以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
図1は、この実施形態1に係る冷凍装置(空気調和装置)に用いられる圧縮機(1)の縦断面図、図2は圧縮機構(第1圧縮機構)の横断面図、図3は圧縮機構(第1圧縮機構)の動作状態図である。また、図4は、この空気調和装置の第1の運転状態を示す冷媒回路図、図5は、第2の運転状態を示す冷媒回路図である。上記圧縮機(1)は、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して、凝縮器へ吐出するために用いられる。
〈圧縮機の構成〉
まず、圧縮機(1)の構成について説明する。この圧縮機(1)は回転式圧縮機であり、1本の駆動軸(53)で機械的に連結された第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)を備え、冷媒(作動流体)である二酸化炭素を二段圧縮するように構成されている。つまり、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)により二段圧縮機構が構成されている。なお、第2圧縮機構(30)の横断面図及び動作状態図は、第1圧縮機構(20)と実質的に同一であるため図2に第2圧縮機構(30)の符号を記入して詳細は省略している。また、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)は位相が180°異なる配置になっているが、図2では便宜上、同一位相で表している。
図1に示すように、この圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、第1圧縮機構(20)、第2圧縮機構(30)及び電動機(駆動機構)(50)が収納されたものであって、全密閉型に構成されている。この実施形態では、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)が低段側圧縮機構と高段側圧縮機構に切り換え可能になっている。
ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。胴部(11)の下方の位置には、第1吸入ポート(14-1)と第1吐出ポート(15-1)が第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(これについては後述する)に対する吸入ポート及び吐出ポートとして設けられている。また、胴部(11)には、第1吸入ポート(14-1)よりも若干上方の位置に、第2吸入ポート(14-2)が第2圧縮機構(30)の吸入ポートとして設けられている。胴部(11)の上方の位置には、第2吐出ポート(15-2)が第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室に対する吐出ポートとして設けられている。
上記第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)は上下二段に重ねられて、ケーシング(10)に固定されたフロントヘッド(16)とリヤヘッド(17)との間に構成されている。上記第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)は、共に容積型の流体機械の一種であるロータリ式の流体機械により構成されている。なお、第2圧縮機構(30)が電動機側(図1の上側)に配置され、第1圧縮機構(20)がケーシング(10)の底部側(図1の下側)に配置されている。また、フロントヘッド(16)とリヤヘッド(17)の間には、ミドルプレート(19)が設けられている。フロントヘッド(16)とリヤヘッド(17)には、それぞれ軸受け部(16a,17a)が設けられている。リヤヘッド(17)の下面には、第1カバープレート(18a)が固定されている。
電動機(50)は、ステータ(51)とロータ(52)とを備えている。ステータ(51)は、第2圧縮機構(30)の上方に配置され、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(52)は、ステータ(51)の内側に配置されている。ロータ(52)の中央部には駆動軸(クランク軸)(53)の主軸部が連結されていて、該駆動軸(53)がロータ(52)とともに回転するように構成されている。上記主軸部の軸心は、ケーシング(10)の軸心と一致している。
第1圧縮機構(20)は、図2に示すように、共に円環状に形成された第1シリンダ(21)及び第1ロータリピストン(偏心ピストン)(22)を備えている。なお、図2において括弧付きの符号が併記されている部材は、括弧がない符号が第1圧縮機構(20)の符号を表し、括弧内の符号が第2圧縮機構(30)の符号を表している。
第1シリンダ(21)及び第1ロータリピストン(22)は、下側のリヤヘッド(17)と上側のミドルプレート(19)とによって挟み込まれている。第1シリンダ(21)の内径は、第1ロータリピストン(22)の外径よりも大きくなっている。第1シリンダ(21)の内周面と第1ロータリピストン(22)の外周面との間には、第1シリンダ室(C-1)が形成されている。
第1ロータリピストン(21)の外周面には、平板状の第1ブレード(23)が突設されている。第1ブレード(23)は、第1シリンダ(21)に対して揺動可能に設けられた一対の第1揺動ブッシュ(27)に対して、摺動自在に挟み込まれている。第1ロータリピストン(22)は、第1ブレード(23)と共に、第1シリンダ(21)に対して揺動可能になっている。第1ブレード(23)は、第1シリンダ室(C-1)を2つに区画している。
第1ロータリピストン(22)の内側には、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)が回転自在に嵌め込まれている。第1偏心部(53a)は、主軸部よりも大径で且つ主軸部に対して偏心している。第1圧縮機構(20)では、駆動軸(53)が回転すると、第1ロータリピストン(22)の内周面が第1偏心部(53a)の外周面と油膜を介して摺接し、第1ロータリピストン(22)の外周面が第1シリンダ(21)の内周面と油膜を介して摺接しながら、第1ロータリピストン(22)が偏心回転する。
第1シリンダ(21)には、第1吸入ポート(14-1)が第1シリンダ室(C-1)に連通するように接続されている。第1吸入ポート(14-1)は、第1揺動ブッシュ(27)の一方(図2における右側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第1シリンダ室(C-1)では、第1吸入ポート(14-1)が開口する側が低圧側になる。ここでいう「低圧側」は、中間圧側に対する低圧側と、高圧側に対する中間圧側を含むものである。
また、第1圧縮機構(20)では、リヤヘッド(17)に第1吐出空間(17b)が形成されるとともに、第1吐出ポート(15-1)が接続されている。第1吐出空間(17b)は、第1吐出口(17c)を介して第1シリンダ室(C-1)と連通している。第1吐出空間(17b)には、第1吐出口(17c)を開閉する第1吐出弁(リード弁)(41a)が設けられている。(41b)は第1吐出弁押さえである。第1吐出ポート(15-1)は、第1吐出空間(17b)と連通している。第1吐出口(17c)は、第1揺動ブッシュ(27)の他方(図2における左側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第1シリンダ室(C-1)では、第1吐出口(17c)が開口する側が高圧側になる。ここでいう「高圧側」は、中間圧側に対する高圧側と、低圧側に対する中間圧側を含むものである。
第2圧縮機構(30)は、第1圧縮機構(20)と同様の構成になっている。第2圧縮機構(30)は、共に円環状に形成された第2シリンダ(31)及び第2ロータリピストン(32)を備えている。第2シリンダ(31)及び第2ロータリピストン(32)は、上側のフロントヘッド(16)と下側のミドルプレート(19)とによって挟み込まれている。第2シリンダ(31)の内径は、第2ロータリピストン(32)の外径よりも大きくなっている。第2シリンダ(31)の内周面と第2ロータリピストン(32)の外周面との間には、第2シリンダ室(C-2)が形成されている。
第2ロータリピストン(32)の外周面には、平板状の第2ブレード(33)が突設されている。第2ブレード(33)は、第2シリンダ(31)に対して揺動可能に設けられた一対の第2揺動ブッシュ(37)に対して、摺動自在に挟み込まれている。第2ロータリピストン(32)は、第2ブレード(33)と共に、第2シリンダ(31)に対して揺動可能になっている。第2ブレード(33)は、第2シリンダ室(C-2)を2つに区画している。
第2ロータリピストン(32)の内側には、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)が回転自在に嵌め込まれている。第2偏心部(53b)は、主軸部よりも大径で且つ主軸部に対して偏心している。上記第1偏心部(53a)と第2偏心部(53b)とは、駆動軸(53)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。第2圧縮機構(30)では、駆動軸(53)が回転すると、第2ロータリピストン(32)の内周面が第2偏心部(53b)の外周面と油膜を介して摺接し、第2ロータリピストン(32)の外周面が第2シリンダ(31)の内周面と油膜を介して摺接しながら、第2ロータリピストン(32)が偏心回転する。
第2シリンダ(31)には、第2吸入ポート(14-2)が第2シリンダ室(C-2)に連通するように接続されている。第2吸入ポート(14-2)は、第2揺動ブッシュ(37)の一方(図2における右側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第2シリンダ室(C-2)では、第2吸入ポート(14-2)が開口する側が低圧側になる。
また、第2圧縮機構(30)では、フロントヘッド(16)に、ケーシング(10)内の空間に対して開放された第2吐出空間(16b)が形成されている。第2吐出空間(16b)は、第2吐出口(16c)を介して第2シリンダ室(C-2)と連通している。第2吐出空間(16b)には、第2吐出口(16c)を開閉する第2吐出弁(リード弁)(41b)が設けられている。(42b)は吐出弁押さえである。ここで、第2吐出ポート(15-2)は、内側端部がケーシング(10)内の空間に開口しているので、第2吐出ポート(15-2)は、ケーシング(10)内の空間を介して第2吐出空間(16b)と連通している。なお、第2吐出口(16c)は、第2揺動ブッシュ(37)の他方(図2における左側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第2シリンダ室(C-2)では、第2吐出口(16c)が開口する側が高圧側になる。
以上説明したように、上記圧縮機(1)は、それぞれが1つのシリンダ室を有する第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)を備え、各圧縮機構(20,30)は、円柱状のシリンダ空間を有するシリンダ(21,31)と、該シリンダ空間の中で偏心回転運動をするロータリピストン(偏心ピストン)(22,32)とを備えている。
上記構成において、第1、第2圧縮機構(20,30)は、吸入容積が異なる2組のシリンダ室(C-1,C-2)を備えている。各シリンダ室(C-1,C-2)の吸入容積を異ならせるために、具体的には、ロータリピストン(22,32)の軸方向長さ寸法とそれに対応するシリンダ(21,31)の軸方向長さ寸法が異なっている。例えば、第1ロータリピストン(22)と第1シリンダ(21)の軸方向長さ寸法が、第2ロータリピストン(32)と第2シリンダ(31)の軸方向長さ寸法より大きくなっている。または、寸法関係をその逆にしてもよい。
ケーシング(10)の底部には、潤滑油が貯留された油溜りが形成されている。駆動軸(53)の下端部には、油溜りに浸漬された遠心式の油ポンプ(54)が設けられている。油ポンプは、駆動軸(53)の内部を上下方向に延びる給油通路(図示せず)に接続されている。油ポンプは、第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)の摺動部や、駆動軸(53)の軸受部に、給油通路を通じて潤滑油を供給する。
〈冷媒回路の構成〉
この空気調和装置の冷媒回路(60)は、冷媒である二酸化炭素を上記圧縮機(1)で超臨界圧まで圧縮して冷凍サイクルを行うものであって、図4及び図5に示すように、上記圧縮機(1)と、ガスクーラ(2)と、蒸発器(3)と、気液分離器(4)と、第1膨張弁(5)と、第2膨張弁(6)とを有している。また、冷媒回路には、圧縮機(1)の吸入側の第1四路切換弁(切換機構)(7a)と、圧縮機(1)の吐出側の第2四路切換弁(切換機構)(7b)とが設けられている。
上記圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)は、第1吸入配管(61)を介して第1四路切換弁(7a)の第1ポート(P1)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第2ポート(P2)は低圧冷媒管(65)を介して蒸発器(3)のガス側端部に接続されている。
上記圧縮機(1)の第1吐出ポート(15-1)は、第1吐出配管(63)を介して第2四路切換弁(7b)の第1ポート(P1)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第2ポート(P2)は、中間圧冷媒管(66)を介して気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)に接続されている。気液分離器(4)の流出口(4c)は、途中に第2膨張弁(6)が設けられた液配管(68)を介して蒸発器(3)の液側端部に接続されている。
中間圧冷媒管(66)は、気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)の下流側で分岐管(69)に分岐している。この分岐管(69)は、第1四路切換弁(7a)の第4ポート(P4)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第3ポート(P3)は、第2吸入配管(62)を介して圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)に接続されている。上記分岐管(69)は、上記圧縮機構(20,30)へ中間圧冷媒をインジェクションするインジェクション機構(中間圧冷媒導入機構)を構成している。
圧縮機(1)の第2吐出ポート(15-2)は、第2吐出配管(64)を介して第2四路切換弁(7b)の第3ポート(P3)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第4ポート(P4)は、高圧冷媒管(67)の一端が接続されている。高圧冷媒管(67)は、ガスクーラ(2)と第1膨張弁(5)を介して、他端が気液分離器(4)の流入口(4b)に接続されている。
上記各四路切換弁(7a,7b)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)が連通して第3ポート(P3)と第4ポート(P4)が連通する第1位置(図4参照)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が連通する第2位置(図5参照)とに切り換えることができるように構成されている。
上記四路切換弁(7a,7b)は、上記各圧縮機構(20,30)に対し、低圧冷媒と中間圧冷媒と高圧冷媒の流通経路を切り換える切換機構であって、低段側に用いる圧縮機構と高段側に用いる圧縮機構を切り換えるように構成されている。
そして、上記切換機構(7a,7b)は、低段側圧縮機構から吐出される中間圧冷媒がケーシング(10)内を介して冷媒回路(60)に流出する図5の状態と、高段側圧縮機構から吐出される高圧吐出冷媒がケーシング(10)内を介して冷媒回路(60)に流出する図4の状態とを切り換え可能に構成されている。
また、上記切換機構(7a,7b)は、運転条件の変化に伴って低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるように構成されている。
−運転動作−
〈圧縮機の運転動作〉
圧縮機(1)の動作について説明する。圧縮機(1)では、電動機(50)の運転が行われると、駆動軸(53)の回転によって第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)が駆動され、第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)で冷媒の圧縮が行われる。なお、第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)の動作自体はほとんど同じであるため、以下では、第1圧縮機構(20)の動作についてのみ説明し、第2圧縮機構(30)の動作の説明は省略する。
第1圧縮機構(20)へ冷媒が流入する過程について、図3を参照しながら説明する。駆動軸(53)が回転角が0°の状態から僅かに回転して、第1ロータリピストン(22)と第1シリンダ(21)の接触位置が第1吸入ポート(14-1)の開口部を通過すると、第1吸入ポート(14-1)から第1シリンダ室(C-1)へ冷媒が流入し始める。そして、第1シリンダ室(C-1)へは、駆動軸(53)の回転角が90°,180°,270°と大きくなるのに伴い冷媒が流入し、回転角が360°になるまで冷媒が流入し続ける。
続いて、第1圧縮機構(20)で冷媒を圧縮する過程について説明する。第1シリンダ室(C-1)への冷媒の流入が終了した状態(駆動軸(53)の回転角360°(0°))において、駆動軸(53)が回転角が再び0°の状態から僅かに回転すると、第1ロータリピストン(22)と第1シリンダ(21)の接触位置が第1吸入ポート(14-1)の開口部を通過する。第1圧縮機構(20)では、この接触位置が第1吸入ポート(14-1)の開口部を通過した時点で、第1圧縮機構(20)における冷媒の閉じ込みが完了する。そして、この状態から駆動軸(53)がさらに回転すると冷媒の圧縮が開始され、第1シリンダ室(C-1)内の冷媒の圧力が第1吐出口(17c)の外側の冷媒の圧力を上回ると、第1吐出弁(41a)が開状態になり、冷媒が第1吐出口からシリンダ室の外へ吐出される。冷媒の吐出は、駆動軸(53)の回転角が360°になるまで続く。
〈空気調和装置の運転動作〉
この空気調和装置では、運転条件の変化に伴って、図4に示す第1の運転状態と、図5に示す第2の運転状態を切り換えることができる。なお、下記では、運転が冷房運転であるものとして説明する。
図4に示す第1の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第1位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通って圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)に吸入され、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出され、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第1圧縮機構(20)に吸入される。
分岐管(69)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通り、第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)に吸入される。第2圧縮機構(30)に吸入された中間圧冷媒は、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第2吐出口(16c)を通ってケーシング(10)内に吐出され、該ケーシング(10)内に充満する。
ケーシング(10)内の高圧冷媒は第2吐出ポート(15-2)から吐出される。高圧冷媒は、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を順に通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
図5に示す第2の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第2位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通って圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)に吸入され、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧の冷媒は、第2吐出口(16c)を通ってケーシング(10)内に吐出され、該ケーシング(10)内に充満する。ケーシング(10)内の中間圧冷媒は第2吐出ポート(15-2)から吐出される。この中間圧冷媒は、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第2圧縮機構(30)に吸入される。
分岐管(68)を流れる中間圧冷媒は、第1吸入配管(61)から第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)に吸入される。第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)に吸入された中間圧冷媒は、該第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて高圧冷媒になる。高圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出され、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
以上のように、この実施形態では、図4の運転状態では圧縮機(1)のケーシング(10)内が高圧圧力となり、図5の運転状態では圧縮機(1)のケーシング(10)内が中間圧力となる。つまり、圧縮機(1)が、空気調和装置の運転状態に応じて、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機と中間圧ドーム型の圧縮機に切り換わる。
−実施形態1の効果−
この実施形態1によれば、第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)と第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)の容積が異なり、第1の運転状態と第2の運転状態とで低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるようにしている。したがって、1本の軸(53)に2つの圧縮機構(20,30)が機械的に連結された圧縮機(1)において、運転条件によって容積比を切り換えることができるので、運転条件に応じた最適COP(成績係数)の運転を行うことが可能となる。また、冷媒の圧縮に伴うトルク変動も調整できる。
さらに、この実施形態では第1の運転状態と第2の運転状態とで圧縮機(1)が高圧ドーム型と中間圧ドーム型とに切り換わるようにしている。圧縮機(1)のケーシング(10)内の圧力を運転状態にかかわらず一定に保つ場合には、実施形態2〜4で説明するようにケーシング(10)に対して冷媒を導入/導出するための配管が必要となるが、本実施形態ではそのような配管が必要ではないので、装置構成を簡単にできるし、装置が高コスト化するのを防止できる。
さらに、本実施形態のように中間圧冷媒を圧縮機構に導入することにより、最適容積比を得るための構成を容易に実現することができる。
−実施形態1の変形例−
上記圧縮機(1)は、圧縮機構(20,30)を図6〜図8に示すように構成してもよい。
この変形例の各圧縮機構(20,30)は、ロータリピストンの内周側と外周側に2つの環状のシリンダ室(C1,C2)(C3,C4)が形成されるように、ロータリピストンを環状ピストン(偏心ピストン)として構成した例である。つまり、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)は、それぞれ、環状のシリンダ空間を有する第1シリンダ(21)及び第2シリンダ(31)と、該シリンダ空間の中で偏心回転運動をする第1環状ピストン(22)及び第2環状ピストン(32)とを備えており、シリンダ空間における環状ピストン(22,32)の内周側に内側シリンダ室(C2,C4)が形成され、外周側に外側シリンダ室(C1,C3)が形成されている。
以下、圧縮機構(20,30)について、主に上記実施形態1と異なる点を説明する。なお、参照符号は、実施形態1のロータリピストンと本変形例の環状ピストンに同じものを使用するほか、他の符号も基本的に実施形態1と同じものを使用する。20番台の符号が第1圧縮機構(20)の構成部品を示しているのに対し、30番台の符号は第2圧縮機構(30)の構成部品を示し、第1圧縮機構(20)の構成部品で説明するのと対応する第2圧縮機構(30)の構成部品は説明を省略するものもある。
上記第1環状ピストン(22)は、一体的に形成された部材であって、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)に摺動自在に嵌合する第1軸受部(22a)と、第1軸受部(22a)の外周側で該第1軸受部(22a)と同心上に位置する第1環状ピストン本体部(22b)と、第1軸受部(22a)と第1環状ピストン本体部(22b)とを連接する第1ピストン側鏡板(22c)とを備え、第1環状ピストン本体部(22b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている(図7参照)。
上記第2環状ピストン(32)は、上記第1環状ピストン(22)と同様に、一体的に形成された部材であって、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)に摺動自在に嵌合する第2軸受部(32a)と、第2軸受部(32a)の外周側で該第2軸受部(32a)と同心上に位置する第2環状ピストン本体部(32b)と、第2軸受部(32a)と第2環状ピストン本体部(32b)とを連接する第2ピストン側鏡板(32c)とを備え、第2環状ピストン本体部(32b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている(図7参照)。
上記第1シリンダ(21)は、第1軸受部(22a)と第1環状ピストン本体部(22b)との間で駆動軸(53)と同心上に位置する第1内側シリンダ部(21b)と、第1環状ピストン本体部(22b)の外周側で第1内側シリンダ部(21b)と同心上に位置する第1外側シリンダ部(21a)と、第1内側シリンダ部(21b)と第1外側シリンダ部(21a)とを連接する第1シリンダ側鏡板(21c)とを備えている。
上記第2シリンダ(31)は、第2軸受部(32a)と第2環状ピストン本体部(32b)との間で駆動軸(53)と同心上に位置する第2内側シリンダ部(31b)と、第2環状ピストン本体部(32b)の外周側で第2内側シリンダ部(31b)と同心上に位置する第2外側シリンダ部(31a)と、第2内側シリンダ部(31b)と第2外側シリンダ部(31a)とを連接する第2シリンダ側鏡板(31c)とを備えている。
フロントヘッド(16)とリヤヘッド(17)には、それぞれ上記駆動軸(53)を支持するための軸受け部(16a,17a)が形成されている。本実施形態の圧縮機(1)は、上記駆動軸(53)が上記第1シリンダ室(C1,C2)及び上記第2シリンダ室(C3,C4)を上下方向に貫通し、第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)の軸方向両側部分が軸受部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持される貫通軸構造となっている。
次に、第1、第2圧縮機構(20,30)の内部構造について説明するが、第1、第2圧縮機構(20,30)は、シリンダ容積を変えるために環状ピストン(22,32)の軸方向長さ寸法とそれに対応するシリンダ(21,31)の軸方向長さ寸法を除いては互いに実質的に同一の構成であるため、第1圧縮機構(20)を代表例として説明する。
上記第1圧縮機構(20)は、図7に示すように、上記第1ブレード(23)に対して第1環状ピストン(22)を該第1環状ピストン(22)の分断箇所において揺動可能に連結する連結部材として、第1揺動ブッシュ(27)を備えている。上記第1ブレード(23)は、第1シリンダ室(C1,C2)の径方向線上で、第1シリンダ室(C1,C2)の内周側の壁面(第1内側シリンダ部(21b)の外周面)から外周側の壁面(第1外側シリンダ部(21a)の内周面)まで、第1環状ピストン(22)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)に固定されている。なお、第1ブレード(23)は、第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)と一体的に形成してもよいし、別部材を両シリンダ部(21a,21b)に取り付けてもよい。図2に示す例は、別部材を両シリンダ部(21a,21b)に固定した例である。
第1外側シリンダ部(21a)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面は、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に上記第1シリンダ室(C1,C2)が形成されている。上記第1環状ピストン(22)は、外周面が第1外側シリンダ部(21a)の内周面よりも小径で、内周面が第1内側シリンダ部(21b)の外周面よりも大径に形成されている。このことにより、第1環状ピストン(22)の外周面と第1外側シリンダ部(21a)の内周面との間に第1外側シリンダ室(C1)が形成され、第1環状ピストン(22)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面との間に第1内側シリンダ室(C2)が形成されている。つまり、上記圧縮機(1)は、それぞれが2つの圧縮室(C1,C2)(C3,C4)を有する第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)を備え、各圧縮機構(20,30)は、環状のシリンダ空間を有するシリンダ(21,31)と、該シリンダ空間の中で偏心回転運動をする環状ピストン(22,32)とを備えていて、シリンダ空間における環状ピストン(22,32)の内周側に内側シリンダ室(C2,C4)が形成され、外周側に外側シリンダ室(C1,C3)が形成されている。
具体的には、第1シリンダ側鏡板(21c)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1外側シリンダ部(21a)と第1環状ピストン本体部(22b)との間に第1外側シリンダ室(C1)が形成され、第1シリンダ側鏡板(21c)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1内側シリンダ部(21b)と第1環状ピストン本体部(22b)との間に第1内側シリンダ室(C2)が形成されている。また、第1シリンダ側鏡板(21c)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1環状ピストン(22)の第1軸受部(22a)と第1内側シリンダ部(21b)との間には、第1内側シリンダ部(21b)の内周側で第1軸受部(22a)の偏心回転動作を許容するための動作空間(25)が形成されている(図2参照)。
第1環状ピストン(22)と第1シリンダ(21)は、第1環状ピストン(22)の外周面と第1外側シリンダ部(21a)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、第1環状ピストン(22)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
上記第1揺動ブッシュ(27)は、第1ブレード(23)に対して高圧室(中間圧室)(C1-Hp,C2-Hp)側に位置する吐出側ブッシュ(27A)と、第1ブレード(23)に対して低圧室(C1-Lp,C2-Lp)側に位置する吸入側ブッシュ(27B)とから構成されている。吐出側ブッシュ(27A)と吸入側ブッシュ(27B)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、両ブッシュ(27A,27B)の対向面の間のスペースがブレード溝(28)を構成している。
このブレード溝(28)に第1ブレード(23)が挿入され、第1揺動ブッシュ(27A,27B)のフラット面が第1ブレード(23)と実質的に面接触し、第1揺動ブッシュ(27A,27B)の円弧状の外周面が第1環状ピストン(22)と実質的に面接触している。第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、ブレード溝(28)に第1ブレード(23)を挟んだ状態で、第1ブレード(23)の面方向に進退するように構成されている。また、第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して揺動するように構成されている。したがって、上記第1揺動ブッシュ(27)は、該第1揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として上記第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して揺動可能となり、かつ上記第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して該第1ブレード(23)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、この実施形態では両ブッシュ(27A,27B)を別体とした例について説明したが、両ブッシュ(27A,27B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
以上の構成において、駆動軸(53)が回転すると、第1環状ピストン(22)は、第1揺動ブッシュ(27)が第1ブレード(23)に沿って進退しながら、第1揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。また、駆動軸(53)が回転すると、第2環状ピストン(32)も、第1環状ピストン(22)と同じように、第2揺動ブッシュ(37)の中心点を揺動中心として揺動する。
この揺動動作により、第1環状ピストン(22)と第1シリンダ(21)との第1接触点が図8(A)から図8(H)へ順に移動する。一方、第2環状ピストン(32)と第2シリンダ(31)との第2接触点は、第1接触点に対して駆動軸(53)の軸心回りに180°ずれている。つまり、駆動軸(53)の上側から見て、第1圧縮機構(20)の動作状態が図8(A)のとき、第2圧縮機構(30)の動作状態は図8(E)となる。
なお、図8は第1圧縮機構(20)の動作状態を表す図であり、図8(A)から図8(H)まで45°間隔で第1環状ピストン(22)が図の時計回り方向に移動している様子を表している。このとき、上記第1環状ピストン(22)は駆動軸(53)の周りを公転するが、自転はしない。
第1圧縮機構(20)は、冷媒を吸入する第1吸入ポート(14-1)と、圧縮した冷媒を吐出する第1吐出ポート(15-1)とを有している。リヤヘッド(17)には、上記第1吸入ポート(14-1)が接続される第1吸入口(41a)が形成されている。また、リヤヘッド(17)の第1吸入口(41a)は、第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)の低圧室に第1導入通路(42a)を介して連通している。そして、第1吸入ポート(14-1)は、リヤヘッド(17)に固定され、第1圧縮機構(20)のシリンダ室(C1,C2)に連通している。
リヤヘッド(17)には、第1圧縮機構(20)のシリンダ室(C1,C2)に連通する第1吐出空間(17b)が形成されている。第1圧縮機構(20)で圧縮された冷媒は、図7に示す外側吐出口(17c-1)及び内側吐出口(17c-2)と、これらを開閉する吐出弁(図示せず;吐出弁押さえ(41)は図示あり)を介して第1吐出空間(17b)に吐出される。また、リヤヘッド(17)には、ケーシング(10)の胴部(11)を貫通する上記第1吐出ポート(15-1)が固定されている。この第1吐出ポート(15-1)は、内側端部がリヤヘッド(17)の第1吐出空間(17b)に開口するとともに、外側端部が冷媒回路の冷媒配管(図1には図示せず)に接続されている。
第2圧縮機構(30)は、冷媒を吸入する第2吸入ポート(14-2)を有している。フロントヘッド(16)には、上記第2吸入ポート(14-2)が接続される第2吸入口(41b)が第2外側シリンダ室(C3)と第2内側シリンダ室(C4)の低圧室に連通するように形成されている。そして、第2吸入ポート(14-2)は、フロントヘッド(16)に固定され、第2圧縮機構(30)のシリンダ室(C3,C4)に連通している。
第2圧縮機構(30)のシリンダ室(C3,C4)で圧縮された高圧の冷媒は、第2外側シリンダ室(C3)と第2内側シリンダ室(C4)の吐出口(16c-1,16c-2)及び吐出弁(図示せず;吐出弁押さえ(16b)は図示あり)を介して第2吐出空間(16b)に吐出される。第2吐出空間(16b)はケーシング(10)内の空間に開放されている。そして、圧縮された冷媒はケーシング(10)内の空間に吐出され、ケーシング(10)内の吐出ガスはケーシング(10)の上部に設けられている第2吐出ポート(15-2)から冷媒回路の冷媒配管に吐出される。
この実施形態1では、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)により二段圧縮機構が構成され、高段側である第2圧縮機構(30)のシリンダ容積が、低段側である第1圧縮機構(20)のシリンダ容積より小さくなっている。そのため、第2環状ピストン本体部(32b)の軸方向長さ寸法が第1環状ピストン本体部(22b)の軸方向長さ寸法より小さくなっている。そして、以上の構成により、本実施形態では4つのシリンダ室の容積がすべて異なっている。
冷媒回路(60)は、図9,図10に示すように、図4,図5に示す冷媒回路(60)と同様に構成されている。
次に、圧縮機(1)の運転動作について説明する。ここで、第1、第2圧縮機構(20,30)の動作は、位相が互いに180°異なる状態で行われる。
電動機(50)を起動すると、第1圧縮機構(20)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)を介して第1環状ピストン(22)に伝達される。そうすると、第1揺動ブッシュ(27A,27B)が第1ブレード(23)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、第1環状ピストン(22)と第1揺動ブッシュ(27A,27B)が一体的になって第1ブレード(23)に対して揺動動作を行う。その際、第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、第1環状ピストン(22)及び第1ブレード(23)に対して実質的に面接触をする。そして、第1環状ピストン(22)が第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構(20)が所定の圧縮動作を行う。
なお、以下の説明において、低圧と高圧の関係は、低圧冷媒に対する中間圧冷媒の関係と、中間圧冷媒に対する高圧冷媒の関係を含むものである。
具体的に、第1外側シリンダ室(C1)では、図8(B)の状態で低圧室(C1-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(53)が図の右回りに回転して図8(C)〜図8(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C1-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、第1吸入ポート(14-1)を通って該低圧室(C1-Lp)に吸入される。
駆動軸(53)が一回転して再び図8(B)の状態になると、上記低圧室(C1-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C1-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(C1-Hp)となり、第1ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C1-Lp)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、上記低圧室(C1-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(C1-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C1-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C1-Hp)の圧力が所定値となって第1吐出空間(17b)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C1-Hp)の冷媒によって吐出弁が開き、冷媒が第1吐出空間(17b)から第1吐出ポート(15-1)を通ってケーシング(10)から流出する。
第1内側シリンダ室(C2)では、図8(F)の状態で低圧室(C2-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(53)が図の右回りに回転して図8(G)〜図8(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C2-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、第1吸入ポート(14-1)及び第1導入通路(42a)を通って第1内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)へ吸入される。
駆動軸(53)が一回転して再び図8(F)の状態になると、上記低圧室(C2-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C2-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(C1-Hp)となり、第1ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C2-Lp)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、上記低圧室(C2-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(C2-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C2-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C2-Hp)の圧力が所定値となって第1吐出空間(17b)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C2-Hp)の中間圧冷媒によって吐出弁が開き、中間圧冷媒が第1吐出空間(17b)から第1吐出ポート(15-1)を通ってケーシング(10)から流出する。
第1外側シリンダ室(C1)ではほぼ図8(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、第1内側シリンダ室(C2)ではほぼ図8(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°異なっている。
第2圧縮機構(30)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)を介して第2環状ピストン(32)に伝達される。そうすると、第2揺動ブッシュ(37)が第2ブレード(33)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、第2環状ピストン(32)と第2揺動ブッシュ(37)が一体的になって第2ブレード(33)に対して揺動動作を行う。その際、第2揺動ブッシュ(37)は、第2環状ピストン(32)及び第2ブレード(33)に対して実質的に面接触をする。そして、第2環状ピストン(32)が第2外側シリンダ部(31a)及び第2内側シリンダ部(31b)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構(30)が所定の圧縮動作を行う。
圧縮動作は、圧力が異なるのを除いては実質的に第1圧縮機構(20)の圧縮動作と同じであり、冷媒がシリンダ室(C3,C4)内で圧縮される。第2内側シリンダ室(C4)と第2外側シリンダ室(C3)において、高圧室(C3-Hp,C4-Hp)の圧力が所定値になると、冷媒の圧力によって吐出弁が開き、冷媒がフロントヘッド(16)の吐出口(16c-1,16c-2)及び吐出弁を介してシリンダ室(C3,C4)から流出する。吐出された冷媒はケーシング(10)内に充満した後に、第2吐出ポート(15-2)を介してケーシング(10)から流出する。
冷媒回路(60)の運転動作は、図4,図5に示す冷媒回路(60)の運転動作と同様であるため、ここでは説明を省略する。
この変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。また、この圧縮機(1)の圧縮機構(20,30)は、いわゆる内外2シリンダ室タイプの揺動ピストン型圧縮機であり、内側シリンダ室と外側シリンダ室のトルク脈動の位相が180°異なっている。しかも、この内外2シリンダ室タイプの圧縮機構を二段に重ねて用いているので、圧縮機(1)を低脈動で低振動にすることが可能となる。
《発明の実施形態2》
図11及び図12に示す本発明の実施形態2について説明する。
この実施形態2の圧縮機(1)では、第2吐出ポート(15-2)が第1吐出ポート(15-1)と同様に構成されている。具体的には第2圧縮機構(30)では、フロントヘッド(16)に第2カバープレート(18b)が固定されるとともに、第2吐出空間(16b)に第2吐出ポート(15-2)が接続されている。図1に示すように、第2吐出空間(16b)は、第2吐出口(16c)を介して第2シリンダ室(C-2)と連通している。第2吐出空間(16b)には、第2吐出口(16c)を開閉する第2吐出弁(リード弁)(41b)が設けられている。(42b)は第2吐出弁押さえである。第2吐出ポート(15-2)は、第2吐出空間(16b)と連通している。第2吐出口(16c)は、図2における左側の第2揺動ブッシュ(37)の近傍に開口している。第2シリンダ室(C-2)では、第2吐出口(16c)が開口する側が高圧側になる。
また、ケーシング(10)の上部鏡板(12)には、低圧冷媒入口管(LP-1)が該上部鏡板(12)を貫通する状態で固定され、胴部(11)のほぼ中央には、低圧冷媒出口管(LP-2)が該胴部(11)を貫通する状態で固定されている。
圧縮機(1)に関するその他の構成は、第1シリンダ室(C-1)と第2シリンダ室(C-2)の容積が異なっていることも含めて、実施形態1と基本的に同じである。
次に、冷媒回路(60)について説明する。冷媒回路(60)の構成要素は実施形態1と同じである。
上記圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)は、第1吸入配管(61)を介して第1四路切換弁(7a)の第1ポート(P1)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第2ポート(P2)は、第2低圧冷媒管(65b)を介して低圧冷媒出口管(LP-2)に接続されている。低圧冷媒出口管(LP-2)は、ケーシング(10)内の空間を介して低圧冷媒入口管(LP-1)と連通しており、低圧冷媒入口管(LP-1)は第1低圧冷媒管(65a)を介して蒸発器(3)のガス側端部に接続されている。
上記圧縮機(1)の第1吐出ポート(15-1)は、第1吐出配管(63)を介して第2四路切換弁(7b)の第1ポート(P1)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第2ポート(P2)は、中間圧冷媒管(66)を介して気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)に接続されている。気液分離器(4)の流出口(4c)は、途中に第2膨張弁(6)が設けられた液配管(68)を介して蒸発器(3)の液側端部に接続されている。
中間圧冷媒管(66)は、気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)の下流側で分岐管(69)に分岐している。この分岐管(69)は、第1四路切換弁(7a)の第4ポート(P4)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第3ポート(P3)は、第2吸入配管(62)を介して圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)に接続されている。
圧縮機(1)の第2吐出ポート(15-2)は、第2吐出配管(64)を介して第2四路切換弁(7b)の第3ポート(P3)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第4ポート(P4)は、高圧冷媒管(67)の一端が接続されている。高圧冷媒管(67)は、ガスクーラ(2)と第1膨張弁(5)を介して、他端が気液分離器(4)の流入口(4b)に接続されている。
上記各四路切換弁(7a,7b)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)が連通して第3ポート(P3)と第4ポート(P4)が連通する第1位置(図11参照)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が連通する第2位置(図12参照)とに切り換えることができるように構成されている。
上記四路切換弁(7a,7b)は、上記各圧縮機構(20,30)に対し、低圧冷媒と中間圧冷媒と高圧冷媒の流通経路を切り換える切換機構であって、低段側に用いる圧縮機構と高段側に用いる圧縮機構を切り換えるように構成されている。
また、上記切換機構(7a,7b)は、運転条件の変化に伴って低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるように構成されている。
−運転動作−
この空気調和装置では、運転条件の変化に伴って、図11に示す第1の運転状態と、図12に示す第2の運転状態を切り換えることができる。なお、下記では、運転が冷房運転であるものとして説明する。
図11に示す第1の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第1位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が第1低圧冷媒管(65a)から低圧冷媒入口管(LP-1)を通ってケーシング(10)内に吸入される。ケーシング(10)内の冷媒は、低圧冷媒出口管(LP-2)を通って第2低圧冷媒管(65b)から流出して低圧冷媒出口管(LP-2)と第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通り、圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)に吸入され、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出され、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は圧縮機(1)のケーシング(10)内の空間を介して第1圧縮機構(20)に吸入される。
分岐管(69)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通り、第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)に吸入される。第2圧縮機構(30)に吸入された中間圧冷媒は、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第2吐出口(16c)を通って第2吐出空間(16b)内に吐出される。
この高圧冷媒は第2吐出ポート(15-2)から吐出される。高圧冷媒は、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を順に通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、ケーシング(10)内の空間を介して第1圧縮機構(20)に吸入される。
図12に示す第2の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第2位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が第1低圧冷媒管(65a)から低圧冷媒入口管(LP-1)を通ってケーシング(10)内に吸入される。ケーシング(10)内の冷媒は、低圧冷媒出口管(LP-2)を通って第2低圧冷媒管(65b)から流出して低圧冷媒出口管(LP-2)と第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通り、圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)に吸入され、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第2吐出ポート(15-2)から吐出され、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は圧縮機(1)のケーシング(10)内の空間を介して第2圧縮機構(30)に吸入される。
分岐管(68)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通り、第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)に吸入される。第1圧縮機構(20)に吸入された中間圧冷媒は、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第1吐出口(17c)を通って第1吐出空間(17b)内に吐出される。
この高圧冷媒は第1吐出ポート(15-1)から吐出される。高圧冷媒は、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を順に通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、ケーシング(10)内の空間を介して第1圧縮機構(20)に吸入される。
以上のように、この実施形態では、図13の運転状態でも図14の運転状態でも、圧縮機(1)のケーシング(10)内が低圧圧力となる。つまり、圧縮機(1)が、いわゆる低圧ドーム型の圧縮機として用いられる。
−実施形態2の効果−
この実施形態2においても、第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)と第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)の容積が異なり、第1の運転状態と第2の運転状態とで低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるようにしている。したがって、1本の軸(53)に2つの圧縮機構(20,30)が機械的に連結された圧縮機(1)において、運転条件によって容積比を切り換えることができるので、運転条件に応じた最適COP(成績係数)の運転を行うことが可能となる。
さらに、この実施形態では第1の運転状態と第2の運転状態の両方とも圧縮機(1)を低圧ドーム型として用いるようにしている。したがって、運転条件によってドーム圧を変更することがないため、摺動部への給油が確実に行える。そのため、圧縮機(1)の信頼性を高めることができる。
《発明の実施形態3》
図13及び図14に示す本発明の実施形態3について説明する。
この実施形態3の圧縮機(1)では、第1吐出ポート(15-1)と第2吐出ポート(15-2)の構成は実施形態2と同様である。また、ケーシング(10)の胴部(11)の中央には、中間圧冷媒入口管(MP-1)が該胴部(11)を貫通する状態で固定され、胴部(11)の上方部分には、中間圧冷媒出口管(MP-2)が該胴部(11)を貫通する状態で固定されている。
圧縮機(1)に関するその他の構成は、第1シリンダ室(C-1)と第2シリンダ室(C-2)の容積が異なっていることも含めて、実施形態1と基本的に同じである。
次に、冷媒回路(60)について説明する。冷媒回路(60)の構成要素は実施形態1,2と同じである。
上記圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)は、第1吸入配管(61)を介して第1四路切換弁(7a)の第1ポート(P1)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第2ポート(P2)は低圧冷媒管(65)を介して蒸発器(3)のガス側端部に接続されている。
上記圧縮機(1)の第1吐出ポート(15-1)は、第1吐出配管(63)を介して第2四路切換弁(7b)の第1ポート(P1)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第2ポート(P2)は、第1中間圧冷媒管(66a)を介して中間圧冷媒入口管(MP-1)に接続されている。中間圧冷媒入口管(MP-1)は、ケーシング(10)内の空間を介して中間圧冷媒出口管(MP-2)と連通しており、中間圧冷媒出口管(MP-2)は、第2中間圧冷媒管(66b)を介して気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)に接続されている。気液分離器(4)の流出口(4c)は、途中に第2膨張弁(6)が設けられた液配管(68)を介して蒸発器(3)の液側端部に接続されている。
第2中間圧冷媒管(66b)は、気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)の下流側で分岐管(69)に分岐している。この分岐管(69)は、第1四路切換弁(7a)の第4ポート(P4)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第3ポート(P3)は、第2吸入配管(62)を介して圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)に接続されている。
圧縮機(1)の第2吐出ポート(15-2)は、第2吐出配管(64)を介して第2四路切換弁(7b)の第3ポート(P3)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第4ポート(P4)は、高圧冷媒管(67)の一端が接続されている。高圧冷媒管(67)は、ガスクーラ(2)と第1膨張弁(5)を介して、他端が気液分離器(4)の流入口(4b)に接続されている。
上記各四路切換弁(7a,7b)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)が連通して第3ポート(P3)と第4ポート(P4)が連通する第1位置(図13参照)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が連通する第2位置(図14参照)とに切り換えることができるように構成されている。
上記四路切換弁(7a,7b)は、上記各圧縮機構(20,30)に対し、低圧冷媒と中間圧冷媒と高圧冷媒の流通経路を切り換える切換機構であって、低段側に用いる圧縮機構と高段側に用いる圧縮機構を切り換えるように構成されている。
また、上記切換機構(7a,7b)は、運転条件の変化に伴って低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるように構成されている。
−運転動作−
この空気調和装置では、運転条件の変化に伴って、図13に示す第1の運転状態と、図14に示す第2の運転状態を切り換えることができる。なお、下記では、運転が冷房運転であるものとして説明する。
図13に示す第1の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第1位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通って圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)に吸入され、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出され、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と第1中間圧冷媒管(66a)を通り、中間圧冷媒入口管(MP-1)からケーシング(10)内へ流入する。ケーシング(10)内の冷媒は、中間圧冷媒出口管(MP-2)から流出する。この中間圧冷媒は、第2中間圧冷媒管(66b)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第1圧縮機構(20)に吸入される。
分岐管(69)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通り、第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)に吸入される。第2圧縮機構(30)に吸入された中間圧冷媒は、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第2吐出ポート(15-2)から吐出される。
高圧冷媒は、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を順に通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
図14に示す第2の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第2位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通って圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)に吸入され、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第2吐出ポート(15-2)から吐出され、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と第1中間圧冷媒管(66a)を通り、中間圧冷媒入口管(MP-1)からケーシング(10)内へ流入する。ケーシング(10)内の冷媒は、中間圧冷媒出口管(MP-2)から流出する。この中間圧冷媒は、第2中間圧冷媒管(66b)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第1圧縮機構(20)に吸入される。
分岐管(68)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通り、第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)に吸入される。第1圧縮機構(20)に吸入された中間圧冷媒は、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出される。
高圧冷媒は、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と高圧冷媒管(67)を順に通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
以上のように、この実施形態では、図15の運転状態でも図16の運転状態でも、圧縮機(1)のケーシング(10)内が中間圧力となる。つまり、圧縮機(1)が、いわゆる中間圧ドーム型の圧縮機として用いられる。
−実施形態3の効果−
この実施形態3においても、第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)と第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)の容積が異なり、第1の運転状態と第2の運転状態とで低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるようにしている。したがって、1本の軸(53)に2つの圧縮機構(20,30)が機械的に連結された圧縮機(1)において、運転条件によって容積比を切り換えることができるので、運転条件に応じた最適COP(成績係数)の運転を行うことが可能となる。
さらに、この実施形態では第1の運転状態と第2の運転状態の両方とも圧縮機(1)を中間圧ドーム型として用いるようにしている。したがって、運転条件によってドーム圧を変更することがないため、摺動部への給油が確実に行える。そのため、圧縮機(1)の信頼性を高めることができる。
《発明の実施形態4》
図15及び図16に示す本発明の実施形態4について説明する。
この実施形態2の圧縮機(1)では、第1吐出ポート(15-1)と第2吐出ポート(15-2)の構成は実施形態2,3と同様である。また、ケーシング(10)の胴部(11)の中央には、高圧冷媒入口管(HP-1)が該胴部(11)を貫通する状態で固定され、胴部(11)の上方部分には、高圧冷媒出口管(HP-2)が該胴部(11)を貫通する状態で固定されている。
圧縮機(1)に関するその他の構成は、第1シリンダ室(C-1)と第2シリンダ室(C-2)の容積が異なっていることも含めて、実施形態1と基本的に同じである。
次に、冷媒回路(60)について説明する。冷媒回路(60)の構成要素は実施形態1,2,3と同じである。
上記圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)は、第1吸入配管(61)を介して第1四路切換弁(7a)の第1ポート(P1)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第2ポート(P2)は低圧冷媒管(65)を介して蒸発器(3)のガス側端部に接続されている。
上記圧縮機(1)の第1吐出ポート(15-1)は、第1吐出配管(63)を介して第2四路切換弁(7b)の第1ポート(P1)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第2ポート(P2)は、中間圧冷媒管(66)を介して気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)に接続されている。気液分離器(4)の流出口(4c)は、途中に第2膨張弁(6)が設けられた液配管(68)を介して蒸発器(3)の液側端部に接続されている。
中間圧冷媒管(66)は、気液分離器(4)の冷媒ガス流出口(4a)の下流側で分岐管(69)に分岐している。この分岐管(69)は、第1四路切換弁(7a)の第4ポート(P4)に接続されている。第1四路切換弁(7a)の第3ポート(P3)は、第2吸入配管(62)を介して圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)に接続されている。
圧縮機(1)の第2吐出ポート(15-2)は、第2吐出配管(64)を介して第2四路切換弁(7b)の第3ポート(P3)に接続されている。第2四路切換弁(7b)の第4ポート(P4)は、第1高圧冷媒管(67a)を介して高圧冷媒入口管(HP-1)に接続されている。高圧冷媒入口管(HP-1)は、ケーシング(10)内の空間を介して高圧冷媒出口管(HP-2)と連通しており、高圧冷媒出口管(HP-2)は、第2高圧冷媒管(67b)の一端が接続されている。第2高圧冷媒管(67b)は、ガスクーラ(2)と第1膨張弁(5)を介して、他端が気液分離器(4)の流入口(4b)に接続されている。
上記各四路切換弁(7a,7b)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)が連通して第3ポート(P3)と第4ポート(P4)が連通する第1位置(図15参照)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が連通する第2位置(図16参照)とに切り換えることができるように構成されている。
上記四路切換弁(7a,7b)は、上記各圧縮機構(20,30)に対し、低圧冷媒と中間圧冷媒と高圧冷媒の流通経路を切り換える切換機構であって、低段側に用いる圧縮機構と高段側に用いる圧縮機構を切り換えるように構成されている。
また、上記切換機構(7a,7b)は、運転条件の変化に伴って低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるように構成されている。
−運転動作−
この空気調和装置では、運転条件の変化に伴って、図15に示す第1の運転状態と、図16に示す第2の運転状態を切り換えることができる。なお、下記では、運転が冷房運転であるものとして説明する。
図15に示す第1の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第1位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通って圧縮機(1)の第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)に吸入され、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出され、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第1圧縮機構(20)に吸入される。
分岐管(69)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通り、第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)に吸入される。第2圧縮機構(30)に吸入された中間圧冷媒は、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第2吐出ポート(15-2)から吐出される。
高圧冷媒は、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と第1高圧冷媒管(67a)を通り、高圧冷媒入口管(HP-1)からケーシング(10)内へ流入する。ケーシング(10)内の冷媒は、高圧冷媒出口管(HP-2)から流出する。この高圧冷媒は、第2高圧冷媒管(67b)を通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
図16に示す第2の運転状態では、第1四路切換弁(7a)と第2四路切換弁(7b)がともに第2位置に設定される。この状態で圧縮機(1)を起動すると、蒸発器(3)で空気と熱交換して蒸発した低圧ガス冷媒が低圧冷媒管(65)と第1四路切換弁(7a)と第2吸入配管(62)を通って圧縮機(1)の第2吸入ポート(14-2)から第2圧縮機構(30)に吸入され、第2シリンダ室(C-2)で圧縮されて中間圧冷媒になる。
中間圧冷媒は、第2吐出ポート(15-2)から吐出され、第2吐出配管(64)と第2四路切換弁(7b)と中間圧冷媒管(66)を通って気液分離器(4)からの冷媒と合流し、分岐管(69)へ流入する。気液分離器(4)に流入した冷媒は気液分離されて液冷媒が気液分離器(4)から流出し、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧されて蒸発器(3)で蒸発する。蒸発した低圧ガス冷媒は第2圧縮機構(30)に吸入される。
分岐管(68)を流れる中間圧冷媒は、第1四路切換弁(7a)と第1吸入配管(61)を通り、第1吸入ポート(14-1)から第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)に吸入される。第1圧縮機構(20)に吸入された中間圧冷媒は、第1シリンダ室(C-1)で圧縮されて高圧冷媒になる。この高圧冷媒は、第1吐出ポート(15-1)から吐出される。
高圧冷媒は、第1吐出配管(63)と第2四路切換弁(7b)と第1高圧冷媒管(67a)を通り、高圧冷媒入口管(HP-1)からケーシング(10)内へ流入する。ケーシング(10)内の冷媒は、高圧冷媒出口管(HP-2)から流出する。この高圧冷媒は、第2高圧冷媒管(67b)を通ってガスクーラ(2)へ流入する。冷媒は、ガスクーラ(2)で室外空気へ放熱した後、第1膨張弁(5)で中間圧に減圧されて気液分離器(4)へ流入する。気液分離器(4)で分離した液冷媒は、第2膨張弁(6)で低圧圧力に減圧された後に蒸発器(3)で蒸発し、第1圧縮機構(20)に吸入される。
以上のように、この実施形態では、図15の運転状態でも図16の運転状態でも、圧縮機(1)のケーシング(10)内が高圧力となる。つまり、圧縮機(1)が、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機として用いられる。
−実施形態4の効果−
この実施形態4においても、第1圧縮機構(20)の第1シリンダ室(C-1)と第2圧縮機構(30)の第2シリンダ室(C-2)の容積が異なり、第1の運転状態と第2の運転状態とで低段側圧縮機構と高段側圧縮機構を切り換えるようにしている。したがって、1本の軸(53)に2つの圧縮機構(20,30)が機械的に連結された圧縮機(1)において、運転条件によって容積比を切り換えることができるので、運転条件に応じた最適COP(成績係数)の運転を行うことが可能となる。
さらに、この実施形態では第1の運転状態と第2の運転状態の両方とも圧縮機(1)を高圧ドーム型として用いるようにしている。したがって、運転条件によってドーム圧を変更することがないため、摺動部への給油が確実に行える。そのため、圧縮機(1)の信頼性を高めることができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態では、揺動ピストン型(スイング型)の圧縮機について説明したが、圧縮機はピストンとブレードが別体になったローリングピストン型の圧縮機にしてもよい。
また、上記各実施形態では、切換機構として四路切換弁(7a,7b)を用いているが、複数の開閉弁(電磁弁)を組み合わせて用いるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、冷房運転を行う空気調和装置について説明したが、本発明は適用対象を冷房専用機に限定するものではない。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。