図1に本発明の防眩フィルムの断面模式図を示した。本発明の防眩フィルム(1)は、透明基材(11)上に防眩層(12)を有する。本発明の防眩フィルム(1)の防眩層(12)は、バインダマトリックス(120)と有機粒子(121)を備える。
本発明の防眩フィルムにあっては、防眩層がバインダマトリックス(120)と有機粒子(121)を備え、防眩フィルムのヘイズ値が1.5%以上5.5%以下の範囲内であり、且つ、防眩層における前記バインダマトリックスの屈折率と前記有機粒子の屈折率の差が0.03以下であり、且つ、防眩層形成面側表面における5°反射率が0.2%以上1.7%以下の範囲内であり、且つ、防眩フィルムの透過像鮮明度が280%以上350%以下の範囲内であることを特徴とする。
本発明の防眩フィルムにおいて、バインダマトリックスとは防眩層に含まれる成分のうち、有機粒子を除いたものを指す。本発明の防眩フィルムにあっては透明基材上に防眩層形成用塗液を塗布することにより形成されるが、本発明のバインダマトリックス形成材料とは防眩層形成用塗液の固形分から有機粒子を除いたものを指す。
防眩層をバインダマトリックスと有機粒子を用いて形成することによりエンボス法等の型押し法の場合と比較して形成される防眩フィルムの欠陥の数を少なくすることができる。エンボス法等の型押し法で防眩フィルムを作製する場合にあっては、型(エンボス型)に異物や欠陥がある際に形成される防眩層に周期的に欠陥が発生するといった問題が生じる。また、防眩層を作製するにあたり有機粒子を用いることにより、無機粒子を用いて防眩層を形成する場合と比較して光透過性を高くすることができる。
本発明の防眩フィルムにあっては、防眩フィルムのヘイズ値が1.5%以上5.5%以下の範囲内であることを特徴とする。防眩フィルムのヘイズ値が1.5%より低い場合、外光の映りこみを十分に抑えられずディスプレイの視認性が低下してしまう。ヘイズ値が5.5%より高い場合、ディスプレイの光源からの透過光の透過率が低下してしまい、省電力化とならなくなってしまう。本発明にあってはヘイズ値が1.5%以上5.5%以下の範囲内の防眩フィルムとすることにより、十分な外光映りこみ防止性を有し、かつ、高い透過率を備える防眩フィルムとすることができる。
なお、本発明において防眩フィルムのヘーズは、JIS K7136(2000)に基づき測定される。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、バインダマトリックスの屈折率と有機粒子の屈折率の差が0.03以下であることを特徴とする。本発明の防眩フィルムにあっては、ヘイズ値を5.5%以下としているため防眩層中における粒子含有率を低くする必要がある。粒子含有率を低くした場合にあっては、防眩層中の粒子の分散状態によって面内で外光の映りこみ防止性といった光学性能が不均一になりやすく、防眩フィルムをディスプレイ表面に設けた際に視認性を低下させるといった問題が発生する。本発明にあっては、バインダマトリックスの屈折率と有機粒子の屈折率の差を0.03以下とすることにより面内での光学性能を均一とすることができ、ディスプレイ表面に設けた際に視認性に優れた防眩フィルムとすることができる。バインダマトリックスの屈折率と有機粒子の屈折率の差が0.03を超える場合にあっては、面内での光学性能が不均一となってしまいディスプレイ表面に設けた際にディスプレイの視認性が低下する。本発明の防眩フィルムにあってはバインダマトリックスの屈折率と有機粒子の屈折率の差が0.03以下とすることにより、面内での光学性能が均一な防眩フィルムとすることができる。
なお、本発明においてバインダマトリックス及び有機粒子の屈折率は、JIS K7142(1996)に基づき液浸法(ベッケ線法(B法))により求められる。なお、バインダマトリックスの屈折率とはバインダマトリックスで膜を形成した後の膜の屈折率を意味する。電離放射線によって硬化する電離放射線硬化型のバインダマトリックス形成材料を用いた場合にはバインダマトリックスの屈折率は電離放射線を照射して硬化させた後の膜の屈折率となる。すなわち、防眩層において有機粒子を除いた箇所での屈折率がバインダマトリックスの屈折率となる。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、防眩層形成面側表面における5°反射率が0.2%以上1.7%以下の範囲内であることを特徴とする。防眩層表面における5°反射率が1.7%より高い場合には、防眩フィルム表面外光が映りこんだ際に視認者が反射する外光を眩しく感じてしまい、ディスプレイの視認性が低下してしまう。防眩フィルムにおいて防眩層表面における5°反射率は小さければ小さいほど好ましい。しかしながら5°反射率が0.2%を下回る場合にあっては、防眩フィルムを製造する際の製造コストが高くなってしまうため好ましくない。本発明にあっては、防眩層形成面側表面における5°反射率が0.2%以上1.7%以下の範囲内の防眩フィルムとすることにより、十分な外光映りこみ防止性を備える防眩フィルムとすることができる。
なお、本発明において防眩層形成面側表面における5°反射率は防眩層形成面側表面に対する法線方向から5°傾けた際の反射率であり、防眩層表面に対する法線方向から5°傾けた位置で入射光を防眩層に入射させ、防眩層において反射してくる反射光の強度を、入射光と正反射方向から測定することにより求められる。このとき5°反射率は入射光の強度を100%としたときの反射光の強度である。なお、5°反射率を測定するにあっては、防眩層形成面と反対側の面の透明基材表面に艶消し黒色塗料を塗布したうえで測定される。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、防眩フィルムの透過像鮮明度が280%以上350%以下の範囲内であることを特徴とする。防眩フィルムの透過像鮮明度が280%を下回る場合には、防眩フィルムをディスプレイ表面に設けた際に防眩フィルムを透過して表示されるディスプレイの映像が歪んでしまい、ディスプレイの視認性が低下してしまう。防眩フィルムの透過像鮮明度は高ければ高いほど、歪みのない映像を表示させることができる。しかしながら防眩フィルムの透過像鮮明度が350%を超える場合にあっては、防眩フィルムのヘイズ値が1.5%以上とすることが困難となり、外光の映りこみが抑えられずディスプレイの視認性が低下してしまう。本発明にあっては透過像鮮明度が280%以上350%以下の範囲内である防眩フィルムとすることにより、防眩フィルムを透過して表示されるディスプレイの映像が歪むことを抑制し、かつ十分な外光の映りこみ防止性を備える防眩フィルムとすることができる。
なお、本発明において防眩フィルムの透過像鮮明度は、JIS K7105(1981)に基づき測定され、光学くし0.125mmのときの像鮮明度と0.5mmのときの像鮮明度と1.0mmのときの像鮮明度と2.0mmのときの像鮮明度とを合計した値である。
本発明のバインダマトリックスと有機粒子を備える防眩層を有する防眩フィルムにあっては、(A)防眩フィルムのヘイズ値が1.5%以上5.5%以下の範囲内であり、且つ、(B)防眩層における前記バインダマトリックスの屈折率と前記有機粒子の屈折率の差が0.03以下であり、且つ、(C)防眩層形成面側表面における5°反射率が0.2%以上1.7%以下の範囲内であり、且つ、(D)防眩フィルムの透過像鮮明度が280%以上350%以下の範囲内であることを特徴とする。本発明にあっては、要件(A)〜(D)のすべてを満たす防眩フィルムとすることにより、(1)高い光透過性を備えディスプレイの省電力化を可能とすることができ、(2)外光の映りこみが気にならず外光の映りこみを防ぐことができ、(3)透過する映像に歪みが少なく表示品位に優れ、且つ、面内で光学性能が均一である防眩フィルムとすることができる。
また、本発明の防眩フィルムにあっては、防眩フィルムの平行光線透過率が80%以上であることが好ましい。防眩フィルムの平行光線透過率が80%以上とすることにより、高い光透過性を備えディスプレイの省電力化を可能とすることができる防眩フィルムとすることができる。防眩フィルムの平行光線透過率が80%に満たない場合にあっては、十分な光透過性を備える防眩フィルムとすることはできなくなってしまう傾向となる。
なお、本発明において防眩フィルムの平行光線透過率はJIS K7105(1981)に基づき測定される。
また、本発明の防眩にフィルムにあっては、防眩層の平均膜厚(H)が3.0μm以上8.0μm以下の範囲内であることが好ましい。防眩層の平均膜厚が3.0μmを下回る場合、得られる防眩フィルムはディスプレイ表面に設けられるだけの十分な硬度を得ることができなくなってしまうことがある。一方、防眩層の平均膜厚が8.0μmを超えるような場合、コスト高になり、また、得られる防眩フィルムのカールの度合いが大きくなってしまいディスプレイ表面に設けるための加工工程に適さないことがある。なお、より好ましい防眩層の平均膜厚は4.0μm以上7.0μm以下の範囲内である。
本発明の防眩フィルムは、必要に応じて、反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。また、これらの機能層は、透明基材と防眩層の間に設けても良いし、防眩層上に設けても良い。また、本発明にあっては、各種層間の接着性向上のために、各層間にプライマー層や接着層等を設けても良い。
図2に本発明の別の態様の防眩フィルムの断面模式図を示した。本発明の別の態様の防眩フィルム(1)は、透明基材(11)上に防眩層(12)を備え、防眩層(12)上に機能層(13)が設けられる。機能層としては、帯電防止層、反射防止層、防汚層等から選択して設けられる。中でも、防眩層上に設けられる機能層として反射防止層が好適に設けられる。防眩層上に反射防止層を設けることにより、防眩フィルム表面に入射する外光の映りこみの度合いを更に低下させることが可能となる。防眩層上に反射防止層を設けることにより、防眩フィルムに入射する外光を防眩層表面の凹凸構造により散乱させるだけでなく、反射防止層により干渉させることにより、外光の映りこみを防止することができる。また、機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。反射防止層にあっては、低屈折率層単層で構成される反射防止層であっても構わないし、低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる反射防止層であっても構わない。
図3に本発明の防眩フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの断面模式図を示した。図3(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトユニット(5)、偏光板(4)、液晶セル(3)、偏光板(2)、防眩フィルム(1)をこの順に備えている。このとき、防眩フィルム(1)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
図3(a)にあっては、防眩フィルム(1)の透明基材(11)と偏光板(2)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。一方、図3(b)にあっては、防眩フィルム(1)の透明基材(11)の防眩層の反対側の面に偏光層(23)が設けられており、透明基材(11)が防眩フィルム(1)の透明基材と偏光板(2)の透明基材を兼ねる構造となっており、防眩フィルムが偏光板の一部となっている。図3(b)のように本発明の防眩フィルム(1)にあっては、透明基材(11)の防眩層(12)形成面と反対側の面に偏光層(23)と、透明基材(22)を設けることにより偏光板(2)とすることができる。
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
次に、本発明の防眩フィルムの製造方法について示す。
本発明の防眩フィルムの製造方法にあっては、少なくとも電離放射線によって硬化するバインダマトリックス形成材料と有機粒子を含む防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布し、透明基材上に塗膜を形成する工程と、バインダマトリックス形成材料を電離放射線により硬化させる硬化工程を備えることにより透明基材上に防眩層を形成することができる。
本発明に用いられる透明基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから好適に用いることができ、特に、本発明の防眩フィルムを液晶ディスプレイ表面に設けるにあっては、透明基材としてトリアセチルセルロースを用いることが好ましい。
また、図3(b)で示したように、透明基材の防眩層が設けられる面の反対側の面に偏光層を設けることも可能である。このとき、偏光層としては、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを例示することができる。このとき、偏光層は透明基材と他の透明基材によって挟持されている。
防眩層を形成するための塗液としては、少なくとも電離放射線によって硬化するバインダマトリックス形成材料と有機粒子を含む。このとき、バインダマトリックス形成材料としては、電離放射線硬化型材料を用いることができる。
防眩層を形成するための電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
また、アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
中でも、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料である、3官能アクリレートモノマーもしくは4官能アクリレートモノマーを用いることが好ましい。3官能アクリレートモノマーもしくは4官能アクリレートモノマーを用いることにより十分な耐擦傷性を備える防眩フィルムとすることができる。3官能アクリレートモノマーもしくは4官能アクリレートモノマーをバインダマトリックス形成材料に対し合計で80wt%以上用いることが好ましい。
また、バインダマトリックス形成材料としては、電離放射線硬化型材料の他に熱可塑性樹脂等を加えることもできる。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を使用できる。熱可塑性樹脂を加えることにより、透明基材と防眩層との密着性を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂を加えることにより、製造される防眩フィルムのカールを抑制することができる。
本発明に用いられる有機粒子としては、アクリル粒子(屈折率1.49)、アクリルスチレン粒子(屈折率1.49〜1.59)、ポリスチレン粒子(屈折率1.59)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.58)、メラミン粒子(屈折率1.66)、エポキシ粒子(屈折率1.58)、ポリウレタン粒子(屈折率1.55)、ナイロン粒子(屈折率1.50)、ポリエチレン粒子(1.50〜1.56)、ポリプロピレン粒子(屈折率1.49)、シリコーン粒子(屈折率1.43)、ポリテトラフルオロエチレン粒子(屈折率1.35)、ポリフッ化ビニリデン粒子(屈折率1.42)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.54)、ポリ塩化ビニリデン粒子(屈折率1.62)から適宜選択される。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合、防眩層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができるが、用いるバインダマトリックス形成材料にあったものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類等が用いられる。光重合開始剤の使用量は、バインダマトリックス形成材料に対して0.5〜20wt%である。好ましくは1〜5重量%である。
防眩層形成用塗液には、必要に応じて溶媒を加える。溶媒を加えることにより、粒子やバインダマトリックスを均一に分散させ、また、塗液を透明基材上に塗布するに際し、塗液の粘度を適切な範囲に調整することが可能となる。
本発明においては、透明基材としてトリアセチルセルロースを用い、トリアセチルフィルム上に直接防眩層を形成する場合には、防眩層形成用塗液の溶媒として、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒とトリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒の混合溶媒を用いることが好ましく、混合溶媒を用いることによりトリアセチルセルロースと防眩層界面において十分な密着性を有する防眩フィルムとすることができる。
このとき、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等の一部のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明にあっては、防眩層形成用塗液を塗布し、形成される防眩層(塗膜)においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜(防眩層)の表面張力を低下させる働きを備える。
表面調整剤として通常用いられる添加剤としては、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、アクリル系添加剤等が挙げられる。シリコーン系添加剤にあっては、ポリジメチルシロキサンを基本構造とする誘導体であり、ポリジメチルシロキサン構造の側鎖を変性したものが用いられる。例えば、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンがシリコーン添加剤として用いられる。また、フッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基を備える化合物が用いられる
アクリル系添加剤としては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造とする化合物を用いることができる。また、アクリル系添加剤にあっては、アクリルモノマーやメタクリルモノマーやスチレンモノマーを重合させた構造を基本構造として、側鎖にアルキル基やポリエーテル基、ポリエステル基、水酸基、エポキシ基等の置換基を含有していても構わない。
また、本発明の防眩層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。ただし、これらの添加剤は形成される防眩層の透明性、光の拡散性などに影響を与えないほうが好ましい。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、などを使用でき、それにより、形成される防眩層に帯電防止機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、防汚機能、撥水機能といった、防眩機能以外の機能を持たせることができる。
防眩層形成用塗液は透明基材上に塗布され、塗膜を形成する。
防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いた塗工方法を使用できる。中でも、ロール・ツー・ロール方式で高速で塗工することが可能なダイコーターを用いることが好ましい。また塗液の固形分濃度は、塗工方法により異なる。固形分濃度は30重量%以上70重量%以下の範囲内が好ましい。
次に、本発明のダイコーター塗布装置について説明する。図4に本発明のダイコーター塗布装置の模式図を示した。本発明のダイコーター塗布装置は、ダイヘッド30と塗液タンク32が配管31によって接続され、送液ポンプ33によって、塗液タンク32の防眩層形成用塗液がダイヘッド30内に送液される構造となっている。ダイヘッド30に送液された塗液はスリット間隙から塗液を吐出し、透明基材11上に塗膜が形成される。巻き取り式の透明基材11を用い回転ロール35を使用することにより、ロール・ツー・ロール方式により連続して透明基材上に塗膜を形成することができる。
防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、防眩層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
このとき、硬化により防眩層を形成する工程の前後に塗液の溶媒を除去するための乾燥工程を設けてもよい。また、硬化と乾燥を同時におこなってもよい。特に、塗液がバインダマトリックス材料と粒子と溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。すなわち、防眩層形成用塗液を透明基材上に塗布する塗布工程、透明基材上塗布した塗膜を乾燥する乾燥工程、透明基材上の塗膜に電離放射線を照射する電離放射線照射工程の順で透明基材上に防眩層が形成される。なお、乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
以上により、本発明の防眩フィルムは製造される。
次に、図2に示したような、防眩層上に機能層として反射防止層を備える防眩フィルムの、反射防止層の形成方法について述べる。反射防止層としては、低屈折率層単層で構成される単層構造の反射防止層や、低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造の反射防止層が挙げられる。また、反射防止層を形成する方法としては、反射防止層形成用塗液を防眩層表面に塗布し形成する湿式成膜法による方法と、真空蒸着法やスパッタリング法やCVD法といった真空成膜法により形成する方法に分けられる。
以下に、反射防止層として、低屈折率層形成塗液を防眩層表面に塗布し、湿式成膜法により低屈折率層単層を形成する方法について述べる。このとき反射防止層である低屈折率層単層の膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設計される。低屈折率層としてはバインダマトリックス中に低屈折粒子を分散させたものを用いることができる。
低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、Na3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
また、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用いることもできる。電離放射線硬化型材料としては、防眩層層形成用塗液のときと同様にアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、ハードコート層形成用塗液で挙げたアクリル系材料を用いることができ、ハードコート層形成用塗液、帯電防止層形成用塗液のときと同様に、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
また、バインダマトリックス形成材料として、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等のケイ素アルコキシド等の金属アルコキシドを用いることができる。これらは、加水分解、脱水縮合により、無機系または有機無機複合系バインダマトリックスとすることができる。
また、低屈折率層としては、バインダマトリックス中に低屈折率粒子を分散させたものだけでなく、低屈折率粒子を用いずに低い屈折率を備えるフッ素系の有機材料から形成することも可能である。
これら、低屈折率材料とバインダマトリックス形成材料を含む低屈折率層形成塗液は防眩層表面に塗布される。このとき、低屈折率層形成塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、添加剤として、表面調整剤、帯電防止剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
また、塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いた塗工方法を用いることができる。
そして、塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用いた場合にあっては、必要に応じて塗膜の乾燥をおこなったあとに、電離放射線を照射することにより、低屈折率層が形成される。また、バインダマトリックス形成材料として金属アルコキシドを用いた場合には、乾燥、加熱等により低屈折率層が形成される。
また、反射防止層としては、低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造を有する反射防止層とすることができる。例えば、防眩層側から順に、高屈折率層として酸化チタン、低屈折率層として酸化ケイ素、高屈折率層として酸化チタン、低屈折率層として酸化ケイ素を真空蒸着法により成膜することにより反射防止層とすることもできる。
また、本発明の防眩フィルムにおいて機能層として帯電防止層を設けるにあっては、金属及び金属酸化物等の導電性材料を真空成膜法により成膜し帯電防止層として形成する方法や、金属及び金属酸化物等の導電性材料をバインダマトリックス形成材料中に分散させた塗液を塗布することにより帯電防止層を形成する方法を用いることができる。
以下に実施例を示す。
(実施例1)
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム製TD−80U)を用いた。塗液として、(表1)のAG塗液1に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を調液した。そしてダイコーター塗布装置を用い、乾燥硬化後の防眩層の平均膜厚が7μmとなるようにトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、塗膜を得た。得られた塗膜に対し、乾燥をおこない塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて酸素濃度が0.03%以下の雰囲気下で400mJ/cm2の紫外線照射により、塗膜を硬化させ、透明基材上に防眩層を備える(実施例1)の防眩フィルムを作製した。
(実施例2)
(表1)のAG塗液2に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(比較例1)
(表1)のAG塗液3に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(実施例3)
(表1)のAG塗液4に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(比較例2)
(表1)のAG塗液5に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(実施例4)
(表1)のAG塗液6に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(比較例3)
(表2)のAG塗液7に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(実施例5)
(表2)のAG塗液8に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(比較例4)
(表2)のAG塗液9に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用いその他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(実施例6)
(表2)のAG塗液10に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
(比較例5)
(表2)のAG塗液11に示したバインダマトリックス形成材料と有機粒子と溶媒からなる防眩層形成用塗液を用い、その他は(実施例1)と同様にしてトリアセチルセルルースフィルム上に平均膜厚7μmの防眩層を備える防眩フィルムを作製した。
以下の(表1)および(表2)に、(実施例1)〜(実施例6)、(比較例1)〜(比較例5)に用いたAG塗液1〜11をまとめたものを示す。
なお、防眩層の平均膜厚は電子マイクロメーター(アンリツ製K351C)により測定したところ、(実施例1)〜(実施例6)、(比較例1)〜(比較例5)の防眩フィルムすべてで7μmであった。また、有機粒子の平均粒径は、光散乱式粒径分布測定装置(SALD−7000 島津製作所製)を用いて測定した。
(実施例7)
(実施例1)で得られた防眩フィルムに対し、50℃に加熱した1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬しアルカリ処理をおこない、水洗後、0.5重量%−H2SO4水溶液に室温で30秒間浸漬し中和させ、水洗、乾燥処理をおこなった。一方、テトラエトキシシランからなるケイ素アルコキシドを原料とし1mol/L塩酸により加水分解して得られたオリゴマー5重量部と、低屈折率シリカ粒子5重量部とを、190重量部のイソプロパノールで希釈して低屈折率層形成用塗液を調製した。得られた低屈折率層形成用塗液を、アルカリ処理をおこなった防眩層層上に、乾燥膜厚が100nmになるようにダイコーター塗布装置を用いて塗布し、塗膜を得た。得られた塗膜に対し、乾燥をおこない塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて酸素濃度が0.03%以下の雰囲気下で500mJ/cm2の紫外線照射により、塗膜を硬化させ、透明基材上に防眩層と低屈折率層を備える(実施例7)の防眩フィルムを作製した。
次に、(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムについて、ヘイズ値、バインダマトリックスの屈折率差、5°反射率、透過像鮮明度を求めた。
このとき、防眩フィルムのヘイズ値は、ヘイズメータ(日本電色工業製NDH2000)を用い、JIS K7136(2000)に基づき測定した。
また、有機粒子の屈折率は、JIS K7142(1996)に基づき液浸法(ベッケ線法)により測定した。また、バインダマトリックスの屈折率は、有機粒子を除いた形でバインダマトリックス材料を塗布、乾燥、紫外線硬化させたものを用い、液浸法(ベッケ線法)により測定した。有機粒子の屈折率、バインダマトリックスの屈折率については(表1)、(表2)に示した。
また、防眩フィルムの5°反射率は、防眩層形成面と反対側のトリアセチルセルロースフィルム面を艶消し黒スプレーでコートし、防眩層表面の5°反射率を分光測定装置(日立ハイテクノロジー製U−4000/測定波長550nm)を用いて測定した。
また、防眩フィルムの透過像鮮明度は、写像性測定器(スガ試験機製ICM−1DP)を用い、JIS K7105(1981)に準じて透過像鮮明度を測定し、光学くし0.125mmのときの像鮮明度と0.5mmのときの像鮮明度と1.0mmのときの像鮮明度と2.0mmのときの像鮮明度とを合計した値を透過像鮮明度とした。
(表3)に(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムについて、ヘイズ値、バインダマトリックスの屈折率差、5°反射率、透過像鮮明度を示す。
次に、(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムについて、以下の方法で、防眩フィルムを光が透過する際の透過効率が十分高いかどうか(「透過率」)、防眩層表面に外光が映りこんだ時に視認者が気になるかどうか(「外光の映りこみ防止性」)、ディスプレイ表面に防眩フィルムを配置した際、映し出される映像の歪みが視認者に気になるかどうか(「映像の歪み性」)、防眩フィルムの塗工面が均一かどうか(「塗工面均一性」)の評価をおこなった。以下に、その評価方法の詳細を示す。
・「平行光線透過率」
(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムについて分光測定装置(日立ハイテクノロジー製U−4000/測定波長550nm)を用いてJIS K7105(1981)に基づき平行光線透過率を測定した。平行光線透過率が80%以上の場合を丸印、平行光線透過率が80%未満の場合をバツ印とした。
・「外光の映りこみ防止性」
(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムを黒色のプラスティック板に粘着剤を介して貼り付けた状態で、蛍光灯を映りこませて目視評価した。目視評価の結果、蛍光灯があまり気にならない場合を丸印、蛍光灯が気になる場合バツ印とした。
・「映像の歪み性」
(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムを粘着材を介し、解像度80ppiのディスプレイ上に貼合し、映し出される映像の歪みを目視評価した。歪みが気にならない場合を丸印、気になる場合をバツ印とした。
・「面内均一性」
(実施例1)〜(実施例7)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた防眩フィルムを50cm×50cmにカットし、透過光および反射光で目視観察し面内均一性を評価した。防眩層の面内均一性が良好な場合を丸印、不均一性が目視で観察され官能的に気になる場合をバツ印とした。
(表4)に実施例及び比較例で得られた防眩フィルムの「平行光線透過率」、「外光の映りこみ性」、「映像の歪み性」、「面内均一性」の評価結果を示す。
(実施例1)〜(実施例7)の防眩フィルムにあっては、(比較例1)〜(比較例5)の防眩フィルムと比較して、高い光透過性を備え、外光の映りこみを防ぐことができ、透過する映像に歪みが少なく表示品位に優れ、且つ、面内で光学性能が均一である防眩フィルムとすることができた。