JP5392754B2 - 錫含有ペースト、錫含有ペーストの製造方法、および、リチウムイオン二次電池用電極 - Google Patents
錫含有ペースト、錫含有ペーストの製造方法、および、リチウムイオン二次電池用電極 Download PDFInfo
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Description
また、錫膜をメッキにより形成することも可能であるが(特許文献5〜7)、メッキ処理および洗浄処理等が必要となり、製法上効率が悪く、また、溶媒を多量に使用するため、環境上好ましい方法ではなかった。
本発明の錫含有ペーストは、有機金属化合物として蓚酸錫、テトラエチレングリコール(TEG)および1,2−ジアミノシクロヘキサン(DAC)を含有している。該蓚酸錫、TEGおよびDACの割合は、モル比で、1:「2以上4以下」:「2以上4以下」(蓚酸錫:TEG:DAC)であり、好ましくは、1:「2.5以上3.7以下」:「2.5以上3.7以下」(蓚酸錫:TEG:DAC)であり、さらに好ましくは1:「2.8以上3.7以下」:「2.8以上3.7以下」(蓚酸錫:TEG:DAC)であり、特に好ましくは1:「3.0以上3.5以下」:「3.0以上3.5以下」(蓚酸錫:TEG:DAC)である。
本発明の錫含有ペーストの製造方法は、混合工程、撹拌工程、および、加熱工程を備えている。得られた錫含有ペーストは、集電体上に塗布し、所定条件で熱処理することにより、集電体上に錫膜が形成され、リチウムイオン二次電池用電極となる。図1に錫含有ペーストおよびリチウムイオン二次電池用電極の製造方法のフローチャートを示した。
混合工程においては、蓚酸錫、TEGおよびDACを所定のモル比おいて混合して混合体を形成する。所定のモル比ついては、上記した通りである。
撹拌工程においては、上記で得た混合体を、増粘現象が見られるまで均一混合を行い、撹拌体を形成する。撹拌時間は、好ましくは50時間以上、より好ましくは70時間以上、さらに好ましくは100時間以上である。混合時間が少なすぎると、粘度が十分に大きくならず、最終的に得られるペーストにより、均一な錫膜が形成できない虞がある。また、混合時間の上限は、特に限定されないが、300時間撹拌すれば十分であり、効率の点からは好ましくは200時間以下である。撹拌方法は、特に限定されず、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー等の従来の撹拌方法が採用できる。
例えば、マグネチックスターラーを用いた撹拌においては、回転数を、好ましくは50〜200rpm、より好ましくは70〜150rpm、さらに好ましくは110〜130rmpとして、上記の時間撹拌すれば、適度に増粘した撹拌体が形成される。
加熱工程においては、上記で得た撹拌体を、所定温度にて、所定時間加熱して、錫含有ペーストが形成される。該加熱工程により、撹拌体の粘度がさらに増し、緻密な錫膜を形成し得る錫含有ペーストとすることができる。加熱温度は、下限は好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、上限は好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。加熱温度が低すぎると増粘効果が得られない虞があり、また、加熱温度が高すぎると反応が過度に生じるため、撹拌体が固化してしまう虞がある。
上記で形成した錫含有ペーストを集電体上に塗布し、焼成することにより、集電体上に錫膜が形成され、これがリチウムイオン二次電池用電極となる。焼成条件は特に限定されず、通常の金属ペーストを焼成する条件を採用できるが、例えば、3vol.%水素混合窒素気流中で熱処理することにより錫膜を形成できる。本発明の錫含有ペーストは、リチウムイオン二次電池用電極形成用として、特に、負極形成用のペーストとして有用である。
蓚酸錫、テトラエチレングリコール(TEG)および1,2−ジアミノシクロヘキサン(DAC)をモル比で1:3:3の割合で混合し、マグネチックスターラーにより室温で 120時間撹拌を行う(回転数:120rpm)ことにより混合分散体を得た。
蓚酸錫、TEGおよびDACのモル比を、1:2.5:2.5に変更した以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
蓚酸錫、TEGおよびDACのモル比を、1:3.5:3.5に変更した以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
蓚酸錫、TEGおよびDACのモル比を、1:2.5:3.5に変更した以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
室温での撹拌時間を72時間とした以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
加熱工程の加熱温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
加熱工程の加熱温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを得た。
また、図4のFE−SEM写真に示すように、緻密な膜が形成されていた。さらに、表面粗さ測定機による測定結果は、平均膜厚1.90μmであり、算出した比抵抗の値は、1.25×10−1[Ω・cm]であった。
表1に示すように蓚酸錫、TEG、およびDACの混合割合を変化させた以外は、実施例1と同様にして錫含有ペーストを調製し、錫膜を形成した。
これに対し、比較例1〜3、5〜7の混合分散体は、120時間撹拌したとしても、粘度の増加は少なく、好ましい範囲の粘度には至らなかった。さらに、比較例1〜7において、加熱処理した後の錫含有ぺ−ストの粘度の増加は十分ではなく、好ましい範囲の粘度には至らなかった。
また、実施例2〜4においては、撹拌工程において、いずれも増粘が確認され、撹拌体の粘度の高さは、実施例2>実施例4>実施例3であった。また、実施例2の条件での撹拌体は、まれに増粘しすぎることがあった。加熱工程後のペーストは、実施例3の条件のペーストは、適度な粘性であったが、実施例2および4のペーストは、固化してしまうことがあった。
実施例5のペーストを用いて作製した錫膜は、塗布した形通りに膜が形成されていたが、目視でわかるくらいのクラックが一部生じていた。
参考例1のペーストでは、加熱温度が低すぎるため、増粘現象はあまり生じず、形成される膜は形の崩れたものであった。参考例2のペーストでは、加熱温度が高すぎるため、ペーストが急激な増粘により固化する傾向が見られた。
加熱処理前の混合時間を、1時間(参考例3)、24時間(参考例4)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様にして錫含有ペーストを調製し、錫膜を形成した。
Claims (7)
- 有機金属化合物として蓚酸錫、テトラエチレングリコールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンを含有してなり、
該蓚酸錫、テトラエチレングリコールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンの割合がモル比で、1:「2以上4以下」:「2以上4以下」である、錫含有ペースト。 - 前記蓚酸錫と、前記テトラエチレングリコールおよび前記1,2−ジアミノシクロヘキサンとを混合して撹拌し、その後、加熱処理して得られる、請求項1に記載の錫含有ペースト。
- 前記撹拌が、50時間以上行われる、請求項2に記載の錫含有ペースト。
- 前記加熱処理が、80度以上130度以下において、30分以上90分以下行われる、請求項2または3に記載の錫含有ペースト。
- 集電体上に塗布し、焼成してリチウムイオン二次電池の電極膜を形成するために使用される、請求項1〜4のいずれかに記載の錫含有ペースト。
- 蓚酸錫、テトラエチレングリコールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンを、モル比で、1:「2以上4以下」:「2以上4以下」にて混合して混合体を形成する混合工程、
該混合体を、50時間以上撹拌して撹拌体を形成する撹拌工程、および、
該撹拌体を、80度以上130度以下において、30分以上90分以下加熱する加熱工程、を備えてなる、錫含有ペーストの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の錫含有ペーストを、集電体上に塗布し、焼成して形成される、リチウムイオン二次電池用電極。
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