JP5390260B2 - 一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物 - Google Patents
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これらは、その用途に応じて、適切な粘度・粘性に調整される。たとえば、接着剤をロール塗布する場合にはロール塗布性が良好となるように、くし目ヘラ等で塗布する場合にはヘラ塗り(ヘラさばき)が良好となるように、粘度・粘性が調整される。
このような粘度・粘性の調整手段としては種々の手段が考えられるが、多くの場合、低粘度化するためには、ウレタン系接着剤中に、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤を添加し希釈するのが一般的であった。
仮に低粘度化が達成できたとしても、くし目ヘラで塗布される用途では下地に不陸と呼ばれる凹凸があるために、不陸に対応できるくし目ヘラのヤマ立ち(くし目立ち)がないと接着不良等の不具合を発生してしまう可能性があった。また、低粘度でくし目のヤマ立ちが良好であれば接着剤の機能を充分に果たすが、接着剤が糸を引くような粘性であると作業中に接着剤で現場を汚すことが多くなるため、低粘度でくし目のヤマ立ちが良好且つ、接着剤のキレがよいものが望まれていた。
重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤を用いることで、VOCに該当しない希釈剤を用いつつ、適切な粘度に調整することができると共に、くし目のヤマ立ちとキレが良好な湿気硬化型ウレタン系接着剤を得ることができる。
添加剤としてポリエチレン繊維を含有することによって、くし目のヤマ立ちとキレの両立が可能となる。
さらに、添加剤(C)がシリカを含有することによって、さらにくし目のヤマ立ちとキレの両立が良好となる。
以下、本発明における一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を構成する各要素について詳細に説明する。
本発明におけるウレタンプレポリマー(A)としては、従来公知のウレタンプレポリマーを用いることができる。従来公知のウレタンプレポリマーは、分子末端に2個以上の活性水素を有する化合物とポリイソシアネート化合物との反応により得られる、分子末端に活性なイソシアネート基を有するものである。末端に活性水素を2個以上有する化合物としては、分子量100〜20,000程度の2官能以上のポリオール等が使用され、それらは使用目的や性能によって使い分ければよい。ポリオールとしては、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオールやポリオレフィンポリオール等を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、NCO/OHの比率が2.0を上回って高くなるほど、未反応のポリイソシアネート化合物が存在するので、これらの希釈効果によってウレタンプレポリマーの粘度は低くなる。また、所望の性能を得るために2種類以上のウレタンプレポリマーを混合して使用したり、ウレタンプレポリマーに後添加で上記ポリイソシアネート化合物を配合したりしてもよい。
本発明における充填剤(B)は、適切な粘度・粘性を付与することが出来、くし目ヘラの山立ちが良好なものであれば特に限定されないが、なかでも重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤が好適である。なお、本件において重質炭酸カルシウムとは結晶質石灰石を微粉砕し、これを分級したものを指す。
重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤の市販品としては、SCPE−2315(三共精粉株式会社製/商品名)やスノーライトSSS、MC−E20(丸尾カルシウム株式会社製/商品名)等が挙げられる。
本発明における添加剤(C)は、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物に対して、適切な粘度と粘性を付与する目的のために配合されるものである。このような添加剤のうち好適なものとしてはポリエチレン繊維やシリカがあり、これらを配合すると塗布作業性、くし目のヤマ立ち、キレ及び、接着剤被膜の凝集力が更に付与される。
これらのポリエチレン繊維やシリカは市販品を用いることもできる。ポリエチレン繊維の市販品としてはケミベスト(三井化学株式会社製/商品名)等が好適に用いられる。また、シリカの市販品としては、アエロジル#200、R972、RY200(日本アエロジル株式会社製/商品名)等が好適に用いられる。
本発明における希釈剤(D)は、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物において、希釈作用によりその粘度を低下させる目的のために配合されるものであり、且つ、JIS A 1901:2003で規定される「小型チャンバー法試験」においてVOCに該当しないものである。
ここで、JIS A 1901:2003で規定される「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定試験−小型チャンバー法」について説明する。
この試験の方法は、標準状態で(23±2℃)でステンレス板または、ガラス板の上に接着剤を塗布し養生し、試験体とする。その際の条件は以下の通りである。
接着剤塗布量:300±15g/m2 塗布面積:80cm2 養生時間:60±10分 養生環境:23±2℃
養生が終了した試験体をチャンバー容量が20Lの小型チャンバーに静置し、以下の条件で試験を開始する。
試験温度:28±1℃ 相対湿度:50±5% 換気回数:0.5±0.05回/h 試料負荷率:0.4m2/m3。この条件下で7日間養生し、以下の条件でVOCおよび、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物を捕集した。
VOCの場合 捕集管:TENAX−TA 空気捕集量:3.2L
ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物 捕集管:DNPHカートリッジ 空気捕集量:10L
捕集したVOCは捕集管を加熱脱着装置に取り付け、加熱によってVOCを脱離させ、質量分析計付きガスクロマトグラフを使用して測定した。
また、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の場合はDNPHカートリッジ内のカルボニル化合物DNPH誘導体はアセトニトリルを用いて溶解させ脱離後、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。
VOCの判定基準としてはガスクロマトグラフにおいて分析した、n−ヘキサンからn−ヘキサデカンまでの範囲で検出された物質をVOCとし、ここではピーク面積の総和を用いてトルエンに換算して求めた値を示した。
本発明に係る一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物は、上記のウレタンプレポリマー(A)、充填剤(B)、添加剤(C)、希釈剤(D)を含有するものであるが、本発明の第一の目的(すなわち低VOC型接着剤を得る)を達成し得る範囲において、従来公知の任意成分が含有されていてもよい。例えば、重質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、珪砂等の充填剤、酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料或いは顔料等の着色剤、粘接着付与剤、増粘剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤等の任意成分が含有されていてもよい。
2官能ポリプロピレングリコール(Mn=4000)800質量部と、3官能ポリプロピレングリコール(Mn=3000)200質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)470質量部とを、2Lのセパラブルフラスコに仕込み、90℃で3時間窒素気流下で反応させて、NCO質量%が9%であるウレタンプレポリマーを含有する反応生成物「ウレタン系組成物(a1)」を得た。
このウレタン系組成物(a1)600質量部、重質炭酸カルシウムであるNS♯100(日東粉化社製)250質量部、重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤であるSCPE−2315(三共精粉株式会社製)350質量部、脱水剤としてPTSI(日本曹達社製/p−トルエンスルホニルイソシアネート)2質量部、希釈剤であるDINA(田岡化学社製/アジピン酸ジイソノニル)80質量部、同じく希釈剤であるDBS(豊国製油社製/セバシン酸ジブチル)10重量部を、2Lのプラネタリーミキサーに投入し、減圧下で40分間撹拌して、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
実施例1で用いたポリプロピレングリコール及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートをいずれもBHT(ジブチルヒドロキシトルエン/酸化防止剤)が配合されていないものを使用し、実施例1と同様の方法でNCO質量%が9%であるウレタンプレポリマーを含有する反応生成物「ウレタン系組成物(a2)」を得た。
このウレタン系組成物(a2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
実施例2で得られた一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物1292質量部に、さらにポリエチレン繊維であるケミベストFDSS−2(三井化学株式会社製)3重量部を加えた以外は、実施例2と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
実施例3で得られた一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物1295質量部に、さらにシリカであるアエロジル#200(日本アエロジル株式会社製)5重量部を加えた以外は、実施例3と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
表面処理を施した重質炭酸カルシウムの代わりに、表面処理合成炭酸カルシウムであるシーレッツ200(丸尾カルシウム社製/一次粒子径(電子顕微鏡観察による)0.07μm)を用いた以外は実施例2と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤の代わりに、重質炭酸カルシウムであるNS#100を350質量部(すなわち、NS#100を合計600質量部)に変えた以外は実施例4と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
実施例1で用いた希釈剤(DINA及びDBS)を、アイソパーH(エクソンモービル社製/小型チャンバー法試験においてVOC成分を含有する)90質量部に変えた以外は実施例2と同様の方法で一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を得た。
スレート板に、塗布量が約550g/m2となるように、5℃の雰囲気下で、くし目ヘラ(コニシ株式会社製 E−8型くし目ヘラ)にて、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を塗布した。なお、接着剤は24時間以上5℃下で放置したものを用いた。その時のくし目ヘラの抵抗感から、以下の3段階で評価した。
(評価基準)
○:接着剤塗布時のくし目ヘラの抵抗感が小さく、塗布作業性は良好といえる。
△:接着剤塗布時のくし目ヘラの抵抗感がやや大きく、塗布作業性は不十分であるといえる。
×:接着剤塗布時のくし目ヘラの抵抗感が非常に大きく、塗布作業性は不良であるといえる。
なお、実用上は○又は△であれば問題なく使用可能と判断できる。
スレート板に、塗布量が約550g/m2となるように、23℃の雰囲気下で、くし目ヘラ(コニシ株式会社製 E−8型くし目ヘラ)にて、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を塗布した。その時のくし目ヘラのヤマ立ちを、以下の3段階で評価した。
(評価基準)
○:くし目ヘラのヤマ立ちがよく、現場の不陸に十分対応できるといえる。
△:くし目ヘラのヤマ立ちがやや悪く、現場の不陸に対応できない場合がある。
×:くし目ヘラのヤマ立ちが悪く、現場の不陸に対応できない。
なお、実用上は○又は△であれば問題なく使用可能と判断できる。
スレート板に、塗布量が約550g/m2となるように、23℃の雰囲気下で、くし目ヘラ(コニシ株式会社製 E−8型くし目ヘラ)にて、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物を塗布した。その時の接着剤のキレを、以下の4段階で評価した。
(評価基準)
◎:接着剤のキレが非常によく、現場を汚さない。
○:接着剤のキレがよく、現場汚しにくいといえる。
△:接着剤のキレがやや悪く、現場汚す場合がある。
×:接着剤のキレが悪く、現場を汚す。
なお、実用上は◎、○又は△であれば問題なく使用可能と判断できる。
JIS A 5536に準じた方法で試験を行った。なお、その際の被着体はコンパネ/スレート板とし、評価は以下の通りとした。
(評価基準)
○:接着強さが1N/mm2以上または、被着体の材料破壊。
△:接着強さが1N/mm2以上であるが、被着体の材料破壊が観られない。
×:接着強さが1N/mm2以下または、被着体の材料破壊が観られない。
なお、実用上は○又は△であれば問題なく使用可能と判断できる。
JIS A 1901:2003で規定される「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定試験−小型チャンバー法」に準じて試験を行い、試験7日後のTVOC放散量と放散速度を測定した。その際の評価は以下の通りとした。
(評価基準)
◎:放散量、放散速度とも50以下
○:放散量、放散速度とも150以下
△:放散量、放散速度とも400以下
×:放散量、放散速度とも400以上
表の結果より、本発明に係る一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物(実施例1〜4)は、塗布作業性に優れるとともに、接着剤のヤマ立ち、接着剤のキレ、接着剤の凝集力、VOC放散量のいずれについても実用上問題ないレベルにあることがわかる。
一方で、本発明の構成要件を欠く比較例1〜3の一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物においては、何れかの評価試験項目において実用上の問題点があることがわかる。
Claims (2)
- 分子末端に2個以上の活性水素を有するポリオールとポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマー(A)、充填剤(B)、添加剤(C)、希釈剤としてJIS A 1901:2003で規定される小型チャンバー法試験において揮発性有機物質に該当しない成分(D)とを含有する湿気硬化型ウレタン系接着剤であって、
充填剤(B)が重質炭酸カルシウムに表面処理を施した充填剤であることを特徴とする一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物。 - 添加剤(C)がポリエチレン繊維及び/又はシリカを含有することを特徴とする、請求項1に記載の一液湿気硬化型ウレタン系接着剤組成物。
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