以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(b)は平面図であり、同図(a)は同図(b)のA−A’線断面図である。
図1(a)に表したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子101においては、例えばサファイアからなる基板10の上にn型半導体層(第1半導体層)1、発光層3及びp型半導体層(第2半導体層)2がこの順に積層された積層構造体1sが形成されている。
そして、この積層構造体1sの主面1aの側において、p側電極(第2電極)4とn側電極(第1電極)7と誘電体積層膜11とが設けられている。
p型半導体層2の主面1aの側の上には、p側電極4が設けられている。なお、p側電極4は、後述するように、高効率反射膜となる第2p側電極膜4bと、必ずしも高効率反射特性を必要としない金属からなる第1p側電極膜4aと、を有することができる。
そして、p型半導体層2の一部はエッチングにより除去され、露出したn型半導体層1の主面1aの側の上には、n側電極7が設けられている。そして、n側電極7は、高効率反射膜となる第2n側電極膜(第2金属膜)7bと、オーミックコンタクト領域となる第1n側電極膜(第1金属膜)7aと、を有している。
そして、p側電極4及びn側電極7から露出した、p型半導体層2とn型半導体層1と、の上には、誘電体積層膜11が設けられている。誘電体積層膜11は、屈折率の異なる2種類以上の誘電体を2層以上積層している。ただし、素子の周辺部では、誘電体積層膜11が除去されていても良く、また、素子の周辺部では、素子分離工程などにより誘電体積層膜11が破損されていても良い。
誘電体積層膜11は、屈折率の異なる2種類以上の誘電体として、第1誘電体層(例えば、SiO2)と、第2誘電体層(例えば、TiO2)と、の積層膜の組み合わせを5組み、すなわち、合計10層の誘電体層からなる積層膜を用いることができる。この時、第1誘電体層及び第2誘電体層のそれぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をnとし、発光層3からの発光波長をλとした時、λ/(4n)の厚さに設定される。
すなわち、誘電体積層膜11は、第1屈折率n1を有する第1誘電体層と、前記第1屈折率n1とは異なる第2屈折率n2を有する第2誘電体層と、を交互に複数積層してなり、前記発光層3の発光波長をλとした時、前記第1誘電体層のそれぞれの厚さは実質的にλ/(4n1)であり、前記第2誘電体層のそれぞれの厚さは実質的にλ/(4n2)である。
これにより、発光層3からの発光光を効率良く反射し、半導体層側に反射することができる。
すなわち、本実施形態に係る半導体発光素子101においては、第1半導体層(n型半導体層1)と、第2半導体層(p型半導体層2)と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層3と、を有する積層構造体1sと、前記積層構造体1sの第1主面1a上に設けられ、 前記第1半導体層の上に設けられた第1金属膜(第1p側電極膜7a)を含む第1領域8aと、前記第1半導体層の上に設けられ、前記発光層3から放出される光に対する反射率が前記第1金属膜よりも高く、前記第1半導体層に対する接触抵抗が前記第1金属膜よりも高い第2金属膜(第2n側電極膜7b)を含む第2領域8bと、を有し、前記第1半導体層に接続された第1電極(n側電極7)と、前記積層構造体1sの前記第1主面1a上に設けられ、前記第2半導体層に接続された第2電極(p側電極4)と、前記第1主面1a上において、前記第1電極及び前記第2電極から露出した前記第1半導体層及び前記第2半導体層の上に設けられ、屈折率の異なる複数種の誘電体膜が複数積層されてなる誘電体積層膜11と、を備える。
本実施形態に係る半導体発光素子101においては、n側電極7に高効率反射膜となる第2n側電極膜7bを設けることにより、発光層3から放出された光を高い効率で反射し、素子の外側に取り出すことができる。つまり、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
第2n側電極膜7bは、銀やアルミニウム単層でも良いし、銀またはアルミニウムとそれら以外の金属とを含む合金層であっても良い。通常の金属単層膜の可視光帯域に対する反射効率は、波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、銀及びアルミニウムは370nm以上400nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射効率特性を有する。
そのため、紫外発光の半導体発光素子で、且つ第2n側電極膜7bが、銀またはアルミニウム合金の場合、半導体界面側の第2n側電極膜7bは、銀またはアルミニウムの成分比が高い方が望ましい。
また、第2n側電極膜7bの膜厚は、光に対する反射効率を確保するため、100nm以上であることが好ましい。
一方、オーミックコンタクト領域となる第1n側電極膜7aは、n型半導体層1とのコンタクト抵抗を低減し、素子抵抗を下げて電流を通電させる役割を有する。
オーミック特性を有する領域に形成される第1n側電極膜7aの材料は、特に限定されるものではなく、n型半導体層1のオーミック電極として用いられる導電性の単層膜または多層膜で構成される。第1n側電極膜7aの膜厚は、特に限定されるものではなく、5nmから1000nmの間で選ぶことができる。
誘電体積層膜11の層構造を発光光に対して高効率反射特性を有するよう設計することにより、p側電極4とn側電極7の絶縁性を維持したまま、工程上特別な工夫をすることなく、電極形成面の反射面積を大幅に増やすことができる。つまり、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
このような構成を有する半導体発光素子101によれば、n型半導体層1との間でオーミックコンタクトを確保し、ワイヤボンディングやバンプなどの形成に必要な面積を有するn側電極7を得つつ、電極形成面における第1n側電極膜7a以外の領域のほとんどを反射領域とした半導体発光素子が得られる。
なお、図1(b)に表した具体例おいては、n側電極7は、四角形状の半導体発光素子の一角を占めるが、n側電極7の形状はこれに限定されない。
また、図1(b)においては、誘電体積層膜11は省略されている。
次に、基板10の上に形成される半導体層の積層構造の具体例について説明する。
本実施形態に係る半導体発光素子101は、例えば、サファイアからなる基板10の上に形成された窒化物半導体から構成される。
すなわち、例えば、有機金属気相成長法を用いて、表面がサファイアc面からなる基板10の上に、高炭素濃度の第1AlNバッファ層(炭素濃度3×1018cm−3〜5×1020cm−3)を3nm〜20nm、高純度第2AlNバッファ層(炭素濃度1×1016cm−3〜3×1018cm−3)を2μm、ノンドープGaNバッファ層を3μm、Siドープn型GaNコンタクト層(Si濃度1×1018cm−3〜5×1018cm−3)を4μm、Siドープn型Al0.10Ga0.90Nクラッド層(Si濃度1×1018cm−3)を0.02μm、Siドープn型Al0.11Ga0.89Nバリア層(Si濃度1.1〜1.5×1019cm−3)とGaInN発光層(波長380nm)とが交互に3周期積層されてなる多重量子井戸構造の発光層を0.075μm、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層(Si濃度1.1〜1.5×1019cm−3)を0.01μm、Siドープn型Al0.11Ga0.89N層(Si濃度0.8〜1.0×1019cm−3)を0.01μm、ノンドープAl0.11Ga0.89Nスペーサ層を0.02μm、Mgドープp型Al0.28Ga0.72Nクラッド層(Mg濃度1×1019cm−3)を0.02μm、Mgドープp型GaNコンタクト層(Mg濃度1×1019cm−3)を0.1μm、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層(Mg濃度2×1020cm−3)を0.02μmの厚みで、それぞれ順次積層した構造を採用することができる。
ここで、図1(a)に例示したn型半導体層1は、上記の高炭素濃度の第1AlNバッファ層、高純度第2AlNバッファ層、ノンドープGaNバッファ層、Siドープn型GaNコンタクト層、及び、Siドープn型Al0.10Ga0.90Nクラッド層を含むことができる。
また、図1(a)に例示した発光層3は、上記のSiドープn型Al0.11Ga0.89Nバリア層)とGaInN発光層(波長380nm)とが交互に3周期積層されてなる多重量子井戸構造の発光層、及び、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層を含むことができる。
そして、図1(a)に例示したp型半導体層2は、上記のMgドープp型Al0.28Ga0.7aNクラッド層、Mgドープp型GaNコンタクト層、及び、高濃度Mgドープp型GaNコンタクト層を含むことができる。
Mgドープp型GaNコンタクト層のMg濃度を、1×1020cm−3台と高めに設定することで、p側電極とのオーミック接触特性を向上させることができる。ただし、半導体発光ダイオードの場合、半導体レーザダイオードとは異なり、前記コンタクト層と発光層4との距離が短いため、Mg拡散による特性の劣化が懸念される。そこで、p側電極4と前記コンタクト層の接触面積が広く、動作時の電流密度が低いことを利用して、電気特性を大きく損ねることなく前記Mg濃度を1×1019cm−3台に抑えることで、Mgの拡散を防ぐことができ、発光特性を改善させることができる。
高炭素濃度の第1AlNバッファ層は、基板との結晶型の差異を緩和する働きをし、特に螺旋転位を低減する。
また、高純度第2AlNバッファ層は、表面が原子レベルで平坦化する。そのため、この上に成長するノンドープGaNバッファ層の欠陥が低減されるが、そのためには高純度第2AlNバッファ層の膜厚は、1μmよりも厚いことが好ましい。また、歪みによるそり防止のためには、高純度第2AlNバッファ層の厚みは4μm以下であることが望ましい。高純度第2AlNバッファ層は、AlNに限定されず、AlxGa1−xN(0.8≦x≦1)でも良く、ウェーハのそりを補償することができる。
ノンドープGaNバッファ層は、高純度第2AlNバッファ層上で3次元島状成長をすることにより欠陥低減の役割を果たす。成長表面が平坦化するには、ノンドープGaNバッファ層の平均膜厚は、2μm以上であることが必要である。再現性とそり低減の観点からノンドープGaNバッファ層の総膜厚は、4〜10μmが適切である。
これらのバッファ層を採用することで、従来の低温成長AlNバッファ層と比較して欠陥を約1/10に低減することができる。この技術によって、n型GaNコンタクト層への高濃度Siドーピングや、紫外帯域発光でありながらも高効率な半導体発光素子を作ることができる。また、バッファ層における結晶欠陥を低減することにより、バッファ層での光の吸収も抑制できる。
そして、本実施形態の半導体発光素子101によれば、n側電極7に、高反射率の第2n側電極膜7bを設け、さらに、誘電体積層膜11を設けることにより、発光層3から放出された光を高い効率で反射し、素子の外部に取り出すことができる。
(比較例)
図2は、比較例の半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図2に表したように、比較例の半導体発光素子90においては、n側電極7は単一の金属層で構成されている。そして、誘電体積層膜11は形成されていない。すなわち、誘電体積層膜11の代わりに、図示されていない単層の誘電体膜として、例えばSiO2が400nm形成されている。
以下、比較例の半導体発光素子90の製造方法について説明する。
まず、p側電極4を形成するため、パターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、p型コンタクト層上に、真空蒸着装置を用いてp側電極4の一部となるAgを200nmの膜厚で形成し、リフトオフ後に350℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、n型コンタクト層上に、n側電極7となるTi/Pt/Auを500nmの膜厚で形成する。同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、p側電極4の一部となるAgが形成された領域を被覆するように、p側電極4の別の一部となるPt/Auを500nmの膜厚で形成する。
このようにして、比較例の半導体発光素子90の電極が構成される。
比較例の半導体発光素子90では、n側電極7の全面がオーミックコンタクトを得る金属により形成されている。このような金属を用いた場合、n側電極7の反射率は必ずしも十分に高くない。さらに、オーミックコンタクト領域においては、n側電極7とn型半導体層1との間で反応(合金化)が生じ易く、これも光の反射率を低下させる要因となる。また、電極が形成された主面側をサブマウント等にマウントする場合、p側電極4が形成されていない主面内の領域に入射した発光光は、マウント材に吸収されてしまう。このため、発光層3から放出された光の取り出し効率の点では改善の余地がある。
これに対して、既に説明したように、本実施形態に係る半導体発光素子101によれば、n側電極7の一部を高反射率の第2n側電極膜7bで形成し、高反射特性を有する誘電体積層膜11を採用することにより、電極を形成した半導体層の主面1aのほぼ全面を反射構造にすることより、光の取り出し効率を向上させることができる。
本実施形態に係る半導体発光素子101において、p側電極4とn側電極7との間で流れる電流は、両者のうちの最も近い部分において流れる傾向がある。
そこで、図1(a)、(b)に表した具体例のように、第2n側電極膜7bよりも第1n側電極膜7aをp側電極4により近づけることにより、オーミックコンタクト領域となる第1n側電極膜7aの面積が小さくても、p側電極4との間で電流をより確実に流すことができる。
このように、第1n側電極膜7aは、n側電極7のp側電極2と対向する部分に設けることができる。
すなわち、通電時に電流が比較的集中する領域であるp側電極4に対向したn側電極7の一部をコンタクト抵抗の低い第1n側電極膜7aで形成することによって、必ずしもコンタクト抵抗が低くない高効率反射膜(第2n側電極膜7b)をn側電極7に形成することによる電気特性への影響を最小限に抑えることができる。
第2電極4からn側電極の第1n側電極膜7aへの電流経路を考えた際、第2電極4と第1n側電極膜7aの距離が最も短い領域に電流が集中する傾向にあるため、電界集中を緩和させるには、第2電極4と第1n側電極膜7aが対向する領域のうち、上記距離の最も短い領域をなるべく長く設計するほうが好ましい。
また、平面視した際、第2電極4と第1n側電極膜7aが対向する領域の長さは長ければ長いほど、第2電極4と第1n側電極膜7aへの電流経路が増えるため、電界集中が緩和され、第2電極4の劣化が抑えられる。これらの効果を考慮して、第2n側電極膜7bと第1n側電極膜7aの面積と形状、n側電極7全体の面積と形状を適切に決めることができる。
本実施形態の半導体発光素子101によれば、n側電極7の一部を高効率反射膜で構成し、高反射特性を有する誘電体積層膜11を採用することにより、電極を形成した積層構造体1sの主面1aのほぼ全面を反射構造にすることができ、半導体層内で反射を繰り返している発光光のほとんどを、基板側へ反射させることができるため、マウント材に吸収されることがなくなり、光取り出し効率の向上が見込まれる。通電時に電流が比較的集中する領域であるp側電極4に対向したn側電極7の一部をコンタクト抵抗の低い電極構造で形成することによって、n側電極7に高効率反射膜を形成することによる電気特性への影響を最小限に抑えることができる。
なお、本実施形態に係る半導体発光素子101において、単結晶AlNバッファ上の結晶を用いれば、n型GaNコンタクト層に高濃度Siドーピングが可能となり、n側電極7のオーミックコンタクト領域となる第1n側電極膜7aとのコンタクト抵抗を大幅に減らすことができ、第1n側電極膜7aにおける電流広がりが抑制され、p側電極に近い領域に電流がより集中するため、n側電極7のオーミックコンタクト面積を減らし、高効率反射膜面積を増やした設計が可能となる上に結晶欠陥低減により通常は効率が低下する400nmより短波長域でも高い発光効率が実現できる。
また、サファイア基板上での結晶型の差異を緩和するために、非晶質または多結晶のAlN層を設けた場合には、バッファ層自体が光の吸収体となるため、発光素子としての光の取り出し効率が低下してしまうが、これに対して、サファイア基板10上に、高炭素濃度単結晶AlNバッファ層、高純度単結晶AlNバッファ層を介して、p型の第1半導体層1、発光層3及びn型の第2半導体層が形成されることにより、バッファ層は光の吸収体とはなりにくく、結晶欠陥も大幅に減らせることから、結晶内における吸収体を大幅に減らすことができる。この場合、発光した光は結晶内で何度も反射を繰り返すことが可能となり、横方向への光の取り出し効率を上げるとともに、n側電極7の高効率反射領域へ効率良く光を反射させることが可能となる。これらの効果により、発光強度の向上、高いスループット、低コストを実現することができる。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の変形例を示す模式的平面図である。
図3に表したように、本発明の第1の実施形態に係る変形例の半導体発光素子101aにおいては、n側電極7は、p側電極4に取り囲まれ、4方に延出した部分を有する。
このようなn側電極7のうちで、4方に延出した部分と、p側電極4に対向する部分と、を、オーミックコンタクト領域となる第1n側電極膜7aにより形成する。また、n側電極7の中央部は、高反射率の第2n側電極膜7bにより形成する。
このような構成を有する半導体発光素子101aによれば、p側電極4と対向した部分においてオーミックコンタクトを確保し、電流を効率良く素子の全体に亘って均一に流すとともに、n側電極7の中央部において、ワイヤボンディングやバンプのための領域を確保し、この部分において高い反射率で光を反射させることができる。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の変形例を示す模式的平面図である。
図4に表したように、本発明の第1の実施形態に係る別に変形例の半導体発光素子101bにおいては、n側電極7のうちのワイヤボンディングやバンプのための領域は、素子の隅部に設けられている。そして、n側電極7は、p側電極4の中に割り込むようにして4方に延出した部分を有する。
このような構成を有するn側電極7のうちで、p側電極4の中で延出した部分を第1n側電極膜7aにより形成し、ワイヤボンディングやバンプのための隅の部分は、第2n側電極膜7bにより形成する。
このような構成を有する半導体発光素子101bによれば、素子の全体に亘り電流を効率良く均一に流すことができるとともに、発光層から放出された光を第2n側電極膜7bにおいて高い反射率で反射させ取り出すことができる。
図1、図3及び図4に例示したように、半導体発光素子の外部からp側電極4へ注入され、半導体層を通ってn側電極7まで流れてきた電流を、半導体発光素子の外部へ取り出すためのn側電極領域は、半導体発光素子と外部端子との接触のためにワイヤボンディングやバンプを形成する関係上、広く設計せざるを得ない。ただし、その領域全体でオーミック特性を有する必要はなく、その大半の領域は高効率反射特性を有するn側電極7でも良い。
この時、半導体発光素子101bのように、この領域以外でオーミック特性を有するn側電極領域を確保できるようであれば、半導体発光素子の外部へ取り出すための領域全てを高効率反射膜に変えることもできる。
なお、n側電極7においてボンディングに必要なパッドの大きさは、例えば、50μm〜150μm程度である。
一方、誘電体積層膜11は、組み合わせた誘電体の屈折率比が大きいほど、また、異なる屈折率を有する層の組み合わせ数(ペア数)が多いほど、反射率が高く、膜厚や波長に対するマージンも広くなる。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、GaNから誘電体積層膜11へ垂直に入射した発光光の反射率に関するシミュレーション結果を例示しており、同図(a)は、反射率の屈折率比依存性を例示しており、同図(b)は、反射率のペア数依存性を例示している。なお、同図(a)の横軸は、誘電体積層膜11における2種類の組み合わせの誘電体の屈折率比を表し、同図(b)の横軸は、誘電体積層膜11における2種類の組み合わせの誘電体のペア数を表し、同図(a)、(b)の縦軸は、反射率を表す。
なお、本シミュレーションにおいては、既に説明した半導体発光素子101の誘電体積層膜11の材料の物性値を用いて、各パラメータを変化させている。
図5(a)、(b)に表したように、屈折率比及びペア数のいずれの条件においても、条件を適切に選ぶことにより、反射率は100%に近い値が得られる。
例えば、図5(a)に表したように、反射率が95%以上とするには、屈折率比は1.4以上が望ましい。
また、図5(b)に表したように、反射率が95%以上とするには、ペア数は3以上とすることが望ましい。
なお、GaNから誘電体積層膜11に対する入射角が垂直から傾くほど、反射率は増加し、あるしきい角度で全反射する。
これらの性質から、設計条件を選べば金属反射膜よりも高性能な反射膜として機能する誘電体積層膜11を採用することにより、光取り出し効率の向上が見込まれる。本実施形態に係る半導体発光素子101においては、誘電体積層膜11の設計反射率は、99.7%である。
誘電体積層膜11には、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、セリウム(Ce)、亜鉛(Zn)などの酸化物、窒化物又は酸窒化物などを用いることができる。積層する誘電体膜の総膜厚は、絶縁性確保のために50nm以上、誘電体膜のクラック抑制のために1000nm以下とすることが好ましい。特に、素子動作時の発熱による異種材料間の応力を押さえるため、誘電体積層膜11の半導体層側の第1層目は、半導体層に近い線膨張係数を持つ材料が好ましい。例えば、半導体層がGaNである場合は、誘電体積層膜11の半導体層側の第1層目は、例えばSiNを用いることが好ましい。
誘電体積層膜11は、異なる種類の誘電体を積層することにより、内部に掛かる応力を緩和させることができるため、総膜厚が増加しても、単層の場合と比較すると割れやひびなどの破損は起きにくく、且つ半導体層に対する応力も緩和させることができるため、信頼性が向上する。特に、引っ張り応力と圧縮応力を有する誘電体を積層することにより、応力緩和効果は促進される。
以上のように、本実施形態に係る半導体発光素子101においては、n側電極7の一部を高反射率の第2n側電極膜7bにより形成し、さらに、高反射特性を有する誘電体積層膜11を採用することにより、電極を形成した半導体層の主面1aのほぼ全面を反射構造にすることができる。これにより、フリップチップマウントを行った際は、半導体層内で反射を繰り返している発光光のほとんどを、基板側へ反射させることができるため、マウント材に吸収されることがなくなり、光取り出し効率の向上が見込まれる。
本実施形態に係る半導体発光素子101は、少なくとも、n型の半導体層とp型の半導体層、及びそれらに挟まれた発光層を含む半導体層からなり、半導体層の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、AlxGa1−x−yInyN(x≧0、y≧0、x+y≦1)等の窒化ガリウム系化合物半導体が用いられる。これらの半導体層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、有機金属気相成長法、分子線エピタキシャル成長法等の技術を用いることができる。
また、本実施形態に係る半導体発光素子において、基板材料は、特に限定されるものではないが、サファイア、SiC、GaN、GaAs、Siなどの一般的な基板を用いることができる。基板は最終的に取り除いても良い。
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図6に表したように、本発明に係る第2の実施形態に係る半導体発光素子102においては、n側電極7の上にn側パッド(第1パッド)75が設けられ、p側電極4は、p側半導体2の上に設けられ、高効率反射膜となる第2p側電極膜(第4金属膜)4bと、第2p側電極膜4bの上に設けられ、必ずしも高効率反射特性を必要としない金属からなる第1p側電極膜(第3金属膜)4aと、を有している。その他の構成については、図1に例示した半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
すなわち、p側電極4は、第1p側電極膜4aと、前記第1p側電極膜4aと前記第2半導体層2との間に設けられ、前記発光層3から放出される光に対する反射率が前記第1p側電極膜4aよりも高い、第2p側電極膜4bと、を有する。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子102においては、n側電極7の上にn側パッド75が設けられているので、ボンディングやバンプ形成に必要な電極面積が得られ、また、電気的特性が安定し、さらに、第2n側電極膜7bの自然酸化を防ぎ、素子寿命が改善される。
そして、p側電極4の、p型半導体層2の側に、高効率反射膜の第2p側電極膜4bが設けられているので反射率がさらに向上する。そして、第2p側電極膜4bの上には、高効率反射特性を必要とせず、第2p側電極膜4bを外気から遮断することで第2p側電極膜4bの酸化や硫化を防ぐことができる第1p側電極膜4aを設けることで、高い信頼性を得ることができる。
第2p側電極膜4bは、銀、アルミニウム、及び、そのいずれかを含む合金の少なくともいずれかを含むことができる。すなわち、第2p側電極膜4bは、銀やアルミニウム単層でも良いし、銀またはアルミニウムとそれ以外の金属とを含む合金層であっても良い。
そして、前記第2p側電極膜4bは、前記第2n側電極膜7bと同じ材料で構成されることができる。
また、第1p側電極膜4aは、銀及びアルミニウムを含まない金属から構成されており、第2p側電極膜4bと電気的に接触している。第1p側電極膜4aの材料は、特に限定されるものではなく、金属の単層膜や多層膜、金属の合金層、導電性酸化物膜の単層膜や多層膜、これらの組み合わせであっても良い。第1p側電極膜4aの膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば100nmから1000nmの間で選ぶことができる。
通常の金属単層膜の可視光帯域に対する反射効率は、400nm以下の紫外域では波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、銀とアルミニウムは、370nm以上400nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射効率特性を有する。そのため、紫外発光の半導体発光素子で、第2p側電極膜4bが銀またはアルミニウム合金の場合、半導体界面側の第2p側電極膜4bは、銀及びアルミニウムの少なくともいずれかの成分比が大きいほうが望ましい。第2p側電極膜4bの膜厚は、光に対する反射効率を確保するため、100nm以上であることが好ましい。
第2p側電極膜4bに、銀、アルミニウム、及び、そのいずれかを含む合金の少なくともいずれか用いた際、第2p側電極膜4bとn側電極7との距離が離れるほど、銀またはアルミニウム、又はそのいずれかの合金からのマイグレーションによる絶縁不良及び耐圧不良のリスクが減少する。素子の中心付近におけるn側電極7に対向したp側電極4は、露光精度などのプロセス条件が許す限り、p型コンタクト層の端まで形成したほうが光取り出し効率が高くなる。第2p側電極膜4bからn側電極7の第1n側電極膜7aへの電流経路を考えた際、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aの距離が最も短い領域に電流が集中する傾向にあるため、電界集中を緩和させるには、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aとが対向する領域のうち、上記距離の最も短い領域をなるべく長く設計するほうが好ましい。
また、平面視した際、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aとが対向する領域の長さは長ければ長いほど、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aへの電流経路が増えるため、電界集中が緩和され、第2p側電極膜4bの劣化が抑えられる。これらの効果を考慮して、第2p側電極膜4bの面積と形状、及び、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aの距離は、適切に決めることができる。
一方、n側電極7のパッドは、第2n側電極膜7bを外気から遮断するため、第2n側電極膜7b全体を覆っているほうが好ましい。また、少なくとも一部で第1n側電極膜7aと電気的に接触している。パッドの膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば100nmから5000nmの間で選ぶことができる。n側パッド75を形成することで、ボンディングやバンプ形成に必要な電極面積が得られるほか、第2n側電極膜7bの自然酸化を防ぎ、素子寿命を改善することができる。
次に、本実施形態に係る半導体発光素子102における半導体層上のn側電極7、p側電極4及び誘電体積層膜11の形成方法の一例について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を例示する工程順模式的断面図である。
図8は、図7に続く工程順模式的断面図である。
まず、図7(a)に表したように、p型半導体層2の一部の領域において、上記のn型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いたドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図7(b)に表したように、オーミック特性を有するn側電極領域、すなわち、第1n側電極膜7aの形成を行う。すなわち、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを、露出したn型コンタクト層上に形成し、例えば真空蒸着装置を用いてオーミックコンタクト領域となる、例えば、Ti/Al/Ni/Auからなる第1n側電極膜7aを500nmの膜厚で形成し、550℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
次に、図7(c)に表したように、p側電極4を形成するため、パターニングされたリフトオフ用レジストをp型コンタクト層上に形成し、例えば真空蒸着装置を用いて第2p側電極膜4bとなる膜として、例えば、Agを200nmの膜厚で形成し、リフトオフ後に、350℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
続いて、図8(a)に表したように、高効率反射特性を有するn側電極領域を形成する。すなわち、オーミック特性を有するn側電極領域である第1n側電極膜7aの、p側電極4とは反対側のnコンタクト層上の領域が開口されたリフトオフ用レジストを形成する(図示しない)。
ここで、パターンの位置合わせ精度を考慮して、p側電極4に対向する側のオーミック特性を有するn側電極である第1n側電極膜7aの上の一部を開口しても良い。
逆に、オーミック特性を有するn側電極、すなわち第1n側電極膜7aの上に、高効率反射特性を有するn側電極、すなわち、第2n側電極膜7bが乗り上げないよう、両電極がパターンの位置合わせ精度を考慮した分わずかに離れるように設計しても良い。
また、オーミック特性を有するn側電極、すなわち、第1n側電極膜7aの上の一部、又は、全体を覆うように、高効率反射特性を有するn側電極、すなわち、第2n側電極膜7bが形成されるように設計しても良い。
そして、真空蒸着装置を用いて、例えば、Al(厚み0.2〜0.5μm程度)/Ni(厚み10〜50nm程度)/Au(厚み0.05〜1μm程度)の積層膜を形成し、その後リフトオフして、高効率反射膜となる第2n側電極膜7bが形成される。この積層膜において、Alは高効率反射膜として機能する。また、Auは、高効率反射膜が素子作製工程中に自然酸化や薬品処理などによって劣化しないように保護する役割を果たしている。そして、AlとAuとの密着性改善や合金化防止のため、間にNiを挟んでいる。
次に、図8(b)に表したように、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、Agが形成された領域に、第1p側電極膜4aとして、例えば、Pt/Auの積層膜を500nmの膜厚で形成し、p側電極4を形成する。
さらに、図8(c)に表したように、同じく図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、高効率反射特性を有するn側電極7の第2n側電極膜7bとオーミック特性を有するn側電極7の第1n側電極膜7aとを覆うように、例えば、Ti/Pt/Auの積層膜を500nmの厚さで形成し、n側パッド75を形成する。
そして、例えば真空蒸着装置を用いて、例えば、SiO2とTiO2の積層膜の組み合わせを5組み、すなわち、合計10層の誘電体積層膜、を半導体上に形成する。SiO2膜及びTiO2膜のそれぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をnとし、発光層3からの発光波長をλとした時、λ/(4n)の厚さに設定される。
さらに、その上に、図示しないパターニングされたレジストを形成し、フッ化アンモン処理で、p側電極4とn側電極7とが露出するように誘電体積層膜を除去し、図6に例示した誘電体積層膜11が形成される。
次いで、劈開若しくはダイヤモンドブレード等により切断し、個別のLED素子とすることで、本実施形態に係る本実施形態に係る半導体発光素子102が作製される。
第1及び第2の本実施形態に係る半導体発光素子101、102においては、n側電極7を構成するオーミック特性を有する第1n側電極膜7aの領域が広いほど、オーミックコンタクト領域が増えるため動作電圧は減少する傾向にある。ただし、動作時の電流経路はp側電極4に対向した領域のn側電極、すなわち第1n側電極膜7aに集中する傾向にあるため、第1n側電極膜7aの領域がある程度広くなると、減少率が飽和する。
一方、n側電極7を構成するオーミック特性を有する第1n側電極膜7aの領域が狭いほど、高効率反射特性を有するn側電極、すなわち第2n側電極膜7bの領域を広く設計できるため、光取り出し効率の向上が見込まれる。
また、オーミック特性を有する第1n側電極膜7aの領域が狭いほど、半導体発光素子内で反射されている光が吸収される確率が下がるため、光取り出し効率の向上が見込まれる。
これらを考慮して、オーミック特性を有するn側電極の第1n側電極膜7aと、高効率反射特性を有するn側電極の第2n側電極膜7bと、の面積比及び形状を適宜決めることができる。
すなわち、本実施形態に係る半導体発光素子102においては、通電時に電流が比較的集中する領域であるp側電極4の第2p側電極膜4bに対向したn側電極7の一部をコンタクト抵抗の低い第2p側電極膜で形成することによって、必ずしもコンタクト抵抗が低くない高効率反射膜をn側電極7に形成することによる電気特性への影響を最小限に抑えることができる。
第2p側電極膜4bからn側電極の第1n側電極膜7aへの電流経路を考えた際、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aの距離が最も短い領域に電流が集中する傾向にあるため、電界集中を緩和させるには、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aが対向する領域のうち、上記距離の最も短い領域をなるべく長く設計するほうが好ましい。
また、平面視した際、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aが対向する領域の長さは長ければ長いほど、第2p側電極膜4bと第1n側電極膜7aへの電流経路が増えるため、電界集中が緩和され、第2p側電極膜4bの劣化が抑えられる。これらの効果を考慮して、第2n側電極膜7bと第1n側電極膜7aの面積と形状、n側電極7全体の面積と形状を自由に決めることができる。
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9に表したように、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子103aにおいては、n型半導体層1と、第2n側電極膜7bと、の間に、n側透明電極(透明電極)7tが設けられている。これ以外は、第1及び第2の実施形態に係る半導体発光素子と同様とすることができるので説明を省略する。なお、同図においては、図1に例示した基板10、積層構造体1s及びp側電極4は省略されている。
n側透明電極7tは、ニッケル、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛の少なくとも1つを含み、n型コンタクト層及び第2n側電極膜7bと電気的に接触している。透明電極とは、透過させる発光波長よりも大きなバンドギャップを持つ物質か、透過させる発光波長における吸収係数の逆数よりも膜厚を十分薄くした金属膜を指す。
n側透明電極7tは、半導体発光素子内で反射された発光層3からの光を透過させて、第2n側電極膜7bで反射させる役割と、n型半導体層1と良好な電気特性で接触する役割と、第1n側電極膜7aで用いられる銀やアルミニウムがn型半導体層1と反応又はn型半導体層1内に拡散することを防ぐ役割と、をしているため、第2n側電極膜7bと実質的に同じ形状であることが好ましい。n側透明電極7tの膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば1nmから500nmの間で選ぶことができる。
このような構成を有する本実施形態に係る半導体発光素子103aは、n側電極7において透明電極を設けることにより、反射特性と電気特性を両立させ、且つ高い信頼性を得ることができる。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、本発明の第3の実施形態に係る別の半導体発光素子103bにおいては、p型半導体層2とp側電極4との間に、p側透明電極(透明電極)4tが設けられている。これ以外は、第1及び第2の実施形態に係る半導体発光素子と同様とすることができるので説明を省略する。なお、同図においては、図1に例示した基板10及びn側電極7は省略されている。
図10に例示した具体例では、p側電極4が第2p側電極膜4bを有する場合であり、この場合、p型半導体層2と第2p側電極膜4bとの間に、p側透明電極4tが設けられる。
また、図10に例示した具体例では、p側透明電極4tは、p側電極4(第2p側電極膜4b)の全面に渡って設けられているが、本発明はこれに限らず、p側電極4(第2p側電極膜4b)の少なくとも一部と、p型半導体層2と、の間に、p側透明電極7tを設けることができる。
p側透明電極4tは、ニッケル、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛の少なくとも1つを含み、p型コンタクト層とp側電極4(第2p側電極膜4b)と電気的に接触している。
p側透明電極4tは、発光層3からの光を透過させて、p側電極4(第2p側電極膜4b)で反射させる役割と、p型半導体層2と良好な電気特性で接触する役割と、第2p側電極膜4bで用いられる銀やアルミニウムがp型半導体層2と反応又はp型半導体層2内に拡散することを防ぐ役割と、をしているため、p側電極4(第2p側電極膜4b)と実質的に同じ形状であることが好ましい。p側透明電極4tの膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば1nmから500nmの間で選ぶことができる。
このような構成を有する本実施形態に係る半導体発光素子103bは、p側電極4において透明電極を設けることにより、反射特性と電気特性を両立させ、且つ高い信頼性を得ることができる。
なお、本実施形態に係る半導体発光素子において、n側電極7とp側電極4の両方に透明電極を設けても良い。これにより、さらに光出力が高く、電気特性の安定した信頼性の高い半導体発光素子が実現できる。
すなわち、本実施形態に係る半導体発光素子は、n型半導体層1とn側電極7との間、及び、p型半導体層2とp側電極4との間の少なくともいずれかの、少なくとも一部に設けられた透明電極をさらに備えることができる。
そして、既に説明した半導体発光素子101、101a、101b、102、のいずれかにおいて、この透明電極(n側透明電極7t及びp側透明電極4tの少なくともいずれか)を設けることができる。
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、本発明の第4の実施形態に係る半導体発光装置104においては、発光層3を挟む半導体層、すなわち、積層構造体1sが斜面であるテーパ形状部1tを有し、それに伴い、誘電体積層膜11がテーパ形状部1tを斜めに被覆している。すなわち、積層構造体1sは、第1及び第2半導体層1、2の層面に対して傾斜したテーパ形状部1tを有している。
これ以外は、第1の実施形態に係る半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
n型半導体層1、発光層3及びp型半導体層2の積層構造体1sにおいて、同じ主面1aの側にn側電極7とp側電極4とを設けるために、p型半導体層2及び発光層3と、n型半導体層1との間には段差が設けられる。この時、この段差部分にも誘電体積層膜11が設けられるが、誘電体積層膜11の厚さは、この段差部分で薄くなり、これにより誘電体積層膜11の反射特性が影響を受ける。
この時、本実施形態に係る半導体発光素子104においては、段差部分をテーパ形状とすることで、この影響を可及的に抑制し、高い反射率を維持できる。
すなわち、発光層3を挟む半導体層断面に入射した発光光は、半導体層断面に垂直方向に形成された誘電体積層膜11の膜厚の影響を受けるため、上記の段差部分で設計膜厚よりも薄い方向にずれた誘電体積層膜11の影響を受けることになる。
この時、段差部分をテーパ形状とすることで、この影響を抑制し、高い反射率を維持できる。テーパの角度は小さいほど、すなわちテーパ形状部1tの斜面が緩いほど、半導体層断面における誘電体積層膜は設計どおりに機能する。
図12は、本発明の第4の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、テーパの角度と誘電体積層膜11の反射率の関係の計算結果を例示しており、横軸はテーパの角度を表し、縦軸は誘電体積層膜11の反射率を表す。ここで、テーパの角度は、積層構造体1sの主面1aとテーパ形状部1tの面とのなす角度であり、テーパの角度が小さいほど、テーパ形状部1tの傾斜が緩やかな斜面となり、テーパの角度が90度の時は、n型半導体層1及びp型半導体層2の段差部は階段状の側面を有する。そして、同図は、第1の実施形態に係る半導体発光素子101で説明した設計条件を用いた計算結果を例示している。
図12に表したように、テーパの角度が約40度以下の場合は、高い反射特性を示しているが、テーパの角度が40度よりも大きくなると、誘電体積層膜11の膜厚が薄すぎるため、設計どおりの高い反射特性を示さなくなる。
なお、このテーパの角度に対する高い反射特性のマージンは、積層する2種類の誘電体の屈折率比が大きいほど広くなる。
また、テーパ形状部1tを設けることで、発光層3を挟む半導体層断面における誘電体積層膜11の段切れを防ぐことができる。
テーパ形状部1tのテーパの角度は、半導体発光素子の素子面積や発光特性、加工精度などに基づいて適切に定めることができる。
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図15は、図14に続く工程順模式的断面図である。
図16は、図15に続く工程順模式的断面図である。
図13に表したように、本発明の第5の実施形態に係る半導体発光素子105においては、第2p側電極膜4bから露出したp型半導体層2(p型コンタクト層)の上に、第1p側電極膜4aが接触しており、これらの電極と接触している以外のp型コンタクト層上の領域に、誘電体膜11aが設けられている。そして、第2p側電極膜4bを覆い、誘電体膜11aの一部と接して、第1p側電極膜4aが設けられている。そして、誘電体膜11aを覆い、第1p側電極膜4a、第1n側電極膜7a及び第2n側電極膜7bの一部を露出するように、既に説明した誘電体積層膜11が設けられている。
すなわち、半導体発光素子105は、誘電体積層膜11と、n側電極7及びp側電極4から露出したn型半導体層1及びp型半導体層2の少なくとも一部と、の間に設けられた誘電体膜11aをさらに備える。
そして、前記誘電体膜11aは、誘電体積層膜11に覆われていない突出部を有し、この突出部の上に、n側電極7及びp側電極4の少なくともいずれかの一部が設けられている。本具体例においては、この突出部の上に、p側電極4の一部である第1p側電極膜4aが設けられ、突出部は第1p側電極膜4aにより被覆されている。
これ以外は、第2の実施形態に係る半導体発光素子102と同様とすることができるので説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光素子105においては、第1p側電極膜4aは、第2p側電極膜4bと、第2p側電極膜4b及び誘電体膜11aの間に露出したp型コンタクト層と、誘電体膜11aの一部と、を被覆している。
これにより、第2p側電極膜4bが第1p側電極膜4aで覆われることで、外気や誘電体膜11aから隔離されるため、水分やイオン不純物に晒されにくくなり、第2p側電極膜4bのマイグレーションや酸化、硫化反応を抑えることができる。
また、n側電極7に対向する側の第2p側電極膜4b端部のすぐ横に第1p側電極膜4aが形成され、第2p側電極膜4bのすぐ横に電流経路ができるため、第2p側電極膜4bへの電流集中が緩和される。
同時に、第2p側電極膜4b端部に対向する誘電体膜11a端部付近に、p型半導体層2と第1p側電極膜4aで挟まれた領域ができるため、誘電体膜11aを挟んでp型半導体層2と第1p側電極膜4aとの間に弱い電界がかかる。その結果、第2p側電極膜4bから誘電体膜11aにかけて、電界が徐々に弱くなる構造を作ることができるため、この領域における電界集中を緩和することができる。
さらに、製造工程に特別な工夫は必要なく、従来と同じ工程、工程数で形成できる。これらの効果により、半導体発光素子のリーク電流低減、絶縁特性向上、耐圧特性向上、発光強度の向上、寿命の増大、高いスループット、低コストを実現することができる。
第1p側電極膜4aとp型半導体層2の最上層となるp型コンタクト層の間の電気特性は、第2p側電極膜4bとp型コンタクト層の間よりもオーミック性が悪く、コンタクト抵抗が大きいほうが好ましい。これによって、第2p側電極膜4b直下に位置する発光層3に効率良く電流を注入することができ、第2p側電極膜4b直下から発光した光を高効率に基板側へ反射させることができるため、光取り出し効率を向上させることができる。
既に説明したように、第1p側電極膜4aは、第2p側電極膜4bと、第2p側電極膜4b及び誘電体膜11aの間に露出したp型コンタクト層と、誘電体膜11aの一部と、を被覆しているが、特に、n側電極7に対向する側の誘電体膜11aは全域に渡って被覆していることが好ましい。
そして、第1p側電極膜4aが誘電体膜11a上を被覆する長さは、製造工程上のパターン合わせ精度、反射膜として機能する第2p側電極膜4bの面積確保を考慮して、0.5μmから10μmの間が好ましい。
以下、本実施形態に係る半導体発光素子105の製造方法の具体例について説明する。 まず、図14(a)に表したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いたドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図14(b)に示すように、熱CVD装置を用いて、誘電体膜11aとなるSiO2を100nmの膜厚で半導体上に形成する。
次に、図14(c)に表したように、オーミック特性を有するn側電極領域、すなわち、第1n側電極膜7aの形成を行う。すなわち、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、露出したn型コンタクト層上のSiO2膜の一部をフッ化アンモン処理で取り除く。SiO2膜が取り除かれた領域に、真空蒸着装置を用いてオーミックコンタクト領域となる、例えば、Ti/Al/Ni/Auからなる第1n側電極膜7aを500nmの膜厚で形成し、550℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
続いて、p側電極4を形成するため、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、p型コンタクト層上のSiO2膜の一部をフッ化アンモン処理で取り除く。
その際、後述する第2p側電極膜4bのAgと、誘電体膜11aのSiO2膜との間に、p型コンタクト層が露出するよう、フッ化アンモンの処理時間を調整する。具体的な一例では、エッチングレートが400nm/minの場合、Agを形成する領域のSiO2膜を取り除くための時間と、上記領域のすぐ脇に位置するp型コンタクト層を1μm幅で露出させるオーバーエッチングの時間の合計は、3分程度となる。
SiO2膜が取り除かれた領域に、真空蒸着装置を用いて第2p側電極膜4bとして、例えば、Agを200nmの膜厚で形成し、リフトオフ後に350℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
次に、図15(a)に表したように、高効率反射特性を有するn側電極領域を形成する。すなわち、オーミック特性を有するn側電極領域である第1n側電極膜7aの、p側電極4とは反対側のn型コンタクト層上の領域が開口されたリフトオフ用レジストを形成する。n型コンタクト層上のSiO2膜の一部をフッ化アンモン処理で取り除き、真空蒸着装置を用いて、例えば、Al/Ni/Auを形成し、その後リフトオフして、高効率反射膜となる第2n側電極膜7bが形成される。
次に、図15(b)に表したように、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、Agが形成された領域全体と、Agのすぐ横にある表面に露出されたp型コンタクト層の領域全体と、誘電体膜11aのSiO2膜の一部を被覆するように、第1p側電極膜4aとして、例えば、Pt/Auを500nmの膜厚で形成し、p側電極4を形成する。
さらに、図15(c)に表したように、図示しない同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、高効率反射特性を有するn側電極7の第2n側電極膜7bと、オーミック特性を有するn側電極7の第1n側電極膜7aと、を覆うように、例えば、Ti/Pt/Auを500nmで形成し、n側パッド75を形成する。
そして、図16に表したように、真空蒸着装置を用いて、誘電体積層膜11となるSiO2とTiO2の組み合わせを5ペア、合計10層を半導体上に形成する。それぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をn、発光層3からの発光波長をλとして、λ/(4n)と表される。その上にパターニングされたレジストを形成し、フッ化アンモン処理でp側電極4とn側電極7が露出するように誘電体を除去し、誘電体積層膜11を形成する。誘電体積層膜11は、p側電極4とn側電極7が露出するようにリフトオフ法で形成しても良い。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子105が作製できる。
本実施形態に係る半導体発光素子105においては、第1n側電極膜7a及び第2p側電極膜4bを形成する前に誘電体膜11aを半導体層上に形成できる構成なので、電極形成工程で電極と半導体層の界面に付着するコンタミネーションを大幅に減らすことができるため、信頼性や歩留り、電気特性、光学特性を向上させることができる。
なお、半導体発光素子105において、第1p側電極膜4aのp型コンタクト層に接触する側は、第2p側電極膜4bの保護膜や発光光に対する反射膜として機能するように、耐環境性が高く且つ比較的反射率の高い白金(Pt)やロジウム(Rh)を用いることが好ましい。
第1p側電極膜4aが誘電体膜11aを被覆する長さが大きい場合は、誘電体膜11aを介した電界の緩和構造を得る上で有利であるが、n側電極7とショートする危険が高くなる。一方、短い場合は、n側電極7とショートする危険は低くなる。
誘電体膜11aによる、誘電体積層膜11の反射率への影響はほとんどなく、誘電体積層膜11において異なる屈折率の誘電体が複数ペア積層されていれば、設計反射率は十分高められる。本実施形態に係る半導体発光素子105において、誘電体膜11aと誘電体積層膜11とが重ね合わさった領域の設計反射率は、例えば99.5%である。
なお、第2n側電極膜7bは、SiO2膜を除去せずに誘電体膜11aの上に形成しても良い。
(第6の実施形態)
図17は、本発明の第6の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図18は、本発明の第6の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図19は、図18に続く工程順模式的断面図である。
図17に表したように、本発明の第6の実施形態に係る半導体発光素子106の構造は、第2の実施形態に係る半導体発光素子102の構成と同様である。ただし、本実施形態に係る半導体発光素子106においては、前記第2p側電極膜4bは、前記第2n側電極膜7bと同じ材料で構成されている。
この場合、p側電極4の高効率反射特性の第2p側電極膜4bと、高効率反射特性の第2n側電極膜7bと、は同時に形成することができる。
以下、本実施形態に係る半導体発光素子106の製造方法について説明する。
まず、図18(a)に表したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いたドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図18(b)に表したように、オーミック特性を有するn側電極領域の第1n側電極膜7aを形成するため、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、n型コンタクト層上に、例えば、Ti/Al/Ni/Auからなる第1n側電極膜7aを500nmの膜厚で形成し、550℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
続いて、p側電極4と高効率反射特性を有するn側電極領域を同時に形成する。
すなわち、オーミック特性を有するn側電極領域である第1n側電極膜7aに対し、pコンタクト層とは反対側のnコンタクト層上の領域とp型コンタクト層の一部が開口されたリフトオフ用レジストを形成する。
ここで、パターンの位置合わせ精度を考慮して、pコンタクト層に対向する側のオーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上の一部が開口しても良い。
逆に、オーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上に、高効率反射特性を有するn側電極(第2n側電極膜7b)が乗り上げないよう、両電極がパターンの位置合わせ精度を考慮した分わずかに離れるように設計しても良い。
また、オーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上の一部、又は、全体を覆うように、高効率反射特性を有するn側電極(第2n側電極膜7b)が形成されるように設計しても良い。
そして、図18(c)に表したように、真空蒸着装置を用いて、例えば、Agからなる第2p側電極膜4b及び第2n側電極膜7bを200nmの膜厚で同時に形成し、350℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
さらに、図19(a)に表したように、同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、第2p側電極膜4bのAgが形成された領域に、例えば、Pt/Auを500nmの膜厚で形成し、p側電極4を形成する。
次に、図19(b)に表したように、同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、高効率反射特性を有する第2n側電極膜7bとオーミック特性を有する第1n側電極膜7aの一部を覆うように、例えば、Ti/Pt/Auを500nmで形成し、n側パッド75を形成する。
そして、図19(c)に表したように、真空蒸着装置を用いて、SiO2とTiO2の組み合わせを5ペア、合計10層を半導体上に形成する。それぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をn、発光層3からの発光波長をλとして、λ/(4n)と表される。その上に、図示しないパターニングされたレジストを形成し、フッ化アンモン処理でp側電極4とn側電極7が露出するように誘電体を除去し、誘電体積層膜11を形成する。誘電体積層膜11は、p側電極4とn側電極7が露出するようにリフトオフ法で形成しても良い。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子106が作製できる。
本実施形態に係る半導体発光素子106においては、p側電極4の高効率反射特性の第2p側電極膜4bと、高効率反射特性の第2n側電極膜7bと、が同じ材料で構成され、そして、同時に形成されることを可能にしている。
これにより、工程数を減らすことができ、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出すことができ、高いスループット、低コストの半導体発光素子及びその製造方法を提供することができる。
(第7の実施形態)
図20は、本発明の第7の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図21は、本発明の第7の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図22は、図21に続く工程順模式的断面図である。
図20に表したように、本発明の第7の実施形態に係る半導体発光素子107は、第3の実施形態に係る半導体装置103bの具体例である。すなわち、半導体発光素子106は、第2の実施形態に係る半導体発光素子102において、p側電極4とp型半導体層2との間にp側透明電極4tが設けられたものである。これ以外は、半導体発光素子102と同様なので説明を省略する。また、p側透明電極4tの構成、及び、その効果については、第3の実施形態に関して説明したので説明を省略する。
また、半導体発光素子107においては、第2p側電極膜4bと、高効率反射特性の第2n側電極膜7bとが同時に形成されるものである。
以下、本実施形態に係る半導体発光素子107の製造方法について説明する。
まず、図21(a)に示したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いてドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図21(b)に表したように、オーミック特性を有するn側電極領域の第1n側電極膜7aを形成するため、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、n型コンタクト層上に、例えば、Ti/Al/Ni/Auからなる第1n側電極膜7aを500nmの膜厚で形成し、550℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
図21(c)に表したように、p側電極4のp側透明電極4tを形成するため、図示しないパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、p型コンタクト層上に、真空蒸着装置を用いて、p側透明電極4tとなる、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)を100nmの膜厚で形成する。
p側電極4及びn側電極7の高効率反射領域(第2p側電極膜4b及び第2n側電極膜7b)、を同時に形成するため、オーミック特性を有するn側電極領域である第1n側電極膜7aに対し、pコンタクト層上の透明電極4tとは反対側のnコンタクト層上の領域と透明電極4t上が開口されたリフトオフ用レジストを形成する。
ここで、パターンの位置合わせ精度を考慮して、pコンタクト層に対向する側のオーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上の一部が開口しても良い。
逆に、オーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上に高効率反射特性を有するn側電極(第2n側電極膜7b)が乗り上げないよう、両電極がパターンの位置合わせ精度を考慮した分わずかに離れるように設計しても良い。
また、オーミック特性を有するn側電極(第1n側電極膜7a)の上の一部又は全体を覆うように、高効率反射特性を有するn側電極(第2n側電極膜7b)が形成されるように設計しても良い。
そして、図22(a)に表したように、真空蒸着装置を用いて第2p側電極膜4b及び第2n側電極膜7bとして、例えば、Al/Ni/Auを300nmの膜厚で形成する。
次に、図22(b)に表したように、同じくパターニングされたリフトオフ用レジストを半導体層上に形成し、第2p側電極膜4bとn側電極7の高効率反射領域全体とオーミック特性を有するn側電極7の一部を覆うように、例えば、Ti/Pt/Auを500nmの膜厚で形成し、第1p側電極膜4aとn側電極7のn側パッド75を形成する。
そして、図22(c)に表したように、真空蒸着装置を用いて、SiO2とTiO2の組み合わせを5ペア、合計10層を半導体上に形成する。それぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をn、発光層3からの発光波長をλとして、λ/(4n)と表される。その上にパターニングされたレジストを形成し、フッ化アンモン処理でp側電極4とn側電極7が露出するように誘電体を除去し、誘電体積層膜11を形成する。誘電体積層膜11は、p側電極4とn側電極7が露出するようにリフトオフ法で形成しても良い。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子107が作製できる。
本実施形態に係る半導体発光素子107においては、p側電極4及びn側電極7の高効率反射膜(第2p側電極膜4b及び第2n側電極膜7b)が同時形成されることができる。また、p側電極4の第1p側電極膜4aと、n側電極7のn側パッド75と、を同時形成することができる。
これにより、工程数を減らすことができ、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出すことができ、高いスループット、低コストの半導体発光素子及びその製造方法を提供することができる。
(第8の実施形態)
図23は、本発明の第8の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図24は、本発明の第8の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図25は、図24に続く工程順模式的断面図である。
図23に表したように、本発明の第8の実施形態に係る半導体発光素子108においては、第2の実施形態に係る半導体発光素子102において、第1n側電極膜7aとn側パッド75とが兼用される。これ以外は、半導体発光素子102と同様とすることができるので説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光素子108においては、第2p側電極膜4bと高効率反射特性の第2n側電極膜7bとが同時に形成され、また、第1p側電極膜4aと第1n側電極膜7aとn側パッド75とが同時に形成されることができる。
以下、本実施形態に係る半導体発光素子108の製造方法について説明する。
まず、図24(a)に示したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いてドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図24(b)に表したように、p側電極4とn側電極7の高効率反射領域を同時に形成するため、n型コンタクト層とp型コンタクト層の一部が開口されたリフトオフ用レジストを形成し、真空蒸着装置を用いて第2p側電極膜4b及び第2n側電極膜7bとして、例えば、Agを200nmの膜厚で同時に形成し、350℃の窒素雰囲気でシンター処理を行う。
さらに、図24(c)に表したように、p側電極4の第1p側電極膜4a及びオーミック特性を有するn側電極7の第1n側電極膜7a兼n側電極7のn側パッド75を同時に形成するため、高効率反射特性を有するn側電極領域である第2n側電極膜7bに対し、pコンタクト層と対向する側のnコンタクト層上の領域、第2n側電極膜7b全体及び第2p側電極膜4b上が開口されたリフトオフ用レジストを形成する。真空蒸着装置を用いて第1p側電極膜4aと第1n側電極膜7a兼n側パッド75として、例えば、Ti/Pt/Auを500nmの膜厚で形成する。
そして、図25に表したように、真空蒸着装置を用いて、SiO2とTiO2の組み合わせを5ペア、合計10層を半導体上に形成する。それぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をn、発光層3からの発光波長をλとして、λ/(4n)と表される。その上にパターニングされたレジストを形成し、フッ化アンモン処理でp側電極4とn側電極7が露出するように誘電体を除去し、誘電体積層膜11を形成する。誘電体積層膜11は、p側電極4とn側電極7が露出するようにリフトオフ法で形成しても良い。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子108が作製できる。
本実施形態に係る半導体発光素子108においては、p側電極4と、n側電極7の高効率反射膜(第2n側電極膜7b)と、を同時に形成できる。また、p側電極4の第1p側電極膜4aと、n側電極7の第1n側電極膜7a兼n側パッド75と、を同時形成できる。
これにより、工程数を減らすことができ、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出すことができ、高いスループット、低コストの半導体発光素子及びその製造方法を提供することができる。
(第9の実施形態)
図26は、本発明の第9の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図26に表したように、本発明の第9の実施形態に係る半導体発光素子109においては、第1の実施形態に係る半導体発光素子101において、p側電極4の上にp側パッド45が設けられている。そして、n側電極7にn側パッド75が設けられている。これら以外は、第1の実施形態に係る半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
すなわち、半導体発光素子109においては、p側電極4の上の一部または全部を被覆するように、p側パッド45が設けられている。p側パッド45には、例えば、厚さ2000nmのAuの膜を用いることができる。
これにより、ボンダビリティが向上する。さらに、半導体発光素子の放熱性が改善できる。
なお、このp側パッド45は、金バンプとして使用することもできるし、Auの代わりにAuSnバンプを形成することもできる。
また、p側パッド45は、p側電極4の上の一部または全部の他、誘電体積層膜11の少なくとも一部を覆うように設けても良い。また、p側パッド45は、n側電極7の上に設けられるn側パッド745と同時に形成することもできる。
また、ワイヤボンディングのボンダビリティ向上、ボールボンダによる金バンプ形成時のダイシェア強度向上、フリップチップマウント等のためにp側電極4にp側パッド45を別途設けた場合、p側パッド45の膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば100nmから10000nmの間で選ぶことができる。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子109においては、p側パッド45(及びn側パッド75)を設けることで、製造工程におけるボンダビリティを向上し、放熱性を向上した、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出す半導体発光素子を提供することができる。
(第10の実施形態)
図27は、本発明の第10の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図27に表したように、本発明の第10の実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1の実施形態に係る半導体発光素子101において、p側電極4が、既に説明した第1p側電極膜4a及び第2p側電極膜4bを有し、さらに、第1p側電極膜4aと第2p側電極膜4bとの間に設けられ、第1p側電極膜4aを構成する材料が第2p側電極膜4bに拡散することを抑制する第3p側電極膜(第5金属膜)4cを有している。これ以外は、第1の実施形態に係る半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
第3p側電極膜4cは、第2p側電極膜4bと第1p側電極膜4aの間に設けられ、第1p側電極膜4aが第2p側電極膜4bへ拡散または反応するのを防ぐ機能と有する。第3p側電極膜4cには、銀と反応しない、または銀に積極的に拡散しない材料を用いることができる。
第3p側電極膜4cには、拡散防止層として使用可能な高融点金属、例えば、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)などの単層膜または積層膜を用いることができる。
第3p側電極膜4cには、第2p側電極膜4bに多少拡散しても問題がないように、仕事関数が高く、p−GaNコンタクト層とオーミック性が得られ易い金属として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)を用いることが、さらに好ましい。
第3p側電極膜4cの膜厚は、単層膜の場合は膜状態を保てる5nmから200nmの範囲であることが好ましい。積層膜の場合は、特に限定されるものではなく、例えば、10nmから10000nmの間で選ぶことができる。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110によれば、第3p側電極膜4cによって、第1p側電極膜4aと第2p側電極膜4bとの間の拡散や反応を抑制することができ、電気特性と信頼性がさらに高く、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出す半導体発光素子を提供することができる。
(第11の実施形態)
図28は、本発明の第11の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図28に表したように、本発明の第11の実施形態に係る半導体発光素子111においては、第4の実施形態に係る半導体発光素子104において、n型半導体層1もテーパ形状部1rを有している。そして、それに伴い、誘電体積層膜11は、積層構造体1sのテーパ形状部1t、及び、n型半導体層1のテーパ形状部1rを斜めに被覆している。これ以外は、半導体発光素子104と同様とすることができるので説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光素子111においては、発光層3で発光した光は、屈折率差の大きい半導体層−基板界面と、電極が形成された主面1aと、で反射を繰り返し、半導体層に閉じ込められ易い。一部の光は、素子端面から取り出されるが、サファイア基板上に作製した正方形または長方形の半導体発光素子は、4辺全てが劈開面ではないため、ブレーキングによって素子化されることにより素子端面形状の再現性が悪く、素子ごとの光取り出し効率、延いては光出力にばらつきが生じる。
この時、本実施形態に係る半導体発光素子111によれば、半導体層の素子端面側をウェットエッチングまたはドライエッチングで形成することによって、素子端面側における光の経路の再現性が良くなる。さらに、半導体層の素子端面側を誘電体積層膜11で覆うことによって発光光を基板側に反射させることで、効率良く光を取り出すことができる。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子111によれば、発光層で生じた光をさらに安定して効率良く外部に取り出す半導体発光素子を提供することができる。
(第12の実施形態)
図29は、本発明の第12の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図30は、本発明の第12の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図31は、図30に続く工程順模式的断面図である。
図29に表したように、本発明の第12の実施形態に係る半導体発光素子112においては、第1の実施形態に係る半導体発光素子101において、第5の実施形態で説明した誘電体膜11aが設けられ、さらに、第2の実施形態で説明したn側パッド75、及び、第9の実施形態で説明したp側パッド45、がさらに設けられている。ただし、誘電体膜11a、誘電体積層膜11、n側パッド75及びp側パッド45の形状に工夫がされ、後述するように、製造がより簡単になり、また、プロセス整合性が高い。
すなわち、半導体発光素子112は、誘電体積層膜11と、n側電極7及びp側電極4から露出したn型半導体層1及びp型半導体層2の少なくとも一部と、の間に設けられた誘電体膜11aをさらに備える。
そして、前記誘電体膜11aの一部は、前記誘電体積層膜11に覆われていない突出部を有し、突出部の上に、前記第1及び第2電極の少なくともいずれかと接続された導電膜の少なくとも一部、が設けられる。本具体例においては、突出部の上に、n側電極7と接続されているn側パッド75と、p側電極4と接続されているp側パッド45と、が設けられ、突出部は、n側電極7と接続されているn側パッド75と、p側電極4と接続されているp側パッド45と、により被覆されている。
これ以外は、半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
n側パッド75及びp側パッド45には、青色光や近紫外領域の光に対して反射率が高いRu、Pt、Pdよりなる群から選ばれた少なくとも1つを含むことができる。これにより、特に青色光や近紫外領域の光に対して反射率を高めた半導体発光素子が実現できる。ただし、本発明は、これに限らず、n側パッド75及びp側パッド45には、任意の導電材料を用いることができる。また、導電膜の積層膜を用いることもできる。
本実施形態に係る半導体発光素子112は、例えば以下のようにして製造される。
まず、図30(a)に表したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いたドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図30(b)に示すように、熱CVD装置を用いて、誘電体膜11aとなるSiO2を100nmの膜厚で半導体上に形成する。このように、熱CVD法を用いることで、積層構造体1sの段差の形状に追従した誘電体膜11aを設けることが容易となる。
次に、図30(c)に表したように、誘電体膜11aとなるSiO2の上に、所定形状の誘電体積層膜11を形成する。この時、誘電体積層膜11の材料及びその形成方法には、既に説明した方法を用いることができる。
次に、図31(a)に表したように、誘電体膜11aとなるSiO2をフッ化アンモン処理で部分的に取り除き、同様にSiO2を取り除いた領域のp型半導体層2の上に第2p側電極膜4bを所定形状で形成し、SiO2を取り除いた領域のn型半導体層1の一部の上に第1n側電極膜7aを所定形状で形成する。第2p側電極膜4b及び第1n側電極膜7aの材料及びその形成方法には、既に説明した方法を用いることができる。
そして、図31(b)に表したように、SiO2を取り除いた領域のn型半導体層1の一部の上に第2n側電極膜7bを所定形状で形成する。第2n側電極膜7bの材料及びその形成方法には、既に説明した方法を用いることができる。
そして、図31(c)に表したように、p側電極4から露出しているp型半導体層2、誘電体膜11a、及び、誘電体積層膜11の上に、p側パッド45となるRu膜を、第1n側電極膜7a及び第2n側電極膜7bから露出しているn型半導体層1、誘電体膜11a、及び、誘電体積層膜11の上に、n側パッド75となるRu膜を形成する。この時、リフトオフ法によって、形成したRu膜をp側パッド45及びn側パッド75の形状に加工することができる。なお、p側パッド45及びn側パッド75となる膜には、Ruの他PtやPd等の金属を用いることができ、また、それ以外の導電膜も用いることができる。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子112を形成することができる。
本実施形態に係る半導体発光素子112は、n側パッド75及びp側パッド45がさらに設けられているので、製造工程におけるボンダビリティを向上し、放熱性を向上した、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出す半導体発光素子を提供することができる。また、例えばRu膜からなるp側パッド45及びn側パッド75の形成を一度に行うことができ工程省略ができる。
さらに、誘電体積層膜11を、n側電極7(第1n側電極膜7a及び第2n側電極膜7b)及びp側電極4よりも前に加工するので、プロセス整合性が高く、製造が容易である。
すなわち、前記誘電体積層膜11の形成を、例えばリフトオフ法によって行い、その後に、誘電体膜11aを例えばウエットエッチング法またはドライエッチング法によって加工する。そして、露出した第1及び第2半導体層に、それぞれ、n側電極7及びp側電極4を例えばリフトオフ法によって形成する。これにより、プロセス整合性が向上し、加工マージンが拡大する。
(第13の実施形態)
図32は、本発明の第13の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図33は、本発明の第13の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図34は、図33に続く工程順模式的断面図である。
図32に表したように、本発明の第13の実施形態に係る半導体発光素子113においては、第1の実施形態に係る半導体発光素子101において、第5の実施形態で説明した誘電体膜11aが設けられ、さらに、第4の実施形態で説明した積層構造体1sのテーパ形状部1tが設けられている。ただし、誘電体膜11a、誘電体積層膜11、第1及び第2n側電極膜7a、7b、及び、第1及び第2p側電極膜4a、4bの形状に工夫がされ、後述するように、製造がより簡単になっている。
すなわち、半導体発光素子113は、誘電体積層膜11と、n側電極7及びp側電極4から露出したn型半導体層1及びp型半導体層2の少なくとも一部と、の間に設けられた誘電体膜11aをさらに備える。
そして、前記誘電体膜11aは、前記誘電体積層膜11により覆われていない突出部を有し、この突出部の上に、n側電極7及びp側電極4の少なくともいずれかの少なくとも一部が設けられる。本具体例においては、突出部の上に、p側電極4の一部である第1p側電極膜4aが設けられ、突出部は、p側電極4の一部である第1p側電極膜4aにより被覆されている。
これ以外は、半導体発光素子101と同様とすることができるので説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光素子113は、例えば以下のようにして製造される。
まず、図33(a)に表したように、p型半導体層2の一部の領域において、n型コンタクト層が表面に露出するまで、マスクを用いたドライエッチングによってp型半導体層2と発光層3を取り除く。
次に、図33(b)に示すように、熱CVD装置を用いて、誘電体膜11aとなるSiO2を100nmの膜厚で半導体上に形成する。このように、熱CVD法を用いることで、積層構造体1sのテーパ形状部1tの形状に追従した誘電体膜11aを設けることが容易となる。
次に、図33(c)に表したように、誘電体膜11aとなるSiO2の上に、所定形状の誘電体積層膜11を形成する。この時、誘電体積層膜11としては、TiO/(SiO/TiO)4の積層膜を用いることができる。なお、この積層膜の成膜には、既に説明したように、真空蒸着法を用いることができ、また、その形状の加工には、リフトオフ法を用いることができる。
なお、誘電体積層膜11となるTiO/(SiO/TiO)4の積層膜において、それぞれの膜厚は、それぞれの屈折率をn、発光層3からの発光波長をλとして、λ/(4n)と表される。
次に、図34(a)に表したように、誘電体膜11aとなるSiO2をフッ化アンモン処理で部分的に取り除き、SiO2を取り除いた領域のp型半導体層2の上に第2p側電極膜4bを所定形状で形成し、SiO2を取り除いた領域のn型半導体層1の一部の上に第1n側電極膜7aを所定形状で形成する。第2p側電極膜4b及び第1n側電極膜7aの材料には既に説明した材料を用い、その形成方法には既に説明したリフトオフ法を用いることができる。
そして、図34(b)に表したように、SiO2を取り除いた領域のn型半導体層1の一部の上に第2n側電極膜7bを所定形状で形成する。第2n側電極膜7bの材料には既に説明した材料を用い、その形成方法には既に説明したリフトオフ法を用いることができる。
そして、図34(c)に表したように、第2p側電極膜4bの全面を覆い、第2p側電極膜4bから露出しているp型半導体層2を覆うように、第1p側電極膜4aを形成する。第1p側電極膜4aの材料には既に説明した材料を用い、その形成方法には既に説明したリフトオフ法を用いることができる。
このようにして、本実施形態に係る半導体発光素子113を形成することができる。
本実施形態に係る半導体発光素子113は、積層構造体1sがテーパ形状部1tを有しているので反射特性がさらに高い。
さらに、誘電体積層膜11を、n側電極7(第1n側電極膜7a及び第2n側電極膜7b)及びp側電極4よりも前に加工するので、プロセス整合性が高く、製造が容易である。
すなわち、前記誘電体積層膜11の形成を、例えばリフトオフ法によって行い、その後に、誘電体膜11aを例えばウエットエッチング法またはドライエッチング法によって加工する。そして、露出した第1及び第2半導体層に、それぞれ、n側電極7及びp側電極4を例えばリフトオフ法によって形成する。これにより、プロセス整合性が向上し、加工マージンが拡大する。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子113によって、発光層で生じた光をより効率良く外部に取り出し、製造が容易な半導体発光素子及びその製造方法を提供することができる。
なお、本実施形態に係る半導体発光素子113において、図34(c)に例示した工程の後に、第12の実施形態で説明したp側パッド45及びn側パッド75を設けても良い。この場合は、前記誘電体膜11aは、前記誘電体積層膜11により覆われていない突出部を有し、この突出部の上に、前記第1及び第2電極の少なくともいずれかと接続された導電膜の少なくとも一部、が設けられる構造となる。
(第14の実施形態)
図35は、本発明の第14の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図35に表したように、本発明の第14の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、まず、基板10の上に、第1半導体層(n型半導体層1)、発光層3及び第2半導体層(p型半導体層2)を積層して形成する(ステップS110)。これには、例えば、第1の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
そして、前記第2半導体層と前記発光層の一部を除去して前記第1半導体層を露出させる(ステップS120)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
そして、前記露出した前記第1半導体層の第1領域に、第1金属膜(第1n側電極膜7a)を形成する(ステップS130)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
そして、前記露出した前記第1半導体層の前記第1領域に隣接する第2領域と、前記第2半導体層の上と、に前記発光層3から放出される光に対する反射率が前記第1金属膜よりも高く前記第1半導体層に対する接触抵抗が前記第1金属膜よりも高い金属膜(第2n側電極膜7b及び第2p側電極膜4b)を形成する(ステップS140)。これには、例えば、第6の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
そして、前記第1電極及び前記第2電極から露出した前記第1半導体層及び前記第2半導体層の上に、屈折率の異なる複数種の誘電体膜を交互に積層された誘電体積層膜11を形成する。(ステップS150)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によれば、p側電極4の高効率反射特性の第2p側電極膜4bと、高効率反射特性の第2n側電極膜7bと、が同じ材料で構成され、そして、同時に形成されることを可能にしている。
これにより、工程数を減らすことができ、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出すことができ、高いスループット、低コストの半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
なお、上記のステップS110〜S150は、技術的に可能な限り、入れ替えが可能であり、また、同時に実施することができる。
(第15の実施形態)
図36は、本発明の第15の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図36に表したように、本発明の第15の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、まず、基板10の上に、第1半導体層(n型半導体層1)、発光層3及び第2半導体層(p型半導体層2)を積層して形成する(ステップS210)。これには、例えば、第1の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
そして、前記第2半導体層と前記発光層の一部を除去して前記第1半導体層を露出させる(ステップS220)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
前記第1半導体層及び前記第2半導体層の上に、屈折率の異なる複数種の誘電体膜を交互に積層された誘電体積層膜11を形成する(ステップS230)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
前記誘電体積層膜から露出した前記第1半導体層の第1領域に、第1金属膜(第1n側電極膜7a)を形成し、前記誘電体積層膜11から露出した前記第1半導体層の前記第1領域に隣接する第2領域に、前記発光層から放出される光に対する反射率が前記第1金属膜よりも高く前記第1半導体層に対する接触抵抗が前記第1金属膜よりも高い第2金属膜(第2n側電極膜7b)を形成する(ステップS240)。これには、例えば、第2の実施形態に関して説明した方法を用いることができる。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、第1金属膜(第1n側電極膜7a)及び第2金属膜(第2n側電極膜7b)の前に、誘電体積層膜11を設ける。すなわち、第12及び第13の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法における工程の順番である。
発明者の実験によると、誘電体積層膜11を真空蒸着装置で常温成膜した場合、ウェットエッチングによるエッチングレートが非常に早く、膜の加工性が低い。また、成膜中または成膜後に高温熱処理をすると、酸化ジルコニウムや酸化チタンなどはウェットエッチングによるエッチングレートが非常に小さくなり、膜の加工が困難となる。このため、例えばリフトオフ法によって誘電体積層膜11を加工することができる。
この時、第1金属膜(第1n側電極膜7a)及び第2金属膜(第2n側電極膜7b)の前に、誘電体積層膜11を設けることにより、プロセス整合性が高まり、製造のマージンが広がる。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によって、プロセス整合性が高く作り易い、発光層で生じた光を効率良く外部に取り出すことができる半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
図37は、本発明の第15の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の変形例を示すフローチャート図である。
図37に表したように、本発明の第15の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の変形例では、前記第1半導体層の露出工程(ステップS220)から、前記誘電体積層膜11の形成工程(ステップS230)の間に、前記第1半導体層及び前記第2半導体層の上に、前記誘電体積層膜11よりも、前記第1半導体層及び前記第2半導体層の段差に対しての被覆性が高い誘電体膜11aを形成する(ステップS225)。
この誘電体膜11aには、第13の実施形態で説明したように、熱CVD法で形成された例えばSiO2膜を用いることができる。
すなわち、前記誘電体膜11aの形成は、化学気相成長法により実施されることができる。
これにより、前記第1半導体層及び前記第2半導体層の段差に対して被覆性の高い誘電体膜11aを形成することができる。
そして、第13の実施形態に関して説明したように、誘電体膜11aの形成の後に、前記誘電体積層膜11の形成を、例えばリフトオフ法によって行い、その後に、誘電体膜11aを例えばウエットエッチング法またはドライエッチング法によって加工する。そして、露出した第1及び第2半導体層に、それぞれ、n側電極7及びp側電極4を形成する。
本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法では、第5の実施形態でも説明したように、第1n側電極膜7a及び第2p側電極膜4bを形成する前に、誘電体膜11aを半導体層上に形成する構成なので、電極形成工程で電極と半導体層の界面に付着するコンタミネーションを大幅に減らすことができるため、信頼性や歩留り、電気特性、光学特性を向上させることができる。
本実施形態に係る変形例の半導体発光素子の製造方法によれば、さらにプロセス整合性が高く信頼性や歩留り、電気特性、光学特性の高い半導体発光素子の製造方法が提供できる。
(第16の実施形態)
図38は、本発明の第16の実施形態に係る半導体発光装置の構造を例示する模式的断面図である。
本発明の第16の実施形態に係る半導体発光装置201は、上記の各実施形態に係る半導体発光素子のいずれかと、蛍光体と、を組み合わせた白色LEDである。なお、以下では、第1の実施形態に係る半導体発光素子101と、蛍光体と、を組み合わせた場合として説明する。
すなわち、本実施形態に係る半導体発光装置201は、上記のいずれかの半導体発光素子と、前記半導体素子で発光された光が照射される蛍光体層と、を備える。
図38に表したように、本実施形態に係る半導体発光装置201においては、セラミック等からなる容器22の内面に反射膜23が設けられており、反射膜23は容器22の内側面と底面に分離して設けられている。反射膜23は、例えばアルミニウム等からなるものである。このうち容器22の底部に設けられた反射膜23の上に、図1に例示した半導体発光素子101がサブマウント24を介して設置されている。
半導体発光素子101にはボールボンダによって金バンプ25が形成され、サブマウント24に固定されている。金バンプ25を用いずに、直接サブマウント24へ固定しても良い。
これら半導体発光素子101、サブマウント24及び反射膜23の固定には、接着剤による接着や半田等を用いることが可能である。
サブマウント24の半導体発光素子側の表面には、半導体発光素子101のp側電極4とn側電極7とが絶縁されるようにパターニングされた電極が形成されており、それぞれ容器22側に設けられた図示しない電極に対してボンディングワイヤ26により接続されている。この接続は、内側面の反射膜23と、底面の反射膜23と、の間の部分において行われている。
また、半導体発光素子101やボンディングワイヤ26を覆うように赤色蛍光体を含む第1蛍光体層211が設けられており、この第1蛍光体層211の上には青色、緑色或いは黄色の蛍光体を含む第2蛍光体層212が形成されている。この蛍光体層の上にはシリコン樹脂からなる蓋部27が設けられている。
第1蛍光体層211は、樹脂及びこの樹脂中に分散された赤色蛍光体を含む。
赤色蛍光体としては、例えばY2O3、YVO4、Y2(P,V)O4等を母材として用いることができ、これに3価のEu(Eu3+)を付活物質として含ませる。すなわち、Y2O3:Eu3+、YVO4:Eu3+等を赤色蛍光体として用いることができる。Eu3+の濃度は、モル濃度で1%〜10%とすることができる。赤色蛍光体の母材としては、Y2O3、YVO4の他に、LaOSやY2(P, V)O4等を用いることができる。また、Eu3+の他にMn4+等を利用することもできる。特に、YVO4母体に、3価のEuと共に少量のBiを添加することにより、380nmの吸収が増大するので、さらに発光効率を高くすることができる。また、樹脂としては、例えば、シリコン樹脂等を用いることができる。
また、第2蛍光体層212は、樹脂、並びに、この樹脂中に分散された青色、緑色及び黄色の少なくともいずれかの蛍光体、を含む。例えば、青色蛍光体と緑色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良く、また、青色蛍光体と黄色蛍光体とを組み合わせた蛍光体を用いても良く、青色蛍光体、緑色蛍光体及び黄色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良い。
青色蛍光体としては、例えば(Sr,Ca)10(PO4)6Cl2:Eu2+やBaMg2Al16O27:Eu2+等を用いることができる。
緑色蛍光体としては、例えば3価のTbを発光中心とするY2SiO5:Ce3+,Tb3+を用いることができる。この場合、CeイオンからTbイオンへエネルギーが伝達されることにより励起効率が向上する。緑色蛍光体としては、例えば、Sr4Al14O25:Eu2+等を用いることができる。
黄色蛍光体としては、例えばY3Al5:Ce3+等を用いることができる。
また、樹脂として、例えば、シリコン樹脂等を用いることができる。
特に、3価のTbは、視感度が最大となる550nm付近に鋭い発光を示すので、3価のEuの鋭い赤色発光と組み合わせると発光効率が著しく向上する。
本実施形態に係る半導体発光装置201によれば、半導体発光素子101から発生した380nmの紫外光は、半導体発光素子101の基板10側に放出され、反射膜23における反射をも利用することにより、各蛍光体層に含まれる上記蛍光体を効率良く励起することができる。
例えば、第1蛍光体層211に含まれる3価のEu等を発光中心とする上記蛍光体は、620nm付近の波長分布の狭い光に変換され、赤色可視光を効率良く得ることが可能である。
また、第2蛍光体層212に含まれる青色、緑色、黄色の蛍光体が、効率良く励起され、青色、緑色、黄色の可視光を効率良く得ることができる。
これらの混色として、白色光やその他様々な色の光を、高効率でかつ演色性良く得ることが可能である。
次に、本実施形態に係る半導体発光装置201の製造方法について説明する。
なお、半導体発光素子101を作製する工程は、既に説明した方法を用いることができるので、以下では、半導体発光素子101が出来上がった後の工程について説明する。
まず、容器22の内面に反射膜23となる金属膜を、例えばスパッタリング法により形成し、この金属膜をパターニングして容器22の内側面と底面にそれぞれ反射膜23を残す。
次に、半導体発光素子101にボールボンダによって金バンプ25を形成し、p側電極4用とn側電極7用にパターニングされた電極を持つサブマウント24上に固定し、このサブマウント24を容器22の底面の反射膜23上に設置して固定する。これらの固定には接着剤による接着や半田等を用いることが可能である。また、ボールボンダによる金バンプ25を用いずに半導体発光素子100をサブマウント24上に直接固定することもできる。
次に、サブマウント24上の図示しないn側電極及びp側電極をそれぞれ容器22側に設けられた図示しない電極に対してボンディングワイヤ26により接続する。
さらに、半導体発光素子101やボンディングワイヤ26を覆うように赤色蛍光体を含む第1蛍光体層211を形成し、この第1蛍光体層211上に青色、緑色或いは黄色の蛍光体を含む第2蛍光体層212を形成する。
蛍光体層のそれぞれの形成方法は、各蛍光体を樹脂原料混合液に分散させたものを滴下し、さらに熱処理を行うことにより熱重合させて樹脂を硬化させる。なお、各蛍光体を含有する樹脂原料混合液を滴下してしばらく放置した後に硬化させることにより、各蛍光体の微粒子が沈降し、第1、第2蛍光体層211、212の下層に各蛍光体の微粒子を偏在させることができ、各蛍光体の発光効率を適宜制御することが可能である。その後、蛍光体層上に蓋部27を設け、本実施形態に係る半導体発光装置201、すなわち、白色LEDが作製される。
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x,y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電型などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子を構成する半導体多層膜、金属膜、誘電体膜など各要素の形状、サイズ、材質、配置関係などに関して、また製造方法に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。