JP5388031B2 - 鉗子 - Google Patents
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しかしながら、鉗子の対向する挟持部が腸や血管等の対象物を挟持する場合、挟持部の材質が硬いので、挟持部のそのままの形状を維持した状態で対象物を掴んでしまい、場合によって、対象物を必要以上に圧迫し壊死させるようなことがあった。そこで、対象物の形状に合わせて挟持部を湾曲させることも可能であるが、これでは対象物の大きさに合わせて多数種の鉗子を用意する必要がある。
また、挟持部を柔らかい材質で構成すると、対象物の挟持力が弱くなり、鉗子としての十分な機能を発揮せず、部材が十分な剛性を有さないため、挟持部の先端での挟持力も弱まるという問題があった。
そこで、これらの問題を解決するために鋭意研究した結果、「挟持部が閉じた状態で対向する挟持部の先端が当接して小物対象物を挟持できる他、対となる挟持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材と、外側部材と内側部材との間に隙間を有して配置された複数の支持部材とをそれぞれ有し、しかも、支持部材の端部は、外側部材の内側及び内側部材の内側に傾動自在に連結されているので、挟持部の中間で大物対象物を挟持した場合には、内側部材が湾曲すると共に、これに伴い支持部材を介して外側部材も押圧されて、挟持部が大物対象物を囲むように内側部材が屈曲して挟持できる挟持装置」(特許文献3)として出願した。
(1)挟持部は対象物形状に従って変形可能だが、挟持力は常に一定で可変できないという課題を有していた。
(2)挟持部は外側部材と内側部材との間にワイヤーやピン等によって連結された複数の支持部材を有しており、構造が複雑で部品点数が多く、生産性に欠けるという課題を有していた。
(3)部品点数が多く構造が複雑なので消毒等安全衛生上注意を要するという課題があった。
本発明の請求項1に記載の鉗子は、一端に対象物を挟持するための挟持部を有し他端に操作部が設けられた1対の鉗子部材が交差され、交差部に設けられた枢軸部により相互に開閉可能に連結された鉗子において、前記挟持部の少なくとも一方が外側に凸に湾曲した外側部材と、前記外側部材の内周壁の長さより長く、前記外側部材の先端部から内周壁に沿って前記枢軸部までの距離よりも短く形成された板状の内側部材と、を有し、前記内側部材の一端が前記外側部材の前記先端部で固定され他端が移動端として前記枢軸部側へ渡設された構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)外側に凸に湾曲した外側部材と、弾性曲げが可能で外側部材と先端で連結された内側部材を有するので、内側部材が対象物である膵臓や腸等の臓器や血管等の器官の形状や状態、糸、器具等の外形に沿った変形が可能となり、対象物を過度に圧迫することなく確実に掴んだり牽引するために挟持することができる。
(2)内側部材の後端部は移動端なので、弾性曲げが可能で腸等の対象物の形状や状態に追随することができる。
(3)弾性曲げが可能で前記外側部材と先端で連結された内側部材は、閉じた状態で先端が当接して針や糸等の小物も挟持できるだけでなく、中央部は微妙な挟持圧で挟持することができる。
(4)挟持部は板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成であり容易に製造可能である。
(5)挟持部は板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成であり容易に洗浄・消毒が可能である。
内側部材は断面が平板状、棒状、液板状、挟持面が凹凸状に形成されたものが用いられる。厚みとしては材質にもよるが0.05mm〜1mmに形成されるのが好ましい。幅は2mm〜10mmに形成されるのが好ましい。
外側部材の先端部と内側部材の一端部の固定はスポット溶接や接着剤による接着、螺着、挿着、嵌着、かしめ等の手段によって固定される。尚、内側部材の固定は着脱自在としてもよい。内側部材が塑性変形した場合の取り換えや消毒作業の作業性を向上できる。
内側部材の長さは、外側部材の内周壁の長さよりも長く形成される。挟持した際に内側部材が内周壁の円弧の後端部(内周壁から枢軸部側に沿っての変曲点)から外れないためである。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)アーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を変更することにより挟持圧力分布の調整を行うことが可能となる。
(2)アーチ型の弾性支持部材の端部のうちいずれか一方は固定せず移動端とすることにより、弾性支持部材は外側部材に押圧力を伝えるが、モーメントは伝えないことになり、内側部材の対象物の形状や状態に応じた変形を行うことができる。
(3)アーチ型の弾性支持部材は板材を湾曲してなる簡素な構成であり容易に製造可能である。
(4)他端が移動端なので患者の血圧等の状況の変化に応じて、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができる。
アーチ型の弾性支持部材の厚みとしては材質にもよるが0.05mm〜1mmに形成されるのが好ましい。幅は内側部材と同じか小さく形成される。
アーチ型の弾性支持部材の一端と外側部材後端部との固定はスポット溶接や接着剤による接着、螺着、挿着、嵌着、かしめ等の手段によって固定される。
アーチ型の弾性支持部材の移動端と外側部材先端部との間には移動端が十分摺動可能な間隔が設けられ、複数段のアーチ型の弾性支持部材を有する際は、各々の移動端は均等な間隔に配置される。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)弾性支持部材を外側部材と内側部材の間に形成された隙間に嵌着させることができ着脱を容易に行うことが可能である。
(2)弾性支持部材の弾性率、数及び種類を変更することにより挟持圧力分布の調整を容易に行うことが可能で患者の血圧等の状況の変化に応じて、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができる。
(3)弾性支持部材は板材を蛇腹形、波形、円形、楕円形、多角形等の簡単な形に加工した構成であり容易に製造可能である。
(4)弾性支持部材は容易に取り外して洗浄・消毒が可能であり、衛生性や安全性に優れる。
(5)弾性支持部材の高さを異ならせることにより、弾性支持部材の大きさを取り換えるだけで対象物の形状や状況に即応できる。例えば、円形の大中小の3種類つかいわけることにより達成できる。
ここで、弾性支持部材と外側部材と内側部材の各当接面には、弾性支持部材が手術中に外れないように係止する凹凸部等を形成した係止手段や孔部と突部のような嵌合手段が各々に形成されるのが好ましい。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)対向する挟持部のいずれか一方を平板状で形成した場合、臓器と臓器の間にある狭い隙間に簡単に挿入することができ作業性が向上する。
(2)対向する挟持部のいずれか一方を緩やかに湾曲して形成した場合、挟持部の中間で径の太い対象物も挟持し易く、かつ挟持部の先端側から対象物が抜けるのを防ぐことができる。
請求項1に記載の発明によれば、対となる挟持部は、先端で連結された外側に凸に湾曲して形成された外側部材及び弾性曲げが可能な内側部材と、外側部材の優弧内と内側部材との間に隙間を有し、対象物の形状や状態に従って挟持部を変形しながら挟持し、挟持部の先端から対象物が外れたり、抜けたり、滑ったりすることがなく手術作業性に優れ、外側部材と板状の内側部材からなる簡素な構造であるため製造が容易で、かつ容易に洗浄・消毒することができる衛生性に優れた鉗子を提供することができる。
挟持部は、隙間に配置された一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、対象物の形状や状態に応じてアーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を選択することで、臓器等の種類に応じて微妙な挟持圧力の調整が可能で対象物の種類や状況に応じ少ない数の鉗子を準備するだけでよく、機能性に優れた鉗子を提供することができる。
蛇腹形、波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1形状に形成された弾性支持部材は隙間に嵌合し固定するだけで、簡単に着脱でき、手術中でも挟持圧力の調整が可能で取扱い性、作業性に優れた鉗子を提供することができる。
(1)他方の挟持部が、平板状又は緩やかに外側に凸に湾曲して形成された板材であるため、臓器と臓器間の狭い隙間に挿入し易いので、挟持の確実性、作業性に優れた鉗子を提供することができる。
(2)他方の挟持部を緩やかに湾曲して形成した場合、挟持部の中間で対象物を挟持し易くなり、抜けるのを防止でき、挟持の確実性、手術作業の作業性に優れる鉗子を提供することができる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る鉗子の平面図であり、図2(A)は鉗子の部分拡大平面図であり、同(B)は鉗子の外側部材の表面の一部拡大側面図である。
外側部材8、18も内側部材9、19と同様板状に形成され、内側部材9、19と同一の幅(高さ)で形成されている。外側部材8、18は外側へアーチ状に湾曲し、内側部材9、19は平面で外側部材8、18と内側部材9、19との間に先端部9a、19aから優弧面中央にかけてその高さが大きくなり、後端部9b、19b側にかけて再び小さくなる隙間5a、15aがそれぞれ形成されている。
内側部材の長さは、外側部材の内周壁の長さよりも長く形成される。挟持した際に内側部材が内周壁の円弧の後端部(内周壁から枢軸部側に沿っての変曲点)から外れないためである。
図3(A)、(B)は小腸等の対象物を挟んだ状態の平面様式図及び斜視図である。
図3(A)、(B)中において対象物Xは小腸や大腸等の臓器等の対象物である。内側部材9、19はその中間部に対象物Xを挟持すると、対象物Xの外形に沿って外側に湾曲しながら挟んである程度まで変形し、対象物Xに対して過度の圧迫を加えず、挟持したままの状態で対象物Xの膨張や収縮に柔軟に対応できる。
図4は弾性支持部の変形例を示す部分拡大平面図である。
この実施の形態1においては、2段のアーチ型の弾性支持部材10a、10b、20a、20bが配置されているが、図4には内側部材と同じ若しくは小さい幅の円形の弾性支持部材21を脱着自在に嵌合保止して配置されている。
(1)外側に凸に湾曲した外側部材と、弾性曲げが可能で外側部材と先端で連結された内側部材を有するので、内側部材が対象物である膵臓や腸等の臓器や血管等の器官の形状や状態、糸、器具等の外形に沿った変形が可能となり、対象物を過度に圧迫することなく確実に掴んだり牽引するために挟持することができた。
(2)内側部材の後端部は移動端なので、弾性曲げを可能で対象物の形状に追随することができ、挟持部の先端から対象物が外れたり、抜けたり、滑ったりすることがなく手術作業性に優れていた。
(3)弾性曲げが可能で前記外側部材と先端で連結された内側部材は、閉じた状態で先端が当接して針や糸等の小物も挟持できるだけでなく、中央部は微妙な挟持圧で挟持することができた。
(4)挟持部は、隙間に配置された一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、対象物の形状や状態に応じてアーチ型の弾性支持部材の弾性率や段数を選択することで、臓器等の種類に応じて微妙な挟持圧力の調整が可能で対象物の種類や状況に応じ少ない数の鉗子を準備するだけでよく、機能性に優れていた。
(5)挟持部は板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成であり容易に製造可能であった。
(6)挟持部は板状の外側部材と内側部材からなる簡素な構成であり容易に洗浄・消毒ができた。
(7)弾性支持部材を隙間に嵌着させることができ着脱を容易に行うことができた。
(8)弾性支持部材の弾性率、数及び種類を変更することにより挟持圧力分布の調整を容易に行うことが可能で患者の血圧等の状況の変化に応じて、迅速に微妙な挟持圧の調整を行うことができた。
(実施の形態2)
図5(A)は本発明の実施の形態2に係る鉗子の平面図であり、図5(B)は第2挟持部の部分拡大側面図である。
(1)対となる第1挟持部5及び第3挟持部11は、第3挟持部11が平板状に形成されることで、臓器と臓器の間にある狭い隙間に鉗子を挿入し易くなる。
尚、枢軸4にサーボモーターを取り付けて該挟持部5若しくは11の一方を開閉する場合、他方の該挟持部に圧力センサを取り付けることにより、挟持圧力分布や滑りを検出し、最適な挟持力制御を可能とすることもできる。
(3)挟持面12が長さ方向と平行に形成された数本の溝部12aを有する場合は、縦滑りがし易く、横滑りが起こり難いため臓器を挟持し易い。
尚、第1挟持部5及び第3挟持部11の組合せは対象物の形状や状況に応じて移動に決めることができる。
2a、2b、2c 第1、第2、第3鉗子部材
3 枢軸部
4 枢軸
5、15、11 第1、第2、第3挟持部
5a、15a 隙間
6 操作部
7 ラチェット部
8、18 第1、第2外側部材
9、19 第1、第2内側部材
9a、19a 先端部
9b、19b 後端部
10a、10b 第1弾性支持部材
20a、20b 第2弾性支持部材
10a´、10b´ 第1弾性支持部材先端部
20a´、20b´ 第2弾性支持部材先端部
11 実施の形態2における第3挟持部
12 挟持面
12a 溝部
21 円型の弾性支持部材
Claims (4)
- 一端に対象物を挟持するための挟持部を有し他端に操作部が設けられた1対の鉗子部材が交差され、交差部に設けられた枢軸部により相互に開閉可能に連結された鉗子において、前記挟持部の少なくとも一方が外側に凸に湾曲した外側部材と、前記外側部材の内周壁の長さより長く、前記外側部材の先端部から内周壁に沿って前記枢軸部までの距離よりも短く形成された板状の内側部材と、を有し、前記内側部材の一端が前記外側部材の前記先端部で固定され他端が移動端として前記枢軸部側へ渡設されたことを特徴とする鉗子。
- 前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に前記外側部材よりも大きな曲率を有する一段及至複数段のアーチ型の弾性支持部材を有し、前記アーチ型の弾性支持部材は両端部のうち一端が前記外側部材に固定され、他端は移動端とされ前記内側部材の内面に摺動自在に当接されていることを特徴とする請求項1に記載の鉗子。
- 前記外側部材と前記内側部材の間に形成された隙間に蛇腹形、波形、円形、楕円形、多角形の内いずれか1形状に形成されている弾性支持部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の鉗子。
- 他方の挟持部が、平板状又は対向面が緩やかに外側に凸に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1及至3のいずれかに記載の鉗子。
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