JP2014087149A - 振動発電装置用帯電樹脂基材 - Google Patents

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Takeshi Matsumoto
武志 松本
Akio Ito
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Abstract

【課題】表面電位保持性に優れ、静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極などに好適に使用することができる帯電樹脂基材、簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極、および簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極を有する振動発電装置を提供する。
【解決手段】振動発電装置に用いられる帯電樹脂基材であって、樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理が施されている振動発電装置用帯電樹脂基材、前記振動発電装置用帯電樹脂基材が導電性基板上に設けられてなるエレクトレット電極、および前記エレクトレット電極を有する振動発電装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、振動発電装置用帯電樹脂基材に関する。さらに詳しくは、本発明は、振動発電装置用帯電樹脂基材、当該帯電樹脂基材を有するエレクトレット電極、および当該エレクトレット電極を有する静電誘導型振動発電装置などの振動発電装置に関する。
近年、小規模でありながら効率よく出力することができることから、静電誘導型振動発電装置が着目されている。前記静電誘導型振動発電装置として、エレクトレット基材表面と、当該エレクトレット基材表面に対向する導電性表面領域と、エレクトレット基材表面と導電性表面領域との間に配設された誘電体基材とを備える発電装置が提案されている(例えば、特許文献1の請求項11参照)。
静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極として、導電膜と電荷を保持したシリコン酸化膜とを有し、導電膜とシリコン酸化膜との間に、第1の絶縁膜が導電膜に近い側に位置するように第1の絶縁膜と第2の絶縁膜とが積層された積層体を含む絶縁膜が配設されたエレクトレット電極が提案されている(例えば、特許文献2の請求項1参照)。前記エレクトレット電極によれば、電荷が保持された領域と導電膜との間の距離を実質的に大きくすることができるとともに、表面電位(表面電荷密度)を高くすることができるとされている。しかし、前記エレクトレット電極は、導電膜、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜およびシリコン酸化膜の4層構造という複雑な構造を必要とする。
したがって、表面電位保持性に優れ、静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極などに好適に使用することができる帯電樹脂基材、簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極、および簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極を有する振動発電装置の開発が望まれている。
特表2005−529574号公報 国際公開第2010/047076号パンフレット
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、表面電位保持性に優れ、静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極などに好適に使用することができる帯電樹脂基材、簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極、および簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極を有する振動発電装置を提供することを目的とする。
本発明は、
(1) 振動発電装置に用いられる帯電樹脂基材であって、樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理が施されていることを特徴とする振動発電装置用帯電樹脂基材、
(2) 樹脂基材に用いられる樹脂のガラス転移温度が120℃以上である前記(1)に記載の振動発電装置用帯電樹脂基材、
(3) 樹脂基材に用いられる樹脂がシクロオレフィン系樹脂および架橋スチレン系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である前記(1)または(2)に記載の振動発電装置用帯電樹脂基材、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の振動発電装置用帯電樹脂基材が導電性基板上に設けられてなるエレクトレット電極、
(5) 前記(4)に記載のエレクトレット電極を有する振動発電装置、ならびに
(6) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の振動発電装置用帯電樹脂基材に用いられる樹脂基材であって、当該樹脂基材に用いられる樹脂がシクロオレフィン系樹脂および架橋スチレン系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする樹脂基材
に関する。
本発明によれば、表面電位保持性に優れ、静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極などに好適に使用することができる帯電樹脂基材、簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極、および簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れたエレクトレット電極を有する振動発電装置が提供される。
本発明の実施例1および比較例1で用いられた帯電化処理法の概略説明図である。
本発明の振動発電装置用帯電樹脂基材は、前記したように、振動発電装置に用いられる帯電樹脂基材であり、樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理が施されていることを特徴とする。以下、本発明の振動発電装置用帯電樹脂基材は、便宜上、単に帯電樹脂基材ともいう。
樹脂基材に用いられる樹脂は、表面電位保持性を向上させる観点から、ガラス転移温度が120℃以上の樹脂であることが好ましい。前記樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定されたときのガラス転移温度である。なお、架橋構造を有する樹脂については、当該樹脂のガラス転移温度を測定することが困難である場合には、当該架橋構造を有する樹脂はガラス転移温度が120℃以上の樹脂として扱う。
前記樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、架橋スチレン系樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、式(I):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有するシクロオレフィン系樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(I)において、アルキル基としては、例えば、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル基のなかでは、表面電位保持性を向上させる観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好ましい。
式(I)において、シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜10のシクロアルキル基、好ましくは炭素数3〜8のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキル基のなかでは、表面電位保持性を向上させる観点から、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基が好ましい。
シクロオレフィン系樹脂における式(I)で表わされる繰返し単位の含有率は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%である。したがって、シクロオレフィン系樹脂は、式(I)で表わされる繰返し単位のみで構成されていてもよい。
シクロオレフィン系樹脂には、式(I)で表わされる繰返し単位以外の単位が含まれていてもよい。式(I)で表わされる繰返し単位以外の単位としては、例えば、式(II):
−[CH2−CHR3]− (II)
(式中、R3は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す)
で表わされる繰返し単位などが挙げられる。
式(II)で表わされる繰返し単位において、アルキル基としては、例えば、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル基のなかでは、表面電位保持性を向上させる観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好ましい。
式(II)で表わされる繰返し単位において、アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、m−トリル基、p−トリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロフェニル基、m−トリフルオロフェニル基、p−トリフルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シクロオレフィン系樹脂における式(II)で表わされる繰返し単位の含有率は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜60モル%である。したがって、シクロオレフィン系樹脂は、式(II)で表わされる繰返し単位が含まれていなくてもよい。
シクロオレフィン系樹脂は、例えば、ノルボルネン系モノマーを開環メタセシス重合させ、得られた樹脂に水素添加することによって容易に調製することができるが、本発明は、当該シクロオレフィン系樹脂の調製方法の例示のみに限定されるものではない。
シクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは10000〜200000、より好ましくは20000〜100000である。また、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは120℃以上であり、その上限値は特に限定されないが、本発明の帯電樹脂基材の成形性を向上させる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
シクロオレフィン系樹脂は、例えば、日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオネックス、ゼオノア;JSR(株)製、商品名:アートン;三井化学(株)製、商品名:アペルなどとして商業的に容易に入手することができるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
架橋スチレン系樹脂としては、例えば、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、表面電位保持性を向上させる観点から、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーが好ましい。
架橋ポリスチレンは、例えば、ポリスチレンに塗膜などの形態で電子線などの活性エネルギー線を照射することによって得ることができる。
スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーは、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させることによって容易に調製することができる。ジビルベンゼンは、2官能モノマーであることから、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーは、通常、架橋構造を有する。スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーにおけるスチレン含量は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜97質量%である。なお、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーは、前記したように、通常、架橋構造を有することから、当該スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーの分子量を容易に決定することができない。スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのガラス転移温度は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは120℃以上であり、その上限値は特に限定されないが、本発明の帯電樹脂基材の成形性を向上させる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
樹脂基材は、前記樹脂のみで構成されていてもよく、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の種類の樹脂、添加剤などが当該樹脂基材に含まれていてもよい。
前記樹脂基材の形状は、本発明の振動発電装置用帯電樹脂基材の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該用途などに応じて適宜決定することが好ましい。前記樹脂基材の形状としては、例えば、フィルム状、電極パターン状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の振動発電装置用帯電樹脂基材は、前記樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理を施すことによって製造することができる。
樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理を施す順序は、特に限定されないが、表面電位保持性を向上させる観点から、樹脂基材にフッ素化処理を施した後に帯電処理を施すことが好ましい。以下では、樹脂基材にフッ素化処理を施した後に帯電処理を施す場合について説明する。
樹脂基材にフッ素化処理を施す方法としては、例えば、樹脂基材にフッ素ガスと不活性ガスを含むガスを接触させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。樹脂基材にフッ素ガスと不活性ガスを含むガスを接触させる方法を採用する場合、より具体的には、以下のようにして樹脂基材をフッ素化させることができる。
まず、樹脂基材をフッ素化処理用容器に入れ、当該容器を密閉し、容器内の圧力を500Pa以下に減圧し、容器内に不活性ガスとフッ素ガスとの混合ガスを導入することにより、樹脂基材とフッ素ガスとを接触させた状態を室温〜200℃の温度で10分間〜24時間程度維持することにより、樹脂基材にフッ素化処理を施すことができる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、不活性ガスとフッ素ガスとの混合ガスにおけるフッ素ガスの含有率は、樹脂フィルムのフッ素化を効率よく行なうとともに安全性を高める観点から、好ましくは5〜80体積%、より好ましく10〜60体積%である。
樹脂基材のフッ素化の程度は、例えば、X線光電子分光分析装置を用いて当該樹脂基材の表面のX線光電子分光分析を行なうことによって確認することができる。樹脂基材表面におけるフッ素の含有率は、表面電位保持性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。
次に、フッ素化処理が施された樹脂基材に帯電処理を施す。帯電処理の方法としては、例えば、コロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、フッ素化処理が施された樹脂基材に帯電処理を施す際に印加する電圧は、樹脂基材の化学的安定性および帯電処理の効率化の観点から、−30〜−5kVまたは5〜30kVであることが好ましい。
以上のようにして樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理を施すことにより、帯電樹脂基材を製造することができる。このようして製造された帯電樹脂基材は、振動発電装置用帯電樹脂基材として好適に使用することができる。
なお、本発明の帯電樹脂基材に用いられる樹脂基材がフィルム状である場合、すなわち前記樹脂基材が樹脂フィルムである場合、本発明のフィルム状の帯電樹脂基材は、例えば、以下のようにして製造することができる。
樹脂フィルムを製造する方法としては、例えば、溶液製膜法;溶融押出法、押出成形法などの溶融製膜法;カレンダー法;プレス成形法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、樹脂フィルムの生産性に優れていることから、溶液製膜法および溶融製膜法が好ましい。
樹脂フィルムを溶液製膜法によって製造する場合、前記樹脂を溶媒に溶解させ、得られた樹脂溶液を基板に塗布する。樹脂溶液を基板に塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、フローコート法、はけ塗り法、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、キャストコート法、ダイコート法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記溶媒は、前記樹脂を溶解し、所望の厚さの樹脂フィルムを均一に形成するものであればよく、特に限定されない。前記溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコールなどのアルコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセト酢酸メチル、乳酸メチルなどの脂肪族有機酸アルキルエステル;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、エチルベンゼン、ヘキサフルオロメタキシレンなどのハロゲン原子を有していてもよい芳香族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記樹脂溶液における樹脂の含有率は、樹脂フィルムの厚さを大きくする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、均一な樹脂フィルムを形成させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
樹脂溶液を基板に塗布した後には、形成された樹脂フィルムをベークなどによって乾燥させることにより、樹脂フィルムに含まれている溶媒を除去することができる。
樹脂フィルムの厚さは、樹脂フィルムのフィルム強度を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、樹脂フィルムを薄膜化させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
次に、樹脂フィルムにフッ素化処理および帯電処理を施すことにより、フィルム状の帯電樹脂基材を製造することができる。
樹脂フィルムにフッ素化処理および帯電処理を施す順序は、特に限定されないが、前記したように、表面電位保持性を向上させる観点から、樹脂フィルムにフッ素化処理を施した後に帯電処理を施すことが好ましい。
樹脂フィルムにフッ素化処理を施す方法は、前記樹脂基材にフッ素化処理を施す方法と同様であればよい。また、フッ素化処理が施された樹脂フィルムに帯電処理を施すが、当該帯電処理の方法は、前記樹脂基材に帯電処理を施す方法と同様であればよい。
以上のようにして樹脂フィルムにフッ素化処理および帯電処理を施すことにより、フィルム状の帯電樹脂基材を製造することができる。
本発明のエレクトレット電極は、前記帯電樹脂基材を導電性基板に設けることによって製造することができる。
導電性基板としては、例えば、銅、金、銀、白金、ニッケル、クロム、ニッケル−クロム合金、アルミニウムなどの導電性金属からなる基板が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの導電性基板のなかでは、銅からなる基板が好ましい。なお、基板として、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂からなる基板、シリコンからなる基板、ガラスなどの絶縁性基板などの絶縁性の基板を用いる場合には、当該絶縁性の基板は、その表面に導電性金属からなる薄膜を形成させることにより、用いることができる。導電性金属からなる薄膜を形成させる方法としては、例えば、メッキ、コーティング、蒸着、スパッタリングなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
導電性基板の形状は、特に限定されないが、通常、平板状である。導電性基板の大きさおよび厚さは、当該導電性基板の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該用途などに応じて適宜決定することが好ましい。
導電性基板上に帯電樹脂基材を設ける方法としては、例えば、
(1) 前記樹脂溶液を導電性基板の表面に塗布し、形成されたフィルム状の樹脂基材(例えば、樹脂フィルムなど)を乾燥させた後、前記と同様にして当該樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理を施す方法、
(2) 導電性基板の表面に熱融着、接着剤による接着などの手段によって帯電樹脂基材を貼り付ける方法
などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、前記(1)の方法は、接着剤などを使用しないで導電性基板と帯電樹脂基材とを強固に接着させることができるので好ましい。
前記(1)の方法によって導電性基板上に帯電樹脂基材が設けられたエレクトレット電極を製造する場合、導電性基板上に樹脂基材を形成させる方法としては、例えば、溶液製膜法;溶融押出法、押出成形法などの溶融製膜法;カレンダー法;プレス成形法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、生産性に優れていることから、溶液製膜法および溶融製膜法が好ましい。
樹脂基材を溶液製膜法によって製造する場合、前記した樹脂フィルムを製造する方法と同様にして、当該樹脂を溶媒に溶解させ、得られた樹脂溶液を導電性基板に塗布することにより、導電性基板上にフィルム状の樹脂基材を形成させることができる。前記溶媒は、前記樹脂溶液を製造する際に用いられる溶媒と同様のものが例示される。また、樹脂溶液における樹脂の含有率は、前記樹脂溶液を製造するときと同様であればよい。樹脂溶液を導電性基板に塗布した後には、形成されたフィルム状の樹脂基材をベークなどによって乾燥させることにより、樹脂基材に含まれている溶媒を除去することができる。
導電性基板上に形成されたフィルム状の樹脂基材の厚さは、前記樹脂フィルムと同様であればよい。より具体的には、導電性基板上に形成された樹脂基材の厚さは、機械的強度を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、樹脂基材を薄膜化させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
次に、導電性基板上に形成された樹脂基材に、前記と同様の方法により、フッ素化処理および帯電処理を施すことにより、本発明のエレクトレット電極が得られる。
前記(1)の方法によってエレクトレット電極を製造する場合、当該エレクトレット電極を製造する具体的な方法としては、例えば、
(イ) 導電性基板の表面に樹脂溶液を塗布することによって樹脂基材を形成し、形成された樹脂基材上に電極パターンに対応した形状を有するマスクを介して紫外線、電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線が照射された樹脂基材を硬化させ、未硬化の樹脂基材を溶解する有機溶媒を用いて当該未硬化の樹脂基材を溶解させて除去することにより、所定の電極パターンを有する樹脂基材を形成させ、当該樹脂基材に、前記と同様にしてフッ素化処理および帯電処理を施すことにより、所定の電極パターンを有する帯電樹脂基材を有するエレクトレット電極を製造する方法、
(ロ) 導電性基板の表面に樹脂溶液を塗布することによって樹脂基材を形成し、形成された樹脂基材にフッ素化処理を施した後、フッ素化処理が施された樹脂基材上にさらに樹脂溶液を塗布することによって樹脂基材を形成し、電極パターンに対応した形状を有するマスクを介して当該積層構造の樹脂基材にエッチングなどを施すことにより、所定の電極パターンがパターニングされた樹脂基材を形成させ、当該樹脂基材に帯電処理を施すことにより、エレクトレット電極を製造する方法、
(ハ) 導電性基板の表面に樹脂溶液をインクジェット法、スクリーン印刷法などによって所定の電極パターンに塗布し、必要により、形成された塗膜に紫外線、電子線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化させ、形成された所定の電極パターンを有する樹脂基材に、前記と同様にしてフッ素化処理および帯電処理を施すことにより、所定の電極パターンを有する帯電樹脂基材を有するエレクトレット電極を製造する方法
などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記方法のなかでは、前記(イ)の方法は、エッチングを必要としないので、効率よく電極パターンを有する帯電樹脂基材を製造することができ、当該方法によって得られたエレクトレット電極は、大気と接触する表面に露出している帯電樹脂基材にフッ素化処理が施されていることから電荷保持性に優れるという利点を有する。また、前記(ロ)の方法は、絶縁性に優れているフッ素化処理が施された表面を有する帯電樹脂層上にさらに帯電樹脂層が形成されていることから、当該方法によって得られたエレクトレット電極は、表面電位保持性に優れるという利点を有する。
以上のようにして得られる本発明のエレクトレット電極は、表面電位保持性に優れているので、例えば、静電誘導型振動発電装置などの振動発電装置に好適に用いることができる。静電誘導型振動発電装置は、エレクトレット電極基板と、当該エレクトレット電極基板に対向する対向電極とが電気的に接続されたものであり、エレクトレット電極基板と対向電極とが相対的にそれらの水平方向に振動するように、エレクトレット電極基板および/または対向電極を振動させることにより、電流を発生させる装置である。本発明は、前記振動発電装置の種類によって限定されるものではなく、エレクトレット電極として本発明のエレクトレット電極が用いられている振動発電装置は、本発明の範囲に包含される。
以上説明したように、本発明の帯電樹脂基材は、表面電位保持性に優れていることから、例えば、静電誘導型振動発電装置のエレクトレット電極などに好適に使用することができる。また、本発明のエレクトレット電極は、前記帯電樹脂基材が用いられているので、簡単な構造を有し、表面電位保持性に優れていることから、静電誘導型振動発電装置などの振動発電装置に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
シクロオレフィン系樹脂〔日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオネックス480、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシスポリマーの水素添加ポリマー〕をキシレンに溶解させ、30質量%シクロオレフィン系樹脂のキシレン溶液を調製した。なお、前記シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量分析にて調べたところ、当該シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度は138℃であった。
次に、前記で得られた溶液を導電性基板(縦:5cm、横:5cm、厚さ:300μmの銅製の基板)にスピンコート法で塗布し、180℃の温度で焼成(ベーク)することにより、導電性基板上に厚さ15μmの樹脂フィルムを形成させた。
前記で得られた樹脂フィルムを有する導電性基板を樹脂製容器内に入れ、容器内を100Paに減圧した後、当該容器内に窒素ガスを導入することにより、当該容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、容器内のフッ素ガスの含有率が20体積%となるように、容器内にフッ素ガスを導入し、当該容器内の雰囲気を70℃で60分間加熱することにより、樹脂フィルムをフッ素化させた。
次に、前記で樹脂フィルムを有する導電性基板をフッ素化させた基板に以下の帯電化処理法に従ってコロナ放電を施し、電荷を樹脂フィルムに注入することにより、エレクトレット電極を得た。
〔帯電化処理法〕
図1の帯電化処理法の概略説明図に示されるように、銅製のステージ1上に、樹脂フィルム4が上面となるように導電性基板2を載置した。ワイヤー電極3に−8kVの負電圧を印加し、ワイヤー電極3の下方で当該ワイヤー電極3と接触しない状態で、矢印A方向にステージ1を通過させることにより、負電荷を矢印B方向に印加させて導電性基板2の樹脂フィルム4に負電荷を注入し、電荷注入後1秒間以内に電荷が注入された樹脂フィルム4の表面電位を表面電位計5で測定した。電荷注入後1秒間以内に電荷が注入された樹脂フィルム4の表面電位が−1200Vとなるまで、この一連の操作を繰り返すことにより、エレクトレット電極6を得た。
次に、前記で得られたエレクトレット電極の物性として表面電位保持性を以下の方法に従って調べ、樹脂フィルムの表面のX線光電子分光分析を行なった。その結果、表面電位保持性の評価は「5点」であった。また、X線光電子分光分析の結果、樹脂フィルムの表面にはフッ素原子が45.2モル%、炭素原子が54.4モル%、酸素原子が0.4モル%存在しており、当該樹脂フィルムの表面がフッ素化されていることが確認された。
(1)表面電位保持性
シリカゲルを入れたデシケータ内にエレクトレット電極を入れて蓋をし、当該デシケータを23℃の恒温室に入れて200時間保管した後、表面電位計でエレクトレット電極の表面電位を測定し、以下の評価基準に基づいて表面電位保持性を評価した。
[表面電位保持性の評価基準]
5点:200時間保管後の表面電位の絶対値が1000V以上
4点:200時間保管後の表面電位の絶対値が800V以上1000V未満
3点:200時間保管後の表面電位の絶対値が600V以上800V未満
2点:200時間保管後の表面電位の絶対値が400V以上600V未満
1点:200時間保管後の表面電位の絶対値が400V未満
(2)X線光電子分光分析
エレクトレット電極の樹脂フィルムの表面を清浄化するために、アルゴンガス雰囲気中で500Vの電圧を当該エレクトレット電極の樹脂フィルムの表面に1秒間印加することにより、当該樹脂フィルムの表面をエッチングした後、X線光電子分光分析装置〔日本電子(株)製、品番:JPS−9000M〕を用いて当該樹脂フィルムの表面のX線光電子分光分析を行ない、検出された全元素における各元素の含有率を求めた。
実施例2
ポリスチレン(アルドリッチ社製、重量平均分子量:35万)6質量部、スチレン10質量部、ジビニルベンゼン4質量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名:イルガキュア651)0.7質量部および溶媒として酢酸ブチル6質量部を均一な組成となるように混合した。得られた混合物を導電性基板(縦:5cm、横:5cm、厚さ:300μmの銅製の基板)にスピンコート法で塗布し、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後、180℃の温度で焼成(ベーク)することにより、導電性基板上に厚さ15μmの樹脂フィルムを形成させた。
前記で得られた樹脂フィルムを有する導電性基板の当該樹脂フィルムを実施例1と同様にしてフッ素化させた後、電荷を当該樹脂フィルムに注入することにより、エレクトレット電極を得た。
次に、前記で得られたエレクトレット電極の樹脂フィルムの表面のX線光電子分光分析を行なったところ、当該樹脂フィルムの表面にはフッ素原子が42.2モル%、炭素原子が57.8モル%存在しており、当該樹脂フィルムの表面がフッ素化されていることが確認された。この樹脂フィルムの表面電位保持性を実施例1と同様にして調べたところ、表面電位保持性の評価は「4点」であった。
比較例1
シクロオレフィン系樹脂〔日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオネックス480、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシスポリマーの水素添加ポリマー〕をキシレンに溶解させ、30質量%シクロオレフィン系樹脂のキシレン溶液を調製した。なお、前記シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量分析にて調べたところ、当該シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度は138℃であった。
前記で得られた溶液を銅製の基板(縦:5cm、横:5cm、厚さ:300μm)にスピンコート法で塗布し、180℃の温度で焼成(ベーク)することにより、基板上に厚さ15μmの樹脂フィルムを形成させた。その後、樹脂フィルムに実施例1と同様にしてコロナ放電を施すことによって電荷を樹脂フィルムに注入し、エレクトレット電極を得た。
次に、実施例1と同様にして、前記で得られたエレクトレット電極の物性として表面電位保持性を調べ、樹脂フィルムの表面のX線光電子分光分析を行なった。その結果、表面電位保持性の評価は「2点」であった。また、X線光電子分光分析の結果、エレクトレット電極の樹脂フィルムの表面にはフッ素原子が0モル%、炭素原子が98.2モル%、酸素原子が1.8モル%存在しており、当該樹脂フィルムの表面がフッ素化されていないことが確認された。
比較例2
実施例2と同様にして導電性基板上に厚さ15μmの樹脂フィルムを形成させた。前記で得られた樹脂フィルムを有する導電性基板の当該樹脂フィルムの表面のX線光電子分光分析を行なったところ、当該樹脂フィルムの表面には炭素原子が99.7モル%、酸素原子が0.3モル%存在していることが確認された。この樹脂フィルムの表面電位保持性を実施例1と同様にして調べたところ、表面電位保持性の評価は「1点」であった。
比較例3
パーフルオロブテニルビニルエーテルを重合開始剤(ジイソプロピルパーオキシジカルボネート)の存在下で環化重合させ、当該ジイソプロピルパーオキシジカルボネートに由来の不安定な分子の末端基を安定化させるために、得られた樹脂に熱処理を施すことによって当該分子の末端基を−COF基とした後、当該−COF基を加水分解により−COOH基とすることにより、パーフルオロポリブテニルビニルエーテルを得た。
前記で得られたパーフルオロポリブテニルビニルエーテルのフィルムの赤外吸収スペクトルを調べたところ、波数1775cm-1および1810cm-1においてカルボキシル基に由来するスペクトルが認められた。また、パーフルオロポリブテニルビニルエーテルのパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)溶液を用いて当該パーフルオロポリブテニルビニルエーテルの固有粘度[η]を調べたところ、当該固有粘度[η]は0.23であった。
前記で得られたパーフルオロポリブテニルビニルエーテルをパーフルオロトリブチルアミンに溶解させることにより、13質量%のパーフルオロトリブチルアミンのパーフルオロポリブテニルビニルエーテル溶液を調製した。
前記で得られた溶液を銅製の基板(縦:5cm、横:5cm、厚さ:300μm)にスピンコート法で塗布し、180℃の温度で焼成(ベーク)することにより、基板上に厚さ15μmの樹脂フィルムを形成させた。その後、樹脂フィルムに実施例1と同様にしてコロナ放電を施すことによって電荷を樹脂フィルムに注入し、エレクトレット電極を得た。
次に、実施例1と同様にして、前記で得られたエレクトレット電極の物性として表面電位保持性を調べた。その結果、表面電位保持性の評価は「3点」であった。
以上の結果から、各実施例で得られたエレクトレット電極は、樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理を施すことによって得られた帯電樹脂基材が用いられているので、簡単な構造を有し、しかも表面電位保持性に優れていることがわかる。
1 ステージ
2 導電性基板
3 ワイヤー電極
4 樹脂フィルム
5 表面電位計
6 エレクトレット電極

Claims (6)

  1. 振動発電装置に用いられる帯電樹脂基材であって、樹脂基材にフッ素化処理および帯電処理が施されていることを特徴とする振動発電装置用帯電樹脂基材。
  2. 樹脂基材に用いられる樹脂のガラス転移温度が120℃以上である請求項1に記載の振動発電装置用帯電樹脂基材。
  3. 樹脂基材に用いられる樹脂がシクロオレフィン系樹脂および架橋スチレン系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1または2に記載の振動発電装置用帯電樹脂基材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の振動発電装置用帯電樹脂基材が導電性基板上に設けられてなるエレクトレット電極。
  5. 請求項4に記載のエレクトレット電極を有する振動発電装置。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の振動発電装置用帯電樹脂基材に用いられる樹脂基材であって、当該樹脂基材に用いられる樹脂がシクロオレフィン系樹脂および架橋スチレン系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする樹脂基材。
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