JP5388937B2 - 電圧非直線抵抗体及び電圧非直線抵抗体を搭載した避雷器 - Google Patents

電圧非直線抵抗体及び電圧非直線抵抗体を搭載した避雷器 Download PDF

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本発明は、避雷器、サージアブゾーバーなどに好適に用いられる電圧非直線抵抗体及び電圧非直線抵抗体を搭載した避雷器に関するものである。
従来、避雷器、サージアブゾーバーなどに用いられる電圧非直線抵抗体は、主成分である酸化亜鉛(ZnO)に電圧非直線性の発現に必須である酸化ビスマスをはじめ、電気特性の改善に有効な添加物を添加した組成物を粉砕、混合、造粒、成形、焼成及び後熱処理の各工程を経た焼結体からなり、この焼結体に電極と側面高抵抗層とを設けることによって構成されている。
電圧非直線抵抗体の動作は、サージエネルギーが印加されない待機状態と、サージエネルギーが加わる動作状態に大きく分けられる。現在、電圧非直線抵抗体は、待機時に常に両端に電圧が印加されるギャップレス構造で用いられることが主流である。そのため、待機時に素子を流れる電流(もれ電流)が増加傾向を示さないことが重要である。もれ電流が増加傾向を示さない、すなわち、良好な課電寿命特性を確保するためには、一般的に焼成後の熱処理が不可欠である(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。この焼成後の熱処理によりもれ電流が増加傾向を示すことが防止され、もれ電流増加に伴う電圧非直線抵抗体の発熱量増加に起因する熱暴走を防ぐことができる。しかし、焼成後の熱処理を実施すると、一般的に電圧非直線抵抗体の電圧非直線性は大幅に悪化する傾向があり、それを防ぐために熱処理を二段階に分けて実施する方法も開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
動作時における電圧非直線性の良否を表す指標として平坦率が用いられる。平坦率は、電圧非直線抵抗体に大きさの異なる2つの電流を流した時に電圧非直線抵抗体の両端に発生する電圧の比として定義され、その評価に用いられる電流の大きさは電圧非直線抵抗体の直径によって異なる。例えば、大電流域特性を反映する数値である10kA通電時の電圧値(V10kA)と、1mA通電時のV1mAとの比(V10kA/V1mA)が平坦率として用いられ、電圧非直線抵抗体の電圧非直線性の改善、言い換えれば平坦率の値を小さくするための技術開発が鋭意進められている。
また、動作状態における熱安定性の改善は、素子の信頼性確保の観点から重要である。サージエネルギーが素子に加えられた場合、ジュール発熱によって素子の温度が上昇する。素子の性質上、素子温度が上昇するともれ電流は大きくなる。このため、仮に素子発熱量が大きく、素子周辺温度との熱的なバランスが保てなくなった場合、素子が熱暴走を起こしてしまうことがあるため、熱安定性に優れた、言い換えれば温度上昇時のもれ電流が小さな素子が必要である。
これまで述べた待機時及び動作時の電圧非直線抵抗体の性能は、焼結体の微細構造に大きく左右される。焼結体は、大きく分けて酸化亜鉛粒子、亜鉛とアンチモンとを主成分とするスピネル粒子、粒界の3重点近辺に存在する酸化ビスマス相から構成される。その他にも添加物によってはシリコンを主成分とするケイ酸亜鉛粒子も観察される。電圧非直線性発現に必須の添加物であるビスマスは、酸化ビスマス相だけでなく、酸化亜鉛粒子間の粒界に微量ながら存在することがよく知られており(例えば非特許文献1)、その構造解明や粒界の界面準位の測定など鋭意行われている。
特開昭52−53295号公報 特開昭50−131094号公報 特開昭58−200508号公報
Kei-Iciro Kobayashi, Journal of American Ceramic Society, "Continuous Existence of Bismuth at Grain Boundaries of Zinc Oxide Varistor without Intergranular Phase", 81, [8], 2071-2076(1998)
電圧非直線抵抗体において、待機時の課電寿命特性を改善するためには、焼成後に500℃程度の熱処理が必要である。しかし、従来技術では、焼成後の熱処理により課電寿命特性は改善されるものの、電圧非直線性が大幅に悪化するという欠点があった。
また、従来技術では、熱安定性に優れた素子を得ることは困難であり、素子の放熱を向上させるために素子を挟み込む金属電極を大型化する必要があった。しかし、このような電圧非直線抵抗体を搭載した避雷器は、その内部構造が複雑になるという欠点があった。
このように、従来技術では、優れた電圧非直線性、課電寿命特性及び熱安定性を兼ね備えた電圧非直線抵抗体が得られないという課題があった。
従って、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、優れた電圧非直線性、課電寿命特性及び熱安定性を兼ね備えた電圧非直線抵抗体を提供することを目的とする。
本発明は、酸化亜鉛を主成分とし、ビスマスと、アンチモンと、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属とを含有する原料組成物を1000℃以下で焼成して得られる、酸化亜鉛粒子と、亜鉛及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子と、酸化ビスマス相とから主として構成される焼結体からなる電圧非直線抵抗体であって、酸化ビスマス相中に、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属が0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で含まれ、焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)が2%以上8%以下の範囲であり、且つ焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)とスピネル粒子の面積割合(B)との比(A/B)が0.3以上1.5以下の範囲であることを特徴とする電圧非直線抵抗体である。
本発明によれば、優れた電圧非直線性、課電寿命特性及び熱安定性を兼ね備えた電圧非直線抵抗体を提供することができる。また、本発明による電圧非直線抵抗体を用いることで、保護特性と寿命性能に優れ、信頼性の高い避雷器及びサージアブソーバーといった過電圧保護装置を実現することができる。
実施の形態1に係る電圧非直線抵抗体の微細構造の模式図である。 実施例及び比較例で用いた評価用試料の模式断面図である。 実施例で得られた電圧非直線抵抗体の反射電子像の一例である。 実施例で得られたA/Bが小さい焼結体からなる電圧非直線抵抗体の反射電子像の一例である。 実施例で得られたA/Bが大きい焼結体からなる電圧非直線抵抗体の反射電子像の一例である 実施例及び比較例で得られた焼結体の断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)ともれ電流(mA)との関係を示すグラフである。 実施例及び比較例で得られた焼結体の断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)及びスピネル粒子の面積割合(B)の比(A/B)ともれ電流(mA)との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
本発明の実施の形態による電圧非直線抵抗体は、図1に示すように、酸化亜鉛粒子1と亜鉛及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子2と、酸化ビスマス相3とから主として構成され、酸化亜鉛結晶粒子内には双晶境界4が存在している焼結体からなる。更に、酸化ビスマス相中には、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属が0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で存在することが、微細構造分析により分かっており、この一定の割合で酸化ビスマス相中に存在するアルカリ金属が、課電寿命特性の改善及び後熱処理よる電圧非直線性の悪化の抑制に大きく寄与しているものと考えられる。そして、この焼結体の断面中に占める酸化ビスマス相3の面積割合(A)が2%以上8%以下の範囲となっており、且つ焼結体の断面中に占める酸化ビスマス相3の面積割合(A)とスピネル粒子2の面積割合(B)との比(A/B)が0.3以上1.5以下の範囲となっている。酸化ビスマス相3の面積割合(A)及び酸化ビスマス相3の面積割合(A)とスピネル粒子2の面積割合(B)との比(A/B)が上記範囲外であると、温度上昇時のもれ電流が著しく増大する。酸化ビスマス相3の面積割合A及び酸化ビスマス相3の面積割合Aとスピネル粒子2の面積割合Bとの比は、焼成される原料組成物の組成、焼成温度及び焼成時間を適宜変えることにより、上記所定の範囲に調整することができる。
このような電圧非直線抵抗体は、酸化亜鉛を主成分とし、ビスマスと、アンチモンと、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属とを含有する原料組成物を900℃以上で焼成した後、400℃以上600℃以下の熱処理(以下、後熱処理と呼ぶ)を施すことにより得られるものである。
酸化亜鉛は、電圧非直線性の改善、熱安定性の向上、エネルギー耐量の向上及び長寿命化の総合的観点から、原料組成物中に、90モル%以上98モル%以下の範囲で含まれることが望ましく、95モル%以上98モル%以下の範囲で含まれることが更に望ましい。酸化亜鉛としては、通常、平均粒子径が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。
ビスマス及びアンチモンは、電圧非直線性の改善及び熱安定性の向上の観点から、原料組成物中に、総量で0.5モル%以上2モル%以下の範囲で含まれることが好ましく、0.6モル%以上1.5モル%以下の範囲で含まれることが更に好ましい。ビスマス及びアンチモンは、酸化物、塩化物等の形態のものを用いることができ、通常、平均粒子径が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。
原料組成物には、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属は、電圧非直線性の改善及び課電寿命特性の向上の観点から、原料組成物中に、0.013モル%以上0.026モル%以下の範囲で添加される。このアルカリ金属の添加量が、0.013モル%未満であると、後熱処理後の電圧非直線性及び課電寿命特性が著しく低下し、0.026モル%を超えると、課電寿命特性が不十分となる。このアルカリ金属は、通常、平均粒子径が1μm以下のNa2CO3粉末及びK2CO3粉末として配合するか、又はこれらを溶かした水溶液として配合することが好ましい。この範囲で原料組成物中にアルカリ金属を添加すれば、得られる焼結体の酸化ビスマス相中にはカリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属が0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で存在させることができる。従来、電圧非直線抵抗体中のナトリウムやカリウムの量が増大すると、電気特性は悪化するものと認識されており、その混入量を極力少なくすることによって優れた電圧非直線性を達成しようとする試みがなされてきた。しかしながら、本発明者らは、酸化亜鉛を主成分とし、ビスマス及びアンチモンを含む組成物の配合や焼成温度について種々検討した結果、意外なことに、ナトリウム等のアルカリ金属を0.013モル%以上0.026モル%以下の範囲で添加した原料組成物を900℃以上、好ましくは900℃以上1000℃以下で焼成することで、焼成後の500℃程度の後熱処理による電圧非直線性の悪化を顕著に抑制することができることを見出している。
本実施の形態における原料組成物には、熱安定性、電圧非直線性及び課電寿命をより向上させるため、上記した成分以外に、酸化ニッケル、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、二酸化珪素等を添加してもよい。これらの成分の添加量は、通常、組成物中に0.1モル%以上2モル%以下の範囲である。また、これらの酸化物としては、通常、平均粒子径が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。電圧非直線性をより向上させるため、組成物中に、0.001モル%以上0.01モル%以下の範囲で硝酸アルミニウムを添加してもよい。また、電圧非直線性をより向上させ、焼結体中の微細孔(ポア)を減じエネルギー耐量をより向上させるため、組成物中に、0.01モル%以上0.2モル%以下の範囲でホウ酸を配合してもよい。
次に、本発明の実施の形態による電圧非直線抵抗体の製造方法について具体的に説明する。上記した原料から構成される原料組成物を調製した後、これに水、分散剤及びポリビニルアルコール等の結合剤(バインダー)を添加し、粉砕・混合を十分に行って均一な組成のスラリーを作製する。このスラリーをスプレードライヤーで乾燥・造粒して造粒物を得る。得られた造粒物を、例えば200kgf/cm2以上500kgf/cm2以下の成形圧で成形して所定形状の成形体を得る。次に、成形体を、大気中又は酸素雰囲気中で、450℃程度に加熱してバインダーを除去し、続いて900℃以上、好ましくは900℃以上1000℃以下で焼成した後、400℃以上600℃以下で後熱処理して焼結体を得る。必要に応じて、この焼結体に、例えばアルミニウム溶射等により電極を形成したり、ガラスの焼き付けや抵抗値の高い拡散層の導入等により側面高抵抗層を形成してもよい。
更に、本実施の形態によって得られる電圧非直線抵抗体を単体で又は積層して避雷器に搭載すれば、保護特性と寿命性能に優れ、信頼性の高い避雷器を得ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜5及び比較例1〜4>
表1に示すような、0.5モル%〜2.5モル%の酸化ビスマス(Bi23)粉末、0.3モル%〜1.0モル%の酸化アンチモン(Sb23)粉末、0.5モル%の酸化ニッケル(NiO)粉末、0.5モル%の二酸化マンガン(MnO2)粉末、0.1モル%の酸化クロム(Cr23)粉末、0.4モル%の酸化コバルト(Co34)粉末、0.004モル%の硝酸アルミ(Al(NO33・9H2O)、0.16モル%のホウ酸(H3BO3)、0.026モル%の炭酸ナトリウム(Na2CO3)、残部が酸化亜鉛(ZnO)粉末である原料組成物1〜9を調製した。なお、それぞれの原料には、工業用原料又は試薬を用い、粉末原料についてはすべて平均粒子径が1μm以下のものを使用した。
Figure 0005388937
各原料組成物に、純水、分散剤及び結合剤(バインダー)を加え、粉砕・混合を十分行って均一な組成を持つスラリーを作製した。作製したスラリーをスプレードライヤーで造粒し、得られた造粒粉を成形圧500kgf/cm2で成形して直径40mm、厚さ10mm程度のディスク状の成形体を得た。
成形体を大気中にて450℃で5時間加熱処理した(脱バインダー工程)後、焼成温度1000℃で5時間焼成を行った(焼成工程)。昇温及び降温速度は50℃/時間とした。こうして得られた焼結体5の側面に、インパルス電圧印加時の側面閃絡防止用の側面高抵抗層6(樹脂)を塗布し、ディスク両面にはアルミニウム溶射によりアルミニウム電極7を形成して、評価用の試料とした。試料の模式断面図を図2に示す。
作製した試料の熱安定性は、試料を120℃に加熱し、温度が一定となったところで、課電率が90%となる電圧を印加した時に流れる電流値を評価した。結果を表2に示す。また、温度特性評価後の試料は、焼結体の微細構造を観察するために、5mm角程度に切断、表面を研磨した後、粒界を明瞭にするために、塩酸で10秒程度エッチングを行った。純水で洗浄の後、チャージアップ防止のためにカーボン膜をコーティングし、観察領域内で酸化ビスマス相が占める面積割合(A)及びスピネル粒子が占める面積割合(B)を画像解析を用いて計測し、さらにそれらの結果からA/Bを算出した。結果を表2に示す。観察の結果、得られた焼結体は、大まかに酸化亜鉛粒子、スピネル粒子、粒界の3重点付近に存在する酸化ビスマス相から構成される微細構造を有していた。特に1000℃で焼成しているため、添加した酸化ビスマスが焼成中に蒸発することを抑制でき、酸化ビスマス相が3重点付近に多く存在していた。実際の分析に用いた箇所の反射電子像(COMPO像)の一例を図3に示した。白く光っている部分が酸化ビスマス相である。また、A/Bが小さい焼結体からなる電圧非直線抵抗体の反射電子像(COMPO像)の一例を図4に示し、A/Bが大きい焼結体からなる電圧非直線抵抗体の反射電子像(COMPO像)の一例を図5に示す。
Figure 0005388937
また、実施例1〜5及び比較例1〜4における面積割合A(%)ともれ電流(mA)との関係を図6に示し、面積比A/Bともれ電流(mA)との関係を図7に示す。図6及び7から明らかなように、面積割合A(%)及び面積比A/Bのいずれか一方が本発明で規定される数値範囲外であると、もれ電流が増加し温度特性は悪化傾向にあることが分かる。120℃におけるもれ電流が1.5mAを超えると、素子の発熱量が増大し、さらにもれ電流が増加する。それを抑制するためには避雷器内部に放熱フィンなどの放熱対策を施す必要があり、避雷器の構造が複雑になる。一方、面積割合A(%)及び面積比A/Bが本発明で規定される数値範囲内であると、粒界準位の安定性が高まり、高温時の熱安定性が高まったものと考えられる。
<実施例6〜17及び比較例5〜14>
0.9モル%の酸化ビスマス(Bi23)粉末、0.4モル%の酸化アンチモン(Sb23)粉末、0.5モル%の酸化ニッケル(NiO)粉末、0.5モル%の二酸化マンガン(MnO2)粉末、0.1モル%の酸化クロム(Cr23)粉末、0.4モル%の酸化コバルト(Co34)粉末、0.004モル%の硝酸アルミ(Al(NO33・9H2O)及び0.16モル%のホウ酸(H3BO3)を基本組成とし、これにNa2CO3又はK2CO3を表3に示す割合で添加し、原料組成物を調製した。残部は酸化亜鉛(ZnO)である。なお、それぞれの原料には、工業用原料又は試薬を用い、粉末原料についてはすべて平均粒子径が1μm以下のものを使用した。
次いで、実施例1〜5と同様にしてディスク状の成形体を得、成形体を大気中にて450℃で5時間加熱処理した(脱バインダー工程)後、表3に示す焼成温度で5時間焼成を行った(焼成工程)。昇温及び降温速度は50℃/時間とした。さらに焼結体を大気中にて、500℃で5時間加熱処理した(後熱処理工程)。得られた焼結体を用い、実施例1〜5と同様にして評価用の試料を作製した。
Figure 0005388937
実施例6〜17及び比較例5〜14の試料について、実施例1〜5と同様にして酸化ビスマス相が占める面積割合(A)及びスピネル粒子が占める面積割合(B)を画像解析を用いて計測し、さらにそれらの結果からA/Bを算出した。
電圧非直線性の良否は、平坦率(V2.35kA/V0.46mA)により評価した。V2.35kAは試料に8×20μsのインパルス電圧を印加し、そのピーク値を読み取ってV2.35kAとした。またV0.46mAは60Hzの交流電圧(正弦波)を用いて測定を行った。交流を印加した場合、試料を流れる電流は抵抗性成分(Ir)と容量性成分(Ic)に分かれるが、抵抗分もれ電流抽出装置を用いてIrを抽出した。具体的にはIrが0.46mAとなる印加電圧を読み取りV0.46mAとした。
後熱処理前後の平坦率を比較することで、平坦率の悪化率を評価した。なお、悪化率は、下記の式に従って計算した。
(後熱処理後の平坦率―後熱処理前の平坦率)÷後熱処理前の平坦率×100(%)
また後熱処理後の試料は120℃、課電率90%の条件下で、Irの経時変化を評価し、その増減によって課電寿命特性を評価した。課電寿命の合否判定は、電圧印加時のIrが増加傾向を示さないものを合格とした。
これらの酸化ビスマス相が占める面積割合(A)、酸化ビスマス相が占める面積割合とスピネル粒子が占める面積割合との比(A/B)、熱安定性、平坦率、悪化率及び課電寿命特性の評価結果を表4に示す。
Figure 0005388937
表4より、ナトリウム及びカリウムを添加しない試料(比較例5及び10)では、後熱処理後の課電寿命が不良であり悪化率も大きいことが分かる。ナトリウムやカリウムの添加量を増加させて0.013モル%にすると、課電寿命が良好となり、さらに悪化率が小さくなって、結果的に後熱処理後に1.6前後の良好な平坦率が得られていることが分かる。しかし、ナトリウムやカリウムの添加量を更に増加させて0.052モルモル%にすると、課電寿命特性は不良となることが分かる。即ち、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属を0.013モル%以上0.026モル%以下の範囲で添加することで、優れた電圧非直線性と課電寿命特性とを兼ね備えた電圧非直線抵抗体が得られることが分かる。
ナトリウムやカリウムは、通常、電圧非直線抵抗体の電気特性を悪化させる元素であることが知られている。そのため、その混入量を極力少なくすることにより優れた電圧非直線性を得る技術がこれまでに公開されている(例えば、特開平8−138910号公報)。しかしながら、これまで公知となっている技術は焼成温度が少なくとも1100℃以上であることから、本発明で得られた知見は焼成温度が1000℃以下の特有な効果であると考えられる。
また、アルカリ金属であるリチウムを電圧非直線抵抗体に添加すると、酸化亜鉛の抵抗を大幅に増大させ、電圧非直線抵抗体をほぼ絶縁物に近い状態にすることが知られている。ナトリウムやカリウムと同様にリチウム添加実験も実施したが、試料は絶縁物に近い状態となり電気特性の評価ができなかった。即ち、リチウムについては焼成温度に依らず、電圧非直線抵抗体の抵抗を著しく増大させる効果があることを確認した。このことから、優れた電圧非直線性と課電寿命特性とを兼ね備えた電圧非直線抵抗体が、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属を0.013モル%以上0.026モル%以下の範囲で添加し、且つ1000℃以下で焼成した場合に得られる効果は、これまでと全く異なる特有の効果であると考えられる。
このようにナトリウム及びカリウムの添加が課電寿命の良否に大きく影響を及ぼしていることから、ナトリウム及びカリウムは課電寿命を大きく左右する酸化ビスマス相に含まれていると考えられる。そこで、試料の3重点に存在する酸化ビスマス相の定量分析を、場所を変えて(2〜3ヶ所)実施した。
具体的には、実施例6〜11及び比較例5〜9の試料を5mm角程度に切断、表面を研磨した後、粒界を明瞭にするために塩酸で10秒程度エッチングを行った。純水で洗浄の後、チャージアップ防止のためにカーボン膜を蒸着によってコーティングし、日本電子製高性能電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Microanalyzer)を用いてナトリウム及びカリウム量の定量分析を行った。分析に用いたEPMAは電界放出型FE(Field Emission)電子銃を備えた装置で、微小領域で微量元素の分析が可能な波長分散型分光器(WDS:Wavelength Dispersive Spectroscopy)を備えている。
酸化ビスマス相中のナトリウム及びカリウムの定量分析結果を表5に示す。
Figure 0005388937
ナトリウム又はカリウムを0.013モル%以上添加した試料において、ナトリウム又はカリウムが検出された。表4の悪化率及び課電寿命特性と照合すると、ナトリウム又はカリウムを0.013モル%以上0.026モル%以下の割合で添加した試料(実施例6〜11)では、酸化ビスマス相中にナトリウム又はカリウムが0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で検出され、課電寿命特性が改善されると共に、悪化率が小さくなっていることが分かる。しかし、ナトリウム又はカリウムを0.052モル%配合した試料(比較例7及び9)では、酸化ビスマス相中にナトリウム又はカリウムが0.222原子%以上検出され、悪化率が大幅に増大すると共に、課電寿命が不良となっている。
この定量分析結果から、悪化率を抑制して後熱処理後の平坦率を小さくし、同時に良好な課電寿命特性が得られた試料においては、焼結体中の微細構造における酸化ビスマス相中にナトリウム又はカリウムが存在し、その量が0.036原子%〜0.176原子%であることが一連の実験と分析の結果から明らかとなった。
以上のことから、酸化亜鉛粒子と、亜鉛及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子と、酸化ビスマス相から主として構成される焼結体からなる電圧非直線抵抗体であって、酸化ビスマス相中に、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属が0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で含まれ、焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)が2%以上8%以下の範囲であり、且つ焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)とスピネル粒子の面積割合(B)との比(A/B)が0.3以上1.5以下の範囲であることによって、後熱処理後の悪化率が抑制され、結果として、優れた電圧非直線性、課電寿命特性及び熱安定性を兼ね備えた電圧非直線抵抗体が実現できた。
1 酸化亜鉛粒子、2 スピネル粒子、3 酸化ビスマス相、4 双晶境界、5 焼結体、6 側面高抵抗層、7 アルミニウム電極。

Claims (2)

  1. 酸化亜鉛を主成分とし、ビスマスと、アンチモンと、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属とを含有する原料組成物を1000℃以下で焼成して得られる、酸化亜鉛粒子と、亜鉛及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子と、酸化ビスマス相とから主として構成される焼結体からなる電圧非直線抵抗体であって、酸化ビスマス相中に、カリウム及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属が0.036原子%以上0.176原子%以下の範囲で含まれ、焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)が2%以上8%以下の範囲であり、且つ焼結体断面中に占める酸化ビスマス相の面積割合(A)とスピネル粒子の面積割合(B)との比(A/B)が0.3以上1.5以下の範囲であることを特徴とする電圧非直線抵抗体。
  2. 請求項1に記載の電圧非直線抵抗体を搭載したことを特徴とする避雷器。
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