JP5388126B2 - 分岐ポリアルキレングリコール誘導体、感光性組成物、架橋体及び基板 - Google Patents
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Description
本発明は、分岐ポリアルキレングリコール誘導体、感光性組成物、架橋体及び基板に関する。
近年の細胞工学の発展および再生医療への注目と相まって、生体外にて細胞を適切な形で培養し、治療への応用および生体反応のシュミレーターとして使用する試みが現在活発に行われている。このような目的において、培養される細胞は各種臓器機能の担い手である実質細胞が中心であるが、一般に生体外にて実質細胞の機能を維持した状態で長期の培養を行うことは困難であり、この点を解決するための様々な試みがなされている。
一方、光架橋により親水性で生体適合性の高い表面コーティングを形成可能な感光性樹脂が知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載の方法ではスフェロイド形成の培養面積当たりの効率が極めて低いという問題点があった。また特許文献2に記載の方法では、基板を作製する工程が複雑であり、細胞非接着性表面の環境安定性が不十分であるという問題点があった。更に特許文献3又は4に記載の感光性樹脂では、細胞非接着性表面の経時安定性が不十分であるという問題点があった。
本発明は、高精度にパターニング可能で、細胞の非接着状態を経時安定的に維持可能な親水性領域を有する基板、該親水性領域を形成する架橋体、並びに該架橋体を形成可能な感光性組成物及びそれに含まれる分岐ポリアルキレングリコール誘導体を提供することを課題とする。
また本発明の第3の態様は、前記感光性組成物を硬化させて形成された架橋体である。
本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の3以上と、前記ポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基とを有することを特徴とする。
かかる構成の分岐ポリアルキレングリコール誘導体は、親水性の架橋体を形成することができる。かかる親水性の架橋体は、細胞非接着性の経時安定性が良好であり、例えば、本発明の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いて基材上に親水性領域と疎水性領域とが高精度に形成された基板は、該基板上で細胞を培養した場合に、疎水性領域にのみ特異的に細胞が接着するため、高精度に区画化された細胞集合体を形成することができる。また、前記親水性領域は細胞非接着性の経時安定性が良好であり、長期に渡って区画化された細胞集合体を維持することができる。更に前記細胞集合体は、例えば、単層の細胞集合体とすることもできるし、細胞が3次元的凝集状態を形成した細胞凝集塊(スフェロイド)とすることもできる。
また前記ポリアルキレングリコール基の含有数は、経時安定性と良好なスフェロイド形成性の点から、4以上であることが好ましく、4以上64以下であることがより好ましく、4以上16以下であることが更に好ましい。
また前記重合性置換基としては重合性の官能基を有する置換基であってポリアルキレングリコールの末端に結合可能なものであれば特に制限はない。重合性置換基のポリアルキレングリコールの末端への結合態様としては、ポリアルキレングリコールに由来する酸素原子を介した結合態様であっても、ポリアルキレングリコールの末端水酸基が他の元素に置換された結合態様であってもよい。
本発明における重合性の官能基としては、通常用いられる重合性官能基を特に制限なく用いることができ、例えば、エチレン性不飽和結合を有する基、アジド基等を挙げることができる。本発明においては、親水性領域のパターン形成性の観点から、エチレン性不飽和結合を有する基及びアジド基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アジド基であることがより好ましい。
具体的には例えば、カルボニル基、アリーレン基、アルキレンカルボニル基、カルボニルアリーレン基、カルバモイルアリーレン基等を挙げることができる。
更に連結基の価数としては少なくとも2価であればよく、3価以上の連結基であってポリアルキレングリコールと2以上の重合性官能基とを連結する連結基であってもよい。
また、ポリアルキレングリコール基の重合度としては、親水性の観点から5以上であればよく、5〜1000の重合度を有するポリアルキレングリコール基を好ましく用いることができ、より好ましくは10〜500である。
具体的には例えば、糖類に由来する連結基、多価アルコールに由来する連結基、多価カルボン酸に由来する連結基、配位結合を介して前記ポリアルキレングリコール基を含む基を結合可能な金属原子等を挙げることができる。
本発明においてL3は、単結合、又は、カルボニル基、カルボニルフェニレン基、カルバモイルフェニレン基から選ばれる2価の連結基であることがより好ましい。
また、iは1又は2を表す。
iが2の場合、2つのR5は同一でも異なっていてもよい。
qは1〜70の整数を表す。本発明においては、親水性と架橋反応性の観点から、pが1のとき、qは1〜64であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。またpが2のとき、qは1〜32であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
本発明の感光性組成物においては、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体を1種単独で含有することもできるし、2種以上を含有することもできる。
また本発明の感光性組成物は、前記分岐ポリアルキレングリコール誘導体に加えて、光重合開始剤、溶剤、細胞培養液、界面活性剤、緩衝液、消泡剤、防腐剤等の各種の添加剤等を含んで構成することができる。
前記溶剤として具体的には、ベンゼン、トルエン、THF、DMF、クロロホルム等の有機溶媒、及び水を好ましく用いることができる。また、溶剤は1種単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記基材は、細胞接着性タンパク質の少なくとも1種で表面処理された基材であることもまた好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材を、細胞接着性タンパク質の少なくとも1種で更に表面処理した基材であることがより好ましい。
表面処理された基材を用いて、基板を構成することにより、例えば、基板上で細胞を培養する場合に、より効率的に細胞集合体を形成することができる。
ここで、細胞接着性タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、テイネシン及びエラスチン等を挙げることができ、中でも、細胞集合体の形成性の観点から、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチンが好ましく、コラーゲン、ゼラチンがより好ましい。
本発明の基板を作製する方法は、必要に応じて、前記硬化工程後に加熱工程、洗浄工程、乾燥工程、滅菌工程等を更に含むことができる。
基材上に形成された感光性組成物層の層厚としては、特に制限はなく基板の使用目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5nm〜1000μmとすることができる。特に、本発明の基板を後述の細胞培養基板として使用する場合には、10nm〜1000nmとすることが好ましく、10nm〜500nmであることがより好ましい。
また露光波長及び露光量についても特に制限はなく、前記感光性組成物に応じて適宜選択することができる。露光波長としては、例えば200nm〜400nmとすることができ、280nm〜400nmであることが好ましい。露光量としては、例えば、0.1mJ/cm2〜1000mJ/cm2とすることができ、1mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2〜20mJ/cm2であることがより好ましい。
また本発明においては、前記疎水性領域に配置された細胞は、単層を形成していてもよく、また、細胞凝集塊(スフェロイド)を形成していてもよい。
また各種細胞の培養条件は、細胞に応じて適宜選択できるが、例えば、5%CO2、37℃とすることができる。
本発明における親水性領域及び疎水性領域の形状及び大きさは、上述の硬化工程における露光処理を、マスクを介した露光処理とすることで、容易にかつ高い精度で制御することができる。
このようなスフェロイドが形成された基板は、例えば、各種細胞に影響を及ぼし得る環境又は物質のスクリーニングに用いることができる。各種細胞に対する影響は、スフェロイドの形態の変化や産生物(例えば、肝細胞におけるアルブミン、モデル薬物の代謝生成物等)の産生能の変化をモニターすることで評価することができる。
親水性領域と疎水性領域とを前記大きさで構成することにより、機能性の高いスフェロイドをより効率的に作成することができ、更により長期に渡って維持することが可能となる。
予めフィーダー細胞層を形成することで、実質細胞のスフェロイド形成がより効率的に進行する。前記フィーダー細胞は、スフェロイドを形成させる細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、肝細胞や軟骨細胞のスフェロイドを形成する場合には、フィーダー細胞としてCOS−1細胞、血管内皮細胞(例えば、大日本製薬製「ヒト臍帯静脈血管内皮細胞」)、繊維芽細胞等を好適に用いることができる。
〜分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)の合成〜
4−アジド−安息香酸12g(93.6mmol)を40mLの塩化チオニルに溶解し、1.5時間、加熱還流した。反応混合物を減圧で濃縮、少量のヘキサンを加えて再度減圧で濃縮した後、真空下で乾燥し、白色固体として目的物の4−アジド−安息香酸クロリド9.3g(51.2mmol、収率70%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.11-8.15 (2H, m), 7.11-7.16 (2H, m).
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりに下記表1に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表1に示した。
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりに下記表2に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表2に示した。
実施例1において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりに下記表3に示したマルチアームPEGを用いた以外は、実施例1と同様にして分岐ポリアルキレングリコール誘導体を合成した。収率、性状等を表3に示した。
5−アミノ−サリチル酸15.3g(0.1mol)を蒸留水80mLと濃塩酸20mLの混合溶液に懸濁させ、室温で30分攪拌した。混合溶液を氷浴中で冷却した後、亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1mol)の水溶液10mLを溶液の反応液の液温が5℃を超えないような速度で滴下し、そのまま1時間攪拌した。続いて、アジ化ナトリウム7.15 g(0.11mol)の水溶液30mLを反応液の液温が10℃を超えない速度で滴下した。氷浴を外して室温に戻しつつ、気泡が発生しなくなるまで激しく攪拌した。生成した沈殿を濾取し、さらに沈殿を蒸留水で洗浄した。得られた固体は、暗所で風乾した後、減圧下で完全に乾燥し、5−アジド−サリチル酸を白色固体として12.0g(67.0mmol、収率=67%)得た。
5−アジド−サリチル酸及び4−アジド安息香酸の紫外吸収スペクトルを図1に示した。溶媒として光学分析用メタノールを用いて、濃度は1μmol/Lとして測定した。また併せて365nmにおける吸光度を表4に示した。
1H-NMR(DMSO-d6) δ: 11.14(1H, bs), 7.41 (1H, d, J = 3.0 Hz), 6.88 (1H, dd, J = 8.5, 3.0 Hz), 6.68 (1H, d, J = 8.4 Hz).
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.39 (1H, d, J = 2.9 Hz), 7.26 (1H, dd, J = 8.8, 2.9 Hz), 7.00 (1H, d, J = 8.8 Hz).
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
実施例4において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりにHGEO−20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は実施例4と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PB20K)1.72g(収率85%)を得た。
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
5−アミノ−2−ニトロ安息香酸18.1g(0.1mol)を蒸留水80mLと濃塩酸20mLの混合溶液に懸濁させ、室温で30分攪拌した。混合溶液を氷浴中で冷却した後、亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1mol)の水溶液10mLを溶液の反応液の液温が5℃を超えないような速度で滴下し、そのまま1時間攪拌した。続いて、アジ化ナトリウム7.15 g(0.11mol)の水溶液30mLを反応液の液温が10℃を超えない速度で滴下した。氷浴を外して室温に戻しつつ、気泡が発生しなくなるまで激しく攪拌した。生成した沈殿を濾取し、さらに沈殿を蒸留水で洗浄した。得られた固体は、暗所で風乾した後、減圧下で完全に乾燥し、5−アジド−2−ニトロ安息香酸を白色固体として19.2g(92.4mmol、収率=92%)を得た。
5−アジド−2−ニトロ安息香酸の紫外吸収スペクトルを図1に示した。溶媒として光学分析用メタノールを用いて、濃度は1μmol/Lとして測定した。また併せて365nmにおける吸光度を表4に示した
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 13.99(1H, bs), 8.09-8.06 (1H, m), 7.45-7.42 (2H, m).
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 8.10-8.07 (1H, m), 7.46-7.42 (2H, m).
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
実施例6において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりにHGEO−20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は実施例6と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PC20K)1.71g(収率85%)を得た。
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
アクリロイルクロリド181mg(2.0mmol、マルチアームPEGの末端OH基に対して5モル当量)のベンゼン(脱水)溶液(5mL)を滴下し、そのまま5分攪拌を続けた後、反応容器を遮光し、マルチアームPEG(日油(株)製SUNBRIGHT(登録商標) PTE−20000、4つのポリエチレングリコール基を有するペンタエリスリトール誘導体)2g(0.1mmol)のベンゼン(脱水)溶液(20mL)をゆっくり滴下した。反応溶液を氷浴からはずし、そのまま室温で18時間攪拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、ベンゼンを加えて懸濁させたものをろ過して塩を除いた後、再び減圧で濃縮した。粗生成物を少量のベンゼンに溶解し、0℃に冷却したイソプロピルエーテルに滴下して得られた沈殿を濾取する工程を3回繰り返して、得られた白色固体を減圧下で乾燥し、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PD20K)1.74g(収率85%)を得た。
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
実施例8において、マルチアームPEGとしてPTE−20000の代わりに、HGEO−20000(日油(株)製、8つのポリエチレングリコール基を有するヘキサグリセリン誘導体)を用いた以外は、実施例8と同様にして、目的物とする分岐ポリアルキレングリコール誘導体(8PD20K)1.74g(収率85%)を得た。
1H-NMRの積分比より算出した末端水酸基の重合性置換基への置換率は、85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.05 (8H, d, J = 8.6 Hz), 7.07 (8H, d, J = 8.6 Hz), 4.46 (8H, t, J = 4.9 Hz), 3.89-3.39 (2145H, m).
以下の作業は、すべてイエロールーム内で行った。
実施例1で作製した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(マルチアームPEG−アジド:4PA20K)をトルエンに溶解し、感光性組成物Aとして4PA20Kのトルエン溶液(1%)を調製した。基材としてポリ−L−リジンコートスライドガラス(松浪硝子工業(株)製。白切放NO.1スライドガラス丸型21mmΦ。以下「PLLコートガラス」と略す)を使用し、PLLコートガラス上に、感光性組成物Aを110μL滴下後、スピンコート法(500rpm×5秒+3000rpm×20秒+6000rpm×1秒)により成膜し、常温で放置して乾燥させた。これに、石英ガラス製フォトマスク(直径100μmの円形パターンが多数配置されたもの)を密着させ、高圧水銀灯(200W)を用いて40秒間露光を行った後、脱イオン水で洗浄(現像工程:流水15秒間+浸漬20分間)した。常温で乾燥し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた(図2)。
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、アミノプロピルシランコートガラス(松浪硝子工業(株)製。APSコートNO.1カバーガラス丸型21mmΦ。以下「APSコートガラス」と略す)を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、MASコートガラス(松浪硝子工業(株)製)を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、PLLコート上にコラーゲンをさらにコーティングした「コラーゲンコートガラス」を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
尚、コラーゲンコートガラスは、PLLコートガラス上にブタI型コラーゲン(日本ハム(株)製)の0.1%水溶液を400μL滴下し、スピンコート法(350rpm×5秒+500rpm×5秒+1000rpm×10秒+1500rpm×10秒+6000rpm×1秒)にて成膜した後、室温で乾燥する工程を2回繰り返して作製した。
実施例10において、基材としてPLLコートガラスに代えて、PLLコート上にゼラチンをさらにコーティングした「ゼラチンコートガラス」を用いた以外は、実施例10と同様にして基板を作製し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
尚、ゼラチンコートガラスは、PLLコートガラスを用い、ゼラチン(新田ゼラチン社製)の0.1%溶液を400μL滴下し、スピンコート法(350rpm×5秒+500rpm×5秒+1000rpm×10秒+1500rpm×10秒+6000rpm×1秒)にて成膜した後、室温で乾燥して作製した。
実施例13において、コラーゲンコートガラスの作製方法を、PLLコートガラスをブタI型コラーゲン(日本ハム(株)製)の0.02%水溶液に3時間浸漬後、脱イオン水の流水で洗浄、乾燥させる方法に変更した以外は、実施例13と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例13、実施例14、実施例15において、基材としてPLLコートガラスに代えて、APSコートガラスを用いた以外は、実施例13、実施例14、実施例15とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、いずれの基板においても良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例13、実施例14、実施例15において、基材としてPLLコートガラスに代えて、MASコートガラスを用いた以外は、実施例13、実施例14、実施例15とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、いずれの基板においても良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、露光時間を10秒に変更した以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、感光性組成物Aに代えて、マルチアームPEG−アジド(4PA20K)の濃度を0.5%とした感光性組成物Bを用いた以外は、実施例7と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体として4PA20Kに代えて、実施例2、実施例3、及び実施例4〜7で合成した各種の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いた以外は実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件として高圧水銀灯(200W)で3秒間とした以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件をフォトマスク上にフィルター(シグマ光機(株)製、UTVAF36U)を配置して、高圧水銀灯(200W)で10秒間の露光とした以外は、実施例10と同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例11〜17において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)に代えて、実施例4で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PB20K)又は実施例6で合成した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PC20K)を用い、露光条件をフォトマスク上にフィルター(シグマ光機(株)製、UTVAF36U)を配置して、高圧水銀灯(200W)で10秒間の露光とした以外は、実施例11〜17とそれぞれ同様の方法で基板を作製した。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡により観察したところ、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
実施例8及び実施例9で作製した分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PD20K、8PD20K)の濃度が1%であって、光重合開始剤としてIRGACURE2959の濃度が0.05%となるようにトルエンに溶解して、感光性組成物Dを調製した。基材としてポリ−L−リジンコートスライドガラス(松浪硝子工業(株)製。白切放NO.1スライドガラス丸型21mmΦ。以下「PLLコートガラス」と略す)を使用し、PLLコートガラス上に、感光性組成物Dを110μL滴下後、スピンコート法(500rpm×5秒+3000rpm×20秒+6000rpm×1秒)により成膜し、常温で放置して乾燥させた。これに、石英ガラス製フォトマスク(直径100μmの円形パターンが多数配置されたもの)を密着させ、高圧水銀灯(200W)を用いて40秒間露光を行った後、脱イオン水で洗浄(現像工程:流水15秒間+浸漬20分間)した。常温で乾燥し、表面に微細加工された親水性の架橋体を有する基板を得た。当該基板の表面を、位相差光学顕微鏡(倍率×100)により観察したところ、いずれの分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いた場合にも、良好なマイクロパターンが高精度に形成されていることが確認できた。
〜基板の滅菌作業〜
実施例10〜12、18〜24で作製した基板(表面にコラーゲンコート又はゼラチンコートを施さなかった基板)については、オートクレーブ(121℃、20分)による滅菌作業を行った。
また実施例13〜17で作製した基板(表面にコラーゲンコート又はゼラチンコートを施しているもの)に関しては、クリーンベンチに設置されているUVランプを15分間照射し、滅菌作業を行った。
実施例10〜24において作製した後、滅菌作業を行った基板を、FALCON社製12ウェルプレート底面にセットし、培地としてDMEMを添加し、ウシ関節軟骨細胞(コンドロサイト)を細胞濃度5×105cells/mL(2mL/well)にて播種した。培養条件5%CO2、37℃で培養したところ、いずれの実施例で作製した基板を用いた場合においても、24時間以内に基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ軟骨細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。代表的な顕微鏡写真(倍率×40)を図3に示した。
実施例25と同様にして滅菌作業を行った実施例10〜24で作製した基板を、FALCON社製12ウェルプレート底面にセットし、培地としてDMEMを添加し、ウシ動脈血管内皮細胞(株名:HH)を細胞濃度5×104cells/mL(2mL/well)にて播種した。培養条件5%CO2、37℃で24時間培養したところ、基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に接着した血管内皮細胞集合体が確認できた(図4)。
続けて、初代肝実質細胞をラットから常法により採取し、細胞濃度5×105cells/mL(2mL/well)で播種した。5時間後に培地交換を行い、培養条件5%CO2、37℃で24時間培養したところ、基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ肝細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。代表的な顕微鏡写真(倍率×40)を図5に示した。
〜軟骨細胞スフェロイドアレイの染色〜
通常のカルチャーディッシュで培養したウシ関節軟骨細胞(コンドロサイト)を2%トリプシン処理し、細胞懸濁液の状態でSIGMA社製PKH−26キットにて染色した。細胞懸濁液はPBS(−)またはタンパク質不含の培地で洗浄後、細胞数をカウントし、2×107cellsに調製した。これを遠心分離(400G、5分)し、上澄みを除去し、キット中のDiluentC 1mLにて分散させた。ここに4×10−6MのPKH−26染色液を調製して、細胞懸濁液に1mL加えた。これを室温で2〜5分間静置することで反応させ、タンパク質含有の培地にて反応を止めた。この後、タンパク質含有の培地で3回の洗浄をし、実施例25と同様にして播種を行った。培養後24時間以内に基材上に形成した疎水性領域に対応するパターン状に並んだ軟骨細胞の細胞塊(スフェロイド)が得られた。これを蛍光顕微鏡(倍率×40)で観察したところ、スフェロイドが染色された状態で観察された。すなわち、スフェロイドは軟骨細胞によって形成されていた。
実施例10で作製した基板、実施例20において、分岐アルキレングリコール誘導体として4PA20K、4PB20K、4PC20K、8PA20K、8PB20K、及び8PC20Kを用いてそれぞれ作製した基板、並びに実施例24で作製した基板を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。
得られたスフェロイドを、培養条件5%CO2、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
いずれの基板を用いた場合も、1日後〜4週間後のいずれにおいても、区画化されたスフェロイドが維持されていた。また、スフェロイドを形成していない細胞は浮遊状態のままで、スフェロイド間の親水性領域への付着は観察されなかった。
代表的例として分岐アルキレングリコール誘導体として8PA20Kを用いた場合の顕微鏡写真として、1日後(図6、100倍)、3日後(図7、40倍)、4週間後(図8、40倍)をそれぞれ示した。
実施例20において、分岐アルキレングリコール誘導体として3PA5K、及び3PA20Kを用いてそれぞれ作製した基板を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。
得られたスフェロイドを、培養条件5%CO2、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
3日後までは良好に区画化されたスフェロイドが維持されたが、4週間後にはスフェロイド間の親水性領域に付着した軟骨細胞が観察された。
実施例10において、分岐ポリアルキレングリコール誘導体(4PA20K)の代わりに、比較例1で合成したポリアルキレングリコール誘導体(2PA2K、及び2PA3K)を用いて、実施例10と同様にして基板を作製した。
次いで得られた基板を用いて実施例25と同様にして、スフェロイドを形成した。得られたスフェロイドを、培養条件5%CO2、37℃で培養を更に継続し、スフェロイドの状態を顕微鏡で観察した。
1日後にはスフェロイド間の親水性領域に付着した軟骨細胞が観察され、区画化されたスフェロイドを維持することができなかった。
代表的例として分岐アルキレングリコール誘導体として2PA3Kを用いた場合の顕微鏡写真として、1日後(図9、100倍)、3日後(図10、40倍)、4週間後(図11、40倍)をそれぞれ示した。
実施例25において、コンドロサイトの代わりに下記表5に示した細胞種を用いて、実施例25と同様にしてスフェロイドを形成した。形成されたスフェロイドを下記評価基準に従って評価した。結果を表5に示した。
<評価基準>
+++ : 極良好
++ : 良好
+ : 普通
また、本発明の基板を用いることで、高精度にパターニングされたスフェロイドを効率よく形成することができることが分かる。
更に、本発明の基板を用いることで、形成されたスフェロイドを長期に渡って経時安定的に維持することができることがわかる。特に、末端に重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基を4以上有する分岐ポリアルキレングリコール誘導体を用いることで、形成されたスフェロイドの経時安定性が飛躍的に向上することが分かる。
Claims (9)
- 末端に下記一般式(5)で表される重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基の3以上と、前記ポリアルキレングリコール基と結合する3価以上の連結基と、を有する分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
[式中、L5は単結合又は2価の連結基を表し、R5は置換基を表し、iは0、1又は2を表す] - 前記ポリアルキレングリコール基の4以上を有する請求項1に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
- 前記ポリアルキレングリコール基は、下記一般式(1)で表される請求項1又は請求項2に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
[式中、X1は前記一般式(5)で表される重合性置換基を表し、mは2〜4の整数を、nは5〜1000の整数をそれぞれ表す] - 下記一般式(2)で表される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体。
[式中、L2は単結合又はメチレン基を表し、pは1又は2を表し、qは1〜70の整数を表す。R2は末端に前記一般式(5)で表される重合性置換基を有するポリアルキレングリコール基又は末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール基を表す] - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含有する感光性組成物。
- 請求項5に記載の感光性組成物を硬化させて形成された架橋体。
- 基材と、前記基材上に配置された請求項6に記載の架橋体とを含む基板。
- 前記基材は、アミノ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、及びポリリジンから選ばれる少なくとも1種で表面処理された基材である請求項7に記載の基板。
- 前記基材は、細胞接着性タンパク質で表面処理された基材である請求項7または請求項8に記載の基板。
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