JP5407174B2 - 防眩フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、窓やディスプレイなどの表面に設けられる防眩フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けられる防眩フィルムに関する。
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、ELディスプレイ、および、プラズマディスプレイなどのディスプレイにおいては、視聴時にディスプレイ表面に外光が映りこむことによる視認性の低下を防ぐために、表面に凹凸構造を備える防眩フィルムをディスプレイの表面に設けることが知られている。
防眩フィルムとしては、例えば、下記の技術が知られている。
・エンボス加工法により防眩フィルム表面に凹凸構造を形成する技術
・バインダマトリックス形成材料中に粒子を混入させた塗液を塗布し、バインダマトリックス中に粒子を分散させることにより、防眩フィルム表面に凹凸構造を形成する技術
このようにして形成される凹凸構造を表面に備える防眩フィルムにおいては、表面凹凸構造により防眩フィルム入射する外光が散乱することにより、外光の像が不鮮明となり、ディスプレイ表面に外光が移りこむことによる視認性の低下を防ぐことが可能となる。
ここで、エンボス加工により表面に凹凸が形成されている防眩フィルムは、表面凹凸を完全に制御できる。そのため、再現性が良い。しかし、エンボスロールに欠陥または異物付着があるとロールのピッチで延々欠陥が出るといった問題がある。
一方、バインダマトリックスと粒子を用いた防眩フィルムは前記エンボス加工を用いた防眩フィルムよりも工程数が少ない。よって、安価に製造できる。そのため、バインダマトリックス中に粒子を分散させた様々な態様の防眩フィルムが知られている(特許文献1)。
バインダマトリックスと粒子を用いた防眩フィルムにあってはさまざまな技術が開示されており、例えば、以下のような技術が開示されている。
・バインダマトリックス樹脂と球形粒子と不定形粒子を併用する技術(特許文献2)
・バインダマトリックス樹脂と複数の粒径の異なる粒子を用いる技術(特許文献3)
・表面凹凸を有し、凹部の断面積を規定した技術(特許文献4)
また、以下のような技術も開示されている。
・内部の散乱と表面の散乱を併用し、防眩層の内部ヘイズ(曇度)を1〜15%とし、表面ヘイズ(曇度)を7〜30%とする技術(特許文献5)
・バインダー樹脂と粒径0.5〜5μmの粒子を用い、樹脂と粒子の屈折率差を0.02〜0.2とし、樹脂100重量部に対し粒子を10より大きく30重量部未満配合する技術(特許文献6)
・バインダー樹脂と粒径1〜5μmの粒子を用い、樹脂と粒子の屈折率差を0.05〜0.15とする技術。さらに、用いる溶媒、表面粗さなどを所定の範囲とした技術(特許文献7)
・バインダー樹脂と複数の粒子を用い、樹脂と粒子の屈折率差を0.03〜0.2とする技術(特許文献8)
・また視野角を変化させたときのコントラストの低下、色相変化等を低減することを目的とし、表面ヘイズ(曇度)を3以上、法線方向のヘイズ値と±60°方向のヘイズ値の差が4以下とする技術(特許文献9)
このように様々な目的で様々な構成の防眩フィルムが開示されている。
ディスプレイの前面に用いられる防眩フィルムの性能は場合、ディスプレイによって異なる。言い換えると、ディスプレイの解像度や使用目的などにより最適な防眩フィルムは異なる。したがって、目的に応じた形で多様な防眩フィルムが求められる。
特開平6−18706号公報 特開2003−260748号公報 特開2004−004777号公報 特開2003−004903号公報 特開平11−305010号公報 特許第4001320号公報 特開2000−338310号公報 特開2000−180611号公報 特開平11−160505号公報
防眩フィルムは、ノートパソコンやデスクトップパソコンあるいはテレビ用モニターのディスプレイの表面に設けられる。テレビ用モニターのディスプレイにあっては近年使用者とディスプレイとの距離が離れた位置から視認されることが多く、それにともない、防眩フィルムにあっては映り込みを抑制するための防眩性だけでなく、高い視認性および高いコントラストが求められるようになっている。
テレビモニター用のディスプレイに用いられる防眩フィルムにあっては、(1)、ディスプレイ画面に対して垂直方向、すなわち、正面方向においてディスプレイ表面に入射する外光の像を不鮮明にし、外光の像が映りこむことを防ぐことのできる適度な防眩性を備え、且つ、(2)コントラスト低下を抑制するために、外光、特に、蛍光灯等の照明がディスプレイ表面に入射した際に白茶ける現象(白ボケ)がなく、(3)高い視認性を得るために防眩層を備える側の表面がゆず肌形態を有さない防眩フィルムが求められている。本発明にあっては、(1)正面方向での適度な防眩性と、(2)白ボケがないこと、(3)防眩層を備える側の表面がゆず肌外観を持たないこと、を兼ね備えた防眩フィルム、およびそれを用いた透過型液晶ディスプレイを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材上に防眩層のみを備える防眩フィルムであって、該防眩層が前記透明基材と反対側の面に凹凸構造を有しており、防眩層がバインダマトリックス中に粒子を含み、該粒子が、屈折率が1種類のアクリル−スチレン共重合体粒子からなり、該バインダマトリックスが水酸基を有するアクリル系材料を含み、前記アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R )が、4μm以上8μm以下であり、且つ、前記アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で除した値(R/H)が0.60以上0.67以下の範囲内であり、且つ、アクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの平均屈折率(n)を引いた値と、該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w)でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n)×w/w)が0.0025以上0.0029以下の範囲内であることを特徴とする防眩フィルムとした。
た、請求項にかかる発明としては、前記防眩層の平均膜厚(H)が、6μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩フィルムとした。
また、請求項にかかる発明としては、前記防眩層が、バインダマトリックス100重量部に対し、前記アクリル−スチレン共重合体粒子を、6重量部以上24重量部以下含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防眩フィルムとした
また、請求項にかかる発明としては、前記水酸基を有するアクリル系材料がペンタエ
リスリトールトリアクリレートであり、且つ、前記防眩層が、バインダマトリックス10
0重量部対しペンタエリスリトールトリアクリレートを18重量部以上含むことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の防眩フィルムとした。
また、請求項にかかる発明としては、観察者側から順に、請求項1乃至請求項のい
ずれか一項に記載の防眩フィルム、偏光板、液晶セル、偏光板、バックライトユニットを
この順に備え、防眩層が観察者側の表面にあることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ
とした。
また、請求項にかかる発明としては、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の
防眩フィルムと、前記防眩フィルムの透明基材の防眩層形成面と反対側の面に偏光層と、
透明基材を備えることを特徴とする偏光板とした。
また、請求項にかかる発明としては、観察者側から順に、請求項に記載の偏光板と
、液晶セル、偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、防眩層が観察者側の表面に
あることを特徴とする透過型液晶ディスプレイとした。
上記構成の防眩フィルムとすることにより、(1)正面方向での適度な防眩性と、(2)白ボケがないこと、(3) 防眩層を備える側の表面がゆず肌形態を有さないこと、を兼ね備えた防眩フィルムとすることができ、テレビモニター用のディスプレイに好適に用いられる防眩フィルムとすることができた。
本発明の防眩フィルムについて説明する。図1に本発明の防眩フィルムの断面模式図を示した。本発明の防眩フィルム(1)は透明基材(11)の少なくとも一方に防眩層(12)を備える。本発明の防眩フィルム(1)の防眩層(12)はバインダマトリックス(120)とアクリル−スチレン共重合体粒子(121)を含む。
本発明の防眩フィルムにあっては、(a)防眩層がバインダマトリックス中にアクリル−スチレン共重合体粒子を含み、且つ、該バインダマトリックスが水酸基を有するアクリル系材料を含むこと、(b)アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で除した値(R/H)が0.30以上0.80以下の範囲内であること、(c)アクリル−スチレン共重合体の粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの平均屈折率(n)を引いた値と、該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w)でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n)×w/w)が0.0014以上0.0030以下の範囲内であることを特徴とする。
本発明の防眩フィルムにあっては、(a)防眩層がバインダマトリックス中にアクリル−スチレン共重合体粒子を含み、且つ、該バインダマトリックスが水酸基を有するアクリル系材料を含むことを特徴とする。
防眩フィルムは、防眩層表面に凹凸構造を備えることにより、防眩フィルム表面に入射する外光を散乱させ、防眩フィルム表面に映りこむ外光の像を不鮮明とするものである。
防眩層がバインダマトリックスと粒子からなる場合、防眩層表面の凹凸は粒子が単独あるいは複数が凝集して表面から突出することによって形成される。
本発明者らは、粒子としてアクリル−スチレン共重合体粒子を用い、バインダマトリックスに水酸基を有するアクリル系材料を含有させることにより、バインダマトリックス中で粒子の凝集を防ぎ、形成される防眩層表面の凹凸構造を過剰とすることにより発生する白ボケを抑制できることを見出した。
これは、粒子としてアクリル−スチレン共重合体粒子を用い、バインダマトリックス中に水酸基を有するアクリル材料を用いることにより、アクリル−スチレン共重合体粒子のアクリル部位に存在するカルボニル基とバインダマトリックス中に存在する水酸基の相互作用により粒子が凝集することを防ぐことができることによるものと考えられる。
また本発明の防眩フィルムにあっては、(b)アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で除した値(R/H)が0.30以上0.80以下の範囲内であることを特徴とする。
/Hが0.30に満たない場合、防眩層表面に凹凸を形成することが困難となり、防眩性が低下し、外光の映り込みを十分に防ぐことができなくなってしまう。一方、R/Hが0.80を超えるような場合、防眩層表面に大きな凸部が形成され、表面凹凸が過剰となり、外光が映りこんだ際に白ボケが発生してしまう。
表面に凹凸構造を備える防眩フィルムにおいては、表面に形成される凸部を大きくすることにより、外光が映りこんだ際に外光の像が不鮮明で強い防眩性を得ることができる。しかしながら、防眩層表面の凹凸構造が過剰となった場合には、蛍光灯等の照明が映りこんだ際に「白ボケ」と呼ばれるディスプレイ全体が白茶ける現象が発生する。白ボケは、防眩層表面に形成された過剰な凹凸構造により、防眩層表面に入射する蛍光灯等の照明が過剰に散乱することによる。
なお、本発明において、防眩層の平均膜厚(H)とは表面凹凸のある防眩層の膜厚の平均値のことである。平均膜厚は、電子マイクロメーター、全自動微細形状測定機により求めることができる。また、本発明に用いられるアクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒子径は、光散乱式粒子径分布測定装置により求められる。
また、本発明にあたっては、(c)アクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの屈折率(n)を引いた値と、該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w)でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n)×w/w)が0.0014以上0.0030以下の範囲内であることを特徴とする。
((n−n)×w/w)が0.0014に満たない場合にあっては、防眩層表面に凹凸を形成することが困難となり、防眩性が低下し、外光の映り込みを十分に防ぐことができなくなる。一方、((n−n)×w/w)が0.003を超えるような場合、粒子の偏在によりユズ肌外観を呈するようになる。((n−n)×w/w)が0.003を超えるような場合にあっては、防眩層を形成する際にアクリル−スチレン共重合体粒子が偏在する傾向を示し、アクリル−スチレン共重合体粒子によって形成される防眩層表面の凹凸構造の近接する凸部間のピッチが大きくなる。このとき、形成される防眩層はユズ肌外観を示す。
アクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率(n)とバインダマトリックスの屈折率(n)の屈折率差(n−n)は、アクリル−スチレン共重合体粒子とバインダマトリックスの相溶性の指標となる。これは、アクリル―スチレン共重合体粒子のアクリル成分が多くなるほど屈折率差(n−n)が小さくなり、一方、アクリル―スチレン共重合体粒子のスチレン成分が多くなるほど屈折率差(n−n)が大きくなることによる。したがって、屈折率差(n−n)が小さくなるほどアクリル−スチレン共重合体粒子とバインダマトリックスは良好な相溶性を示し、屈折率差(n−n)が大きくなるほどバインダマトリックス中でアクリル−スチレン共重合体粒子は偏在するようになる。一方、バインダマトリックス中に存在するアクリル−スチレン共重合体粒子の重量割合(w/w)が大きくなるほど、バインダマトリックス中でアクリル−スチレン共重合体粒子は偏在するようになる。
本発明者らは、アクリル−スチレン共重合体の粒子の屈折率(n)とバインダマトリックスの屈折率(n)の屈折率差(n−n)とバインダマトリックス中に存在するアクリル−スチレン共重合体粒子の重量割合(w/w)を掛け合わせたパラメーター((n−n)×w/w)を0.0014以上0.0030以下の範囲内とすることにより、十分な防眩性を示し、且つ、ユズ肌外観の無い防眩フィルムとすることができた。
なお、本発明において、バインダマトリックスの屈折率(n)とはバインダマトリックスで膜を形成した後の膜の屈折率を意味する。すなわち、防眩層においてアクリル−スチレン共重合体粒子を除いた箇所での屈折率がバインダマトリックスの屈折率となる。なお、バインダマトリックスの屈折率(n)及びアクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率(n)はベッケ線検出法(液浸法)により求めることができる。
本発明者らは、防眩フィルムにおいて、(a)防眩層がバインダマトリックス中にアクリル−スチレン共重合体粒子を含み、且つ、該バインダマトリックスが水酸基を有するアクリル系材料を含むこととし、(b)アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で除した値(R/H)が0.30以上0.80以下の範囲内であることとし、(c)アクリル−スチレン共重合体の粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの平均屈折率(n)を引いた値と、該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w)でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n)×w/w)が0.0014以上0.0030以下の範囲内であることとすることにより、(1)正面方向での適度な防眩性と、(2)白ボケがないこと、(3) 防眩層を備える側の表面がゆず肌形態を有さないこと、を兼ね備えた防眩フィルムとすることができ、テレビモニター用のディスプレイに好適に用いられる防眩フィルム、およびそれを用いた透過型液晶ディスプレイを見出した。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、バインダマトリックス中に含まれる水酸基を有するアクリル系材料がペンタエリスリトールトリアクリレートであり、且つ、防眩層が、バインダマトリックス100重量部対しペンタエリスリトールトリアクリレートを18重量部以上含むことを特徴とすることが好ましい。ペンタエリスリトールトリアクリレートの含有量が18重量部に満たない場合には、本発明の効果を十分に得ることができなくなることがある。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、防眩層の平均膜厚(H)が3μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。防眩層の平均膜厚が3μmを下回る場合、得られる防眩フィルムはディスプレイ表面に設けられるだけの十分な硬度を得ることができなくなってしまうことがある。一方、防眩層の平均膜厚が30μmを超えるような場合、コスト高になり、また、得られる防眩フィルムのカールの度合いが大きくなってしまいディスプレイ表面に設けるための加工工程に適さないことがある。なお、より好ましい防眩層の平均膜厚は4μm以上20μm以下の範囲内である。
本発明の防眩フィルムは、必要に応じて、反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。また、これらの機能層は、透明基材と防眩層の間に設けても良いし、防眩層上に設けても良い。また、本発明にあっては、各種層間の接着性向上のために、各層間にプライマー層や接着層等を設けても良い。
図2に本発明の防眩フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイを示した。図2(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、請求項2に記載したように、防眩フィルム(1)、偏光板(2)、液晶セル(3)、偏光板(4)、バックライトユニット(5)をこの順に備えている。このとき、防眩フィルム(1)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
図2(a)にあっては、防眩フィルム(1)の透明基材(11)と偏光板(2)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。一方、図2(b)にあっては、
請求項3に記載したように、防眩フィルム(1)の透明基材(11)の防眩層の反対側の面に偏光層(23)が設けられており、透明基材(11)が防眩フィルム(1)の透明基材と偏光板(2)の透明基材を兼ねる構造となっている。
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
次に、本発明の防眩フィルムの製造方法について示す。
本発明の防眩フィルムの製造方法にあっては、少なくとも電離放射線によって硬化するバインダマトリックス形成材料とアクリル−スチレン共重合体粒子を含む防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布し、透明基材上に塗膜を形成する工程と、バインダマトリックス形成材料を電離放射線により硬化させる硬化工程を備えることにより透明基材上に防眩層を形成することができる。
本発明に用いられる透明基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから好適に用いることができ、特に、本発明の防眩フィルムを液晶ディスプレイ表面に設けるにあっては、透明基材としてトリアセチルセルロースを用いることが好ましい。
また、図2(b)で示したように、透明基材の防眩層が設けられる面の反対側の面に偏光層を設けることも可能である。このとき、偏光層としては、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを例示することができる。このとき、偏光層は透明基材に狭持されている。
防眩層を形成するための防眩層形成用塗液としては、少なくとも電離放射線によって硬化するバインダマトリックス形成材料とアクリル−スチレン共重合体粒子を含む。
このとき、バインダマトリックス形成材料としては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる化合物を用いることができるが、具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306I等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を用いることができる。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、バインダマトリックス形成材料としては水酸基を有するアクリル系材料を含む。水酸基を有するアクリル系材料としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、あるいはジペンタエリスリトールペンタアクリレートを用いることができる。中でも、ペンタエリスリトールトリアクリレートを好適に用いることが好ましい。
また、バインダマトリックス形成材料としては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料の他に熱可塑性樹脂等を加えることもできる。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を使用できる。熱可塑性樹脂を加えることにより、透明基材と防眩層との密着性を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂を加えることにより、製造される防眩フィルムのカールを抑制することができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合、防眩層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができるが、用いるバインダマトリックス形成材料にあったものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類等が用いられる。光重合開始剤の使用量は、バインダマトリックス形成材料に対して0.5重量部〜20重量部である。好ましくは1重量部〜5重量部である。
本発明に用いられるアクリルースチレン共重合体粒子としては、メタクリル酸メチル(MMA)とスチレンの共重合体粒子を挙げることができる。モノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)とスチレンを出発原料とし懸濁重合をおこなうことにより粒子状のMMAとスチレンの共重合体を得ることができる。そして、出発原料であるMMAとスチレンの重量比率を変化させることにより、屈折率を変化させたメタクリル酸メチル(MMA)とスチレンの共重合体粒子を得ることができる。
防眩層形成用塗液には、必要に応じて溶媒を加える。溶媒を加えることにより、粒子やバインダマトリックスを均一に分散させ、また、防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布するに際し、塗液の粘度を適切な範囲に調整することが可能となる。
本発明においては、透明基材としてトリアセチルセルロースを用い、トリアセチルセルロースフィルム上に他の機能層を介さず直接防眩層を設ける場合には、防眩層形成用塗液の溶媒として、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒とトリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒の混合溶媒を用いることが好ましく、混合溶媒を用いることによりトリアセチルセルロースフィルムと防眩層界面において十分な密着性を有する防眩フィルムとすることができる。
このとき、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびエチルシクロヘキサノン等の一部のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明にあっては、塗布、形成される防眩層(塗膜)においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜(防眩層)の表面張力を低下させる働きを備える。
表面調整剤として通常用いられる添加剤としては、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、アクリル系添加剤等が挙げられる。シリコーン系添加剤にあっては、ポリジメチルシロキサンを基本構造とする誘導体であり、ポリジメチルシロキサン構造の側鎖を変性したものが用いられる。例えば、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンがシリコーン添加剤として用いられる。また、フッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基を備える化合物が用いられる。また、アクリル系添加剤としては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造とするものが用いられる。また、アクリル系添加剤にあっては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造として、側鎖にアルキル基やポリエーテル基、ポリエステル基、水酸基、エポキシ基等の置換基を含有していても構わない。
また、本発明の防眩層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。ただし、これらの添加剤は形成される防眩層の透明性、光の拡散性などに影響を与えないほうが好ましい。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、などを使用でき、それにより、形成される防眩層に帯電防止機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、防汚機能、撥水機能といった、防眩機能以外の機能を持たせることができる。
防眩層形成用塗液は透明基材上に塗布され、塗膜を形成する。
防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いた塗工方法を使用できる。中でも、ロール・ツー・ロール方式で高速で塗工することが可能なダイコーターを用いることが好ましい。また塗液の固形分濃度は、塗工方法により異なる。固形分濃度は、重量比でおおよそ30〜70重量%であればよい。
次に、本発明のダイコーター塗布装置について説明する。図3に本発明のダイコーター塗布装置の模式図を示した。本発明のダイコーター塗布装置は、ダイヘッド30が塗液タンク32が配管31によって接続され、送液ポンプ33によって、塗液タンク32の防眩層形成用塗液がダイヘッド30内に送液される構造となっている。ダイヘッド30に送液された防眩層形成用塗液はスリット間隙から塗液を吐出し、透明基材11上に塗膜が形成される。巻き取り式の透明基材11を用い回転ロール35を使用することにより、ロール・ツー・ロール方式により連続して透明基材上に塗膜を形成することができる。
塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、防眩層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
なお、硬化により防眩層を形成する工程の前後に乾燥工程を設けてもよい。また、硬化と乾燥を同時におこなってもよい。特に、塗液がバインダマトリックス材料と粒子と溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
以下に実施例を示す。
(実施例1)
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム製TD−80U)を用いた。防眩層形成用塗液として、バインダマトリックス形成材料として、分子内に水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレート(PE3A(アクリル材料1)) 94.5重量部、重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社)5.0重量部、アクリル系添加剤としてBYK350(ビックケミージャパン株式会社)0.5重量部を用意した。また、アクリル−スチレン共重合体粒子として平均粒子径6.0μm屈折率1.560のアクリル−スチレン共重合体粒子を9.0重量部用意した。溶媒としては、ジオキソラン30重量部とトルエン70重量部の混合溶媒を用意した。なお、アクリル−スチレン共重合体粒子はメタクリル酸メチル(MMA)とスチレンの共重合体粒子である。
これらの、バインダマトリックス形成材料とアクリル−スチレン共重合体粒子と溶媒を調整した防眩層形成塗液をダイコーター塗布装置を用い、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、塗膜を得た。得られた塗膜に対し、乾燥を行い塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cmの紫外線照射により、塗膜を硬化させ、トリアセチルセルロースフィルム上に防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(実施例2)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)
(表1)に示したように、バインダマトリックス形成材料として、分子内に水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレート(PE3A(アクリル材料1))のほかに、分子内に水酸基を有さないジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA(アクリル材料2))を用い、これらの混合比及びアクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒子径(R)、屈折率(n)、添加量(w)を変化させ、それぞれ、防眩層形成用塗液を作製した。これらの防眩層形成用塗液を用い、(実施例1)と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム上に防眩層を備える防眩フィルムを作製した。なお、(比較例15)については、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE3A(アクリル材料1))は用いなかった。
(表1)に、(実施例1)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)の塗液の組成を示す。また、あわせて、防眩層の平均膜厚Hをあわせて記載した。なお、防眩層の平均膜厚Hは電子マイクロメーター(アンリツ製K351C)により測定した。また、アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径は、光散乱式粒径分布測定装置(SALD−7000 島津製作所製)を用いて測定した。また、アクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率はベッケ線検出法(液浸法)により測定した。また、バインダマトリックスの屈折率は、アクリル−スチレン共重合体粒子を除いた形で、バインダマトリックス形成材料を塗布、乾燥、紫外線硬化させたものを用い、ベッケ線検出法(液浸法)により測定した。
Figure 0005407174
(実施例1)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)で得られた防眩フィルムについて、以下の方法で「防眩性」、「白ボケ」、「ユズ肌外観」の評価をおこなった。
・「防眩性」
(実施例1)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)で得られた防眩フィルムを黒色のプラスティック板に粘着剤を介して貼り付けた状態で、1m離れた地点から観察し目視評価した。目視評価の結果、自らの顔が全く気にならない場合を「二重丸印」、自らの顔が確認されるものの許容される場合を「丸印」、自らの顔が鮮明に写りこむ場合を「バツ印」とし、評価をおこなった。
・「白ボケ」
(実施例1)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)で得られた防眩フィルムを粘着剤を介して黒色のプラスティック板に貼り付けた状態で、蛍光灯を映りこませ、防眩フィルムの光の拡散具合を目視で評価した。光の拡散具合が小さく、防眩フィルムに白っぽさを感じない場合を「丸印」、白っぽさを感じ、許容できない場合を「バツ印」とし、評価をおこなった。
・「ユズ肌」
実施例及び比較例において得られた防眩フィルムを粘着剤を介して黒色のプラスティック板に貼り付けた状態で目視により観察し、ユズ肌外観を評価した。目視レベルで平滑な表面を持つものを丸印、ユズ肌感が強く、許容できない場合をバツ印とし、評価をおこなった。
(表2)に、(実施例1)〜(実施例8)、(比較例1)〜(比較例15)で得られた防眩フィルムの「防眩性」、「白ボケ」、「ユズ肌外観」の評価結果を示す。なお、あわせて、アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で除した値(R/H)、および、アクリル−スチレン共重合体の粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの平均屈折率(n)を引いた値と該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w)でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n)×w/w)を示す。
Figure 0005407174
以上の結果、(実施例1)〜(実施例8)にあっては、(比較例1)〜(比較例15)の防眩フィルムと比較して、高い防眩性有し、白ボケがなく、ユズ肌外観の無い防眩フィルムとすることができた。
図1は防眩層形成材料としてアクリル−スチレン共重合体粒子を用いたときの本発明の防眩フィルムの断面模式図である。 図2は本発明の防眩フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイである。 図3は本発明のダイコーター塗布装置の模式図である。
符号の説明
1 防眩フィルム
11 透明基材
12 防眩層
120 バインダマトリックス
121 アクリル−スチレン共重合体粒子
粒子Aの平均粒径
H 防眩層の平均膜厚
2 偏光板
21 透明基材
22 透明基材
23 偏光層
3 液晶セル
4 偏光板
41 透明基材
42 透明基材
43 偏光層
5 バックライトユニット
30 ダイヘッド
31 配管
32 塗液タンク
33 送液ポンプ
35 回転ロール

Claims (7)

  1. 透明基材上に防眩層のみを備える防眩フィルムであって、
    該防眩層が前記透明基材と反対側の面に凹凸構造を有しており、
    防眩層がバインダマトリックス中に粒子を含み、
    該粒子が、屈折率が1種類のアクリル−スチレン共重合体粒子からなり、
    該バインダマトリックスが水酸基を有するアクリル系材料を含み、
    前記アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R )が、4μm以上8μm以下であり、且つ、
    前記アクリル−スチレン共重合体粒子の平均粒径(R)を防眩層の平均膜厚(H)で
    除した値(R/H)が0.60以上0.67以下の範囲内であり、且つ、
    アクリル−スチレン共重合体粒子の屈折率(n)からバインダマトリックスの平均屈
    折率(n)を引いた値と、該防眩層中におけるバインダマトリックスの含有量(w
    でアクリル−スチレン共重合体粒子の含有量(w)を除した値との積((n−n
    ×w/w)が0.0025以上0.0029以下の範囲内である
    ことを特徴とする防眩フィルム。
  2. 前記防眩層の平均膜厚(H)が、6μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項
    1に記載の防眩フィルム。
  3. 前記防眩層が、バインダマトリックス100重量部に対し、前記アクリル−スチレン共重
    合体粒子を、6重量部以上24重量部以下含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防眩フィルム。
  4. 前記水酸基を有するアクリル系材料がペンタエリスリトールトリアクリレートであり、
    且つ、
    前記防眩層が、バインダマトリックス100重量部対しペンタエリスリトールトリアクリレートを18重量部以上含むことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  5. 観察者側から順に、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の防眩フィルム、偏光
    板、液晶セル、偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、防眩層が観察者側の表面
    にあることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の防眩フィルムと、前記防眩フィルムの透
    明基材の防眩層形成面と反対側の面に偏光層と、透明基材を備えることを特徴とする偏光
    板。
  7. 観察者側から順に、請求項に記載の偏光板と、液晶セル、偏光板、バックライトユニ
    ットをこの順に備え、防眩層が観察者側の表面にあることを特徴とする透過型液晶ディス
    プレイ。
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