JP5407668B2 - 静電誘導型発電素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、静電誘導型発電素子およびその製造方法に関する。
従来、静電誘導型振動発電装置、コンデンサーマイクロフォン等に用いられる素子として、絶縁材料に電荷を注入したエレクトレットを使用した静電誘導型変換素子が提案されている。
一般的に、静電誘導型振動発電装置を形成する静電誘導型発電素子としては、上面にエレクトレットが形成された電極(ベース電極)と、該ベース電極およびエレクトレットから所定間隔をあけて設置された対向電極とを備え、ベース電極および対向電極のいずれか一方が、ベース電極および対向電極の重なり面積が変化するように相対的に運動できるように構成されたものが用いられている。該静電誘導型発電素子においては、ベース電極または対向電極を相対的に運動させることで、エレクトレットに注入された電荷とは逆の電荷が対向電極に静電誘導され、ベース電極および対向電極に接続された外部負荷に電流が流れる。
静電誘導型発電素子等の用途に用いられるエレクトレットとしては、従来、導電性基板上にポリテトラフルオロエチレン等の直鎖状の含フッ素重合体を貼付け、または塗布して形成したコーティング膜が用いられていたが、近年、発電量の向上等を目的として、基板上に、パターニングによりエレクトレットを形成することが提案されている。
前記直鎖状の含フッ素重合体は微細加工性が低く、上記のようなパターニングには適していない。また、電荷保持能力が低く、表面電位が充分ではない等の問題もある。このような問題に対し、たとえば特許文献1には、微細加工性に優れたエレクトレット用の絶縁材料として、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が提案されている。また、特許文献2には、表面電位の向上のために、主鎖に環構造を有すると共に、末端基としてカルボキシ基を含む含フッ素重合体と、シランカップリング剤との混合物を用いてエレクトレットを形成することが提案されている。
しかし、従来の含フッ素重合体等の有機材料を用いたエレクトレットは、注入された電荷を高温で安定的に保持することが難しく、該電荷が高温下において、経時的に放出されやすい問題がある。この問題は、当該エレクトレットの表面電位の低下、ひいては当該エレクトレットを使用した静電誘導型変換素子の静電誘導特性等の劣化の原因となる。そのため、注入された電荷を高温下で安定的に保持できる電荷保持特性(熱安定性)の改善が求められる。
一方、コンデンサーマイクロフォン等の用途に用いられるエレクトレットについては、近年、コンデンサーマイクロフォンが搭載される機器の薄膜化、小型化に伴い、エレクトレットについても薄膜化、小型化が進められている。薄膜化、小型化に伴い、絶縁材料としてシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機材料を用いたエレクトレットも提案されている。たとえば特許文献3には、電荷保持性能に優れたエレクトレットとして、上端部を丸く形成したシリコン酸化膜を備えるエレクトレット構造が開示されている。
しかし、該エレクトレットは、発電素子用として適用するには課題がある。つまり、同じ材料である場合、膜厚が厚いほど電荷保持性能が向上するが、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の場合、プロセス上、厚膜を形成するのは容易ではなく、従って発電素子に求められる電荷保持性能を有するものとすることが容易ではない。
特開2006−180450号公報 特開2008−266563号公報 特開2006−245398号公報
エレクトレットがパターニングにより形成された膜から構成される場合、パターニングされていない膜から構成される場合に比べて、上記熱安定性が悪い傾向がある。
静電誘導型変換素子を発電素子として用いる場合、具体的には、100℃の環境に長時間さらされた場合のエレクトレットの表面電位の減衰が少ないことが要求されるが、従来のエレクトレット、特にパターニングにより形成されたエレクトレットは、該要求を満たすことは難しい。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、保持した電荷の熱安定性に優れたエレクトレットを具備する静電誘導型発電素子およびその製造方法を提供する。
上記の課題を解決する本発明は以下の態様を有する。
[1]基板と、該基板上に形成されたパターン電極と、該パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン膜に電荷を注入したエレクトレットとを備え、
該パターン膜は、主鎖に脂肪族環を有する重合体(A)または該重合体(A)に由来する材料(A’)を含有し、
該パターン膜の上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を有する静電誘導型発電素子の製造方法であり、
基板上にパターン電極を形成する電極形成工程と、
前記パターン電極上に前記パターン膜を形成するパターン膜形成工程と、
前記パターン膜に電荷を注入してエレクトレットとする電荷注入工程と、
を有し、
前記パターン膜形成工程にて、前記パターン電極が形成された基板上に、前記重合体(A)を含むコーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして、上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を実質的に有さないパターン膜を形成し、該パターン膜を熱処理することにより、該パターン膜の上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を形成することを特徴とする静電誘導型発電素子の製造方法
[2]前記重合体(A)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である、[1]に記載の静電誘導型発電素子の製造方法
[3]前記重合体(A)は、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体である、[1]または[2]に記載の静電誘導型発電素子の製造方法
[4]前記材料(A’)は、前記重合体(A)と、アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物を含む材料である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法。
]前記熱処理を、前記重合体(A)のガラス転移温度+20℃以上の温度で行う、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法。
]前記コーティング液は、前記重合体(A)として、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体を含有し、さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法。
本発明によれば、保持した電荷の熱安定性に優れた、パターニングにより形成された膜から構成されるエレクトレットを具備する静電誘導型発電素子およびその製造方法を提供できる。
静電誘導型発電素子の一実施形態の構成の一部を示す概略斜視図である。 パターン膜の「側面」を説明する説明図である。 曲率半径(R)の測定方法を説明する説明図である。 静電誘導型発電素子の一実施形態の構成の一部を示す概略上面図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 静電誘導型発電素子の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。 製造例2で、ガラス基板上に形成した金属薄膜のパターニング後の形状を示す上面図である。 図15中の位置X−X’における部分断面図である。 熱処理温度とRとの関係を示すグラフである。 300℃で1時間の熱処理を行った後のパターン膜の断面のSEM写真である。 電荷の注入に用いたコロナ荷電装置の概念図である。 熱安定性試験の結果を示すグラフである。
<静電誘導型発電素子>
本発明の静電誘導型発電素子は、基板と、該基板上に形成されたパターン電極と、該パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン膜に電荷を注入したエレクトレットとを備える。
以下、本発明の静電誘導型発電素子の構成を、図面を参照して説明する。なお、以下に記載する実施形態において図面を参照して説明する場合、前出の図面に示した構成に対応する構成には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図1は、本発明の静電誘導型発電素子の一実施形態の構成の一部の概略斜視図である。
本実施形態の静電誘導型発電素子は、第一の基板11と、第一の基板11から一定間隔で略平行に配置された第二の基板21とを備える。
第一の基板11、第二の基板21を構成する材料としては、それぞれ、絶縁材料が好ましい。該絶縁材料の抵抗値としては体積固有抵抗値で1010Ωcm以上が好ましく、1012Ωcm以上がより好ましい。
絶縁材料として具体的には、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の有機高分子材料等が挙げられる。
本実施形態では、第一の基板11および第二の基板21は、それぞれ、表面が平滑な平板であり、その表面にそれぞれ電極12、電極22が形成されている。ただし本発明はこれに限定されず、第一の基板11、第二の基板21として、それぞれ、電極12に対応するパターンの凹凸が形成された基板を用いてもよい。該基板には、その他のパターンの凹凸が形成されていてもよい。
第一の基板11上には、パターン電極として、ライン状の電極12が複数、所定の間隔を空けて、図1中の矢印D方向(第二の基板21が運動する方向)にラインの長手方向が交差するように形成されている。複数の電極12は、それぞれ、末端が配線(図示せず)で連絡され、該配線を介し、負荷(図示せず)に電気的に接続されている。
電極12を構成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。該材料の抵抗値としては体積固有抵抗値で0.1Ωcm以下が好ましく、0.01Ωcm以下がより好ましい。
導電性材料として具体的には、金、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、タングステン、モリブデン、錫、コバルト、パラジウム、白金、これらのうちの少なくとも1種を主成分とする合金等が挙げられる。また、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)などの金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS、カーボンナノチューブなどから成る有機導電膜も例示できる。
電極12は、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよく、組成に分布のある構造を形成していてもよい。
電極12の幅は、特に限定されないが、該幅が小さいほど、小さな相対運動によって運動エネルギから電気エネルギへの変換を行うことができ、変換効率が向上し、好ましい。そのため、電極12および電極22の幅は、それぞれ、1mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。該幅の下限は特に限定されないが、耐久性、生産性、エレクトレットとしての特性(表面電位の大きさ、およびその安定性)等を考慮すると、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
電極12の厚さ(複数の層よりなる場合は合計の厚さ)は、10〜1,000nmが好ましく、100〜500nmがより好ましい。該厚さが上記範囲内であると、導電性、生産性に優れる。
電極12は、ライン状のパターン膜13で被覆されている。
パターン膜13は、主鎖に脂肪族環を有する重合体(A)または該重合体(A)に由来する材料(A’)を含有する。これにより、形成されるエレクトレットが、電荷保持性能に優れたものとなる。
詳しくは後述するが、重合体(A)としては、上記効果に優れることから、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体が好ましい。また、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体が好ましい。
材料(A’)としては、たとえば、重合体(A)と、該重合体(A)以外の他の成分との反応生成物を含む材料が挙げられる。
該他の成分としては、シランカップリング剤、または極性官能基を2個以上有する分子量50〜2,000の化合物(C)(ただしシランカップリング剤は除く。)が好ましく、シランカップリング剤が特に好ましい。これにより、形成されるエレクトレットが保持する電荷の熱安定性がさらに向上し、経時安定性等も向上する。該効果は、特に、重合体(A)が、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体である場合に顕著である。
反応生成物としては、たとえば重合体(A)および該他の成分を溶媒に溶解したコーティング液を加熱(溶媒を揮発させて成膜する際のベーク、パターン膜の上面から側面にかけて連続的に湾曲する所定の曲率半径の曲面を形成する際の熱処理等)した際に、各成分が反応して生成するものが挙げられる。
材料(A’)の形成に用いられる、重合体(A)以外の他の成分については、詳しくは後述する。
パターン膜13は、その上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径(以下、Rということがある。)0.5〜15μmの曲面を有する。該Rは、0.5〜10μmがより好ましく、1.0〜4.0μmが特に好ましい。Rが上記範囲内であることで、保持した電荷の熱安定性が向上する。上限値はパターンの形状を保つ上での最大値を示しており、下限値は保持した電荷の熱安定性の向上に十分な効果を得るための最小値を示している。
ここで、「上面」および「側面」について、図2を用いて説明する。「上面」は、パターン膜13の表面のうち、基板11表面(水平面)に対して垂直方向の高さが最も高い位置における水平面と一致する面と定義され、「側面」は、パターン膜13が基板11に対して立ち上がった部分(最も基板11に近い部分)から「上面」に達するまでの間で、基板11となす角が最大になる平面と定義される。たとえばパターン膜13が図2(1)に示す断面形状を有する場合、基板11表面に対してなす角度がθa−1となる面(破線La1と一致する面)ではなく、図2(2)に示す、基板11表面に対してなす角度がθa−2となる面(破線La2と一致する面)が、該パターン膜13の側面である。
パターン膜13の上面から側面にかけてのRの測定方法について、図3を用いてより具体的に説明する。図3は、本実施形態の静電誘導型発電素子の概略部分断面図である。
図3中、パターン膜13の上面は、破線L1を含む水平面と一致する面であり、側面は、破線L2を含む平面と一致する面である。
該パターン膜13は、上面から側面にかけて(上面の縁(位置P1)から側面の上縁(位置P2)にかけて)連続的に湾曲しており、該湾曲部分のRが0.5〜15μmである。
該Rは以下の手順(1)〜(3)により測定される。
(1)パターン膜13が形成された基板11を割断し、その断面写真を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy(SEM )、たとえば日立ハイテクノロジーズ社製S−4300)にて撮影する(倍率:4000倍)。
(2)次に、前記断面写真内に円を描き、該円を、図3に示すように、パターン膜13の上面から側面にかけての曲面にフィッティングさせる。
(3)フィッティングさせた円の半径、すなわちRを測定する。
上記(2)において、フィッティングは、画像処理ソフトによりRを求めることのできる装置(例えばキーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−900)に画像を取り込み、内臓のソフトを使用して写真内に真円を描き、その円の大きさをパターン膜13のパターン端部の曲面にフィッティングさせることにより行うことができる。また、Microsoft社製Excel、Word、PowerPoint、Adobe社製Photoshop、illustrator、 Autodesk社製 AutoCAD LTといったソフトの画面上に画像を貼り付け、続いてソフト上で写真内に真円を描き、その円の大きさをパターン膜13のパターン端部の曲面にフィッティングさせることにより行うこともできる。
上記(3)において、Rは、前記(2)において該断面写真に描いた円の半径と該断面写真中に表示されたスケール(1μm幅に相当する長さを表示)を比較することにより測定できる。
パターン膜13の上面と側面とがなす角度(図3中の角度θ)は、80度以上であることが好ましい。該角度θは、80〜150度であることが好ましく、90〜120度であることがより好ましい。
パターン膜13の断面形状は、長方形の上辺と2つの側辺とが所定のRの曲面にて連絡した略長方形状、または台形の上辺と2つの側辺とが所定のRの曲面にて連絡した略台形状が好ましい。
パターン膜13の幅Wは特に限定されないが、電極12と同じかそれよりも大きいことが好ましく、電極12の幅よりも大きいことがより好ましい。幅Wが電極12の幅よりも大きいと、エレクトレット化した際の表面電位値を高く、また電荷保持の安定性(常温安定性、加熱時の安定性の両方)を高くできる。
パターン膜13の厚さ(電極12の上面からパターン膜13の頂部までの最短距離)は、発電出力、加工しやすさ等を考慮すると、1〜200μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
第二の基板21の、第一の基板11側の表面には、ライン状の電極22が複数、パターン膜13に対向する位置に形成されている。
第二の基板21は、図1中の矢印D方向に、略水平に往復運動(振動)できるように構成されている。
複数の電極22は、それぞれ、電極12と同様、末端が配線(図示せず)で連絡され、該配線により負荷(図示せず)に電気的に接続されている。
電極22についての説明は、電極12の説明と同様である。ただし電極22の組成(材料、層構成等)は、電極12と同じであってもよく、異なっていてもよい。
本実施形態の静電誘導型発電素子においては、基板21を、図1中の矢印D方向に、略水平に往復運動(振動)させることにより発電を行うことができる。すなわち、該振動により、基板11に対する基板21の位置が相対的に変動し、これに伴い、パターン膜13に電荷を注入したエレクトレットと、対向する位置にある電極22との重なり面積が変化する。パターン膜13と電極22との重なり部分では、パターン膜13に注入された電荷によって、電極22に、パターン膜13に注入された電荷とは逆の極性を持つ電荷が静電誘導される。それに対して、パターン膜13と電極22とが重ならない部分では先に誘導された電荷に対向する逆電荷が無くなり、外部負荷との間の電位差を打ち消すために負荷に電流が流れる。この繰り返しを電圧の波として取り出すことで電気エネルギが生じる。このようにして、運動エネルギが電気エネルギに変換される。
このときの最大発電出力Pmaxは、以下の数式で表される。
max=2πσnAf/{εε/d×(εg/d+1)}
[式中、σは電荷が注入されたパターン膜13の表面電荷密度、nは極数(基板11の運動方向に配置された電極12の数(つまりパターン膜13の数))、Aはパターン膜13と電極22との最大重なり面積、fは電極22の往復運動の周波数、εは比誘電率、εは真空の誘電率、dはパターン膜13の厚さ、gはパターン膜13と電極22との距離である。]
上記数式に示されるように、パターン膜13の厚さdが大きいほど発電出力も大きくなる。シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機材料からなる膜の場合、パターン膜13の厚さdを2μm以上とすることは難しい。これに対し、本発明では、特定の材料を用いることで、たとえば厚さ10μm以上のパターン膜13を容易に形成でき、微細加工も可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、エレクトレットとして、特定の材料を用いて形成された、上面から側面にかけて特定の曲面を有するパターン膜に電荷を注入したものを備える以外は、公知の静電誘導型発電素子の構成を適宜採用できる。
たとえば上記実施形態では、電極12、パターン膜13および電極22の形状としてライン状のものを示したが本発明はこれに限定されず、任意の形状、たとえば従来、静電誘導型発電素子に用いられているパターン電極の形状を適宜採用できる。ライン状以外の形状としては、たとえば櫛形状、リング状、市松模様状等が挙げられる。基板表面に形成されるパターン電極の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。
また、本実施形態では、パターン膜13が電極12の上面及び側面を被覆する例を示したが本発明はこれに限定されず、パターン膜13が、電極12の上面だけを被覆してもよい。
パターン膜13は、単一の組成の層からなるものであってもよく、それぞれ組成が異なる層が複数積層された多層構造であってもよい。
必要に応じて、上記パターン膜13上に、他の層が積層されてもよい。積層可能な他の層としては、たとえば、保護層、無機物からなる層等が挙げられる。
他の層が積層された構造は、たとえばコーティング膜にパターニングしてパターンを形成する前に、該コーティング膜上に該他の層を形成することにより形成できる。
第一の基板11上、複数のパターン膜13(および電極12)の間隙部分に、図4に示すように、ガード電極14を形成してもよい。ガード電極14は通常接地されている。これにより、対向電極がパターン膜13に対向し、静電誘導が生じた後にガード電極と対向することで、対向電極に生じる電位の変化が大きくなり、発電量を増大させることができる。ガード電極14は、電極12と同様にして形成できる。
また、図1に示した実施形態では、パターン膜13(および電極12)と電極22との相対運動が、基板21の振動により実現されているが、これに限られるものではない。たとえば、基板21の代わりに基板11を振動させてもよい。
<静電誘導型発電素子の製造方法>
本発明の静電誘導型発電素子の製造方法は、たとえば、
基板上にパターン電極を形成する電極形成工程と、
前記パターン電極上に前記パターン膜を形成するパターン膜形成工程と、
前記パターン膜に電荷を注入してエレクトレットとする電荷注入工程と、
を有する製造方法により製造できる。
(電極形成工程)
基板としては、前記基板11と同様のものが挙げられる。
パターン電極の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を利用できる。具体的には、たとえば基板上に導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜をパターニングする方法が挙げられる。
導電性薄膜の形成方法としては、物理的蒸着法、無電解めっき法等が挙げられる。
物理蒸着法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
無電解めっき法とは、金属塩、還元剤等を含む無電解めっき液に、表面に触媒が付着した基板を浸漬し、還元剤から生じる電子の還元力によって、触媒が付着した基板表面において選択的に金属を析出させ、無電解めっき膜を形成する方法である。
無電解めっき液に含まれる金属塩としては、ニッケル塩(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等。)、第二銅塩(硫酸銅、塩化銅、ピロリン酸等。)、コバルト塩(硫酸コバルト、塩化コバルト等。)、貴金属塩(塩化白金酸、塩化金酸、ジニトロジアンミン白金、硝酸銀等。)等が挙げられる。
無電解めっき液に含まれる還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、テトラヒドロほう酸ナトリウム、ジアルキルアミンボラン、ヒドラジン等が挙げられる。
無電解めっき法により導電性薄膜を形成する場合、導電性薄膜を形成する前に、予め、基板1の表面に触媒を付着させておくことが好ましい。
無電解めっき法に用いる触媒としては、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体等が挙げられる。
導電性薄膜のパターニングは、フォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせ、ナノメタルインク等を印刷することによる配線形成、等により実施できる。たとえばフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせによるパターニングは、導電性薄膜上にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成した後、該レジスト膜に対し、露光、現像を行うことでパターン(レジストマスク)を形成し、該レジストマスクをマスクとして導電性薄膜をエッチングすることにより実施できる。導電性薄膜のエッチングは、たとえばエッチング液として導電性薄膜を溶解する液体(通常は酸性溶液)を用いたウェットエッチングにより実施できる。また、ナノメタルインク等を印刷する方法としてはスクリーン印刷法、インクジェット法またはマイクロコンタクトプリンティング法等を用いることができる。ナノメタルインクとは前述の導電性材料のナノ粒子を有機溶媒や水等に分散させたインクのことをいう。
(パターン膜形成工程)
本工程では、前記パターン電極上に前記パターン膜を形成する。つまり、前記パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成され、重合体(A)または材料(A’)を含有し、上面から側面にかけて連続的に湾曲するR0.5〜15μmの曲面を有するパターン膜(以下、R付きパターン膜ということがある。)を形成する。
R付きパターン膜の形成方法としては、特に限定されず、公知のパターニング技術を利用できる。
具体例として、たとえば下記方法(Ia)〜(Ig)等が挙げられる。
方法(Ia):前記パターン電極が形成された基板上に、前記重合体(A)を含むコーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして、前記パターン電極に対応するパターンで形成され、上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を実質的に有さないパターン膜を形成し、該パターン膜を熱処理することにより、上面から側面にかけて連続的に湾曲するR0.5〜15μmの曲面を形成する方法。
以下、「パターン電極が形成された基板」を「電極付き基板」、「上面から側面にかけて連続的に湾曲するR0.5〜15μmの曲面を実質的に有さないパターン膜」を「角付きパターン膜」ということがある。
角付きパターン膜における「実質的に有さない」とは、パターニングの条件等によって、該パターン膜の角の一部に、R0.5〜15μmの曲面が形成されていてもよいことを意味する。
方法(Ib):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして角付きパターン膜を形成し、該角付きパターン膜をウェットエッチングすることにより、上面から側面にかけて連続的に湾曲するR0.5〜15μmの曲面を形成する方法。
方法(Ic):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜上に、パターン電極に対応するパターンでパターニングされ、断面形状が略台形のレジスト膜を形成し、該レジスト膜をマスクとして前記コーティング膜をドライエッチングして、該レジスト膜の形状を前記コーティング膜に転写する方法。
方法(Id):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、インプリント法によりパターニングして、R付きパターン膜を形成する方法。
方法(Ie):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして角付きパターン膜を形成し、該角付きパターン膜上にポリマー溶液を塗布してポリマー膜を形成し、該ポリマー膜をドライエッチングして、R付きパターン膜を形成する方法。
方法(If):電極付き基板上に、前記コーティング液の印刷により、前記パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン液層を形成し、乾燥して、R付きパターン膜を形成する方法。
方法(Ig):電極付き基板表面に、前記パターン電極に対応する撥油・親油のパターニングを施した後、前記コーティング液のディップまたは印刷により、前記パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン液層を形成し、乾燥して、R付きパターン膜を形成する方法。
上記の中でも、本発明の効果に優れることから、方法(Ia)が好ましい。特に、コーティング液としてシランカップリング剤を含有するものを用いる場合、熱処理を行うことで、保持した電荷の熱安定性がさらに向上する。
[方法(Ia)]
方法(Ia)について、図5を用いてより詳細に説明する。
まず、電極付き基板30(電極はここでは図示せず)上に、重合体(A)を含むコーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして、角付きパターン膜31を形成する。その後、角付きパターン膜31を熱処理すると、該熱により軟化して、角付きパターン膜31の角31a、31bが取れ、曲面となり、R付きパターン膜31’が得られる。
このとき、熱処理温度を調節することで、Rを所望の値に調節できる。
コーティング液の組成については、後述する。
コーティング液の塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディッピング法、水上キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。これらの中でもスピンコート法が好ましい。
コーティング膜を形成する際のベーク温度は、塗膜中の溶媒の少なくとも一部が蒸発してコーティング膜が成膜される温度であればよく、たとえば溶媒の沸点以上の温度でのベーク(高温ベーク)により行ってもよく、溶媒の沸点未満の温度でのベーク(低温ベーク)により行ってもよい。
ここで、溶媒として複数の溶媒を用いる場合の「溶媒の沸点」は、該複数の溶媒のうち、沸点が最も高い溶媒の沸点を意味するものとする。
上記のうち、高温ベークを行った場合は、パターンを形成した膜の構造が、その後の熱処理で崩れにくく、パターンが潰れてしまう可能性が低い利点を有する。また、コーティング液が、重合体(A)として、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体を含有し、さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する場合には、高温ベークにより前記アルコキシカルボニル基とアミノ基の反応が促進され、形成したR付きパターン膜をエレクトレット化した場合のエレクトレットの耐熱性が確保できるという利点も有する。
低温ベークを行った場合は、ベーク後のコーティング膜中に溶媒が残存することから、その後の熱処理により、角31a、31bが取れやすく、Rを大きくしやすい利点を有する。また、低温ベークした場合、高温ベークした場合よりも、その後の熱処理を低温で行っても、角31a、31bの形状について同等の変化を生じさせることができる等、プロセス上の利点もある。たとえば高温ベークによりコーティング膜を形成し、300℃程度の熱処理で所望のRとすることができたとすると、低温ベークによりコーティング膜を形成した場合、300℃未満の温度、たとえば270〜280℃程度の熱処理で同等のRとすることができる。
ベーク時間は、ベーク温度に応じて適宜設定すればよい。
ベーク時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気でもよく、空気雰囲気でもよい。コーティング液が、重合体(A)として、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体を含有し、さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する場合には、シランカップリング剤の縮合促進のため、空気雰囲気が好ましい。
ベーク時の雰囲気は、常圧でも減圧でもよく、形成した膜の平滑性を確保する観点から常圧が好ましい。
コーティング膜の厚さは、所望のエレクトレットの厚さ、コーティング膜中に残存する溶媒量等に応じて適宜設定すればよい。たとえばR付きパターン膜を形成する際の熱処理、溶媒の揮発等による厚さの減少を考慮すると、エレクトレットの厚さをたとえば1〜200μm(好ましくは10〜20μm)とする場合は、コーティング膜の厚さを2〜220μm(好ましくは12〜25μm)とすることが好ましい。
方法(Ia)において、コーティング膜のパターニングは、従来公知の方法により実施でき、特に限定されない。
具体例としては、前記コーティング膜上に、所定のパターンのマスクを形成し、エッチングする方法が挙げられる。
該マスクは、たとえば前記パターン電極と同様の方法により形成できる。ただしマスクを構成する材料は、コーティング膜に対し、ある程度のエッチング選択比を有するものであればよく、導電性材料でなくてもよい。たとえば該マスクとして、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングされたレジスト膜を用いてもよい。レジスト膜のパターニングは、公知のリソグラフィー法により実施できる。
角付きパターン膜31に対する熱処理条件(温度、時間)は、所望のR、重合体(A)のガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)等を考慮して適宜設定すればよい。
熱処理温度は、通常、150〜400℃の範囲内、好ましくは200〜320℃の範囲内で設定される。該範囲内において、熱処理温度が高いほど、Rが大きくなる傾向がある。
熱処理は、重合体(A)のTg+20℃以上、さらにはTg+40℃以上の温度で行うことが、Rを大きくすることができるため好ましい。該温度の上限は重合体(A)のTd未満の温度であればよい。重合体(A)のTd−50℃以下の温度が好ましく、該Td−100℃以下の温度がより好ましい。
熱処理時間は、熱処理温度によっても異なるが、通常、10分間〜24時間の範囲内であり、30分間〜1時間が好ましい。
熱処理時の雰囲気は不活性ガス雰囲気であっても空気雰囲気でもよい。
該熱処理は、重合体(A)として、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体を含有し、さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する組成物をコーティング液として用い、かつ、前記コーティング膜を形成する際のベークを低温ベークで行った場合には、前記アルコキシカルボニル基とアミノ基の反応を促進し、パターンを形成した膜をエレクトレット化した場合のエレクトレットの耐熱性を確保するという効果も兼ね備えている。
[方法(Ib)]
方法(Ib)によるR付きパターン膜の形成は、たとえば図6に示す手順によって実施できる。
まず、電極付き基板30上に、前記方法(Ia)と同様にして、コーティング膜を形成し、パターニングして角付きパターン膜31を形成する。該電極付き基板30上に、パターン方向に沿ってエッチング液を流すと、角付きパターン膜31の角が溶解して曲面となり、R付きパターン膜31’が形成される。
エッチング液としては、たとえばコーティング液に用いられている溶媒と同様のものが使用できる。
方法(Ib)によるR付きパターン膜の形成は、図7に示す手順によっても実施できる。
まず、電極付き基板30上に、前記方法(Ia)と同様にして、コーティング膜41を形成する。次に、該コーティング膜41に対して電子線(EB)を照射する。このことにより、EB照射部のコーティング膜41がEBで削られて除去され、未照射部がパターンとして残って角付きパターン膜が形成される。その後、ウェットエッチングを行うと、前記エッチング液を流した場合と同様に、角付きパターン膜の角が溶解して曲面となり、R付きパターン膜41’が形成される。
EBの照射方法としては、一般的にEBリソグラフィーに用いられている方法が利用でき、直接描画、マスクを介した照射のいずれであってもよい。
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、たとえばコーティング液に用いられている溶媒と同様のものが使用できる。
[方法(Ic)]
方法(Ic)によるR付きパターン膜の形成は、たとえば図8に示す手順によって実施できる。
まず、電極付き基板30上に形成されたコーティング膜41上に、ネガ型レジスト溶液を塗布し、ベークしてレジスト膜42を形成する。該レジスト膜42に対し、所定の間隔dを空けて配置したマスク43を介して露光し、現像してレジスト膜をパターニングする。
このとき、マスク43とレジスト膜42との間の間隔dをある程度空けておくことで、パターニングされたレジスト膜(以下、レジストマスクという。)42’の断面形状が略台形状となる。すなわち、マスク43を透過した光が拡散しながらレジスト膜42に入射する。そのため、レジスト膜42の露光部の水平方向の断面積は、底面(コーティング膜41との界面)に近づくにつれて大きくなる。そのため、現像により該レジスト膜42の未露光部を溶解、除去すると、残ったレジスト膜(レジストマスク42’)の断面形状が略台形状となる。また、上述のほかに、マスク43とレジスト膜42に間隔が空いているために回折が起こり、パターン形成部とパターンでない部分の境界(パターンのエッジ)がぼやけ、レジスト膜42の被露光部分のエッジ近辺はマスクの影になる部分に向かって露光量が徐々に減っていくグラジュアルな露光量分布となる。この部分では現像液に対して充分な耐久性を有するまでの光反応がレジストに起こらず、特に弱い角部分から現像液に溶解していく現象も起こっていると考えられる。
該レジストマスク42’をマスクとしてコーティング膜41のドライエッチングを行うと、レジストマスク42’の形状がコーティング膜41に転写され、R付きパターン膜41’が形成される。
の好適な範囲は、作製したいRの大きさ、露光光源の平行度、レジストの感度、等によって異なるが、一般的には0.5〜500μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、10〜50μmが最も好ましい。
コーティング膜41の形成は、前記方法(Ia)と同様にして実施できる。
レジスト膜42の形成は、コーティング液の代わりにネガ型レジスト溶液を用いる以外はコーティング膜41の形成と同様にして実施できる。
ネガ型レジストとしては、特に限定されず、市販のものを利用できる。
なお、図8にはネガ型レジストを用いた例を示したが本発明はこれに限定されず、ポジ型レジストを用いてもよい。ポジ型レジストを用いた場合でも上述のように、マスク43とレジスト膜42の間隔dによってパターンのエッジがぼやけ、露光量がグラジュアルになった部分について、現像液への溶解性が充分に変化せず、特に弱い角部分から現像液に溶解していく現象が起きると考えられる。
ポジ型レジストとしても、特に限定されず、市販のものを用いることができる。
特に好ましく用いられるレジストとしては、ネガ型、ポジ型共に後述の厚膜形成用のレジストが挙げられる。
方法(Ic)によるR付きパターン膜の形成は、図9に示す手順によっても実施できる。
まず、電極付き基板30上に形成されたコーティング膜41上に、現像液に対する耐久性が低いネガ型レジスト溶液を塗布し、ベークしてレジスト膜44を形成する。該レジスト膜44に対し、マスク43を介して露光し、オーバー現像してレジスト膜44をパターニングする。これにより、断面形状が略台形状のレジストマスク44’が形成される。
そのため、該レジストマスク44’をマスクとして酸素プラズマエッチング等によりドライエッチングを行うと、該レジストマスク44’の形状がコーティング膜41に転写され、R付きパターン膜41’が形成される。
ここで「オーバー現像」とは、当該レジストを用いてレジストマスクを形成する際、目的とする寸法のレジストマスクが形成できる最適の現像時間を超えて現像を行うことを意味する。
レジストとして現像液に対する耐久性が低いものを用いているため、オーバー現像を行うと、形成されたレジストマスクの表面が溶解する。この溶解は、レジスト膜の表層付近に近いほど進みやすく、結果、断面形状が略台形状のレジストマスク44’が形成される。
レジストとして現像液に対する耐久性が低いネガ型レジストとしては、厚膜形成用のレジストを用いるのが好ましく、たとえば、化薬マイクロケム社製「SU−8 3000」、化薬マイクロケム社製「KMPR」、東京応化工業社製「TMMR S2000」等が挙げられる。
なお、図9にはネガ型レジストを用いた例を示したが本発明はこれに限定されず、ポジ型レジストを用いてもよい。レジストとして現像液に対する耐久性が低いポジ型レジストとしては、ネガ型と同様に、厚膜形成用のレジストを用いるのが好ましく、たとえば東京応化工業社製「PMER−900」等が挙げられる。
方法(Ic)によるR付きパターン膜の形成は、図10に示す手順によっても実施できる。
まず、電極付き基板30上に形成されたコーティング膜41上にネガ型レジスト溶液を塗布し、低温でベークしてレジスト膜45を形成する。該レジスト膜45に対し、マスク43を介して露光し、現像した後、高温でベークする。これにより、断面形状が略台形状のレジストマスク45’が形成される。
そのため、該レジストマスク45’をマスクとして酸素プラズマエッチング等によりドライエッチングを行うと、レジストマスク45’の形状がコーティング膜41に転写され、R付きパターン膜41’が形成される。
ここでレジスト膜を形成する際のベークの「低温」とは、当該レジスト中の溶媒の沸点未満の温度を意味する。該ベークを低温で行うと、レジスト膜45、ひいてはレジストマスク45’中に溶媒が残存する。そのため、現像後に高温ベークを行うと、レジストマスク45’は、溶媒の揮発によってコーティング膜41との接触面を固定したまま体積が減少するため、また、前記方法(Ia)と同様、高温ベークの熱によって角が取れて丸くなるため、断面形状が略台形状になる。
ここで、レジストの溶媒として複数の溶媒を用いる場合の「溶媒の沸点」は、該複数の溶媒のうち、沸点が最も高い溶媒の沸点を意味するものとする。
現像後の高温ベークは、方法(Ia)で説明した熱処理と同様にして実施できる。
なお、図10にはネガ型レジストを用いた例を示したが、これに限定されず、ポジ型レジストを用いてもよい。レジストとしては、特に限定されず、市販のものであれば用いることができるが、特に前述の厚膜形成用のレジストを用いるのが好ましい。
方法(Ic)において、形成されたR付きパターン膜のRが所望の値となっていない場合は、さらに、方法(Ia)と同様の熱処理または方法(Ib)と同様のウェットエッチングを行って、Rを所望の値に変化させてもよい。
[方法(Id)]
方法(Id)において、コーティング膜の形成は、前記方法(Ia)と同様にして実施できる。
インプリントによるR付きパターン膜の形成は、公知の方法により実施できる。具体的には、図11に示すように、目的のR付きパターン膜の形状に対応するモールド46を作成し、該モールド46をコーティング膜41に押し込み、モールド46の形状を転写する。その後、モールド46を離型することで、R付きパターン膜41’が得られる。
上記モールド46の作製方法は、特に限定されず、公知の方法、たとえば金属板やガラス板、有機高分子板を直接機械的に削る方法、金属板やガラス板、有機高分子板に電子線を用いて描画する方法、金属板やガラス板から作成したモールドの形状をさらに有機高分子等を用いたモールドに転写する方法、等により作製できる。
[方法(Ie)]
方法(Ie)において、コーティング膜の形成およびパターニングは、前記方法(Ia)と同様にして実施できる。
図12に示すように、角付きパターン膜31が形成された電極付き基板30上に、ポリマー溶液を塗布してポリマー膜47を形成する。該ポリマー膜47は、角付きパターン膜31の角の部分の膜厚が薄くなる。そのため、酸素プラズマエッチング等によりドライエッチングを行って該ポリマー膜47を除去すると、ポリマー膜47の膜厚の薄い部分、つまり角付きパターン膜31の角も同時に除去されて、R付きパターン膜31’が形成される。
ポリマー溶液はポリマーと溶媒とを含んでいてもよい。該ポリマーとしては、有機ポリマーであれば特に限定されないが、特に重合体(A)溶液または該重合体(A)に由来する材料(A’)を含む溶液を用いるのが好ましい。また、ポリマー溶液はコーティング液と同じであっても異なっていてもよい。
[方法(If)]
コーティング液の印刷方法としては、特に限定されず、公知の印刷法が利用できる。具体的には、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、平板印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ディスペンサ直描法等が挙げられる。これらの中でも、工程の簡便さ、本発明のパターンへの適用しやすさ等の点から、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサ直描法が好ましい。
印刷により電極付き基板上に形成されたパターン液層は、溶媒を含んでいるため、パターン縁部が丸みを帯びたものとなる。そのため、該パターン液層を乾燥することにより、R付きパターン膜が形成される。
一例を挙げると、まず、図13に示すように、コーティング液51をスクリーン52上に塗布し、該スクリーン52を電極付き基板30上に接触させ、コーティング液51を押出した後、スクリーン52を外す。これにより、電極付き基板30上にパターン液層51’が形成される。その後、パターン液層51’を、コーティング液51の溶媒の沸点以上の温度でベークし、乾燥することで、R付きパターン膜51”が形成される。
ここで、溶液の溶媒として複数の溶媒を用いる場合の「溶媒の沸点」は、該複数の溶媒のうち、沸点が最も高い溶媒の沸点を意味するものとする。
なお、図13にはスクリーン印刷によりパターン液層51’を形成する例を示したが、インクジェット法、ディスペンサ直描法等、他の印刷法により形成してもよい。
[方法(Ig)]
方法(h)は、たとえば図14に示す手順で実施できる。
まず、電極付き基板30上に、前記パターン電極に対応するパターンで撥油部53を形成する。次に、該電極付き基板30表面へのコーティング液51の印刷、または該電極付き基板30のコーティング液51中へのディップにより、非撥油部(親水部)にコーティング液51が付着し、前記方法(If)と同様、パターン液層51’が形成される。そのため、該パターン液層51’を乾燥することにより、R付きパターン膜51”が形成される。
その後、パターン液層51’を、溶媒の沸点以上の温度でベークし、乾燥することで、R付きパターン膜51”が形成される。撥油部53は、該撥油部53を形成する材料を溶解する溶媒で処理したり、UV−オゾン処理を行うことによって除去することができる。
撥油部53の形成に用いられる材料としては、たとえば含フッ素シランカップリング剤や含フッ素アクリレート、含フッ素メタクリレートの共重合体等が挙げられる。
撥油部53の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法、等が挙げられる。
(電荷注入工程)
上述のようにして形成されたR付きパターン膜に電荷を注入することで、該R付きパターン膜をエレクトレットとすることができる。
電荷の注入方法としては、一般的に絶縁体を帯電させる方法であれば手段を選ばずに用いることができる。たとえば、G.M.Sessler, Electrets Third Edition,pp20,Chapter2.2“Charging and Polarizing Methods”(Laplacian Press, 1998)に記載のコロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が適用可能である。本発明においては特にコロナ放電法、電子ビーム衝突法を用いることが好ましい。
また、電荷を注入する際の温度条件としては、当該エレクトレットに含まれる重合体(A)または材料(A’)のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが、注入後に保持される電荷の安定性の面から好ましく、特にTg+10〜20℃程度の温度条件で行うことが好ましい。
さらに、電荷を注入する際の印加電圧としては、前記パターンの絶縁破壊電圧以下であれば、高圧を印加することが好ましい。本発明においては、±6〜±30kVの高電圧が適用可能であり、特に±8〜±15kVの電圧印加が好ましい。特に重合体(A)が含フッ素重合体である場合は、正電荷より負電荷をより安定に保持可能であることから、−8〜−15kVの電圧印加をすることがさらに好ましい。
<重合体(A)>
重合体(A)は、主鎖に脂肪族環を有する重合体である。該脂肪族環が、電荷保持性能の向上に寄与する。
「脂肪族環」とは、芳香族性を有さない環を示す。
該脂肪族環は、環骨格が、炭素原子のみから構成される炭素環構造のものであってもよく、環骨格に、炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む複素環構造のものであってもよい。該ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられる。
脂肪族環は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。
脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5〜6個であることがより好ましい。すなわち、脂肪族環は4〜7員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
該脂肪族環としては、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素環、該脂肪族炭化水素環における炭素原子の一部が酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された脂肪族複素環、前記脂肪族炭化水素環または脂肪族複素環における水素原子がフッ素原子で置換された含フッ素脂肪族環等が好ましい。
該脂肪族環は、置換基(ただしフッ素原子を除く)を有していてもよい。「置換基を有していてもよい」とは、該脂肪族環の環骨格を構成する炭素原子に結合した水素原子またはフッ素原子の一部または全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。
重合体(A)は、上記の中でも、含フッ素脂肪族環または脂肪族炭化水素環を主鎖に有することが好ましい。
「主鎖に脂肪族環を有する」とは、脂肪族環の環骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも1つが、重合体(A)の主鎖を構成する炭素原子であることを意味する。
重合体(A)の重合に用いられた単量体が有する重合性二重結合に由来する炭素原子のうち、少なくとも1つが、前記主鎖を構成する炭素原子となる。たとえば重合体(A)が、後述するような環状単量体を重合させて得た含フッ素重合体の場合は、該二重結合を構成する2個の炭素原子が主鎖を構成する炭素原子となる。また、2個の重合性二重結合を有する単量体を環化重合させて得た含フッ素重合体の場合は、2個の重合性二重結合を構成する4個の炭素原子のうちの少なくとも2個が主鎖を構成する炭素原子となる。
重合体(A)は、反応性官能基を有することが好ましい。特に、重合体(A)を、シランカップリング剤または化合物(C)と配合して用いる場合は、重合体(A)が、シランカップリング剤が有する官能基または化合物(C)が有する極性官能基と反応し得る反応性官能基を有することが好ましい。
「反応性官能基」とは、加熱等を行った際に、当該重合体(A)の分子間、または重合体(A)とともに配合されている他の成分と反応して結合を形成し得る反応性を有する基を意味する。反応性官能基を有することで、本発明の効果が向上する。
シランカップリング剤または化合物(C)との相互作用の強さ、重合体中への導入のしやすさを考慮すると、重合体(A)が有する反応性官能基は、カルボキシ基、酸ハライド基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カーボネート基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
重合体(A)は、上記の中でも、カルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有することが好ましい。
重合体(A)の重量平均分子量は、5万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましく、25万以上であることが特に好ましい。該重量平均分子量が5万未満であると、製膜が難しい。また、20万以上であると、膜の耐熱性が向上し、エレクトレットとしての熱安定性が向上する。
一方、該重量平均分子量が大きすぎると、溶媒に溶けにくくなり、製膜プロセスが制限される等の問題が生じるおそれがある。したがって、重合体(A)の重量平均分子量は、100万以下が好ましく、85万以下がより好ましく、65万以下がさらに好ましく、55万以下であることが特に好ましい。
重合体(A)は、エレクトレットとしての電荷保持性能を考慮すると、比誘電率が1.8〜8.0であることが好ましく、1.8〜5.0がより好ましく、1.8〜3.0が特に好ましい。該比誘電率は、ASTM D150に準拠し、周波数1MHzにおいて測定される値である。
また、重合体(A)としては、体積固有抵抗が高く、絶縁破壊電圧が大きいものが好ましい。
重合体(A)の体積固有抵抗は、1010〜1020Ωcmが好ましく、1016〜1019Ωcmがより好ましい。該体積固有抵抗は、ASTM D257により測定される。
重合体(A)の絶縁破壊電圧は、10〜25kV/mmが好ましく、15〜22kV/mmがより好ましい。該絶縁破壊電圧は、ASTM D149により測定される。
重合体(A)としては、絶縁性に悪影響を与える水を排除し、高い絶縁性を維持するために、疎水性の高いものが好ましい。
重合体(A)としては、具体的には、後述の含フッ素重合体、またはシクロオレフィンポリマーが好ましい。シクロオレフィンポリマーは、主鎖に脂肪族炭化水素環を有する重合体であって、当該脂肪族炭化水素環を構成する炭素原子のうち少なくとも2つが当該ポリマーの主鎖に組み込まれているものを示す。
シクロオレフィンポリマーとしては、たとえばノルボルネン類の付加共重合体を用いることができる。具体的には、たとえばアペル(登録商標)(三井化学社製)、TOPAS(登録商標)(Ticona社製)の商品名で販売されているものを用いるのが好ましい。また、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体の水素添加ポリマーも用いることができる。具体的には、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)の商品名で販売されているポリマーを用いるのが好ましい。
[含フッ素重合体]
含フッ素重合体は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である。該脂肪族環としては前記と同様のものが挙げられる。
ここで、「含フッ素重合体」は、その構造中にフッ素原子を有する重合体である。含フッ素重合体において、フッ素原子は、主鎖を構成する炭素原子に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよい。低吸水率・低誘電率で絶縁破壊電圧が高く、体積抵抗率の高いエレクトレット化に適した重合体を得る観点から、少なくとも、主鎖を構成する炭素原子に結合したフッ素原子を有することが好ましい。すなわち、含フッ素重合体は、主鎖に含フッ素脂肪族環を有することが好ましい。
特に、該含フッ素脂肪族環が、骨格に1〜2個のエーテル性酸素原子を有する複素環構造の含フッ素脂肪族環であることが、単量体から重合体の生成が容易、重合体の入手が容易等の点から好ましい。
該含フッ素脂肪族環は、置換基を有していてもよい。
好ましい含フッ素重合体として、下記含フッ素環状重合体(I’)、含フッ素環状重合体(II’)が挙げられる。
含フッ素環状重合体(I’):環状含フッ素単量体に基づく単位を有する重合体。
含フッ素環状重合体(II’):ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成される単位を有する重合体。
「環状重合体」とは環状構造を有する重合体を意味する。
「単位」は、重合体を構成する繰り返し単位を意味する。
以下、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも記す。他の式で表される単位、化合物等についても同様に記し、たとえば式(3−1)で表される単位を「単位(3−1)」とも記す。
含フッ素環状重合体(I’)は、「環状含フッ素単量体」に基づく単位を有する。
「環状含フッ素単量体」とは、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
環状含フッ素単量体としては、下記の化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
式中、X11、X12、X13、X14、Y11およびY12は、それぞれ独立に、フッ素原子、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である。
11、X12、X13、X14、Y11およびY12におけるパーフルオロアルキル基としては、炭素数が1〜7であることが好ましく、炭素数1〜4であることがより好ましい。該パーフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
11、X12、X13、X14、Y11およびY12におけるパーフルオロアルコキシ基としては、前記パーフルオロアルキル基に酸素原子(−O−)が結合したものが挙げられる。具体的にはトリフルオロメトキシ基が挙げられる。
11としては、フッ素原子が好ましい。
12としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基がより好ましい。
13およびX14としては、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましい。
11およびY12としては、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例としては、化合物(1−1)〜(1−5)が挙げられる。
化合物(2)の好ましい具体例としては、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
含フッ素環状重合体(I’)は、上記環状含フッ素単量体により形成される単位のみから構成されてもよく、該単位と、それ以外の他の単位とを有する共重合体であってもよい。
ただし、該含フッ素環状重合体(I’)中、環状含フッ素単量体に基づく単位の割合は、該含フッ素環状重合体(I’)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。
該他の単量体としては、上記環状含フッ素単量体と共重合可能なものであればよく、特に限定されない。具体的には、後述するジエン系含フッ素単量体、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
なお環状含フッ素単量体とジエン系含フッ素単量体との共重合により得られる重合体は含フッ素環状重合体(I’)として考える。
含フッ素環状重合体(II’)は、「ジエン系含フッ素単量体」の環化重合により形成される単位を有している。
「ジエン系含フッ素単量体」とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する単量体である。該重合性二重結合としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
ジエン系含フッ素単量体としては、下記化合物(3)が好ましい。
CF=CF−Q−CF=CF ・・・(3)。
式中、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3の、分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Qはエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。その場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
化合物(3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFClCFCF=CF
CF=CFOCClCFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(OCF)CF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF
CF=CFCFOCFCF=CF
化合物(3)の環化重合により形成される単位としては、下記単位(3−1)〜(3−4)等が挙げられる。
含フッ素重合体は、前述した単量体を重合させることにより合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
主鎖にエーテル製酸素原子を含む含フッ素脂肪族環を有し、主鎖の末端にカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する含フッ素重合体の市販品としては、CYTOP(登録商標、旭硝子社製)が挙げられる。
<コーティング液>
本発明において、前記R付きパターン膜の形成に用いられるコーティング液は、前記重合体(A)を溶媒に溶解してなるもの、または重合体(A)と該重合体(A)以外の他の成分とを、溶媒に溶解してなるものである。
溶媒としては、該コーティング液に含まれる各成分を溶解するものであればよく、少なくとも重合体(A)を溶解する溶媒が用いられる。
他の成分を含む場合、前記重合体(A)を溶解する溶媒が、該他の成分を溶解するものであれば、該溶媒単独で均一な溶液とすることができる。また、該他の成分を溶解する他の溶媒を併用してもよい。
該他の成分としては、上述したとおり、シランカップリング剤または化合物(C)を含有することが好ましく、シランカップリング剤を含有することが特に好ましい。これにより、形成されるエレクトレットが保持する電荷の熱安定性がさらに向上し、経時安定性等も向上する。該効果は、特に、重合体(A)が、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体である場合に顕著である。これは、重合体(A)とシランカップリング剤がナノ相分離を引き起こし、シランカップリング剤由来のナノクラスタ構造が形成され、当該ナノクラスタ構造が、エレクトレットにおける電荷を蓄える部位として機能するためであると推察される。
コーティング液は、各成分を含む組成物を予め調製し、これを溶媒に溶解して得てもよく、各成分をそれぞれ溶媒に溶解し、各溶液を混合して得てもよい。
各成分を含む組成物を予め調製する場合の該組成物の製造方法としては、固体と固体、または固体と液体を混練、共融押し出し法等により混合してもよく、それぞれを可溶な溶媒に溶解した各溶液を混合してもよい。これらの中でも、各溶液を混合することがより好ましい。
たとえば重合体(A)とシランカップリング剤とを併用する場合、コーティング液は、重合体(A)を非プロトン性含フッ素溶媒に溶解した重合体(A)溶液と、シランカップリング剤をプロトン性含フッ素溶媒に溶解したシランカップリング剤溶液とを各々調製し、重合体(A)溶液と、シランカップリング剤溶液とを混合することによって得ることが好ましい。非プロトン性含フッ素溶媒およびプロトン性含フッ素溶媒についてはそれぞれ後述する。
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤としては、特に限定されず、従来公知または周知のものを含めて広範囲にわたって利用できる。
シランカップリング剤としては、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
入手の容易性等を考慮すると、特に好ましいシランカップリング剤は、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、から選択される1以上である。
シランカップリング剤の含有量は、重合体(A)とシランカップリング剤の合計量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が最も好ましい。この範囲にあると、重合体(A)と均一に混合でき、各成分を溶媒に溶解してコーティング液とした際、相分離を起こしにくい。
[化合物(C)]
化合物(C)は、極性官能基を2個以上有する分子量50〜2,000の化合物(ただし前記シランカップリング剤は除く。)である。
「極性官能基」とは、下記の(1a)および(1b)の何れか一方または両方の特性を有する官能基である。
(1a)電気陰性度の異なる2種類以上の原子を含み、当該官能基中に分極による極性を有する。
(1b)当該官能基と結合した炭素との電気陰性度の差により分極を生じさせる。
上記特性(1a)のみを有する極性官能基の具体例としては、ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
上記特性(1b)のみを有する極性官能基の具体例としては、1級アミノ基(−NH)、2級アミノ基(−NH−)、ヒドロキシ基、チオール基等が挙げられる。
上記特性(1a)および(1b)の両方を有する極性官能基の具体例としては、スルホ基、ホスホノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、酸ハライド基、ホルミル基、イソシアナート基、シアノ基、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)カーボネート基(−O−C(O)−O−)等が挙げられる。
化合物(C)の分子量は50〜2,000であり、100〜2,000が好ましい。化合物(C)の分子量が50未満であると分子量が低いために揮発しやすくなり、製膜後に膜中に残存させることが困難になる。また、化合物(C)の分子量が2,000超であると、重合体(A)と層分離しやすくなり、相溶性に問題が生じ易い。
化合物(C)としては、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、シクロヘキサン−1,2−ジアミン、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、トリアミノメチルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、シクロヘキサン−1,3,5−トリアミン、シクロヘキサン−1,2,4−トリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、2,4,6−トリアミノトルエン、1,3,5−トリス(2−アミノエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(2−アミノエチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(2−アミノエチル)トルエン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、ジエチレントリアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が最も好ましい。
化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。たとえば、極性官能基を2個有する化合物と、極性官能基を3個以上有する化合物とを混合して用いてもよい。
化合物(C)の含有量は、重合体(A)の含有量の0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。該含有量が0.01質量%以上であると、化合物(C)を配合することによる効果が充分に得られ、エレクトレットとして充分な電荷の熱安定性、経時安定性等を確保できる。該含有量が30質量%以下であると、重合体(A)との混和性が良好であり、コーティング液中での分布が均一となる。
[溶媒]
コーティング液は、少なくとも重合体(A)を溶解する溶媒を含有する。該溶媒としては、使用する重合体(A)に応じて適宜選択すればよく、たとえば、重合体(A)として前記含フッ素重合体を用いる場合は、含フッ素有機溶媒を用いることができる。
含フッ素有機溶媒としては、非プロトン性含フッ素溶媒が好ましい。「非プロトン性含フッ素溶媒」とは、プロトン供与性を有さない含フッ素溶媒である。
非プロトン性含フッ素溶媒としては、たとえば、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のポリフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリブチルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物、パーフルオロデカリン等のポリフルオロシクロアルカン化合物、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物、パーフルオロポリエーテル、ポリフルオロアルカン化合物、ハイドロフルオロエーテル(HFE)などを用いることができる。
含フッ素有機溶媒としては、溶解度が大きく、良溶媒であることから、非プロトン性含フッ素溶媒のみを用いることが好ましい。
また、含フッ素有機溶媒の沸点は、65〜220℃が好ましい。含フッ素有機溶媒の沸点が100℃以上であれば、コーティングの際に均一な膜を形成しやすい。
シランカップリング剤または化合物(C)を溶解する溶媒としては、プロトン性含フッ素溶媒が好ましい。「プロトン性含フッ素溶媒」とは、プロトン供与性を有する含フッ素溶媒である。
プロトン性含フッ素溶媒としては、たとえば、2−(パーフルオロオクチル)エタノールなどの含フッ素アルコール、含フッ素カルボン酸、含フッ素カルボン酸のアミド、含フッ素スルホン酸などを用いることができる。
コーティング液の調製に用いる溶媒は、水分含量が少ないことが好ましい。該水分含量は、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましい。
コーティング液における重合体(A)の濃度は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
コーティング液の固形分濃度は、形成しようとする膜厚に応じて適宜設定すればよい。通常、0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%が好ましい。
なお固形分は、質量を測定したコーティング液を常圧下200℃で1時間加熱することで、溶媒を留去し、残存する固形分の質量を測定して算出する。
本発明の静電誘導型発電素子は、当該静電誘導型発電素子が備えるエレクトレットが、従来のエレクトレットに比べて、保持した電荷の熱安定性に優れる。そのため、発電時の耐久性に優れる。また、特定の材料を含有するものであるため、電荷保持性能も高く、大きな発電出力が得られる。
特に、エレクトレットが、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体と、アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物を含む材料を含有すると、上記熱安定性がさらに向上する。また、該エレクトレットは、パターン電極および基板に対する密着性にも優れる。
エレクトレットに保持される電荷の熱安定性に優れることから、本発明の静電誘導型発電素子は、高温(たとえば80〜120℃)条件下における特性の劣化が生じにくい等の特徴がある。
また、重合体(A)が、従来使用されていた材料であるテフロン(登録商標)AFの絶縁破壊強度5kV/0.1mmより高い絶縁破壊強度を有する(たとえば主鎖に含フッ素脂肪族環を有する重合体であるCYTOP(登録商標)の絶縁破壊強度は11kV/0.1mmである。)。絶縁破壊強度が高いため、エレクトレットへの電荷注入量を増加でき、これによって、該エレクトレットを備えた発電素子の発電量を向上させることができる。
以下に、上記実施形態の具体例を実施例として説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各例において、体積固有抵抗値は、ASTM D257により測定された値である。
絶縁破壊電圧は、ASTM D149により測定された値である。
比誘電率は、ASTM D150に準拠し、周波数1MHzにおいて測定された値である。
固有粘度[η](30℃)(単位:dl/g)は、30℃で、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒として、ウベローデ型粘度計により測定された値である。
パーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体における重量平均分子量(Mw)は、日本化学会誌,2001,NO.12,P.661に記載の[η]とMwとの関係式([η]=1.7×10−4×Mw0.60)を用い、上記で測定した固有粘度より算出した値である。
また、以下の各例で、膜厚の測定は浜松ホトニクス社製光干渉式膜厚測定装置C10178を用いて行った。
<製造例1:コーティング液M1の調製>
(1)重合体溶液の調製:
パーフルオロブテニルビニルエーテル(CF=CFOCFCFCF=CF)の45g、イオン交換水の240g、メタノールの7g、および重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート粉末(((CHCHOCOO))の0.1gを、内容積500mLの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。系内を窒素で3回置換した後、40℃で23時間懸濁重合を行った。その結果、重合体B1の39gを得た。
該重合体B1の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、モノマーに存在した二重結合に起因する1660cm−1,1840cm−1付近の吸収はなかった。
該重合体B1を、空気中にて250℃で8時間熱処理した後、水中に浸漬して、末端基として−COOH基を有する重合体B2を得た。
該重合体B2の圧縮成形フィルムの赤外線吸収スペクトルを測定した結果、−COOH基に由来する1775、1810cm−1の特性吸収が認められた。
該重合体B2の固有粘度[η](30℃)は0.32dl/gであり、その結果から定量される該重合体の重量平均分子量Mwは287,000であった。
重合体B2の体積固有抵抗値は、>1017Ωcm、絶縁破壊電圧は、19kV/mm、比誘電率は、2.1であった。
重合体B2について示差走査熱分析(DSC)を行ったところ、重合体B2のガラス転移温度(Tg)は108℃であった。
パーフルオロトリブチルアミンに、上記重合体B2を9質量%の濃度で溶解させ、重合体溶液P1を得た。
(2)シランカップリング剤の配合:
上記重合体溶液P1の76.3gと、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランの0.3gを、2−(パーフルオロヘキシル)エタノールの4.4gに溶解したシランカップリング剤溶液とを混合した。これにより均一なコーティング液M1が得られた。
<製造例2:エレクトレットの作製、及び静電誘導型発電素子の発電試験>
厚さ0.7mmのパイレックス(登録商標)製のガラス基板上に、小型真空蒸着装置(アルバック社製「VPC−060」)を用いて蒸着を行い、Cr/Au/Cr(各層の厚さ:50nm/200nm/50nm)の順で積層された3層構造の金属薄膜を形成した。該金属薄膜に、フォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「AZP−4400」)を、約3μmの膜厚で塗布し、図15に示すパターンを有するフォトマスクを介して露光、現像を行った。続いてCr/Au/Crの各層をウェットエッチングすることにより、図15に示すパターンをパターニングして、ベース電極62a、ガード電極62b、配線63a、63bおよび外部端子接続部位64a、64bを形成した。図15中、符号61はガラス基板を示す。この際、Crのエッチングには日進化成社製「クロムエッチングTW液」を、Auのエッチングには関東化学社製「AURUM−302」を用いた。
図15に示すように、各ベース電極62aの一端が、それぞれ配線63aを介して外部端子接続部位64aに連絡され、各ガード電極62bの一端が、それぞれ配線63bを介して外部端子接続部位64bに連絡された構成とした。
図16に、図15中の位置X−X’における部分断面図を示す。
本製造例では、ベース電極62aの幅Wは280μm、電極間隔Wは25μmとした。ガード電極62bの幅Wは300μmとした。
次に、上記ガラス基板61上に、前記コーティング液M1を、1000rpmで20秒間の条件でスピンコートし、100℃で10分間のプリベークを行った。このスピンコートからプリベークまでの一連の操作を3回繰り返して厚さ15μmの塗膜を形成した後、280℃で60分間ベークしてコーティング膜を得た。
該コーティング膜上に、蒸着により厚さ約200nmのCu層を形成した。このCu層上にフォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「AZP−4400」)を約3μmの膜厚で塗布し、エレクトレット膜用のパターンを有するフォトマスクを介して露光、現像を行った。続いて、過酸化水素水/酢酸/水の1/1/10混合液によりウェットエッチングを行い、ベース電極62a上方部分のみを残すようにパターニングして、ライン状のCu層が等間隔に配置されたマスクを形成した。このとき、各ラインの幅は300μmとした。
次に、酸素プラズマによるドライエッチングを、100WのRFパワーで60〜70分間行い、コーティング膜をパターニングした。これにより、各ベース電極62a上に、幅300μmのライン状の角付きパターン膜が形成された。
その後、前述と同様のウェットエッチングによりCu層を剥離し、角付きパターン膜の上面を露出させた。
該角付きパターン膜について、以下の手順で、角の部分のRを求めた。
該ガラス基板61を割断し、断面写真をSEM(日立ハイテクノロジーズ社製S−4300)にて、倍率4000倍で撮影した。撮影した断面写真の画像をキーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−900に取り込み、内蔵されているソフトを用いて、パターン膜のパターン縁部の角の丸みにフィットした円の半径を計測し、その測定値をRとして求めた。その結果、Rは0.25μmであった。
次に、上記のようにして得られた角付きパターン膜を、表1に示す温度で1時間熱処理した。
熱処理後のパターン膜(以下、熱処理パターン膜という。)についてSEMで断面を観察したところ、上面から側面にかけて連続的に湾曲した曲面となっていた。該曲面について、Rを前記と同様の手順で求めた。
測定結果を表1および図17に示す。また、300℃で1時間の熱処理を行ったものについて、実際にRの測定に用いたSEM写真を図18に示す。
表1および図17に示すとおり、形成された曲面のRは、熱処理温度に比例していた。
次に、上記角付きパターン膜または熱処理パターン膜に、図19に概略構成を示すコロナ荷電装置でコロナ放電処理して電荷を注入し、エレクトレットとした。
該コロナ荷電装置においては、コロナ針72と、電極73とが対向配置され、直流高圧電源装置71(HAR−20R5;松定プレシジョン製)により、コロナ針72と電極73との間に高電圧を印加できるようになっている。コロナ針72と電極73との間にはグリッド74が配置され、該グリッド74にはグリッド用電源75からグリッド電圧を印加できるようになっている。これにより、コロナ針72から放電した負イオンが、グリッド74で均一化された後、電極73上に戴置したガラス基板61表面のパターン膜上に降り注ぎ、電荷が注入されるようになっている。また、パターン膜に注入される電荷の安定を図るため、ホットプレート76によって、電荷注入工程中のパターン膜をガラス転移温度以上に加熱できるようになっている。符号77は電流計である。
本製造例においては、ホットプレート76による角付きパターン膜または熱処理パターン膜の加熱温度を、用いた重合体(重合体B2)のガラス転移温度(108℃)より12℃高い120℃とした。
そして、大気雰囲気下、コロナ針72と電極73との間に−8kVの高電圧を10分間印加した。また、その間のグリッド電圧は、−1,100Vとした。
得られたエレクトレットについて、電荷を注入した直後の表面電位を、以下の手順で測定したところ、−600Vであった。
表面電位計(model279;モンローエレクトロニクス製)を用い、エレクトレット上の9点の測定点(パターニング膜の中心から3mm間隔で6mm角の正方形上で測定)の表面電位を測定した平均値である(以降において同じ)。
続いて、得られたエレクトレットを用いて、静電誘導型発電素子として適用した場合を想定した発電試験を行った。本発電試験は国際公開第2008/114489号パンフレットに記載の実施例4の方法に従って行った。
前記のエレクトレットに対して、図1に示すような対向基板(表面に電極22が形成された第二の基板21、電極22の幅:300μm、電極間隔:15μm)を、エレクトレットとの間隔が100μmとなるように平行に配置し、加速度1G、振動周波数20Hz、振幅1.2mmの振動を与えた。その間、外部負荷を通して電圧変化を測定し、発電量を計測したところ120μWの発電が可能であることを確認した。
本結果から、本発明のエレクトレットは静電誘導型発電素子として適用できることがわかった。
[熱安定性試験]
得られたエレクトレットについて、センサー電源用の静電誘導型発電素子を想定して、前記Rが100℃における熱安定性に与える影響を以下の手順で評価した。
エレクトレットが形成されたガラス基板61を、恒温層内にて100℃で保管した。保管開始から所定時間(0時間(h)、3h、6h、20h、25h、45h、100h、115h、300h)経過した時、該基板61を装置から取出して常温に戻し、前記と同様の手順で表面電位を測定した。
測定結果から、下記式により表面電位残存率(%)を算出した。
表面電位残存率(%)=各経過時間において測定された表面電位(V)/試験開始時の表面電位(V)×100
その結果を表2および図20に示す。該結果に示すとおり、前記Rが1.0〜3.7μmのエレクトレットは、表面電位残存率が高かった。一方、前記Rが0.25μmの、熱処理を行わなかった角付きパターン膜を用いたエレクトレットは、表面電位残存率が低かった。
<製造例3:エレクトレットの作製>
前記製造例2において、ベース電極の幅を130μmおよびガード電極の幅を150μm(電極間隔は変更なし)とし、パターン膜の幅を150μmとした以外は製造例2と同様の手順で角付きパターン膜および熱処理パターン膜を形成し、Rを測定した。その結果を表3に示す。
次に、角付きパターン膜または熱処理パターン膜に、製造例3と同様にして電荷を注入し、エレクトレットとし、熱安定性試験を行った。その結果を表4に示す。該結果に示すとおり、前記Rが1.1〜4.0μmのエレクトレットは、表面電位残存率が高かった。一方、前記Rが0.2μmの、熱処理を行わなかった角付きパターン膜を用いたエレクトレットは、表面電位残存率が低かった。
11…第一の基板、12…電極、13…パターン膜、14…ガード電極、21…第二の基板、22…電極、30…電極付き基板、31…角付きパターン膜、31’…R付きパターン膜、41…コーティング膜、41’…R付きパターン膜、42…レジスト膜、42’…レジストマスク、43…マスク、44…レジスト膜、44’…レジストマスク、45…レジスト膜、45’…レジストマスク、46…モールド、47…ポリマー膜、51…コーティング液、51’…パターン液層、51”…R付きパターン膜、52…スクリーン、53…撥油部、61…ガラス基板、62a…ベース電極、62b…ガード電極、63a,63b…配線、64a,64b…外部端子接続部位、71…直流高圧電源装置、72…コロナ針、73…電極、74…グリッド、75…グリッド用電源、76…ホットプレート、77…電流計

Claims (6)

  1. 基板と、該基板上に形成されたパターン電極と、該パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン膜に電荷を注入したエレクトレットとを備え、
    該パターン膜は、主鎖に脂肪族環を有する重合体(A)または該重合体(A)に由来する材料(A’)を含有し、
    該パターン膜の上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を有する静電誘導型発電素子の製造方法であり、
    基板上にパターン電極を形成する電極形成工程と、
    前記パターン電極上に前記パターン膜を形成するパターン膜形成工程と、
    前記パターン膜に電荷を注入してエレクトレットとする電荷注入工程と、
    を有し、
    前記パターン膜形成工程にて、前記パターン電極が形成された基板上に、前記重合体(A)を含むコーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして、上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を実質的に有さないパターン膜を形成し、該パターン膜を熱処理することにより、該パターン膜の上面から側面にかけて連続的に湾曲する曲率半径0.5〜15μmの曲面を形成することを特徴とする静電誘導型発電素子の製造方法
  2. 前記重合体(A)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である、請求項1に記載の静電誘導型発電素子の製造方法
  3. 前記重合体(A)は、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体である、請求項1または2に記載の静電誘導型発電素子の製造方法
  4. 前記材料(A’)は、前記重合体(A)と、アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物を含む材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法
  5. 前記熱処理を、前記重合体(A)のガラス転移温度+20℃以上の温度で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法。
  6. 前記コーティング液は、前記重合体(A)として、主鎖に脂肪族環を有すると共に、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する重合体を含有し、さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電誘導型発電素子の製造方法。
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