以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態において重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100を示す概略断面模式図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、第1の透明基材110、第1の透明基材110上に防眩層120を有する。本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100の防眩層120は、アクリル系材料からなるバインダマトリックス121と粒子122を含む。
本発明の実施の形態においては、バインダマトリックス121の形成材料がアクリル系材料を含むことを特徴とする。バインダマトリックス121の形成材料に用いられるアクリル系材料には、例えば、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート、アクリレートまたはメタクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。これらのアクリル系材料は電離放射線硬化型材料であり、紫外線や電子線を照射させることにより三次元網目構造を形成して硬化し、ハードコート性を有する硬質の膜とすることができる。すなわち、ディスプレイの表面に設ける際に十分なハードコート性を有する防眩フィルム100とすることができる。
本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100において、バインダマトリックス121とは、防眩層120に含まれる成分のうち、粒子122を除いたものをいう。本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、第1の透明基材110上に防眩層120の形成用塗液を塗布することにより形成されるが、本発明の実施の形態に係るバインダマトリックス121の形成材料とは防眩層120の形成用塗液の固形分から粒子122を除いたものをいう。したがって、バインダマトリックス121の形成材料には、必要に応じてアクリル系材料の他に光重合開始剤や表面調整剤等の添加剤、熱可塑性樹脂等が含まれる。
本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100においては、バインダマトリックス121の形成材料がアクリル系材料であること、防眩フィルム100のヘイズ値(Hz)が0.5%以上5%以下であること、粒子122の屈折率(nA)とバインダマトリックス121の屈折率(nM)の屈折率差(|nA−nM|)が0.03以下であること、粒子の25%径(R25)を平均粒子径(R)で除した値(R25/R)が0.7以上0.9以下であり、且つ、粒子122の75%径(R75)を平均粒子径(R)で除した値(R75/R)が1.1以上1.3以下であること、粒子122の75%径(R75)を防眩層120の平均膜厚(H)で除した値(R75/H)が0.7以上1.5以下の範囲内であることを特徴とする。ここで、粒子の25%径(R 25 )とは、粒子径の分布において小さい粒子から数えて全体の個数の25%になったときの粒子の粒子径をいう。同様に75%径(R 75 )とは、その分布において小さい粒子から数えて全体の個数の75%になったときの粒子の粒子径をいう。
本発明の実施の形態においては、防眩フィルム100のヘイズ値(Hz)が0.5%以上5%以下であることを特徴とする。より好ましいくは、ヘイズ値が1%以上5%以下である。防眩フィルム100のヘイズ値を0.5%以上5%以下とすることで、防眩フィルム100を貼り合せたディスプレイのコントラストの低下を防ぐことができ、コントラスト特性の高いディスプレイとすることができる。しかし、ヘイズ値が1%未満の防眩フィルム100を高精細ディスプレイに貼り合せた際、画像がチラチラする現象(ギラツキ)が発生する場合がある。また、ヘイズ値が0.5%未満の場合には、防眩フィルム100の表面の凹凸構造の度合いが小さくなり、外光を十分に散乱することができなくなり、適度な防眩性が得られなくなってしまう。一方、ヘイズ値が5%を越えると、コントラストが低下してしまう。
また、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、粒子122の屈折率(nA)とバインダマトリックス121の屈折率(nM)の屈折率差(|nA−nM|)が0.03以下であることを特徴とする。本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、粒子122の屈折率(nA)とバインダマトリックス121の屈折率(nM)との屈折率差(|nA−nM|)が0.03以下であれば、コントラスト特性が高い防眩フィルム100とすることができる。一方、粒子122の屈折率(nA)とバインダマトリックス121の屈折率(nM)との屈折率差(|nA−nM|)が0.03を超える場合には、透過光の散乱が強くなってしまいヘイズ値が高くなりコントラストを低下させてしまう。なお、本発明の実施の形態の効果の発現のためには屈折率差(|nA−nM|)が0であっても構わない。
なお、本発明の実施の形態において、バインダマトリックス121の屈折率(nM)とは、バインダマトリックス121で膜を形成した後の膜の屈折率をいう。電離放射線によって硬化する電離放射線硬化型のバインダマトリックス121の形成材料を用いた場合にはバインダマトリックス121の屈折率(nM)は電離放射線を照射して硬化させた後の屈折率となる。すなわち、防眩層120において粒子122を除いた箇所での屈折率がバインダマトリックス121の屈折率となる。なお、バインダマトリックス121の屈折率(nM)及び粒子122の屈折率(nA)はベッケ線検出法(液浸法)により求めることができる。
また、本発明の実施の形態においては、粒子122の25%径(R25)を平均粒子径(R)で除した値(R25/R)が0.7以上0.9以下であり、且つ、粒子122の75%径(R75)を平均粒子径(R)で除した値(R75/R)が1.1以上1.3以下の範囲であることを特徴とする。
本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、防眩層120の表面に凹凸構造を備えることにより、防眩フィルム100の表面に入射する外光を散乱させ、防眩フィルム100の表面に映りこむ外光の像を不鮮明とするものである。防眩層120がバインダマトリックス121と粒子122からなる場合、防眩層120の表面の凹凸はバインダマトリックス121中に粒子122が単独あるいは複数が凝集して存在することで形成される。しかしながら、防眩フィルム100の表面の凹凸構造の度合いを小さくしすぎると、外光は防眩フィルム100の表面で十分に散乱することができなってしまう。すなわち適度な防眩性が得られなくなってしまう。一方、表面の凹凸を大きくしすぎると、外光は防眩フィルム100の表面で過度に散乱することになってしまう。すなわち、外光として蛍光灯等の照明が防眩フィルム100の表面に入射した際に白茶ける現象(白ボケ)が発生してしまう。防眩フィルム100において、適度な防眩性と白ボケのないことは、トレードオフの関係にあり両者を両立することは困難であった。
そこで、本発明者らは、粒子122の25%径(R25)を平均粒子径(R)で除した値(R25/R)が0.7以上0.9以下であり、且つ、粒子122の75%径(R75)を平均粒子径(R)で除した値(R75/R)が1.1以上1.3以下の範囲にすることにより、適度な防眩性を備え、且つ、白ボケが抑制できることを見出した。
また、本発明の実施の形態においては、粒子122の75%径(R75)を防眩層120の平均膜厚(H)で除した値(R75/H)が0.7以上1.5以下の範囲内であることを特徴とする。粒子122の75%径(R75)を防眩層120の平均膜厚(H)で除した値(R75/H)が0.7未満の場合、防眩層120の表面に凹凸構造を形成することが困難となり、防眩性が低下し、外光の映り込みを十分に防ぐことができなくなってしまう。一方、粒子122の75%径(R75)を防眩層120の平均膜厚(H)で除した値(R75/H)が1.5を超える場合、防眩層120の表面に大きな凸部が形成され、表面の凹凸が過剰となり、外光が映りこんだ際に白ボケが発生してしまう。また、防眩層120の表面をこすった際に凸部が削り取られやすくなり、防眩フィルム100の耐擦傷性が低下する。
なお、本発明の実施の形態に用いられる粒子の25%径(R25)、75%径(R75)および平均粒子径(R)は、光散乱式粒子径分布測定装置により求められる。また、本発明の実施の形態において、防眩層120の平均膜厚(H)とは防眩層120の膜厚のうち、粒子122による凸部を除いた膜厚の平均値のことである。防眩層120の平均膜厚(H)は、走査電子型顕微鏡により求めることができる。
また、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100においては、防眩層120の平均膜厚(H)が3μm以上12μm以下の範囲内であることが好ましい。防眩層120の平均膜厚(H)が3μm未満の場合、得られる防眩フィルム100はディスプレイの表面に設けられるだけの十分な硬度を得ることができなくなってしまうことがある。一方、防眩層120の平均膜厚(H)が12μmを超える場合、コスト高になり、また、得られる防眩フィルム100のカールの度合いが大きくなってしまいディスプレイの表面に設けるための加工工程に適さなくなってしまうことがある。なお、より好ましい防眩層120の平均膜厚(H)は4μm以上10μm以下の範囲内である。
また、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100においては、粒子122のバインダマトリックス121に対する含有量が0.5wt%以上15wt%以下の範囲内であることが好ましい。粒子122のバインダマトリックス121に対する含有量が0.5wt%未満の場合、防眩性が発現しにくくなってしまい、15wt%を超える場合、本発明の実施の形態に係る効果を十分に得ることができなくなってしまう。
次に、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100の製造方法について説明する。
本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100の製造方法は、電離放射線によって硬化するバインダマトリックス121の形成材料と粒子122とを含む防眩層120の形成用塗液を第1の透明基材110上に塗布し、第1の透明基材110上に塗膜を形成する工程と、バインダマトリックス121の形成材料を電離放射線により硬化させる硬化工程とを備えることにより第1の透明基材110上に防眩層120を形成することができる。
本発明の実施の形態に係る第1の透明基材110としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから好適に用いることができる。本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100を液晶ディスプレイの表面に設ける場合には、第1の透明基材110としてトリアセチルセルロースを用いることが特に好ましい。
また、後述する図3(b)に示すように、第1の透明基材110の防眩層120が設けられる面の反対側の面に第1の偏光層323を設けることも可能である。このとき、第1の偏光層323としては、例えば、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを用いることができ、第1の偏光層323は第1の透明基材110と第3の透明基材322との間に狭持されている。
防眩層120を形成するための形成用塗液としては、電離放射線によって硬化するバインダマトリックス121の形成材料と粒子122を含むことが好ましい。
このとき、バインダマトリックス121の形成材料としては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本発明の実施の形態において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」との両方を示している。
例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、例えば、2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、例えば、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる化合物を用いることができるが、具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306I等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を用いることができる。
また、バインダマトリックス121の形成材料としては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料の他に熱可塑性樹脂等を加えることもできる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂を加えることにより、第1の透明基材110と防眩層120との密着性を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂を加えることにより、製造される防眩フィルム100のカールを抑制することができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合、防眩層120の形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができるが、用いるバインダマトリックス121の形成材料にあったものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類等が用いられる。光重合開始剤の使用量は、バインダマトリックス形成材料に対して0.5重量部〜20重量部である。好ましくは1重量部〜5重量部である。
本発明の実施の形態に係る粒子122としては、例えば、アクリル粒子(屈折率1.49〜1.56)、アクリルスチレン粒子(屈折率1.49〜1.59)、ポリスチレン粒子(屈折率1.59)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.58)、メラミン粒子(屈折率1.66)、エポキシ粒子(屈折率1.58)、ポリウレタン粒子(屈折率1.55)、ナイロン粒子(屈折率1.50)、ポリエチレン粒子(1.50〜1.56)、ポリプロピレン粒子(屈折率1.49)、シリコーン粒子(屈折率1.43)、ポリテトラフルオロエチレン粒子(屈折率1.35)、ポリフッ化ビニリデン粒子(屈折率1.42)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.54)、ポリ塩化ビニリデン粒子(屈折率1.62)、ガラス粒子(屈折率1.48)、シリカ(屈折率1.43)等を用いることができる。なお、本発明の実施の形態においては、粒子122は複数種の粒子122であっても構わない。
防眩層120の形成用塗液には、必要に応じて溶媒を加える。溶媒を加えることにより、粒子122やバインダマトリックス121を均一に分散させ、また、防眩層120の形成用塗液を第1の透明基材110上に塗布するに際し、塗液の粘度を適切な範囲に調整することができる。
本発明の実施の形態においては、第1の透明基材110としてトリアセチルセルロースを用い、トリアセチルセルロースフィルム上に他の機能層を介さず直接防眩層120を設ける場合には、防眩層120の形成用塗液の溶媒として、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒とトリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒の混合溶媒を用いることが好ましく、混合溶媒を用いることによりトリアセチルセルロースフィルムと防眩層120との界面において十分な密着性を有する防眩フィルム100とすることができる。
このとき、トリアセチルセルロースフィルム(第1の透明基材110)を溶解または膨潤させる溶媒としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびエチルシクロヘキサノン等の一部のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等の一部のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
トリアセチルセルロースフィルム(第1の透明基材110)を溶解または膨潤させない溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどの一部のエステル類などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の実施の形態に係る防眩層120においては、塗布、形成される防眩層120(塗膜)においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜(防眩層120)の表面張力を低下させる働きを備える。
表面調整剤として通常用いられる添加剤としては、例えば、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、アクリル系添加剤等が挙げられる。シリコーン系添加剤にあっては、ポリジメチルシロキサンを基本構造とする誘導体であり、ポリジメチルシロキサン構造の側鎖を変性したものが用いられる。例えば、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンがシリコーン添加剤として用いられる。また、フッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基を備える化合物が用いられる。また、アクリル系添加剤としては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造とするものが用いられる。また、アクリル系添加剤にあっては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造として、側鎖にアルキル基やポリエーテル基、ポリエステル基、水酸基、エポキシ基等の置換基を含有していても構わない。
また、本発明の実施の形態に係る防眩層120の形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。ただし、これらの添加剤は形成される防眩層120の透明性、光の拡散性などに影響を与えないほうが好ましい。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、などを使用でき、それにより、形成される防眩層に帯電防止機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、防汚機能、撥水機能といった、防眩機能以外の機能を持たせることができる。
本発明の実施の形態に係る防眩層120の形成用塗液は、第1の透明基材110上に塗布され、塗膜を形成する。防眩層120の形成用塗液を第1の透明基材110上に塗布するための塗工方法としては、ロールコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、バーコータ、ダイコータを用いた塗工方法を使用できる。中でも、ロール・ツー・ロール方式で高速で塗工することが可能なダイコータを用いることが好ましい。また塗液の固形分濃度は、塗工方法により異なる。固形分濃度は、重量比で約30重量%〜約70重量%であればよい。
次に、本発明の実施の形態に係るダイコータ塗布装置200について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るダイコータ塗布装置200を示す概略断面模式図である。図2に示すように、本発明の実施の形態に係るダイコータ塗布装置200は、ダイヘッド230と塗液タンク232とが配管231によって接続され、送液ポンプ233によって、塗液タンク232の防眩層120の形成用塗液がダイヘッド230内に送液される構造となっている。ダイヘッド230に送液された防眩層120の形成用塗液はスリット間隙から塗液を吐出し、第1の透明基材111上に塗膜が形成される。巻き取り式の第1の透明基材110を用いて、回転ロール235を使用することにより、ロール・ツー・ロール方式により連続して第1の透明基材110上に塗膜を形成することができる。
塗液を第1の透明基材110上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、防眩層120が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50KeV〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100KeV〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
なお、硬化により防眩層120を形成する工程の前後に乾燥工程を設けてもよい。また、硬化と乾燥とを同時におこなってもよい。特に、塗液がバインダマトリックス121の材料と粒子122と溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
上述した方法を用いて作製した防眩フィルム100は、防眩層120を備える側の表面に外光が映りこんだ際にその外光の像が不鮮明で適度な防眩性を備えることだけでなく、防眩層120を備える側の表面に蛍光灯等の照明が映りこんだ際に防眩フィルムが白茶ける現象(白ボケ)が少ないこと、防眩フィルム100を備えるディスプレイのコントラスト特性を高くすることができる。
次に、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100を用いたディスプレイについて説明する。なお、以下では、透過型液晶ディスプレイについて説明するが、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100は、透過型液晶ディスプレイだけでなく、CRTディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けることができる。
図3(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100を用いた透過型液晶ディスプレイ300を示す図である。図3(a)に示すように、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ300は、防眩フィルム100、第1の偏光板320、液晶セル330、第2の偏光板340及びバックライトユニット350を備えている。このとき、防眩フィルム100側が観察者側すなわちディスプレイの表面となる。
バックライトユニット350は、図示しないが光源と光拡散板とを備える。液晶セル350は、図示しないが、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルタを備えて、両電極間に液晶が封入された構造となっている。第1の偏光板320及び第2の偏光板340は、液晶セル330を挟むように設けられる。第1の偏光板320は、第2の透明基材321と第3の透明基材322との間に第1の偏光層323を挟持し、第2の偏光板320は、第4の透明基材341と第5の透明基材342との間に第2の偏光層343を挟持した構造となっている。図3(a)は、防眩フィルム100の第1の透明基材110と第1の偏光板320の第2の透明基材321とを別々に備える透過型液晶ディスプレイ300となっている。
図3(b)に示すように、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ400は、第3の偏光板420が防眩フィルム100の第1の透明基材110の防眩層120を設ける反対側の面に第1の偏光層323が設けられて、第1の透明基材110が防眩フィルム100と第3の偏光板420との透明基材を兼ねる構造となっている。
また、図3(b)で示すように、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ400は、第1の透明基材110の防眩層120が設けられる面とは反対側の面に第1の偏光層323を備えている。このとき、第1の偏光層323としては、例えば、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを用いることができる。また、第1の偏光層323は、第1の透明基材110及び第3の透明基材322に狭持されている。
本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ300及び400には、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ300及び400はこれらに限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る防眩フィルム100を用いた透過型液晶ディスプレイ300及び400は、視認性に優れ、コントラスト特性を高くできる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。
まず、図1を参照して防眩フィルム100を作製する。図1に示すように、第1の透明基材110には、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム製TD−80U)を用いた。塗液として、表1(後述する)に示すバインダマトリックス121と表2(後述する)に示す実施例1の粒子122と溶媒からなる防眩層120の形成用塗液とを用いた。
次に、図2に示すダイコータ塗布装置200を用いて、トリアセチルセルロース(第1の透明基材110)上に防眩層120の塗液を塗布し塗膜を得た。得られた塗膜に対し、乾燥を行い塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて酸素濃度が0.03%以下の雰囲気下で400mJ/cm2の紫外線照射することにより塗膜を硬化させ、第1の透明基材110上に防眩層120を備える防眩フィルム100を作製した。得られた防眩層120の平均膜厚(H)は6.0μmであった(表2参照)。
このとき、防眩フィルム100のヘイズ値はヘイズメータ(日本電色工業製NDH2000)を用いて、JIS−K7105に準じてヘイズ値を測定した。また、防眩層120の平均膜厚(H)は走査電子顕微鏡により測定した。また、粒子122の平均粒径(R)、25%径(R25)、75%径(R75)は、光散乱式粒径分布測定装置(SALD−7000 島津製作所製)を用いて測定した。また、あわせて粒子122の屈折率とバインダマトリックス121の屈折率を求めた。粒子122の屈折率(nA)は、ベッケ線検出法(液浸法)により測定した。バインダマトリックスの屈折率(nM)は、粒子122を除いたバインダマトリック121の形成材料と溶媒からなる塗液を塗布、乾燥、紫外線硬化させたものを用いベッケ線検出法(液浸法)により測定した。
実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例10において、表2に示すように、粒子122の屈折率(nA)、粒子122の平均粒子径(R)、25%径(R25)、75%径(R75)、防眩層120の平均膜厚(H)、粒子122の含有量を変化させ、実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例10の防眩フィルム100を作製した。実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例10には、バインダマトリックス121の形成材料として表1に示すように、アクリル系材料、光重合開始剤、表面調整剤を用いて、溶媒は上述した実施例1と同一のものを用いて防眩フィルム100を作製した。また、実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例10にあっては、実施例1と同一のダイコータ塗布装置200を用いて、防眩層120の平均膜厚(H)を変化させるために塗布量を変化させた以外は、乾燥条件、紫外線照射条件は実施例1と同じ条件で防眩フィルム100を作製した。
表2には、実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10の防眩フィルム100の粒子の屈折率(nA)、粒子122の平均粒子径(R)、25%径(R25)、75%径(R75)、防眩層120の平均膜厚H、粒子122の含有量を示した。
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100について、以下の方法で、防眩性、白ボケ、コントラストの評価をおこなった。
[防眩性]
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100を黒色のプラスティック板に粘着剤を介して貼り付けた状態で、蛍光灯などが映りこんだ像の鮮明さを目視評価した。目視評価の結果、蛍光灯の像が気にならない場合を「丸印」として示し、蛍光灯の像が鮮明であり気になる場合「バツ印」として示した。
[白ボケ]
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100を粘着剤を介して黒色のプラスティック板に貼り付けた状態で、蛍光灯を映りこませ、防眩フィルム100の光の拡散具合を目視で評価した。光の拡散具合が小さく防眩フィルム100に白っぽさを感じない場合を「丸印」として示し、白っぽさを感じ許容できない場合を「バツ印」として示した。
[コントラスト]
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100を粘着剤を介して液晶モニタ(BUFFALO社製FTD−W2023ADSR)に貼り付け、輝度計(コニカミノルタ社製LS−100)を用いて液晶モニタの白表示時の輝度(白輝度)、黒表示時の輝度(黒輝度)を測定し、白輝度を黒輝度で除した値をコントラストとした。測定環境下は暗室条件および測定部が200lxとなるように調光した明室条件それぞれで測定した。このとき、実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100が無い状態で測定した値からの低下率が、暗室条件下で1%以下かつ明室条件下で40%以下の場合を「丸印」として示し、それ以外の場合を「バツ印」として示し、評価した。
表3に実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例10で得られた防眩フィルム100の「防眩性」、「白ボケ」「ギラツキ」の評価結果を示す。また、防眩フィルム100のヘイズ値、粒子122の屈折率(nA)とバインダマトリックス121の屈折率(nM)の屈折率差(|nA−nM|)の値、粒子122の25%径(R25)を平均粒子径(R)で除した値(R25/R)、粒子122の75%径(R75)を平均粒子径(R)で除した値(R75/R)、粒子122の75%径(R75)を防眩層120の平均膜厚Hで除した値(R75/H)、防眩層120の平均膜厚H、粒子122の含有量も併せて示した。
実施例1〜実施例12の防眩フィルム100は、比較例1〜比較例10の防眩フィルム100と比較して、適度な防眩性有し、白ボケが少なく、ディスプレイに貼り合せた際にコントラスト特性を高くすることができる防眩フィルム100とすることができた。