木質系芯材の表面に、プラスチックフィルムを貼り付け、もしくは、表面を熱収縮フィルムで被覆する技術は開発されている。プラスチックフィルムを木質系芯材の表面に貼り付けるラッピングと呼ばれる手法は、接着剤を塗布したプラスチックフィルムを木質系芯材の表面に押し付けて接着する。この用途に使用されるプラスチックフィルムとして、従来は塩ビフィルムが多数を占めたが、近年では燃焼時のダイオキシン問題等でオレフィン系プラスチックのフイルムが使用され、木目等も精密に再現されており、住宅用内装材として多数使用されている。しかし、この方法は下記の短所がある。
(1)木質系芯材の全周に貼り付けるのが難しい。
(2)木質系芯材の表面に、欠け、穴、節等の欠陥があれば、プラスチックフィルムで被覆した表面に凹凸ができる。
(3)厚い被覆は困難で、角部をプラスチックフィルムの曲げることができる曲率半径よりも小さいエッジにできない。
(4)プラスチックフィルムを接着する接着剤の溶剤によるVOC問題がある。
また、木質系芯材の表面を熱収縮フィルムで被覆する方法は、木質系芯材を、筒状に成形している熱収縮フィルムに挿入して、熱収縮フィルムを収縮させる。この方法は、熱収縮フィルムを熱風等で加熱して収縮させるのが一般的である。しかしながら、この方法には下記の欠点がある。
(1)木質系芯材の表面に、欠け、穴、節等の欠陥があれば、表面に凹凸ができる。
(2)厚い被覆は困難で、角部を熱収縮フィルムを曲げる曲率半径よりも小さいエッジに加工できない。
(3)木質系芯材の表面に溝状の入り隅があると、入り隅の内面に熱収縮フィルムを付着できず、入り隅は空洞になってしまう。
ところで、木質系芯材の表面をプラスチックで被覆するのではないが、木粉を50重量%以上に混合してなる木粉プラスチックの表面を、木粉の混合率の少ない木粉プラスチックで形成して、表面性能を改善する方法も開発されている。(特許文献1及び2参照)
これ等の方法は、多量の木粉を含有して成形されたプラスチックの耐侯性を改善するために、表面を低木粉のプラスチックで被覆している。多量の木粉を含有する高木粉プラスチックの耐侯性が低い原因として、木粉の吸水・乾燥による膨張・収縮でプラスチックとの界面及び結合材としてのプラスチックが破壊される点が最も大きい。これは、多湿で寒暖の差が激しい日本の風土においては致命的であり、この間題を改善するために、表皮に木粉比率の低いプラスチック混合素材を使用している。中心部まで木粉比率を低下させないのは、重量比50%以上の木粉を混合することにより木材と分類されることが最も大きな理由であるが、プラスチックを多くすると剛性が低下しクリープも増し、さらに、温度に対する線膨張が大きくなるという理由も大きい。
また、成形体の全体を木粉プラスチックで構成する場合、比重が大きくなってしまう欠点もある。これはパウダー状に粉砕された木粉の真比重が1.5程度と高いことから、プラスチックと混合しながら木材に分類されても水に浮かない。この対策として、中空成形が一般的に適応され、見かけ比重を軽くしている。また、成形体の強度としては、プラスチックの強度及び木粉との密着性に依存しており、重量あたりの強度は木質材よりも劣っている。
これに対して、天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせた天然の木材を原料とする木質材は、微細で複雑な空隙のある組織構造を持ち、軽量かつ剛性の高さで建築材料をはじめ、さまざまな用途で使用されていることは周知の事実である。しかし、天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせた天然の木材を原料とする木質系素材は、乾燥状態での理想的な環境においてしか長期的な利用ができない。特に、吸水/乾燥における劣化・紫外線劣化・カビ・腐食・食害等の素材劣化は長期間使用する上で大きな問題となるとともに、可燃性の為、建築素材として使用部位の制限がある等の欠点がある。
また、一般的に天然木の表面を保護するためには塗装が行われるが、液体状の塗料は木質材に染み込みやすく硬化時に凹みが発生する。これを防止するために目止めという工程を実施するが、木目が均質で平滑な表面における微細な気孔を改善する事は可能であっても、軽量な早世樹や中低質なエンジニアリングウッドのように表面品質が悪いものは困難である。
一方、熱可塑性プラスチックは、家電・自動車をはじめさまざまな用途に合わせて樹脂の種類・グレード・配合等を適正化させて、多種多様なプラスチックが使用されている。しかし、一般的に温度変化による線膨張が大きく、特に長尺物やボード材が多い建材用途では、発泡断熱材等の特殊な用途にしか使用されておらず、木材の代替を考えた場合は熱膨張以外に比重の重さ・クリープ現象による反り曲がり等の問題があり、使用用途が限られている。
以上の欠点は、天然木を原料とする木質系芯材の表面を、金型で成形された熱可塑性のプラスチックで被覆することで改善できる。(特許文献3及び4参照)
これらの公報に記載される方法は、木質系芯材の表面を、プラスチックで被覆することにより、木質系芯材のサイズ・形状不安定や強度不足をカバーする木芯プラスチック成形体を実現するものである。また、木質系芯材として、天然木の廃材等を原料として再利用することで、リサイクル効果もある。さらに、天然木の強度不足や汚れやすさという問題点を解決すると共に、塗料や接着剤を使わずVOCゼロの木材を実現できる特長がある。
特開昭51−67379号公報
特開2002−338699号公報
特開2001−287207号公報
特開2003−19703号公報
特許文献3は、間伐材からなる芯材の表面に、被覆厚さを3〜15mmとするオレフィン系合成樹脂からなる被覆層を形成し、その被覆層に木肌状の模様を施す方法を記載している。金型の成形穴からプラスチックと一緒に木材を押し出して、木材の表面をプラスチック層で被覆する方法は、プラスチック層を木材に剥離しないように接着できない欠点がある。木材表面に接着されるプラスチックは、加温されて溶融状態となり、溶融状態で加圧されて木材の表面の押しつけられることから、木材表面に無数にある微細な凹部に侵入する状態となる。この状態でプラスチックは冷却して固化される。ところが、固化するときに体積が減少することから、木材表面の微細な凹部に侵入していたプラスチックは、固化した状態では凹部の内面に密着されない状態となって接着力を低下させる。
この欠点は、プラスチックの加熱温度を高くして流動性を向上し、又は流動性に優れたプラスチックを使用して微細な凹部により多量のプラスチックを充填することで少なくできる。すなわち、微細な凹部にプラスチックを充満する状態で固化して、アンカー効果によるプラスチック層の接着力の向上が期待できるからである。ところが、現実には、流動性の高いプラスチックを使用して微細な空隙に侵入したとしても固化収縮によるアンカー効果の低下は避けられない。さらに、プラスチックの加熱温度を高くし流動性を向上することは、加熱して溶融されたプラスチックが木材を加熱して、木材に含まれる空気や水分を膨張させることから、膨張した空気や水分が表面を被覆するプラスチックとの間に移行して、気泡を発生させる。このため、木材を被覆するプラスチックの内面に気泡ができて、綺麗に木材表面を被覆できなくなる。また、低温で流動性に優れたプラスチックを使用すると、成形品の耐熱温度が低くなるという別の問題も発生する。
この弊害を解消するために、特許文献4に記載されるように、樹脂で被覆する前工程で、木材を熱風や乾燥炉内で強制的に乾燥させたり、木材表面をバーナー等の炎によりあぶったりして一時的に表面から水分を蒸発させる方法がある。ただ、この方法は、手間がかかる余分な工程が追加される上、木材乾燥のために多量のエネルギーを消費する欠点がある。また、この方法では、木材に割れが発生して木材の強度が低下し、また外観が悪化する欠点がある。さらに、炎により表面をあぶる方法では、各所における木材の乾燥度合いにばらつきが生じやすく、乾燥が不十分である箇所が残る欠点がある。
この弊害を避けるために、特許文献2の方法は、木材の表面をフィルムで被覆して、フィルムの表面をプラスチックで被覆する。この方法は、木質系芯材の表面を被覆するフィルムで、押し出し成形時に、木材中の水分が蒸発するのを防止する。すなわち、フィルムでもって、木材から蒸発しようとする水分をフィルムの内側に封じこめ、木材と被覆樹脂との間に気泡が生じるのを防止する。
この方法は、水分の弊害を避けるために、木材の表面をフィルムで被覆する必要があり、この工程で極めて手間がかかる欠点がある。また、フィルムを使用することから材料コストも高くなる欠点がある。さらに、この方法は、木材の表面を被覆するプラスチックと木材との間にフィルムが介在することから、プラスチックと木材との結合が極めて弱くなる欠点がある。この欠点は、木材とプラスチックとが相対的に移動して、端部で木材がプラスチックから外部に突出し、あるいは反対にプラスチックが木材から突出するなどの弊害がある。さらに、プラスチックと木材が結合されないことから、プラスチックの強度も低下して破損しやすい欠点もある。さらに、この方法の最大の欠点は、薄いプラスチックフィルムで木材の表面を被覆するので、加熱溶融状態のプラスチックが表面に接触して木材の表面から水分が気化して膨張すると、膨張した水分に押し上げられて、気泡が発生することである。このため、フィルムでは気泡の発生を確実には阻止できない欠点がある。
本発明者は、フィルムの欠点を解消するために、木材の表面に浸透性に優れたシーラーを塗布する方法を開発した。この方法は、フィルムに代わってシーラーで木材の表面を被覆し、シーラーで被覆された木材を金型から押し出して、加熱して溶融されたプラスチックを表面に付着する。シーラーは浸透性に優れた塗料で、フィルムに比較して木材表面への密着性が向上する。このため、フィルムに比較すると気泡の発生を抑制することはできる。しかしながら、全ての木質系芯材の表面に発生する気泡を確実には阻止できない。木質系芯材は、全体を均一には乾燥できない。また、加熱されて水分が表面に移行する状態も均一でない。このように不均一な木質系芯材の表面に、加熱して溶融されたプラスチックを密着させると、局部的に多量の水分が集中して表面に移行し、この水分が溶融プラスチックに加熱されて気化膨張して、プラスチックの内面に気泡を発生させる。たとえば、天然木材にあっては、気泡が木目に沿うように集中して発生する。木材を完全に乾燥させるとこの弊害は防止できるが、木材の完全乾燥には極めて手間と時間と費用がかかり現実的でない。
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、木質系芯材の表面にしっかりと強固にプラスチック層を結合できる木芯プラスチック成形体とその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、フィルムを使用することなく、木質系芯材に含まれる水分による弊害、すなわち、プラスチック層の内面に気泡ができる欠点を解消して、木質系芯材の表面をプラスチック層で綺麗に被覆できる木芯プラスチック成形体とその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の大切な目的は、簡単かつ容易に、しかも少ないエネルギーでもってプラスチック内面に気泡が発生するのを確実に防止しながら、プラスチック層を強固に木質系芯材に接着できる木芯プラスチック成形体とその製造方法を提供することにある。
本発明の請求項1の木芯プラスチック成形体は、横断面形状を同一とする縦に長い形状に加工されてなる天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせたいずれかからなる木質系芯材1の表面を、木質系芯材1と一緒に金型3の成形穴10から押し出されて成形されてなる熱可塑性のプラスチック21を含むプラスチック層2で被覆している。木質系芯材1は、微細な空隙18を表面に露出してなる非目止め状態の被覆面1aに、直接にプラスチック層2を密着状態で接着している。木質系芯材1の被覆面1aに密着してなるプラスチック層2は、粉末状ないし繊維状のフィラー22を混合してなる混合プラスチック20としている。木芯プラスチック成形体は、この混合プラスチック20からなるプラスチック層2を、木質系芯材1の被覆面1aに露出している空隙18に侵入する状態に密着させている。
本発明の請求項2の木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1の被覆面1aを凹凸面としている。
本発明の請求項3の木芯プラスチック成形体は、混合プラスチック20に混合しているフィラー22を、無機質粉末、有機質粉末のいずれか又はこれらの混合物としている。
本発明の木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1が、押し出し方向に伸びる溝状の入り隅23を被覆面1aに設けており、木質系芯材1の表面を被覆する混合プラスチック20を入り隅23に充填している。
本発明の請求項4の木芯プラスチック成形体は、入り隅23を、木質系芯材1のコーナー部又は平面部のいずれか又は両方に設けている。
本発明の請求項5に記載する木芯プラスチック成形体の製造方法は、プラスチックを押し出し成形する金型3の成形穴10からプラスチックと一緒に、横断面形状を同一とする縦に長い形状に加工している、天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせたいずれかからなる木質系芯材1を押し出して、木質系芯材1の表面を熱可塑性のプラスチック21を含むプラスチック層2で被覆する。さらに、本発明の方法は、木質系芯材1のプラスチック層2で被覆される被覆面1aを、木質系芯材1を構成する微細な空隙18を表面に露出してなる非目止め状態として金型3の成形穴10に挿入する。一方、金型3で木質系芯材1の被覆面1aに供給される熱可塑性のプラスチックとして、粉末状ないし繊維状のフィラー22を混合している混合プラスチック20を使用する。この混合プラスチック20を加熱して溶融状態とし、溶融状態の混合プラスチック20を成形部11で加圧して、被覆面1aに露出している木質系芯材1の空隙18に侵入させて金型3から押し出す。
本発明の請求項6の木芯プラスチック成形体の製造方法は、木質系芯材1の表面を真空脱気して混合プラスチック20で被覆する。
本発明の木芯プラスチック成形体の製造方法は、木質系芯材1を、表面を針状の凹凸面とするローラで挟着して金型3に供給し、木質系芯材1の被覆面1aを針状の凹凸面として混合プラスチック20で被覆する。
本発明は、木質系芯材の表面を被覆する混合プラスチックとして、熱可塑性のプラスチックに、粉末状ないし繊維状のフィラーを添加して混合している。この混合プラスチックは、混合されるフィラーによって冷却時の収縮を少なくできる。フィラーを混合している混合プラスチックが、加熱されて溶融状態で木質系芯材の表面に押圧されると、非目止め状態にある木質系芯材の表面にある微細な凹部に、フィラーとプラスチックの両方が一緒に充満される。微細な凹部にプラスチックと一緒に充満されたフィラーは、プラスチックが冷却して固化収縮するのを少なくする。フィラーと一緒に微細な凹部に充満された混合プラスチックは、体積の減少がフィラーで阻止され、体積の収縮を少なくして凹部に充満される状態で固化する。この状態で固化する混合プラスチックは、木質系芯材の表面にある微細な凹部に充満する状態となり、優れたアンカー効果でプラスチック層を強固に木質系芯材に結合する。
さらに、本発明は、プラスチックにフィラーを混合することで、木質系芯材の微細な空隙に侵入したプラスチックの収縮を防止してアンカー効果を向上して、木質系芯材の結合力を強くすることから、混合プラスチックの加熱温度を高くして粘度を低くする必要がなく、さらに、添加するフィラーによって混合プラスチックの粘度を高くできる。このため、溶融プラスチックの熱で木質系芯材の被覆面の空気や水分が膨張して混合プラスチックに気泡ができるのを有効に防止できる効果も実現する。
さらに、本発明は、独特の混合プラスチックを使用することに加えて、混合プラスチックで被覆される木質系芯材の被覆面を、目止めしない非目止め状態として表面にできる微細な空隙を露出させている。この木質系芯材の被覆面に、フィラーを添加している混合プラスチックを成形圧で押圧することから、非目止め状態として設けられる空隙には、溶融状態のプラスチックを効果的に充填できる。したがって、本発明は、フィラーを添加している混合プラスチックを、木質系芯材表面の微細な空隙に充填することで、混合プラスチックでもって木質系芯材の表面を気密に密閉でき、さらに、フィラーによって粘度を高くできる混合プラスチックによって成形圧を高く、また木質系芯材に厚く成形できることから、木質系芯材が加熱されて空気や水分が膨張して表面移行して、混合プラスチックに気泡が発生するのを効果的に防止できる。この状態で、表面のプラスチックに気泡ができるのを防止することから、本発明は、木質系芯材の表面をフィルムで被覆することなく、木質系芯材に含まれる空気や水分の膨張による気泡の発生を防止して、木質系芯材の表面をプラスチックで綺麗に被覆できる特徴を実現する。
さらにまた、木質系芯材の表面を加熱することなく、またフィルムで被覆することなく、プラスチックの気泡を防止できるので、簡単かつ容易に、しかも少ないエネルギーでもって、プラスチック内面に気泡が発生するのを確実に防止できる特徴も実現する。
本発明の請求項2に記載される木芯プラスチック成形体は、木質系芯材の被覆面を凹凸面とするので、この凹凸面に溶融状態のプラスチックを密着することで、プラスチック層をより強固に木質系芯材に結合できる。
本発明の木芯プラスチック成形体は、木質系芯材の被覆面に、押し出し方向に伸びる溝状の入り隅を設けて、木質系芯材の表面を被覆する混合プラスチックを入り隅に充填しているので、入り隅に充填される混合プラスチックでもって、プラスチック層を部分的に補強できると共に、入り隅の内面に混合プラスチックを付着させることで、木質系芯材との接触面積を大きくして、プラスチック層をより強固に結合できる特徴を実現する。
本発明の請求項6に記載する木芯プラスチック成形体の製造方法は、木質系芯材の表面を真空脱気して混合プラスチックで被覆する。この方法は、非目止め状態の木質系芯材の表面に混合プラスチックを付着する前工程で表層部を真空脱気するので、より確実に気泡の発生を防止できる。
本発明の木芯プラスチック成形体の製造方法は、木質系芯材を、表面を針状の凹凸面とするローラで挟着して金型に供給し、木質系芯材の被覆面を針状の凹部のある凹凸面として混合プラスチックで被覆する。この方法は、ローラでスリップしないように、安定して木質系芯材を金型に供給できることに加えて、ローラで挟着してできる針状の凹部に溶融状態のプラスチックを密着することで、プラスチック層をより強固に木質系芯材に結合できる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための木芯プラスチック成形体とその製造方法を例示するものであって、本発明は木芯プラスチック成形体とその製造方法を以下の方法に特定しない。
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
本発明の木芯プラスチック成形体は、横断面形状を同一形状に加工している天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせたいずれかからなる木質系芯材を、金型の成形穴の挿入側に供給して排出側から押し出しすると共に、金型の成形穴の内面に、加熱して溶融状態となった熱可塑性の混合プラスチックを押し出して、木質系芯材の表面に付着させて、金型の成形穴から押し出しされる木質系芯材の表面を熱可塑性の混合プラスチックを含むプラスチック層で被覆して製造される。さらに、本発明の木芯プラスチック成形体は、木質系芯材のプラスチック層で被覆される被覆面を、木質系芯材を構成する天然木による微細な空隙を表面に露出してなる非目止め状態として金型の成形穴に挿入して製造される。さらにまた、金型で木質系芯材の被覆面に供給される熱可塑性のプラスチックには、粉末状ないし繊維状のフィラーを混合してなる混合プラスチックを使用する。この混合プラスチックを加熱して溶融状態とし、溶融状態の混合プラスチックを成形部で加圧して、被覆面に露出している天然木の空隙に侵入させて金型から押し出して、木質系芯材の表面に溶融状態の熱可塑性の混合プラスチックを付着する。
図1ないし図4は、本発明の一実施例にかかる木芯プラスチック成形体の製造方法に使用する製造装置を示している。これらの図に示す製造装置は、混合プラスチックを押し出し成形する金型3の成形穴10から、混合プラスチックと一緒に木質系芯材1を押し出して、木質系芯材1の表面を熱可塑性の混合プラスチックを含むプラスチック層2で被覆する。図の製造装置は、木質系芯材1の表面を混合プラスチックで被覆する金型3と、この金型3の成形穴10から木質系芯材1を押し出す押出機構4と、金型3の成形穴10の内面に、加熱して溶融状態となった熱可塑性の混合プラスチックを押し出すプラスチックの加熱押出機構5とを備える。さらに、この図の製造装置は、金型3に真空脱気室6を設けて、ここに真空装置7を連結している。この製造装置は、真空装置7で真空脱気室6の空気を排気して、木質系芯材1の表面を真空脱気し、真空脱気された木質系芯材1の表面に溶融状態の熱可塑性の混合プラスチックを付着するので、より確実に混合プラスチックの内面での気泡の発生を防止できる。ただ、製造装置は、図5に示すように、金型3には、必ずしも真空脱気室を設ける必要はなく、真空脱気しない木質系芯材1に混合プラスチックを付着することもできる。
図1ないし図5の製造装置で表面をプラスチック層2で被覆する木質系芯材1は、天然木材、集成材、合板、LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせたいずれかである。これらの木質系芯材は、天然木の導管による微細な空隙ができ、あるいは天然の木材を粉砕して結合することで表面に微細な空隙ができる。木材粉砕物は、天然の木材、あるいは合板等の製造工程で発生する廃材などが使用できる。木質系芯材1は、横断面形状を同一とする縦に長い形状に加工され、さらに、プラスチック層2で被覆される被覆面1aが平面状に加工され、あるいは所定の曲率半径で湾曲する湾曲面に加工される。木質系芯材1は、被覆面1aを切削して平滑面とすることもできるが、切削することなく、たとえば鋸で切削して平面状とすることもできる。木質系芯材1は、プラスチック層2で被覆される被覆面1aを目止めしない。すなわち、プラスチック層2の被覆面1aを非目止め状態としている。したがって、木質系芯材1は、鋸で切削され、あるいはカンナなどの刃物で切削され、あるいはペーパーで研磨された状態であって、シーラーなどを塗布して目止めされない状態として、被覆面1aに空隙を露出させた状態としている。木質系芯材は、必ずしも全周を非目止め状態とする必要はない。非目止め状態とするのは、表面のプラスチック層を強固に結合するためであるから、プラスチック層の剥離に対する強度が要求されない面には、必ずしも非目止め状態とする必要はない。
木質系芯材1は、用途に最適な形状に加工される。木質系芯材1の表面を熱可塑性の混合プラスチックを含むプラスチック層2で被覆して製造される木芯プラスチック成形体は、内装材・外装材・エクステリア素材等の建材、土木資材等において現状で木質材が使用されている部位、全てにおいて利用可能であり、たとえば、コンクリート型枠に使用される木質系芯材は、平面状に加工され、また、コンクリート型枠の面取り材に使用される木質系芯材1は、横断面形状を直角三角形とする。また、ブラインドに使用される木質系芯材は、薄い板状に加工され、さらに、内装や外装材に使用される木質系芯材は、板状等の種々の形状に加工される。
木質系芯材1の表面をプラスチック層2で被覆する金型3は、加熱して溶融状態となった混合プラスチックを供給する混合プラスチックの加熱押出機構5を連結している。加熱押出機構5は、熱可塑性の混合プラスチックを加熱して溶融状態とし、溶融状態の混合プラスチックを金型3の成形穴10に加圧状態で供給する。
加熱押出機構5は、図6の拡大断面図に示すように、熱可塑性のプラスチック21にフィラー22を混合している混合プラスチック20を使用する。この混合プラスチック20は、熱可塑性のプラスチック21に流動性の優れた、すなわちメルトインディックスの大きいプラスチックを使用する。混合プラスチック20を構成する熱可塑性のプラスチック21の単独のメルトインディックスは、たとえば5以上、好ましくは10以上とする。メルトインディックスが5よりも小さいプラスチック21は、木質系芯材1の空隙18に効率よく侵入できない。
混合プラスチック20の熱可塑性プラスチック21には、PP、HDPE、LDPE、LLDPE、EVA、EMMA、EVOH、PVC、VDC、ABS、AS、PS、GPPS、HIPS、PMMA、MS、SBR、PC、PET、PA、POM、PPE、PPS、PBT等が使用できる。HDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレン樹脂は、耐候性、低温特性がよくて凍らず、さらに、オレフィン系のため廃棄のときに焼却しても有毒ガスがでない特徴がある。とくに、PE樹脂の中でも、LLDPE(リニア型低密度ポリエチレン)は、引張衝撃強度が高く、なおかつメルトインディックスが大きく、優れた流動性があるので、多量のフィラーを添加して成形できる。また、熱可塑性のプラスチック21には、各種TPE(熱可塑性エラストマー)、及びポリ乳酸等のバイオマス由来プラスチックも使用できる。さらに、PPとPEとの混合体は、成形性に優れる特徴がある。
混合プラスチック20に添加するフィラー22は、粉末状ないし繊維状であって、無機質又は有機質のフィラーが使用できる。有機質のフィラーには、木粉、籾殻、フスマ、そば殻、ケナフ、バガス、麻、大麻、竹、ヤシ繊維、パイナップル繊維、バナナ繊維、紙等のセルロースを含むものや米、麦、トウモロコシ等の炭水化物などのバイオマス由来素材を使用する。無機質のフィラーには、水酸化マグネシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、シリカ、カーボン、シラス、フライアッシュ、ガラス等を使用する。さらに、フィラーには、粉末状の無機顔料や有機顔料も使用できる。
フィラーは、木質系芯材の表面にある微細な空隙に侵入できる大きさとする。木質系芯材の表面にある微細な空隙は、木質系芯材の種類により異なる。天然木材、集成材、合板等の天然木材は、導管によって表面に微細な空隙ができる。導管による空隙の大きさは、針葉樹と広葉樹により、さらに木材の種類により異なり、大きいものは100μm以上、小さいものは100μmよりも小さい。したがって、これらの天然木材の導管によってできる空隙に侵入させるフィラーは、導管の空隙よりも小さくする。LVL、MDF、HDF、パーティクルボード、ストランドボード、及びこれらを組み合わせたもの等も表面の空隙の大きさが異なるので、各々の木質系芯材の空隙に侵入できる粒径のフィラーを使用する。フィラーの添加量は、少なすぎると混合プラスチックが固化するときの収縮を少なくする効果が低下するので、たとえば3重量%よりも多く、好ましくは10重量%よりも多く、さらに好ましくは20重量%よりも多くする。また、フィラーの添加量が多すぎると混合プラスチックの流動性が低下して能率よく成形できなくなるので、その添加量は使用する混合プラスチックの種類により最適値とするが、たとえば70重量%よりも少なく、好ましくは60重量%よりも少なく、さらに好ましくは50重量%とする。混合プラスチックに、流動性に優れたLLDPE(リニア型低密度ポリエチレン)を使用する場合、最適にはフィラーの添加量は約50重量%とする。また、成形性に優れたPPとPEとの混合体を使用する場合、フィラーの添加量は最適には約40重量%とする。
さらに、混合プラスチック20には、難燃剤・紫外線吸収材・抗菌剤・防かび剤等の添加剤を添加して、難燃、防かび、防腐、光安定、抗菌、寸法安定、剛性向上、軟質化、帯電防止、導電、蓄光等を実現する添加剤を添加することができる。とくに、残光特性に優れた蓄光剤を添加することで、表面の混合プラスチックに蓄光特性を持たせることができるので、これを手すり等に使用して、夜間に消灯する状態で位置を明確にすることができる。また、これらの添加剤についても、粉末状又は繊維状のものは、固化収縮を防止するフィラーとしての密着性を向上する効果も実現する。
金型3は、これを貫通するように、木質系芯材1を移送する成形穴10を設けている。成形穴10は、木質系芯材1の表面に混合プラスチック20を付着して被覆する成形部11を排出側に設けている。さらに、図2と図4に示す金型3は、この成形部11よりも挿入側に、木質系芯材1の表面を真空脱気する真空脱気室6を設けている。この成形穴10を通過する木質系芯材1は、真空脱気室6で表面を真空脱気した後、成形部11で溶融状態の熱可塑性の混合プラスチックを付着して表面を被覆する。
成形穴10の排出側に設けている成形部11は、その内形を、木質系芯材1の外形よりも大きくしている。図3は金型3の成形部11と木質系芯材1の相対位置を示す断面図である。この図に示すように、成形部11の内面と木質系芯材1の外面との隙間(d)に混合プラスチック20が押し出されて、木質系芯材1の表面にプラスチック層2が被覆される。隙間(d)は、木質系芯材1の表面を被覆するプラスチック層2の厚さを特定する。したがって、この隙間(d)を広くして、木質系芯材1の表面を被覆するプラスチック層2を厚くでき、反対に狭くしてプラスチック層2を薄くできる。木質系芯材1の表面を被覆するプラスチック層2の厚さは、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜3mmとすることができる。したがって、成形部11の内面と木質系芯材1の外面との隙間(d)は、プラスチック層2の厚さを考慮して最適に間隔となるように設計される。木質系芯材1は、好ましくは、図3に示すように、その全周をプラスチック層2で被覆する。全周がプラスチック層2で被覆される木質系芯材1は、表面のプラスチック層2で木質系芯材1の乾燥と吸水が阻止されて、収縮や歪みが防止される。ただし、本発明は、必ずしも木質系芯材の全周を混合プラスチックで被覆する必要はなく、木質系芯材の一部、たとえば表面を混合プラスチックで被覆して、裏面を混合プラスチックで被覆しないようにすることもできる。また、木質系芯材は、全周を同じ厚さの混合プラスチックで被覆する必要はなく、たとえば室内や屋外のフローリングは、上面の混合プラスチックを下面よりも厚くして、耐久性や耐摩耗性を向上できる。
さらに、図2と図4に示す金型3は、成形穴10に真空脱気室6を設けているので、真空脱気室6の挿入側を密閉するために、成形穴10の真空脱気室6よりも挿入側の内面に、木質系芯材1の外側表面に密着して、成形穴10の内面と木質系芯材1の表面との間を気密に密閉する気密リング部8を設けている。図4に示す金型3は、成形穴10の挿入側に内面に突出する突出部12を設けて、突出部12を気密リング部8としている。突出部12は、木質系芯材1の挿入方向に向かって内形を小さくする方向に傾斜する傾斜面13としている。この突出部12は、スムーズに木質系芯材1を挿入できる。突出部12からなる気密リング部8は、その内面を木質系芯材1の表面に密着させて、真空脱気室6の挿入側を気密に密閉する。
また、図5に示す金型3は、成形穴10に真空脱気室を設けていないので、成形穴10の挿入側を密閉することなく開放して木質系芯材1の挿入部19としている。この金型3は、成形穴10の挿入側を、木質系芯材1の挿入方向に向かって内形を小さくする方向に傾斜する傾斜面13としている。この金型3は、スムーズに木質系芯材1を挿入できる。
金型3は、成形部11の挿入側に、すなわち、図2と図4においては、成形部11と真空脱気室6との間に、また、図5においては、成形部11と挿入部19との間に、溶融状態の混合プラスチック20が成形部11から挿入側に流入するのを阻止する隔壁15を設けている。隔壁15は、内形を木質系芯材1の外形に等しく、あるいは木質系芯材1の外形よりも小さくして、内面を木質系芯材1に密着する形状としている。この成形穴10は、隔壁15でもって、溶融状態の混合プラスチック20が成形部11から挿入側に流入するのを確実に阻止できる。また、図2と図4の金型3においては、この隔壁15で真空脱気室6の排出側を気密に密閉できる。この金型3は、隔壁15と溶融状態の混合プラスチック20の両方で真空脱気室6の排出側を確実に気密に密閉できる。この金型3は、隔壁15に加えて溶融状態の混合プラスチックでも真空脱気室6の排出側を密閉するので、隔壁15で真空脱気室6の排出側を完全には密閉する必要はない。
さらに、内面を木質系芯材1の外面に密閉させる隔壁15は、木質系芯材1を定位置に配置させて成形部11に押し出しする。成形部11と木質系芯材1との相対位置がずれると、木質系芯材1の表面に設けられるプラスチック層2の膜厚が変化する。木質系芯材1の表面を所定の膜厚のプラスチック層2で被覆するために、木質系芯材1は成形部11の定位置にあって押し出しされることが大切である。隔壁15は、木質系芯材1を成形部11の定位置に配置して、成形部11の定位置に挿入する。木質系芯材1は、隔壁15の内面を滑りながら成形部11から押し出される。
押出機構4は、木質系芯材1を金型3の成形穴10に供給する。図1と図2の押出機構4は、木質系芯材1の表面を押圧しながら移送する移送ロール16を備える。この移送ロール16は、モータ等の回転機構(図示せず)で木質系芯材1の移送方向に回転される。図の押出機構4は、一対の移送ロール16で木質系芯材1の対向面を挟むように押圧して、木質系芯材1を移送する。この移送ロール16は、表面に針状の凸部を設けた針状の凹凸面とするローラとすることができる。表面を針状の凹凸面とする移送ロール16は、木質系芯材1を挟着して金型3に供給するときに、スリップしないように安定して木質系芯材1を移送して金型3に供給できる。さらに、表面を針状の凹凸面とする移送ロール16は、木質系芯材1を押圧しながら挟着することで、木質系芯材1の被覆面1aを針状の凹部のある凹凸面とすることができる。この凹凸面に溶融状態の混合プラスチックを密着させることで、混合プラスチックを針状の凹部に侵入させて、プラスチック層2をより強固に木質系芯材1に結合することができる。
さらに、図1に示す製造装置は、金型3の排出側に、金型3から排出される木芯プラスチック成形体を金型3から引き出す引出機構9を配設している。図1の引出機構9は、木芯プラスチック成形体の表面を押圧しながら移送する移送ロール17を備える。この引出機構9も、一対の移送ロール17で木芯プラスチック成形体の対向面を挟むように押圧して、木芯プラスチック成形体を金型3から引き出す。この引出機構9は、金型3に供給される木質系芯材1の末端を、確実に金型3から引き出して木芯プラスチック成形体を排出できる。
図2と図4に示す製造装置において、押出機構4で移送される木質系芯材1は、真空脱気室6を通過して成形部11に供給される。真空脱気室6は、木質系芯材1の表面を真空脱気する。図の金型3は、成形穴10の内面に真空脱気室6と成形部11とを設けている。成形部11に圧入される混合プラスチック20は加熱されて溶融状態となっている。したがって、溶融状態の混合プラスチック20は金型3を加熱する。溶融状態の混合プラスチック20で加熱される金型3は、真空脱気室6の内面を加熱する。加熱された真空脱気室6は、挿入側の突出部12からなる気密リング部8を木質系芯材1に接触させて熱伝導で木質系芯材1の表面を加熱する。とくに、気密リング部8の突出部12は、木質系芯材1との隙間を気密に密閉するために、木質系芯材1に強く押圧されることから、突出部12から木質系芯材1に効率よく熱伝導して木質系芯材1の表面を加熱する。さらに、加熱された真空脱気室6は、内面から放射される赤外線を木質系芯材1の表面に照射して、輻射熱で木質系芯材1の表面を加温する。
真空脱気室6で加熱された木質系芯材1の表層部1bの空気は、膨張して真空装置7で効率よく排気される。さらに、木質系芯材1の表層部1bは、加熱によって相対湿度を低下させて水分を気化しやすくする。空気は温度が上昇すると含有できる水分量が増加することから、温度の上昇によって相対湿度が低下し、相対湿度が低下すると水分は気化しやすくなる。気化された水分は、木質系芯材1の表面から脱気されて真空装置7で排気される。さらに、減圧された真空脱気室6は、木質系芯材1の表層部1bに含まれる水分の沸点を低下させ、さらに、真空脱気室6で加熱されることによって、表層部1bの水分は気化しやすくなって効率よく排気される。
真空脱気室6で表層部1bの水分と空気が真空脱気された木質系芯材1は、混合プラスチック20で被覆するときに空気が膨張し、また水分が気化して膨張することで気泡が発生するのを阻止する。さらに、真空脱気室6で真空脱気された木質系芯材1は、成形部11を通過する状態で表層部1bの空隙を減圧状態としている。この木質系芯材1は、成形部11に移送されて、図6に示すように、表面に接触する混合プラスチック20を表層部1bの空隙18に吸入して表面の微細な凹凸に侵入させる。このため、成形部11から押し出しされる木質系芯材1は、表面の微細な凹凸に混合プラスチック20が吸入されて、混合プラスチック20の投錨効果で木質系芯材1とプラスチック層2とが剥離しないように強固に接着される。
図1ないし図5に示す製造装置は、以下の方法で木質系芯材1の表面を熱可塑性のプラスチック21を含むプラスチック層2で被覆する。熱可塑性のプラスチック21には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂等を使用する。木質系芯材1には、LVLであって、横断面形状の縦×横を1cm×5cmとする板材を使用する。この木質系芯材1は、横断面形状を長方形とする板材に、鋸で加工して表面を平滑な面としている。木質系芯材1の表面を、1mmの厚さのプラスチック層2で被覆するので、金型3の成形部11は、12mm×52mmの長方形としている。この金型3の成形室11に溶融状態の混合プラスチック20を供給する状態で、押出機構4が木質系芯材1を成形穴10の挿入側から成形部11に向かって移送する。押出機構4は、5m/分の移送速度で木質系芯材1を移送する。図1ないし図4の装置においては、真空脱気室6の真空度を50トールとして、木質系芯材1の表層部1bを真空脱気する。真空脱気室6で真空脱気された木質系芯材1は、成形穴10の成形部11に移送される。
金型3の成形部11を通過する木質系芯材1は、表面に溶融状態の混合プラスチック20が付着される。木質系芯材1の微細な空隙18に侵入する溶融状態の混合プラスチック20は、熱可塑性のプラスチック21が木質系芯材1の表面の凹凸に侵入する状態で、木質系芯材1の表面に付着される。また、混合プラスチック20は、フィラー22を添加することで粘度を高くできるので、成形部11から外部に漏れることなく所定の厚さに成形される。とくに、木質系芯材1の微細な空隙18に溶融状態にある熱可塑性のプラスチック21を侵入させるために、成形圧力を高くしても、成形部11から漏れることなく所定の厚さに成形される。いいかえると、混合プラスチック20は、成形圧力を高くして溶融状態にある熱可塑性のプラスチック21を木質系芯材1の微細な空隙18に侵入させるが、成形部11から漏れることなく所定の厚さに成形される。金型3の成形部11に圧入される混合プラスチック20の圧力は、たとえば、5気圧以上として、溶融状態にある熱可塑性のプラスチック21を木質系芯材1の微細な空隙18に効率よく侵入できる。木質系芯材1は、成形部11から押し出される状態で、表面に1mmの厚さに混合プラスチック20が付着されて、プラスチック層2で被覆される。
以上の方法で製造される木芯プラスチック成形体の一例を図7ないし図9に示す。ただし、これ等の図において、図9は本発明の実施例にかかる木芯プラスチック成形体を示し、図7と図8は木芯プラスチック成形体の参考例を示している。
図7は、サッシ枠用部材として使用される木芯プラスチック成形体の横断面図を、図8は、住宅用外壁材やガレージシャッター材として使用される木芯プラスチック成形体の横断面図を示している。これらの図に示す木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1の横断面形状を用途に応じた特殊な形状として、表面にプラスチック層2を設けている。具体的には、木質系芯材1の被覆面1aであるコーナー部や平面部に、木質系芯材1の押し出し方向に伸びる切欠部24や溝25を設けており、これらの切欠部24の表面や溝25の内面においても、所定の厚さのプラスチック層2を設けている。このような断面形状の木芯プラスチック成形体を成形する金型は、成形部の断面形状を木質系芯材1の切欠部24の表面や溝25の内面に沿う形状として、切欠部24や溝25の表面にも、所定の厚さのプラスチック層2を設けることができる。
さらに、図7に示す木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1の表面を被覆するプラスチック層2の厚さを部分的に厚くして、木質系芯材1の押し出し方向に伸びる凸条26を設けている。図の木芯プラスチック成形体は、コーナー部に設けた切欠部24に、1列の凸条26を成形している。この凸条26は、たとえば、サッシ用部材においては水切り用突起として使用される。この木芯プラスチック成形体を成形する金型は、図示しないが、成形部の内面に、凸条26を成形する溝を設けている。このように、木質系芯材1を被覆するプラスチック層2の厚みを部分的に変えることで、用途に応じた機能を付加することができる。
さらに、図8に示す木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1の表面を被覆するプラスチック層2とは別に、プラスチック層2と異なる材質からなる樹脂成形部27を設けている。図8の木芯プラスチック成形体は、樹脂成形部27として、下面の中央部と、右下コーナー部に設けた切欠部24の側面の中央に、それぞれ1列の凸条28を成形している。これらの凸条28は、柔らかなエラストマー樹脂で成形しており、防水・気密を目的として使用される。この木芯プラスチック成形体を成形する製造装置は、図示しないが、金型の成形部の内面に、凸条28を成形する溝を設けると共に、この溝に溶融プラスチックを供給する第2の加熱押出機構を連結している。これにより、プラスチック層と異なる材質のプラスチックでもって、凸条28等の樹脂成形部27を成形することができる。このように、製造装置は、複数の加熱押出機構を備えることで、木質系芯材1の表面にプラスチック層2と異なる樹脂成形部27を設けて、木芯プラスチック成形体の用途に応じた機能を付加することができる。
さらに、図9に示す木芯プラスチック成形体は、木質系芯材1の被覆面1aに、押し出し方向に伸びる溝状の入り隅23を設けており、この入り隅23に木質系芯材1の表面を被覆する混合プラスチック20を充填している。この木芯プラスチック成形体は、入り隅23に対向するプラスチック層の表面を平面状として、全体の横断面形状を長方形としている。図に示す木質系芯材1は、長方形の長辺側の平面部に2列の入り隅23を設けると共に、短辺側の平面部に1列の入り隅23を設けて、全体で6列の入り隅23を設けている。図示しないが、入り隅は、木質系芯材のコーナー部に設けることもできる。このように、木質系芯材1の被覆面1aに、押し出し方向に伸びる溝状の入り隅23を設けて、この入り隅23に混合プラスチック20を充填する構造は、入り隅23に充填される混合プラスチック20がリブ状となってプラスチック層2を補強できる特徴がある。さらに、入り隅23に充填される混合プラスチック20が入り隅23の内面に付着することによって、木質系芯材1と混合プラスチック20との接触面積を大きくして、プラスチック層2をより強固に木質系芯材1に結合できる。