JP2012206630A - 移動体 - Google Patents

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史子 中山
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王明 柏木
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Abstract

【課題】従来に比べて配線数が低減され、バッテリの負荷が少ない移動体の提供。
【解決手段】振動発電器を備える移動体であって、前記振動発電器が、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備えることを特徴とする移動体。
【選択図】なし

Description

本発明は、振動発電器を備えた移動体に関する。
自動車、鉄道車両等の各種車両、航空機、船等の移動体には様々なセンサ装置が搭載されている。特に自動車は、近年、環境・エネルギー問題への対応、安全性や快適性の向上等を目的として1台あたり数10種のセンサ装置が搭載されるようになっている。それらのセンサ装置が検知した情報は車載LANに送られ、その情報を元にパワトレイン制御、車両制御、ボディー制御等の種々の制御が行われる。
例えばTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)として、センサおよび無線通信手段を備えたセンサ装置をタイヤやホイールの内部に設置し、受信装置を車体側に設置したものがある。該システムでは、センサ装置で検知した情報が受信装置に送信され、受信装置から車載LANに送られ、該情報を元に、タイヤの空気圧や温度が規定値の範囲外になった際には警報を発するようになっている。
上記システムに用いられるセンサ装置は、通常、センサおよび無線通信手段のほか、センサからの情報の処理および無線通信手段の動作の制御を行う制御手段を備えている。また、タイヤ外部からの電力供給が困難であるため、駆動に必要な電力を供給する電源も備えている。該電源としては、従来、電池が用いられていた。しかしこの場合、定期的に電池の点検や交換を行う必要がある。近年、低消費電力の無線通信技術の開発は進んでいるが、例えば、消費電力の大きい通信頻度を1回/日程度に抑え、電池容量の大きいリチウム一次電池を使用しても、5年以上安定的にかつ長期にわたる動作は難しい。また、交換による廃電池は環境上の問題にもなる。
そこで、タイヤ内等に設置されるセンサ装置の電源として、電池の代わりに、電磁誘導型の振動発電器や圧電型の振動発電器を用いることが提案されている(特許文献1〜2)。振動発電器は、振動や回転により生じる運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。例えば電磁誘導型の振動発電器の場合、一般的に、振動により回転する回転錘と、輪列機構と、ロータと、ロータの回転により生じる磁界変動により発電する発電コイルと、ロータの磁束を発電コイルに伝達するステータとを備えており、外部からの振動により回転錘が回転すると、その回転が輪列機構により増幅されてロータに伝達され、ロータを高速回転させる。このロータの回転により生じる磁束の変化がステータにより発電コイルに伝達され、電圧が誘起されて交流電力が取り出される。取り出された交流電力は、直流電力に整流され、キャパシタ、バッテリ等の蓄電装置に蓄えられる。
一方、従来、コンデンサマイクロフォンや静電誘導型の振動発電器に、絶縁材料に電荷を注入したエレクトレット(Electret)を使用した静電誘導型変換素子が用いられている。エレクトレットを構成する絶縁材料としては、従来、主に、二酸化ケイ素等の無機材料が用いられている(特許文献3)。また、有機系の絶縁材料として、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の鎖状の高分子化合物、シクロオレフィンポリマー等の主鎖に脂肪族環構造を有する高分子化合物も使用されている。
最近、エレクトレット材料として、主鎖に脂肪族環構造を有する高分子化合物、例えばシクロオレフィンポリマーや、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体を用いることが提案されている(特許文献4)。また、このような含フッ素重合体を用いたエレクトレットの表面電荷密度の向上のために、アミノ基を有するシランカップリング剤を配合することが提案されている(特許文献5)。
特開2000−272312号公報 特開2006−054956号公報 国際公開第2010/047076号 特開2006−180450号公報 国際公開第2008/114489号
自動車等の移動体の駆動に必要な電力、例えばセルモータ等の駆動系の電力、空調、オーディオ、照明等の補助系の電力、車載LAN、センサ装置等の情報系の電力は、TPMSのような例外はあるが、基本的には、バッテリから配線(ハーネス)を介して供給される。また、センサ装置で検知された情報は、配線を介して車載LANに送信される。
そのため、センサ装置の搭載数の増大に伴う配線数の増大が問題となってきている。例えば配線数の増加に伴い重量が増加し、それによって燃費が悪化する。また、コストやメンテナンスの負荷も増大する。例えば配線の故障が生じた場合に、配線の数が多く、総延長距離も長いため、故障箇所を発見しにくく、人手や時間がかかってしまう。さらに、バッテリとセンサ装置との間の距離が長い場合には、車内に多く存在するノイズを拾いやすい問題もある。
比較的消費電力の少ないセンサ装置や表示装置の電源として、バッテリの代わりに、TPMSに用いられている電磁誘導型または圧電型の振動発電器を用いることが考えられる。この場合、電力供給用の配線が不要となるため、配線数を低減できる。また、それらに電力を供給する必要がなくなるため、バッテリの負荷も軽減される。
しかし、これらの振動発電器を実際にバッテリの代替電源として用いようとした場合、軽量化や薄型化が難しい、コストが高い、耐久性が不充分である等の問題があり、実際にバッテリの代替電源として使用することは難しい。例えば、車体内部の振動はタイヤ部分に比べて低周波数で、電磁誘導型や圧電型の振動発電器で充分な電力を得るためには、低周波数の振動を高周波数の振動に変換するための増幅機構(例えば上述した輪列機構)を増やす必要がある。そのため部品点数が多くなり、それに伴って重量、設置に必要なスペース、コスト等が増大する。また、圧電型の場合、圧電素子を取り付けた振動板が変形することによって発電が行われるため、部品の劣化が生じやすく、保守メンテナンスの負荷が大きい。さらに、発電量を上げるためには振動板の長さが必要なので小型化も難しい。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、従来に比べて配線数が低減され、バッテリの負荷が少ない移動体を提供する。
本発明は、以下の[1]〜[10]である。
[1]振動発電器を備える移動体であって、
前記振動発電器が、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備えることを特徴とする移動体。
[2]前記静電誘導型発電素子が、前記エレクトレットが設けられた第一の電極と、前記エレクトレットから離間配置された第二の電極とを備え、外部からの振動によって前記エレクトレットおよび前記第二の電極の一方が他方に対して相対的に運動するように構成されている、[1]に記載の移動体。
[3]前記エレクトレットが、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体(a)または該含フッ素重合体(a)の誘導体(a’)を含有する樹脂膜に電荷を注入してなるものである、[1]または[2]に記載の移動体。
[4]前記含フッ素重合体(a)が、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する、[3]に記載の移動体。
[5]前記誘導体(a’)が、前記含フッ素重合体(a)と、アミノ基を有するシランカップリング剤との混合物または反応生成物を含む、[3]または[4]に記載の移動体。
[6]センサ装置を備え、該センサ装置の電源として前記振動発電器を備える、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の移動体。
[7]前記センサ装置が、温度、湿度、圧力、気圧、振動、磁気、電流、ガスおよび加速度から選ばれる少なくとも1種の情報を検知するセンサを備える、[6]に記載の移動体。
[8]前記センサ装置が、無線通信機能を備える、[6]または[7]に記載の移動体。
[9]前記センサ装置と前記振動発電器とが一体化されている、[6]〜[8]のいずれか一項に記載の移動体。
[10]車両、航空機、船または自転車である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の移動体。
本発明によれば、従来に比べて配線数が低減され、バッテリの負荷が少ない移動体を提供できる。
本発明の一実施形態の移動体が備えるセンサシステム300の概略構成を示すブロック図である。 図1に示すセンサシステム300を構成するセンサ装置100の一例(100A)の概略構成を示すブロック図である。 センサ装置100が備える振動発電器1の概略構成を示すブロック図である。 センサ装置100の他の例(100B)の概略構成を示すブロック図である。 センサ装置100の他の例(100C)の概略構成を示すブロック図である。 電源部に用いられる振動発電器の一実施形態を示す斜視分解図である。 図6に示す振動発電器1の部分断面図である。 図6に示す振動発電器1を構成する可動電極部10の、第一の電極11およびエレクトレット12が設けられている側の平面図である。 整流回路の回路構成例を示すブロック図である。
本発明の移動体は、振動発電器を備える移動体であって、前記振動発電器が、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備えることを特徴とする。
本明細書において、移動体とは、人または物を載せて物理的に移動(輸送)するための機械装置または構造体、もしくは人そのものを示す。
移動体としては、車両、航空機、船等が挙げられる。
車両としては、軽車両(原動機付自転車を含む自転車、荷車、馬車等)、自動車(普通、大型、二輪等)、鉄道車両(汽車、電車、リニアモーターカー、貨車等)等が挙げられる。
これらは、内燃機関やモータ等の駆動装置、車輪等を有し、自ら振動源を有しかつ潜在エネルギーも大きいため、振動源の確保が容易でかつ得られる発電エネルギーも相対的に大きくなる。
移動体の発電器設置スペースまたは配線ケーブル重量の制約の点から、自動車にエレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備えることが効果的であり、好ましい。
自動車としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関を動力源とする自動車、電気モータを動力源とする電気自動車(EV)、内燃機関および電気モータを動力源とするハイブリッド電気自動車(HEV)等が挙げられ、いずれであってもよい。
前記静電誘導型発電素子を備える振動発電器(以下、静電誘導型の振動発電器ということがある。)は、高周波振動を利用しないと効率が悪い電磁誘導型や圧電型のものに比べて、低周波振動でも発電できる。そのため、該静電誘導型の振動発電器を電源として用いることにより、低周波数の振動を高周波数の振動に変換するための増幅機構を設けなくても、移動体に搭載される各種装置のうち、消費電力がマイクロワットレベルの装置(以下、低電力駆動装置という。)の駆動に充分な電力が得られる。そのため、低電力駆動装置に接続させる振動発電器の軽量化や薄型化が可能で、コストも低い。また、該静電誘導型の振動発電器は、発電する際にエレクトレットを変形させたり他の部材と接触させる必要がないこと等から耐久性も優れている。
低電力駆動装置としては、センサ装置、表示装置、無線通信等が挙げられる。
軽量化や薄型化が可能であることから、静電誘導型の振動発電器を上記のような低電力駆動装置に組み込み一体化させ、発電器付き装置として移動体に設置することができる。
本発明の移動体の好適な例として、従来、自動車等に搭載されているセンサシステムを構成するセンサ装置の電源として、バッテリの代わりに、静電誘導型の振動発電器を用いたものが挙げられる。
従来のセンサシステムは、通常、LAN(ローカルエリアネットワーク)と、複数のセンサ装置と、それらを接続する通信用の配線を備え、センサ装置で検知され、出力された情報がLANに送られるようになっている。該センサ装置は、センサと、通信部と、センサからの出力信号の処理および通信部の制御を行う制御部とを備えるとともに、各部の駆動に必要な電力をバッテリからの供給するための配線が接続される。
移動体に設置されるセンサ装置はその数が多く、設置場所が多岐にわたっていることから、バッテリとの接続のための配線を無くすことできることの有用性が高い。
さらに、センサ装置を、無線通信機能を有するものとすれば、通信用の配線も低減できる。
上記のようにセンサ装置の電源として静電誘導型の振動発電器を用いたセンサシステムによれば、移動体がどのような状況にあるか等、種々の情報のモニタリングを、センサ装置の保守メンテナンスを行わなくても、長期(例えば5年以上)にわたって実施できる。
すなわち、移動体には、それ自体の移動に伴う振動はもちろん、エンジン、モータ等の駆動等による低周波数の振動が存在している。前記静電誘導型の振動発電器は、このような低周波数の振動での発電効率が高く、低周波数の振動だけでもセンサ装置の駆動に充分な電力が得られる。
また、従来TPMSへの適用が提案されている振動発電器のうち、電磁誘導型の振動発電器はコイルが必須であるために発電器自身が重く、大きさも大きく、設置上の制約がある。圧電型の振動発電器は振動子のスペースを確保する必要があり、かつ材料の耐久性が低いため発電器の寿命に問題があった。さらに、これらは低周波数の振動での発電効率が、同じ容積の静電誘導型の発電器と比較して低く、低周波数の振動でセンサ装置の駆動に必要な電力を得るためには、低周波数の振動を増幅して発電器に伝達する増幅機構を設けたり、発電器を大型化する必要があり、重量、コスト等が増大する。また、圧電型の場合、圧電素子を取り付けた振動板が変形することによって発電が行われるため、部品の劣化が生じやすい。これに対し、静電誘導型の振動発電器、特に後述する特定材料(主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体(a)または該含フッ素重合体(a)の誘導体(a’)を含有する樹脂膜)で構成したエレクトレットを備えるものを用いる場合は、増幅機構がなくても低周波数の振動で充分な発電量が得られるため、他の振動発電器を採用する場合に比べて、軽量化や薄型化が可能で、コストも低い。また、前記静電誘導型の振動発電器は、エレクトレットを変形させたり他の部材と接触させる必要がないこと等から、全体としての耐久性も優れている。特に後述する特定材料で構成したエレクトレットは、それ自体の寿命が長く(電荷保持安定性が高く)、耐久性に優れる。
本発明の移動体の一実施形態を、図面を用いて説明する。
本実施形態において、移動体は自動車であり、センサ装置の電源として静電誘導型振動発電器を用いたセンサシステムを備える。該センサシステムの概略構成を説明するブロック図を図1に示す。
本実施形態のセンサシステム300は、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備える振動発電器を備える電源部101と、センサ102と、通信部103と、センサ102からの出力信号の処理および通信部103の制御を行う制御部104とを備えるセンサ装置100と、センサ装置100の通信部103から有線または無線で送信された情報を受信する受信装置200と、を備える。受信装置200は、図示しない車載LANに、有線または無線の通信回線を介して接続されている。これにより、センサ102で検知された情報が、制御部104を経て、通信部103から有線または無線で送信され、受信装置200を介して車載LANに送られるようになっている。
センサ装置100は、電源部101から制御部104に対し、各部の駆動に必要な電力が供給されるようになっている。すなわち、制御部104の駆動に必要な電力は電源部101から直接供給され、通信部103の駆動に必要な電力は、制御部104を介して供給されるようになっている。センサ102がその駆動に電力を要するものである場合は、その電力も制御部104を介して供給される。
センサ装置100において、通信部103および制御部104は通常、同一の筐体内に収容されて一体化されている。電源部101、センサ102はそれぞれ、該筐体内に収容されていてもよく、筐体外に配置されていてもよい。
本発明においては、電源部101、通信部103、制御部104が同一の筐体内に収容されて一体化されていることが好ましく、電源部101、センサ102、通信部103、制御部104の全てが同一の筐体内に収容されて一体化されていることが特に好ましい。車内には多数のノイズが存在しており、電源部101からの距離(配線の長さ)が長いほど、ノイズの影響を受けやすくなる。そのため、電源部101、または電源部101およびセンサ102を同一の筐体内に収容することで、ノイズの影響を受けにくいセンサ装置となる。
図2に、電源部101、センサ102、通信部103、制御部104の全てが一体化されている場合のセンサ装置100(以下、センサ装置100Aという。)の概略構成を説明するブロック図を示す。
センサ装置100Aは、電源部101と、センサ102と、通信部103と、制御部104とが一つの筐体6内に収納されたものであり、電源部101は、3つの静電誘導型の振動発電器1a、1b、1c(以下、これらをまとめて振動発電器1ということがある。)と、電力制御回路2と、振動発電器1で発電された電力を充電するための蓄電部5とを備える。
通信部103は、無線通信機能を有するもので、通信部103にはアンテナ105が接続されている。これにより、制御部104からの情報を無線送信できるようになっている。
図3に、振動発電器1の概略構成を説明するブロック図を示す。
振動発電器1は、静電誘導型発電素子3と電力変換回路部4とを備える。
静電誘導型発電素子3は、詳細は後で図6〜8を用いて説明するが、エレクトレット12が設けられた第一の電極11と、該エレクトレット12から離間配置された第二の電極21とを備え、外部からの振動によってエレクトレット12が第二の電極21に対して相対的に運動するように構成されているものである。この相対的な運動によって交流電力が発電される。
本実施形態においては、3つの振動発電器1(1a、1bおよび1c)を備えることで、電源部101を、1つでX、Y、Zの3軸全ての振動を認識できるように構成することができる。このような構成の電源部101は、発電効率に優れる。つまり、エレクトレット12の第二の電極21に対する相対的な運動の方向(後述する図6〜8中の矢印D方向)と、振動発電器1に外部から与えられる振動の方向とが一致すると、外部からの振動エネルギーが効率よく振動発電器1に伝達され、発電効率が向上する。1つの振動発電器1が1つのエレクトレットを備える場合、3つの振動発電器1を、それぞれのエレクトレットの振動方向が互いに直交する3方向(X軸、Y軸、Z軸)と一致するように配置することで、外部からの振動の方向が変化した場合でも、電源部101が3軸全ての振動を認識し、効率よく発電が行われる。振動発電器1が複数の場合、全てが発電を行う必要はなく、いずれか1つ以上が発電を行えばよい。
電力変換回路部4は、整流回路41と、電圧変換回路42とを備える。整流回路41は、静電誘導型発電素子3で発電された交流電力を整流して直流電力に変換する回路である。電圧変換回路42は、整流回路41で整流された直流電流の電圧値を使用される二次電池の充電に最適な電圧に変換する回路であり、整流回路41から入力された直流電流の電圧値が、振動発電器1からの出力電圧値に変換される。
電力制御回路2は、1つ以上の振動発電器1から出力される直流電圧値に応じて、高効率かつ安全に蓄電部5に電力供給するために、それら直流電力をミキシングして、蓄電部5に電力供給する回路である。例えば振動発電器1が3つ備わっている場合、設置された環境条件によっては、静電誘導型発電素子3の交流発電量が大きく異なり、各振動発電器1の内部に備わっている電圧変換回路42では調整しきれず、各振動発電器1からの出力電圧に大きな差が生じる。各振動発電器1から出力される電圧を、電力制御回路2内部に構成される電圧検出回路でモニターして、高効率かつ安全な出力回路構成に切り替える。
蓄電部5は、図示しない二次電池および充放電制御回路を備える。
充放電制御回路は、振動発電器1から出力された直流電力を二次電池に充電あるいは二次電池から放電する時に、二次電池を保護するための過充電、過放電を防止するための制御回路と、効率良く充電、放電するための制御回路とを備える。
センサ102および制御部104はそれぞれ特に限定されず、従来、車載用のセンサ装置に用いられているものが利用できる。
センサ102は、当該センサ102が設置された場所やその周囲の状況に関する情報を検知し、その情報を、制御部104で処理可能な信号(振動による発電出力そのまま、あるいは0/1等)に変換して出力するものである。1つのセンサ102が検知する情報は1種でも2種以上でもよい。
センサ102としては、特に限定されず、従来、車載用として提案されているセンサが利用できる。該センサは、検知する情報によって物理センサと化学センサとに大別される。物理センサとしては、距離、位置・角度、加速度・振動、角速度、圧力、流量等を検知する力学的センサ、位置・回転速度、電波等を検知する電磁的センサ、光を検知する光学的センサ、温度を検知する温度センサ等が挙げられる。化学センサとしては、ガス濃度等を検知する電気化学的センサ等が挙げられる。
センサ102としては、温度、湿度、圧力、気圧、振動、磁気、電流、ガスおよび加速度から選ばれる少なくとも1種の情報を検知するものが好ましい。
センサ102の具体例としては、特に限定するものではないが、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、ヨーレートセンサ、ジャイロセンサ、衝突検知センサ、路面センサ、車間距離センサ、障害物センサ、操舵角センサ、車高センサ、車両位置センサ、空気圧センサ(タイヤ空気圧、エアコン冷媒圧)、車輪速センサ、回転センサ、クランチ角センサ、EGR(Exhaust Gas Recirculation)センサ、アクセルセンサ、ノッキングセンサ、レーザレーダーセンサ、ガス濃度センサ(酸素センサ)、流量センサ(空気量センサ)、圧力センサ、磁気センサ(地磁気センサを含む。)、電流センサ、温度センサ(サーミスタ温度センサ、水温センサ)、湿度センサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、等が挙げられる。
センサは操作系や安全系等、用途によって使い分けられる。移動体の現在位置の検知が必要である点から、地磁気センサ、車両位置センサ等が、また使用環境によりデータ補正が必要である点から、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、気圧センサ等が好ましい。
制御部104は、センサ102からの出力信号に基づく情報がそのまま通信部103から無線送信されるように構成されてもよく、センサ102からの出力信号に基づき、検知した情報から異常の有無を判定する判定手段を設け、その判定結果が通信部103から無線送信されるように構成されてもよい。
前記異常の有無を判定する判定手段としては、コンパレータ、ダイオード等が挙げられる。コンパレータを用いると、入力された信号(電圧値または電流値)が予め設定された閾値以下である場合と閾値超である場合とで、異なる信号が出力されるように構成できる。ダイオードを用いると、閾値超である場合のみ信号が出力されるように構成できる。また常時センシングを行う場合でも、数秒から数分に1回の割合でセンシングすれば充分な時には、センサ102と、センサ102からの出力信号を処理する制御部104内の回路をタイマーによって間歇動作させることにより、低消費電力化が図られ、電源部101のさらなる小型化を図ることが可能となる。
上記の制御部104における判定動作を、センサ102として静電誘導型の加速度センサを採用し、前記判定手段としてコンパレータを採用した場合を例に挙げて説明する。
静電誘導型の加速度センサは、加速度に対応して生じる運動エネルギーを電気エネルギーに変換するセンサであり、生じた電気エネルギーの大きさが加速度に比例することを利用して加速度が求められる。電気エネルギーの大きさは電圧値として表される。
加速度センサからコンパレータに電圧値が入力されると、コンパレータは、加速度センサから入力された電圧値と、予め設定されている設定電圧値(閾値)とを比較し、その比較結果において、入力された電圧値が設定電圧値以下である場合(加速度が正常な値である場合)、入力された電圧値が設定電圧値を超える場合(加速度が異常な値である場合)それぞれに応じた信号を出力する。
通信部103およびアンテナ105はそれぞれ限定されず、従来、無線通信に用いられている通信機およびアンテナが利用できる。
通信部103は、送信機能のみを有するものでも、送信機能と受信機能を兼ね備えたものでもよい。送信機能と受信機能を兼ね備える場合、車載LANとの間で双方向の通信が可能となり、車載LANからセンシングに関しての条件を変更することが可能となる。
筐体6の外形寸法は、特に限定されず、収納する振動発電器1、センサ102等の大きさや数、当該筐体6の設置スペース等に応じて適宜設定できる。
なお、本発明に用いられるセンサシステムは、上記センサシステム300に限定されるものではない。
例えば受信装置200として、車載LANの処理端末の機能(データの記録、解析等)を兼ね備えたものを用いてもよい。この場合、センサ装置100が直接車載LANに接続されることになる。
センサ装置は、センサ装置100に限定されるものではない。また、センサ装置100は、上記センサ装置100Aに限定されるものではない。
センサ装置が備える振動発電器1の数は必ずしも3つである必要はなく、1個以上であればよい。上限は特に限定されないが、X、Y、Zの3軸の振動を確実に認識するためには、12個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。コストの点から3つが特に好ましい。振動発電器1を複数備える場合、全てを使用する必要はなく、いずれか1つ以上を使用すればよい。
また、1つのセンサ装置が備えるセンサ102の数は2個以上でもよい。また、複数個のセンサ102を備える場合、各センサ102の種類は同じであっても異なってもよい。
また、電源部101と、センサ102と、通信部103と、制御部104とは、必ずしも一つの筐体6内に収納される必要はない。振動発電器1やセンサ102は、設置の都合上、筐体6内に収納しなくてもよい。
また、センサ102からの情報が通信部103およびアンテナ105により無線送信されるように構成された例を示したが、送信手段は有線であってもよい。
センサ装置100Aの変形例として、図4に示すセンサ装置100Bが挙げられる。センサ装置100Bにおいては、通信部103が、配線110を介して図示しない受信装置(図1における受信装置200)にセンサ102からの情報を有線送信するように構成されている。
センサ装置100Aの他の変形例として、図5に示すセンサ装置100Cが挙げられる。センサ装置100Cにおいては、センサ102が筐体6外に設置され、配線111を介して制御部104に接続されている。また、筐体6内に設置されている振動発電器1は2つである。
センサシステムに、センサ装置100を複数設置してもよい。また、受信装置200を複数設置してもよい。
例えばセンサシステムに複数のセンサ装置102を設置し、受信装置200を、複数のセンサ装置102から送信された情報を受信するように構成した場合、センサネットワークを構築できる。
特に、複数のセンサ装置100Aまたは100Cを無線端末(センサノード)として利用することで、センサネットワークを無線化できる。さらに、複数の受信装置200を設置し、それらの少なくとも一部に無線送受信機能を持たせた場合、該無線送受信機能を持たせた受信装置200を中継ノードとして利用することができる。
センサネットワーク構造は、特に限定されず、センサ装置100を1つの受信装置200の周囲に複数配置したスター型のネットワーク構造、センサ装置100間の同期化をとるネットワーク構造、メッシュ型のネットワーク構造等としてもよい。
[振動発電器1]
振動発電器1の概略構造を、図6〜7に示す。図6は、振動発電器1の斜視分解図であり、図7は振動発電器1の部分断面図である。
本実施形態において、振動発電器1は、第一の電極11およびエレクトレット12を備える上部ユニットAと、第二の電極21を備える下部ユニットBとから構成される。
上部ユニットAは、第一の電極11、エレクトレット12および表面が平滑な長方形状の第一の基板13から構成される可動電極部10と、矩形の枠部材14と、第一の基板13を枠部材14に取り付けるばね部材15a、15bとから構成される。
上部ユニットAにおいて、可動電極部10は、枠部材14の枠内に配置され、第一の基板13の長辺側の両側縁がそれぞればね部材15a、15bによって枠部材14に取り付けられている。これにより、可動電極部10が、枠部材14の枠内で一定方向(図6〜7中の矢印D方向)に往復運動(振動)できるようになっている。
下部ユニットBは、第二の電極21および表面が平滑な長方形状の第二の基板22から構成される固定電極部20と、電力変換回路部4と、固定部材23とから構成される。
本実施形態においては、可動電極部10および固定電極部20により静電誘導型発電素子3が構成されている。
静電誘導型発電素子3の第一の電極11および第二の電極21はそれぞれ電力変換回路部4の整流回路41に接続されている。
なお、上部ユニットAと下部ユニットBとが入れ替わってもよい。
<上部ユニットA>
図8に、可動電極部10の、第一の電極11およびエレクトレット12が設けられている側の平面図を示す。
図8に示すように、第一の電極11は、櫛形状のパターンで形成されたパターン電極であり、複数のライン状の櫛歯部分11aと、各櫛歯部分11aの一端を連絡する直線部11bとから構成される。
櫛歯部分11aは、ラインの長手方向が、可動電極部10の振動方向Dに交差するように形成されている。
直線部11bの末端は、図示しない配線によって電力変換回路部4の整流回路41に接続されている。
櫛歯部分11aの幅(振動方向Dにおける長さ)は、特に限定されないが、該幅が小さいほど、小さな相対運動(振動)によって運動エネルギーから電気エネルギーへの変換を行うことができ、変換効率が向上するため好ましい。そのため、櫛歯部分11aの幅は、それぞれ、1,000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下が特に好ましい。該幅の下限は特に限定されないが、耐久性、生産性、エレクトレットとしての特性(表面電荷密度の高さやその安定性、静電反発特性、寄生静電容量等)等を考慮すると、50μm以上が好ましく、100μm以上が特に好ましい。
第一の電極11は、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよく、組成に分布のある構造を形成していてもよい。
第一の電極11の厚さ(複数の層よりなる場合は合計の厚さ)は、それぞれ、10〜1,000nmが好ましく、100〜500nmが特に好ましい。該厚さが上記範囲内であると、導電性、生産性に優れる。
第一の電極11の厚さは、触針式表面形状測定器(ULVAC社製DEKTAK8等)により測定できる。
第一の電極11を構成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。該材料の抵抗値としては体積固有抵抗値で0.1Ωcm以下が好ましく、0.01Ωcm以下が特に好ましい。
導電性材料として具体的には、金、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、タングステン、モリブデン、錫、コバルト、パラジウム、白金、これらのうちの少なくとも1種を主成分とする合金等が挙げられる。また、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン系導電性ポリマー(PEDOT/PSS)、カーボンナノチューブ等から成る有機導電膜も例示できる。
第一の電極11の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を利用できる。具体的には、基板(第一の基板13または第二の基板22)上に導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。
導電性薄膜の形成方法は特に限定されず、物理的蒸着法、無電解めっき法等の、導電性薄膜の形成方法として公知の方法を利用できる。
物理蒸着法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
無電解めっき法とは、金属塩、還元剤等を含む無電解めっき液に、表面に触媒が付着した基板を浸漬し、還元剤から生じる電子の還元力によって、触媒が付着した基板表面において選択的に金属を析出させ、無電解めっき膜を形成する方法である。
無電解めっき液に含まれる金属塩としては、ニッケル塩(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等。)、第二銅塩(硫酸銅、塩化銅、ピロリン酸等。)、コバルト塩(硫酸コバルト、塩化コバルト等。)、貴金属塩(塩化白金酸、塩化金酸、ジニトロジアンミン白金、硝酸銀等。)等が挙げられる。
無電解めっき液に含まれる還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、テトラヒドロほう酸ナトリウム、ジアルキルアミンボラン、ヒドラジン等が挙げられる。
無電解めっき法により導電性薄膜を形成する場合、導電性薄膜を形成する前に、予め、基板の表面に触媒を付着させておくことが好ましい。該触媒としては、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体等が挙げられる。
導電性薄膜のパターニングは、フォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせ、ナノメタルインク等を印刷することによる配線形成、等により実施できる。例えばフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせによるパターニングは、導電性薄膜上にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成した後、該レジスト膜に対し、露光、現像を行うことでパターン(レジストマスク)を形成し、該レジストマスクをマスクとして導電性薄膜をエッチングすることにより実施できる。導電性薄膜のエッチングは、例えばエッチング液として導電性薄膜を溶解する液体(通常は酸性溶液)を用いたウェットエッチングにより実施できる。また、ナノメタルインク等を印刷する方法としてはスクリーン印刷法、インクジェット法またはマイクロコンタクトプリンティング法等を用いることができる。ナノメタルインクとは前述の導電性材料のナノ粒子を有機溶媒や水等に分散させたインクのことをいう。
エレクトレット12は、絶縁材料膜に電荷を注入してなるものである。
絶縁材料膜を構成する絶縁材料としては、従来、エレクトレットに用いられているものが利用でき、無機絶縁材料であっても有機絶縁材料であってもよい。
無機絶縁材料としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等が挙げられる。
有機絶縁材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の鎖状の高分子化合物、シクロオレフィンポリマー、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体(a)という。)等の主鎖に脂肪族環構造を有する高分子化合物、それらの高分子化合物に由来する材料等が挙げられる。該高分子化合物に由来する材料としては、高分子化合物と該高分子化合物以外の他の成分との混合物、高分子化合物と該高分子化合物以外の他の成分との反応生成物、等が挙げられる。
電荷の注入方法としては、一般的に絶縁体を帯電させる方法であれば手段を選ばずに用いることができる。例えば、G.M.Sessler, Electrets Third Edition,pp20,Chapter2.2“Charging and Polarizing Methods”(Laplacian Press, 1998)に記載のコロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が適用可能である。本発明においては特にコロナ放電法、電子ビーム衝突法を用いることが好ましい。
電荷を注入する際の温度条件や印加電圧は、使用する絶縁材料に応じて設定される。
エレクトレット12としては、表面電位値や電荷保持の安定性(常温安定性、加熱時の安定性の両方)等に優れることから、主鎖に脂肪族環構造を有する高分子化合物または該高分子化合物に由来する材料を含有する樹脂膜に電荷を注入してなるものであることが好ましく、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体(a)または該含フッ素重合体(a)の誘導体(a’)を含有する樹脂膜(以下、樹脂膜(A)ということがある。)に電荷を注入してなるものであることが特に好ましい。
ここで、振動発電器1の最大発電出力Pmaxは、以下の数式で表すことができる。
max=2πσnAf/{εε/d×(εg/d+1)}
[式中、σはエレクトレット12の表面電荷密度、nは極数(第一の基板13の振動方向Dに配置された第二の電極21の数(つまりエレクトレット12の数))、Aはエレクトレット12と第二の電極21との最大重なり面積、fはエレクトレット12の往復運動の周波数、εは比誘電率、εは真空の誘電率、dはエレクトレット12の厚さ、gはエレクトレット12と第二の電極21との距離である。]
上記数式に示されるように、エレクトレット12の表面積(複数の場合は合計の表面積)が同じである場合、エレクトレット12の表面電荷密度が高いほど、または厚さdが大きいほど、または振動方向Dにおけるエレクトレット12の数が多いほど、発電出力も大きくなる。
従来、エレクトレットを構成する絶縁材料として汎用されているシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機絶縁材料の場合、強度および層形成プロセスの煩雑さ等の点から、厚さdを2μm以上とすることは難しく、微細加工も難しい。そのため、発電出力を大きくすることが難しい。また長期の電荷安定性にも課題がある。
これに対し、樹脂膜(A)は、含フッ素重合体(a)または誘導体(a’)を含有することにより、高い電荷保持性能を有しており、樹脂膜(A)に電荷を注入してなるエレクトレットは高い表面電荷密度を有する。また、例えば厚さ10μm以上のエレクトレット12を容易に形成できる。また、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に比べてより微細な加工が可能である。そのため、高い発電出力が得られ、1つの振動発電器1でも、センサ装置、表示装置、無線通信等の低電力駆動装置の駆動に必要な電力を充分に賄うことができる。また長期の電荷保持の安定性も良好である。
樹脂膜(A)およびその形成方法、ならびに樹脂膜(A)への電荷の注入方法についての詳細は後述する。
エレクトレット12は、第一の電極11の複数の櫛歯部分11aそれぞれの上面に、櫛歯部分11aに対応するパターンで形成されている。すなわち、樹脂膜(A)として、櫛歯部分11aと略同一の幅および長さのライン状のパターンのパターン膜を形成し、これに電荷を注入することにより形成されている。
各エレクトレット12の幅は特に限定されないが、第一の電極11の櫛歯部分11aの幅と同じかそれよりも大きいことが好ましく、櫛歯部分11aの幅よりも大きいことがより好ましい。エレクトレット12の幅が櫛歯部分11aの幅よりも大きいと、エレクトレット化した際の表面電位値や電荷保持の安定性(常温安定性、加熱時の安定性の両方)を高くできる。
エレクトレット12の厚さ(第一の電極11の上面からエレクトレット12の頂部までの最短距離)は、発電出力、加工しやすさ等を考慮すると、1〜200μmが好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
エレクトレット12の厚さの厚さは、光干渉式膜厚測定装置により測定できる。
第一の基板13を構成する材料としては、絶縁材料が好ましい。該絶縁材料の抵抗値としては体積固有抵抗値で1010Ωcm以上が好ましく、1012Ωcm以上が特に好ましい。
絶縁材料として具体的には、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の有機高分子材料等が挙げられる。
枠部材14の材質は特に限定されず、金属のような導電材料を用いることもできるし、第一の基板13と同様の絶縁材料を用いることもできる。発電器の軽量化および、エレクトレットの耐久性(放電しにくさ)の観点から絶縁材料を用いることが好ましい。絶縁材料としては、有機高分子材料を用いるのが特に好ましい。
バネ部材15a、15bの材質(バネ材料)についても、枠部材14同様に、金属のような導電材料を用いることもできるし、基板13と同様の絶縁材料を用いることもできる。バネ材料として金属材料を用いる場合は、利用する振動の周波数に合わせた共振周波数に対応できるバネ定数を有するバネ材料が用いられる。バネ材料として絶縁材料、特に高分子材料を用いた場合に広い振動周波数域に対応できる共振周波数を有するバネを作製することができる。
高分子材料としては、ポリパラキシリレンまたはその誘導体(ポリパラキシリレン類ともいう。)が好ましい。該ポリパラキシリレン類は、常温の気相中で重合できる特殊なポリマーである。例えば、以下に示されるダイマーを160℃程度で昇華させた後、690℃で熱分解してモノマーとし、常温の真空容器(4Pa程度)に導入して固体表面で重合させることでポリマー(ポリパラキシリレン)が得られる。
Figure 2012206630
ポリパラキシリレン類には幾つかの種類がある。ベンゼン環に塩素が付いた分子構造を有する化合物(商品名parylene−C)は、絶縁破壊強度及び耐薬品性が高く、バネ材料として好適である。
上記parylene−Cを含め、バネ材料として使用できるポリパラキシリレン類の例を以下に示す。なお、各構造式の下には商品名を示している。
Figure 2012206630
ポリパラキシリレン類を用いたバネには特開2008−174811号公報に記載の方法により導電材料を導入しても良い。
<下部ユニットB>
第二の電極21は、第一の電極11と面対称となるパターンで形成された櫛形状のパターン電極であり、第一の電極11と同様、複数のライン状の櫛歯部分と、各櫛歯部分の一端を連絡する直線部とから構成され、直線部の末端が、図示しない配線によって電力変換回路部4の整流回路41に接続されている。
第二の電極21の櫛歯部分11aの幅、第二の電極21の厚さの好ましい範囲は、それぞれ、第一の電極11と同様である。
第二の電極21を構成する材料としては、第一の電極11の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
第二の電極21は、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよく、組成に分布のある構造を形成していてもよい。
第二の電極21の組成(材料、層構成等)は、第一の電極11の組成と同じであっても異なってもよい。
第二の電極21の形成方法としては、特に限定されず、第一の電極11と同様の手順で形成できる。
第二の基板22を構成する材料としては、第一の基板13の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
固定部材23は、片面に固定電極部20に対応する凹部が設けられ、一角に電力変換回路部4に対応する切り欠き部が設けられている。ただし、電力変換回路部4の設置場所は限定的ではなく、例えば第二の基板22の背面に設置されてもよい。
固定部材23の材質は特に限定されず、金属のような導電材料を用いることもできるし、基板13と同様の絶縁材料を用いることもできる。発電器の軽量化および、エレクトレットの耐久性(放電しにくさ)の観点から絶縁材料を用いることが好ましい。絶縁材料としては、有機高分子材料を用いるのが特に好ましい。
電力変換回路部4は、上述したとおり、整流回路41と、電圧変換回路42とを備える。
整流回路41、電圧変換回路42それぞれの回路構造は特に限定されず、従来、静電誘導型の振動発電器に用いられているものが利用できる。例えば整流回路41の回路構成は、一般的なAC−DCコンバータの回路構成と同様であってよい。電圧変換回路42の回路構成は、一般的なDC−DCコンバータの回路構成と同様であってよい。
図9に、整流回路41の回路構成例を示す。本例の整流回路41は、ダイオードD1〜D4で構成されたダイオードブリッジと、このダイオードブリッジの出力端子TOUT1およびTOUT2の間に設けられたコンデンサChにより構成されている。整流回路の入力端子TIN1およびTIN2にはそれぞれ、静電誘導型発電素子の第一の電極11および第二の電極21が接続されている。
整流回路41では、静電誘導型発電素子から入力される交流電力がダイオードブリッジで全波整流され、かつコンデンサCHで平滑されて、直流電力として出力される。
なお、ここでは全波整流用の回路構成例を示したが、半波整流用の回路構成としてもよい。
下部ユニットBは、固定部材23の凹部に固定電極部20を取り付け、切り欠き部に電力変換回路部4を取り付けることにより構成される。このとき、固定電極部20は、第二の電極21の櫛歯部分のラインの長手方向が、可動電極部20の振動方向Dに交差するように、つまり第一の電極11の櫛歯部分のラインの長手方向と一致するように取り付けられる。
上述したように、上部ユニットAの可動電極部10は、枠部材14の枠内で一定方向(図6〜8中の矢印D方向)に往復運動(振動)できるようになっている。この上部ユニットAの枠部材14を、下部ユニットBの固定部材23上に固定することで、エレクトレット12と第二の電極21とが一定の間隔を開けて対向する。
振動発電器1の外形寸法は、特に限定されず、必要とされる電力量や設置スペース等に応じて適宜設定できる。
振動発電器1の厚さ(固定部材23の厚さ+枠部材14の厚さ)は、必要とされる電力量を確保できる限り、できるだけ薄い方が好ましい。エレクトレット12が前記樹脂膜(A)に電荷を注入してなるものである場合、振動発電器1の薄型化が可能で、例えば5mm以下の厚さでも、センサ装置100のような低電力駆動装置の駆動に必要な電力が充分に得られる。
振動発電器1の厚さとしては、0.5〜5mmが好ましい。
面積は発電量に比例するので、センサ装置100の消費電力を基準にして、筐体6内部の他の装置(センサ部102、通信部103、制御部104等)の大きさとの兼ね合いで決定され、特に限定されないが、通常、横幅(振動方向Dにおける長さ)および縦幅(振動方向Dに対して垂直方向における長さ)がそれぞれ10〜30mm程度である。
<電源部101の動作>
電源部101においては、振動発電器1が設置された場所の振動によって振動発電器1が振動すると、静電誘導型発電素子3で交流電力が発電される。すなわち、振動発電器1が設置された場所が振動すると、振動発電器1全体が振動するが、下部ユニットBの固定電極部20よりも上部ユニットAの可動電極部10の方が、振動の幅が大きい。そのため相対的には、可動電極部10が固定電極部20に対して平行に、一定方向(図6〜8中の矢印D方向)に振動していることとなる。
固定電極部20の第二の電極21は、可動電極部10が振動していない状態では、可動電極部10のエレクトレット12と対向する位置にある。このとき、第二の電極21では、対向する位置にあるエレクトレット12の表面電荷によって、エレクトレット12の表面電荷とは逆の極性を持つ電荷が静電誘導される。可動電極部10が振動し、エレクトレット12が移動してエレクトレット12と第二の電極21との重なり部分の面積が減少すると、先に誘導された電荷に対向する逆電荷が無くなり、第二の電極21の電荷の量が減少する。エレクトレット12の位置が元の位置に戻り、第二の電極21との重なり部分の面積が増大すると、再度電荷が静電誘導され、第二の電極21の電荷の量が増大する。このように、第二の電極21とエレクトレット12と相対的な位置の変化により第二の電極21の電荷の量が変化すると、生じた電位差を打ち消すために電流が流れる。この繰り返しを電圧の波として取り出すことで交流電力が得られる。
静電誘導型発電素子3で発電された交流電力は、電力変換回路部4の整流回路41で整流され、直流電力として電力変換回路部4から出力される。出力された直流電力は、電力制御回路2および蓄電部5を介して制御部104に供給されて、センサ102、通信部103、制御部104等を駆動させるための電力(駆動電力)として消費される。
振動発電器1によれば、その外形寸法を、自動車の車体内の空間に設置可能な大きさまで小型化した場合でも、自動車の振動によって、センサ装置100の駆動に充分な電力が得られる。
例えば電気自動車の場合、走行時に生じる振動は、1〜200Hz程度である。上記構成の振動発電器1によれば、このような振動でも、1〜100μW程度の電力が得られる。センサ装置100、表示装置、無線通信等の低電力駆動装置の消費電力は、通信条件、間欠時間等の動作条件にもよるが、1〜50μW程度であるため、振動発電器1以外の電源を設けなくても充分に駆動する。
<樹脂膜(A)>
樹脂膜(A)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体(a)または該含フッ素重合体(a)の誘導体(a’)を含有する。
誘導体(a’)としては、詳しくは後述するが、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分との混合物、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分との反応生成物、等が挙げられる。樹脂膜(A)が前記反応生成物を含む場合、該樹脂膜(A)中には、前記反応生成物の形成に用いた含フッ素重合体(a)または他の成分の一部が未反応のまま残留していてもよい。
[含フッ素重合体(a)]
含フッ素重合体(a)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である。
ここで、「含フッ素重合体」は、その構造中にフッ素原子を有する重合体である。
含フッ素重合体(a)において、フッ素原子は、主鎖を構成する炭素原子に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよい。低吸水率・低誘電率で絶縁破壊電圧が高く、体積抵抗率の高いエレクトレット化に適していることから、フッ素原子が、主鎖を構成する炭素原子に結合していることが好ましい。
「主鎖に脂肪族環を有する」とは、脂肪族環の環骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも1つが、含フッ素重合体(a)の主鎖を構成する炭素原子であることを意味する。
例えば含フッ素重合体(a)が、重合性二重結合を有する単量体の重合により得られたものである場合、重合に用いられた単量体が有する重合性二重結合に由来する炭素原子のうちの少なくとも1つが、前記主鎖を構成する炭素原子となる。例えば含フッ素重合体(a)が、後述するような環状単量体を重合させて得た含フッ素重合体の場合は、該環状単量体が有する重合性二重結合を構成する2個の炭素原子が主鎖を構成する炭素原子となる。また、2個の重合性二重結合を有する単量体を環化重合させて得た含フッ素重合体の場合は、2個の重合性二重結合を構成する4個の炭素原子のうちの少なくとも2個が主鎖を構成する炭素原子となる。
「脂肪族環」とは、芳香族性を有さない環を示す。脂肪族環は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。脂肪族環は、環骨格が、炭素原子のみから構成される炭素環構造のものであってもよく、環骨格に、炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む複素環構造のものであってもよい。該ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられる。
脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5〜6個であることがより好ましい。すなわち、脂肪族環は4〜7員環であることが好ましく、5〜6員環であることが特に好ましい。
脂肪族環は置換基を有していてもよく、有さなくてもよい。「置換基を有していてもよい」とは、該脂肪族環の環骨格を構成する原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合してもよいことを意味する。
脂肪族環は、非含フッ素脂肪族環であってもよく、含フッ素脂肪族環であってもよい。
非含フッ素脂肪族環は、構造中にフッ素原子を含まない脂肪族環である。非含フッ素脂肪族環として、具体的には、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素環、該脂肪族炭化水素環における炭素原子の一部が酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された脂肪族複素環等が挙げられる。
含フッ素脂肪族環は、構造中にフッ素原子を含む脂肪族環である。含フッ素脂肪族環としては、脂肪族環の環骨格を構成する炭素原子に、フッ素原子を含む置換基(以下、含フッ素基という。)が結合した脂肪族環が挙げられる。含フッ素基としては、フッ素原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、=CF等が挙げられる。
該含フッ素脂肪族環または非含フッ素脂肪族環は、含フッ素基以外の置換基を有していてもよい。
脂肪族環としては、電荷保持性能に優れることから、含フッ素脂肪族環が好ましい。
好ましい含フッ素重合体(a)として、下記含フッ素環状重合体(I)、含フッ素環状重合体(II)が挙げられる。
含フッ素環状重合体(I):環状含フッ素単量体に基づく単位を有する重合体。
含フッ素環状重合体(II):ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成される単位を有する重合体。
「環状重合体」とは環状構造を有する重合体を意味する。
「単位」は、重合体を構成する繰り返し単位を意味する。
以下、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも記す。他の式で表される単位、化合物等についても同様に記し、例えば式(3−1)で表される単位を「単位(3−1)」とも記す。
含フッ素環状重合体(I)は、環状含フッ素単量体に基づく単位を有する。
「環状含フッ素単量体」とは、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
環状含フッ素単量体としては、下記の化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
Figure 2012206630
[式中、X、X、X、X、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、酸素原子が介在してもよいペルフルオロアルキル基、または酸素原子が介在してもよいペルフルオロアルコキシ基である。XおよびXは相互に結合して環を形成してもよい。]
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルキル基は、炭素数が1〜7であることが好ましく、炭素数が1〜4であることが特に好ましい。該ペルフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状が特に好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルコキシ基としては、前記ペルフルオロアルキル基に酸素原子(−O−)が結合したものが挙げられ、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
前記ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基の炭素数が2以上である場合、該ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基の炭素原子間に酸素原子(−O−)が介在してもよい。
式(1)中、Xは、フッ素原子であることが好ましい。
は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のペルフルオロアルコキシ基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基であることが特に好ましい。
およびXは、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
およびXは相互に結合して環を形成してもよい。前記環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5〜6個であることが特に好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例として、化合物(1−1)〜(1−5)が挙げられる。
Figure 2012206630
式(2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
化合物(2)の好ましい具体例として、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
Figure 2012206630
含フッ素環状重合体(I)は、上記環状含フッ素単量体により形成される単位のみから構成されてもよく、該単位と、それ以外の他の単位とを有する共重合体であってもよい。
ただし、該含フッ素環状重合体(I)中、環状含フッ素単量体に基づく単位の割合は、該含フッ素環状重合体(I)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。
該他の単量体としては、上記環状含フッ素単量体と共重合可能なものであればよく、特に限定されない。具体的には、ジエン系含フッ素単量体、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。ジエン系含フッ素単量体としては、後述する含フッ素環状重合体(II)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。側鎖に反応性官能基を有する単量体としては、重合性二重結合および反応性官能基を有する単量体が挙げられる。重合性二重結合としては、CF=CF−、CF=CH−、CH=CF−、CFH=CF−、CFH=CH−、CF=C−、CF=CF−等が挙げられる。反応性官能基としては、後述する含フッ素環状重合体(II)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。
なお環状含フッ素単量体とジエン系含フッ素単量体との共重合により得られる重合体は含フッ素環状重合体(I)として考える。
含フッ素環状重合体(II)は、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成される単位を有する。
「ジエン系含フッ素単量体」とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する単量体である。該重合性二重結合としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
ジエン系含フッ素単量体としては、下記化合物(3)が好ましい。
CF=CF−Q−CF=CF ・・・(3)。
式(3)中、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3の、分岐を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Qはエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。その場合、該ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
化合物(3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFClCFCF=CF
CF=CFOCClCFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(OCF)CF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF
CF=CFCFOCFCF=CF
化合物(3)の環化重合により形成される単位として、下記単位(3−1)〜(3−4)等が挙げられる。
Figure 2012206630
含フッ素重合体(a)は、反応性官能基を有することが好ましい。
「反応性官能基」とは、加熱等を行った際に、当該含フッ素重合体(a)の分子間、または含フッ素重合体(a)とともに配合されている他の成分と反応して結合を形成し得る反応性を有する基を意味する。
例えば該他の成分として、後述するシランカップリング剤または極性官能基を2個以上有する分子量50〜2,000の化合物(ただしシランカップリング剤は除く。)(以下、多価極性化合物という。)を混合し、それらを反応させて反応生成物とする場合は、含フッ素重合体(a)が、シランカップリング剤が有する官能基または多価極性化合物が有する極性官能基と反応し得る反応性官能基を有することが好ましい。
含フッ素重合体(a)が有する反応性官能基としては、重合体中への導入のしやすさ、シランカップリング剤または多価極性化合物との相互作用の強さ等を考慮すると、カルボキシ基、酸ハライド基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カーボネート基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基またはアルコキシカルボニル基が特に好ましい。
反応性官能基は、含フッ素重合体(a)の主鎖末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよい。
含フッ素重合体(a)の比誘電率は1.8〜8が好ましく、1.8〜5がより好ましく、1.8〜3がさらに好ましく、1.8〜2.7が特に好ましく、1.8〜2.3が最も好ましい。該比誘電率が上記範囲の下限値以上であると、エレクトレットとして蓄え得る電荷量が高く、上限値以下であると、電気絶縁性、およびエレクトレットとしての電荷保持安定性に優れる。該比誘電率は、ASTM D150に準拠し、周波数1MHzにおいて測定される。
また、樹脂膜(A)はエレクトレットとしての電荷保持を担う部分であることから、含フッ素重合体(a)としては、体積固有抵抗が高く、絶縁破壊強度が大きいものが好ましい。
含フッ素重合体(a)の体積固有抵抗は1010〜1020Ωcmが好ましく、1016〜1019Ωcmが特に好ましい。該体積固有抵抗は、ASTM D257により測定される。
含フッ素重合体(a)の絶縁破壊強度は10〜25kV/mmが好ましく、15〜22kV/mmが特に好ましい。該絶縁破壊強度は、ASTM D149により測定される。
含フッ素重合体(a)の屈折率は、基板との屈折率差を小さくし、複屈折等による光の干渉を抑え、透明性を確保する点から、1.2〜2が好ましく、1.2〜1.5が特に好ましい。
含フッ素重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、5万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましく、25万以上が特に好ましい。Mwが5万以上であると、製膜しやすい。特に20万以上であると、膜の耐熱性が向上し、エレクトレットとした際、保持した電荷の熱安定性が向上する。一方、重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、溶媒に溶けにくくなり、製膜プロセスが制限される等の問題が生じるおそれがある。したがって、含フッ素重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、100万以下が好ましく、85万以下がより好ましく、65万以下がさらに好ましく、55万以下が特に好ましい。
本明細書において、含フッ素重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、日本化学会誌、2001,NO.12,P.661に記載される、Mwと固有粘度[η](30℃)との関係式([η]=1.7×10−4×Mw0.60)を用いて算出される値である。
固有粘度[η](30℃)(単位:dl/g)は、30℃で、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒として、ウベローデ型粘度計により測定される値である。
含フッ素重合体(a)は、前述した単量体を重合させることにより合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
主鎖にエーテル性酸素原子を含む含フッ素脂肪族環を有し、主鎖の末端にカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する含フッ素重合体の市販品としては、CYTOP(登録商標、旭硝子社製)が挙げられる。
[誘導体(a’)]
誘導体(a’)としては、上述したように、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分との混合物、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分との反応生成物、等が挙げられる。
前記混合物とは、反応生成物と異なり、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分とが、反応せずに混合した状態をいう。
前記反応生成物としては、例えば含フッ素重合体(a)および前記他の成分を溶媒に溶解したコーティング液を加熱(溶媒を揮発させて成膜する際のベーク等)した際に、各成分が反応して生成するものが挙げられる。なお、含フッ素重合体(a)と含フッ素重合体(a)以外の他の成分とを反応させた際に、反応できずに残存する含フッ素重合体(a)および含フッ素重合体(a)以外の他の成分は、混合物ということになる。
含フッ素重合体(a)と混合または反応させる他の成分としては、シランカップリング剤または多価極性化合物が好ましく、シランカップリング剤が特に好ましい。これにより、形成される樹脂膜(A)の電荷保持性能(保持した電荷の熱安定性、経時安定性等)が向上する。電荷保持性能の向上効果は、特に、含フッ素重合体(a)が末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する場合に顕著である。
電荷保持性能の向上効果は、含フッ素重合体(a)とシランカップリング剤または多価極性化合物とがナノ相分離を引き起こし、シランカップリング剤または多価極性化合物由来のナノクラスタ構造が形成され、当該ナノクラスタ構造が、エレクトレットにおける電荷を蓄える部位として機能するためであると推察される。
誘導体(a’)中、シランカップリング剤または多価極性化合物は、分子同士が反応した状態で存在していてもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、従来公知または周知のものを含めて広範囲にわたって利用できる。
シランカップリング剤としては、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
入手の容易性等を考慮すると、特に好ましいシランカップリング剤は、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、から選択される1種以上である。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の配合量は、含フッ素重合体(a)とシランカップリング剤との合計量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。この範囲にあると、含フッ素重合体(a)とともに溶媒に溶解してコーティング液とした際に、容易に均一な溶液とすることができる。
多価極性化合物は、極性官能基を2個以上有する分子量が50〜2,000の化合物(ただし前記シランカップリング剤は除く。)が好ましく、分子量が100〜2,000の化合物(ただし前記シランカップリング剤は除く。)が特に好ましい。多価極性化合物の分子量が上記範囲の下限値以上であると、分子量が高いために揮発しにくく、製膜後に膜中に残存させることが容易になる。また、上記範囲の上限値以下であると、含フッ素重合体(a)との相溶性が良好になる。
「極性官能基」とは、下記の(1a)および(1b)の何れか一方または両方の特性を有する官能基である。
(1a)電気陰性度の異なる2種類以上の原子を含み、当該官能基中に分極による極性を有する。
(1b)当該官能基と結合した炭素との電気陰性度の差により分極を生じさせる。
上記特性(1a)のみを有する極性官能基の具体例としては、ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
上記特性(1b)のみを有する極性官能基の具体例としては、1級アミノ基(−NH)、2級アミノ基(−NH−)、ヒドロキシル基、チオール基等が挙げられる。
上記特性(1a)および(1b)の両方を有する極性官能基の具体例としては、スルホ基、ホスホノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、酸ハライド基、ホルミル基、イソシアナート基、シアノ基、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)カーボネート基(−O−C(O)−O−)等が挙げられる。
多価極性化合物としては、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、シクロヘキサン−1,2−ジアミン、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、トリアミノメチルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、シクロヘキサン−1,3,5−トリアミン、シクロヘキサン−1,2,4−トリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、2,4,6−トリアミノトルエン、1,3,5−トリス(2−アミノエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(2−アミノエチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(2−アミノエチル)トルエン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、ジエチレントリアミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
多価極性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、極性官能基を2個有する化合物と、極性官能基を3個以上有する化合物とを混合して用いてもよい。
多価極性化合物の配合量は、含フッ素重合体(a)の配合量の0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることが特に好ましい。該配合量が上記範囲の下限値以上であると、多価極性化合物を配合することによる効果が充分に得られる。該配合量が上記範囲の上限値以下であると、含フッ素重合体(a)との混和性が良好であり、コーティング液中での分布が均一となる。
<樹脂膜(A)の形成方法>
樹脂膜(A)の形成方法としては特に限定されず、公知の方法を利用できる。例えば、第一の電極11が形成された第一の基板13の、第一の電極11側の表面上にコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、第一の電極11に対応するパターンにパターニングする方法が挙げられる。
コーティング膜の形成方法としては、例えば、含フッ素重合体(a)を溶媒に溶解してなるコーティング液、または含フッ素重合体(a)と該含フッ素重合体(a)以外の他の成分とを溶媒に溶解してなるコーティング液を用いてコーティング膜を製膜する方法が挙げられる。前記他の成分としては、上述したとおり、シランカップリング剤または多価極性化合物が好ましく、シランカップリング剤が特に好ましい。
溶媒としては、少なくとも含フッ素重合体(a)を溶解する溶媒が用いられ、他の成分を含む場合、前記含フッ素重合体(a)を溶解する溶媒が、該他の成分を溶解するものであれば、該溶媒単独で均一な溶液とすることができる。また、該他の成分を溶解する他の溶媒を併用してもよい。
溶媒として具体的には、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒等が挙げられ、それらの中から当該コーティング液に配合される成分を溶解するものを適宜選択すればよい。
「プロトン性溶媒」とは、プロトン供与性を有する溶媒である。「非プロトン性溶媒」とは、プロトン供与性を有さない溶媒である。
プロトン性溶媒としては、以下に示すプロトン性非含フッ素溶媒、プロトン性含フッ素溶媒等が挙げられる。
メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタオール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、乳酸メチル等のプロトン性非含フッ素溶媒。
2−(パーフルオロオクチル)エタノール等の含フッ素アルコール、含フッ素カルボン酸、含フッ素カルボン酸のアミド、含フッ素スルホン酸等のプロトン性含フッ素溶媒。
非プロトン性溶媒としては、以下に示す非プロトン性非含フッ素溶媒、非プロトン性含フッ素溶媒等が挙げられる。
ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、デカリン、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、ジメトキシエタン、モノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート(PGMEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アニソール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、メチルナフタレン等の非プロトン性非含フッ素溶媒。
1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のポリフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリブチルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物、パーフルオロデカリン等のポリフルオロシクロアルカン化合物、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物、パーフルオロポリエーテル、ポリフルオロアルカン化合物、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等の非プロトン性含フッ素溶媒。
これらの溶媒は、いずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。またこれらの他にも広範な化合物が使用できる。
これらのうち、含フッ素重合体(a)の溶解の用いる溶媒としては、含フッ素重合体(a)の溶解度が大きく、良溶媒であることから、非プロトン性含フッ素溶媒が好ましい。
シランカップリング剤または多価極性化合物を溶解する溶媒としては、プロトン性含フッ素溶媒が好ましい。
該溶媒の沸点は、コーティングの際に均一な膜を形成しやすいことから、65〜220℃が好ましく、100〜220℃が特に好ましい。
コーティング液の調製に用いる溶媒は、水分含量が少ないことが好ましい。該水分含量は、100質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下が特に好ましい。
コーティング液における含フッ素重合体(a)の濃度は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%が特に好ましい。
コーティング液の固形分濃度は、形成しようとする膜厚に応じて適宜設定すればよい。通常、0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%が好ましい。
なお固形分は、質量を測定したコーティング液を常圧下200℃で1時間加熱することで、溶媒を留去し、残存する固形分の質量を測定して算出する。
コーティング液は、各成分を含む組成物を予め調製し、これを溶媒に溶解して得てもよく、各成分をそれぞれ溶媒に溶解し、各溶液を混合して得てもよい。
各成分を含む組成物を予め調製する場合の該組成物の製造方法としては、固体と固体、または固体と液体を混練、共融押し出し法等により混合してもよく、それぞれを可溶な溶媒に溶解した各溶液を混合してもよい。これらの中でも、各溶液を混合することが特に好ましい。
含フッ素重合体(a)とシランカップリング剤とを併用する場合、コーティング液は、含フッ素重合体(a)を非プロトン性含フッ素溶媒に溶解した重合体溶液と、シランカップリング剤をプロトン性含フッ素溶媒に溶解したシランカップリング剤溶液とを各々調製し、該重合体溶液とシランカップリング剤溶液とを混合することによって得ることが好ましい。
コーティング膜の製膜は、例えば、コーティング液を基板の表面にコーティングし、ベーク等により乾燥させることにより実施できる。
コーティング方法としては、溶液から膜を形成させる従来公知の方法が利用でき、特に限定されない。かかる方法の具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディッピング法、水上キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。また、凸版印刷法、グラビア印刷法、平板印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の印刷技術も用いることができる。
乾燥は、常温での風乾により行ってもよいが、加熱してベークすることにより行うことが好ましい。ベーク温度は、溶媒の沸点以上であることが好ましく、特に230℃以上の高温で行うことが、添加したシランカップリング剤や多価極性化合物と含フッ素重合体(a)との反応を充分に完結させる点で特に好ましい。
コーティング膜のパターニング方法としては、特に限定されず、公知のパターニング技術を利用できる。
具体例としては、前記コーティング膜上に、所定のパターンのマスクを形成し、エッチングする方法が挙げられる。
該マスクは、例えば第一の電極11と同様の方法により形成できる。ただしマスクを構成する材料は、コーティング膜に対し、ある程度のエッチング選択比を有するものであればよく、導電性材料でなくてもよい。例えば該マスクとして、第一の電極11に対応するパターンにパターニングされたレジスト膜を用いてもよい。レジスト膜のパターニングは、公知のリソグラフィー法により実施できる。
<電荷の注入>
樹脂膜(A)に電荷を注入することでエレクトレット12とすることができる。
樹脂膜(A)への電荷の注入方法としては、一般的に絶縁体を帯電させる方法であれば手段を選ばずに用いることができる。例えば、G.M.Sessler, Electrets Third Edition,pp20,Chapter2.2“Charging and Polarizing Methods”(Laplacian Press, 1998)に記載のコロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が適用可能である。本発明においては特にコロナ放電法、電子ビーム衝突法を用いることが好ましい。
電荷を注入する際の温度条件としては、樹脂膜(A)に含まれる含フッ素重合体(a)または誘導体(a’)のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが、注入後に保持される電荷の安定性の面から好ましく、該Tg+10℃〜該Tg+20℃程度の温度条件で行うことが特に好ましい。
電荷を注入する際の印加電圧としては、樹脂膜(A)の絶縁破壊電圧以下であれば、高圧を印加することが好ましい。本発明において、樹脂膜(A)への印加電圧は、正電荷では6〜30kV、好ましくは8〜15kVであり、負電荷では−6〜−30kV、好ましくは−8〜−15kVである。
含フッ素重合体(a)または誘導体(a’)は、正電荷より負電荷をより安定に保持できることから、印加電圧は負電荷であることが好ましい。この場合、エレクトレット12の表面電位はマイナスとなる。
なお、ここでは、表面に第一の電極11が形成された第一の基板13の第一の電極11上に直接樹脂膜(A)を形成し、電荷を注入する例を示したが、エレクトレット12の作製方法はこれに限定されない。例えば、任意の基板上に樹脂膜(A)を形成し、基板から剥離した後、表面に第一の電極11が形成された第一の基板13上に配置し、電荷を注入してエレクトレット12としてもよい。また、任意の基板上に樹脂膜(A)を形成し、電荷を注入してエレクトレット12とした後、該エレクトレット12を基板から剥離し、これを、表面に第一の電極11が形成された第一の基板13上に配置してもよい。
第一の基板13とは別の基板に樹脂膜(A)を形成する場合であって該基板上で電荷の注入を行わない場合、該基板としては、特に材質を選ばずに用いることができる。
第一の基板13とは別の基板に樹脂膜(A)を形成する場合であって該基板上で電荷の注入を行う場合、該基板としては、得られた積層体に電荷を注入する際にアースに接続できるような基板が用いられる。好ましい材質としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、タングステン、モリブデン、錫、コバルト、パラジウム、白金、これらのうちの少なくとも1種を主成分とする合金等の導電性の金属が挙げられる。また、材質が導電性の金属以外のもの、例えばガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の高分子化合物材料等の絶縁性の材料の基板(絶縁性基板)であっても、その表面にスパッタリング、蒸着、ウエットコーティング等の方法で金属膜、またはITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS、カーボンナノチューブ等から成る有機導電材料等をコーティングしたものであれば用いることができる。またシリコン等の半導体材料も同様の表面処理を行ったものであるか、または半導体材料そのものの抵抗値が低いものであれば、基板として用いることができる。基板材料の抵抗値としては、体積固有抵抗値で0.1Ωcm以下であることが好ましく、特に0.01Ωcm以下であることが特に好ましい。このような低抵抗値の基板材料であれば、当該基板上に形成された積層体にそのまま電荷を注入してエレクトレットとすることができる。
以上、本発明の移動体の一例としての自動車の構成を、図1〜9を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば移動体は自動車以外のものであってもよい。ただし、本発明の有用性が高い点では、自動車、特に電気自動車が好適である。電気自動車は、近年開発が進められているが、現時点ではバッテリの出力容量が不充分で、エアコンディショナ、ナビゲーションシステム等の快適性、利便性を高める機器を使用すると走行距離が大幅に減少する。そのため、センサ装置の電源として、静電誘導型発電素子としてエレクトレットを備える振動発電器を用いることで、バッテリの負荷を軽減し、センサ装置からの情報を元に車内の電気機器を最適に制御することができる。これにより、快適性、利便性等を充分に確保しつつ、走行距離の低下を防止することが可能となる。
なお、前記振動発電器を電源とするのは、センサ装置に限定されない。例えば表示装置、無線通信等の、消費電力がマイクロワットレベルの低電力駆動装置であれば、該振動発電器のみでも駆動に充分な電力が得られる。
また、本発明の移動体が備える振動発電器の構成は、上記実施形態に示す振動発電器1の構成に限定されるものではなく、静電誘導型発電素子としてエレクトレットを備えるものであれば、公知の静電誘導型の振動発電器の構成を適宜採用できる。
例えば上記実施形態では、エレクトレット12と第二の電極21との相対的な運動が、第一の基板13の振動により実現されているが、これに限られるものではない。例えば、第一の基板13と第二の基板22とを入れ替えて、第二の基板22が振動するようにしてもよい。
また、本実施形態では、エレクトレット12が第一の電極11の上面を被覆する例を示したが本発明はこれに限定されず、エレクトレット12が、第一の電極11の上面および側面を被覆してもよい。
また、第一の電極、第二の電極がそれぞれ櫛形状のパターンで形成されたパターン電極(第一の電極11、第二の電極21)であり、エレクトレット12が、第一の電極11の櫛歯部分に対応するパターン、つまり複数のラインが平行に配置されたパターンで形成されたパターンで形成されたパターン膜である例を示したが本発明はこれに限定されない。
例えば第一の電極、第二の電極、エレクトレットを、他のパターンで形成してもよい。該他のパターンとしては、例えば従来、静電誘導型発電素子に用いられているパターン電極の形状を適宜採用できる。櫛形状およびライン状以外の形状としては、例えばリング状、市松模様状等が挙げられる。基板表面に形成されるパターン電極およびパターン膜の数は、それぞれ1つであってもよく、複数であってもよい。
また、第一の電極、第二の電極、エレクトレットが、それぞれ、パターニングされておらず、第一の基板13、第二の基板22それぞれの全面を被覆していてもよい。
また、上記実施形態では、第一の基板13および第二の基板22がそれぞれ、表面が平滑な平板であり、その表面にそれぞれ第一の電極11、第二の電極21が形成された例を示したが、第一の基板13または第二の基板22として、表面に凹凸が形成された基板を用いてもよい。例えば第二の基板22として、表面に、第二の電極21に対応するパターンの凹凸が形成された基板を用いてもよい。該基板には、その他のパターンの凹凸が形成されていてもよい。
表面に凹凸が形成された基板の製造方法としては、真空プロセス、湿式プロセス等の従来公知の方法が利用でき、特に限定されない。真空プロセスとしては、マスクを介したスパッタリング法、マスクを介した蒸着法等が挙げられる。湿式プロセスとしては、ロールコーター法、キャスト法、ディッピング法、スピンコート法、水上キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。また、凸版印刷法、グラビア印刷法、平板印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の印刷技術も用いることができる。さらに、表面に微細な凹凸が形成された基板の作製方法として、ナノインプリント法、フォトリソグラフィー法等も挙げられる。
また、第一の電極11が有する複数の櫛歯部分の間に、ガード電極を形成してもよい。エレクトレット12と対向することにより静電誘導が生じた第二の電極21が、相対的な位置が変動した際にガード電極と対向することで、第二の電極21に生じる電位の変化が大きくなり、発電量が増大する。同様の理由から、第二の電極21が有する複数の櫛歯部分の間に、ガード電極を形成してもよい。ガード電極は、第一の電極11と同様にして形成できる。ガード電極は通常接地される。
以上のように、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備える振動発電器を移動体に搭載することで、振動発電器の軽量化(部品点数の低減、配線の低減等)、薄型化、低コスト(保守メンテナンス負荷が低減できる等)、高耐久を図れることから、移動体自体の軽量化、低コスト、高耐久性および移動体のバッテリへの負荷低減を図ることができる。
1…振動発電器、1a、1b、1c…振動発電器、2…電力制御回路、3…静電誘導型発電素子、4…電力変換回路部、5…蓄電部、6…筐体、10…可動電極部、11…第一の電極、12…エレクトレット、13…第一の基板、14…枠部材、15…ばね部材、20…固定電極部、21…第二の電極、22…第二の基板、23…固定部材、41…整流回路、42…電圧変換回路、100…センサ装置、101…電源部、102…センサ、103…通信部、104…制御部、105…アンテナ、200…受信装置、300…センサシステム

Claims (10)

  1. 振動発電器を備える移動体であって、
    前記振動発電器が、エレクトレットを備える静電誘導型発電素子を備えることを特徴とする移動体。
  2. 前記静電誘導型発電素子が、前記エレクトレットが設けられた第一の電極と、前記エレクトレットから離間配置された第二の電極とを備え、外部からの振動によって前記エレクトレットおよび前記第二の電極の一方が他方に対して相対的に運動するように構成されている、請求項1に記載の移動体。
  3. 前記エレクトレットが、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体(a)または該含フッ素重合体(a)の誘導体(a’)を含有する樹脂膜に電荷を注入してなるものである、請求項1または2に記載の移動体。
  4. 前記含フッ素重合体(a)が、末端基としてカルボキシ基またはアルコキシカルボニル基を有する、請求項3に記載の移動体。
  5. 前記誘導体(a’)が、前記含フッ素重合体(a)と、アミノ基を有するシランカップリング剤との混合物または反応生成物を含む、請求項3または4に記載の移動体。
  6. センサ装置を備え、該センサ装置の電源として前記振動発電器を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の移動体。
  7. 前記センサ装置が、温度、湿度、圧力、気圧、振動、磁気、電流、ガスおよび加速度から選ばれる少なくとも1種の情報を検知するセンサを備える、請求項6に記載の移動体。
  8. 前記センサ装置が、無線通信機能を備える、請求項6または7に記載の移動体。
  9. 前記センサ装置と前記振動発電器とが一体化されている、請求項6〜8のいずれか一項に記載の移動体。
  10. 車両、航空機または船である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の移動体。
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