6は芯体2の軸線P1,P2の回りを1周するように周方向に沿って筒形状に形成されている。芯体2の長手方向において、第2ガス通路6は先端キャスタブル層322の設置位置K1を通過する。第2ガス通路6の第2ガス吹出口61はランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。第2ガス通路6のうち金属溶湯Mと反対側の他端部側には、第2ガスを第2ガス通路6に供給する第2ガス供給口が形成されている。第2ガス供給口は第2ガス供給源600に繋がる。この場合、第2ガス通路6を通過する第2ガスの吸熱反応により、先端キャスタブル層322の過剰高温化が抑制される。従って、先端キャスタブル層322の耐溶損性、耐久性および寿命が一層向上される。
基本形態によれば、ランス1の使用時には、図1に示すように、ランス1の先端部12が金属溶湯Mの内部に浸漬される。図1に示すように、一般的には、ランス1の先端部は金属溶湯Mの湯面M1とほぼ平行に維持されることが好ましい。この状態で、酸素ガスまたはアルゴンガスからなる第1ガスが第1ガス通路4に供給される。第1ガスは、ランス1の先端部12の端面12fの第1ガス吹出口41から金属溶湯Mに向けて吹き出される。前述したように第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスが好ましい。第1ガスが酸素ガスである場合には、金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。この場合も酸素ガスに起因する酸化反応(発熱反応)により、第1ガス吹出口41付近が過熱され易いため、先端キャスタブル層322の耐溶損性が要請される。また、第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌され、金属溶湯におけるスラグなどを浮上させる。
また本基本形態によれば、吸熱作用を発揮させる第2ガスが第2ガス通路6に供給され、第2ガスは第2ガス吹出口61から金属溶湯Mに向けて吹き出される。第2ガスは高温の金属溶湯Mから受熱し、第2ガスの熱分解現象は、第2ガス通路6の第2ガス吹出口61および先端キャスタブル層322付近において発生するように設定されていることがこのましい。このように吸熱作用を発揮できる第2ガスが金属溶湯Mの熱を受熱して熱分解されるため、第2ガス通路6の第2ガス吹出口61および先端キャスタブル層322付近において吸熱作用が発生する。吸熱作用により金属製の内パイプ51および外パイプ52は冷却される。ひいては外パイプ52の伝熱により先端キャスタブル層322の内周側も冷却されるため、先端キャスタブル層322の全体の冷却が促進される。これにより先端キャスタブル層322の耐溶損性および耐久性が一層向上され、先端キャスタブル層322の長寿命化を一層図り得る。先端キャスタブル層322を構成する耐火物に含まれているカーボンの損傷および劣化を良好に抑制できる。カーボンは高い伝熱性を有するため、第2ガスによる吸熱作用がカーボンに伝達されるためである。
図2に示すように、芯体2の先端部2fは偏平化されているため、先端部2fの横断面が真円形状である場合に比較して、先端部2fの表面積を増加できる。この場合、第2ガスの吸熱作用による冷却作用をランス2の先端部2fに効率よく及ぼすことができ、ひいては先端キャスタブル層322を効率よく冷却させることができる。金属製のパイプ51,52も伝熱性が良いため、吸熱作用を先端キャスタブル層322に良好に伝達できる。図3に示すように、芯体2の先端部2fには、係合部材14が溶接または固定具等で固定されている。係合部材14はスタッド棒材で形成されている。係合部材14により先端キャスタブル層322の脱落が抑制される。上記したように芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて拡径方向に傾斜する傾斜部2rをもつ。ここで、第2ガス通路61を流れる第2ガスが、傾斜部2rを構成する外パイプ52の縮径部分52rに衝突したり接触したりする度合いが高くなる。この場合、第2ガスの吸熱作用を外パイプ52の縮径部分52rに効率よく伝達できる効果を期待でき、異形状部22,その外周側の先端キャスタブル層322の長寿命化に貢献できる。また、断面長円形状または楕円形状の異形状部22により、これが断面真円である場合に比較して、異形状部22の表面積を増加でき、先端キャスタブル層322,定形れんが部31への伝熱面積を増加でき、これらの長寿命化に更に貢献できる。
なお本基本形態によれば、第1ガス通路4を流れる第1ガスが脱硫剤および脱燐剤等の粉粒状の固形物を含有することがある。この場合、ランス1の曲成部13(図1参照)において内パイプ51の壁が摩滅するおそれがある。そこで、ランス1の曲成部13(図1参照)において、上記した摩滅を抑えるべく、第1ガス通路4を形成する内パイプ51の内周壁面のうち曲げ外周51x側には、複数の突起135が長手方向に沿って形成されている。
本発明の実施形態1
図4〜図6は本発明の実施形態1を示す。本実施形態は前記した基本形態と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図4に示すように、耐火物層3は、金属溶湯Mに浸漬されるように芯体2の先端部2fに保持された定形れんが部31と、少なくとも定形れんが部31の外側を被覆するキャスタブル層32とを有する。キャスタブル層32は、芯体2の長手方向において先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、本キャスタブル層320の先端側の先端キャスタブル層322とを有する。定形れんが部31の材質は特に限定されるものではなく、アルミナ−クロム系、アルミナ系、マグネシア系等を例示できる。定形れんが部31の材質と先端キャスタブル層322の材質とは同一でも良いし、異なる材質でも良い。定形れんが部31は焼成温度領域において焼成される焼成工程を経ているため、先端キャスタブル層322等のキャスタブル層32よりも高い強度および高い耐溶損性をもつ。このため金属溶湯Mに対してランス1の先端部12の耐久性を向上できる。
図4に示すように、本キャスタブル層320の外周面320pは、軸線P1,P2の回りを包囲する。先端キャスタブル層322の外周面322pは軸線P2の回りを包囲する。本キャスタブル層320はアルミナ、または、アルミナ−シリカ系で形成されているが、これに限定されるものではない。先端キャスタブル層322は、本キャスタブル層320よりも高い耐溶損性をもつことが好ましい。耐溶損性の確保を考慮すると、先端キャスタブル層322は、実施形態1と同様に、アルミナ−マグネシア−カーボン系で形成されている。この場合、カーボンが金属溶湯に対して濡れ性が低いため、高い耐溶損性を発揮でき、耐久性および寿命を向上できる。更に、カーボンは高い伝熱性を有するため、キャスタブル層32の均熱化に貢献でき、耐溶損性を高めるのに有利である。
図6に示すように、定形れんが部31は、芯体2の先端部2fの軸線P2回りを包囲する外周壁面311と、内周壁面312と、ランス1の先方に背向する第1軸端面313と、ランス1の先方に対面する第2軸端面314とをもつ。なお、図6から理解できるように、定形れんが部31の外周壁面311は、軸長方向においてランス1の先端部12の端面12fに向かうにつれて外径が小さくなるような円錐面形状とされている。但し、外周壁面311は、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて外径が小さくなるようなほぼ円錐面形状とされていても良い。
ここで、図5は芯体2の先端部12の軸線P2に対して直角方向に沿って切断された横断面を示す。図5に示すように、芯体2の先端部12の横断面は、芯体2の先端部12以外の部分に対して異なる異形状をなす異形状部22を有する。異形状部22は、芯体2の横断面において、偏平化された長円形状をなしており、長径DLおよび短径DSをもつ。定形れんが部31の中央域には、芯体2の異形状部22に嵌合される偏平化された異形孔330が形成されている。異形孔330は、芯体2の先端部12の異形状部22と同一形状、近似形状または相似形状をなす。
定形れんが部31は円盤ブロック状をなしており、定形れんが部31の偏平化された異形孔330は、芯体2の先端部2fに形成されている偏平化された異形状部22の外周側に嵌合されて保持されている。この場合、ランスの製造時において、定形れんが部31を芯体2の先端部2fに対して矢印W1方向(図6参照)に挿入する。定形れんが部31の姿勢を確保する等のため、異形孔330の内壁面と異形状部22の外周面との間には、モルタル等の耐火材料を装填することが好ましい。図6から理解できるように、芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて拡径方向に傾斜する傾斜部2rをもつ。この場合、軸線P2が延びる方向において、芯体2の傾斜部2rにより定形れんが部31が位置決めされる。従って、ランスの製造時において、定形れんが部31から先端面12fに至るまでの距離LA(図6参照)を正確に維持できる。異形状部22が設けられているため、第1ガス供給口43が断面真円である場合に比較して、第1ガス供給口43の開口面積を調整でき、先端キャスタブル層322、定形れんが部31等の組成に合わせて第1ガス供給口43からのガス吹き込み速度を調整できる。
図5に示すように、定形れんが部31の異形孔330は、横断面において偏平形状の長円形状をなしており、長径DLおよび短径DSをもつ。定形れんが部31の異形孔330および芯体2の異形状部22が互いに嵌合される。このため定形れんが部31が位置決めされ、芯体2の軸線P2の回りで空転することが止められ、定形れんが部31の回り止めが図られる。これによりリング形状をなす定形れんが部31が芯体2の先端部2fの外周側に安定的に保持される。この場合、定形れんが部31の耐久性を高めるのに貢献できる。芯体2の先端部2fに定形れんが部31が保持されている状態で、先端キャスタブル層322を構成する流動性をもつキャスタブル材を被覆させて乾燥固化させ、先端キャスタブル層322を形成することが好ましい。
本実施形態においても、吸熱作用を発揮できる第2ガスを溶湯Mに向けて吹き出す第2ガス吹出口61をもつ第2ガス通路6がランス1の内部に設けられている。第2ガスは熱分解されると吸熱作用を果たし、その周囲を冷却させ、芯体2の先端部2f付近を冷却させる。第2ガス通路6は、内パイプ51の外周壁面と外パイプ52の内周壁面との間において芯体2の長手方向(軸線P1,P2が延びる方向)に沿って、第2ガスを通過させ得るように形成されている。第2ガス通路6は芯体2の軸線P1,P2の回りを1周するように周方向に沿って筒形状に形成されている。芯体2の長手方向において、第2ガス通路6は定形れんが部31の設置位置K1を通過する。第2ガス通路6の第2ガス吹出口61はランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。この場合、第2ガス通路6を通過する第2ガスの吸熱反応により、定形れんが部31の過剰高温化が抑制される。従って、定形れんが部31の耐久性および寿命が向上される。定形れんが部31は同一材質のキャスタブル材よりも緻密性を有するため、緻密性に起因する伝熱性を期待でき、定形れんが部31の耐久性を高め得る。
図6に示すように、芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて拡径方向に傾斜する傾斜部2rをもつ。この場合、第2ガス通路61を流れる第2ガスが、傾斜部2rを構成する外パイプ52の縮径部分52rに衝突したり接触したりする度合いが高くなる。この場合、第2ガスの吸熱作用を第2ガスを介して外パイプ52の縮径部分52rに効率よく伝達できる効果を期待でき、異形状部22,その外周側の先端キャスタブル層322の長寿命化に貢献できる。また、断面長円形状または楕円形状の異形状部22により、これが断面真円である場合に比較して、異形状部22の表面積を増加でき、先端キャスタブル層322,定形れんが部31への伝熱面積を増加でき、これらの長寿命化に更に貢献できる。
本実施形態によれば、ランス1の使用時には、図4に示すように、ランス1の先端部12が金属溶湯Mの内部に浸漬される。図4に示すように、一般的には、ランス1の先端部は金属溶湯Mの湯面M1とほぼ平行に維持されることが好ましい。この状態で、酸素ガスまたはアルゴンガスからなる第1ガスが第1ガス通路4に供給される。第1ガスは、ランス1の先端部12の端面12fの第1ガス吹出口41から金属溶湯Mに向けて吹き出される。前述したように第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスが好ましい。第1ガスが酸素ガスである場合には、金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。この場合、酸化反応により金属溶湯のうち反応部位が高温化する。第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。
また吸熱作用を発揮させる第2ガスが第2ガス通路6に供給され、第2ガスは第2ガス吹出口61から金属溶湯Mに向けて吹き出される。第2ガスは高温の金属溶湯Mから受熱し、第2ガスの熱分解現象は先端キャスタブル層322,第2ガス通路6の異形状部22および定形れんが部31のうちの少なくとも一方付近において発生するように設定されている。このように第2ガスが金属溶湯Mの熱を受熱して熱分解されるため、第2ガス通路6の第2ガス吹出口61付近において吸熱作用が発生する。吸熱作用により金属製の内パイプ51および外パイプ52は冷却される。ひいては伝熱材料でもある金属製の外パイプ52の伝熱により定形れんが部31の内周側も冷却されるため、定形れんが部31の全体の冷却が促進される。これにより定形れんが部31の耐久性が一層向上され、定形れんが部31の長寿命化を図り得る。係合部材14、これに関する溶接部または固定具等の冷却も促進される。芯体2の先端部2fには、定形れんが部31の先方に位置するように係合部材14が溶接または固定具等で固定されている。先端キャスタブル層322が金属溶湯Mによりかなり損傷した場合であっても、係合部材14により定形れんが部31がランス1の芯体2の先端部2fから脱落することが抑制される。
本実施形態によれば、前述したように、定形れんが部31の偏平化された異形孔330は、芯体2の先端部2fに形成されている偏平化された異形状部22の外周側に嵌合されている。異形状部22および異形孔330の双方は偏平化されているため、定形れんが部330の外周壁面311の径方向の外径サイズを抑制させるのに貢献できる。更に先端キャスタブル層322の上部322uおよび下部322dの厚さt1を確保するのに貢献できる。
本実施形態によれば、図6に示すように、定形れんが部31の軸長寸法Lとし、定形れんが部31の外周壁面311の最大外径Dとすると、L/D=0.1〜0.6の範囲内において設定されており、定見れんが部31の軸長寸法はコンパト化されている。このように定形れんが部31の軸長寸法Lは小さくされているため、定形れんが部31のコンパクトに貢献できる。
実施形態2)図7および図8は本発明の実施形態2を示す。図8に示すように、定形れんが部31の軸長寸法Lとし、定形れんが部31の外周壁面311の最大外径Dとすると、L/D=0.7〜2.0の範囲内において設定できる。このように定形れんが部31の軸長寸法Lは大きくされているため、定形れんが部31の長寿命化に貢献でき、ひいてはランス1の耐久性および長寿命化に貢献できる。
実施形態3
図9は本発明の実施形態3を示す。図9に示すように、定形れんが部31を芯体2の外周面に保持する保持力を高める保持要素7が設けられている。保持要素7により、定形れんが部31を芯体2の先端部2fに安定的に保持できる。保持要素7は、芯体2の外パイプ52に溶接または取付具で固定された複数の棒材70を備える。棒材70の長さ方向の一端部70eは、芯体2の外パイプ52の溶接または取付具で固定されている。棒材70の長さ方向の他端部70fは、定形れんが部31の外周部に軸線P2回りで1周するように形成された凹状の係合部330に係合する金属製またはセラミックス製のリング形状の係合部材339に溶接または取付具で係止されて固定されている。これにより定形れんが部31が芯体2の先端部2fの外周面に保持される保持力を高めることができる。よって、先端キャスタブル層322がかなり損傷したとしても、定形れんが部31が芯体2の先端部2fから脱落することが抑制されている。更に、冷却作用を発揮するガスにより、保持要素7、係合部材14、これに関する溶接部または固定具等の冷却も促進される。更に第2ガス通路61を流れる第2ガスが、傾斜部2rを構成する外パイプ52の縮径部分52rに衝突したり接触したりする度合いが高くなる。この場合、第2ガスの冷却作用を外パイプ52の縮径部分52rに効率よく伝達できる効果を期待でき、異形状部22,その外周側の先端キャスタブル層322および保持要素7の長寿命化に貢献できる。
実施形態4
図10は本発明の実施形態4を示す。図10に示すように、定形れんが部31は軸線P2が延びる方向において二個(複数個)直列に並設されている。定形れんが部31と芯体2の先端部2fとの間にはモルタル等の装填材料2wが装填されている。定形れんが部31の保持性が高まる。
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、プロパンガス等の吸熱作用を発揮させる第2ガスを通過させる第2ガス通路6がランス1に設けられていなくても良い。芯体2の異形状部22は偏平化構造とされているが、これに限らず、円筒パイプ構造でも良い。上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]長手方向に延びる芯体と、前記芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、前記芯体および前記耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを具備するランスにおいて、前記耐火物層は、前記芯体のうち金属溶湯に浸漬または接近する側の先端部を、耐溶損性を高めた先端キャスタブル層で形成しているガス吹き込みランス。
1はランス、11はランス本体、12は先端部、2は芯体、22は異形状部、3は耐火物層、31は定形れんが部、32はキャスタブル層、320は本キャスタブル層、322は先端キャスタブル層、4は第1ガス通路、41は第1ガス吹出口、51は内パイプ、52は外パイプ、6は第2ガス通路、61は第2ガス吹出口、7は保持要素、70は棒材を示す。

Claims (3)

  1. 長手方向に延びる芯体と、前記芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、前記芯体および前記耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを具備するランスにおいて、
    前記芯体は前記第1ガス通路を形成するパイプ状の金属で構成され、所定断面形状の主要部と前記第1ガス吹出口を持ち前記主要部と異なる長円形の異形断面を持つ先端部と前記主要部と前記先端部との間にあり前記所定断面から前記異形断面に移行する傾斜部とからなり、
    前記耐火物層は、前記先端部と前記傾斜部の外周面に嵌合保持されるよう前記先端部が挿通する異形孔を持つ円盤ブロック状の定形れんが部と、前記定形れんが部前記先端部前記傾斜部および前記主要部を被覆するキャスタブル層とからなり、
    前記定形れんが部前記先端部及び前記傾斜部を覆う前記キャスタブル層の先端部分はアルミナーマグネシアーカーボン系の耐火物で形成されている、
    ことを特徴とするガス吹き込みランス。
  2. 請求項1において、前記定形れんが部を前記芯体に保持する保持力を高める保持要素が設けられているガス吹き込みランス。
  3. 請求項1または2において、前記芯体は内パイプを有し、前記内パイプの先端開口が前記第1ガス吹出口を形成し前記内パイプの外周面側に吸熱作用を発揮できる第2ガスの第2ガス通路と第2ガス吹出口を形成するガス吹き込みランス。
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