以下、図面を参照して、本発明に係る光触媒フィルタの実施の形態について説明する。
なお、本明細書では、光触媒として酸化チタンを例示しているが、将来の技術改善により実用化できるのであれば、酸化亜鉛、ガリウムリン、ガリウム砒素などの任意の光触媒に本発明を適用することができる。
(第1実施例)
まず、アルミナセラミック層上に酸化チタンが強固に密着した光触媒フィルタの製造方法について説明する。
図3は、第1実施例の製造方法を実施するための製造装置の一例を示している。
同図3に示すように、第1実施例の製造装置は、真空容器80と、真空容器80に、吸入口81aが連通し、真空容器80内の空気を吸引して真空容器80内を大気圧よりも低圧の真空状態にするポンプ(真空ポンプ)81と、真空容器80を載置し真空容器80を振動させる振動板82と、振動板82を振動させる加振器83と、真空容器80の上方に設けられ酸化チタンのスラリー29が貯留されたタンク84と、真空容器80の下方に向けて真空容器80内に酸化チタンのスラリー29を滴下し供給するノズル85と、タンク84とノズル85とを連通する供給路86と、供給路86上に設けられ供給路86を開閉するバルブ87とを含んで構成されている。なお、ノズル85および供給路86は、真空ポンプ80の密閉性を保ちポンプ81による吸引を阻害しない程度の小口径および小開口面積に定められる。
酸化チタンのスラリー29は、溶媒と酸化チタン微粉末のみからなり、これら以外のバインダーを含む添加物が添加されていない100%酸化チタンからなる溶液である。酸化チタン微粉末は、粒径1〜100nm程度のナノ粒子で構成され、好ましくは、1桁ナノオーダーの粒径(10nm以下)のものを用いる。酸化チタン粒子を所定量だけ所定量の水に分散させてスラリー状とする。なお、市販のアナターゼ型TiO2水溶液を使用することができる。
まず、真空容器80内に、アルミナセラミック(α-Al2O3)の多孔質体(アルミナセラミックフォーム)10を基材として入れる。アルミナセラミック多孔質体10は、たとえば平板状に形成されている。アルミナセラミック多孔質体(アルミナセラミックフォーム)10は、従来と同様に、ウレタンフォーム多孔質体を原材料として製造されたものである。
つぎにポンプ81および加振器83を作動させて、アルミナセラミック多孔質体10を微振動させるとともに、真空容器80内を真空状態にする。
つぎに、バルブ87を開き、タンク84内の酸化チタンのスラリー29を供給路86、ノズル85を介して、真空容器80内のアルミナセラミック多孔質体10の表面に供給する。必要な量を供給し終えたら、バルブ87を閉じる。
つぎに、アルミナセラミック多孔質体10の表面に酸化チタンのスラリー29が、浸漬されている状態を所定時間(たとえば20分)保持する。所定時間経過後、ポンプ81および加振器83の作動を停止し、真空容器80から、酸化チタンのスラリー29が表面に付着しているアルミナセラミック多孔質体10を取り出す。以後、自然乾燥して、アルミナセラミック多孔質体10の表面に酸化チタン層20が形成された光触媒フィルタ30を得る。
図2は、第1実施例の製造方法によって製造される光触媒フィルタ30の表層の断面を示す。
アルミナセラミック多孔質体10の表面には、断面でみて底広がりの壺状に形成された凹部11が形成されている。凹部11は、スラリー等の液状体を吸い込む、「吸水性」を有する大きさ、形状に形成されている。凹部11は、直径が0.1μm〜10μmの大きさである。
酸化チタンのスラリー29がアルミナセラミック多孔質体10の表面に供給されると、セラミック層10の表面の凹部11内に酸化チタンのスラリー29が流れ込む。このとき凹部11内で気泡が発生する。気泡は、酸化チタンのスラリー29が凹部11内に入り込むことを阻害する。ここで、本実施例では、アルミナセラミック多孔質体10を微振動させつつ、真空状態にしている。これによりアルミナセラミック多孔質体10の表面に形成された凹部11内から、気泡が取り除かれる。そして、凹部11内から気泡を取り除きつつ、アルミナセラミック多孔質体10に対して、酸化チタンのスラリー29を供給し続ける。こうしてセラミック多孔質体10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除きつつ、アルミナセラミック多孔質体10に対して、酸化チタンのスラリー29を供給し続けた結果、凹部11内に酸化チタンのスラリー29が、気泡に阻害されることなく、入り込む。なお、以下では、この製造技術のことを、「気泡を取り除く」製造技術というものとする。
この結果、図2に示すように、セラミック層10表面凹部11の底面11aまで酸化チタンが入り込むとともに、図1(b)に示す光触媒フィルタ30´の断面構造に比べて、酸化チタン粒子同士が接点で結合し酸化チタン粒子同士の間で空隙が小さくなり酸化チタン粒子同士の間の空隙が均等となっている酸化チタン層20が得られる。このため酸化チタン粒子のセラミック層10表面へのアンカー効果が高くセラミック層10表面に強固に密着し剥離しにくい酸化チタン層20が得られる。
たとえば酸化チタンを、粒径が5nmから20nmのナノ粒子とすると、セラミック層10の表面に形成された酸化チタン層20は、ナノ粒子が単独として、または、ナノ粒子が、10nmから100nmの径の集合体として存在しており、これら単独のナノ粒子同士の間またはナノ粒子の集合体同士の間または単独のナノ粒子とナノ粒子の集合体との間が接点で結合しており、かつそれらの間は、0.1nmから10nmの均等な空隙を有しているのが観察される。
図1(a)、(b)は、本実施例の光触媒フィルタ30の表層断面の写真(図1(a))と、従来技術1の製造方法にて製造された光触媒フィルタ30´の表層断面の写真(図1(b))とを対比して示す。
本実施例の光触媒フィルタ30では、酸化チタンの粒子が凹部11の底面11a至るまで凹部11内に緻密に入り込んでおり高いアンカー効果を得ているのに対して、従来技術1の光触媒フィルタ30´にあっては、酸化チタンの粒子が、凹部11に殆ど入り込んでおらず凹部11が空洞になっておりアンカー効果に極めて乏しいことが明らかにみてとれる。
図4(a)、(b)は、本実施例の光触媒フィルタ30の表層断面の写真(図4(a))と、従来技術2の製造方法にて製造された光触媒フィルタ30´´の表層断面の写真(図4(b))とを対比して示す。
従来技術2の光触媒フィルタ30´´の場合には、酸化チタン層20´´が無機バインダーと酸化チタン粒子の焼結体で構成されているため、焼き固められた無機バインダー中に酸化チタン粒子が埋没されてしまい、無機バインダーから露出し光触媒として機能するチタン粒子は、極く僅かとなる。この結果、酸化チタンによる光触媒活性層の比表面積が実質的に小さくなり光触媒による酸化分解能力が格段に低下する。たとえば比表面積は、6.65m2/gという低数値を示す。
これに対して本実施例の光触媒フィルタ30では、セラミック層10の表面に形成された酸化チタン層20は、酸化チタンの粒子以外のバインダーを含む添加物を有しない100%酸化チタンの粒子のみからなる層である。酸化チタン層20が無機バインダーなどの添加物を含んでおらず焼き固めることなく常温で自然乾燥により形成されているため、個々の酸化チタン粒子の表面が露出している面積が非常に大きい。しかも、前述のように、酸化チタン粒子同士が均等かつ微小な空隙を以って点接合にて配列されている。この結果、
酸化チタンによる光触媒活性層の比表面積が実質的に非常に大きいものとなる。たとえば比表面積は、18.58m2/gであり、従来技術2の比表面積(6.65m2/g)に較べて格段に大きくなる。
また、本実施例の光触媒フィルタ30による有害物の酸化分解能力を検証する実験を行った。対比のために、「気泡を取り除く」製造技術を用いないで製造した従来技術1の光触媒フィルタ30´(図1(b)、(c))の実験結果を比較例として示す。
図5(a)は、第1実施例の製造方法によって製造された光触媒フィルタ30の表層の断面構造を概念的に示す。光触媒フィルタ30は、厚さが10mmで縦幅、横幅ともに150mm(150mm角;150mm×150mm)の平板状のアルミナセラミックフォームで構成された基材10と、基材10の表面に形成された膜厚1μmの酸化チタン層20とからなる。この光触媒フィルタ30を試料として実験を行った。
上記試料を8枚、特許文献1に示される空気清浄機に入れて実験を行った。対比のために従来技術1の製造方法で製造方法にて図5(a)と同じ大きさ、形状に形成した光触媒フィルタ30´を用意し同様に特許文献1に示される空気清浄機に入れて実験を行った。なお、空気清浄機に収納される紫外線ランプの本数、光量は同じ条件とした。
空気清浄機を、容積30m3の容器内に配置し、ホルムアルデヒドを容器内に導入し、風量を20m3/minに設定し、容器内のホルムアルデヒド濃度の経時変化を測定した。測定には、1312型マルチガスモニタ(INOVA社製)、RCSエアサンプラ(Biotest社製)を用いた。
図5(b)に実験結果を示す。図中、実線が第1実施例の光触媒フィルタ30で、破線が比較例の光触媒フィルタ30´である。
同図5(b)から、明らかなように、従来の光触媒フィルタ30´に較べて本第1実施例の光触媒フィルタ30の方が、容器内のホルムアルデヒドを迅速に低濃度化させることができるのがわかる。
このように本実施例の光触媒フィルタ30は、従来に較べて光触媒による酸化分解能力が格段に向上するという効果が得られる。このため、たとえば空気清浄機の用途に用いた場合には、光触媒による酸化分解能力の不足を補うために紫外線ランプの本数を増やしたり紫外線ランプ自体を大きなものとすることで光量を増加する必要がなくなり、空気清浄機(筐体)のコンパクト化が図られるとともに、製造コストを低減させることができるようになる。
なお、この第1実施例では、基材10を微振動させつつ、真空状態にすることによって、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除くようにしているが、必ずしも両者を併用するには及ばず、スラリー29の粘度等の条件によっては、真空状態にせずに、基材10を微振動させることのみで、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除くようにする実施も可能であり、また基材10を微振動させることはせずに、真空状態にすることのみで、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除くようにする実施も可能である。
また、第1実施例では、基材10を微振動させつつ、真空状態にすることによって、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除くようにしているが、これは一例であり、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除くことができるのであれば、現在および将来にわたって取り得る任意の技術的手段を適用することができる。
なお、基材10がアルミナセラミックである場合を想定して説明したが、同様の酸化物系セラミックはいうに及ばず、炭化珪素(SiC)等任意のセラミックを基材10とする場合に本第1実施例の製造手法を適用することができる。また、酸化チタンのスラリー29は、添加物が添加されていない100%酸化チタンからなる溶液を用いているが、純度が高く酸化分解能力を担保することができるのであれば必ずしも100%である必要はない。
なお、光触媒フィルタ30を、空気清浄機などの用途に供するには、30mm〜600mmの範囲の縦横幅を有し、厚さ2mm〜30mmの範囲の板状とし、酸化チタン層20の膜厚を0.1μm〜10μmの範囲とすることが望ましい。
また、第1実施例では、基材10を平板状に形成し、光触媒層としての酸化チタン層20が基材10の表面に形成された光触媒フィルタ30を平板状に形成しているが、これはあくまで一形態であり、光触媒フィルタ30を中空状に形成してもよい。この場合、光触媒フィルタ30は、紫外線ランプが所定の大きさの隙間を以って挿通し得る中空状に形成されることが望ましい。
光触媒フィルタ30を中空状に形成する形態の一例として、円筒形状に形成することができる。また、光触媒フィルタ30を中空状に形成する形態の一例として、紫外線ランプの挿通方向に対して垂直となる光触媒フィルタの断面の形状を、四角形にすることができる。
図18は、光触媒フィルタ30を中空状に形成する各構成例を示したものである。
図18(a)、(b)、(c)は、光触媒フィルタ30を円筒形状に形成した構成例を例示する。
図18(a)に示すように、光触媒フィルタ30は、基材10を円筒形状に製造する工程を除く他、この第1実施例と同等の製造方法を用いて製造される。光触媒フィルタ30は、中空部131と、当該中空部131を覆う肉厚部132とからなり、当該肉厚部132には一部を拡大して示すように、肉厚方向に連通する孔、つまりセラミック多孔質体として構造上有する孔133が形成されている。したがって、肉厚部132を介して空気あるいは液体が中空部131に流入することが可能な構造あるいは中空部131から空気あるいは液体が肉厚部132を介して外部に流出することが可能な構造となっている。
図18(b)、(c)に示すように、光触媒フィルタ30は、中空部131に、紫外線ランプ140を挿通でき配置することができる内径、長さになるように製造される。光触媒フィルタ30の内径は、紫外線ランプ140が中空部131に挿通された際に肉厚部132の内周面に対して所定の大きさの隙間d、望ましくは2mm〜20mmの隙間dを以って配置することができる大きさに設定される。なお、光触媒フィルタ30の内径Dは、上記隙間dと紫外線ランプ140の直径Xとを合計した値D=X+2dとして設定される。なお紫外線ランプ140は、熱陰極管、冷陰極管、LEDなどを用いることができる。
図19は、図18(a)に示される光触媒フィルタ30を用いて構成した空気清浄機200の構成例を例示する。図19(a)は、空気清浄機200の構成を斜視図にて示したものであり、図19(b)は、空気清浄機200の断面を示すとともに空気の流れを説明する図である。
空気清浄機200には、収納ケース201が収容される。なお収納ケース201の内部の材料には、耐紫外線のプラスチック、たとえばABSを用いることができる。
図19(a)、(b)の図中左側を空気清浄機200の前側、図中右側を空気清浄機200の後ろ側と定義する。
空気清浄機200の後部にあって収納ケース201よりも後方には、吸引ファン202が設けられる。なお、制御回路機構部9は、吸引ファン202を駆動するモータ、制御回路および紫外線ランプ140の点灯、消灯を駆動制御する電源、制御回路等からなる。
空気清浄機200の前部にあって収納ケース201の前方には、外部より空気を吸気する吸気口203が形成されている。空気清浄機200の後部にあって吸引ファン202よりも後方には、空気を外部に排気する排気口204が設けられる
収納ケース201には、空気流入用の開口部205と空気流出用の開口部206が形成されている。収納ケース201は、空気流入用の開口部205が空気清浄機200の前側に位置し空気流出用の開口部206が空気清浄機200の後ろ側に位置するように、配置されている。
収納ケース201の内部には、図18(c)に示すように中空部131に紫外線ランプ140が配置された状態で光触媒フィルタ30が収納される。紫外線ランプ140の両端はそれぞれ、収納ケース201に設けられてソケット部17、17に装着される。
この場合、図19(b)に示すように、紫外線ランプ140の挿通方向に対して垂直となる方向に、空気流入用の開口部205と空気流出用の開口部206が配置される態様で、紫外線ランプ140の両端が支持されて光触媒フィルタ30が収納される。図19の構成例では、紫外線ランプ140および光触媒フィルタ30からなる組が複数組(たとえば3組)、収納ケース201の上下方向に沿って一列に配置される。この場合、上下方向に隣り合う光触媒フィルタ30、30、30は、それらの外周が互いに接触する程度に隙間なく配置することが望ましい。なお、図19において収納ケース201の前側にはプレフィルタ7が配置される。
吸引ファン202が回転すると、矢印にて空気の流れを示すように、空気清浄機200の吸気口203から外気が吸込まれ、収納ケース201の空気流入用の開口部205を介して、空気が光触媒フィルタ30に達する。さらに空気は肉厚部132を通過して中空部131に入り込み、中空部131を介して反対側の肉厚部132を通過する。さらに空気は、収納ケース201の空気流出用の開口部206を介して空気清浄機200の排気口204から外部に排出される。このとき紫外線ランプ140は点灯状態にあるものとする。このため光触媒層としての酸化チタン層20に紫外線が照射され、空気が光触媒フィルタ30を通過する際に、空気中の有害物が酸化分解される等して当該有害物が光触媒フィルタ30にて捕獲、分解除去される。
図18、図19に示す構成例では、光触媒フィルタ30を円筒形状にする場合を例示したが、中空状であれば任意の形状とすることができる。また、独立分離した1つの光触媒フィルタ30当たり、1本の紫外線ランプ140を配置する場合を例示したが、独立分離した1つの光触媒フィルタ30当たり、複数本の紫外線ランプ140を配置するように構成してもよい。
図20(a)、(b)はそれぞれ、図18(b)、図19(b)に相当する他の構成例を示す。
図20(a)に示すように、紫外線ランプ140の挿通方向に対して垂直となる光触媒フィルタ30の断面の形状は、四角形(たとえば正方形)に形成されている。また、図20(b)に示すように、独立分離した1つの光触媒フィルタ30当たり、1本の紫外線ランプ140が配置され、複数組の光触媒フィルタ30および紫外線ランプ140を収納することで空気清浄機200が構成される。
図21(a)、(b)はそれぞれ、図18(b)、図19(b)に相当する他の構成例を示す。
図21(a)に示すように、紫外線ランプ140の挿通方向に対して垂直となる光触媒フィルタ30の断面の形状は、四角形(たとえば長方形)に形成されている。また、図21(b)に示すように、独立分離した1つの光触媒フィルタ30当たり、複数本(たとえば3本)の紫外線ランプ140、140、140が配置され、1組の光触媒フィルタ30および紫外線ランプ140を収納することで空気清浄機200が構成される。
図19〜図21では、光触媒フィルタ30が空気清浄機200として室内に設置される場合を例示したが、これは一例であり、任意の用途に用いることができる。
図22は、収納ケース201を室内用エアコンあるいは自動車用エアコンのダクト内に配置する使用例を例示する。
同図22に示すように、ダクト210内に収納ケース201が設けられ、図示しない軸流ファンなどによって、矢印にて示すようにダクト210の長手方向に空気の流れが形成されて、エアコンのダクト内を通過する空気中の有害物が捕獲、分解除去される。
図19〜図21に示す空気清浄機200のレイアウトは、一例であり、これ以外の任意のレイアウトにすることができる。
図23は、図19〜図21に示す空気清浄機200のレイアウトとは異なるレイアウトの構成例を示す。図23(a)は空気清浄機200の縦断面図を示し、図23(b)は、図23(a)のA−A断面を示し、図23(c)は、図23(a)のB−B断面を示している。この空気清浄機200は、例えば自動車内に設置される。
同図23に示すように、図18に示されるのと同様の中空状の光触媒フィルタ30と紫外線ランプ140が、筐体300内に設けられて、空気清浄機200が構成される。筐体300は、略円筒形状であり、光触媒フィルタ30も同様の円筒形状に形成されている。なお筐体300および筐体300の内部の材料には、耐紫外線のプラスチック、たとえばABSを用いることができる。
光触媒フィルタ30は、筐体300内で、支持手段としての仕切り板301により支持されている。仕切り板301は、筐体300の内周面に接続されて光触媒フィルタ30および紫外線ランプ140を支持している。
筐体300には、空気吸入口302および空気排出口303が形成されている。
円筒形状の筐体300は、長手方向が鉛直上下方向となるように設置される。
筐体300の上方から下方に向けて、空気排出口303、紫外線ランプ140が挿通、配置された光触媒フィルタ30、仕切り板301、空気流れ形成手段を構成する送風機310が順次配置される構造となっている。空気吸入口302は、送風機310の側方に形成されている。送風機310は、遠心型の送風機であり、空気吸込み口311から軸方向に空気を吸込み、空気送り出し口312から周方向に空気を送り出す。
光触媒フィルタ30の長手方向の一端側に空気排出口303が設けられ、光触媒フィルタ30の長手方向の他端側に、送風機310の空気送り出し口312が設けられている。
送風機310と光触媒フィルタ30とは、仕切り板301によって仕切られている。仕切り板301は、光触媒フィルタ30の他端を閉塞し、かつ送風機310の空気送り出し口312と光触媒フィルタ30の肉厚部132の外周面とを開口部304を介して連通させるように構成されている。
光触媒フィルタ30は、中空部131が空気排出口303に連通するように位置決めされて、その上側の外周面(肉厚部132の外周面)が上板300Tに支持されている。上板300Tには、上側保持部材300Sが形成されており、上側保持部材300Sが光触媒フィルタ30の上側外周面(肉厚部132の外周面)に当接されることにより中空部131からの外方への空気の漏れを阻止している。
筐体300の上板300Tの内側面には、ソケット部17が設けられているとともに、仕切り板301の上面には、ソケット部17が設けられている。紫外線ランプ140の両端は、筐体300の内部に設けられたこれら各ソケット部17、17に装着されている。
制御回路機構部9は、筐体300内の所定箇所に配され、紫外ランプ140の点灯および消灯を制御するとともに送風機310を駆動制御する。
送風機310は、空気吸入口302から吸入された空気を、空気吸込み口311より吸込んで空気送り出し口312から送り出し、仕切り板301の開口部304、光触媒フィルタ30の肉厚部132を介して中空部131に供給し、当該中空部131を経由して空気排出口303を介して筐体300の外部に排出させる。このため光触媒層としての酸化チタン層20に紫外線が照射され、空気が光触媒フィルタ30を通過する際に、空気中の有害物が酸化分解される等して当該有害物が光触媒フィルタ30にて捕獲、分解除去される。なお、図23に示す構成例の空気清浄機200においても図20(a)、図21(a)に示すように光触媒フィルタ30の断面を四角形に形成してもよい。
図23では、光触媒フィルタ30が空気清浄機200として自動車内などに設置される場合を例示したが、これは一例であり、任意の用途に用いることができる。
図26は、筐体300を配管211内に配置する使用例を例示する。ただし、別途、送風機310と同機能の送風機あるいは吸入ファンが筐体300の外部に設置される場合には、送風機310および筐体300の空気吸入口302を省略することができる。
同図26に示すように、配管211内に筐体300が設けられ、図示しない軸流ファンなどによって、矢印に示すように配管211の長手方向に空気の流れが形成される。すなわち、配管211を流れる空気は、仕切り板301の開口部304に流入し、光触媒フィルタ30の肉厚部132を介して中空部131に供給され、当該中空部131を経由して空気排出口303から排出され、配管211の後方へ導かれる。このため光触媒層としての酸化チタン層20に紫外線が照射され、空気が光触媒フィルタ30を通過する際に、空気中の有害物が酸化分解される等して当該有害物が光触媒フィルタ30にて捕獲、分解除去される。
(第2実施例)
第1実施例における「気泡を取り除く」製造技術を用いて光触媒フィルタ30を製造する手法は、セラミックと同様の基材、つまり表面に凹部が形成された、吸水性のある基材にも、適用することができる。このような基材は、
a)石膏またはセメントまたはゼオライトの単体
b)石膏またはセメントまたはゼオライトの群から選択された2以上の材料の複合体
c)石膏またはセメントまたはゼオライトの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体
が挙げられる。
上記例示される単体材料あるいは複合体を基材10として、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いれば、第1実施例と同様に、基材10表面に、バインダーや添加物を用いることなく、純度の高いあるいは100%酸化チタンからなる光触媒層20を、剥離が生じないように確実に固定し、以って耐久性が高く酸化分解能力の高い光触媒フィルタ30を製造することができる。
また、第2実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
(第3実施例)
第1実施例における「気泡を取り除く」製造技術を用いて光触媒フィルタ30を製造する手法は、セラミックと異なりその材料自体に、吸水性を生じせしめる凹部がない(あるいはあっても吸水性に乏しいもの)基材にも、人工的に表面に凹部を形成することにより、適用することができる。このような基材は、
a)プラスチックまたは金属またはガラスの単体
b)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された2以上の材料の複合体
c)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体
が挙げられる。
ここで、上記基材は、アルミナセラミックを基材とする光触媒フィルタの割れやすいという特性を改善するために、
d)少なくともアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい材料で構成されている
ことが望ましい。
e)さらに、強度的に強く、任意の形状、大きさに形成でき、軽く、薄い材料である
ことが望ましい。なお、大抵のプラスチックまたは金属またはガラスはこのようなd)、e)の一部または全部の条件を満たす。
上記例示される単体材料あるいは複合体を基材10として、その基材10の表面に、人工的に凹部を形成し、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いて、その凹部11内に酸化チタン粒子を底面11aに至るまで入り込ませるようにする。これにより、第1実施例と同様に、基材10表面に、バインダーや添加物を用いることなく、純度の高いあるいは100%酸化チタンからなる光触媒層20を、剥離が生じないように確実に固定し、以って耐久性が高く酸化分解能力の高い光触媒フィルタ30を製造することができる。
人工的に凹部11を形成する技術的手法は、現在あるいは将来にわたり当業者が考えられる全ての方法を含む。たとえば、板状の部材の表面に、物理的処理あるいは化学的処理などの表面処理を施し、凹部11を形成することができる。板状の部材表面に物理的処理としてサンドブラストを施し、凹部11を形成してもよく、板状の部材表面に化学的処理としてエッチングを施し、凹部11を形成してもよい。また、板状の部材の表面に、放電加工、レーザ加工などにより凹部11を形成してもよい。
また、たとえばプラスチックなどが原材料であれば、射出成型などの成型加工技術を用いて、表面に凹部11が形成された板状の部材を一体成型してもよい。
また、たとえば金属などが原材料であれば、鋳造、塑性加工(プレス、鍛造など)、切削などの機械加工を用いて、表面に凹部11が形成された板状の部材を成型してもよい。
図6に、第3実施例の光触媒フィルタ30の構成例を示す。図6(a)、(b)はそれぞれ光触媒フィルタ30の側面図および正面図で、図6(c)は光触媒フィルタ30の表層の断面図である。
基材10としては、たとえば金属、プラスチックを使用することができる。
この光触媒フィルタ30は、つぎのようにして製造される。
a)板厚方向に、空気通過用の貫通孔12が多数、等間隔に形成された板状の金属からなる基材10を成型する。貫通孔12は、光触媒フィルタ30のオモテ面30aおよび裏面30bを貫くように穿設され、たとえば円形状に形成される(図6(a)、(b))。
b)つぎに、金属からなる基材10の表面にサンドブラスト処理を施し、基材10の表面に多数の凹部11を形成する。なお、凹部11は、基材10が外界に露出している面の全面つまり貫通孔12の内側の面に至るまで形成される。凹部11は、酸化チタンが底面11aまで入り込むことができる大きさ、形状に設定する。たとえば第1実施例のアルミナセラミック基材10に形成された凹部11と同程度の大きさ、形状になるように、ブラスト粒子の粒径などのブラスト条件を設定して、サンドブラスト処理を施す。ただし、凹部11の大きさ、形状は、酸化チタンが底面11aまで入り込むことができるのあれば、任意に設定することができる。凹部11の深さ、径は、3mm以下であることが望ましい。
また、ブラスト処理の代わりにエッチング処理を施し、同様に基材10の表面に凹部11を形成してもよい。
また、プラスチックが原材料であれば、射出成型により、貫通孔12および凹部11が形成された板状の基材10を一体成型してもよい。
c)このようにして貫通孔12および凹部11が形成された基材10が作成されると、第1実施例と同様に、基材10を真空容器80内に入れ、基材10を微振動させつつ、真空状態にすることによって、基材10の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除きつつ、基材10の表面に対して、バインダーなどの添加物を含まない100%酸化チタンのスラリー29を供給する。以後同様な工程な経て基材10の表面に酸化チタン層20が形成された光触媒フィルタ30を得る。
この結果、たとえば第1実施例の光触媒フィルタ30と同サイズ、つまり厚さが10mmで縦幅、横幅が150mm(150mm角;150mm×150mm)の平板状の基材10の表面に膜厚1μmの酸化チタン層20が形成された板状の光触媒フィルタ30を取得することができる。基材10の表面には、たとえば直径が0.5mm程度で、高さ(深さ)が0.5mm程度の凹部11が形成される。この凹部11には第1実施例と同様に底面11aに至るまで酸化チタン粒子が入り込んでおり、酸化チタン層20が基材10に強固に密着しているとともに、酸化チタンによる光触媒活性層の比表面積が実質的に非常に大きいものとなっている(図6(c))。
光触媒フィルタ30は、第1実施例と同様に、空気清浄機内に収納して使用することができる。
有害物を含んだ空気は、板状の光触媒フィルタ30のオモテ面30aに流れ込み、貫通孔12を通過して裏面30bより排出される。空気が板状の光触媒フィルタ30のオモテ面30aから裏面30bへ通過する際に、空気中の有害物が基材10の表面に形成された光触媒(酸化チタン)により捕獲、分解除去される。
この光触媒フィルタ30を試料として第1実施例と同様に対比実験を行った。
図10(a)に実験結果を示す。図中、実線が第3実施例の光触媒フィルタ30で、破線が比較例の光触媒フィルタ30´である。
同図6(a)から、明らかなように、従来の光触媒フィルタ30´に較べて本第3実施例の光触媒フィルタ30の方が、容器内のホルムアルデヒドを迅速に低濃度化させることができるのがわかる。
このように本実施例の光触媒フィルタ30についても、第1実施例と同様に、酸化チタン層20が従来のものに較べて剥がれ難いのみならず、光触媒による酸化分解能力が格段に高いという効果が得られる。
しかも、第3実施例の光触媒フィルタ30は、アルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい材料を用いて基材10を用いて構成されているため、第1実施例の光触媒フィルタ30よりも割れにくく、僅かな衝撃で割れるようなことはなくなる。また強度的に強いために、薄いものを製造し易くなり、光触媒フィルタ30の薄状化を図ることができる。またアルミナセラミックよりも脆性破壊性しにくいために機械加工し易い。とりわけ、金属、プラスチックに対する機械加工は極めて容易である。また、割れにくいため形状や大きさに特に制限はない。このため、任意の形状および大きさに容易に仕上げることができる。とりわけアルミナセラミックを材料とした場合には、図6(a)、(b)に示すごとく、板状の基材10に同径の通気用の貫通孔12を狭い間隔で等間隔に配置する加工を行うことは困難であったが、プラスチックや金属を基材10とすることで、このような孔12の加工形成を容易に行うことができる。また、プラスチックなどの軽量な材料を基材10の構成材料として用いることで、光触媒フィルタ10の軽量化を図ることができる。
この実施例では、板材に円形の孔12が穿設されたプラスチック基材10を形成するようにしているが、図12に正面図として例示するように、基材10の構造、材料、孔形状は任意である。
図12(a)では、プラスチックの板材に六角形の孔を穿設することで、六角形の空気通過用の孔12を形成している。
図12(b)では、プラスチックの格子を一体形成して、四角形の空気通過用の孔12を形成している。
図12(c)では、プラスチックの丸棒同士ないしは角棒同士を垂直に交差させて格子を形成して、四角形の空気通過用の孔12を形成している。
孔12の直径ないしは縦横の幅は、0.01mm〜3mmの範囲に設定することが望ましい。
また、第3実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
図24に、図18(a)に対応する第3実施例の光触媒フィルタ30を例示する。肉厚部132には、一部を拡大して示すように、肉厚方向に連通する複数の貫通孔12、12…が形成される。
(第4実施例)
この第4実施例の光触媒フィルタ30の表層断面構造は、図7に示されるように、プラスチックなどで構成された第1の基材13の表面にアルミナセラミックなどの吸水性のある第2の基材14を形成し、そのアルミナセラミックなどからなる第2の基材14の表面に酸化チタン層20を形成した構造となっている。
すなわち、第1の基材13としては、第3実施例と同様に下記の材料を用いる。
a)プラスチックまたは金属またはガラスの単体
b)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された2以上の材料の複合体
c)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体
ここで、上記第1の基材13は、アルミナセラミックを基材とする光触媒フィルタの割れやすいという特性を改善するために、
d)少なくともアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい材料で構成されている
ことが望ましい。
e)さらに、強度的に強く、任意の形状、大きさに形成でき、軽く、薄い材料である
ことが望ましい。
第2の基材14としては、第1実施例、第2実施例と同様に吸水性のある下記の材料を用いる。
a)セラミック(アルミナセラミック含む)または石膏またはセメントまたはゼオライトの単体
b)セラミック(アルミナセラミック含む)または石膏またはセメントまたはゼオライトの群から選択された2以上の材料の複合体
上記例示される単体材料あるいは複合体を第1基材13として、その第1の基材13の表面に、第3実施例と同様にサンドブラスト、エッチングなどの技術的手法により人工的に凹部15を形成し、第1の基材13の表面凹部15内を含む当該第1の基材13の表面に、上記例示される単体材料あるいは複合体からなる第2の基材14を形成する。
第1の基材13の表面の凹部15は、第2の基材14を構成する粒子のスラリー(たとえばアルミナセラミックのスラリー)を吸収して、凹部15の底面15aに至るまで入り込むことができる程度の形状、大きさに形成されていればよい。たとえば、第1実施例、第3実施例の凹部11と同等の形状に形成し、同等の径、高さ(深さ)に設定することができる。これにより、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いて、その凹部15内に、第2の基材14を構成する粒子(たとえばアルミナ粒子)を底面15aに至るまで入り込ませることができる。
こうして第1の基材13の表面に、アルミナセラミックからなる第2の基材14が形成されると、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を適用して、アルミナセラミック層14の表面の凹部11内に酸化チタン粒子を底面11aに至るまで入り込ませるようにする。
これにより、第1実施例と同様に、第2の基材14の表面に、バインダーや添加物を用いることなく、純度の高いあるいは100%酸化チタンからなる光触媒層20を、剥離が生じないように確実に固定することができる。
以下、第1の基材13の材料に、たとえば金属、プラスチックを使用し、第2の基材14の材料に、アルミナセラミックを用いた場合を想定して製造例を説明する。
a)まず板厚方向に、空気通過用の貫通孔12が多数、等間隔に形成された板状の金属からなる第1の基材13を、形成する。構造、孔形状は、第3実施例と同様に任意である(図6(a)、(b)、図12(a)、(b)、(c))。
b)つぎに、金属からなる第1の基材13の表面にサンドブラスト処理を施し、表面に多数の凹部15を形成する。凹部15は、アルミナセラミックが底面15aまで入り込むことができる大きさ、形状に設定する。たとえば第1実施例のアルミナセラミック基材10に形成された凹部11と同程度の大きさ、形状になるように、ブラスト条件を設定して、サンドブラスト処理を施す。また、エッチング処理により、同様に第1の基材13の表面に凹部15を形成してもよい。
また、プラスチックが原材料の場合には、射出成型により、貫通孔12および凹部15が形成された板状の第1の基材13を一体成型してもよい。
c)このようにして貫通孔12および凹部15が形成された第1の基材13が作成されると、第1実施例と同様に、第1の基材13を真空容器80内に入れ、第1の基材13を微振動させつつ、真空状態にすることによって、第1の基材13の表面に形成された凹部15内から、気泡を取り除きつつ、第1の基材13の表面に対して、アルミナセラミックのスラリーを供給する。これにより気泡に阻害されることなく、アルミナ粒子が凹部15の底面15aまで入り込む。以後同様な工程な経て真空容器80から、第1の基材13を取り出し、熱処理を施し、表面にアルミナセラミック層(第2の基材)14が形成された第1の基材13を得る。これにより表面に第2の基材14が強固に密着した第1の基材13が得られる。
d)こうして表面に第2の基材14が形成された第1の基材13が作成されると、第1実施例と同様に、表面に第2の基材14が形成された第1の基材13を真空容器80内に入れ、微振動させつつ、真空状態にすることによって、第2の基材14の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除きつつ、第2の基材14の表面に対して、酸化チタンのスラリーを供給する。以後同様な工程な経て第2の基材14の表面に酸化チタン層20が形成された光触媒フィルタ30を得る。
第4実施例によれば、第1実施例、第2実施例、第3実施例と同様に、酸化チタン層20が従来のものに較べて剥がれ難いのみならず、光触媒による酸化分解能力が従来のものに較べて高い光触媒フィルタ30が得られる。また、第3実施例と同様に、少なくとも第1の基材13がアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい材料を用いて構成されているため、アルミナセラミックを材料とする従来の光触媒フィルタよりも割れにくくなる。また、強度的に強くなり、任意の形状、大きさに容易に形成でき、軽量化、薄状化を図ることができる。
また、第2の基材14を特に、アルミナセラミックで構成した場合には、光の反射性が良いという特性故に、紫外線が光触媒に効率よく照射されることになり、酸化分解能力を一層高めることができる。
また、第4実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
図24に示したのと同様に肉厚部132を構成する第1の基材13には、肉厚方向に連通する複数の貫通孔12、12…が形成される。
(第5実施例)
第4実施例では、第1の基材13、第2の基材14がセラミック以外の材料で構成される場合もあるとして説明したが、第1の基材13、第2の基材14をセラミックのみで構成する実施も可能である。
ただし、第1の基材13を、少なくともアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくいセラミックからなる材料、たとえば炭化珪素(SiC)セラミックで構成する。第2の基材14は、光の反射性の良いセラミックであるアルミナセラミックで構成する。
本第5実施例の光触媒フィルタ30の表層断面を図8に示す。
第4実施例と同様に、炭化珪素セラミックで構成された第1の基材13の表面に形成された凹部15内から気泡を取り除きつつ、第1の基材13の表面に対してアルミナセラミックのスラリーを供給する。これにより、炭化珪素セラミックで構成された第1の基材13の表面凹部15内を含む当該第1の基材13表面に、アルミナセラミックからなる第2の基材14が形成される。
つぎに、アルミナセラミックで構成された第2の基材14の表面に形成された凹部11内から気泡を取り除きつつ、第2の基材14に対して酸化チタンのスラリーを供給する。これにより、アルミナセラミックで構成された第2の基材14の表面凹部11内を含む当該第2の基材14表面に酸化チタン層20が形成される。すなわち、酸化チタンの粒子がアルミナセラミック層14の凹部11の底面11aまで入り込み、耐久性が担保される一方で、第1実施例のものと同様に材質が全体としてセラミックでありながらも、第1実施例のもの(全体がアルミナセラミック)よりも割れにくい光触媒フィルタ30を得ることができる。
セラミックからなる第1の基材13は、第1実施例と同様に ウレタンフォーム多孔質体を原材料として製造されたものであってもよく、製造が可能であれば、第4実施例と同様に、板状の部材の板厚方向に、空気通過用の貫通孔12を多数に形成したものものであってもよい。
なお、第1の基材13、第2の基材14は、セラミックであるため、特に人工的に表面に凹部15、11を形成するには及ばない。
また、第5実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
(第6実施例)
第4実施例では、第1の基材13に凹部15を形成して第2の基材14を構成する材料を入り込ませるようにしているが、凹部15の代わりに溝部16を形成して第2の基材14を構成する材料を入り込ませるようにしてもよい。
この第6実施例の光触媒フィルタ30の表層断面は、図9(b)に示される。
第4実施例と同様にプラスチックなどで構成された第1の基材13の表面にアルミナセラミックなどの吸水性のある第2の基材14を形成し、そのアルミナセラミックなどからなる第2の基材14の表面に酸化チタン層20を形成した構造となっている。
すなわち、第1の基材13としては、第4実施例と同様に下記の材料を用いる。
a)プラスチックまたは金属またはガラスの単体
b)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された2以上の材料の複合体
c)プラスチックまたは金属またはガラスの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体
ここで、上記第1の基材13は、アルミナセラミックを基材とする光触媒フィルタの割れやすいという特性を改善するために、
d)少なくともアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい材料で構成されている
ことが望ましい。
e)さらに、強度的に強く、任意の形状、大きさに形成でき、軽く、薄い材料である
ことが望ましい。
第2の基材14としては、第4実施例と同様に吸水性のある下記の材料を用いる。
a)セラミック(アルミナセラミック含む)または石膏またはセメントまたはゼオライトの単体
b)セラミック(アルミナセラミック含む)または石膏またはセメントまたはゼオライトの群から選択された2以上の材料の複合体
上記例示される単体材料あるいは複合体を第1基材13として、その第1の基材13の表面に、人工的に溝部16を形成し、第1の基材13の表面溝部16内を含む当該第1の基材13の表面に、上記例示される単体材料あるいは複合体からなる第2の基材14を形成する。
第1の基材13の表面の溝部16は、第2の基材14を構成する粒子のスラリー(たとえばアルミナセラミックのスラリー)を塗布したときに、溝部16の底面16aに至るまで入り込み、第1の基材13表面でスラリーを保持できる程度の大きさ、形状に形成されていればよい。
こうして第1の基材13の表面に、アルミナセラミックからなる第2の基材14が形成されると、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いて、アルミナセラミック層14の表面の凹部11内に酸化チタン粒子を底面11aに至るまで入り込ませる。これにより、第1実施例と同様に、第2の基材14の表面に、バインダーや添加物を用いることなく、純度の高いあるいは100%酸化チタンからなる光触媒層20を、剥離が生じないように確実に固定することができる。
人工的に溝部16を形成する技術的手法は、現在あるいは将来にわたり当業者が考えられる全ての方法を含む。たとえば、板状の部材の表面に、物理的処理あるいは化学的処理などの表面処理を施し、溝部16を形成する。化学的処理としてエッチングを施し、溝部16を形成することができる。
また、たとえば板状の部材の表面に、放電加工、レーザ加工などにより溝部16を形成することができる。
またプラスチックなどが原材料であれば、射出成型などの成型加工技術を用いて、表面に溝部16が形成された板状の部材を一体成型することができる。
また、金属などが原材料であれば、鋳造、塑性加工(プレス、鍛造など)、切削などの機械加工を用いて、表面に溝部16が形成された板状の部材を成型することができる。
図9(a)に、この第6実施例の光触媒フィルタ30を構成する第1の基材13の一部斜視図を示す。
図6(a)、(b)に示すのと同様に、複数の円形状の孔12がオモテ面30a、裏面30bを貫くように形成される。そしてこれら複数の貫通孔12の周囲の円弧部分を凸部16bに形成することで、凸部16bによって囲まれた複数の貫通孔16、16…間の平坦部16aを溝部16として構成する。溝部16は、オモテ面30a、裏面30bに設けられる。
以下、第1の基材13の材料に、たとえばプラスチック、金属を使用し、第2の基材14の材料に、アルミナセラミックを使用した場合を想定して製造例について説明する。
a)まず、プラスチックを原材料として、板厚方向に、空気通過用の貫通孔12が多数、等間隔に形成され、表面に溝部16が形成された第1の基材13を一体成型する。
また、金属を原材料として、プレス加工などによって、貫通孔12が形成された板状の部材を成型し、その板状の部材の表面に、エッチング処理により、溝部16を形成してもよい。
溝部16は、たとえばその深さ(高さ)(平坦部16a、凸部16b間の高低差)を2mmに設定することができる。溝部16は、任意の深さ(高さ)でよいが、望ましくは、0.1mm〜10mmの範囲に設定する。
b)このようにして貫通孔12および溝部16が形成された第1の基材13が作成されると、その第1の基材13の表面に対して、アルミナセラミックのスラリーを塗布する。これによりアルミナ粒子が溝部16の底面16aまで入り込み、第1の基材13の表面でアルミナセラミックのスラリーを保持することができる。以後、熱処理を施し、表面にアルミナセラミック層(第2の基材)14が強固に密着された第1の基材13を得る。
c)こうして表面に第2の基材14が形成された第1の基材13が作成されると、第1実施例と同様に、表面に第2の基材14が形成された第1の基材13を真空容器80内に入れ、第2の基材14を微振動させつつ、真空状態にすることによって、第2の基材14の表面に形成された凹部11内から、気泡を取り除きつつ、第2の基材14の表面に対して、酸化チタンのスラリーを供給する。以後同様な工程な経て第2の基材14の表面に酸化チタン層20が形成された光触媒フィルタ30を得る。
第1実施例、第3実施例と同サイズの光触媒フィルタ30を試料として第1実施例、第3実施例と同様に対比実験を行った。
図10(b)に実験結果を示す。図中、実線が第6実施例の光触媒フィルタ30で、破線が比較例の光触媒フィルタ30´である。
同図10(b)から、明らかなように、従来の光触媒フィルタ30´に較べて本第6実施例の光触媒フィルタ30の方が、容器内のホルムアルデヒドを迅速に低濃度化させることができるのがわかる。
このように本実施例の光触媒フィルタ30についても、第1実施例、第3実施例と同様に、酸化チタン層20が従来のものに較べて剥がれ難いのみならず、光触媒による酸化分解能力が従来のものに較べて高いという効果が得られる。
以上のように、この第6実施例によれば、酸化チタン層20が従来のものに較べて剥がれ難いのみならず、光触媒による酸化分解能力が従来のものに較べて高い光触媒フィルタ30が得られる。また第4実施例と同様に、アルミナセラミックを基材とする光触媒フィルタよりも割れにくく、強度的に強く、任意の形状、大きさに容易に形成でき、軽量化、薄状化された光触媒フィルタ30を製造することができる。
また、第2の基材14を特に、アルミナセラミックで構成した場合には、そのアルミナセラミックの光の反射性が良いという特性故に、紫外線が光触媒に効率よく照射されることになり、酸化分解能力を一層高めることができる。
また、第6実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
図24に示したのと同様に肉厚部132を構成する第1の基材13には、肉厚方向に連通する複数の貫通孔12、12…が形成される。
(第7実施例)
この第7実施例の光触媒フィルタ30の断面構造は、図11に示される。
第6実施例では、第1の基材13の表面の溝部16に直接第2の基材14を構成する材料のスラリーを塗布することで、光触媒フィルタ30を製造しているが、溝部16の底面16a内に更に凹部18を形成して、「気泡を取り除く」製造技術を適用して、凹部18から気泡を取り除きつつ、第2の基材14を構成する材料のスラリーを第1の基材13の表面に供給するようにして、光触媒フィルタ30を製造してもよい。
すなわち、同図11にその表層断面を示すように、第6実施例と同様にプラスチックなどで構成された第1の基材13の表面に溝部16が形成され、この溝部16の底面16a内に凹部18が形成されている。第2の基材14は、第1の基材13の溝部16内に形成された凹部18を含む当該第1の基材13の表面に、形成されている。アルミナセラミックなどの吸水性のある第2の基材14を構成する材料は、溝部16の底面16aに至るまで入り込んでいるとともに、凹部18の底面18aに至るまで入り込んでいる。これにより、第1の基材13の表面に第2の基材14が、第6実施例のものよりも一層強固に密着されることになる。
また、第7実施例においても、光触媒フィルタ30を平板状に形成してもよく、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
図24に示したのと同様に肉厚部132を構成する第1の基材13には、肉厚方向に連通する複数の貫通孔12、12…が形成される。
(第8実施例)
以上では、板状あるいは中空状の基材表面に光触媒を担持する場合を想定して説明した。しかし、粒状の基材表面に形成しても、同等の機能の光触媒フィルタ30を構成することができる。
図13(a)は、第8実施例の粒状の光触媒担持体21の集合体22を示し、図13(b)は、第8実施例の粒状の光触媒担持体21の集合体22がネットからなる収容体31に収容された光触媒フィルタ30が、空気清浄機の収納ケース41に収納される様子を示している。
図14(a)に、粒状の光触媒担持体21の表層の断面を示す。
セラミックおよびセラミックと同等の材料、つまり表面に凹部11が形成された、吸水性のある材料を用いて、粒状の光触媒担持体21を構成する粒状の基材17を取得することができる。このような材料は、
a)セラミック
b)ゼオライト
c)人工ゼオライト
d)軽石
e)石膏
d)珪藻土
が挙げられる。
上記例示される材料を破砕する等して粒状に生成するか、自然界に存在している粒状の材料を用いて粒状の基材17を取得する。
たとえば、材料を破砕し、破砕物を篩にかけて粒径を一定粒度に揃える工程を経て粒状の基材17を取得する。この場合、粒状の基材17の外観形状は、不揃いな形状のものであってもよく、たとえば球形のごとく一定の形状に揃えられたものであってもよい。たとえば破砕物が不揃いな形状である場合に一定の形状に揃える工程を付加して、一定粒度かつ一定形状(球形)の粒状の基材14を取得することができる。なお自然界に存在する粒状の材料を用いる場合でも、光触媒フィルタ30の品質を安定させるために、個々の粒状の基材17を、少なくとも一定の粒度に揃えることが望ましい。
粒状の基材17の粒径は、任意であるが、3mm〜5mmの範囲の粒径とすることが望ましい。すなわち、前述の各実施例において板状に形成した基材のサイズ(たとえば150mm×150mm×10mm)よりも小さいサイズと、集合体22と収容体31からなる光触媒フィルタ30が板状の基材と同サイズとなるようにする。
以下では、粒状の基材17が人工ゼオライトを材料として生成されるものとして説明する。天然ゼオライトや合成ゼオライトに対し,近年,石炭灰や製紙灰などの産業廃棄物をアルカリ処理して作る人工ゼオライトが注目されている。このゼオライトの原料は廃棄物であるため安価であり、リサイクルに貢献する。
このような粒状の基材17が得られると、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を適用して、粒状の基材17の表面に、酸化チタンのスラリーを供給する。これにより、人工ゼオライトで構成された粒状の基材17の表面凹部11内を含む当該基材17表面に酸化チタン層20が形成される。すなわち、酸化チタンの粒子が人工ゼオライト層17の凹部11の底面11aまで入り込み、粒状の基材17表面に酸化チタン層20が密着する。これにより、酸化チタン層20は粒状の基材17の表面から剥がれにくいものとなる。よって、光触媒フィルタ30としての耐久性を担保することができる。
こうして粒状の基材17の表面に光触媒層(酸化チタン)層20を担持した粒状の光触媒担持体21が得られると(図14(a))、粒状の光触媒担持体21を複数集め、その集合体22(図13(a))をネットからなる収容体31に収容する。収容体31は、プラスチック、ゴム、ナイロンなどの材料であって耐紫外線の材料を使用することができる(図13(b))。つぎに、収容体31に粒状の光触媒担持体21の集合体22が収容された光触媒フィルタ30を、空気清浄機の収納ケース41の収納部41a内に出し入れ口41bより収納する。なお、光触媒フィルタ30を大きなサイズとして1個収納してもよく、サイズを小さくして複数個収納してもよい。また、空気清浄機の性能に応じて、任意の個数の光触媒フィルタ30を収納ケース41に収納することができる。ここで、粒状の光触媒担持体17の集合体22は、それ自体が形状、大きさが任意に変形可能であり、変形し易い可撓性のある収容体31(ネット)内に収容されているため、収納の際に収納ケース41の収納部41aの大きさ、形状(図では矩形)に応じて変形して、収納ケース41内に確実に収納することができる(図13(b))。
なお、収容体31は、粒状の光触媒担持体21の集合体22を空間的に保持することができ、可撓性があり、空気を通過させ得る孔が形成されているものであれば、メッシュ状の袋など任意の部材を使用することができる。
集合体22を構成する個々の粒状の光触媒担持体21、21同士の間には、自ずと空隙が生じ、その空隙に有害物を含んだ空気を通過させることできる。粒状の光触媒担持体21、21同士の間の空隙に、有害物を含んだ空気が通過する際に、有害物が光触媒担持体21により捕獲、分解除去される。
ここで、複数の粒状の光触媒担持体21は、従来の板状の光触媒フィルタ30のサイズよりも小さい。このため、たとえば、空気清浄機の収納ケース41に収納したり、取り外したりする際に衝撃が加えられたとしても、その光触媒フィルタ30を構成する粒状の光触媒担持体21の割れは飛躍的に抑制されることになる。
上記の例では、収容体31がネット、メッシュ状の袋などで構成される場合を想定したが、収容体31を、金属などを材料とする変形しにくく強度の高い収容ケースとして構成してもよい。
図15(a)は、収容ケースとして構成された収容体31と、収容ケース31内に収容された粒状の光触媒担持体21の集合体22とからなる光触媒フィルタ30の正面斜視図である。図15(b)は、図15(a)に示す光触媒フィルタ30(収容ケース31)の断面図であり、オモテ面30aから裏面30bに至る空気の流れを矢印にて示している。
収容ケース31は、外観形状が平板状で、内部が空洞の筐体に構成されている。収納ケース31は、たとえば金属を材料として構成されている。収納ケース31のサイズは、前述の板状の光触媒フィルタ30と同一(150mm×150mm×10mm)サイズに設定されている。収納ケース31のオモテ面30aおよび裏面30bには、複数の同径の空気通過用の孔32、32…が等間隔で形成されている。空気通過用の孔32は、収納ケース31の板厚方向に貫通するように形成されている。
図15(a)に示すように、収納ケース31のオモテ面30aおよび裏面30bは、金属線同士を交差させた金網39を用いて構成されている。金網39のメッシュ孔は四角形に形成され、空気通過用の孔32として機能する。
しかし、このような構成は一例であり、図14(b)、図16(a)、(b)、(c)に例示するように、収納ケース31のオモテ面30aおよび裏面30bの構造、孔形状は任意である。
図14(b)では、収納ケース31のオモテ面30aおよび裏面30bをプラスチックの板材とし、その板材に円形の孔を穿設することで、円形の空気通過用の孔32を形成している。
図16(a)では、プラスチックの板材に六角形の孔を穿設することで、六角形の空気通過用の孔32を形成している。
図16(b)では、プラスチックの格子を一体形成して、四角形の空気通過用の孔32を形成している。
図16(c)では、プラスチックの丸棒同士ないしは角棒同士を垂直に交差させて格子を形成して、四角形の空気通過用の孔32を形成している。
空気通過用の孔32の直径ないしは縦横の幅は、0.01mm〜3mmの範囲に設定することが望ましい。
図15(a)に示すように、収納ケース31の天地上側の側面31aには、粒状の光触媒担持体21を出し入れする開閉自在の出し入れ口33が設けられている。たとえば収納ケース31の上側面31aに出し入れ口33を形成し、出し入れ口33を開閉自在とする扉34をヒンジなどの可倒部材を介して取り付けることができる、また、扉34を収納ケース31の本体と分離可能として、扉34を収納ケース31の上側面31aに、たとえば嵌合させることで、出し入れ口33を閉じるようにすることもできる。
よって、図13の例と同様にして、粒状の光触媒担持体21を複数集め、その集合体22を収容ケース31の扉34を開いて出し入れ口33より投入し、収容ケース31内に収容する(図15(a))。つぎに、扉34を閉じ、図13(b)と同様に収容ケース31に粒状の光触媒担持体21の集合体22が収容された光触媒フィルタ30を、空気清浄機の収納ケース41に収納する。なお、光触媒フィルタ30を大きなサイズとして1個収納してもよく、サイズを小さくして複数個収納してもよい。また、空気清浄機の性能に応じて、任意の個数の光触媒フィルタ30を収納ケース41に収納することができる。収容ケース31は、収納ケース41の収納部41aに応じた大きさ、形状(矩形)に形成されているため、収納ケース41内に確実に収納することができる。
図15(b)に示すように、有害物を含んだ空気は、収容ケース31のオモテ面30aの孔32に流れ込み、各粒状の光触媒担持体21、21同士の間を通過し、収容ケース31の裏面30bの孔32を介して外部に排出される。
集合体22を構成する個々の粒状の光触媒担持体21、21同士の間には、自ずと空隙が生じているため、その空隙に有害物を含んだ空気が通過する。この空隙を空気が通過する際に、粒状の光触媒担持体21の表面に形成された光触媒(酸化チタン)により有害物が分解除去される。
しかも、個々の粒状の光触媒担持体21は、小さく割れにくく、しかも収容ケース31内に収納されて保護されているため、外部からの衝撃が直接粒状の光触媒担持体21に加えられることがなくなり、内部の粒状の光触媒担持体21の割れを一層抑制することができる。
この第8実施例では、人工ゼオライトなどの吸水性のある材料を用いて粒状の光触媒担持体21を生成する場合を想定したが、酸化チタンを表面に担持することができるのあれば、金属、プラスチック、ガラスなどの他の任意の材料を用いることができる。また単体の材料の複合体とすることもできる。この場合、粒状の材料の表面に人工的に凹部11を形成し、「気泡を取り除く」製造技術を用い酸化チタンを強固に担持させることが望ましい。
また、第8実施例においても、第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様に光触媒フィルタ30を中空状に形成し、中空状に形成した光触媒フィルタ30を用いて空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。この場合、収容体31を図18(a)と同様に中空状に形成することで光触媒フィルタ30を中空状に形成することができる。
図25は、図18(a)に対応する光触媒フィルタ30を示しており、収容体31が円筒形状に形成され、光触媒フィルタ30が円筒形状に形成されている。収容体31の内部には、一部を拡大して示すように、複数の粒状の光触媒担持体21、21…が収容される。図18(b)と同様に紫外線ランプ140を中空部131に所定の大きさの隙間をもって配置させるには、収容体31としては、その形状を保持するために、金属などを材料とする変形しにくく強度の高い収容ケースであることが望ましい。なお、ある程度の形状を保持することができるのであれば収容体31をネット、メッシュ状の袋などで構成してもよい。
(第9実施例)
第3実施例では、プラスチックなどを基材10として、その基材10の表面に、人工的に凹部を形成し、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いて、その凹部11内に酸化チタン粒子を底面11aに至るまで入り込ませるようにして光触媒フィルタ30を製造する方法について説明した(図6(c))。
しかし、更に強固に酸化チタンなどの光触媒層20を剥離し難くするために、凹部11内表面に微細な凹凸を形成する実施も可能である。
図27は、第9実施例の光触媒フィルタ30であり、図27(a)は、光触媒フィルタ30の正面図、図27(b)は、図27(a)のA−A断面図である。
光触媒フィルタ30は、プラスチック、望ましくは耐紫外線のプラスチック、たとえばABSを材料とする基材10の表面に酸化チタン層などの光触媒層20を形成してなるものであり、図6(b)と同様に平板状に形成されている。
平板の基材10は、ルーバ構造となっている。すなわち、平板の基材10は、枠板37内が仕切り板38によって仕切られ、枠板37と仕切り板38とによって仕切られた枠内に、複数の羽板39、39…が図中上下方向に一定間隔で配置された構造となっている。羽板39は、基材10の断面でみたとき、オモテ面30a側が下がり裏面30b側が上がるように板厚方向に対して所定の傾斜角度αをもって配置されている。かかるルーバ構造の光触媒フィルタ30は、傾斜角度α、羽板39の長さ、幅、羽板39の図中上下方向の配置間隔の大きさによって、オモテ面30a、裏面30b間における光の遮蔽効率、空気の通過量を調整することができる。
図28(a)は、光触媒フィルタ30の表層部を示す図で、図28(b)は、図28(a)の凹部11を拡大して示す図である。
同図28に示すように、図6(c)と同様に、プラスチックからなる材料を基材10として、その基材10の表面に、人工的に複数の凹部11が形成され、かつ基材10の表面に、凹部11よりも細かい複数の微細凹凸11bが形成される。したがって、凹部11内にも微細凹凸11bが形成されることになる。
かかる基材10を製造するには、たとえば、まず、金型の原板に、ルーバ構造の型(仕枠板37、切り板38、羽板39に応じた型)を形成する。つぎに複数の凹部11、11、…に応じた型を形成する。つぎに、金型にサンドブラスト処理を施して複数の微細凹凸11b、11b…に応じた型を形成する。こうして基材10を成形するための金型が形成されると、金型に、溶融したプラスチック材料を投入して、たとえば射出成形により、表面に複数の凹部11、11…が形成され、さらに表面に複数の微細凹凸11b、11b…が形成された基材10を成形する。
こうして基材10が製造されると、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いて、その凹部11内に酸化チタン粒子を底面に至るまで入り込ませるようにして光触媒フィルタ30を製造する。なお、微細凹凸11bによる酸化チタン粒子のアンカー効果が極めて高いものであるため、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いることなく従来の製造方法を用いて光触媒層20を形成してもよい。なお、光触媒層20の厚さは、凹部11の深さに応じて調整することができる。
また、本実施例では、基材10がプラスチックで構成されている場合を例にとり説明したが、第3実施例で例示した他の材料で構成された基材10を用いる実施も可能である。
第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いることなく従来の製造方法を用いて光触媒フィルタ30を製造する方法は、以下のとおりとなる。
まず、プラスチックまたは金属またはガラスの単体、あるいはこれらの群から選択された2以上の材料の複合体、あるいはこれらの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体からなる基材であって、金型に材料を供給することによって製造され得るものを基材として用意する。
つぎに、金型に、複数の凹部11、11…に応じた型を形成するとともに、金型にサンドブラスト処理を施すことにより当該凹部11、11…よりも細かい複数の微細凹凸11b、11b…に応じた型を形成する。
つぎに、金型に材料を供給することにより、表面に複数の凹部11、11…および複数の微細凹凸11b、11b…が形成された基材10を製造する。
つぎに、基材11の表面に、光触媒のスラリーを供給することにより、基材11の表面に光触媒層20が形成された光触媒フィルタ30を製造する。
本実施例の製法により製造された光触媒フィルタ30は、微細凹凸11bによる酸化チタン粒子のアンカー効果と相まって、表面に酸化チタンからなる光触媒層20が強固に密着して、極めて剥離し難いものとなる。このように耐久性が高く酸化分解能力の高い光触媒フィルタ30を製造することができる。
図27に示される板状のルーバ構造の光触媒フィルタ30は、前述の各実施例で説明した板状の光触媒フィルタ30と同様にして、室内用空気清浄機、自動車内用空気清浄機、ダクト内清浄用、配管内清浄用などの各種用途に用いることができる。
たとえば図29に断面図にて示すように、図13(b)に示すのと同様の収納ケース41内に、紫外線ランプ140、140、140を挟んで図中左右にそれぞれ、図27に示される板状のルーバ構造の光触媒フィルタ30、30を配置、収納し、これを図中左右方向に空気の流れが形成されるように、空気清浄機の筐体内あるいはダクト内あるいは配管内に配置する。この場合、紫外線ランプ140に対面する光触媒フィルタ30の面は、裏面30b側となるように配置することが望ましい。このように配置することで紫外線ランプ140によって発生した紫外線が効率よく光触媒層に照射されるとともに、紫外線の遮蔽効率を向上させることができる。
光触媒フィルタ30における図中上下方向の羽板39、39間の隙間は、前述した貫通孔12と同様に空気通過用の孔として機能する。
図示しないファンなどによって空気の流れが形成されると、矢印に示すごとく、図中左側の光触媒フィルタ30における図中上下方向の羽板39、39間の隙間を介して空気が通過して、紫外線ランプ140が配置された空間に流れ込み、さらに図中右側の光触媒フィルタ30における図中上下方向の羽板39、39間の隙間を介して空気が通過して、図中右側(空気清浄機の排出口あるいはダクト内後方あるいは配管内後方)に排出される。
このため光触媒層としての酸化チタン層20に紫外線が照射され、空気が光触媒フィルタ30を通過する際に、空気中の有害物が酸化分解される等して当該有害物が光触媒フィルタ30にて捕獲、分解除去される。
図27は、ルーバ構造の光触媒フィルタ30を板状に形成した場合を例示しているが、ルーバ構造の光触媒フィルタ30を中空状に形成してもよい。
図30は、ルーバ構造の光触媒フィルタ30を円筒形状に形成した場合を例示している。
図30(a)は斜視図で、図30(b)は断面図である。
同図30に示すように、ルーバ構造の光触媒フィルタ30は、第1実施例で説明した中空状の光触媒フィルタ30と同様に、中空部131と肉厚部132とからなり、中空部131に紫外線ランプ140が挿入、配置される。肉厚部132は、図27(a)を展開図として同図27(a)に示される板状の光触媒フィルタ30を同図27(a)の上下方向が周方向となるようにロール状に形成してなるものであり、オモテ面30aが外周側、裏面30bが内周側となるように形成される。
図30では、ルーバ構造の中空状の光触媒フィルタ30を円筒形状としているが、あくまでこれは一例であり、図20(a)、図21(a)と同様にルーバ構造の中空状の光触媒フィルタ30の断面は四角形であってもよい。
第1実施例の図18〜図23、図26で説明したのと同様にして、ルーバ構造の中空状の光触媒フィルタ30を用いて、空気清浄機200を構成したり、ダクト210内、配管211内に配置することができる。
(第10実施例)
図32(b)は、第9実施例に示される製法によって製造される光触媒フィルタ30の作用を概念的に示す断面図である。
図示しない紫外線ランプの紫外線Lが光触媒層である酸化チタン層20に照射されると、励起され活性化された光触媒と空気中の有害物とが反応して、有害物が酸化分解され、二酸化炭素等の酸化分解生成物11d(反応生成物)が生成され、光触媒フィルタ30の表面に堆積する。とりわけ二酸化炭素ガスの比重は空気より重く、凹部11に堆積され易く、凹部11に堆積された二酸化炭素等の酸化分解生成物11dは、容易に除去することができない。かかる光触媒フィルタ30の表面に堆積された酸化分解生成物11dは、紫外線Lの酸化チタン層20への照射を阻害する。したがって、光触媒フィルタ30を長期使用すると、有害物を酸化分解する能力が低下するおそれがある。
この第10実施例の目的は、紫外線Lの酸化チタン層20への照射を阻害することのないように酸化分解生成物11dを除去することにある。
以下では、図27で説明したルーバ構造の光触媒フィルタ30を想定して説明する。
図31は、第10実施例に用いられる基材10を例示した図であり、ルーバ構造の光触媒フィルタ30を構成する基材10を示した図である。図31(a)は、基材10のうち羽板39の部分を上面からみた図で、図31(b)は、羽板39の断面図で、図31(c)は、羽板39の表面を一部拡大して示す斜視図である。
同図31(a)に示すように、羽板39の表面には、上面からみて、所定の直径d1(たとえば1.5mm)を有する円形状の凹部11、11…が複数、羽板39の幅方向、長さ方向、つまり図中上下方向および図中左右方向に所定のピッチPT1(たとえば2mm)で形成されている。さらに、羽板39の表面には、図中破線にて示すように、複数の凹部11、11…を横断する溝であって、光触媒層による有害物の酸化分解生成物11dが導かれる溝11cが形成されている。溝11cは、図中上下方向および図中左右方向に、凹部11のピッチPT1と同ピッチにて、凹部11の中心で互いに垂直に交差するように形成されている。図31(b)に示すように、凹部11は、所定の深さdp1(たとえば0.3mm)を有しており、図中破線にて示すように溝11cについても同じ深さdp1を有している。溝11cの深さdp1および幅は、酸化分解生成物11dを当該溝11cに導き、紫外線Lの酸化チタン層20への照射を阻害することのないように酸化分解生成物11dを除去することができる程度の値に定められる。
図31(c)に拡大して示すように、羽板39たる基材10の表面には、第9実施例と同様に、複数の微細凹凸11bが形成されている。
さらに、図32(a)に断面図にて示すように、基材10の表面に酸化チタン層20が形成されて、光触媒フィルタ30が製造されることになる。かかる光触媒フィルタ30を製造するにあたっては、第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いてよく、用いなくてもよい。
また、基材10をプラスチックで構成してもよく、第3実施例で例示した他の材料で構成された基材10を用いてもよい。
第1実施例と同様の「気泡を取り除く」製造技術を用いることなく従来の製造方法を用いて光触媒フィルタ30を製造する方法は、以下のとおりとなる。
まず、プラスチックまたは金属またはガラスの単体、あるいはこれらの群から選択された2以上の材料の複合体、あるいはこれらの群から選択された1以上の材料とセラミックとの複合体からなる基材であって、金型に材料を供給することによって製造され得るものを基材として用意する。
つぎに、金型に、複数の凹部11、11…に応じた型を形成するとともに、金型にサンドブラスト処理を施すことにより当該凹部11、11…よりも細かい複数の微細凹凸11b、11b…に応じた型を形成する。また金型に、複数の凹部11、11…を横断する溝11c、11c…に応じた型を形成する。溝11cを先に形成してから凹部11を形成してもよく、凹部11を先に形成してから溝11cを形成してもよい。
つぎに、金型に材料を供給することにより、表面に複数の凹部11、11…および複数の微細凹凸11b、11b…が形成された基材10を製造する。
つぎに、基材11の表面に、光触媒のスラリーを供給することにより、基材11の表面に光触媒層20が形成された光触媒フィルタ30を製造する。
本実施例の製法により製造された光触媒フィルタ30は、微細凹凸11bによる酸化チタン粒子のアンカー効果と相まって、表面に酸化チタンからなる光触媒層20が強固に密着して、極めて剥離し難いものとなる。このように耐久性が高く酸化分解能力の高い光触媒フィルタ30を製造することができる。
さらに本実施例の製法により製造された光触媒フィルタ30は、酸化分解生成物11dを溝11cに導くことで酸化分解生成物11dを除去して、紫外線Lの酸化チタン層20への照射を阻害することのないようにすることができる。
図32(a)は、第10実施例に示される製法によって製造される光触媒フィルタ30の作用を概念的に示す断面図である。
図示しない紫外線ランプの紫外線Lが光触媒層である酸化チタン層20に照射されると、励起され活性化された光触媒と空気中の有害物とが反応して、有害物が酸化分解され、二酸化炭素等の酸化分解生成物11d(反応生成物)が生成される。生成された酸化分解生成物11dは、図中矢印に示すごとく、溝11cに集中的に導かれ、光触媒フィルタ30の表面、とりわけ凹部11から除去される。このため光触媒フィルタ30を長期使用したとしても、酸化分解生成物11dが、光触媒フィルタ10の表面のとりわけ凹部11に堆積することを抑制でき、有害物を酸化分解する能力の低下を抑制することができる。これにより光触媒フィルタ30の耐久性が飛躍的に向上する。
なお、図31では、溝11cが羽板39の幅方向、長さ方向に所定のピッチPT1で凹部11の中心で垂直に交差するように形成される場合を例にとり説明したが、溝11cの形成態様は任意であり、図33(a)に示すように、羽板39の斜め方向に形成してもよく、図33(b)に示すように、凹部11に1本の溝11cのみが横断するように形成してもよい。
なお、以上の説明では、板状あるいは中空状の光触媒フィルタ30が空気清浄機内に収納される場合や板状あるいは中空状の光触媒フィルタ30がダクト内あるいは配管内に設けられる想定して説明したが、これは一例であり、工場、ビルディング等の建屋の空気取り入れ口、換気扇、室内用あるいは自動車用エアコンデショナの排気ダクトなど任意の場所に、その場所に応じた形状、大きさに光触媒フィルタ30を形成して、設置することができる。
また、実施例では、光触媒フィルタ30に空気を通過させるようにして空気内の有害物を除去する場合を想定したが、光触媒フィルタ30に工場排水等の液体を通過させるようにして液体内の有害物を除去する実施も当然可能である。