以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
図1は、この実施形態1に係る回転式圧縮機(1)の縦断面図、図2は第1圧縮機構(20)の横断面図、図3は第1圧縮機構(20)の動作状態図である。なお、第2圧縮機構(30)の横断面図及び動作状態図は、第1圧縮機構(20)と実質的に同一であるため図2に第2圧縮機構の符号を記入して詳細は省略している。また、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)は位相が180°異なるが、図では便宜上、同一位相で表している。
この実施形態1は、回転式圧縮機(1)の冷媒(作動流体)として二酸化炭素を用い、第1圧縮機構(20)と第2圧縮機構(30)で冷媒を二段階に圧縮する二段圧縮機構を構成した例である。
図1に示すように、この回転式圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、第1圧縮機構(20)、第2圧縮機構(30)及び電動機(駆動機構)(50)が収納されたものであって、全密閉型に構成されている。上記回転式圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して、凝縮器へ吐出するために用いられる。また、第1圧縮機構(20)が低段側圧縮機構、第2圧縮機構(30)が高段側圧縮機構になっている。
ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。胴部(11)の下方の位置には、第1吸入管(14a)と第1吐出管(15a)が第1圧縮機構(20)の吸入管及び吐出管として設けられている。また、胴部(11)には、第1吸入管(14a)よりも若干上方位置に第2吸入管(14b)が、上方の位置に第2吐出管(15b)が、それぞれ第2圧縮機構(30)の吸入管及び吐出管として設けられている。
上記第1圧縮機構(20)及び第2圧縮機構(30)は上下二段に重ねられて、ケーシング(10)に固定されたフロントヘッド(17)とリアヘッド(16)との間に構成されている。なお、第2圧縮機構(30)が電動機側(図1の上側)に配置され、第1圧縮機構(20)がケーシング(10)の底部側(図1の下側)に配置されている。また、フロントヘッド(17)とリアヘッド(16)の間には、ミドルプレート(19)が設けられている。
上記第1圧縮機構(20)は、環状の第1シリンダ室(C1,C2)を有する第1シリンダ(21)と、該第1シリンダ室(C1,C2)内に配置された第1環状ピストン(22)と、図2及び図3に示すように第1シリンダ室(C1,C2)を第1室である高圧室(圧縮室)(C1-Hp,C2-Hp)と第2室である低圧室(吸入室)(C1-Lp,C2-Lp)とに区画する第1ブレード(23)とを有している。
一方、上記第2圧縮機構(30)は、該第1圧縮機構(20)に対して上下反転している。該第2圧縮機構(30)は、環状の第2シリンダ室(C3,C4)を有する第2シリンダ(31)と、該第2シリンダ室(C3,C4)内に配置された第2環状ピストン(32)と、第2シリンダ室(C3,C4)を第1室である高圧室(図示なし)と第2室である低圧室(図示なし)とに区画する第2ブレード(33)とを有している。
この実施形態では、第1シリンダ室(C1,C2)を有する第1シリンダ(21)、第2シリンダ室(C3,C4)を有する第2シリンダ(31)が固定側で、第1環状ピストン(22)、第2環状ピストン(32)が可動側であり、第1環状ピストン(22)が第1シリンダ(21)に対して偏心回転運動をし、第2環状ピストン(32)が第2シリンダ(31)に対して偏心回転運動をするように構成されている。
電動機(50)は、ステータ(51)とロータ(52)とを備えている。ステータ(51)は、第2圧縮機構(30)の上方に配置され、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(52)には駆動軸(クランク軸)(53)が連結されていて、該駆動軸(53)がロータ(52)とともに回転するように構成されている。駆動軸(53)は、上記第1シリンダ室(C1,C2)と上記第2シリンダ室(C3,C4)とを上下方向に貫通している。
上記駆動軸(53)には、該駆動軸(53)の内部を軸方向にのびる給油路(図示省略)が設けられている。また、駆動軸(53)の下端部には、給油ポンプ(54)が設けられている。そして、上記給油路は、該給油ポンプ(54)から上方へのびている。この構成により、ケーシング(10)内の底部に貯まる潤滑油を、この給油ポンプ(54)で上記給油路を通じて第1圧縮機構(20)の摺動部及び第2圧縮機構(30)の摺動部に供給するようにしている。
駆動軸(53)には、第1シリンダ室(C1,C2)の中に位置する部分に第1偏心部(53a)が形成され、第2シリンダ室(C3,C4)の中に位置する部分に第2偏心部(53b)が形成されている。第1偏心部(53a)は、該第1偏心部(53a)の下方の部分よりも大径に形成され、駆動軸(53)の軸心から所定量だけ偏心している。上記第2偏心部(53b)は、上記第1偏心部(53a)と同径に形成され、第1偏心部(53a)と同じ量だけ駆動軸(53)の軸心から偏心している。なお、第1偏心部(53a)と上記第2偏心部(53b)とは、駆動軸(53)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
上記第1環状ピストン(22)は、一体的に形成した部材であって、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)に摺動自在に嵌合する第1軸受部(22a)と、第1軸受部(22a)の外周側で該第1軸受部(22a)と同心上に位置する第1環状ピストン本体部(22b)と、第1軸受部(22a)と第1環状ピストン本体部(22b)とを連接する第1ピストン側鏡板(鏡板)(22c)とを備え、第1環状ピストン本体部(22b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている。
上記第2環状ピストン(32)は、上記第1環状ピストン(22)と同様に、一体的に形成した部材であって、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)に摺動自在に嵌合する第2軸受部(32a)と、第2軸受部(32a)の外周側で該第2軸受部(32a)と同心上に位置する第2環状ピストン本体部(32b)と、第2軸受部(32a)と第2環状ピストン本体部(32b)とを連接する第2ピストン側鏡板(鏡板)(32c)とを備え、第2環状ピストン本体部(32b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている。
上記第1シリンダ(21)は、第1軸受部(22a)と第1環状ピストン本体部(22b)との間で駆動軸(53)と同心上に位置する第1内側シリンダ部(21b)と、第1環状ピストン本体部(22b)の外周側で第1内側シリンダ部(21b)と同心上に位置する第1外側シリンダ部(21a)とからなる第1シリンダ本体部(21a,21b)を備えており、該第1シリンダ本体部(21a,21b)とリアヘッド(16)とが一体に形成されている。換言すると、第1内側シリンダ部(21b)と第1外側シリンダ部(21a)とは、リアヘッド(16)によって連接されている。また、リアヘッド(16)は鏡板よりも厚いので、第1シリンダ本体部(21a,21b)と鏡板とが一体に形成されているシリンダと比較して、第1シリンダ(21)は軸方向に厚くなっている。
上記第2シリンダ(31)は、第2軸受部(32a)と第2環状ピストン本体部(32b)との間で駆動軸(53)と同心上に位置する第2内側シリンダ部(31b)と、第2環状ピストン本体部(32b)の外周側で第2内側シリンダ部(31b)と同心上に位置する第2外側シリンダ部(31a)とからなる第2シリンダ本体部(31a,31b)を備えており、該第2シリンダ本体部(31a,31b)とフロントヘッド(17)とが一体に形成されている。換言すると、第2内側シリンダ部(31b)と第2外側シリンダ部(31a)とは、フロントヘッド(17)によって連接されている。また、フロントヘッド(17)は鏡板よりも厚いので、第2シリンダ本体部(31a,31b)と鏡板とが一体に形成されているシリンダと比較して、第2シリンダ(31)は軸方向に厚くなっている。
リアヘッド(16)とフロントヘッド(17)には、それぞれ上記駆動軸(53)を支持するための軸受け部(16a,17a)が形成されている。このように、本実施形態の回転式圧縮機(1)は、上記駆動軸(53)が上記第1シリンダ室(C1,C2)及び上記第2シリンダ室(C3,C4)を上下方向に貫通し、第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)の軸方向両側部分が軸受部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持される貫通軸構造となっている。
次に、第1、第2圧縮機構(20,30)の内部構造について説明するが、両者は実質的に同一の構成であるため、第1圧縮機構(20)を代表例として説明する。
上記第1圧縮機構(20)は、図2に示すように、上記第1ブレード(23)に対して第1環状ピストン(22)を該第1環状ピストン(22)の分断箇所において揺動可能に連結する連結部材として、第1揺動ブッシュ(27)を備えている。上記第1ブレード(23)は、第1シリンダ室(C1,C2)の径方向線上で、第1シリンダ室(C1,C2)の内周側の壁面(第1内側シリンダ部(21b)の外周面)から外周側の壁面(第1外側シリンダ部(21a)の内周面)まで、第1環状ピストン(22)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)に固定されている。なお、第1ブレード(23)は、第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)と一体的に形成してもよいし、別部材を両シリンダ部(21a,21b)に取り付けてもよい。図2に示す例は、別部材を両シリンダ部(21a,21b)に固定した例である。
第1外側シリンダ部(21a)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面は、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に上記第1シリンダ室(C1,C2)が形成されている。上記第1環状ピストン(22)は、外周面が第1外側シリンダ部(21a)の内周面よりも小径で、内周面が第1内側シリンダ部(21b)の外周面よりも大径に形成されている。このことにより、第1環状ピストン(22)の外周面と第1外側シリンダ部(21a)の内周面との間に第1外側シリンダ室(C1)が形成され、第1環状ピストン(22)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面との間に第1内側シリンダ室(C2)が形成されている。
具体的には、リアヘッド(16)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1外側シリンダ部(21a)と第1環状ピストン本体部(22b)との間に第1外側シリンダ室(C1)が形成され、リアヘッド(16)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1内側シリンダ部(21b)と第1環状ピストン本体部(22b)との間に第1内側シリンダ室(C2)が形成されている。また、リアヘッド(16)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1環状ピストン(22)の第1軸受部(22a)と第1内側シリンダ部(21b)との間には、第1内側シリンダ部(21b)の内周側で第1軸受部(22a)の偏心回転動作を許容するための動作空間(25)が形成されている。
また、第1環状ピストン(22)と第1シリンダ(21)は、第1環状ピストン(22)の外周面と第1外側シリンダ部(21a)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、第1環状ピストン(22)の内周面と第1内側シリンダ部(21b)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
上記第1揺動ブッシュ(27)は、第1ブレード(23)に対して高圧室(中間圧室)(C1-Hp,C2-Hp)側に位置する吐出側ブッシュ(27A)と、第1ブレード(23)に対して低圧室(C1-Lp,C2-Lp)側に位置する吸入側ブッシュ(27B)とから構成されている。吐出側ブッシュ(27A)と吸入側ブッシュ(27B)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、両ブッシュ(27A,27B)の対向面の間のスペースがブレード溝(28)を構成している。
このブレード溝(28)に第1ブレード(23)が挿入され、第1揺動ブッシュ(27A,27B)のフラット面が第1ブレード(23)と実質的に面接触し、第1揺動ブッシュ(27A,27B)の円弧状の外周面が第1環状ピストン(22)と実質的に面接触している。第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、ブレード溝(28)に第1ブレード(23)を挟んだ状態で、第1ブレード(23)の面方向に進退するように構成されている。また、第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して揺動するように構成されている。したがって、上記第1揺動ブッシュ(27)は、該第1揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として上記第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して揺動可能となり、かつ上記第1環状ピストン(22)が第1ブレード(23)に対して該第1ブレード(23)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、この実施形態では両ブッシュ(27A,27B)を別体とした例について説明したが、両ブッシュ(27A,27B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
上記第1環状ピストン(22)の第1環状ピストン本体部(22b)には、図1〜図4に示すように、分断箇所(吸入側ブッシュ(27B))からピストン周方向に所定間隔離れた位置における下側(図4では上側)の端部に、第1吸入管(14a)から導入された冷媒を第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)とに分配する第1導入部(55)が、後述する第1導入通路(吸入孔)(42a)に対応して形成されている。
第1導入部(55)は、ピストン径方向断面が先細り形状をなすように、より具体的には、ピストン径方向断面が逆V字状をなすように形成されている。換言すると、第1導入部(55)は、第1環状ピストン本体部(22b)の下側の端部を平坦に切り欠いたものとは異なり、上方(図4では下方)に行くに従ってピストン径方向両側(外側シリンダ室(C1,C3)側又は内側シリンダ室(C2,C4)側)に傾斜する傾斜面(55a)を有している。なお、この導入部(55)は、第1環状ピストン本体部(22b)の下側の端部を、切削加工することで成形されている。また、第1導入部(55)は、第1環状ピストン本体部(22b)の下側の端部を平坦に切り欠いたものと比較して、断面逆V字状の部分だけピストン径方向断面の断面積が大きくなっており、揺動ブッシュ(27,37)を保持するブッシュ保持部(27d)をその背面から支えるように構成されている。
一方、第2導入部(57)は、第2環状ピストン本体部(32b)の吸入側ブッシュ(37B)からピストン周方向に所定間隔離れた位置における上側の端部に、ピストン径方向断面が逆V字状をなすように形成されている。
以上の構成において、駆動軸(53)が回転すると、第1環状ピストン(22)は、第1揺動ブッシュ(27)が第1ブレード(23)に沿って進退しながら、第1揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。また、駆動軸(53)が回転すると、第2環状ピストン(32)も、第1環状ピストン(22)と同じように、第2揺動ブッシュ(37)の中心点を揺動中心として揺動する。
この揺動動作により、第1環状ピストン(22)と第1シリンダ(21)との第1接触点が図3(A)から図3(H)へ順に移動する。一方、第2環状ピストン(32)と第2シリンダ(31)との第2接触点は、第1接触点に対して駆動軸(53)の軸心回りに180°ずれている。つまり、駆動軸(53)の上側から見て、第1圧縮機構(20)の動作状態が図3(A)のとき、第2圧縮機構(30)の動作状態は図3(E)となる。
なお、図3は第1圧縮機構(20)の動作状態を表す図であり、図3(A)から図3(H)まで45°間隔で第1環状ピストン(22)が図の時計回り方向に移動している様子を表している。このとき、上記第1環状ピストン(22)は駆動軸(53)の周りを公転するが、自転はしない。なお、図3(A)以外は、図を見やすくするために、第1導入部(55)、第1吸入口(41a)、第1導入通路(42a)、外側及び内側吐出口(45,46)を図示省略している。
第1圧縮機構(20)は、軸方向における第1シリンダ本体部(21a,21b)よりもリアヘッド(16)側(下側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通し、低圧冷媒を吸入する上記第1吸入管(14a)と、中間圧冷媒を吐出する上記第1吐出管(15a)とを有している。リアヘッド(16)には、上記第1吸入管(14a)が接続される第1吸入口(41a)が第1シリンダ本体部(21a,21b)よりも下側で軸直角方向に延びるように形成されている。また、リヤヘッド(16)の第1吸入口(41a)は、軸直角方向に延びた後上方に屈曲しており、軸方向から低圧冷媒を導入する第1導入通路(42a)を介して、第1外側シリンダ室(C1)及び第1内側シリンダ室(C2)の低圧室に連通している。そして、該第1導入通路(42a)から導入された低圧冷媒は、第1導入部(55)の各傾斜面(55a)に沿って案内されるように第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)とに分配される。なお、軸方向における第1シリンダ本体部(21a,21b)よりもリアヘッド(16)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通するとともに低圧室に軸方向から低圧冷媒を導入する、本発明で言うところの吸入通路は、第1吸入管(14a)、第1吸入口(41a)及び第1導入通路(42a)に対応する。
リアヘッド(16)には、第1圧縮機構(20)のシリンダ室(C1,C2)に連通する中間吐出空間(16b)が形成されている。第1圧縮機構(20)で圧縮された中間圧の冷媒(中間圧流体)は、図2に示す外側吐出口(45)及び内側吐出口(46)と、これらを開閉する吐出弁(図示せず)を介して中間吐出空間(16b)に吐出される。また、リアヘッド(16)には、軸方向における第1シリンダ本体部(21a,21b)よりもリアヘッド(16)側(下側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通する上記第1吐出管(15a)が固定され、この第1吐出管(15a)は、内側端部がリアヘッド(16)の中間吐出空間(16b)に開口するとともに、外側端部が冷媒回路の中間圧冷媒配管(図示せず)に接続されている。なお、軸方向における第1シリンダ本体部(21a,21b)よりもリアヘッド(16)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通し、中間圧冷媒をケーシング(10)の外側に吐出する、本発明で言うところの吐出通路は、外側及び内側吐出口(45,46)、中間吐出空間(16b)及び第1吐出管(15a)に対応する。
第2圧縮機構(30)は、軸方向における第2シリンダ本体部(31a,31b)よりもフロントヘッド(17)側(上側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通し、中間圧冷媒を吸入する上記第2吸入管(14b)を有している。フロントヘッド(17)には、上記第2吸入管(14b)が接続される第2吸入口(41b)が第2シリンダ本体部(31a,31b)よりも上側で軸直角方向に延びるように形成されている。また、フロントヘッド(17)の第2吸入口(41b)は、軸直角方向に延びた後下方に屈曲しており、軸方向上側から中間圧冷媒を導入する第2導入通路(42b)を介して、第2外側シリンダ室(C3)及び第1内側シリンダ室(C4)の低圧室に連通している。そして、該第2導入通路(42b)から導入された中間圧冷媒は、第2導入部(57)の各傾斜面(57a)に沿って案内されるように第2外側シリンダ室(C3)と第2内側シリンダ室(C4)とに分配される。また、第2吸入管(14b)には、中間圧冷媒を第1圧縮機構(20)にインジェクションするためのインジェクション配管(14c)が接続されている。なお、軸方向における第2シリンダ本体部(31a,31b)よりもフロントヘッド(17)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通するとともに低圧室に軸方向から中間圧冷媒を導入する、本発明で言うところの吸入通路は、第2吸入管(14b)、第2吸入口(41b)及び第2導入通路(42b)に対応する。
第2圧縮機構(30)のシリンダ室(C3,C4)で圧縮された高圧の冷媒は、吐出口(45b,46b)及び吐出弁(図示せず)を介して吐出空間(49)に吐出され、この吐出空間(49)からケーシング(10)内の高圧空間(11a)に流出する。ケーシング(10)内に充満した高圧冷媒は、ケーシング(10)の上部に設けられている第2吐出管(15b)から冷媒回路の高圧ガス管に吐出される。
吐出空間(49)は、フロントヘッド(17)とカバー部材(18)との間に形成されている。上記カバー部材(18)は、第2圧縮機構(30)からの吐出ガスを、一旦上記吐出空間(49)に吐出させた後、カバー部材(18)と軸受部(16a)との間の吐出開口を通じてケーシング(10)内の高圧空間(11a)に流出させて消音機能を得るためのマフラ機構を構成している。
−運転動作−
次に、この回転式圧縮機(1)の運転動作について説明する。ここで、第1、第2圧縮機構(20,30)の動作は、位相が互いに180°異なる状態で行われる。
電動機(50)を起動すると、低段側圧縮機構である第1圧縮機構(20)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)を介して第1環状ピストン(22)に伝達される。そうすると、第1揺動ブッシュ(27A,27B)が第1ブレード(23)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、第1環状ピストン(22)と第1揺動ブッシュ(27A,27B)が一体的になって第1ブレード(23)に対して揺動動作を行う。その際、第1揺動ブッシュ(27A,27B)は、第1環状ピストン(22)及び第1ブレード(23)に対して実質的に面接触をする。そして、第1環状ピストン(22)が第1外側シリンダ部(21a)及び第1内側シリンダ部(21b)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構(20)が所定の圧縮動作を行う。
具体的に、第1外側シリンダ室(C1)では、図3(B)の状態で低圧室(C1-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(53)が図の右回りに回転して図3(C)〜図3(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C1-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、第1吸入管(14a)を通り、第1導入部(55)で分配されて該低圧室(C1-Lp)に吸入される。
駆動軸(53)が一回転して再び図3(B)の状態になると、上記低圧室(C1-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C1-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(中間圧室)(C1-Hp)となり、第1ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C1-Lp)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、上記低圧室(C1-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(中間圧室)(C1-Hp)の容積が減少し、該高圧室(中間圧室)(C1-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(中間圧室)(C1-Hp)の圧力が所定値となって中間吐出空間(16b)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(中間圧室)(C1-Hp)の中間圧冷媒によって吐出弁が開き、中間圧冷媒が中間吐出空間(16b)から第1吐出管(15a)を通ってケーシング(10)から流出する。
第1内側シリンダ室(C2)では、図3(F)の状態で低圧室(C2-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(53)が図の右回りに回転して図3(G)〜図3(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C2-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、第1吸入管(14a)及び第1導入通路(42a)を通り、第1導入部(55)で分配されて第1内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)へ吸入される。
駆動軸(53)が一回転して再び図3(F)の状態になると、上記低圧室(C2-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C2-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(中間圧室)(C1-Hp)となり、第1ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C2-Lp)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、上記低圧室(C2-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(中間圧室)(C2-Hp)の容積が減少し、該高圧室(中間圧室)(C2-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(中間圧室)(C2-Hp)の圧力が所定値となって中間吐出空間(16b)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(中間圧室)(C2-Hp)の中間圧冷媒によって吐出弁が開き、中間圧冷媒が中間吐出空間(16b)から第1吐出管(15a)を通ってケーシング(10)から流出する。
第1外側シリンダ室(C1)ではほぼ図3(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、第1内側シリンダ室(C2)ではほぼ図3(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°異なっている。第1外側シリンダ室(C1)と第1内側シリンダ室(C2)で圧縮されてケーシング(10)から流出した中間圧の冷媒は、第2吸入管(14b)から高段側圧縮機構である第2圧縮機構(30)に吸入される。
第2圧縮機構(30)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)を介して第2環状ピストン(32)に伝達される。そうすると、第2揺動ブッシュ(37)が第2ブレード(33)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、第2環状ピストン(32)と第2揺動ブッシュが一体的になって第2ブレード(33)に対して揺動動作を行う。その際、第2揺動ブッシュ(37)は、第2環状ピストン(22)及び第2ブレード(33)に対して実質的に面接触をする。そして、第2環状ピストン(32)が第2外側シリンダ部(31a)及び第2内側シリンダ部(31b)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構(30)が所定の圧縮動作を行う。
圧縮動作は、圧力が高いのを除いては実質的に第1圧縮機構(20)の圧縮動作と同じであり、中間圧冷媒がシリンダ室(C3,C4)内で圧縮されて高圧冷媒になる。第2内側シリンダ室(C4)と第2外側シリンダ室(C3)において、高圧室(C3-Hp,C4-Hp)の圧力が所定値となって吐出空間(49)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C3-Hp,C4-Hp)の高圧冷媒によって吐出弁が開き、高圧冷媒がフロントヘッド(17)の吐出口及び吐出弁を介して吐出空間(49)に流出する。吐出空間(49)の高圧冷媒はさらにケーシング(10)内の高圧空間に流出する。そして、ケーシング(10)の上部に設けられている第2吐出管(15b)を通ってケーシング(10)から流出し、冷媒回路で凝縮行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後、再度回転式圧縮機(1)に吸入される。
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、環状ピストン(22,32)によりシリンダ室(C1,C2,C3,C4)が外側シリンダ室(C1,C3)と内側シリンダ室(C2,C4)とに区画される所謂内外2シリンダ室のスイング圧縮機において、第1及び第2圧縮機構(20,30)では、低圧室に冷媒を導入するための第1及び第2吸入管(14a)(14b)が、軸方向における第1及び第2シリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)よりもそれぞれリア及びフロントヘッド(16)(17)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通しており、リア及びフロントヘッド(16)(17)が鏡板よりも厚いので、第1及び第2吸入管(14a)(14b)を第1及び第2シリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)にそれぞれ直接接続する場合と比較して、軸方向における第1及び第2吸入管(14a)(14b)同士の間隔が拡げることができる。これにより、第1吸入管(14a)を溶接取付した後第2吸入管(14b)を溶接取付する際、第1吸入管(14a)が熱歪みによる影響を受けるのを抑えて、第1シリンダ(21)と第1吸入管(14a)との間に隙間が生じたり、第1シリンダ(21)に対する第1吸入管(14a)の取付方向にばらつきが生じたりするのを抑制することができる。
また、第1及び第2圧縮機構(20,30)における第1及び第2吸入管(14a)(14b)は、軸方向における第1及び第2シリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)よりもそれぞれリア及びフロントヘッド(16)(17)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通しているので、各吸入管(14a)(14b)の径(冷媒通路断面積)が各シリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)の軸方向高さによる制限を受けることがない。これにより、第1及び第2吸入管(14a)(14b)を大径にし、圧力損失を小さくして圧縮効率の低下を抑えることができる。
さらに、ケーシング(10)を貫通した吸入通路(14a,41a,42a)(14b,41b,42b)は、第1又は第2ヘッド(16)(17)の内部で軸直角方向に延びることから、シリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)によって囲まれた外側及び内側シリンダ室(C1,C2,C3,C4)の低圧室へ冷媒を導入するためには、該吸入通路(14a,41a,42a)(14b,41b,42b)を屈曲させることになる。このため、リア及びフロントヘッド(16)(17)とシリンダ(鏡板)には、外側及び内側シリンダ室(C1,C2,C3,C4)の低圧室へ軸方向から冷媒を導入するための流入孔がそれぞれ形成されることになるが、第1及び第2圧縮機構(20,30)では、リア及びフロントヘッド(16)(17)とシリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)とが一体に形成されているので、鏡板とヘッド(16,17)が別体のものとは異なり、流入孔(42a,42b)の位置ずれが生じるのを防ぐことができるとともに、シリンダ(21,31)の強度を向上させてその変形を抑えることができる。
したがって、圧縮機構(20,30)を二段重ねて配置した回転式圧縮機(1)において、圧縮効率の低下を抑えつつ組立精度の低下を抑制することができる。
また、高圧室で圧縮された中間圧流体をケーシング(10)の外側に吐出する吐出通路(15a)が、軸方向におけるシリンダ本体部(21a,21b)よりも該シリンダ本体部(21a,21b)と一体形成されたリアヘッド(16)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通するように形成されているので、シリンダ(21)を軸直角方向に貫通する吐出通路(15a)を形成することを回避してシリンダ(21)の強度を向上させてその変形を抑えることができる。
さらに、リアヘッド(16)とシリンダ本体部(21a,21b)とが一体に形成されているので、鏡板とヘッド(16,17)が別体のものとは異なり、軸方向に延びて吐出通路(15a,16b,45,46)を構成する吐出孔(45,46)の位置ずれが生じるのを防ぐことができる。
また、従来のフロン系冷媒と比較して運転時の冷媒圧力及びガス密度が高く、且つ自然冷媒として使用頻度の高い二酸化炭素冷媒を用いる場合にも、上記効果と同様の効果を得ることができる。
−実施形態1の変形例−
(変形例1)
上記実施形態では、第1環状ピストン(22)と第2環状ピストン(32)の間にミドルプレート(19)が介在するように圧縮機構を構成しているが、偶力によるアンバランスを小さくするために、ミドルプレート(19)を設けずに第1環状ピストン(22)と第2環状ピストン(32)の鏡板の背面同士が接触するように構成してもよい。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。
本実施形態は、第1圧縮機構(70)及び第2圧縮機構(80)の構成が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
図5は、この実施形態2に係る回転式圧縮機(1)の縦断面図、図6は第1圧縮機構(70)の横断面図である。なお、第2圧縮機構(80)の横断面図は、第1圧縮機構(70)と実質的に同一であるため図7に第2圧縮機構の符号を記入して詳細は省略している。また、第1圧縮機構(70)と第2圧縮機構(80)は位相が180°異なるが、図では便宜上、同一位相で表している。
上記第1圧縮機構(70)は、円形の第1シリンダ室(C5)を有する第1シリンダ(71)と、該第1シリンダ室(C5)内に配置された第1円形ピストン(72)と、図6に示すように第1シリンダ室(C5)を第1室である高圧室(圧縮室)(C5-Hp)と第2室である低圧室(吸入室)(C5-Lp)とに区画する第1ブレード(73)とを有している。
一方、上記第2圧縮機構(80)は、該第1圧縮機構(70)に対して上下反転している。該第2圧縮機構(80)は、円形の第2シリンダ室(C6)を有する第2シリンダ(81)と、該第2シリンダ室(C6)内に配置された第2円形ピストン(82)と、第2シリンダ室(C6)を第1室である高圧室(図示なし)と第2室である低圧室(図示なし)とに区画する第2ブレード(83)とを有している。
この実施形態では、第1シリンダ室(C5)を有する第1シリンダ(71)、第2シリンダ室(C6)を有する第2シリンダ(81)が固定側で、第1円形ピストン(72)、第2円形ピストン(82)が可動側であり、第1円形ピストン(72)が第1シリンダ(71)に対して偏心回転運動をし、第2円形ピストン(82)が第2シリンダ(81)に対して偏心回転運動をするように構成されている。
駆動軸(53)には、第1シリンダ室(C5)の中に位置する部分に第1偏心部(53a)が形成され、第2シリンダ室(C6)の中に位置する部分に第2偏心部(53b)が形成されている。なお、第1偏心部(53a)と上記第2偏心部(53b)とは、駆動軸(53)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
上記第1円形ピストン(72)は、一体的に形成した部材であって、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)に摺動自在に嵌合する第1円形ピストン本体部(72b)と、該第1円形ピストン本体部(72b)からピストン径方向外側に延びる上記第1ブレード(73)と、第1ピストン側鏡板(鏡板)(72c)とを備えている。
上記第2円形ピストン(82)は、上記第1円形ピストン(72)と同様に、一体的に形成した部材であって、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)に摺動自在に嵌合する第2円形ピストン本体部(82b)と、該第2円形ピストン本体部(82b)からピストン径方向外側に延びる上記第2ブレード(83)と、第2ピストン側鏡板(鏡板)(82c)とを備えている。
上記第1シリンダ(71)は、第1円形ピストン本体部(72b)の外周側に第1シリンダ本体部(71a)を備えており、該第1シリンダ本体部(71a)とリアヘッド(16)とが一体に形成されている。また、第1シリンダ本体部(71a)には、第1導入通路(42a)と第1吐出口(45a)との間に位置し軸方向に円柱状に延びる第1ブッシュ孔(77a)が第1シリンダ(71)に開口して形成されている。
上記第2シリンダ(81)は、第2円形ピストン本体部(82b)の外周側に第2シリンダ本体部(81a)を備えており、該第2シリンダ本体部(81a)とフロントヘッド(17)とが一体に形成されている。また、第2シリンダ本体部(81a)には、第2導入通路(42b)と第2吐出口(45b)との間に位置し軸方向に円柱状に延びる第2ブッシュ孔(87a)が第2シリンダ(81)に開口して形成されている。
次に、第1、第2圧縮機構(70,80)の内部構造について説明するが、両者は実質的に同一の構成であるため、第1圧縮機構(70)を代表例として説明する。
上記第1圧縮機構(70)は、図6に示すように、上記第1ブレード(73)に対して第1円形ピストン(72)を揺動可能に連結する連結部材として、上記第1ブッシュ孔(77a)に設けられている第1揺動ブッシュ(27)を備えている。
上記第1円形ピストン(72)は、外周面が第1シリンダ本体部(71a)の内周面よりも小径に形成されており、これにより、第1円形ピストン(72)の外周面と第1シリンダ本体部(71a)の内周面との間に第1シリンダ室(C5)が形成されている。具体的には、リアヘッド(16)と第1ピストン側鏡板(22c)と第1シリンダ本体部(71a)と第1円形ピストン本体部(72b)との間に第1シリンダ室(C5)が形成されている。
また、第1円形ピストン(72)と第1シリンダ(71)は、第1円形ピストン(72)の外周面と第1シリンダ本体部(71a)の内周面とが1点で実質的に接する(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)ようになっている。
上記第1揺動ブッシュ(77)は、第1ブレード(73)に対して高圧室(中間圧室)(C5-Hp)側に位置する吐出側ブッシュ(77A)と、第1ブレード(73)に対して低圧室(C5-Lp)側に位置する吸入側ブッシュ(77B)とから構成されている。吐出側ブッシュ(77A)と吸入側ブッシュ(77B)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、両ブッシュ(77A,77B)の対向面の間のスペースがブレード溝(78)を構成している。
このブレード溝(78)に第1ブレード(73)が挿入され、第1揺動ブッシュ(77A,77B)のフラット面が第1ブレード(73)と実質的に面接触している。第1ブレード(73)は、ブレード溝(78)に挟まれた状態で、第1揺動ブッシュ(77A,77B)の面方向に進退するように構成されている。
以上の構成において、駆動軸(53)が回転すると、第1円形ピストン(72)は、第1ブレード(73)が第1揺動ブッシュ(77)に沿って進退しながら、第1揺動ブッシュ(77)の中心点を揺動中心として揺動する。また、駆動軸(53)が回転すると、第2円形ピストン(82)も、第1円形ピストン(72)と同じように、第2揺動ブッシュ(87)の中心点を揺動中心として揺動する。このとき、第1円形ピストン本体部(72b)が第1シリンダ室(C5)の内周面に沿って公転し、また、第2円形ピストン本体部(82b)が第2シリンダ室(C6)の内周面に沿って公転することにより冷媒を圧縮するように構成されている。
第1圧縮機構(70)は、軸方向における第1シリンダ本体部(71a)よりもリアヘッド(16)側(下側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通し、低圧冷媒を吸入する上記第1吸入管(14a)と、中間圧冷媒を吐出する上記第1吐出管(15a)とを有している。リアヘッド(16)には、上記第1吸入管(14a)が接続される第1吸入口(41a)が第1シリンダ本体部(71a)よりも下側で軸直角方向に延びるように形成されている。また、リヤヘッド(16)の第1吸入口(41a)は、軸直角方向に延びた後下方に屈曲しており、軸方向から低圧冷媒を導入する第1導入通路(42a)を介して、第1シリンダ室(C5)の低圧室に連通している。
リアヘッド(16)には、第1圧縮機構(70)のシリンダ室(C5)に連通する中間吐出空間(16b)が形成されている。第1圧縮機構(70)で圧縮された中間圧の冷媒(中間圧流体)は、図7に示す吐出口(45)と、これらを開閉する吐出弁(図示せず)を介して中間吐出空間(16b)に吐出される。また、リアヘッド(16)には、軸方向における第1シリンダ本体部(71a)よりもリアヘッド(16)側(下側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通する上記第1吐出管(15a)が固定され、この第1吐出管(15a)は、内側端部がリアヘッド(16)の中間吐出空間(16b)に開口するとともに、外側端部が冷媒回路の中間圧冷媒配管(図示せず)に接続されている。
第2圧縮機構(80)は、軸方向における第2シリンダ本体部(81a)よりもフロントヘッド(17)側(上側)の位置でケーシング(10)の胴部(11)を軸直角方向に貫通し、中間圧冷媒を吸入する上記第2吸入管(14b)を有している。フロントヘッド(17)には、上記第2吸入管(14b)が接続される第2吸入口(41b)が第2シリンダ本体部(81a)よりも上側で軸直角方向に延びるように形成されている。また、フロントヘッド(17)の第2吸入口(41b)は、軸直角方向に延びた後下方に屈曲しており、軸方向上側から中間圧冷媒を導入する第2導入通路(42b)を介して、第2シリンダ室(C6)の低圧室に連通している。また、第2吸入管(14b)には、中間圧冷媒を第1圧縮機構(70)にインジェクションするためのインジェクション配管(14c)が接続されている。
第2圧縮機構(80)のシリンダ室(C6)で圧縮された高圧の冷媒は、吐出口(45b)及び吐出弁(図示せず)を介して吐出空間(49)に吐出され、この吐出空間(49)からケーシング(10)内の高圧空間(11a)に流出する。ケーシング(10)内に充満した高圧冷媒は、ケーシング(10)の上部に設けられている第2吐出管(15b)から冷媒回路の高圧ガス管に吐出される。
−実施形態2の効果−
本実施形態によれば、円形のシリンダ室(C5,C6)を有するシリンダ(71,81)と、円形ピストン(72,82)とを有する圧縮機構(70,80)を二段重ねて配置した回転式圧縮機(1)において、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
−実施形態2の変形例−
(変形例1)
上記実施形態では、第1円形ピストン(72)と第2円形ピストン(82)の間にミドルプレート(19)が介在するように圧縮機構を構成しているが、偶力によるアンバランスを小さくするために、ミドルプレート(19)を設けずに第1円形ピストン(72)と第2円形ピストン(82)の鏡板の背面同士が接触するように構成してもよい。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態では、第1及び第2圧縮機構(20,30)では、シリンダ本体部(21a,21b,31a,31b)(71a,81a)とリア及びフロントヘッド(16,17)とが一体に形成され、且つ、吸入通路(14a,41a,42a)(14b,41b,42b)が、軸方向におけるシリンダ本体部(21a,21b)(31a,31b)(71a,81a)よりも該リア及びフロントヘッド(16,17)側の位置でケーシング(10)を軸直角方向に貫通するとともに上記低圧室に軸方向から冷媒を導入するように形成されているが、第1及び第2圧縮機構(20,30)共にこのような構成にしなくてもよく、第1及び第2圧縮機構(20,30)の少なくとも一方で上記構成をとればよい。その場合でも、圧縮機構(20,30)を二段重ねて配置した回転式圧縮機において、圧縮効率の低下を抑えつつ組立精度の低下を抑制することは可能である。
上記各実施形態では、冷媒として二酸化炭素を使用したが、これに限らず、他の冷媒を用いてもよい。
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。