以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(b)は模式的平面図であり、同図(a)は同図(b)のA−A’線断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図(a)〜(c)は、図1(b)のA−A’線断面の一部を拡大して示しており、半導体発光素子110の要部の3種類の状態を例示している。
図1に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体10sと、電極ELと、を備える。
積層構造体10sは、窒化物系半導体からなる第1導電型の第1半導体層10と、窒化物系半導体からなる第2導電型の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を有する。
第1導電型は、例えばn型である。第2導電型は、例えばp型である。ただし、第1導電型がp型で、第2導電型がn型でも良い。以下では、第1導電型がn型で、第2導電型がp型である場合として説明する。
電極ELは、第1金属層51と、第2金属層52と、を有する。
第1金属層51は、第2半導体層20の発光層30とは反対側に設けられ、銀(Ag)または銀合金を含む。
第2金属層52は、第1金属層51の第2半導体層20とは反対側に設けられ、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の少なくともいずれかの元素を含む。ここで、本願明細書において、上記の「金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の少なくともいずれかの元素」を、単に「貴金属元素」ということにする。
電極ELは、積層された第1金属層51と第2金属層52とを有す。第1金属層51と第2金属層52とは互いに接触している。第1金属層51は、第2半導体層20に接触している。
第1金属層51は、例えばAg層であり、その厚さは例えば200nm(ナノメートル)である。第2金属層52は、例えばPt層(白金層)であり、その厚さは2nmである。
そして、上記のAg層とPt層とは、例えば、連続して形成され、例えば酸素と窒素とを8対2の比率で混合したガス雰囲気において、380℃で1分間のシンター処理(熱処理)することで形成される。
図2(a)に表したように、第1金属層51と第2半導体層20との界面25を含む界面領域IFRにおける、貴金属元素の濃度は、第1金属層51のうちの界面25から離れた第1金属内部領域51cよりも高い。ここで、第1金属内部領域51cは、第1金属層51の界面25と離れた領域であり、第1金属層51の第2金属層52の側の界面近傍の領域までを含む。
図2(b)に表したように、第2半導体層20は、第2半導体層20と第1金属層51との界面25に接して設けられ、銀(Ag)を含む界面層IFLを含む。特に、界面層IFLに含まれる結晶欠陥29に銀が含まれ、界面25に第2半導体層20と銀との化合物層が形成されている。
このような構成により、銀または銀合金を含む第1金属層51の反射性を高く維持し、オーミック特性やコンタクト抵抗などの電気特性が良好で、銀のマイグレーションや化学反応を抑制し安定性が高く、密着性を向上できる。これにより、高輝度、高効率、高信頼性を高度に同時に満足する半導体発光素子が提供できる。
発明者は、第2半導体層20の上に、電極ELとして、銀または銀合金を含む第1金属層51を設け、その上に、貴金属元素を含む第2金属層52を設けた構造において、各種の条件のシンター処理を行う実験の結果、上記のように、第2金属層52に含まれる貴金属元素が、第1金属層51の下側である第2半導体層20と第1金属層51との界面25を含む界面領域IFRに局在するときに、上記のような良好な特性が発揮されることを見出した。
界面領域IFRに局在する貴金属元素は、第2金属層52から第1金属層51の内部を介して界面領域IFRに移動したと推測される。もし、この現象が、通常の拡散現象であれば、第1金属層51においては、第2金属層52に近い領域で貴金属元素の濃度が高く、第2金属層52から離れた領域では基金属元素の濃度が低くなると考えられるが、後述する実験結果によれば、第1金属層51において、第2金属層52に近い領域では貴金属元素が検出されず、第2金属層52から離れた界面領域IFRにおいて貴金属元素が検出される条件が見出され、このときに良好な特性が得られた。
そして、この条件のときに、界面25に接した部分の第2半導体層20において、Agを含む界面層IFLが形成されることを見出した。
本発明は、上記の新たに見出された知見に基づいてなされたものである。上記の実験結果については詳しく後述する。
以下では、半導体発光素子110の構成の具体例、及び、その製造方法の例について説明する。
図1に例示したように、第1半導体層10に接して第1電極40が設けられ、第2半導体層20に接して第2電極50が設けられる。
そして、本具体例では、第2電極50が、上記の第1金属層51と、上記の第2金属層52と、を有する。すなわち、第2電極50が、上記の電極ELとなる。
第2半導体層20は、後述する複数の層を有することができ、複数の層のうちの発光層30とは反対側に配置される層(後述のコンタクト層)が、第2電極50(具体的には第1金属層51)と接している。
本具体例では、積層構造体10sの第1主面10aの側の第2半導体層20及び発光層30の一部が、例えばエッチングにより除去された領域において、第1半導体層10が露出され、その領域の第1半導体層10の上に、第1電極40が設けられる。そして、第1主面10aの第2半導体層20の上に第2電極50が設けられる。
さらに、本具体例では、第1半導体層10の発光層30とは反対の側に基板5が設けられる。すなわち、例えば、サファイアからなる基板5の上に、単結晶AlNからなるバッファ層(図示しない)を設け、その上に、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20がこの順に積層され、積層構造体10sが形成される。
例えば、第1半導体層10、発光層30、及び、第2半導体層20のそれぞれに含まれる層として、窒化物系半導体を用いることができる。
具体的には、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20には、例えば、AlxG1−x−yInyN(x≧0、y≧0、x+y≦1)等の窒化ガリウム系化合物半導体が用いられる。第1半導体層10、発光層30、及び、第2半導体層20の形成方法は、任意であり、例えば、有機金属気相成長法及び分子線エピタキシャル成長法等の方法を用いることができる。
以下、積層構造体10sの形成方法の例について説明する。
まず、基板5の上に、バッファ層として、高炭素濃度の第1AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が3×1018cm−3〜5×1020cm−3で、厚さが3nm〜20nm)、高純度の第2AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が1×1016cm−3〜3×1018cm−3で、厚さが2μm(マイクロメートル))、及び、ノンドープGaNバッファ層(例えば厚さが3μm)が、この順で順次形成される。上記の第1AlNバッファ層、及び、第2AlNバッファ層は、単結晶の窒化アルミニウム層である。
その上に、第1半導体層10として、Siドープn型GaN層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3〜5×1018cm−3で、厚さが4μm)、Siドープn型GaNコンタクト層(例えば、Si濃度が5×1018cm−3〜1×1020cm−3で、厚さが0.2μm)、及び、Siドープn型Al0.10Ga0.90Nクラッド層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3で、厚さが0.02μm)が、この順番で順次形成される。
その上に、発光層30として、Siドープn型Al0.11Ga0.89Nバリア層と、GaInN井戸層と、が交互に3周期積層され、さらに、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層がさらに積層される。Siドープn型Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3〜1.5×1019cm−3とされる。最終Al0.11Ga0.89Nバリア層の厚さは、例えば0.075μmである。この後、Siドープn型Al0.11Ga0.89N層(例えば、Si濃度が0.8×1019cm−3〜1.0×1019cm−3で、厚さがを0.01μm)を形成する。なお、発光層30における発光光の波長は、例えば370nm以上、400nm以下である。さらに具体的には、例えば370nm以上、385nm以下である。
さらに、第2半導体層20として、ノンドープAl0.11Ga0.89Nスペーサ層(例えば厚さが0.02μm)、Mgドープp型Al0.28Ga0.72Nクラッド層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、厚さが0.02μm)、Mgドープp型GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、厚さが0.1μm)、及び、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が5×1019cm−3〜9×1019cm−3で厚さが0.02μm)が、この順で順次形成される。
なお、上記の組成、組成比、不純物の種類、不純物濃度及び厚さは一例であり、種々の変形が可能である。
なお、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層のMg濃度を1020cm−3台と高めに設定することで、第2電極50とのオーミック特性を向上させることができる。ただし、半導体発光ダイオードの場合、半導体レーザダイオードとは異なり、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層と発光層30との距離が近いため、Mg拡散による特性の劣化が懸念される。そこで、第2電極50と高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層との接触面積が広く、動作時の電流密度が低いことを利用して、電気特性を大きく損ねることなく高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層のMg濃度を1×1019cm−3台に抑えることで、Mgの拡散を防ぐことができ、発光特性を改善させることができる。
また、第2電極50として、上記の第1金属層51及び第2金属層52を用いることで、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層のMg濃度を1×1019cm−3台に抑えても良好なオーミック特性を得ることが可能となる。
第1AlNバッファ層は、基板5との結晶型の差異を緩和する働きをし、特に螺旋転位を低減する。
第2AlNバッファ層は、その表面が原子レベルで平坦化する。これにより、この上に成長するノンドープGaNバッファ層の結晶欠陥が低減される。そのためには、第2AlNバッファ層の膜厚は、1μmよりも厚いことが好ましい。また、歪みによるそり防止のためには、第2AlNバッファ層の厚みが4μm以下であることが好ましい。第2AlNバッファ層に用いられる材料は、AlNに限定されず、AlxGa1−xN(0.8≦x≦1)でも良く、これにより、ウェーハのそりを補償することができる。
ノンドープGaNバッファ層は、第2AlNバッファ層上で3次元島状成長をすることにより、結晶欠陥低減の役割を果たす。ノンドープGaNバッファ層の平均膜厚が2μm以上になると、ノンドープGaNバッファ層の成長表面が平坦化される。再現性とそり低減の観点から、ノンドープGaNバッファ層の厚さは、4μm〜10μmが適切である。
これらのバッファ層を採用することで、低温成長のAlNバッファ層と比較して結晶欠陥を約1/10に低減することができる。この技術によって、n型GaNコンタクト層(例えば、上記のSiドープn型GaNコンタクト層)への高濃度Siドーピングや、紫外帯域発光でありながらも高効率な半導体発光素子を作ることができる。また、バッファ層における結晶欠陥を低減することにより、バッファ層での光の吸収も抑制できる。
サファイアからなる基板5と、その上に形成される積層構造体10sと、の間の結晶型の差異を緩和するために、バッファ層として、非晶質または多結晶の窒化アルミニウム層を設けた場合には、バッファ層自体が光の吸収体となるため、発光素子としての光の取り出し効率が低下してしまう。これに対して、サファイアからなる基板5上に、単結晶窒化アルミニウム層である上記の第1AlNバッファ層及び第2AlNバッファ層を介して、積層構造体10sが形成されることにより、結晶欠陥を大幅に減らして、結晶内における吸収体を大幅に減らすことができる。
このように、半導体発光素子110は、発光層30の第2半導体層20とは反対側(第1主面10aに対向する第2主面10bの側)に設けられ、サファイアからなる基板5をさらに有することができる。そして、発光層30及び第2半導体層20(積層構造体10s)は、単結晶の窒化アルミニウム層(例えば、上記の第1AlNバッファ層及び第2AlNバッファ層)を介して、上記の基板5の上に形成されることが好ましい。なお、基板5、及び、上記のバッファ層の少なくとも一部は、取り除かれても良い。
また、上記の窒化アルミニウム層は、基板5の側に設けられ、基板5とは反対の側よりも炭素の濃度が相対的に高い部分を有することが好ましい。すなわち、基板5の側に上記の第1AlNバッファ層が設けられ、基板5とは反対の側に上記第2AlNバッファ層が設けられることが好ましい。
次に、上記の積層構造体10sへの第1電極40及び第2電極50の形成の例について説明する。
まず、積層構造体10sの第1主面10aの一部の領域において、n型コンタクト層(例えば上記のSiドープn型GaNコンタクト層)が表面に露出するように、例えばマスクを用いたドライエッチングによって、第2半導体層20及び発光層30の一部を除去する。
次に、パターニングされたリフトオフ用レジストを、露出したn型コンタクト層上に形成し、真空蒸着装置を用いて、例えば、Ti/Al/Ni/Au積層膜を形成し、第1電極40を形成する。Ti/Al/Ni/Au積層膜の厚さは、例えば300nmとされる。そして、650℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
次に、第2電極50を形成するために、パターニングされたリフトオフ用レジストをp型コンタクト層(例えば上記の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)の上に形成する。そして、真空蒸着装置を用いて、例えば、第1金属層51となるAg層を200nmの厚さで形成し、引き続き、第2金属層52となるPt層を2nmの厚さで形成する。そして、上記のリフトオフ用レジストをリフトオフした後に、酸素と窒素とを8対2の比率で混合したガス雰囲気において380℃で1分間のシンター処理を行う。
なお、Ag層を形成する前のp型コンタクト層上にわずかな水分やイオン化合物が付着していると、Ag層のマイグレーションやグレイン化が促進され、最適な条件からずれるので、第1金属層51となるAg層を形成する前に、p型コンタクト層の表面を十分乾燥させる。
そして、第1電極40と第2電極50とを覆うように、例えば、Ti/Pt/Au積層膜を、厚さ500nmで形成する。
次いで、劈開またはダイヤモンドブレード等により積層構造体10sを切断し、個別の素子とし、半導体発光素子110が得られる。
上記のように、第2電極50は、第2半導体層20上に、第1金属層51となる厚さが200nmのAg層と、第2金属層52となる厚さが2nmのPt層と、が連続して形成され、酸素と窒素とを8対2の比率で混合したガス雰囲気において、380℃で1分間のシンター処理することで形成される。
このようにして形成された第2電極50は、良好な密着性を有し、さらに、オーミック特性が良好で、コンタクト抵抗が低く、良好な電気特性を有する。
そして、第2電極50は、シンター温度が例えば380℃程度の比較的低温で形成できることから、第1金属層51のAg層におけるグレイン成長を抑制することができる。これにより、シンター処理前のAg層とほぼ同じ程度の良好な反射特性を示す。
このように、反射率、電気特性、密着性を高度に同時に満足する第2電極50を得ることができ、高輝度、高効率、高信頼性を高度に同時に満足する半導体発光素子が提供できる。
(比較例)
比較例の半導体発光素子119(図示せず)は、第2電極50として、Agの単層膜が用いられる。すなわち、第2電極50として、半導体発光素子110における第1金属層51だけが設けられ、第2金属層52が設けられない。これ以外の構成は、半導体発光素子110と同様なので説明を省略する。
半導体発光素子119に製造においては、第2電極50の形成に際し、パターニングされたリフトオフ用レジストをp型コンタクト層(高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)上に形成し、真空蒸着装置を用いて、例えば、第2電極50となるAg層を200nmの膜厚で形成し、上記のリフトオフ用レジストをリフトオフした後に、窒素雰囲気において、380℃の温度でシンター処理を行う。これ以外は、半導体発光素子110と同様である。
比較例の半導体発光素子119においては、シンター処理後のAgは、シンター処理前に比べて、グレインサイズの平均値が5倍以上大きくなり、密着性も非常に悪い状態である。
これに対して、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第2半導体層20上に、第1金属層51(Ag層)と、第2金属層52(Pt層)との積層構造が設けられ、酸素を含む雰囲気において380℃のシンター処理されることで、界面領域IFRにおける貴金属濃度を第1金属内部領域51cよりも高め、また、第2半導体層20の界面25側にAgを含む界面層IFLを設けることができる。そして、Agを含む第1金属層51の反射性を高く維持し、電気特性が良好で、銀のマイグレーションや化学反応を抑制し安定性が高く、密着性を向上できる。
そして、第2金属層52は、界面25に局在する貴金属元素Ptを供給することと同時に、第1金属層51に含まれるAgのマイグレーションを抑制し、Agのグレインの成長を抑制し、さらに、Ag層を保護する。これらの効果により、半導体発光素子の高輝度化高効率化、長寿命化を図ると同時に、工程への制約がなくなることから、特性の最大化やコスト削減が可能となる。
本実施形態に係る半導体発光素子110において、密着性及び電気特性が改善したのは、第2電極50と第2半導体層20との界面25に、第2金属層52に含まれるPtが極微量で局在したこと、及び/または、酸素を含む雰囲気でのシンター処理により第1金属層51に含まれるAgが第2半導体層20へ、クラックや転移などの結晶欠陥29を介して拡散したこと、及び/または、酸素を含む雰囲気でのシンター処理により第1金属層51に含まれるAgと第2半導体層20との化合物層が形成されたこと、が主な原因と考えられる。第2電極50と第2半導体層20との界面25にPtが局在する状態は、例えば、界面25にPtが析出することで生成されると考えられる。
第2半導体層20の処理条件、第1金属層51及び第2金属層52の厚さ、並びに、シンター処理条件などを適切に設定することで、図2(a)に例示した、界面領域IFRにおける、貴金属元素の濃度が第1金属内部領域51cよりも高い構成が形成できる。この構成においては、例えば、第1金属内部領域51cは、第2金属層52に含まれる貴金属元素を実質的に含まない。すなわち、第1金属層51は、第2金属層52に含まれる貴金属元素を実質的に含まない。この場合、第1金属層51(例えば第1金属内部領域51c)に含まれる貴金属元素の量は、検出限界以下である。
例えば、上記のようにして作製された半導体発光素子110において、各領域に存在するAgを、TEM−EDX分析によって調べたところ以下の結果であった。すなわち、図2(a)に例示した第2金属層52中に対応する第1測定点M1では、Ptが検出された。そして、第1金属層51の第2金属層52側の領域に対応する第2測定点M2、及び、第1金属層51の厚さ方向のほぼ中央領域に対応する第3測定点M3においては、Ptが検出されず、Ptの濃度は検出限界以下であった。第2測定点M2及び第2測定点M3が、第1金属内部領域51cに対応する測定点である。そして、界面25を含む界面領域IFRに対応する第4測定点M4においては、Ptが検出された。すなわち、界面領域IFRにおける、貴金属元素の濃度は、第1金属内部領域51cよりも高い。
Ptは仕事関数が高く、第2半導体層20に対してオーミック特性などの電気特性が良好で、Ptの第2半導体層20に対する密着性は、Agよりも高い。しかしながら、Ptは、Agよりも反射特性が低いため、第2半導体層20に接して、ある厚さを有する層状態のPt層を設けると、反射率が低下してしまう。
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第2半導体層20に接して一定の層状態のPt層を設けるのではなく、第2半導体層20と第1金属層51との間の界面25含む界面領域IFRにPtを僅かな量で局在させることで、第2半導体層20と第2電極50との間において、電気特性が良好で、密着性が高く、反射特性が高い接合が実現できる。
例えば、適切な処理条件を用いることによって、第2金属層52に含まれる貴金属元素を、界面25を含む界面領域IFRに析出させ、界面領域IFRにPtを僅かな量で局在させることができる。
また、酸素を含む雰囲気でシンター処理することで、Agは、例えば第2半導体層20に含まれる結晶欠陥29を介して、第2半導体層20に拡散し易くなり、図2(b)に例示した、例えば第2半導体層20の界面25の側の領域にAgを含む界面層IFLが設けられる。また、酸素を含む雰囲気でシンター処理することで、Agは第2半導体層20と化合物を作り易くなり、図2(b)に例示した、例えば第2半導体層20の界面25の側の領域にAgを含む界面層IFLが設けられる。この界面層IFLに拡散または化合物化したAgが、電気特性及び密着性を改善していると考えられる。
なお、Agを含む界面層IFLの存在、すなわち、第2半導体層20において、界面25の近傍領域にAgが局在していることは、例えば、断面TEM−EDXなどで、第2半導体層20の界面層IFL付近(結晶欠陥29を含む領域)に含まれるAgの量と、第2半導体層20のそれ以外の領域に含まれるAgの量を検出することで調べることができる。また、界面25の近傍領域を、例えば、断面TEMによって観察することで、第2半導体層20及び第1金属層51の格子像と、界面25に存在する第2半導体層20とAgとの化合物層の格子像を観察することで調べることができる。
上記の構成を得るシンター処理方法に関して説明する。
既に説明したように本実施形態に係る半導体発光素子110の作製においては、第2半導体層20の上に、電極EL(本具体例では、第2電極50)となる導電層を形成した後に、酸素を含有する雰囲気におけるシンター処理(熱処理)が、比較的低温(例えば380℃)で行われる。これにより、第2半導体層20と電極ELとの界面において、密着性と電気特性と反射特性を同時に高めることができる。
これに対し、シンター処理を行わない比較例の場合には、反射特性は比較的高いが、電気的特性が低く、密着性が著しく低い。
また、例えば、酸素を含有する雰囲気において、560℃程度の高温のシンター処理を行った場合には、密着性は良好だが、電気的特性が低くなり、反射特性が著しく劣化する。発明者による種々の実験結果から、第1金属層51におけるグレインサイズが大きくなると反射特性が低下することが明らかとなっている。高温でのシンター処理により、銀のマイグレーションが促進され、グレインサイズが大きくなることによって、反射特性が著しく低下すると考えられる。
また、例えば、窒素を含有する雰囲気での低温(例えば380℃)のシンター処理では、反射特性は良好だが、電気特性が十分良化せず、密着性は著しく低い。
また、例えば、窒素雰囲気での高温(例えば560℃)のシンター処理では、密着性と電気特性は良好だが、反射特性は低い。
このように、本実施形態において採用される、酸素を含有する雰囲気における比較的低温(例えば380℃)のシンター処理によって、密着性と電気特性と反射特性とを同時に高めることができる。
なお、特許文献1に記載されている、p型半導体層の上にAg層を形成した後に380℃の窒素雰囲気で1分間のシンター処理を行った後、その上にPt/Au層を形成して、p側電極を得る方法の場合、本実施形態の半導体発光素子110と比較すると、反射特性、電気特性及び密着性の総合的な性能として半導体発光素子110の方がさらに優れる。なお、この比較例において、貴金属元素であるPtやAuは、Ag層とp型半導体層との界面には検出されない。また、p型半導体層の界面側の領域においてAgは検出されない。
実験により、酸素を含有する雰囲気におけるシンター処理後の特性は、窒素雰囲気でのシンター処理後の特性よりも、第2半導体層20の結晶品質に対して敏感に変化することが分かった。第2半導体層20の結晶品質が低い場合は、第2電極50の形成工程などの負荷により、結晶性が低い領域で結晶欠陥29が増幅され、Agがさらに拡散していき、結晶品質を悪くしていくと考えられる。それを繰り返すことで、加速度的に結晶品質が低下し、発光効率の低下を招く。このため、酸素シンター処理によってAgを第2半導体層20に拡散、及び/または化合物化させつつ、結晶品質の劣化を抑えるには、上記の単結晶AlNバッファ層(例えば、上記の第1AlNバッファ層及び第2AlNバッファ層)を用いて形成した高品質な第2半導体層20を用いることが好ましい。
第2半導体層20の処理条件、第1金属層51及び第2金属層52の厚さ、並びに、シンター条件などを適切に設定することで、界面領域IFRに局在するPtは、第2半導体層20の表面の結晶欠陥29を塞ぎ、Agの過剰な拡散による特性の劣化を抑えると考えられる。
例えば、青色半導体発光素子では、Agのマイグレーションによる結晶へのダメージが起因する問題は顕在化しない。しかし、400nm以下の近紫外半導体発光素子においては、その特性が結晶品質に敏感であり、Agのマイグレーションによる結晶へのダメージが無視できない。Agの単層では、380℃以下の低温でもグレインサイズが熱処理前よりも3倍〜5倍以上大きくなるが、第1金属層51のAg層の表面を、第2金属層52のPtで覆うことで、470℃程度の比較的高温でも熱処理前とほぼ同じグレインサイズを維持することができる。
これらの効果により、半導体発光素子110においては、高輝度化、高効率化、長寿命化と同時に、工程への制約が緩和されることから、特性の最大化及びコストの削減が可能となる。
また、詳しく分析した結果、図2(c)に表したように、半導体発光素子110においては、第1金属層51の界面25の側に、発光層30の発光波長以下の幅の空隙51vが形成されていることが判明した。なお、図2(c)においては、分かり易いように、空隙51vを拡大して示している。
シンター処理により、第1金属層51(Ag層)の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層の側の領域において、わずかにマイグレーションが起こり、空隙51vが形成されるが、第2金属層52に含まれるPtが、界面25に(特に、界面近傍の空隙51v中に)析出することで、界面25におけるマイグレーションを効果的に抑制することができる。
これにより、界面25に空隙51vを形成しつつ、マイグレーションによる空隙51vの過度な成長や変形を抑制し、空隙51vを安定化させることができる。空隙51vの発生の有無や、空隙51vの幅、空隙51vの密度は、シンター処理における温度、時間、酸素濃度、並びに、第1金属層51及び第2金属層52の厚さによって制御することができる。
なお、第1金属層51の界面25の側に形成される空隙51vは、第1金属層51の第2金属層52の側の面にまで到達し、第1金属層51を貫通しても良い。
この空隙51vによって、発光層30で発生した光の光路を変えることができ、屈折率差のある各種の界面における全反射による光閉じ込め効果を抑制し、光取り出し効率を高めることができる。
すなわち、発光層30から第2電極50に向かって進行する光のうち、空隙51v以外の部分に入射した光は、幾何光学に従って鏡面反射する。一方、空隙51vに入射した光は、空隙51vの幅が発光波長より小さいため、散乱や回折等の波動光学で説明される挙動を示す。その結果、空隙51vにおいては、鏡面反射ではなく、入射角度とは異なる様々な角度を含む拡散反射の現象が生じる。これにより、屈折率差のある各種の界面(例えば第1半導体層10と基板5との界面など)に対する入射角度が浅く、半導体発光素子の内部に閉じ込められていた一部の光の入射角度を変えることができ、効果的に光を外に取り出すことができる。これにより、光取り出し効率の高い半導体発光素子が提供できる。なお、一般的には、空隙51vの幅が発光波長と比べて小さくなるほど、光の波動性が高まり、散乱反射する光の成分が増加する。その結果として、光取り出し効率が向上する。
空隙51vによる光取り出し効率向上の効果を最大化するためには、シンター処理の条件の最適化と共に、その条件に適合するように、積層構造体10sの構成を適正化することが好ましい。
すなわち、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20の特性は、上記のシンター処理の条件の変動に対して敏感に変化することが、実験結果から分かった。例えば、シンター処理の条件によっては、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20の内部量子効率が低下する。第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20のそれぞれにおける厚さ、不純物濃度及び組成等を、シンター処理条件と同時に最適化することで、半導体発光素子の輝度、効率及び寿命がさらに向上できる。
以下、シンター処理の条件を変えたときの各種の特性の変化に関する実験結果について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、シンター処理の際の雰囲気の酸素濃度を変えて半導体発光素子を作製し、第2半導体層20と第2電極50との間のコンタクト抵抗を測定した結果を表している。横軸はシンター処理時の酸素濃度Csoであり、縦軸はコンタクト抵抗Rcである。酸素濃度Csoとは、ガス全体に占める酸素の比率であり、例えば、酸素と窒素とが8対2の比率である場合は、80%とされる。
図3に表したように、酸素濃度Csoが80%よりも低下すると、徐々にコンタクト抵抗Rcが増大する。酸素濃度Csoが20%から0%(窒素雰囲気)に低下すると、コンタクトは2倍に増加する。
また、酸素濃度Csoが、80%から20%の範囲の酸素濃度Csoでは、ショットキー性が実質的に観測されなかったが、酸素濃度Csoが0%(窒素雰囲気)の場合は、若干ながらショットキー性が観測された。
このように、酸素濃度Csoは、コンタクト抵抗Rcの低減やオーミック特性に対して大きな影響を及ぼし、酸素濃度Csoは、20%以上100%以下であることが好ましい。これにより、コンタクト抵抗Rcが低減でき、良好なオーミック特性が得られる。酸素濃度Csoが20%よりも低い場合は、コンタクト抵抗Rcが増大し、電気特性にシットキー性が現れる。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、シンター処理の際の温度を変えて半導体発光素子を作製し、第2電極50の第1金属層51に含まれるAgのグレインサイズを評価した結果を表している。横軸はシンター処理温度Tsであり、縦軸はグレインサイズDaである。なお、図中のシンター処理温度Tsが25℃のプロットは、シンター処理を施さない試料Nsに対応している。
この実験においては、第2金属層52としてPtを用いた半導体発光素子110の構成に加え、第2金属層52としてPdを用いた半導体発光素子111の構成についても評価された。なお、半導体発光素子111は、第2金属層52としてPdを用いた他は、半導体発光素子110と同じ構成を有する。
ここで言うグレインサイズDaは、第1金属層51及び第2金属層52となる膜を成膜した後(シンター処理前)、または、成膜後に所定の温度でシンター処理を施した後に、第1金属層51及び第2金属層52の表面をSEM観察し、複数のグレインの大きさ(1つのグレインにおける最も長い径)を計測し、その値を平均した値である。すなわち、グレインサイズDaは平均粒径である。貴金属元素の粒径(特に、PtやPdの粒径)は、Agのグレインサイズと比較すると十分小さいため、上記の方法で評価したグレインサイズは、実質的にAgのグレインサイズと考えて良い。
本実験では、シンター処理の際の酸素濃度Csoは80%とされた。
図4(a)に表したように、第2金属層52としてPtを用いた半導体発光素子110においては、シンター処理温度Tsが330℃、380℃及び470℃のときのグレインサイズDaは、シンター処理を行わない試料Nsとほぼ同じである。これに対し、シンター処理温度Tsが560℃のときは、グレインサイズDaは、シンター処理を行わない試料Nsの6倍以上に増大する。
図4(b)に表したように、第2金属層52としてPdを用いた半導体発光素子111においても同様の傾向を示し、シンター処理温度Tsが330℃及び380℃のときのグレインサイズDaは、シンター処理を行わない試料NsのグレインサイズDaの2.5倍程度であるが、シンター処理温度Tsが470℃及び560℃のときのグレインサイズDaはシンター処理を行わない試料NsのグレインサイズDaの6倍以上に大きくなる。
一方、既に説明したように、第2電極50としてAg層だけを用いた比較例の半導体発光素子119おいては、シンター処理温度Tsが380℃であり、このとき、グレインサイズDaは、シンター処理を行わない試料の5倍程度に増大し、さらに、この構成においてシンター処理温度Tsを470℃にすると、グレインサイズDaは、シンター処理を行わない試料の6倍以上に大きくなる。
これらの実験結果から、第2電極50として、Ag層の第1金属層51と、その上に連続的に形成され、PtやPdを含む第2金属層52と、の積層構造を用いることで、380℃〜470℃までの温度領域でもグレインサイズDaが大きくなり難くなることが分かった。そして、380℃〜470℃までの温度領域では、グレインサイズDaは、0.3μm以下であり、それ以上の領域では、グレインサイズDaは0.6μm〜0.8μmである。
さらに、この実験の試料の評価結果、及び、その他の実験結果から、グレインサイズが大きくなるにつれ、コンタクト抵抗Rcが上昇する傾向を示すことが分かった。また、グレインサイズDaが大きくなると反射特性が低下することが分かった。
図4(a)及び(b)に例示したように、第2金属層52がPtを含む場合は、シンター処理温度Tsが560℃になると急激にグレインサイズDaが増大し、また、第2金属層52がPdを含む場合は、シンター処理温度Tsが470℃になると急激にグレインサイズDaが増大する。従って、グレインサイズDaが急激に増大しない条件を採用することが好ましい。
すなわち、第1金属層51におけるグレインサイズDa(平均粒径)が、0.3μm以下のときに、低いコンタクト抵抗Rcが得られ、高い反射特性が得られる。
さらに、第2金属層がPt及びPdのいずれの場合にも、シンター処理温度Tsが330℃以上において、良好なオーミック特性が得られた。このように、酸素濃度Csoが例えば80%と、酸素濃度Csoが比較的高い条件を用いたシンター処理においては、シンター処理温度Tsが330℃程度の比較的低い温度でも良好なオーミック特性が得られる。
さらに、第2金属層がPt及びPdのいずれの場合にも、シンター処理温度Tsが330℃以上において、密着性は高い。
以上の結果から、第2金属層52がPtを含む場合は、シンター処理温度Tsは、560℃未満が好ましく、特に470℃以下が好ましい。また、第2金属層52がPdを含む場合は、シンター処理温度Tsは、470℃未満であることが好ましく、特に380℃以下が好ましい。
そして、このとき、シンター処理後のグレインサイズDaは、シンター処理前(シンター処理を施さない場合)のグレインサイズの1倍〜3倍である。すなわち、シンター処理温度Tsは、シンター処理前のグレインサイズDaに対して、グレインサイズDaが3倍よりも大きくなる温度よりも低い温度が好ましい。
そして、この条件においては、第1金属層51におけるグレインサイズDa(平均粒径)は、0.3μm以下である。
上記の条件にときに、反射特性、コンタクト抵抗Rc、オーミック特性、及び、密着性の全ての点で良好は特性が得られる。
シンター処理温度Tsは、第2電極50(場合によっては、第1電極40も含む)の形成後の各工程の最高温度や、半導体発光素子をサブマウントや放熱器などにマウントする際の温度よりも高いことが好ましい。例えば、第2金属層52にPtを用いた半導体発光素子110をAuSn半田でサブマウントにマウントする場合は、シンター処理温度Tsは、AuSn半田の融点である280℃よりも高く、560℃よりも低いことが好ましい。例えば、第2金属層52にPdを用いた半導体発光素子111を150℃程度の低温マウントで放熱器に固定する場合は、シンター処理温度は150℃よりも高く、470℃よりも低いことが好ましい。
本実施形態に係る半導体発光素子において、基板5に用いる材料は任意であり、基板5には、例えば、サファイア、SiC、GaN、GaAs、Siなどの材料を用いることができる。
第1金属層51は、少なくとも、Ag、または、Agを含む合金を含む。
Ag及びAl以外の金属の単層膜の可視光帯域に対する反射率は、400nm以下の紫外域では波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、Agは370nm以上400nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射特性を有する。そのため、紫外発光の半導体発光素子で、第1金属層51がAg合金の場合、第1金属層51の界面25の側の領域におけるAgの成分比が高い方が好ましい。第1金属層51の厚さは、光に対する反射率を確保するため、100nm以上であることが好ましい。
AgとPtは固溶関係にあり、シンター処理によってAgとの界面付近におけるPtがその界面付近の数nm以下の領域のAgと混ざることにより、Agのマイグレーションを抑えることができると考えている。特にPdはAgと全固溶体であるため、第2金属層52としてPdを用いることで、Agのマイグレーションをより有効に抑えることができる。Agを含む第1金属層51と、PtやPd等の貴金属元素を含む第2金属層52と、の組み合わせを第2電極50に採用することで、高電流注入時においても高い信頼性を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図は、本実施形態に係る半導体発光素子120の構成を例示しており、図1(b)のA−A’線断面に相当する断面図である。
図5に表したように、半導体発光素子120においては、第1半導体層10及び第2半導体層20の第1主面10aの側の面の、第1電極40及び第2電極50の周縁領域に、誘電体膜60が設けられている。さらに、第1電極40の上に第1パッド層45が設けられている。そして、第2電極50の上には拡散防止層53が設けられ、その上に第2パッド層55が設けられている。
このような構成を有する半導体発光素子120は、例えば以下のようにして作製される。
半導体発光素子110と同様にして積層構造体10sを形成した後、積層構造体10sの第1主面10aの一部の領域において、n型コンタクト層(例えば上記のSiドープn型GaNコンタクト層)が表面に露出するように、第2半導体層20及び発光層30の一部を除去する。
次に、積層構造体10sの第1主面10aに、熱CVD装置を用いて誘電体膜60となるSiO2膜を、400nmの厚さで形成する。
次に、第1電極40を形成するために、パターニングされたリフトオフ用レジストをn型コンタクト層の上に形成し、露出したn型コンタクト層上の上記のSiO2膜の一部をフッ化アンモン処理で取り除く。SiO2膜が取り除かれた領域に、真空蒸着装置を用いて、例えば、Ti/Al/Ni/Au積層膜を、例えば300nmの厚さで形成し、リフトオフ後に、650℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
次に、第2電極50を形成するために、第1電極40と同様に、パターニングされたリフトオフ用レジストをp型コンタクト層(例えば上記の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)の上に形成し、フッ化アンモン処理でp型コンタクト層を露出させる。その際、第2電極50と、誘電体膜60となるSiO2膜と、の間に、p型コンタクト層が露出するように、フッ化アンモンの処理時間を調整する。具体的な例として、エッチングレートが400nm/分の場合、第2電極50を形成する領域のSiO2膜を取り除くための時間と、上記領域に近接するp型コンタクト層を1μmの幅で露出させるオーバーエッチングの時間と、の合計は、3分程度となる。
SiO2膜が取り除かれた領域に、真空蒸着装置を用いて、例えば、Ag層を200nmの厚さで形成し、その形成と連続して、Pt層を2nmの厚さで形成し、リフトオフ後に、酸素と窒素とを8対2の比率で混合したガス雰囲気において、380℃で、1分間のシンター処理を行う。
次に、拡散防止層53として、第2電極50の上に(覆うように)、リフトオフ法で、例えば、Pt膜とW膜との組み合わせの積層膜を5組形成する。拡散防止層53の厚さは、例えば600nmである。
そして、第1パッド層45及び第2パッド層55として、それぞれ第1電極40並びに第2電極40及び拡散防止層53を覆いつつ、誘電体膜60の一部を覆うように、リフトオフ法で、例えば、Ti/Pt/Au積層膜を1000nmの厚さで形成する。
なお、上記のように、オーミックメタルである第2電極50(第1金属層51及び第2金属層52)と、第1電極40と、を形成する前に、誘電体膜60を積層構造体10sに形成することで、これらの電極形成工程において、電極と積層構造体10sとの界面に付着するコンタミネーションを大幅に抑制できるため、信頼性や歩留まり、電気特性、光学特性を向上させることができる。
また、誘電体膜60を形成した後に第2電極50の酸素シンター処理を行うことで、熱CVD装置で成膜したSiO2膜の酸素欠損を補填することができる。
誘電体膜60として、熱CVDではなく、スパッタ法などによる酸素欠損の少ない良好な膜を採用すると、誘電体膜60の残留応力によって半導体発光素子の特性が劣化する場合がある。特に、積層構造体10sの結晶の品質が悪い場合はこの現象が顕著となる。従って、酸素欠損が多く、品質の多少劣る熱CVD膜を形成して、その後から、酸素欠損を補填する方法の方が、半導体発光素子の特性が良好になり易い。
第2電極50が拡散防止層53及び第2パッド層55によって覆われることで、第2電極50が外気から隔離されるため、第2電極50が水分やイオン不純物に晒されに難くなり、第2電極50のマイグレーションや酸化、硫化反応を抑えることができる。
また、第2電極50と第1電極40とが互いに対向する側の第2電極50の端部に近接した領域に第2パッド層55が形成され、この領域に電流経路が形成されるため、第2電極50への電流集中が緩和される。それ同時に、第2電極50と第1電極40とが互いに対向する領域の誘電体膜60(または誘電体積層膜)の端部付近に、第2半導体層20と第2パッド層55で挟まれた誘電体膜60の領域が形成されるため、誘電体膜60(または誘電体積層膜)を挟んで第2半導体層20と第2パッド層55との間に弱い電界が印加される。その結果、第2電極50から誘電体膜60(または誘電体積層膜)にかけて電界が徐々に弱くなる構造を作ることができるため、この領域における電界集中を緩和することができる。
さらに、半導体発光素子120の製造工程においては、新たな特別な工夫の必要はなく、従来と同じ工程、工程数で形成できる。
これにより、半導体発光素子120においては、リーク電流低減、絶縁特性向上、耐圧特性向上、発光強度の向上、寿命の増大、高いスループット、低コストを実現することができる。
パッド(第1パッド層45及び第2パッド層55)が誘電体膜60(または誘電体積層膜)を被覆する長さが長い場合は、誘電体膜60(または誘電体積層膜)を介した電界の緩和構造を得る上で有利であるが、第2電極50と第1電極40とがショートする危険性は高くなる。一方、短い場合は、第2電極50と第1電極40がショートする危険性は低くなる。
第2電極50と第2パッド層55との間に設けられる拡散防止層53は、第2パッド層55に含まれる元素が第2電極50へ向かって拡散すること、及び/または、その元素が第2電極50に含まれる元素と反応すること、を抑制する。拡散防止層53には、特に、第2電極50の第1金属層51に含まれるAgと反応しない、及び/または、Agに積極的に拡散しない、材料を用いる。
拡散防止層53に用いられる材料としては、例えば、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)などの高融点金属を含む単層膜または積層膜が挙げられる。
特に、拡散防止層53には、多少拡散しても問題がないように、仕事関数が高く、p型GaNコンタクト層(例えば、上記の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)に対してオーミック特性が得られやすい金属として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)を用いることがさらに好ましい。
拡散防止層53の厚さは、単層膜の場合は、膜状態を維持できる5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。積層膜の場合は、拡散防止層53の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、10nm〜10000nmの間で選ぶことができる。
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図は、半導体発光素子130の積層構造体10sの積層方向で半導体発光素子130を切断したときの断面図である。
図6に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子130においては、第2電極50が、積層構造体10sの第1主面10aの側に設けられ、第1電極40が第1主面10aに対向する第2主面10bの側に設けられている。そして、この場合には、例えばサファイアからなる基板5の上に、積層構造体10sの結晶成長を行った後に、基板5が除去されている。
そして、第1電極40が設けられていない領域の、積層構造体10sの第2主面10bには、凹凸部PPが設けられている。この凹凸部PPにより、発光層30からの発光光を反射させ、光取り出し効率を高めることができる。
このような構成を有する半導体発光素子130は、例えば以下のようにして製造できる。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式断面図である。
まず、図7(a)に表したように、第1及び第2の実施形態と同様にして、基板5の上に、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20の結晶成長を行い、積層構造体10sを形成する。
このとき、図7(a)に例示したように、基板5の上にバッファ層5bを設け、その上に、積層構造体10sを形成する。具体的には、バッファ層5bとして、サファイアからなる基板5の上に、上記の、第1AlNバッファ層5b1、第2AlNバッファ層5b2、及び、ノンドープGaNバッファ層5b3を形成する。
この後、上記と同様に、積層構造体10sの第1主面10a(第2半導体層20の側)のp型コンタクト層(例えば上記の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)の上に、パターニングされたリフトオフ用レジストを形成し、第1金属層51となるAg層(厚さ200nm)と、第2金属層52となるPt層(厚さ2nm)と、を連続して形成し、リフトオフ後に、酸素と窒素とを8対2の比率で混合したガス雰囲気において、380℃で1分間のシンター処理を行う。これにより、第2電極50が形成される。
そして、第2電極50を覆うように、例えば、第2パッド層55となるTi/Pt/Au積層膜を、例えば500nmの厚さで形成する。
その後、図7(b)に表したように、対向パッド層6pとして、例えばTi/Pt/Au積層膜が例えば500nmの厚さで設けられたシリコンからなる支持基材6と、上記の積層構造体10sとを対向させて設置する。このとき、第2パッド層55のTi/Pt/Au積層膜のAu層と、対向パッド層6pのTi/Pt/Au積層膜のAu層と、が互いに対向するように設置される。そして、積層構造体10sと支持基材6とを、加熱しつつ圧着して、第2パッド層55と対向パッド層6pとを接着する。
そして、サファイアからなる基板5の側から、例えばYVO4の固体レーザの三倍高調波(355nm)または四倍高調波(266nm)のレーザ光LLを照射する。レーザ光LLは、GaNバッファ層(例えば、上記のノンドープGaNバッファ層5b3)のGaNの禁制帯幅に基づく禁制帯幅波長よりも短い波長を有する。すなわち、レーザ光LLは、GaNの禁制帯幅よりも高いエネルギーを有する。
このレーザ光LLは、GaNバッファ層(ノンドープGaNバッファ層5b3)のうち、単結晶AlNバッファ層(この例では第2AlNバッファ層5b2)の側の領域において効率的に吸収される。これにより、GaNバッファ層のうち単結晶AlNバッファ層の側のGaNは、発熱により分解する。
そして、塩酸処理などによって、分解されたGaNを除去し、サファイアからなる基板5を積層構造体10sから剥離して分離する。
さらに、基板5が剥離された積層構造体10sの第2主面10bの側のGaNバッファ層(ノンドープGaNバッファ層5b3)を、研磨、ドライエッチング、ウェットエッチングなどの方法で除去し、第1半導体層10のn型コンタクト層(例えば上記のSiドープn型GaNコンタクト層)を露出させる。
この後、n型コンタクト層の表面にリフトオフ法などで、例えばTi/Pt/Au積層膜を例えば500nmの厚さで形成し、パターニングして、第1電極40を形成する。その後、第1電極40が形成されていないn型コンタクト層(第1半導体層10)の表面を、アルカリエッチング等により加工して凹凸部PPを形成する。
次いで、劈開またはダイヤモンドブレード等により、積層構造体10sを切断し、個別の素子とし、半導体発光素子130が作製される。
このように、半導体発光素子130においては、半導体発光素子の積層構造体10sを支持基材6に接着し、結晶成長を行った基板5を剥離し、剥離面を処理した後に第1電極40が形成される。
基板5上の積層構造体10sと、支持基材6と、を接着させる構成においては、電極(特に第2電極50)の積層構造体10sの側の面は、発光光に対する反射特性が高い必要があり、密着性も十分高い必要がある。このとき、本発明の実施形態に係る構造を用いれば、密着性と反射特性と電気特性とを高度に同時に満足させることができるため、高輝度で高信頼性の半導体発光素子が実現できる。
基板5上の積層構造体10sと、支持基材6と、を接着させるとき、及び、レーザ光でGaN層を分解して基板5を剥離するときに、積層構造体10sの結晶に結晶欠陥29が過度に生じ易い。この結晶欠陥29は、例えば、支持基材6、サファイア及びGaNの相互の熱膨張係数の差、局所的に加熱されることによる熱の集中、並びに、GaNが分解することにより発生する生成物などが原因と考えられる。
このように、第2電極50を形成する際のシンター処理の後に、結晶欠陥29やダメージが過度に生じると、そこから第2電極50の第1金属層51に含まれるAgが積層構造体10sへ向かって過度に拡散し、結晶内部でのリークや結晶欠陥の加速度的な著しい増加を招く。
上記の具体例によれば、バッファ層5bとして、単結晶AlNバッファ層(この例では第1AlNバッファ層5b1及び第2AlNバッファ層5b2)を用いることで高品質な半導体層を形成することができるため、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。また、GaN層をレーザ光で分解する際、高熱伝導特性を有する単結晶AlNバッファ層がGaNに近接して配置されているため、熱が拡散し易く、局所的な加熱による熱ダメージを抑制できる。
基板5上の積層構造体10sと、支持基材6と、を接着させる方法として、AuSnなどの半田を用いることもできる。半田は、数μmの厚膜を形成するのが一般的で、厚いほど反射電極(この例では第2電極50)に印加される歪みは大きくなる。その際も、反射電極の密着性が高い本実施形態の構成の採用により、半田の使用においても良好な特性が得られる。
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図は、半導体発光素子140の積層構造体10sの積層方向で半導体発光素子140を切断したときの断面図である。
図8に表したように、半導体発光素子140においては、第2半導体層20のp型コンタクト層28(例えば上記の高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層)が、低電気特性部28cを有している。この低電気特性部28cは、p型コンタクト層28のうちの第1電極40に対向する部分28bの、第2電極50の側の面(第1主面10aの側の面)に選択的に設けられている。
この低電気特性部28cは、例えば、p型コンタクト層28の第1主面10aの側の表面に、選択的にアッシング処理が施された部分である。p型コンタクト層28のうちの第1電極40に対向しない部分28aにおいては、アッシング処理が施されていない。
低電気特性部28cとそれ以外の部分28aとでは、表面の状態が異なる。これにより、低電気特性部28cにおいては、例えばアッシング処理が行われることで、それ以外の部分28aと比較して、コンタクト抵抗Rcが上昇し、オーミック特性が劣化する。
このように、半導体発光素子140は、積層構造体10s及び電極EL(この例では第2電極50)の他に、第1半導体層10の発光層30とは反対の側に設けられた第1電極40(対向電極CEL)をさらに備える。
そして、第2半導体層20(この場合は、特にp型コンタクト層28)は、第2半導体層20の第2電極50(電極EL)の側において、第1電極40(対向電極CEL)に対向する領域(部分28b)に設けられ、第1電極40(対向電極CEL)とは対向しない領域(部分28a)よりも、第2半導体層20と第2電極50(電極EL)との間におけるコンタクト抵抗が高い、及び、オーミック特性が低い、の少なくともいずれかである低電気特性部28cを有する。
このような構成を有する半導体発光素子140は、例えば、以下のようにして作製できる。
積層構造体10sに第2電極50を形成する前に、第2半導体層20の第1主面10aにおいて、第1電極40が形成される領域に対向する領域(部分28b)を露出するようなパターン形状のレジストを形成する。その後、レジストから露出した第2半導体層20の面に、例えば酸素アッシャ処理を行う。そして、このレジストを除去し、これ以降は、既に説明した手法を用いて、半導体発光素子140が形成される。
低電気特性部28cにおいては、アッシャ処理が施されたことにより、例えばコンタクト抵抗Rcが上昇し、非オーミック特性を示すため、電流が流れ難くなる。このため、第1電極40に対向する領域の発光層30において、電流が流れ難くなる。これにより、第1電極40直下の発光層30に電流が注入されにくくなり、発光層30における発光光が第1電極40に吸収されることが抑制でき、効率が向上する。
上記で説明したシンター処理条件によれば、非常に良好なオーミック特性と低いコンタクト抵抗Rcとを実現することができるので、例えばアッシング処理が施される低電気特性部28cによる電流の通電領域の制御と、上記のシンター処理と、を組み合わせて実施することにより、低電気特性部28cにおいては実質的に電流が流れない構成を実現でき、特に好ましい。
なお、第2半導体層20(特にp型コンタクト層28)のうちの第1電極40に対向する領域(部分28b)の第2電極50の側の表面に、例えば選択的にアッシング処理を行って形成する低電気特性部28cを設け、電流の通電領域を制御す方法は、上記の第1金属層51と第2金属層52との組み合わせにおいて、特定の条件のシンター処理を施す構成とは独立して実施することができる。これにより、効率が向上できる。
なお、上記においては、第2電極50(電極EL)が、Agを含有する第1金属層51と、貴金属元素を含有する第2金属層52と、を有している構成であるが、第1電極40(対向電極CEL)が、Agを含有する第1金属層と、貴金属元素を含有する第2金属層と、を有しており、上記の各条件を満たしていても良い。
また、第1電極40と第2電極50とのそれぞれが、上記の構成を有していても良い。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施形態は、窒化物系半導体からなる第1導電型の第1半導体層10と、窒化物系半導体からなる第2導電型の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を有する積層構造体10sと、第2半導体層20の発光層30とは反対側に設けられた電極EL(例えば第2電極50)と、を有する半導体発光素子の製造方法である。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図9に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、第2半導体層20の発光層30とは反対側の面(第1主面10a)の上に、銀または銀合金を含む第1金属層51を形成し、第1金属層51の上に、金、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムの少なくともいずれかの元素を含む第2金属層52を形成する工程(ステップS120)と、第2半導体層20、第1金属層51及び第2金属層52を、酸素を含有する雰囲気においてシンター処理する工程(ステップS130)と、を備える。
そして、シンター処理する工程(ステップS130)における温度は、シンター処理を実施した後の第1金属層51に含まれる銀の平均粒径(グレインサイズDa)が、シンター処理を施す前の平均粒径の3倍以下である温度である。
図4に関して説明したように、例えば、第2金属層52がPtを含む場合は、シンター処理温度Tsは、560℃未満が好ましく、特に470℃以下が好ましい。また、第2金属層52がPdを含む場合は、シンター処理温度Tsは、470℃未満であることが好ましく、特に380℃以下が好ましい。
これにより、図4に関して説明したように、電極EL(第2電極50)のコンタクト抵抗Rcを低減し、反射率を向上し、密着性を向上できる。
このとき、図3に関して説明したように、シンター処理における雰囲気の酸素濃度は、20%以上であることが好ましい。これにより、コンタクト抵抗Rcが低減でき、良好なオーミック特性が得られる。
そして、発光層30の発光光のピーク波長は370nm以上、400nm以下のときに、特に高い効果を発揮することができる。すなわち、この波長範囲においては、Ag以外の金属では、反射率が著しく低下するが、Agの反射率は高く、Agを第1金属層51に用いることの効果が高く発揮される。
そして、第1金属層51は、銀を含む単層膜とすることができる。また、第2金属層52は、白金、パラジウム、及び、白金とパラジウムとを含む合金の少なくともいずれかを含むことができる。
図10は、本発明の第5の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図10に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、以下の工程をさらに備える。
サファイアからなる基板5の上に、単結晶AlxGa1−xN(0.8≦x≦1)を含み、高濃度で炭素を含む高炭素濃度部バッファ層(例えば、上記の第1AlNバッファ層5b1)を形成する(ステップS101)。
そして、高炭素濃度部バッファ層の上に、単結晶AlyGa1−yN(0.8≦y≦1)を含み、炭素濃度が上記の高炭素濃度部バッファ層よりも低い低炭素濃度バッファ層(例えば、上記の第2AlNバッファ層5b2)を形成する(ステップS102)。
そして、低炭素濃度バッファ層の上に、第1半導体層10を形成する(ステップS111)。
そして、第1半導体層10の上に発光層30を形成する(ステップS112)。
そして、発光層30の上に第2半導体層20を形成する(ステップS113)する。
上記のようなバッファ層を用いることで、結晶性が優れた第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を形成することができる。
そして、既に説明したように、高炭素濃度部バッファ層の炭素濃度は、3×1018cm−3以上、5×1020cm−3以下が好ましく、厚さは、3ナノメートル以上、20ナノメートル以下が好ましい。
図11は、本発明の第5の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図11に表したように、第5の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法は、以下の工程をさらに備える。
低炭素濃度バッファ層と第1半導体層10(第1半導体層10)との間にGaNを含むGaNバッファ層(上記のノンドープGaNバッファ層5b3)を形成する(ステップS103)。
シンター処理(ステップS130)の後に、電極EL(第2電極50)を支持基材6に対向させて、電極ELを支持基材6に対して固定する(ステップS140)。
そして、基板5の側から、GaNバッファ層に、GaNの禁制帯幅に基づく禁制帯幅波長よりも短い波長を有するレーザ光LLを照射して、GaNバッファ層の基板5の側の部分の少なくとも一部を変質させて、基板5をGaNバッファ層から分離する(ステップS150)。
すなわち、図7(b)に関して説明した処理を行う。本実施形態の製造方法によれば、第2電極50の反射特性が高く、密着性も良好なので、支持基材6を設ける構成を有する高輝度で高信頼性の半導体発光素子が製造できる。
なお、本明細書において「窒化物系半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x,y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の窒化物系半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電型などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物系半導体」に含まれるものとする。
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれは良い。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子を構成する、発光層、窒化物系半導体、第1金属層、第2金属層、第1半導体層、第2半導体層、第1電極、第2電極、第1パッド層、第2パッド層、各種のバッファ層、基板、誘電体膜など各要素の形状、サイズ、材質、配置関係などに関して、また結晶成長プロセスなどの製造方法に関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。