JP5388124B2 - Pb蓄積能を有するコケ植物の原糸体を用いたPb浄化方法及びその装置 - Google Patents

Pb蓄積能を有するコケ植物の原糸体を用いたPb浄化方法及びその装置 Download PDF

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Description

本発明は、選択的にPbを蓄積できるコケ植物原糸体を用いたPb浄化方法及び該方法を実施するための装置に関する。
現在、廃プラスチック及び建築廃材等、人間活動によって生じた一般産業廃棄物の燃焼飛灰による水質汚染が深刻な環境問題となっている。こうした背景から、環境への負荷が少なく、低コストかつ環境美化との両立が実現できる汚染浄化技術として、重金属によって汚染された汚染場所で重金属を吸収・蓄積する植物を生育させることで環境中の重金属を除去しようとする浄化技術(ファイトレメディエーション)が提案されている。しかしながら、現在、汚染重金属蓄積能力が認められている植物の利用について様々な制限が存在する。
例えば、形質転換技術により重金属蓄積能力が付与された植物体(特許文献1)は、野外で利用することが法律により規制されている。またモエジマシダ(Pteris vittata)がAsを高蓄積するシダ植物として紹介されたが(非特許文献1)、日本環境告示第13号法で作成された灰の溶出液を50%含有する生育試験で枯死し、PbなどAs以外の毒性元素は地上部へ移行しない等の理由で、浄化技術レベルに問題がある(本発明者らの独自調査)。
さらに、ホンモンジゴケ(Scopelophila cataractae)の原糸体がCuを吸収・蓄積すること、及びCuを含む培養液中でホンモンジゴケの原糸体を培養しながらCuを回収することが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、植物を用いた実用的な浄化技術を確立するためには、大規模な安定した生産技術を確立する必要があるが、ホンモンジゴケの生育量は乏しく、生産の機能が確立していないことから、実用性を欠くものであった。この関連で、緑化資材としてコケ植物を栽培する技術が先行特許として存在するが(特許文献2)、コケ植物に関する栽培法や大量培養法は発展途上の段階で、未だ実用的な報告がなされていない。
したがって、様々な環境下で生育可能でありかつ実用的な植物を用いたファイトレメディエーションを確立することが望まれている。
一方で、現在までにPbを選択的に吸収・蓄積するコケ植物の原糸体については報告されていない。
特開2004-275051号公報 早川 孝彦・作田 千代子・渡辺 美生 重金属蓄積能が強化された植物体 特開平5-268843号公報 平岡 正三郎 コケ類の培養種、及びそれを用いたコケ類の栽培方法 Ma LQ, Komar KM, Tu C, Zhang W, Cai Y & Kennelley ED (2001) A fern that hyperaccumulates arsenic, a hardy, versatile, fast-growing plant helps to remove arsenic from contaminated soils. Nature 409: 579 Kobayashi F, Kofuji R, Yamashita Y & Nakamura Y (2006) A novel treatment system of wastewater contaminated with copper by a moss. Biochem. Engineer. J. 28: 295-298
本発明は、様々な環境下で生育可能かつ実用的な植物を用いた水質浄化方法及び水質浄化装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、一般廃棄物の燃焼飛灰の溶出液など劣悪な環境因子に対する安全性評価植物種としてヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)を用い、灰の毒性を評価し公表した(井藤賀操・鈴木智子・小松由佳梨・山口勇・白石友紀・小野芳朗・榊原均(2006)一般廃棄物の燃焼飛灰の溶出液がヒョウタンゴケ原糸体の細胞分裂に与える影響.蘚苔類研究9:78-83)。この過程で、ヒョウタンゴケ科に属するコケ植物の培養原糸体が鉛(Pb)を高蓄積していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
ヒョウタンゴケ科のコケ植物であるヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)は、多くの陸上植物にとって不都合となる環境条件下へ適応できる灰耐性蘚類として生態学の分野で公知のコケ植物である(Joenje W & During HJ (1977) Colonization of a desalinating wadden-polder by bryophytes. Vegetatio 35: 177-185;及びDuring HJ (1979) Life strategies of bryophytes: a preliminary review. Lindbergia5: 2-18参照)。
本発明は以下の特徴を包含する。
(1)Pb蓄積能を有するコケ植物の原糸体をPb含有汚染水と接触させることを含むPb浄化方法。
(2)前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)及びヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択された1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属する1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(4)前記コケ植物の原糸体がヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来であることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(5)前記コケ植物の原糸体が、Cu、Zn、Co及びAsの重金属類に耐性を有することを特徴とする、(1)に記載の方法。
(6)前記コケ植物の原糸体が、pH5〜12の環境下で生育阻害されないことを特徴とする、(1)に記載の方法。
(7)前記コケ植物の原糸体が、原糸体乾燥重量の最高70%又はそれ以上のPb蓄積能を有することを特徴とする、(1)に記載の方法。
(8)収容槽と、該槽に収容されたPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体の懸濁液とを含む、Pb浄化装置。
(9)前記槽がPb含有汚染水を供給するための供給口と、浄化済み溶液を排出するための排出口とを備えることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(10)前記槽がその内部に原糸体を保持しかつ液を透過する2又はそれ以上の隔壁を備えることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(11)前記槽が、新鮮な原糸体懸濁液を供給するための供給口と、使用済み原糸体懸濁液を排出するための排出口とをさらに備えることを特徴とする、(9)又は(10)に記載のPb浄化装置。
(12)懸濁液中の前記原糸体の量が3〜6mg(湿潤重量)/mLであることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(13)前記槽が扁平状又はカラム状の容器であることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(14)前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)及びヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択された1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(15)前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属する1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(16)前記コケ植物の原糸体がヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来であることを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(17)前記コケ植物の原糸体が、Cu、Cd、Zn、Co及びAsの重金属類に耐性を有することを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(18)前記コケ植物の原糸体が、pH5〜12の環境下で生育阻害されないことを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
(19)前記コケ植物の原糸体が、原糸体乾燥重量の最高70%又はそれ以上のPb蓄積能を有することを特徴とする、(8)に記載のPb浄化装置。
本発明によるPb浄化方法及びPb浄化装置を用いることにより、Pbを含有する複合汚染水からPbを選択的に除去することができる。さらに、各種の重金属元素を選択的に蓄積する他のコケ植物と組合せた浄化システムを構築することで、より完全な浄化システムの提案と実用が可能となる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2007-047520号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、実施例2で構築したFhカラムを用いて取得したPb浄化パターンを示す。白四角及び黒四角は、それぞれ表1に記載の試験1と試験2に対応する。 図2は、実施例2で構築したFhカラムを用いて取得したPb及びCu浄化パターン、並びにCa溶出パターンを示す。破線は、カラムにミリQ水のみを充填した場合を示す。なお、Fhカラム試験は3連で行った。 図3は、実施例2で構築したFhカラムを用いて取得した重金属類の浄化パターンを示す。 図4は、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)の原糸体が各種の重金属類に耐性を有することを示す。 図5は、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)の原糸体がアルカリ環境下で生育可能であることを示す。 図6は、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)の原糸体とその細胞壁調製物との間のPb浄化能の比較を表す。結果は、25μM PbCl2を浄化カラムに通した時に出てきた溶液中に含まれるPbの割合(浄化後/浄化前)%を示す。
本発明は、Pbを選択的に吸収・蓄積可能なコケ植物の原糸体を用いたPbの浄化方法を提供する。具体的には、Pbを含有する汚染水に本発明のコケ植物の原糸体を接触させることを含む。
本発明に使用されるコケ植物の原糸体は、Pbを選択的に吸収・蓄積可能な任意のコケ植物由来の原糸体である。例えば、本発明に使用し得るコケ植物の原糸体として、これに限定されるものではないが、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)、ヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)及びヒョウタンゴケ属(Funaria)に属するコケ植物由来の原糸体が挙げられる。好ましくは、ヒョウタンゴケ属に属するコケ植物由来の原糸体を用い、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来の原糸体を用いることが最も好ましい。また本発明に使用されるコケ植物の原糸体は、上に列挙したコケ植物に人工的に変異を導入して作製したコケ植物の変異体に由来するものであってもよい。変異体を用いることによる利点は、Pb以外の他の重金属類やレアメタル、具体的にはひ素、カドミウム、セレンの浄化能力を付帯させることである。変異の導入方法として、重イオンビームの照射、X線、ガンマー線、中性子線照射法などを挙げることができる。重イオンビームを用いた変異体コケ植物の作製は、例えば、日本国特許第3577530号、国際公開 WO 03/056905号などに記載される方法に従って行うことができる。
原糸体とは、胞子由来の細胞が細胞分裂を繰り返し、分枝した糸状の組織をいう。原糸体は多くの葉緑体を含んでいるため緑色を呈し、外見上は糸状緑藻類のような形態をとる。本明細書中で使用する「原糸体」なる用語は、生細胞形態の原糸体、原糸体の細胞壁調製物、及び生細胞形態の原糸体と該細胞壁調製物との混合物を含む意味である。このような原糸体の細胞壁調製物は、本発明者らにより、生細胞形態の原糸体と同様に高いPb浄化能を有することが見出されている(下記実施例6参照)。
本発明の好ましい実施形態では、本発明に使用されるコケ植物の原糸体は、特にCu、Zn、Co、As等のPb以外の重金属類に耐性を有し、該重金属イオンの存在下でもPb蓄積能が阻害されにくいか又は阻害されない。
また本発明の別の好ましい実施形態では、本発明に使用されるコケ植物の原糸体は、pH5〜12の環境下、特にpH 9〜12の高アルカリ環境下でさえも生育阻害されない。したがって、高アルカリであることが知られる灰溶出液等の汚染水へ適用する場合でも、適用前にpHを中性に調整する必要はなく、本発明の原糸体を直接上記汚染水に接触させることができる。
本発明のさらに別の実施形態では、本発明に使用されるコケ植物の原糸体は、原糸体乾燥重量の最高70%又はそれ以上のPb蓄積能を有する。
本発明で使用される原糸体としては、上記の特性の少なくとも1つ、特に全てを有しているものが好ましいが、ヒョウタンゴケの原糸体はそれらの要件を満たす。
本発明において、Pb含有汚染水は、環境濃度を超える量、例えばPbイオンを0.01ppm以上含有する水性溶液を指し、工業排水、生活廃水、廃棄物の燃焼飛灰溶出液、農業用水、溜池、河川、地下水などを含むが、これらに限定されない。
本発明のコケ植物の原糸体のPb含有汚染水との接触は、どのような手段で行ってもよい。本発明のコケ植物の原糸体は、例えば、浮遊形態及び/又は固定化形態で使用して、汚染水と接触させることができる。浮遊形態で使用する場合は、原糸体又は固定化原糸体を適当な溶液中に懸濁し、この懸濁液にPbを含有する汚染水を供給することによって上記接触を行うことができる。原糸体又は固定化原糸体を懸濁させる溶液は、原糸体の生育及びPb蓄積能を阻害しない限りいかなる溶液を用いてもよく、例えば水、ミリQ水、蒸留水、水道水、培養液、海水等を使用することができる。
本発明のコケ植物の原糸体を固定化形態で使用する場合には、適当な栽培床に植え付けられた又は適当な担体に固定化された原糸体にPbを含有する汚染水を供給することによって上記接触を行うことができる。本発明に使用できる栽培床として、これに限定されるものではないが、吸水性及び水透過性が良好な材料、例えば水ゴケ、ポリウレタン、ロックウール、発泡ガラス、フェルト、紙等が挙げられる。また本発明の原糸体の固定化に使用できる方法として、担体結合法、包括法等の当業者に周知の方法が挙げられる。担体結合法は、本発明の原糸体を水不溶性の多孔性担体に吸着などによって結合させる方法であり、この場合、セルロース、デキストラン、アガロースなどの多糖類の誘導体、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、イオン交換樹脂、ポリウレタン、光硬化樹脂などの合成高分子、多孔性ガラス、軽石、金属酸化物などの無機物質などを担体として使用できる。また、包括法は、天然高分子や合成高分子のゲルマトリックスの中に本発明の原糸体を閉じ込める方法であって、その際に用いる高分子化合物として、ポリアクリルアミドゲル、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂、デンプン、コンニャク粉、ゼラチン、アルギン酸、カラギーナンなどが含まれるが、これらに限定されない。
本発明のコケ植物の原糸体は、沈殿漕、遠心分離、吸引濾過法によって分離することができる。
本発明の原糸体の細胞壁調製物は、例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、最初に、コケ植物の原糸体を0.05M リン酸緩衝液(pH 6.5)中で、乳鉢、乳棒等で破砕し、遠心分離する(3000rpm、10分)。次いで、沈殿さにアセトンを添加して室温で一晩放置した後、1000rpmで10分間の遠心分離を3回繰り返す。その後、室温で一晩乾燥させた後の沈殿さを粗細胞壁として回収する。回収した粗細胞壁は、ミリQ水、メタノール、クロロホルムを含む遠沈管に添加して1時間振とうした後、遠心分離する(3000rpm、10分)。その後、メタノール層(水層)を回収し、蒸発させた画分を、必要に応じて凍結乾燥保存し、細胞壁調製物として使用する。
本発明のコケ植物の原糸体は、液体通気培養によって大量に増殖可能である。典型的には、本発明のコケ植物の原糸体を含む培養液を適当な培養槽に充填し、無菌空気を通気することによって実施される。培養は、リン源、無機塩、グルコース、アミノ酸、ビタミン等を含む培養液中で行うことができる。本発明の一実施形態では、培養は、これに限定されるものではないが、KNO3(硝酸カリウム)、MgSO4(硫酸マグネシウム)、KH2PO4(第一リン酸カリウム)、FeSO4(硫酸鉄)、MnSO4(硫酸マンガン)、H3BO3(ホウ酸)、ZnSO4(硫酸亜鉛)、KI(ヨウ化カリウム)、Na2MoO4(モリブデン酸ナトリウム)、CuSO4(硫酸銅)、CoCl2(塩化コバルト)、(NH4)2C4H4O6(酒石酸アンモニウム)、CaCl2等を含む培養液中で効率的に行うことができる。培養液中に含まれる各成分の濃度は、当業者が適宜設定できるが、例えば後述の実施例1に記載されるような濃度である。培養の温度条件は、これに限定されないが、15℃〜25℃、好ましくは18℃〜22℃であり、最も好ましくは20℃である。また培養の光条件は、これに限定されないが、以下の通りである;明:暗比、約16:8〜約24:0、好ましくは約16:8;波長域、400〜700nm;光強度、6500〜7500ルクス。また通気量は、培養容器のサイズ及びこれに収容される培養液の量に応じて当業者が適宜設定できる。液体通気培養の概要については、例えばDecker EL.及びReski R. (2004). The moss bioreactor. Current Opinion in Plant Biology 7:166-170;Hoche A及びReski T. (2002). Optimisation of a bioreactor culture of the moss Physcomitrella patens for mass production of protoplasts. Plant Science 16f3:69-74;及びS.-Y. Chiouら、Journal of Biotechnology 85 (2001) 247-257を参照されたい。
また、培養効率を向上させるために、攪拌装置を利用することによって、又は対流を制御することによって、繊維状の原糸体が1つの球状となり、球内部の原糸体が死滅してしまうのを回避することが好ましい。前者の場合に使用し得る攪拌装置には、これに限定されるものではないが、パッチ式ミキサー、インペラー式攪拌機、ブレードミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、ロータリーシェーカー等が挙げられる。後者の場合には、扁平状の培養槽を用い、通気による対流によって原糸体が球状にならないように、攪拌スピード及び通気流速を設定することが好ましい。
このように培養された本発明のコケ植物の原糸体は、15mLテストチューブに12mL入れた状態(暗所、4℃)で少なくとも半年は保存することが可能である。
本発明の別の態様では、Pb浄化装置が提供される。この浄化装置は、収容槽と、該槽に収容されたPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体の懸濁液とを備える。
収容槽は、例えばこれに限定されるものではないが、カラム状、扁平状、管状、箱状等の形状の容器を含む、あらゆる形状の槽を使用できる。攪拌装置を装備しない槽の場合には、原糸体が球状となりPb蓄積能が低下するのを防止するために、槽は扁平状の形状であることが好ましい。ここで扁平状とは、例えば直方体の容器の場合、上面の縦幅の長さが横幅の長さの約4分の1以下となるような平べったい縦長の形状をいう。また槽がカラムの場合、円筒型カラム又は扁平型カラムが使用できる。収容槽の材質は、該槽に収容される原糸体懸濁液の量に応じて選択することができ、時間の経過と共に劣化しないものを用いる。材質は、例えば、これに限定されるものではないが、ガラス、金属(例えばステンレス等)、アクリル樹脂、プラスチック、ポリカーボネート製が挙げられる。
本発明の装置の一実施形態では、収容槽にPb含有汚染水を供給するための供給口と、浄化済み溶液を排出するための排出口とを備える。この実施形態では、Pb含有汚染水を供給口から供給しながら、浄化済み溶液を排出口から排出できるため、浄化を継続的に実施することができる。
別の実施形態では、本発明の装置は、上記汚染水の供給及び/又は排出の便宜から、上記供給口及び/又は排出口に連結される配管を備える。これにより、汚染水の供給量を調節する適当な制御装置への接続や、浄化済み溶液の適当な場所への排出が可能になる。供給する汚染水の流速は、収容槽に充填された本発明のコケ植物の原糸体によるPbの浄化速度が一定となるように調節される速度、すなわち汚染水の供給量と浄化溶液の排出量とがほぼ一定に維持される速度とすることが好ましい。したがって、本発明の別の実施形態では、本発明の装置は、収容槽に供給されるPbイオン含有汚染水の流速を制御するための制御装置を備える。かかる制御装置として、例えば、ペリスタポンプ、デジタルポンプ等が挙げられる。
また別の実施形態では、本発明の装置は、収容槽からの浄化済み溶液の排出を切り替えるための開閉手段を備える。かかる開閉手段として、例えば排出口に備えられた配管に設けられた弁、自動開閉バルブ、ジョイント、カップリング、三叉分岐コック等が挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明の装置は、上記収容槽内に、原糸体を保持しかつ液を透過する2つ又はそれ以上の隔壁を備えることができる。この隔壁は、収容槽からの原糸体の流出を防止しかつ収容槽内に原糸体を保持するとともに、収容槽内に複数の区画を設け、各区画に存在する原糸体によるPb汚染水の浄化を段階的に行うためのものである。隔壁により、供給されるPb汚染水は上記収容槽内を穏やかに移動するため、Pb汚染水と原糸体との十分な接触を実現することができる。上記隔壁は、原糸体の流出を防止しながら、溶液の透過を可能にする材質からなり、例えばこれに限定されるものではないが、金属メッシュ、ガラスファイバー濾紙、濾紙、綿、ガラスウール、ロックウール片等を挙げることができる。
別の実施形態では、本発明の装置の前記槽は、新鮮な原糸体懸濁液を供給するための供給口と、使用済み原糸体懸濁液を排出するための排出口とをさらに備えてもよい。槽内の原糸体は、光合成と、汚染水に含まれる栄養素によって増殖し得る一方、原糸体のPb蓄積量が飽和状態(例えば、原糸体乾燥重量の最高約70%又はそれ以上のPbが蓄積される)になったとき、原糸体を新鮮なものと置換する必要がある。このような原糸体の置換のために、槽の室内に該供給口と排出口とを設けることが好ましい。また、槽内に2又はそれ以上の隔壁を備える本発明の実施形態では、上記供給口と排出口とを該隔壁間に備えることが好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明のPb浄化装置は、汚染水中のPbを浄化しながら本発明の原糸体を培養するための1以上の装置を備える。かかる装置としては、原糸体に光を供給する光源、効率的な培養のための培地成分供給装置、攪拌装置、温度制御装置、液体通気培養用の通気装置等が例示できる。
上記光源は、本発明の原糸体の光合成に必要な波長域の光を適当な明:暗比で断続的に供給するためのものである。好ましい波長域は、400〜700nmであり、好ましい光強度は6500〜7500ルクスである。当該光源は、典型的には収容槽内部の任意の位置に配置されるが、収容槽が光透過性の材質からなる場合には、収容槽外部に設置してもよい。
上記培地成分供給装置は、効率的な培養を可能にする上記培養成分を所定の濃度で継続的に供給するためのものである。この上記培養成分の供給は、上記培養成分の収容槽内の懸濁液への直接的な添加、又は上記培養成分の本発明の装置に供給する汚染水への添加、を実現する装置を設けることによって実現可能である。
上記攪拌装置は、培養中の原糸体が球状にならない程度の攪拌を実現するための装置である。例えば、かかる攪拌装置の例として、これに限定されるものではないが、パッチ式ミキサー、インペラー式攪拌機、ブレードミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、ロータリーシェーカー等を例示できる。
上記温度制御装置は、前記収容槽中の原糸体の培養に適した温度を維持する任意の装置であり、例えばサーモスタット、恒温培養器、人工気象器、インキュベーター等が挙げられるが、これに限定されない。前記培養に適した温度は、典型的には15℃〜25℃、好ましくは18℃〜22℃、最も好ましくは20℃である。
上記通気装置は、上記収容槽内の原糸体の懸濁液に無菌空気を供給する任意の通気装置である。この実施形態では、通気による攪拌によって、一般的に培養時にその使用を要する上記攪拌装置を用いることなく原糸体の球状化を防止するために、扁平状の収容槽を用い、該通気装置を培養中の原糸体が球状にならない程度の攪拌スピード、及び通気流速に設定することが好ましい。この場合に使用し得る扁平状の収容槽は、縦幅:横幅:高さの比が1:4:9、好ましくは3:11:27のサイズのものを指す。また原糸体が「球状にならない程度の攪拌スピード」及び「通気流速」は、上記収容槽のサイズに応じて当業者が適宜設定可能である。
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の装置は、上記収容槽に本発明の原糸体を供給及び排出するための供給口及び排出口を備える。これにより、Pb蓄積が飽和状態の原糸体、死滅した原糸体、又は培養により過剰増殖した原糸体を除去することができ、その結果、収容槽内に収容される原糸体をPb浄化及び/又は培養に適切な濃度で維持することができる。収容槽内に保持される原糸体の量は、3〜6mg(湿潤重量)/mLに維持されることが好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態では、上記収容槽の2つ以上を組合せた装置を提供する。具体的に、かかる装置は、例えば、本発明の第1の収容槽の排出口と第2の収容槽の供給口とを、配管を介して連通させることによって構築することができる。組合せる収容槽の数を増加することにより、Pb汚染水の浄化効率の向上、及び装置のスケールアップが可能になる。複数の収容槽の組合せは、直列でも並列でもよい。この場合の好ましい収容槽はカラム形状の槽である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1.液体通気培養法による原糸体の大量培養系の確立
ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)について、野外より採集した本種の胞子体から胞子を播種し、単一胞子由来の原糸体を単離した。簡単に説明すると、まず成熟時期の胞子体を準備し、胞子体の柄をピンセットでつまみ、2.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に60秒間ひたし、その後、0.1%塩化ベンザルコニウム溶液に30秒間ひたした。次に、滅菌水(蒸留水を121℃、20分間オートクレーブ処理した水)に30秒間ひたした後、滅菌されたピンセットで胞子体の蓋を開けた。このようにして開口させた胞子体を寒天培地上でゆすることで、寒天培地上へ胞子を散布・播種した。胞子を播種した寒天培地を培養棚に設置し、20日後にクリーンベンチ内で単一胞子由来の原糸体を滅菌したピンセットで拾い取り、新たな寒天培地上に植え継ぎ14日間培養させ繁茂した原糸体を、培養液1mlを入れた1.5ml容のマイクロチューブ中に入れた。この溶液をマイクロチューブペッスルで軽く懸濁させた懸濁液を再度、寒天培地上へ播種することで、単一胞子由来の原糸体株を維持した。その後、上記のようにして単離した原糸体を培養槽として扁平状の容器を用いた液体通気培養により大量培養し、重金属浄化カラムに充填する生材料として用いた。培養期間は14日間(光条件、明:暗=16:8、温度条件、20℃)で、培養後に得られた原糸体混合溶液をポリトロンホモジナイザー(PT2100 KINEMATICA)で破砕し得られる原糸体懸濁液1mLを新たな培養液に加えることで、継続的に管理した。培養液の組成は10mM KNO3(硝酸カリウム)、1mM MgSO4(硫酸マグネシウム)、2mM KH2PO4(第一リン酸カリウム)、45μM FeSO4(硫酸鉄)、1.6μM MnSO4(硫酸マンガン)、10μM H3BO3(ホウ酸)、0.2μM ZnSO4(硫酸亜鉛)、0.2μM KI(ヨウ化カリウム)、0.1μM Na2MoO4(モリブデン酸ナトリウム)、0.2μM CuSO4(硫酸銅)、0.2μM CoCl2(塩化コバルト)、5mM (NH4)2C4H4O6(酒石酸アンモニウム)、1mM CaCl2とし、650Lの扁平型培養瓶あたり500mLの培養液を入れた。
上記の液体通気培養法により、原糸体は290倍程度に増殖した(乾燥重量1.2mgから348.9mg回収)。
実施例2.浄化カラム試験系の構築
液体通気培養法で得たヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw)の原糸体混合溶液20mLを5mLの浄化カラムに濃縮充填し(以下、Fhカラムという)、Fhカラムに各種重金属汚染溶液をペリスタポンプ(ATTO SJ-1211)を用いて5mL/24分の流速で流し、出てくる溶液をフラクションコレクター(ADVANTEC CHF100AA)で回収(5mL/24分)した。
Fhカラムに通す前の溶液とFhカラムに通した後の溶液中の重金属元素濃度をICP-MS(Perkin Elmer Elan6100DRC)で定量分析した。溶液を流す前の原糸体と溶液を流した後の原糸体について重金属元素濃度の分析を行う前処理操作として、原糸体を乾燥処理(60℃、3日間)し、硝酸原液5mLを添加後、マイクロウエーブ(Perkin Elmer MultiWave-3000)で湿式分解し、得られた溶液を定容(メスアップ)後、ろ過した溶液をICP-MS測定溶液とし、定量分析し植物体中の濃度を決定した。なお、重金属溶液を流す以前にカラムを安定させるためにミリQ水を18時間流し、浄化試験後に植物体中に付着した重金属類を洗うためにミリQ水を8時間流す操作を行った。
実施例3.FhカラムによるPb(NO 3 ) 2 溶液中のPb浄化パターンの解析
Fhカラムに濃度の異なる2種類(20と30μM)のPb(NO3)2(硝酸鉛)溶液を22時間通し、Pb浄化パターンを解析した結果、Pb浄化能力は初期(〜480分)に安定して認められ(Fhカラム通過後の溶液中のPb回収率が0%)、その後、Pb回収率は30μM溶液のほうが20μM溶液に先立って上昇し、いずれの溶液も回収率は100%近くに達した(図1)。
また、カラム試験後の原糸体の乾燥重量当たりのPb量を算出するために、試験後の原糸体をミリQ水で洗浄し、次いで60℃で3日間乾燥処理して乾燥重量を決定した後、マイクロウエーブで湿式分解した。湿式分解は5mlの硝酸原液で行い、50mlメスフラスコで定容し、ICP-MSの測定溶液とした。上記試験結果を表1に示す。
Figure 0005388124
表1に示される通り、20μM溶液試験で、FhカラムのPb浄化能力が認められていた18時間(1080分)の時点での植物体中のPb濃度推定値は429mg/g(乾燥重量)であり、30μM 溶液試験で、FhカラムのPb浄化能力が認められていた13.2時間(792分)の時点での植物体中のPb濃度推定値は477mg/g(乾燥重量)であったことから、Fhカラムに充填したヒョウタンゴケ原糸体にはPbを高蓄積する性質があることが本試験で見出された。
また20μM溶液試験で、Pbの回収率がほぼ100%近くに達した22時間(1320分)の時点での植物体中のPb濃度推定値は727mg/g(乾燥重量)であり、30μM溶液試験での上記値は741mg/g(乾燥重量)であったことから、ヒョウタンゴケの原糸体はPbをその乾燥重量の70%又はそれ以上で蓄積できることが分かった。
実施例4.Fhカラムによる重金属混合溶液中のPbとCu浄化パターンの解析
Fhカラムに、Pb5.2ppmとCu6.4ppmを含む重金属混合溶液(25μM Pb(NO3)2、100μM CuCl2)を流し、PbとCuの浄化パターンを解析した結果、Pbは効率的に浄化されたのに対し、CuはPbより浄化されず、比較的初期に回収率100%となる結果を得た(図2)。また、浄化試験中に規則的に溶出してくるCa溶出パターンについて、Ca溶出濃度の低下時間(810分)とCu浄化能力がなくなった時間(810分)とが一致しているのに対して、Pb浄化能力がなくなる時間(>1320分)は明らかにずれていたことから、ヒョウタンゴケ原糸体のPb浄化能力の機構にCaとの交換機能以外の機構が関わっていることが示唆された(図2)。
カラム充填時のヒョウタンゴケ原糸体の元素組成(平均値±標準偏差)は、K 446±5.65 mg/g(乾燥重量)、Ca 2.96±1.047 mg/g(乾燥重量)、Mg 21.2±0.72 mg/g(乾燥重量)、Al 0.02±0.013 mg/g(乾燥重量)、Fe 0.22±0.005 mg/g(乾燥重量)、Cu 0.01±0.002 mg/g(乾燥重量)、Pb<0.01 mg/g(乾燥重量)(検出限界以下)であった。上記のカラム試験後のヒョウタンゴケ原糸体では、Pb 21.9±9.0 mg/g(乾燥重量)、Cu 9.42±0.503 mg/g(乾燥重量)と著しく増加したのに対し、Ca 0.33±0.041 mg/g(乾燥重量)と減少し、ヒョウタンゴケ原糸体がPbを高蓄積したことを再確認した。CuもPbよりは濃縮率が劣るものの高蓄積していることを確認したがPb蓄積を著しく阻害する(拮抗する)現象は認められなかった。
実施例5.Fhカラムによる灰溶出液中のPb浄化パターンの解析
ICFG試験炉で一般廃棄物を焼却させた時に捕集された灰中には重金属類が濃縮・混入している場合があり、環境告示第13号法による溶出試験による基準値が定められている。本法では液固比10:1で6時間室温にて平行振とう後、GS-25ガラスフィルターにて固液分離した溶液を評価の対象とする。今回、本法により得た灰の溶出液をFhカラムに流し、各種元素の溶出パターンを解析することで各種元素の浄化効率を調査した(図3)。その結果、多くの元素がFhカラムを通過し、流す前の溶液中の元素量と同じ量が溶出してきたが、PbはFhカラム通過後の溶液中にはほとんど溶出してこなかったことからPbはFhカラムで選択的に浄化されたことが明らかになった。Cuは初期に溶出してこないが、直ちに浄化能力を失い、流す前の溶液中の元素量と同じ量が溶出してくることから大部分のCuはFhカラムを通過することがわかった(図3)。
実施例6.ヒョウタンゴケ原糸体の細胞壁調製物のPb浄化パターンの解析
細胞壁調製物を充填した場合と生細胞形態の原糸体を充填した場合の両者間でPb浄化パターンを比較する実験を実施した。細胞壁調製物は細胞の破砕工程と精製工程の2つの工程より調整する。破砕工程ではコケ植物の原糸体100mg(湿潤重量)を2mLの0.05Mリン酸緩衝液(pH6.5)中で、乳鉢、乳棒を用いて破砕し、3000rpm、10分間遠心分離した。次いで、沈殿さにアセトンを添加して室温で一晩放置した後、1000rpm、10分間遠心分離操作を3回繰り返した。その後、室温で一晩乾燥させた後の沈殿さを粗細胞壁として回収した。精製工程では粗細胞壁標品100mg(乾燥重量)を10mLのミリQ水、20mLの有機溶媒液(メタノール:クロロホルム=2:1)とともに50mL遠沈管へ添加し、1時間振とう後、3000rpm、10分間遠心分離した。その後、メタノール層(水層)を回収し、蒸発させた画分を凍結乾燥し、細胞壁調製物として使用した。
今回の比較実験ではカラム充填物として細胞壁調製物と生細胞形態の原糸体の乾燥重量を等しくするように充填した。
図6の結果から分かる通り、ヒョウタンゴケ原糸体の細胞壁調製物は、生細胞形態の原糸体と同様に、高いPb浄化能を有することがわかった。また、乾燥重量当たりのPb蓄積能は、生細胞形態の原糸体に比較して約1.5倍程度であったことから、原糸体の細胞壁部分がPb蓄積能に大きく関与していることが示唆された。
以上の試験結果をまとめると、今回用いたヒョウタンゴケ科のコケ植物の原糸体又はその細胞壁調製物は、混合汚染状態の水溶液からPbを選択的に除去でき、複合汚染水から選択的にPbを浄化する技術の利用改善が可能となった。また本発明のコケ植物の原糸体は、大量生産が可能であるため、生長能力による持続可能なバイオマスの有効利用が可能となり、無機資材によるPb浄化技術とは有用性のレベルで異なる。さらに、本発明のコケ植物の原糸体は、Cuなど他の重金属類が混在しても、Pb浄化能力が著しく阻害されることはなく(図4)、10mM程度のAsに対して排除的耐性を示し、pH12程度のアルカリ条件によって生育が阻害されることもない(図5)ことから、コケ植物の原糸体は、Pb浄化のために実用範囲が広く、工業廃水など複合的な汚染水に対して選択的にPbを浄化する効果が期待できる有用バイオマス資源として利用できる。
本発明により、Pb含有汚染水を効率的に浄化することが可能となり、産業上有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (17)

  1. 原糸体乾燥重量の70%以上のPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体をPb含有汚染水と接触させることを含むPb浄化方法。
  2. 前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)及びヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択された1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属する1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記コケ植物の原糸体がヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記コケ植物の原糸体が、Cu、Zn、Co及びAsの重金属類に耐性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記コケ植物の原糸体が、pH5〜12の環境下で生育阻害されないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 収容槽と、該槽に収容された、原糸体乾燥重量の70%以上のPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体の懸濁液とを含む、Pb浄化装置。
  8. 前記槽がPb含有汚染水を供給するための供給口と、浄化済み溶液を排出するための排出口とを備えることを特徴とする、請求項に記載のPb浄化装置。
  9. 前記槽がその内部に原糸体を保持しかつ液を透過する2又はそれ以上の隔壁を備えることを特徴とする、請求項7又は8に記載のPb浄化装置。
  10. 前記槽が、新鮮な原糸体懸濁液を供給するための供給口と、使用済み原糸体懸濁液を排出するための排出口とをさらに備えることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  11. 懸濁液中の前記原糸体の量が3〜6mg(湿潤重量)/mLであることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  12. 前記槽が扁平状又はカラム状の容器であることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  13. 前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)及びヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択された1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  14. 前記コケ植物の原糸体が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属する1種以上のコケ植物由来であることを特徴とする、請求項7〜13のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  15. 前記コケ植物の原糸体がヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来であることを特徴とする、請求項7〜14のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  16. 前記コケ植物の原糸体が、Cu、Zn、Co及びAsの重金属類に耐性を有することを特徴とする、請求項7〜15のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
  17. 前記コケ植物の原糸体が、pH5〜12の環境下で生育阻害されないことを特徴とする、請求項7〜16のいずれか1項に記載のPb浄化装置。
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