JP5398958B2 - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
通常、車両(自動二輪車)の直進走行時にはタイヤのトレッド中央部が主に路面と接触し、車両の急なコーナリング時にはタイヤのトレッド側部が主に路面と接触する。この車両の直進走行は高速走行で使用される頻度が高く、安定した走行が求められる。ここで、路面と接触しているトレッド中央部にやや硬めのゴムを配置することでぐにゃぐにゃした走行フィーリングを減らすことができる。しかしながら、ただ単純にトレッド中央部を硬くすると、ゴムの持つしなやかさが消え、グリップ力を発揮できなくなるため、トレッド中央部を硬くするのにも限界はある。このため、請求項1では、トレッド中央部を中央キャップゴム層と中央ベースゴム層とし、100°Cにおける300%モジュラスを中央キャップゴム層よりも中央ベースゴム層で高くする(即ち、中央キャップゴム層よりも中央ベースゴム層を硬くする)ことで、トレッド中央部のしっかり感を増しつつ、グリップ力を確保できるため、直進走行安定性が向上する。
なお、前記しているモジュラスとはゴムの弾性率を意味し、このモジュラスが高いゴムほど変形し難くなるため、本明細書内ではモジュラスが高いゴムを硬いゴム、モジュラスが低いゴムを軟らかいゴムと記載している。
一方、車両の緩いコーナリング時には主にトレッド中間部が路面と接触する。このトレッド中間部に求められる物性は、トレッド中央部とトレッド側部とに必要とされる物性の中間値である。このため、トレッド中間部はトレッド中央部やトレッド側部のように2層以上のゴム層で構成しなくても必要な性能を確保することが可能で、例えばトレッド中間部を一種類のゴム層とした場合には、製造時におけるゴム準備の煩雑さが改善され、ゴム種の切り替え工数が短縮されて工場生産効率が向上する。
トレッド中間部のゴムを側部ベースゴム層のゴムと同一とすることで、トレッド部を形成するゴムの種類を減らすことができるため、製造時におけるゴム準備の煩雑さが改善され、ゴム種の切り替え工数が短縮されて工場生産効率が向上する。
トレッド部の各部位におけるゴムのモジュラスが車両のふらつきや腰砕け感に影響していることから、該ゴムのモジュラスの平均値をトレッド中央部で最も高くし、順にトレッド中間部、トレッド側部と低くすることで、コーナリング時に車両を傾ける度合いが増すに従って、横力を発揮しやすい軟らかいゴム層が順じ路面と接触する。このため、さらに良好な直進走行安定性及びコーナリング時のリニアリティー性が得られる。
MC2/MC1<1.03の場合には、中央キャップゴム層と中央ベースゴム層との100°Cにおける300%モジュラスの差が小さ過ぎるため、トレッド中央部におけるタイヤのしっかり感とグリップ力との両立が難しくなる。また、MC2/MC1>1.50の場合には、中央キャップゴムと中央ベースゴムとの100°Cにおける300%モジュラスの差が大きいためトレッド中央部におけるタイヤのしっかり感とグリップ力との両立がなされるが、中央キャップゴム層が軟らかすぎるため耐摩耗性能が著しく低下してしまう。従って、トレッド中央部におけるタイヤのしっかり感とグリップ力とを両立させるには、1.03<MC2/MC1<1.50を満たすことが好ましい。
MS2/MS1<1.03の場合には、側部キャップゴム層と側部ベースゴム層との100°Cにおける300%モジュラスの差が小さ過ぎるため、トレッド側部における急なコーナリングの際の腰砕け感をなくしつつ高いグリップ力を確保することが難しくなる。また、MS2/MS1>2.00の場合には、側部キャップゴム層と側部ベースゴム層との100°Cにおける300%モジュラスの差が大きいため、トレッド側部における急なコーナリングの際の腰砕け感をなくしつつ高いグリップ力を確保できるが、側部キャップゴム層が軟らかすぎるため耐摩耗性能が著しく低下してしまう。従って、トレッド側部における急なコーナリングの際の腰砕け感をなくしつつ高いグリップ力を確保するには、1.03<MS2/MS1<2.00を満たすことが好ましい。
次に、本発明の二輪車用空気入りタイヤの第1の実施形態を図1にしたがって説明する。図1は二輪車用空気入りタイヤを回転軸に沿って切断した断面図である。図2は図1の二輪車用空気入りタイヤのトレッド部を展開し、長手方向と直交する方向に沿って切断した断面図である。
カーカスプライ12は、両端部分が、ビード部18に埋設されているビードコア20の周りに、タイヤ内側から外側へ向かって巻き上げられている。また、カーカスプライ12は、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(例えば、ナイロン等の有機繊維コード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が90度に設定され、カーカスプライ12のコードはナイロン製を使用している。また、本実施形態では、カーカス16を1枚のカーカスプライ12で構成したが、この構成に限定されず、カーカス16は複数枚のカーカスプライからなる構成としても良いものとする。
このカーカス16のタイヤ径方向外側にはスパイラルベルト層22が設けられている。このスパイラルベルト層22は、例えば、1本のコードを未加硫の被覆ゴムで被覆した長尺状のゴム被覆コード、または複数本のコードを未加硫の被覆ゴムで被覆した帯状プライを螺旋状に巻き回すことにより形成されており、タイヤ赤道面CLに対するコードの角度が略0°(0〜3°程度)とされている。また、このスパイラルベルト層22のコードは有機繊維コードであっても良く、スチールコードであっても良いものとする。なお、本実施形態のスパイラルベルト層22のコードは、スチールコードを使用している。
図1に示すように、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向外側には複数のトレッドゴムから形成されるトレッド部28が配置されている。本実施形態では、トレッド部28のトレッド踏面28Tのタイヤ幅方向最外側の端部をトレッド端部36と称し、一方のトレッド端部36から他方のトレッド端部36へトレッド踏面28Tに沿って計測した距離をトレッド幅TWと称するものとする。なお、ここで言うトレッド踏面28Tとは、トレッド部28の路面と接触する面を指すものである。
このトレッド部28は赤道面CLを中心に左右均等に跨るトレッド中央部30と、トレッド中央部30のタイヤ幅方向両側に連なるトレッド中間部32と、トレッド中間部32に連なりトレッド端部36まで延びるトレッド側部34とから構成されている。なお、図1及び図2においてトレッド部28を分割する二点鎖線は、トレッド中央部30、トレッド中間部32及びトレッド側部34の範囲を示すものである。
また、図2に示すように本実施形態では、中央キャップゴム層38と中間部ゴム46との境界線、中央ベースゴム層40と中間部ゴム46との境界線及び側部キャップゴム層42と中間部ゴム46との境界線がタイヤ幅方向に傾斜している。このためトレッド中央部30とトレッド中間部32との境界付近に生じる剛性段差が抑制され、トレッド側部34とトレッド中間部32との境界付近に生じる剛性段差が抑制される。なお、この境界線の傾斜方向については特に制限は無く、本発明が適用される二輪車用空気入りタイヤ毎に異なっていても良いものとする。例えば、本実施形態では、図2の図示状態において、側部キャップゴム層42と中間部ゴム46との境界線(実線)が、トレッド中央部30よりも左側ではトレッド踏面28T側から左下側へと傾斜し、トレッド中央部30よりも右側ではトレッド踏面28T側から右下側へと傾斜しているが、該境界線の傾斜方向はこの方向に限定されず、図2において破線で示すように、トレッド中央部30よりも左側ではトレッド踏面28T側から右下側へと傾斜し、トレッド中央部30よりも右側ではトレッド踏面28T側から左下側へと傾斜しても良いものとする。
なお、本実施形態の平均値Aは中央キャップゴム38Aと中央ベースゴム40Aとの各モジュラスの平均であり、平均値Bは側部キャップゴム42Aと側部ベースゴム44Aとの各モジュラスの平均であり、平均値Cは中間部ゴム46のモジュラスである。また、本実施形態では、赤道面CLを挟んで両側で平均値A>平均値B>平均値Cが満たされている。
さらにまた、図1に示されるようにトレッド部28には溝が形成されていないが、ウエット路面走行時に必要とされる排水用の溝が形成されていても良いものとする。
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、直進走行時に主に路面と接触するトレッド中央部30を中央キャップゴム層38と中央ベースゴム層40との2層構造とし、100°Cにおける300%モジュラスを中央キャップゴム38Aよりも中央ベースゴム40Aで高くすることで、トレッド中央部30のしっかり感を増しつつ、グリップ力を確保できるため、直進走行安定性が向上する。
以上のことから、タイヤ10はトレッド中央部30とトレッド側部34とを一種類のゴムとする従来のタイヤよりも、直進走行安定性及びコーナリング時のリニアリティー性に優れる。
第1の実施形態のタイヤ10は、内部構造をラジアルタイヤとして構成しているが、その他の実施形態においては、内部構造をバイアスタイヤとする構成であっても良いものとする。
また、第1の実施形態のタイヤ10は、トレッド部28をタイヤ幅方向に5分割(トレッド中央部、トレッド中間部及びトレッド側部)する構成としたが、この構成に限定される必要は無く、5分割以外に分割しても良いものとする。
さらに、第1の実施形態のタイヤ10は、トレッド中央部30を2層構造とし、トレッド側部34を2層構造としたが、この構成に限定される必要は無く、夫々3層以上であっても良いものとする。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されることは無く、特許請求の範囲に含まれる範囲で各種変更して実施可能であることは言うまでもない。
本発明の二輪車用空気入りタイヤの性能改善効果を確認するために、本発明に係る実施例の二輪車用空気入りタイヤ2種及び比較例の二輪車用空気入りタイヤ2種を用意し実車を用いて評価試験を実施した。
この評価試験は、各供試タイヤのフロント用とリア用とを夫々用意し1000CC、150PSのスポーツ自動二輪車に装着し、サーキット及び一般道を模した評価用コースで直進走行安定性とコーナリングの際のリニアリティー性(以下、コーナーリニアリティー性)についてフィーリング評価を実施した。なお、直進走行安定性及びコーナーリニアリティー性はテストライダーのフィーリングによる10点法で総合評価し、結果を表1中に示す。
実施例2:その他の実施形態に係るタイヤ(図3参照)。トレッド部をトレッド中央部、トレッド中間部及びトレッド側部とし、トレッド中央部及びトレッド側部を2層構造としている。また、トレッド中央部のキャップゴムとトレッド中間部のゴムとトレッド側部のベースゴムとを同一のゴムとしている。さらに、トレッド部の各部位ではキャップゴムよりもベースゴムのモジュラスが高く設定されている。
比較例1:図5に示されるタイヤであり、実施例1のタイヤのトレッド中間部のゴムとトレッド側部のゴムとを同一のゴムとしている。さらに、トレッド中央部ではキャップゴムよりもベースゴムのモジュラスが高く設定されている。
比較例2:実施例1のタイヤのトレッド中央部におけるモジュラスがキャップゴムよりもベースゴムで高く設定されたタイヤ。
なお、何れの供試タイヤもトレッド部の構成以外は実施例1と同様、すなわち第1の実施形態と同様としている。
従来、問題になりやすかった大CA付近のグリップ不足を補う構造として図2の構造が考えられる。トレッド側部のキャップゴムにグリップの良いゴム(100°Cにおける300%モジュラスが50)を配置することで、従来のタイヤに比べてコーナリング時のグリップが上がり走行ラインのトレース性がUPする。しかしながら、トレッド中央部に配置するゴムの組み合わせによっては直進安定性に優劣が生じる。トレッド中央部のケースに近い側にトレッド踏面側よりも100°Cにおける300%モジュラスが高いゴムを配置することで、直進走行安定性に効果があり、特に高速走行時のふらつき感に目立った改良効果が見られ、逆にケースに近い側にトレッド踏面側よりも100°Cにおける300%モジュラスの低いゴムを配置すると、逆の効果が得られるため評点が低下する。
14 サイドウォール部
18 ビード部
28 トレッド部
30 トレッド中央部
32 トレッド中間部
34 トレッド側部
38 中央キャップゴム層
40 中央ベースゴム層
42 側部キャップゴム層
44 側部ベースゴム層
60 タイヤ(二輪車用空気入りタイヤ)
68 トレッド部
70 タイヤ(二輪車用空気入りタイヤ)
72 第1の中央キャップゴム層(中央キャップゴム層)
74 第2の中央キャップゴム層(中央キャップゴム層)
Claims (5)
- 路面と接触するトレッド部と、前記トレッド部の両側に連なるサイドウォール部と、前記サイドウォール部に連なるビード部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、少なくともタイヤ赤道面を含むトレッド中央部と、前記トレッド中央部のタイヤ幅方向両側に配置されるトレッド側部とを備え、
前記トレッド中央部は、タイヤ径方向最外側に配置される中央キャップゴム層と前記中央キャップゴム層よりもタイヤ径方向内側に配置される中央ベースゴム層とを有し、
タイヤ幅方向両側の前記トレッド側部のうちの少なくとも片側は、タイヤ径方向最外側に配置され前記中央キャップゴム層と異なるゴムからなる側部キャップゴム層と前記側部キャップゴム層よりもタイヤ径方向内側に配置される側部ベースゴム層とを有し、
100°Cにおける300%モジュラスが、前記中央キャップゴム層よりも前記中央ベースゴム層で高いと共に前記側部キャップゴム層よりも前記側部ベースゴム層で高く、
前記トレッド中央部と前記トレッド側部との間にはトレッド中間部が配置され、前記トレッド中間部は一種類のゴム層からなり、
前記トレッド中間部のゴムの100°Cにおける300%モジュラスは、前記中央キャップゴム層の100°Cにおける300%モジュラスよりも低い又は同じでかつ、前記側部キャップゴム層の100°Cにおける300%モジュラスよりも高いことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。 - 前記トレッド中間部のゴム層を形成するゴムと前記側部ベースゴム層を形成するゴムとが同一であることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記トレッド中央部の100°Cにおける300%モジュラスの平均値をA、前記トレッド中間部の100°Cにおける300%モジュラスの平均値をB、前記トレッド側部の100°Cにおける300%モジュラスの平均値をCとしたとき、少なくともタイヤ赤道面を挟んで片側では平均値A>平均値B>平均値Cが満たされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記中央キャップゴム層の100°Cにおける300%モジュラスをMC1、前記中央ベースゴム層の100°Cにおける300%モジュラスをMC2としたとき、1.03<MC2/MC1<1.50を満たすことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記側部キャップゴム層の100°Cにおける300%モジュラスをMS1、前記側部ベースゴム層の100°Cにおける300%モジュラスをMS2としたとき、1.03<MS2/MS1<2.00を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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