JP2014226088A - 光および加水分解性架橋剤、光および加水分解性ゲル、細胞培養器具、細胞配列・分別装置、細胞配列方法、細胞分別方法、並びに、組織体形成方法 - Google Patents

光および加水分解性架橋剤、光および加水分解性ゲル、細胞培養器具、細胞配列・分別装置、細胞配列方法、細胞分別方法、並びに、組織体形成方法 Download PDF

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Shinji Sugiura
慎治 杉浦
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史樹 柳川
Fumiki YANAGAWA
史樹 柳川
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Kimio Sumaru
公雄 須丸
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敏幸 金森
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Abstract

【課題】細胞担体として適切な含水率、適度な水溶性、および複雑かつ微細な三次元構造を構築することが可能な強度とを併せ持ち、さらに、光照射以外の方法でも分解可能な光および加水分解性ゲルを製造できる光および加水分解性架橋剤を提供する。
【解決手段】直鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖又は3分岐以上の分岐鎖を有する分岐鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖2と、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合80及び該エステル結合80の末端に配置された光分解性のベンジル基3と、を含み、
前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基4、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有することを特徴とする光および加水分解性架橋剤1。
【選択図】図1

Description

本発明は、材料工学の分野に属し、特に、複雑且つ微細な三次元組織体の製造に用いることができる光および加水分解性架橋剤と、これを用いた、光および加水分解性ゲル、細胞培養器具、細胞配列・分別装置、細胞配列方法、細胞分別方法、並びに、組織体形成方法に関する。
現在、再生医療では細胞シートや細胞懸濁液を用いた細胞移植が主流である。今後は血管や神経といった複雑な構造を有する組織体や、肝組織、腎組織といったより大きな組織体や臓器を、体外で人工的に加工して移植するEngineered Tissueを用いた再生医療が重要となってくると考えられ、その三次元構造は必然的に複雑な構造となる。そのため、複雑且つ微細な三次元構造を有する人工的な組織体の形成、形成方法等の開発が求められている。
細胞培養方法の一つとして、ハイドロゲルを利用した方法が挙げられる。ハイドロゲルは、高い含水率、力学的性質の調整が容易、栄養素の拡散性に優れる等の細胞の担体として優れた特性を有している(非特許文献1)。
ハイドロゲルは、光分解性の基を分子内に組み込むことで光分解性が付与され、光による加工が可能な光分解性ゲルが開発されている。光分解性ゲルとしては、例えばポリエチレングリコールを主鎖とし、ニトロベンジル基を分子内に有するものがある(特許文献1及び非特許文献4)。このような構成を持った高分子モノマーから形成されるハイドロゲルの物性は、光照射によって時間的・空間的に制御可能であり(非特許文献3及び4)、光分解は生細胞との適合性が高い(非特許文献2及び5)。
しかし、これまでに報告されている光分解性ゲルは、ラジカル重合を利用してゲル化されるため、酸素の存在下で重合すると酸素の影響を受けて劣化することがある。また、ラジカルが細胞や生理活性物質にダメージを与えてしまう、また、主鎖として使用できる高分子化合物が、ラジカル重合できるモノマーの重合物に限定されるため、その利用が限定されてしまっている等の問題があった。
発明者らは、ラジカル重合を利用せず、高分子化合物と混合するだけで架橋反応が起こり、光分解性ゲルを形成可能な光分解性架橋剤の開発を行ってきた(特許文献2)。
特開2007−108087号公報 特開2012−80844号公報
Drury, J. L. and Mooney, D. J., Biomaterials (2003) Vol.24, pp.4337−4351. Kloxin, A. M. et.al., Science (2009) Vol.324, pp.59−63. Kloxin, A. M. et.al., Adv. Mater. (2010) Vol.22, pp.61−66. Wong, D. Y. et.al., Macromolecules (2010) Vol.43, pp.2824−2831. Kloxin, A. M.et.al., Biomaterial(2010) Vol.31, pp.1−8.
従来の、ラジカル重合反応を用いずに重合可能な光分解性のゲルでは、ゲルが溶媒を吸収して膨潤することで崩れてしまい、意図した構造が構築できないことがある。またゲルの強度が低く、生体構造を再現するような複雑な三次元構造の作製が難しいという問題がある。ゲルの強度を容易に高める方法としては、ゲルを構成する化合物の濃度を上げてもよいが、濃度を上げるとゲルの含水率が下がってしまう。または、ゲルの強度を高めるために、ポリマーを構成する化合物の分子量を下げることでもゲルの強度を高めることができるが(価数を一定とした場合)、ゲルの水に対する溶解度が低下してしまい、製造時および使用時において扱いにくく、またゲルの状態が不均一になりやすい。
また一方で、人工的に加工した組織体を生体内に移植する際には、異物反応を低減するために人工的に合成された化合物ができるだけ除去されていることが好ましい。しかし、光によってのみ分解されるゲルでは、複雑な構造を有する組織体からゲルを完全に取り除くことが難しいという問題がある。光の吸収や焦点深度の問題で光分解では1mm以上の厚いゲルを分解することが難しく、また、細胞を播種・培養した後では細胞が光を吸収・散乱してしまうので組織体の内部の材料を分解することは難しい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細胞担体として適切な含水率、適度な水溶性、および複雑かつ微細な三次元構造を構築することが可能な強度とを併せ持ち、さらに、光照射以外の方法でも分解可能な光分解性ゲルを製造できる光分解性架橋剤の提供を課題とする。
また、前記光分解性架橋剤を有する光分解性ゲル、該光分解性ゲルを有する細胞培養器具、該細胞培養器具を使用する細胞配列・分別装置、並びに該細胞培養器具を用いる細胞配列法、及び細胞分別方法、並びに該光分解性ゲルを用いた組織体形成方法の提供を課題とする。
発明者らは鋭意検討し、光分解性架橋剤の分岐数を高めることでゲルの強度を高められ、上記課題が解決されることを見出し、さらに、架橋剤中にエステル結合を配置させることで、加水分解によって架橋剤が分解可能であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の通りである。
[1]直鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖又は3分岐以上の分岐鎖を有する分岐鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合及び該エステル結合の末端に配置された光分解性のベンジル基と、を含み、
前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有することを特徴とする光および加水分解性架橋剤。
[2]前記活性エステル基がN−ヒドロキシコハク酸イミドの誘導体である[1]に記載の光および加水分解性架橋剤。
[3]前記ポリエチレングリコール分岐鎖におけるエチレングリコールの平均繰り返し数が20から500の範囲にある[1]又は[2]に記載の光および加水分解性架橋剤。
[4]前記ポリエチレングリコールの分岐鎖が4分岐又は8分岐である[1]〜[3]のいずれか一つに記載の光および加水分解性架橋剤。
[5]前記ポリエチレングリコールが、ネオペンチル骨格を有する[1]〜[4]のいずれか一つに記載の光および加水分解性架橋剤。
[6][1]〜[5]のいずれか一つに記載の光および加水分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基又はヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光および加水分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されていることを特徴とする光および加水分解性ゲル。
[7][6]に記載の光および加水分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つである光および加水分解性ゲル。
[8]前記高分子化合物が、分岐型のポリエチレングリコール誘導体である[6]又は[7]に記載の光および加水分解性ゲル。
[9]前記高分子化合物が、ゼラチンである[6]又は[7]に記載の光および加水分解性ゲル。
[10][6]〜[9]のいずれか一つに記載の光および加水分解性ゲルからなる層が、細胞培養基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器具。
[11]前記細胞培養基材の少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなる[10]に記載の細胞培養器具。
[12][10]又は[11]に記載の細胞培養器具と、該細胞培養器具に光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、光源と、前記光源からの光を該細胞培養器具の表面の任意の一部領域にのみ照射させる照射領域調整部を有することを特徴とする細胞配列・分別装置。
[13][10]又は[11]に記載の細胞培養器具を使用し、該細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域の細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別することを特徴とする細胞分別方法。
[14][10]又は[11]に記載の細胞培養器具を使用し、該細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域に細胞を配列することを特徴とする細胞配列方法。
[15][6]〜[9]のいずれか一つに記載の光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程を含むことを特徴とする組織体形成方法。
(I)前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
(II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
(III)前記光および加水分解性ゲルに細胞を播種する工程
(IV)細胞を培養する工程
(V)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
[16][6]〜[9]のいずれか一つに記載の光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程を含むことを特徴とする組織体形成方法。
(I)細胞を内包させた前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
(II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
(III)細胞を培養する工程
(IV)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
本発明の光および加水分解性架橋剤によれば、細胞担体として適切な含水率、適度な水溶性、および複雑かつ微細な三次元構造を構築することが可能な強度とを併せ持った光および加水分解性ゲルの製造が実現される。したがって、本発明の光および加水分解性架橋剤によれば、複雑かつ微細な三次元構造を有し、生体移植に好適なマテリアルフリーの組織体の形成及びより生体環境に近く信頼度の高い細胞アッセイ系が実現される。したがって本発明は、再生医療技術の発展および新規の医薬品開発に資する。
本発明の光および加水分解性架橋剤の模式図である。 本発明の光および加水分解性架橋剤の構造の説明図である。 本発明の光および加水分解性ゲルの生成反応を示す図である。 本発明の光および加水分解性ゲルの分解反応を示す図である。 本発明の光および加水分解性ゲルの加水分解反応を示す図である。 本発明の細胞配列・分別装置の一例を示す構成図である。 本発明の細胞配列方法の一例を示す模式図である。 本発明の細胞分別方法の一例を示す模式図である。 本発明の組織体形成方法の一例を示す模式図である。 本発明の組織体形成方法の一例を示す模式図である。 本発明の光および加水分解性架橋剤の合成の一例を示す説明図である。 本発明の光および加水分解性架橋剤の合成の一例を示す説明図である。 本発明の光および加水分解性架橋剤の合成の一例を示す説明図である。 本発明の光および加水分解性ゲルの加水分解反応の様子である。
《光および加水分解性架橋剤》
直鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖又は3分岐以上の分岐鎖を有する分岐鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合及び該エステル結合の末端に配置された光分解性のベンジル基と、を含み、
前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有する化合物である。
前記光および加水分解性架橋剤としては、例えば、下記式一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、Z、−O(CHCHO)−Z、又は炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。
Zは、−C(=O)−とその末端に配置された光分解性のベンジル基を表し、該−C(=O)−は、前記(CHCHO)鎖の末端の酸素原子とともにエステル結合を形成している。前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有する。
複数のAは、連結基を表し、それぞれ独立に単結合、又は炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、
該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又はシクロへキシレン基によって置換されていてもよい。
pは0、又は1以上の整数を表し、pが1以上の場合、複数存在するR及びRは同一でも異なっていてもよい。R〜Rのうち少なくとも2つ以上のRがZを含み、1つ以上のRが−O(CHCHO)−Zであることとする。
本発明の光および加水分解性架橋剤が、3分岐以上の分岐鎖を有している場合、該分岐鎖の分岐末端に配置された活性エステル基と、該活性エステル基と反応する高分子化合物との間に形成される架橋点(架橋剤1分子あたり)が十分に多く、本発明の光および加水分解性架橋剤を用いれば、適度な強度を持った光および加水分解性ゲルを得ることができる。また、本発明の光および加水分解性架橋剤は、光分解性のニトロベンジル基を含む基を有していることから、伝統的なフォトリソグラフィーや近年の二光子励起加工法に代表されるような、光による微細加工技術を適応可能であり、本発明の光および加水分解性架橋剤を用いれば、光照射によってゲルの微細な加工が可能な光および加水分解性ゲルを得ることができる。したがって、本発明の光および加水分解性架橋剤を用いれば、複雑且つ微細な三次元構造を有するゲルを構築することが可能である。
前記一般式(1)で表される光および加水分解性架橋剤が含むポリエチレングリコール分岐鎖のエチレングリコールの平均繰り返し数nは、20から500の範囲にあり、30から250の範囲にあることがより好ましく40から125の範囲にあることがさらに好ましい。
エチレングリコールの繰り返し数を上記範囲に設定することで、ゲルの水に対する溶解度を高めることができ、製造時および使用時において扱いの容易で、状態の均一な光および加水分解性ゲルを得ることができる。
前記一般式(1)において、Zは−C(=O)−とその末端に配置された光分解性のベンジル基である。前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有する。
係るベンジル基としては、下記一般式(2)又は(3)で表される基が好ましい。
前記一般式(2)〜(3)中、Bは、−C(=O)−(CH−C(=O)−NH−で表される基を表し、mは、0〜5の整数を表し、5が好ましい。
*は、エチレングリコールの酸素原子との結合位置を表す。
は、水素もしくは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。Rは、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基を表し、炭素数1〜6の直鎖状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。Rは、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基を表し、N−ヒドロキシコハク酸イミド誘導体が好ましく、下記一般式(4)で表される誘導体がより好ましい。
前記一般式(4)中、*は、ベンゼン環の炭素原子との結合位置を表す。qは1〜10の整数を表し、1〜6が好ましく、2〜5がより好ましく、3が特に好ましい。
前記一般式(2)〜(3)中のBに示されるように、本発明の光および加水分解性架橋剤において、分岐鎖状のポリエチレングリコールにおける該分岐鎖の末端には、エステル結合が配置されるため、架橋剤が加水分解によって分解される。
前記一般式(1)で表される化合物において、pが0の場合、該化合物は、具体的には下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(5)中、Zは前記一般式(1)におけるものと同様である。
前記一般式(5)で表される化合物は、具体的には下記一般式(30)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(30)中、B、R〜R、及びqは、前記一般式(2)〜(4)におけるものと同様である。
前記一般式(30)で表される化合物は、具体的には下記式(31)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物において、pが1以上の場合、該化合物は、具体的には下記一般式(6)〜(8)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(6)〜(8)中、n、Z、A、R〜R、及びpは前記一般式(1)におけるものと同様である。
pが1の場合、前記一般式(1)で表される化合物は、具体的には下記一般式(9)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(9)中、Z、A、及びR〜Rは前記一般式(1)におけるものと同様である。)
前記一般式(9)で表される化合物は、具体的には下記一般式(10)又は(11)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(10)〜(11)中、n、Zは前記一般式(1)におけるものと同様である。)
前記一般式(1)で表される化合物は、具体的には下記一般式(12)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(12)中、Z、は前記一般式(1)におけるものと同様である。pは1以上の整数を表す。
前記一般式(12)で表される化合物は、具体的には下記一般式(13)又は(14)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(13)〜(14)中、n、Zは前記一般式(1)におけるものと同様である。
4分岐又は8分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)は合成しやすく、また、入手も容易であることから、前記一般式(1)で表される化合物において、ポリエチレングリコールの分岐鎖が4分岐又は8分岐であることが好ましい。
即ち、本発明の光および加水分解性架橋剤としては、下記一般式(15)又は(16)で表される化合物がより好ましい。
前記一般式(15)〜(16)中、B、R〜R、及びqは、前記一般式(2)〜(4)におけるものと同様である。
前記一般式(15)又は(16)で表される化合物において、具体的には下記式(17)又は(18)で表される化合物であることが更に好ましい。
これらの中でも、前記ポリエチレングリコールが、ネオペンチル骨格を有するものが好ましく、式(17)および(18)で表される化合物がより好ましい。
図1に、前記式(17)で表される化合物の模式図を示す。図1および図2(a)〜(d)に示されるように、光および加水分解性架橋剤1は、分岐鎖状のポリエチレングリコール(PEG)からなる主鎖2と、この主鎖2の末端側に配置されたエステル結合80及び該エステル結合80の末端に配置された光分解性のニトロベンジル基を含む基3と、ニトロベンジル基を含む基3の末端側に配置された活性エステル基4とからなり、4分岐のポリエチレングリコールの分岐鎖を有し、ポリエチレングリコールの分岐鎖が中心にネオペンチル骨格を有する。
図1および図2(a)〜(d)に示すように、主鎖2はポリエチレングリコール(PEG)である。ニトロベンジル基を含む基3は、アミド結合部5(―NHCO―)とエステル結合80を介して主鎖2に結合している。
《光および加水分解性架橋剤の合成》
前記一般式(1)で表される化合物の製造方法について説明する。
前記一般式(1)で表される化合物は、直鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖又は3分岐以上の分岐鎖を有する分岐鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合及び該エステル結合の末端に配置された光分解性のベンジル基と、を含み、前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有する化合物である。以下に、前記分岐末端に配置されたエステル結合及び該エステル結合の末端に前記光分解性のベンジル基を配置し、前記ベンジル基に活性エステル基を配置する反応を説明する。
式中B、R〜R、及びqは、前記一般式(2)〜(4)におけるものと同様である。R7aはアミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基を表す。
一般式(1−c)で表される基は、一般式(1−a)で表される基と、一般式(1−a)で表される化合物に対して1.0〜2.0倍モル量の一般式(19)で表される化合物とを、溶媒中、0〜200℃の温度で数10分〜24時間処理し、溶媒を除去後、一般式(1−b)で表される化合物を析出させ、精製後、一般式(1−b)で表される化合物に対して、1.0〜2.0倍モル量の一般式(20)で表される化合物とを、触媒の存在下、溶媒中、0〜200℃の温度で数10分〜24時間処理し、単離することにより得られる。前記触媒としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)が好ましい。
上記一般式(1−a)で表される基は、下記一般式(21)であることが好ましい。
前記一般式(21)中、n及びmは前記一般式(1)〜(3)におけるものと同様である。
上記一般式(1−c)で表される基は、下記一般式(22)であることが好ましい。
前記一般式(22)中、n、B、R〜R、及びqは、前記一般式(1)〜(4)におけるものと同様である。
《光および加水分解性ゲル》
本発明の光および加水分解性ゲルは、本発明の光および加水分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光および加水分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されていることを特徴とする光および加水分解性ゲルである。
高分子化合物は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
高分子化合物としては、分岐型のポリエチレングリコールもしくはその誘導体、またはタンパク質としてゼラチンがより好ましい。
ポリエチレングリコールは細胞との相互作用が少なく、しかも高分子化合物自体が水に可溶であるために好ましい。なかでも、分岐型のポリエチレングリコールまたはその誘導体を用いると、網目構造が形成されやすく、ゲル化が進行しやすくなるため好ましい。分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)の分岐数は3以上が好ましい。特に、4分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)は入手しやすいため好適である。
ポリエチレングリコール(または誘導体)は、末端にアミノ基を有することが望ましい。
ポリエチレングリコール(または誘導体)の分子量は1万から4万の範囲にあることが好ましい。
ゼラチンの主成分であるコラーゲンは多細胞生物(動物)の細胞外基質の主成分であることから、細胞の足場タンパク質として好ましく、また、細胞の増殖、分化を促す場合があるために好ましい。用いられるゼラチンの種類は特に制限されないが、ウシ、又はブタ皮由来原料を酸処理して得られたtypeAゼラチンが好ましい。
ゼラチンの強度は特に制限されないが、200〜400ブルームが好ましく、250〜350ブルームがより好ましい。
塩基性多糖類としては、キトサンが好ましい。
高分子化合物と光および加水分解性架橋剤とを混合すると、高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基は、光および加水分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋される。
前記アミノ基は光および加水分解性架橋剤の活性エステル基とアミド結合を形成し、前記ヒドロキシル基は活性エステル基とエステル結合を形成する。これによって、網目構造が形成され、ゲル化が進行し、光および加水分解性ゲルが生成する。
本発明では、架橋反応を促進させるための添加剤は特に必要ないため、高分子化合物と光および加水分解性ゲルとを混合するだけで架橋反応が起こり、ゲル化が進行する。また、反応時の温度は常温でよい。
また、本発明における架橋反応は溶存酸素の影響を受けないため、薄膜状のゲルの形成が容易である。
高分子化合物に対する光および加水分解性架橋剤の添加量(光および加水分解性架橋剤/高分子化合物)はゲル化する範囲で自由に設定することができるが、強度の高いゲルを調製するためには高分子化合物のアミノ基と光および加水分解性架橋剤の活性エステル基のモル比で1:1程度であることが好ましい。高分子化合物と光および加水分解性架橋剤との混合比は、例えば4分岐型のアミノ末端ポリエチレングリコール(またはその誘導体)を高分子化合物として用い、4分岐型の光および加水分解性架橋剤を用いる場合は、モル比(高分子化合物:光および加水分解性架橋剤)で4:1から1:4の範囲が好ましく、モル比で2:1から1:2の範囲がより好ましい。
高分子化合物の使用量は、例えば4分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)の場合、光および加水分解性ゲル中に2.5重量%以上含有されるように設定することが好ましく、ゼラチンの場合、光および加水分解性ゲル中に1.0重量%以上含有されるように設定することが好ましい。
図3(a)は、光および加水分解性架橋剤1の末端側に配置された活性エステル基4と高分子化合物のアミノ基8とが縮合してアミド結合9を形成し、架橋される反応を示すものである。
図3(b)は、光および加水分解性架橋剤と高分子化合物6とを反応させることによって、光および加水分解性ゲル10を生成させる反応を模式的に示すものである。
高分子化合物6は、末端にアミノ基8を有する4分岐型のポリエチレングリコール誘導体である。
高分子化合物6と光および加水分解性架橋剤1とを混合すると、高分子化合物6のアミノ基は、光および加水分解性架橋剤1の活性エステル基4と縮合して架橋される。
これによって、高分子化合物6は、光および加水分解性架橋剤1を介して他の高分子化合物6と結合し、網目構造を有する光および加水分解性ゲル10が生成する。
図3(c)は、光および加水分解性架橋剤と高分子化合物7とを反応させることによって、光および加水分解性ゲル10’を生成させる反応を模式的に示すものである。
高分子化合物7は、分子内にアミノ基8を有するゼラチンである。
高分子化合物7と光および加水分解性架橋剤1とを混合すると、高分子化合物7のアミノ基は、光および加水分解性架橋剤1の活性エステル基4と縮合して架橋される。
これによって、高分子化合物7は、光および加水分解性架橋剤1を介して他の高分子化合物7と結合し、網目構造を有する光および加水分解性ゲル10’が生成する。
本発明の光および加水分解性ゲルは、光の照射により光および加水分解性架橋剤1が分解されることによって、分解される。
図4(a)は、光および加水分解性架橋剤のニトロベンジル基の分解を示すものである。ニトロベンジル基を含む基3は、例えば波長330〜380nmの紫外線などの光の照射により、破線位置で分解可能である。
ニトロベンジル基を含む基3は、アミド結合部5のアミノ基との間の結合が切断され、ニトロベンジル基3’となる。なお、ニトロベンジル基の構造によっては、前記光照射によりニトロベンジル基を含む基3と活性エステル基4との結合が切断されることもある。
図4(b)と図4(c)は、それぞれ光および加水分解性ゲル10と10’が、光の照射により分解される様子を模式的に示すものである。光および加水分解性ゲルが分解されることにより、光および加水分解性ゲルは水に溶解する。
本発明の光および加水分解性ゲルは、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合が加水分解することで、光および加水分解性架橋剤1が分解されることによっても、分解される。
図5(a)は、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合80の加水分解を示すものである。エステル結合80は、加水分解により、破線位置で分解可能である。エステル結合80は結合が切断され、ヒドロキシ基80aとカルボキシル基80bとなる。
図5(b)と図5(c)は、それぞれ光および加水分解性ゲル10と10’が、エステル結合の加水分解によって分解される様子を模式的に示すものである。光および加水分解性ゲルが分解されることにより、光および加水分解性ゲルは水に溶解する。
本発明によれば、前記構造を有する光および加水分解性架橋剤を用いるので、高分子化合物と混合するだけで架橋反応が起こり、ゲル化が進行する。
ラジカル重合を利用してゲル化される従来の光応答性ゲルおよび光分解性ゲルの製造工程は、重合の際に酸素が存在すると重合反応を阻害し、ゲル化が進行しない。この現象は特に薄膜状のゲルを調製する際に顕著になる。一方、本発明の光および加水分解性架橋剤では、架橋反応時に酸素の影響を全く受けないため、このような重合反応阻害は起こらない。
ラジカル重合反応を利用する場合も無酸素雰囲気条件で反応を行えば薄膜状のゲルを調製することが可能となるかもしれないが、その場合には無酸素条件下で重合反応を行わせるための設備が必要となり、製造工程が複雑になる。
一方、本発明の光および加水分解性架橋剤を用いると、無酸素雰囲気条件が必要ないため、薄膜状のゲルの製造工程が簡略であり、効率的かつ低コストで光および加水分解性ゲルを調製できる。
また、本発明では、架橋反応にラジカル重合を利用しないため、ラジカルによってダメージを受けやすい物質を混合した状態で光および加水分解性ゲルを調製することが可能となる。従って、光および加水分解性ゲルを広範な用途、例えば細胞や生理活性物質を固定化する用途にも使用できる。また、ラジカル重合に対応できないモノマーの重合物も高分子化合物として使用できることから、高分子化合物の選択範囲が広いという利点もある。
本発明の光および加水分解性ゲルは、適度な強度、及び光および加水分解性を有しているため、伝統的なフォトリソグラフィーや近年の二光子励起加工法に代表されるような、光による微細加工技術を適応可能である。また、本発明の光および加水分解性ゲルは、適度な強度を有しつつ細胞担体として適切な含水率を実現できる。したがって、本発明の光および加水分解性ゲルは、複雑且つ微細な三次元構造を有する細胞担体として使用可能である。さらに本発明の光および加水分解性ゲルは、加水分解によっても分解可能であるため、光が照射されにくい領域のゲルも分解が可能である。また、本発明の光および加水分解性ゲルは光照射による細胞への影響を考慮せずに分解が可能である。本発明の光および加水分解性ゲルは細胞からゲルを容易に取り除くことができる。
《細胞培養器具》
本発明の細胞培養器具は、本発明の光および加水分解性ゲルからなる層が、細胞培養基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器具である。
光および加水分解性ゲル層の厚さは、100nm〜100μmが好ましく、300nm〜30μmがさらに好ましく、1000nm〜10μmが特に好ましい。
細胞培養基材の構成材料としては、特に制限されず、プラスチック、ガラス、改質ガラス、金属等を挙げることができる。
プラスチックとして好適なものとしては、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))、ポリビニルピリジン系樹脂(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET))、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
細胞培養基材は、細胞培養に一般的に用いられる細胞培養ディッシュもしくはマイクロプレートと同様の構造の基材が好ましい。
細胞培養基材は、少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなることが好ましい。
細胞接着性材料としては、細胞接着性タンパク質又は細胞接着性ペプチドが好ましい。細胞接着性タンパク質は、ファイブロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、ラミニンからなる群から選択された少なくとも1つであることがより好ましく、ゼラチンが特に好ましい。細胞接着性ペプチドは、アルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸というアミノ酸配列(RGD配列)を有することが好ましい。
本発明の細胞培養器具は、本発明の光および加水分解性ゲルからなる層が、細胞培養基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器具である。本発明の光および加水分解性ゲルは、複雑且つ微細な三次元構造を構築可能な細胞担体として好適な材料である。本発明の光および加水分解性ゲルのみを用いても細胞培養、及び加工を行うことは可能であるが、本発明の光および加水分解性ゲルを細胞培養基材表面に形成させることで、細胞培養、及びゲルの加工がより容易となる。
《細胞配列・分別装置》
図6は、本発明の細胞配列・分別装置の一例であって、細胞培養器具11を保持する保持台12と、細胞培養器具11に光を照射する照射部13を備えている。
照射部13は、光源(図示略)と、細胞培養器具11の任意の一部領域にのみ光照射する照射領域調整部14と、パソコンなどの制御部15とを有する。
照射領域調整部14は、所定のパターン16をなす光を細胞培養器具11に照射することができる。パターン16は表示装置17に表示される。
照射領域調整部14は、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device))とを備えている。DMDは複数のマイクロミラーを有し、各マイクロミラーは、制御部15からの信号により独立に角度を設定できるようにされ、光源からの光を反射することによって、前記信号に応じたパターンの光18を細胞培養器具11に照射できるようになっている。
照射領域調整部14は、レンズ19、ミラー20、レンズ21を経て、細胞培養器具11の任意の領域に光18を照射できる。細胞培養器具11の任意形状の一部領域にのみ光18を照射することもできるし、全領域に光18を照射することもできる。
光源としては、光および加水分解性架橋剤を分解させ得るものが選択され、例えば紫外線、可視光等の光を照射できるもの(例えば紫外線ランプ、可視光ランプ等)が使用できる。
光の波長域は、例えば200〜1000nmを例示できる。特に300〜600nm、なかでも350〜400nmは好適である。照射エネルギーは、通常は0.01〜1000J/cm、好ましくは0.1〜100J/cm、より好ましくは1〜10J/cmである。
なお、光を細胞培養基材の一部領域にのみ照射させるための構成としては、DMDに限らず、液晶シャッターアレイ、光空間変調素子、所定形状のフォトマスク等も採用できる。
図6に示す細胞配列・分別装置は、後述のように、光が照射される一部領域に細胞を配列する細胞配列装置としても使用できるし、前記光照射領域にある細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別する分別装置としても使用できる。
本発明の光および加水分解性ゲルは、光照射により複雑且つ微細な三次元構造を構築可能でかつ細胞担体として使用可能な材料である。そのため、本発明の細胞配列・分別装置は、光による微細な加工技術と細胞培養技術とを組み合わせることで、三次元的で且つ精度の高い細胞配列、細胞培養、及び細胞分別を実現できる。また、細胞配列、細胞培養及び細胞分別を同時に行うことが可能であるため、三次元的な細胞状態を把握しつつ細胞を分別および配列させることが可能である。
《細胞配列および分別方法》
次に、本発明の細胞培養器具を使用し、該細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域の細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別することを特徴とする細胞分別方法、及び、前記一部領域に細胞を配列することを特徴とする細胞配列方法について説明する。
本発明において分別対象となる細胞は、特に限定されず、目的に応じて、動物由来の細胞(例えばヒト細胞)、植物由来の細胞、微生物由来の細胞等を使用できる。
具体例としては、例えば、造血幹細胞、骨髄系幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞などの体性幹細胞や胚性幹細胞、人工多能性幹細胞がある。
また、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球(T細胞、NK細胞、B細胞等)等の白血球や、血小板、赤血球、血管内皮細胞、リンパ系幹細胞、赤芽球、骨髄芽球、単芽球、巨核芽球および巨核球等の血液細胞、内皮系細胞、上皮系細胞、肝実質細胞、膵ラ島細胞等のほか、研究用に樹立された各種株化細胞も本発明の対象となり得る。
なお、本発明において、細胞が付着する(接着する)とは、例えば、培地や緩衝液等による洗浄等の一定の物理的刺激によってもその位置から移動しなくなることである。例えば、培地や緩衝液等の流れによる所定の剪断応力(例えば0.1〜10N/m)の洗浄操作により移動しない状態を「接着状態」(付着状態)とすることができる。
本発明の細胞配列および分別方法は、細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解する方法であり、同時に、光および加水分解性ゲルが加工されることを伴う。光および加水分解性ゲル層の縦横方向(XY軸方向)に着目した場合、光および加水分解性ゲルが選択的に分解されることで、光および加水分解性ゲルが2次元的に加工される。光および加水分解性ゲル層の厚さ方向(Z軸方向)に着目した場合、光および加水分解性ゲルが三次元的に加工される。
光を照射した部分に含まれる光および加水分解性ゲル層は、全てのゲルを分解させてもよいし、すべてのゲルを分解させないで、Z軸方向への分解深度を任意に変化させることが可能である。
(細胞配列方法)
以下、図7(a)を参照しつつ、第1の例の細胞配列方法を詳しく説明する。図7(a)は細胞培養器具30の模式図である。
細胞培養基材31の表面に光および加水分解性ゲル層32を形成する。細胞培養基材31の表面は細胞接着性が低い材料、例えばガラス、シリコーン樹脂等であることが好ましい。光および加水分解性ゲル層は、細胞接着性が高いことが好ましく、光および加水分解性ゲル層に含まれる本発明の光および加水分解性架橋剤と架橋される高分子化合物が、前記細胞接着性タンパク質であることが好ましい。
光および加水分解性ゲル層32は、光および加水分解性ゲルと前記細胞接着性材料とを混合した混合材料であってもよい。
細胞培養器具30の光および加水分解性ゲル層32の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲル層32を分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材31表面から除去され、光および加水分解性ゲル層32は三次元的に加工される。
細胞培養器具30に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層32の表面33及び光照射によって新たに形成された光および加水分解性ゲル層表面33’にのみ細胞34は付着する。
光および加水分解性ゲル層32の表面33、33’に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具30から除去することができる。これによって、三次元的に加工された光および加水分解性ゲル層32上に細胞34を選択的に配列することができる。
さらに、光および加水分解性ゲル層32が加水分解されることで、配列された細胞34を細胞培養器具30から分離させることができる。
以下、図7(b)を参照しつつ、第2の例の細胞配列方法を詳しく説明する。図7(b)は細胞培養器具40の模式図である。
細胞培養基材41の表面に光および加水分解性ゲル層42を形成する。細胞培養基材41の表面は細胞接着性が高い材料、例えばポリスチレンであることが好ましい。細胞培養基材41の表面が細胞接着性材料を含まない場合は、細胞培養基材41上に、細胞接着性材料からなるコート層を形成させてもよい。
光および加水分解性ゲル層42は細胞接着性が低いことが好ましく、光および加水分解性ゲル層42に含まれる本発明の光および加水分解性架橋剤と架橋される高分子化合物は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、細胞接着性の低いタンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群から選択された少なくとも1つであることが好ましく、分岐型のポリエチレングリコール誘導体が特に好ましい。
細胞培養器具40の光および加水分解性ゲル層42の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲル層42を分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材41表面から除去される。
細胞培養器具40に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層42が失われた領域A1の細胞培養基材41の表面にのみ細胞34は付着する。
細胞培養基材41表面に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具30から除去することができる。これによって、領域A1に細胞34を選択的に配列することができる。
さらに、光および加水分解性ゲル層42が加水分解されることで、細胞培養器具40に細胞34のみを配列させることができる。
(細胞分別方法)
次に、図8(a)を参照しつつ、第1の例の細胞分別方法を詳しく説明する。図8(a)は細胞培養器具50の模式図である。
細胞培養基材51の表面に光および加水分解性ゲル層32を形成する。
細胞培養基材51の材料は特に制限されず、前記の材料を用いることができる。光および加水分解性ゲル層32は、細胞接着性が高いことが好ましく、光および加水分解性ゲル層32に含まれる本発明の光および加水分解性架橋剤と架橋される高分子化合物が、前記細胞接着性タンパク質であることが好ましい。
光および加水分解性ゲル層32は、光および加水分解性ゲルと前記細胞接着性材料とを混合した混合材料であってもよい。
光および加水分解性ゲル層32が細胞接着性材料を含まない場合は、光および加水分解性ゲル層32上に、光および加水分解性ゲルと細胞接着性タンパクとを含むコート層を形成させてもよい。
細胞培養器具50に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層32表面に細胞34が付着する。
細胞培養器具50の光および加水分解性ゲル層32の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51の表面から除去され、光および加水分解性ゲル層32は三次元的に加工される。また、領域A1の光および加水分解性ゲルに付着した細胞34も細胞培養基材51から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具50から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別することができる。
さらに、光および加水分解性ゲル層32が加水分解されることで、細胞培養器具50上に残された細胞34を細胞培養器具50から分離することができる。
以下、図8(b)を参照しつつ、第2の例の細胞分別方法を詳しく説明する。図8(b)は細胞培養器具60の模式図である。
細胞培養基材51の表面に、細胞34を内包した光および加水分解性ゲル層62を形成する。
細胞培養基材51の材料は特に制限されず、前記の材料を用いることができる。光および加水分解性ゲル層62に含まれる本発明の光および加水分解性架橋剤と架橋される高分子化合物は、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物であれば特に制限されず、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群から選択された少なくとも1つであることが好ましく、分岐型のポリエチレングリコール誘導体又はゼラチンであることがより好ましい。
細胞培養器具60の光および加水分解性ゲル層62の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層62は三次元的に加工される。また、領域A1の光および加水分解性ゲルに内包された細胞34も細胞培養基材51から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具60から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別することができる。
さらに、光および加水分解性ゲル層32が加水分解されることで、細胞培養器具60上に残された細胞34を細胞培養器具60から分離することができる。
上記細胞配列方法および細胞分別方法によれば、細胞培養器具11の領域A1にのみ光を照射するので、光照射による細胞34への悪影響を極力抑えることができる。また細胞へ光照射をせずに、細胞培養器具から光および加水分解性ゲルを取り除くことができる。このため、細胞34の細胞外マトリックスや膜タンパク質が損なわれるのを防止し、器官特異的機能を維持することができる。このため、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて有用である。
また、領域A1にのみの光照射によって細胞34の分別を行うため、目的の細胞を精度よく分別することができる。
さらに、本発明の光および加水分解性ゲルは、複雑かつ微細な三次元構造を構築可能な細胞担体として好適な材料であるから、本発明の細胞配列方法および細胞分別方法によれば、三次元的で且つ精度の高い細胞配列、及び細胞分別を実現できる。
《組織体形成方法》
本発明における組織体とは、細胞が三次元的に集合した状態を指し、細胞間に本発明の光および加水分解性ゲルを含んでもよい。前記細胞は本発明の光および加水分解性ゲルを用いて任意の期間培養され、増殖させたり、所望の組織を形成したり、所望の状態に分化されることが好ましい。
本発明の組織体形成方法は光および加水分解性ゲルを形成する工程を含む。光および加水分解性ゲルの厚さは、ゲルに内包させた細胞が、Z軸方向に少なくとも2細胞以上が配列可能であって、三次元組織体が形成可能な厚みである10μm以上であることが好ましい。より具体的には、20μm〜1000μmが好ましく、50μm〜300μmがさらに好ましい。
なお、以下の組織体形成方法の説明では、本発明の細胞培養器具を用いる場合を説明するが、本発明の組織体形成方法は本発明の光および加水分解性ゲルを用いていればよく、本発明の細胞培養器具を用いずに実施してもよい。
次に、光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程
(I)前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
(II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
(III)前記光および加水分解性ゲルに細胞を播種する工程
(IV)細胞を培養する工程
(V)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
を含むことを特徴とする組織体形成方法について説明する。
上記(I)〜(IV)の工程の順番は、適宜入れ替えてもよく、また前記工程のうちの任意の工程を2回以上行ってもよい。
以下、図9(a)を参照しつつ、第1の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図9(a)は細胞培養器具30の模式図である。
細胞培養基材31および光および加水分解性ゲル層32は、第1の例の細胞配列法と同様の構成を用いることができる。
細胞培養器具30の光および加水分解性ゲル層32の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲル層32を分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材31表面から除去され、光および加水分解性ゲル層32は三次元的に加工される。
細胞培養器具30に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層32の表面33及び光照射によって新たに形成された光および加水分解性ゲル層表面33’にのみ細胞34は付着する。
光および加水分解性ゲル層32の表面33、33に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具30から除去することができる。これによって、三次元的に加工された光および加水分解性ゲル層32上に細胞34を選択的に配列することができる。
その後、細胞34を培養すると、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層32を足場として増殖でき、細胞培養器具30上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層32を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層32を組織体から完全に取り除くことができる。
以下、図9(b)を参照しつつ、第2の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図9(b)は細胞培養器具40の模式図である。
細胞培養基材41の表面に光および加水分解性ゲル層42を形成する。
細胞培養基材41および光および加水分解性ゲル層42は、第2の例の細胞配列法と同様の構成を用いることができる。
細胞は基質への接着依存性の増殖を示さないものが好ましく、例えば腫瘍細胞、血球系細胞、各種幹細胞等が挙げられる。
細胞培養器具40の光および加水分解性ゲル層42の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲル層42を分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材41表面から除去され、光および加水分解性ゲル層42は三次元的に加工される。
細胞培養器具40に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層42が失われた領域A1の細胞培養基材41表面にのみ細胞34は付着する。
細胞培養基材41表面に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具30から除去することができる。これによって、領域A1に細胞34を選択的に配列することができる。
その後、細胞34を培養すると、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層42に規定された形状で増殖でき、細胞培養器具40上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層42を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層42を組織体から完全に取り除くことができる。
以下、図9(c)を参照しつつ、第3の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図9(c)は細胞培養器具50の模式図である。
まず、細胞培養基材51の表面に光および加水分解性ゲル層32を形成する。
細胞培養基材51および光および加水分解性ゲル層32は、第1の例の細胞分別法と同様の構成を用いることができる。この場合、光および加水分解性ゲル層32上に、光および加水分解性ゲルと細胞接着性タンパクとを含むコート層を形成させることは適さない。
細胞培養器具50に細胞34を播種すると光および加水分解性ゲル層32表面に細胞34が付着する。
細胞培養器具50の光および加水分解性ゲル層32の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層32は三次元的に加工される。また、領域A1の光および加水分解性ゲルに付着した細胞34も細胞培養基材51表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具50から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別する。
その後、細胞34を培養すると、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層32を足場として増殖でき、細胞培養器具50上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層32を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層32を組織体から完全に取り除くことができる。
以下、図9(d)を参照しつつ、第4の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図9(d)は細胞培養器具50の模式図である。
まず、細胞培養基材51の表面に光および加水分解性ゲル層32を形成する。
細胞培養基材51および光および加水分解性ゲル層32は、第1の例の細胞分別法と同様の構成を用いることができる。この場合、光および加水分解性ゲル層32上に、光および加水分解性ゲルと細胞接着性タンパクとを含むコート層を形成させることは適さない。
細胞培養器具50に細胞34を播種すると、光および加水分解性ゲル層32表面に細胞34が付着する。
その後、細胞34を培養し、細胞培養器具50上に細胞層を形成することができる。
さらに、細胞培養器具50の光および加水分解性ゲル層32の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層32は三次元的に加工される。また、領域A1の光および加水分解性ゲルに付着した細胞34も細胞培養基材51表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具50から選択的に除去することができる。
これによって、細胞培養器具50上の細胞層から細胞を選択的に除去することができる。
また、細胞34を加工後のゲル上でさらに培養させることで、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層32を足場として増殖でき、細胞培養器具50上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層32を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層32を組織体から完全に取り除くことができる。
次に、光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程
(I)細胞を内包させた前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
(II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
(III)細胞を培養する工程
(IV)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
を含むことを特徴とする組織体形成方法について説明する。
上記(I)〜(III)の工程の順番は、適宜入れ替えてもよく、また前記工程のうちの任意の工程を2回以上行ってもよい。
細胞培養基材51および光および加水分解性ゲル層62は、第2の例の細胞分別法と同様の構成を用いることができる。
以下、図10(a)を参照しつつ、第5の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図10(a)は細胞培養器具60の模式図である。
細胞培養基材51の表面に、細胞34を内包した光および加水分解性ゲル層62を形成する。
細胞培養器具60の光および加水分解性ゲル層62の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層62は三次元的に加工され、また、領域A1の光および加水分解性ゲルに内包された細胞34も細胞培養基材51表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具60から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別する。
その後、細胞34を培養すると、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層62に規定された形状で増殖でき、細胞培養器具60上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層62を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層62を組織体から完全に取り除くことができる。
以下、図10(b)を参照しつつ、第6の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図10(b)は細胞培養器具60の模式図である。
細胞培養基材51の表面に、細胞34が内包された光および加水分解性ゲル層62を形成する。
その後、細胞34を培養し、細胞培養器具60上に三次元的に細胞塊を形成することができる。
細胞培養器具60の光および加水分解性ゲル層62の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層62は三次元的に加工され、また、領域A1の光および加水分解性ゲルに内包された細胞34も細胞培養基材51表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具60から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34が分別され、細胞培養器具60上に三次元的に形成された細胞塊から細胞を取り除くことができる。その後、細胞34を培養すると、細胞34は加工された光および加水分解性ゲル層62に規定された形状で増殖でき、細胞培養器具60上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層62を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層62を組織体から完全に取り除くことができる。
以下、図10(c)を参照しつつ、第7の例の組織体形成方法を詳しく説明する。図10(c)は細胞培養器具60の模式図である。
細胞培養基材51の表面に、細胞34が内包された光および加水分解性ゲル層62を形成する。
細胞培養器具60の光および加水分解性ゲル層62の一部である領域A1に、フォトマスク35を通して光を照射し、領域A1の光および加水分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光および加水分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材51表面から除去され、光および加水分解性ゲル層62は三次元的に加工される。また、領域A1の光および加水分解性ゲルに内包された細胞34も細胞培養基材51表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具60から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別する。
その後、光照射により露出した細胞培養基材51上又は光および加水分解性ゲル層62上に、細胞34とは別の種類の細胞34’を内包した光および加水分解性ゲル層72をさらに形成してもよい。光および加水分解性ゲル層62及び72は、例えば領域A1とは異なる領域B1へ、フォトマスク35を通して光照射することにより再度加工することができる。
その後、細胞34、34’を培養すると、細胞34、34’は加工された光および加水分解性ゲル層62、72に規定された形状で増殖でき、細胞培養器具60上で、三次元的に組織体を形成することができる。
組織体を形成した後に、光および加水分解性ゲル層62を加水分解によって分解させ、光および加水分解性ゲル層62を組織体から完全に取り除くことができる。
本発明の光および加水分解性ゲルは、複雑かつ微細な三次元構造を構築可能な細胞担体として好適な材料であるから、本発明の組織体形成方法によれば、複雑かつ微細な三次元構造を有し、生体移植に好適なマテリアルフリーの組織体を形成可能である。また、より生体環境に近く信頼度の高い細胞アッセイ系が実現される。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[光および加水分解性架橋剤の合成]
(実施例1)
以下は、光および加水分解性架橋剤(NHS−PCH−2armPEG)の合成方法である。
N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)洗浄した3−(1−piperazino)propyl functionalized silica gel(12 g)のDMSO(24 mL)溶液に4−{4−[1−(9−Fluorenylmethyloxycarbonylamino)ethyl]−2−methoxy−5−nitrophenoxy}butanoic acid(0.5 g)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。濾過後、濾取物をDMSOで洗浄し、減圧下、全量が約24mLになるまでDMSOを留去した。得られた残留物にSUNBRIGHT DE−034CS (NOF CORPORATION, Mw 3,400、1.1 g)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にてTHFを留去後、残渣を氷冷したエーテルにゆっくり滴下し、数〜24時間静置後、析出物を濾取した。析出物を少量のTHFに溶解させた析出物を氷冷したエーテルにゆっくり滴下、1〜24時間静置後、析出物を濾取した(2回繰り返す)。減圧下、乾燥させた析出物をSephadex LH−20(MeOH)で分離精製し、得られた化合物のTHF溶液にN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にてTHFを留去後、ジクロロメタン(CHCl)を加えて希釈した。得られたCHCl溶液を飽和食塩水で洗浄(2回繰り返す)後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過後、減圧下溶媒を留去し、少量のTHFに溶解させた残渣をエーテルにゆっくり滴下し、1〜24時間時間静置後、析出物を濾取した(2回繰り返す)。析出物を減圧下乾燥後、目的化合物の光および加水分解性架橋剤を0.82 g得た。
上記の過程と、得られた化合物を図11に示す。
得られた目的化合物についてNMRによる分析を行い、目的の化合物が得られたことを確認した。以下にNMRによる分析結果を示す。
H−NMR(400MHz, CDCl): 1.53 (d, J = 6.97 Hz, 3H), 2.28 (tt, J = 7.33, 6.04 Hz, 2H), 2.47 (t, J = 6.57 Hz, 2H), 2.67 (dt, J = 13.73, 6.57 Hz, 2H), 2.85 (br s, 4H), 2.87 (t, 7.33 Hz, 2H), 3.45−3.83 (m, (O(CHCHO)), 3.97 (s, 3H), 4.15(t, J = 6.04 Hz, 2H), 5.53 (qd, J = 6.97, 6.61 Hz, 1H), 6.50 (br d, J = 6.61 Hz, 1H), 6.95 (s, 1H), 7.58 (s, 1H).
(実施例2)
以下は、光および加水分解性架橋剤(NHS−PCH−4armPEG)の合成方法である。
N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)洗浄した3−(1−piperazino)propyl functionalized silica gel(12 g)のDMSO(24 mL)溶液に4−[4−[1−(9−Fluorenylmethyloxycarbonylamino)ethyl]−2−methoxy−5−nitrorhenoxy]butanoic acid(0.5g)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。濾過後、濾取物をDMSOで洗浄し、減圧下、全量が約24mLになるまでDMSOを留去した。得られた残留物にSUNBRIGHT PTE−100CS(NOF CORPORATION、1.0g)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にて、THFを留去後、残渣を氷冷したエーテルにゆっくり滴下し、数〜24時間静置後、析出物を濾取した。析出物を少量のTHFに溶解させた析出物を氷冷したエーテルにゆっくり滴下、1〜24時間静置後、析出物を濾取した(2回繰り返す)。減圧下、乾燥させた析出物をSephadex LH−20(MeOH)で分離精製し、得られた化合物のTHF溶液にN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にてTHFを留去後、ジクロロメタン(CHCl)を加えて希釈した。得られたCHCl溶液を飽和食塩水で洗浄(2回繰り返す)後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過後、減圧下溶媒を留去し、少量のTHFに溶解させた残渣をエーテルにゆっくり滴下し、1〜24時間時間静置後、析出物を濾取した(2回繰り返す)。析出物を減圧下乾燥後、目的化合物の光および加水分解性架橋剤を0.94g得た。
上記の過程と、得られた化合物を図12に示す。
得られた目的化合物についてNMRによる分析を行い、目的の化合物が得られたことを確認した。以下にNMRによる分析結果を示す。
H−NMR(400MHz, CDCl): 1.53 (d, J = 6.93 Hz, 3H), 2.28 (tt, J = 7.33, 6.00 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 6.55 Hz, 2H), 2.68 (dt, J = 13.57, 6.55 Hz, 2H), 2.85 (br s, 4H), 2.88 (t, 7.33 Hz, 2H), 3.41 (s, 2H), 3.45−3.84 (m, O(CHCHO)), 3.97 (s, 3H), 4.15(t, J = 6.00 Hz, 2H), 5.54 (qd, J = 6.93, 6.50 Hz, 1H), 6.50 (br d, J = 6.50 Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 7.58 (s, 1H).
(実施例3)
以下は、光および加水分解性架橋剤(NHS−PCH−8armPEG)の合成方法である。
N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)洗浄した3−(1−piperazino)propyl functionalized silica gel(16 g)のDMSO(32 mL)溶液に4−{4−[1−(9−Fluorenylmethyloxycarbonylamino)ethyl]−2−methoxy−5−nitrophenoxy}butanoic acid(0.67 g)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。濾過後、濾取物をDMSOで洗浄し、減圧下、全量が約24mLになるまでDMSOを留去した。得られた残留物に8arm PEG Succinimidyl Succinate (tripentaerythritol) (JENKEM TSCHNOLOGY、1.09 g)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にてTHFを留去後、残渣を氷冷したエーテルにゆっくり滴下し、数〜24時間静置後、デカンテーションにより上澄みを除去し得た沈殿物質をSephadex LH−20(MeOH)で分離精製し、得られた化合物の少量のTHF溶液に溶解後、エーテルにゆっくり滴下し、室温から氷冷下で数〜24時間静置後、デカンテーションにより析出物を得た。乾燥後、析出物のTHF溶液にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、室温〜還流条件下で数十分〜24時間攪拌した。反応混合物から減圧下にてTHFを留去後、ジクロロメタン(CHCl)を加えて希釈した。得られたCHCl溶液を飽和食塩水で洗浄(2回繰り返す)後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過後、減圧下溶媒を留去し、少量のTHFに溶解させた残渣をエーテルにゆっくり滴下し、室温から氷冷下で1時間〜4日間静置後、デカンテーションにより上澄みを除去し沈殿物を得た(3回繰り返す)。沈殿物を減圧下乾燥し、目的化合物の光および加水分解性架橋剤を1.16g得た。
上記の過程と、得られた化合物を図13に示す。
得られた目的化合物についてNMRによる分析を行い、目的の化合物が得られたことを確認した。以下にNMRによる分析結果を示す。
H−NMR(400MHz, CDCl): 1.53 (d, J = 6.93 Hz,3H), 2.28 (tt, J = 7.33, 6.09 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 6.57 Hz, 2H), 2.68 (dt, J = 14.29, 6.57 Hz, 2H), 2.85 (br s, 4H), 2.87 (t, 7.33 Hz, 2H), 3.29−3.84 (m, CHO(CHCHO)), 3.97 (s, 3H), 4.15(t, J = 6.09 Hz, 2H), 5.54 (quin, J = 6.92 Hz, 1H), 6.50 (br m, 1H), 6.96 (s, 1H), 7.58 (s, 1H).
[光および加水分解性ゲルの製造]
(amino−4arm PEG溶液)
amino−4arm PEG(MW=10,000)(PTE−100PA、日油株式会社製) 10mM (10.8w/v%)
溶媒(リン酸緩衝液(DPBS):0.3M HEPES=1:1、pH7)
上記の分量で、PEGと溶媒を混合し、amino−4arm PEG溶液を得た。
(光および加水分解性架橋剤溶液a)
NHS−PCH−2armPEG(実施例1で合成) 20mM (9.1w/v%)
溶媒(140mM NaCl、10mMフタル酸 水溶液、pH4)
(光および加水分解性架橋剤溶液b)
NHS−PCH−4armPEG(実施例2で合成) 10mM (12.1w/v%)
溶媒(140mM NaCl、10mMフタル酸 水溶液、pH4)
(光および加水分解性架橋剤溶液c)
NHS−PCH−8armPEG(実施例3で合成) 5mM (6.5w/v%)
溶媒(140mM NaCl、10mMフタル酸 水溶液、pH4)
(光および加水分解性ゲル溶液)
(実施例4)
上記のamino−4arm PEG溶液と光および加水分解性架橋剤溶液aを等量で混合し、実施例4のポリエチレングリコールベースの光および加水分解性ゲル溶液を得た。
(実施例5)
上記のamino−4arm PEG溶液と光および加水分解性架橋剤溶液bを等量で混合し、実施例5のポリエチレングリコールベースの光および加水分解性ゲル溶液を得た。
(実施例6)
上記のamino−4arm PEG溶液と光および加水分解性架橋剤溶液cを等量で混合し、実施例6のポリエチレングリコールベースの光および加水分解性ゲル溶液を得た。
[光および加水分解性ゲルの加水分解]
実施例4〜6で作製した光および加水分解性ゲル溶液を用いて、本発明の光および加水分解性ゲルの加水分解実験を行った。分解バッファーは、蒸留水、Dulbecco‘s Phospate Buffered Saline(DPBS、Invitrogen社)およびDulbecco‘s Modified Eagle Medium(DMEM、Invitrogen社)の3種を用いた。光および加水分解性ゲル溶液と分解バッファーとを1:1の容積比で混合し、混合液を70μLずつ各マイクロチューブに分配した。37℃のインキュベーター内にアルミ箔による遮光条件化で1時間静置し、その後、5日後まで24時間毎に作製した光および加水分解性ゲルの形状観察を行った。
光および加水分解性ゲルと分解バッファーの条件を示す。
(実施例7):光および加水分解性架橋剤溶液a(実施例4で作製)、蒸留水
(実施例8):光および加水分解性架橋剤溶液a(実施例4で作製)、DPBS
(実施例9):光および加水分解性架橋剤溶液a(実施例4で作製)、DMEM
(実施例10):光および加水分解性架橋剤溶液b(実施例5で作製)、蒸留水
(実施例11):光および加水分解性架橋剤溶液b(実施例5で作製)、DPBS
(実施例12):光および加水分解性架橋剤溶液b(実施例5で作製)、DMEM
(実施例13):光および加水分解性架橋剤溶液c(実施例6で作製)、蒸留水
(実施例14):光および加水分解性架橋剤溶液c(実施例6で作製)、DPBS
(実施例15):光および加水分解性架橋剤溶液c(実施例6で作製)、DMEM
加水分解実験開始から、1日後、3日後、5日後のゲルの様子を図14に示す。
図14中、破線で囲んだ部分は、ゲルが加水分解されたことを示す。
また、実施例7〜15の結果を表1に示す。
実施例8、12のゲルは3日後に、実施例9ゲルは1日後に、実施例15のゲルは5日後にそれぞれ加水分解された。実施例7、10、11、13および14のゲルでは加水分解されるまでに5日より多い日数を要し、実施例7、11は約7日後、実施例14は約14日後、実施例10、13は、約1か月後加水分解された。
以上の結果より、本発明の光および加水分解性架橋剤を用いた本発明の光および加水分解性ゲルは、反応条件に応じて良好に加水分解されることが明らかとなった。また、反応条件および架橋剤の分岐鎖数を変化させることで、ゲルが加水分解されるまでの時間を制御することが可能である。本発明の光および加水分解性架橋剤を用いた本発明の光および加水分解性ゲルは、複雑且つ微細な三次元組織体の形成に好適であり、さらに、三次元組織体形成後に所望のタイミングで分解させることが可能である。したがって、本発明の光および加水分解性ゲルを用いることで、マテリアルフリーの組織体を形成可能であり、本発明の光および加水分解性ゲルは非常に有用性の高い組織工学材料である。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明は、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて有用である。
1…光および加水分解性架橋剤、2…主鎖、3…ニトロベンジル基を含む基、4…活性エステル基、5…アミド結合部、6…高分子化合物、7…高分子化合物、8…アミノ基、9…架橋剤と高分子化合物間のアミド結合、10…光および加水分解性ゲル、11・30・40・50・60…細胞培養器具、31・41・51…細胞培養基材、32・42・62・72…光および加水分解性ゲル層、33…光および加水分解性ゲル層の表面、34…細胞、35…フォトマスク、80…エステル結合、80a…ヒドロキシ基、80b…カルボキシル基、A1・B1…光が照射される一部領域。

Claims (16)

  1. 直鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖又は3分岐以上の分岐鎖を有する分岐鎖状のポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の末端及び前記分岐鎖の末端に配置されたエステル結合及び該エステル結合の末端に配置された光分解性のベンジル基と、を含み、
    前記ベンジル基は、アミノ基又はヒドロキシル基に対する反応性を有する活性エステル基、及び、一つまたは複数のニトロ基をベンゼン環に有することを特徴とする光および加水分解性架橋剤。
  2. 前記活性エステル基がN−ヒドロキシコハク酸イミドの誘導体である請求項1記載の光および加水分解性架橋剤。
  3. 前記ポリエチレングリコール分岐鎖におけるエチレングリコールの平均繰り返し数が20から500の範囲にある請求項1又は2に記載の光および加水分解性架橋剤。
  4. 前記ポリエチレングリコールの分岐鎖が4分岐又は8分岐である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光および加水分解性架橋剤。
  5. 前記ポリエチレングリコールが、ネオペンチル骨格を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光および加水分解性架橋剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光および加水分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基又はヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光および加水分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されていることを特徴とする光および加水分解性ゲル。
  7. 請求項6に記載の光および加水分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つである光および加水分解性ゲル。
  8. 前記高分子化合物が、分岐型のポリエチレングリコール誘導体である請求項6又は7に記載の光および加水分解性ゲル。
  9. 前記高分子化合物が、ゼラチンである請求項6又は7に記載の光および加水分解性ゲル。
  10. 請求項6〜9のうちいずれか1項に記載の光および加水分解性ゲルからなる層が、細胞培養基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器具。
  11. 前記細胞培養基材の少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなる請求項10に記載の細胞培養器具。
  12. 請求項10又は11に記載の細胞培養器具と、該細胞培養器具に光を照射する照射部を備え、
    前記照射部は、光源と、前記光源からの光を該細胞培養器具の表面の任意の一部領域にのみ照射させる照射領域調整部を有することを特徴とする細胞配列・分別装置。
  13. 請求項10又は11に記載の細胞培養器具を使用し、該細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域の細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別することを特徴とする細胞分別方法。
  14. 請求項10又は11に記載の細胞培養器具を使用し、該細胞培養器具の一部領域にのみ光を照射することにより前記一部領域の光および加水分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域に細胞を配列することを特徴とする細胞配列方法。
  15. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程を含むことを特徴とする組織体形成方法。
    (I)前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
    (II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
    (III)前記光および加水分解性ゲルに細胞を播種する工程
    (IV)細胞を培養する工程
    (V)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
  16. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の光および加水分解性ゲルを用い、以下の工程を含むことを特徴とする組織体形成方法。
    (I)細胞を内包させた前記光および加水分解性ゲルを形成する工程
    (II)光照射によって前記光および加水分解性ゲルの構造を規定する工程
    (III)細胞を培養する工程
    (IV)前記光および加水分解性ゲルを加水分解する工程
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